機動戦士ガンダム パッチワーカーズ   作:ビブロス

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ー2人の悪魔ー

俺=京介・ユーラックが戦闘を初めてから30分、まともに動く機体がどれだけ贅沢な物なのか身を持って経験していた──機体の反応が遅れる/照準が不規則にズレる/イライラと焦りが操作を雑にしていく。

 

「動かし辛い方も厄介だが、相手も"ガンダム"とはなぁ……!間が悪いんだよ、間が!」

 

4機の中で比較的反応が悪くない隊長が相手をしているが、相手はただのガンダムじゃない。"重力"兵装を使っている。

 

 

 

 

 

「難儀な物を持ち出して来やがって!!」/機体のスラスターを吹かして相手の攻撃を紙一重で回避──普通なら簡単に避けることが出来るが、"重力"兵装がM'sの展開する重力波を切り裂き、直接機体にダメージを与える。

 

だから、飛んでくる"ハンマー"は避ける事が出来たが、それが纏う高重力波が機体の装甲を引き剥がした。飛んでく装甲+減少させられた慣性制御のおかげで身体を揺さぶられる俺=赤城優。

 

機体の建て直し+照準合わせ+武装選択=ほぼ同時に実行。手元のビームライフルで射撃──固有振動で収束した重金属の粒子が真っ直ぐに敵の"ガンダム"へと直撃、だが、振り回しているハンマーの鎖に"弾かれる"。

 

ビームを弾く鎖?ビームを弾くほどの強力な重力波が鎖にも纏っている?/そんな疑問を抱いた次の瞬間には再びハンマーがこちらに飛んで来ていた。

 

盾を斜めにして攻撃を反らす。真っ向からの直撃は機体ごと真っ二つにされる。盾に直撃、機体の左腕がひしゃげてもげていくのを確認=AAによる過度の集中時に発動する体感時間の拡大化──スローモーションのように事象を認識出来る。即座に肩のスラスターを吹かし、左腕が肩ごと吹き飛ばされるのを重心をずらして防ぐ。

 

ボリッと、左腕が肘付近から盾ごと吹き飛ばされる。重心がズレ、機体の動作に誤差が生じる、機体側が調整する前に敵から距離を取る。

 

同時に機体の増加装甲に仕込んでおいたマイクロミサイルを全弾発射/クモの巣のような直角軌道/近接信管によって敵のガンダム付近で爆発

 

全てがハンマーと鎖によって防がれる。爆発の光によって露になる敵のガンダム=黒を基本色とし赤色が差されたカラーリング=一発でまともな奴じゃないのだと無意識が判断する。

 

『かの有名なアパッチ部隊がこの程度とは、面白くもない』/ハンマーの直撃の際に接触回線からの同期によって通常無線が向こうのガンダムと繋がっている=M's戦では良くあること。

 

「あぁ?てめえはこっちが月のもんってわかって手ぇ出してんのか?」/売り言葉に買い言葉/良いように機体を破壊されてボルテージ上がってる/機体のバランス調整終了までの時間稼ぎ

 

『仕事だ、採掘艦含めて貴様ら全員皆殺しにする、悪く思うなよ』

 

「悪く思うに決まってるだろ!馬鹿か?!バーカ!!」

 

『……本当に月の軍人か?』

 

「うっせぇっ!ばーかばーか!何で休み潰してまでてめえらの相手しなきゃなんねーんだよ!!くたばれッッ!!!!」

 

『え、襲う相手間違えた?わ、うわ、確認しないと』

 

「もらったぁッ!!死ねぇ!!」/敵の隙/機体のバランス調整終了/ビームライフルを最大出力で敵に撃つ/同時に照準が勝手に"下がる"──ビームは敵のガンダムの足元を掠めていく。

 

動作チェック──機体側のリコイル制御用のプログラムが撃つ前に作動していた、だから外れた。

 

『びっくりした……、隙を狙うならもっと正確に狙いなさいよ!!』

 

「京介ぇー、ごめん外したー」

 

『外すな!その距離で!』/怒鳴り声/直後、真後ろから真っ直ぐなビームが機体を掠めて敵のガンダムへと向かう──京介からの援護狙撃──狙いは敵のガンダムの頭。

 

それも、敵のガンダムの頭上を掠めた。

 

3人の間で気まずい空気が流れ、沈黙が3人を包む。

 

「何で外してんだよ京介」

 

『わり』

 

『二度も不意打ちして外すのはどうかと思うんですけどねぇ!!どうせ狙ってると思ってるからある程度用意してたけど!無駄になっちゃったよ!!!』/敵のガンダムの周囲に鎖とハンマーが突如現れる──高重力波で光を屈折させて俺達に見えなくしていた──重力兵装故に出来る芸当。

 

京介の狙撃でも落とせたかどうか。

 

『いい加減に!遊ばずに落ちろぉ!!』/ハンマーが敵のガンダムが振り回すこともせずに直角に機動して俺に向かって来る──高重力波をスラスターのように噴出しての超機動。十二分に機体を破壊しうる。

 

『隊長!!』/京介の声──珍しく慌ててる。

 

流石に死ぬかコレと思っていた、その直後凄まじい速度の"ビーム"がハンマーを弾く。そのままハンマーは足にぶち当たって俺の機体の左足がぶっ飛んだ。

 

機体が回転するのを抑える/ビームが飛んできた方向を見る──拡大する映像。とんでもない速度で飛来する"コンテナ"。

 

『サヤ・エルフォード!!遅ればせながら参戦します!!』/死んだと思ってた娘の声が"コンテナ"から全周波数で聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

耳に突き刺さるような甲高い音──炉心が凄まじいエネルギーを放出している音。それ以上に"ハロ"がうるさい。

 

「おや!我輩の設計した重力兵装じゃないか!!"コロニー"側に設計図行ってたのか、一応理論上可能な設計だったんだけどなぁ、だいぶ無理してるだろ、あぁ!兵装を機体に合わせるんじゃなくて、機体を兵装に合わせてるのか!!」/コックピットで騒ぐハロ──専用のソケットにはまって僕の正面で前足振り回して暴れてる──ほぼ虫。

 

「うるさい!!で、どうすんのよ!?撃っちゃったわよ!!ガンダム相手に!!」/ガンダムの怖さは身を持って知った/手が震えてる/振り回されてぶつけた所が痛む/鉄面皮も機能してない。

 

「大丈夫!我輩のガンダムを信じたまえ!!接種させた"AAA"の定着率も十二分!コントロールをそちらに全部任せる!思う存分に動かしたまえ!!」

 

「接種!?何したの?!」

 

「だし巻き卵おいしかった?」

 

「あれか?!何入れたの!?!!!」

 

「気にしない気にしない、ほら、前来てるよ」/前を見ると海賊のM'sから無数のビームが飛んできているのが目に入り込む/悲鳴が口から漏れる/咄嗟にスラスターを吹かす。

 

コンテナをぶち破り、ビームを交差、敵陣の真ん中へと躍り出るーー凄まじい加速力。事実を認識出来ずに呆ける。直後、事態のヤバさに首筋に嫌な汗をかく──敵陣の真ん中=周りからの集中砲火/死ぬ/絶対死ぬ/動け。

 

思考と同時に機体が挙動──ビームライフルを構える=『ヴァリアブルビームスマッシャー』──脳に直接情報表示──使い方も。

 

照準──動体反応全て+引き金は容赦なく=銃口から発した光球から四方八方にビームを撒き散らす。

 

ビームは何機かの海賊のM'sの手足、武器を破壊/敵のガンダムには弾かれる/アパッチ部隊の面子にも飛んで行ったが避けてくれた──あ、味方識別してなかった。

 

「敵のコックピットに当てないのはどうしてだい?」/ハロは何かを計算しながら疑問をこちらへ投げ掛ける──考える/ひとつしか答えがない──「一方的に殺すのは嫌だからよ、敵でもね」

 

ほう、と感心するような声でハロはこちらを振り向く。偽善者、とでも言うつもりだろうか。だとしてもエリナさんが言っていた事を僕は守っていきたいのだ。

 

「開かんと欲すれば、まずは"蓋"をすべし……か」

 

ハロはぼそりと呟いた──自分に言い聞かせ納得させるように。

 

「なに?」/敵は僕の攻撃に恐れ、そして警戒し、こちらを見張るばかり──この性能を見れば当然である。勝てる、と自分の中で何か確信が持てたような気がする。

 

「気にしない気にしない、ほらどんどん自由にやりなさい!」

 

「言われなくても……!」/スラスターを吹かし、凄まじい速度で艦のカタパルトへと着艦──カタパルトの床がめり込む/やべ、怒られる。

 

艦橋の真横に京介さん=Gエイナスが立っていた──装甲がほとんど張り替えられ、右足が無くなり、建材のような金属の棒を右側に接続している=ハロはどれだけ暴れたんだ?

 

『お前は?』/京介さんはこちらにライフルを向ける──照準はしっかりとコックピットに向いてるーー僕の声を聞いてもまだ信用してないらしい。

 

「サヤです!サヤ・エルフォード!!」/機体の手を挙げて降参ポーズ。京介さんはそれを見て何か確信が持てたのか、ライフルの銃口を下げた。

 

『生きてたか、しかしその機体は何だ?そいつは俺達を襲った奴だろ』/怪訝そうな声──「襲ってきたのそっちじゃん」とハロが抗議しだしたので手で抑える。

 

「いや、まぁ話せば短いのですが、意味わかんないと思います」

 

『話せ』

 

「ハロに気に入られてもらいました」

 

『……わからん』──ほらぁ、やっぱり。

 

『京介はぼーっとしないで防衛!サヤちゃん!生きてたのね!!』/バートン艦長からの通信=映像付き──安堵の表情の彼女。

 

「すいません!先ほど帰還しましたので、状況を掴みきれてません、指示を下さい!」/正直な感想──何がどうなってるかわからない状況で動くのは危ない──正直、機体のことで頭いっぱいなので周囲の状況考えるのは無理。

 

『採掘艦の人達を脱出挺に乗せて此処から退避させます、その間誰かが敵を引き止めないといけません、雑魚は赤城達が担当しますから、サヤちゃんは敵のガンダムの相手をしてください、倒さなくて良いからね、逃げ回ってれば良いの、わかった?』/親が子に言い聞かせるような言い方──心配させたから評価が下がってる?/見返してやれ、僕なら出来る。

 

「了解です!」/スラスターを思い切り吹かす──目標のガンダムまであっという間だ。ギリギリで京介さんからの通信が入る──『隊長が追っ掛け回されてる、早く行ってやれ』──当たり前だ。

 

 

 

 

 

凄まじい速度で飛んでいくサヤちゃんを見上げる、少し呆けてしまった──安堵したせいか。自分=舞姫・バートンで気合いを入れ直し、状況再確認──我が"シーウィード"と採掘艦は海賊に"囲まれている"/視覚野に直接表示される艦船──2つのアイコンを囲むように6つほどのアイコンが3次元的に配置している。

 

完全に包囲されてる、人手が足りないからと整備を手伝って油まみれになったから風呂に入ったばっかりにこんなことになってしまっている──やはり風呂は嫌いだ。それでも索敵に引っ掛からずに囲まれてるのは何かおかしい──こっちに気付かれない機能を装備してる?

 

とはいえ、サヤちゃんの攻撃で向こうは混乱してる。これに乗じて包囲網に穴を開ける。通信用の電波を最大出力に変更──相手に聞こえてもかまわない内容。大声で指示を飛ばす──「アパッチ部隊!プランBを開始します!!サヤちゃんはそのまま突っ込んでね!!」

 

 

 

 

 

俺=桜萪・ブラスホールは飛んできた通信に頭を傾げた──攻撃をいなしながらビームサーベルを敵のコックピットに突き立てる。

 

接触回線でパイロットが焼かれて悲鳴が聞こえてくる。熱された重金属粒子だ、そりゃ熱いよな。

 

「アスミさーん!プランBってなんだっけー?」/コックピットを潰した機体を蹴り飛ばして退かす──今のでビームサーベルの重金属粒子が切れた、残り一本。

 

『あぁ?!出撃する前に艦長が言うとったろ!指定ポイントを重点的に攻撃じゃ!!包囲網の突破じゃ!突破!』/腕の武器=腕自体が大型の武器──照準の調子悪くて機嫌悪い。見たことないくらいキレて腕についてるスパイクで敵をぶっ叩いてる。

 

覚えてねぇ──出撃する時に食料庫から盗んでたフルーツバー食うのに必死になって聞いてなかった=お腹減ってた。

 

「突破なら、突破力だな、シーウィード!!グラディエイトアームズを射出!空中換装する!」/通信を飛ばす/応答は信号──『了解』ーー艦から箱型の戦闘機が飛び出す。

 

「空中換装するからアスミさんは援護よろしく!!」

 

『わかっとるわ!』/アスミさんの機体=『ガンダムビルガス』の頭部レドームが展開──センサー類の機能を全開放。膨大な情報がアスミさんへと流れ込む、それを彼女は一つ残らず処理──指定領域内の敵の動向を完全把握する。

 

アスミさんは近付いて来ていた敵に対して射撃=左腕の武器腕=大型のビームライフル──寸分違わぬ照準によって繰り出されるビームが敵を貫く──照準のズレを強引に補正している。

 

続けて近づく敵を牽制及び撃墜していく。俺は隙が出来たところで飛んでくる戦闘機へとスラスターを吹かす。

 

直後、アスミの攻撃を抜けた一機がこちらへと飛んでくる。照準が一部甘かったのか、数が多くて捌き切れなかったのか。スラスターをさらに吹かし/"ボディ"と"コア"を分離する。

 

俺の『リジェクティアガンダム』はコア部分であるガジェットファイター、そして胴体を構成する各種アームズで成り立っている。

 

ガジェットファイターには炉心と頭部と胸を担当、各種アームズは四肢を担当している。この各種アームズを切り替える事で多種多様な戦況に対応する。

 

なので、損傷率の高いアームズを交換して継戦能力を維持するのだ。故に、いらないアームズは"捨てる"。

 

「ポイ捨てぇっっ!!!」/最大加速をかけてアームズをパージ──コアはガジェットファイターになりアームズは戦闘機形態へと変形。そのまま敵へとぶつける。コアからの重力波が残留しているアームズは敵の重力波を無効化し、その質量を存分に敵へのダメージに変えた。

 

昔見た交通事故のように双方ともぐしゃりと潰れ、炸裂した。ぶっ飛ぶM'sの四肢を尻目に飛んでくるグラディエイトアームズへと信号を飛ばし、ドッキングシーケンスへと移行。

 

こちらも交通事故にも似た衝突になったが、炉心からの重力波がドッキングと同時に衝撃を無効化し、戦闘機をガンダムへと変貌させた。

 

両肩の剣を引き抜き、一本の大剣へと合体させ、敵へと突貫するーー「押し通るぞっっ!!!」

 

 

 

 

 

 

僕=サヤ・エルフォードが敵のガンダムへと接近した時、赤城隊長はぼろぼろの機体でハンマーから逃げ惑っていた──左手と左足がない。

 

残りの右手と右足による重心移動とスラスターでハンマーを避け続けている──類いまれなる技量の証。

 

援護/支援──考え付いた時にはビームを撃っていた。拡散しないビームスマッシャーの威力は一撃でハンマーを弾くほどであったが、それを破壊することは叶わなかった。ハンマーから噴出する重力波にビームが弾かれるからだ。弾けているのはビームの質量と速度が速いからだ。

 

「隊長!此処は変わります!!プランBをお願いします!!」/スラスターの連続操作、直角機動で敵のガンダムへと接近し、手持ちの盾をハンマーのようにぶつける。

 

しかし、盾は鎖によって阻まれ、逆に機体を弾かれてしまう──『任せた!』とさっさと隊長は艦の方へと帰っていった。薄情というか、切り替えの早い人である。

 

『新しいガンダム!』/敵のガンダムからの通信、何で繋がる?

 

「接触回線からの周波数同期だ、月ではあまりしてないが、コロニーと海賊はよくしている、実戦を経験しないとわからないことだ」/ハロが解説を飛ばす──ムカつく/イラつく/何様だお前偉そうに。

 

「……じゃあ何であなたは僕の機体に通信繋げれたの?」

 

「ハッキングだよ、慣性制御切ったのもそれ」/どや顔のハロ──そんな風に見える/くたばれ。

 

「じゃあ、あれ(ガンダム)にも出来るのね」

 

「出来るね、君が時間稼ぎ出来るなら」

 

「いいわよ、通信を繋ぎなさい、おい!海賊!!この僕、サヤ・エルフォードが相手をしてあげるからかかってきなさい!!」/スマッシャーの銃口を向ける/敵はハンマーをぐるぐると回し此方を威嚇する。

 

『サヤ……、サヤ・エルフォード!目的の人物が情報にないガンダムに乗っている!どうなってるんだこれは!!文句だ!文句を言ってやる!!』/唐突な怒り口調ーー何を言っているのかと首をかしげる。

 

「た、戦うの!?戦わないの!!?どっちよ!」

 

『捕まえるのだよ!!君を!!それが目的!』/飛来するハンマー/スラスターを吹かして楽々回避、となるはずだったのだが思いの外ギリギリでの回避となってしまったーーハンマーに機体が引き寄せられたのだ、何だあれ。

 

「引っ張られる!?」

 

「開発ネームはGハンマー、鉄球部分から双方性の高出力重力波を連続的に交互に放射し、機体が展開している重力波と装甲を破壊するんだ、押す力だけだと威力出ないから、胸ぐら掴んで引き寄せて殴るって感じかな」/長い解説の間に2度の攻撃、スレスレで回避しているが肝が冷える。

 

「対策は?!あとハッキング!」

 

「機体が展開してる重力波は弱いから剥がされるが、ビームサーベルを固定化する程の重力波なら弾けるぞ、ハッキングはもう少しだ、耐えたまえよ」

 

「悠長にしないでよね!!!」/背中の大型スラスターからビームサーベルを2本取り出す──レオ御兄様のようにやってみる。

 

飛来するハンマー/一本目のサーベルで迎撃/押し負ける寸前で二本目で違う方向からぶっ叩く/明後日の方向に飛んでくハンマー。

 

成功ーー心の中でガッツポーズ。

 

『まだまだぁ!!』/再度飛来する攻撃──今度は直角機動加えて先ほどよりも速度が上がってる。同じ受け方だと僕の技量では押しきられるーーサーベルの持ち方を逆手に。

 

ハンマーに合わせてクロスカウンター気味に逆手持ちのサーベルに当てる、そして刃の上を滑らせて違う方向へと流す。

 

『妙な技を!!』/これでも初歩の技──レオ御兄様ならもっと上手くやれる。

 

『次は最大出力でぇっ!!』

 

「次なんて君にあるわけないだろう、ごめんねサヤ君少し手間取った」/ハロによるハッキング、敵のガンダムの動きが止まる──ハンマーも。

 

『な!?動かん!トランテア!!止まるな!』

 

「ヨーヨー遊びもこれでっ!!」/ビームサーベルによる一閃/GハンマーのJEDの鎖+両腕を熔断──敵のガンダムは体勢を崩す。

 

「終わりだぁ!」/スラスターを最大出力で吹かす/唐突に敵のガンダムの胴体にマーカー表示──ハロの指定ポイント。指定ポイントに思い切り蹴りを叩き込む──ゴキンという何かが折れて外れた音が響き、敵のガンダムは彼方へと飛んでいく。

 

『ぬぉ!?!ワーヒドゥ!撤退だ!!目標だけは"潰せ"!!!』

 

目標?目的は僕と言っていたはず/鳴り響くアラート──強力な重力波を検知/「"重力兵装"!!2体目の"ガンダム"だ!!狙いはこちらではないぞ!!」

 

マーカー表示="目標"=僕達の艦と採掘艦、そして今にも逃げ出そうとしてる"脱出挺"。

 

悪寒/鳥肌/ヤバイーースラスターを思い切り吹かす/「着弾予測!!マーカー!」/「やってる!!!」──脱出挺にマーカーが表示。

 

ガンダムの速度は攻撃前に脱出挺へとたどり着かせてくれた。盾を持ってマーカー前へ。直後、盾が炸裂──細長い何かが盾を粉砕/貫通=脱出挺に直撃した。

 

AAAによる過度の集中からのスローモーション。脱出挺を見てしまう/攻撃は脱出挺の操舵室からエンジン部分を直線的に貫通──爆発する。

 

窓には僕に花を渡した女の子の顔が見えた──貫通したことに気付いてない=僕のスローモーションの倍率が高くて認識時間が大幅に拡大している。

 

そして炸裂。視界の集中を誤認したシステムが女の子を拡大/笑顔で此方を見る女の子の皮膚と肉を爆炎と爆風が引き剥がし、骨と内臓を吹き飛ばした。

 

死んだ。

 

その場面が脳裏にこびりついたと同時に僕は最後の彼女の顔がだぶって見えていた。

 

爆風と爆炎に焼かれる女の子="僕"="エリナ"さん。どんなに力があったとしても"お前"は"あちら側"だと突きつけられている。

 

"彼女=エリナさん"と同じことをしたところで、お前は誰かに良いようにされて殺されるだけ、"同じように"、レオ御兄様の目の前で死ぬだけ。

 

「サヤ君!聞こえてないか!?過集中で神経がまいってるのか?!起きなさい!!早く」/ハロが喚いてる。うるさい──僕が"溢れる"。

 

悲しいよりも、悔しいよりも、ただただ僕は"直視"出来なかった。僕がしたいことを。沸き上がる気持ちに抑えがききそうになかった。

 

それだけは考えちゃダメだ。絶対にダメだ、エリナさんと約束したのに。僕が目指すべきは彼女が夢見た明日なんだ、決して自分が考えるモノではない。

 

『サヤ!!何やってやがる!!?!次弾が来る!!動け!!"死ぬ"ぞッッッ!!!!』/近くに居る京介さんからの通信──死ぬ、誰が?僕が死ぬ、海賊に殺されて死ぬ。

 

誰かに良いようにされて、何も出来ずに、一方的に死ぬ。

 

いや、違う。

 

死ぬのは僕じゃない。

 

僕じゃない。

 

機体の情報が頭に急速に入ってくる──ビームスマッシャーの時よりも膨大で迅速。このガンダムの名前/最古で最初のガンダム=『ランペイジガンダム』/その本当の力──システムES。

 

「ん、あ?え、お、システムES起動してる??あ、あかんあかん、我輩それだけはマジでアカンってば!?!」/慌てるハロ──うるさい/機体の出力が規定値以上に上がり、機体が"変形"する。

 

浮遊する爆散した脱出挺のCNT装甲が僕のガンダムを鏡のように写し出す──装甲の内側に搭載されていたCNT排熱機関が露出/頭部に一本の大きなブレードアンテナが展開/背中の大型スラスターが分解し羽となり光輪が発生、残りのスラスターが腕の爪となる/機体の色が白黒から血のような色へと変わる──動脈血と静脈血の色。

 

そしてガンダムの顔に搭載された排熱機関が露出、それが耳まで裂けるように笑う人間に見えた、それがモニターに反射した"僕"の顔と重なっていることに気付いた。

 

僕はこんな顔が出来るのか。

 

「死ぬのはお前達だ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

警告音──先ほどと同じ攻撃が来る/AAAによるスローモーション+高速演算による"未来予測"=音速を超えていようが僕がそれを掴むのは必然だった。

 

ガキィン!と音が響く。爪によって停止させられているM's並みに大きい杭──先ほど飛んできたのはこれか。

 

「Gアロー、ビームよりも長い射程距離と貫通能力を持たせようとしたら最終的に高硬度高密度のM'sのフレームに使われてる金属の杭を現状実現可能な最高速度で飛ばす、なんて味気無い物になってしまったがね」/先ほどまで慌ててたハロ──落ち着いたのかベラベラと解説を始める。

 

「射撃地点算出、撃墜するわよ」/自分自身でも驚くくらいに落ち着いていた──やるべき事が頭を冷静にしてくれる。

 

「撃墜かい?敵は撤退していくようだけどねぇ?」

 

「未だにGアローの射程距離圏内に艦がある、撤退しながら落とされる可能性はあるでしょ、それにあいつらを"皆殺し"にしなきゃ腹の虫がおさまらない」

 

「おやおや、殺さないのではなかったのかね?」

 

「エリナさんには悪いけど無理、それに海賊なんて犯罪者は死んで当然よ、それに海賊はコロニー出身者がなるものでしょ?殺してもかまわないじゃない」

 

口から自然とそんな言葉がスラスラと出ていた。少し前なら絶対に口にしないような言葉だったのに。

 

それを聞いたハロは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐににんまりと笑った──そんな気がした。

 

「目標を全部マーカーした、システムESの稼働時間は短い、早めにやりたまえ」/ハロによるマーカー設置、視界が大量のマークで埋まる。

 

『サヤ!何をやってる!』/京介さんからの通信。物凄い怒鳴り声──威圧的、物凄く癪に障る。

 

「敵を落とします、京介さんはそこに居てください、"巻き込み"ますよ」/背中の光輪を吹かす──リングサーキット型空間圧縮式反動推進機=高重力波で空間を圧縮し解放する、その反動で前に進む。その速度は人間の動体視力では視認することは出来ない。

 

『止まれ!!!サ……!』/僕の名前を最後まで言い切る前に通信が切れた──凄まじい速度で通信可能領域から外れた。

 

 

 

 

 

敵から見ていればそれは一瞬だったかもしれない。サヤ君が動かすランペイジガンダムから繰り出された蹴りは海賊のM'sの上半身を粉微塵にしてしまっていた。飛び散る金属、コックピットブロックは空き缶のように潰れている。

 

高重力波と強靭なフレームによる対衝撃性は十二分に発揮されていると、自分自身=セレブレイト=ハロを自画自賛していた。

 

それに加えてサヤ君を選んだ自分自身を誉めてやりたい。AAAへの希に見る高水準の適性/近接戦闘への高い適性/類い希なる"躊躇の無さ"──全てが我輩の力を使う為に用意されたと思うほどの幸運。

 

あとは美人で乳と尻がデカイ──"彼女"を思い出す。

 

「全てを落とすと言っていたが、敵艦も落とすのか?」/冷徹な顔のサヤ君へと問い掛けた、が目線を少しくれた程度で無視された。

 

無視、無視良いね。我輩は粗雑に扱われた方が実力発揮出来るし、たまにべた褒めして欲しいタイプだし。サヤ君はとっても合っている。

 

そして彼女はとてもヤル気であることが一発でわかった。そう、とっても良い。

 

手に掴んだままの杭を敵のM's目掛けて放り投げる──システムES発動時のランペイジの出力は最強──杭は難なくM'sを貫き、さらにその向こう側の敵艦へと直撃した。

 

杭は敵艦の艦橋に突き刺さる。サヤ君は突き刺さった杭に対して飛び蹴りを敢行、敵艦を杭ごとぶち抜いて破壊した。

 

いやはや、M'sの近接戦闘の概念から飛び出し過ぎだ。普通なら機体はもうボロボロだ。粗雑に扱い過ぎ。とっても良い。もっと粗雑に扱ってもらいたい。その方が我輩にとって、非常に都合が良い。

 

最高だ。

 

 

 

 

 

 

機体を縦横無尽に動かす。手当たり次第に敵を撃墜していく──背中を向けてる奴は後ろからコックピットを攻撃、攻撃してくる奴は前からコックピットを攻撃。

 

爪から何か出ているのか、手刀だけでM'sが発泡スチロールのように砕けていく──重力兵装である『単分子重力波カッター』のおかげ。

 

単分子の厚みで展開された重力波の刃が敵に突き刺さり、内側から外側へ向けて広がる力で引き裂く──ビームサーベルだって切り裂ける。

 

片っ端から引き裂いていくと、敵と接触することになり、その瞬間の悲鳴がコックピットと僕の頭の中で響く。

 

嫌だとか、ぎゃあとか、20過ぎの男の悲鳴が響き渡る。軍学校では同い年の男の子達は身体が大きく、筋骨隆々、悲鳴も泣き言も言わなかった。

 

そんな連中を僕が、僕の力で悲鳴をあげさせている。泣き言を喚かせている。それがとてもわくわくして、ドキドキして、とても楽しかった。

 

他者の命まで自分で好き勝手出来る充足感──母が僕に対して好き勝手したがるわけだ。

 

楽しくなっていくにつれて加速度的に敵を撃墜していく速度が上がり、殺し方も多彩になっていく。

 

楽しくてしょうがない、気付けば大声で笑っていた──皆に聞かせたくて通信を全領域で流す、相手の悲鳴も流しちゃう。楽しいから。

 

悲鳴が聞きたくて殺す、手当たり次第に──さながらミキサーの刃になった気分。僕の高笑いと敵の悲鳴が飛び交う。まるで僕主役の誕生日パーティーもしくはダンスパーティ/拍手喝采/満員御礼──心の底から笑顔がこぼれる。

 

M'sをコックピットごと真っ二つ/2機重ねてコックピットを貫く/コックピットだけ引きずりだして握り潰す/敵艦は居住エリアから艦橋にかけて真っ二つに/『悪魔』/『悪魔だ』/『一本角の悪魔』──変な呼び方されてる。

 

むかつく。

 

「狙われてる、さっきの"ガンダム"だ」/警告音とハロの声が同時に耳に飛び込む──スローモーション+未来予測が発動/飛来する杭を縦に真っ二つに切り裂き、弾き飛ばす。

 

要注意マーカー=敵のガンダムへ向けて光輪を吹かす──解放される空間の反動で一瞬で敵のガンダムの真上へ/敵艦のカタパルトの上で悠長に大きな大砲を抱えている──右腕から直接砲身が生えている。

 

敵が砲身を真上の僕へと向ける──遅い。砲身と頭部を切り裂き、胴体を踏みつけてカタパルトに仰向けにめり込ませた。

 

力を入れてコックピットを踏み潰そうとしたとき、ガンダムのパイロットが苦しそうにしている声が聞こえた。

 

『殺しを楽しんでる悪魔!!ここで俺が死のうとも仲間が必ず貴様を討つぞ!覚えていろ!!』/ゴボゴボと咳き込むパイロット──口の中が血液でいっぱいなので喋るのも精一杯。汚い。

 

「楽しんでる?僕が?そう感じるの?」

 

『笑いながら虐殺する奴が楽しんでないわけがないだろう!!!』

 

「大正解!僕ねすっごい楽しいの!!貴方凄いですね!僕の事を理解出来るなんて!だから……!」/爪先で蹴り上げ、"殴り"やすい位置まで持ち上げる。

 

単分子重力波カッターの発振器である爪を握り込む、単分子の重力波は完璧に折り重なりあい、相互に圧縮し反発し、重力波は杭のように形成される。それを敵のガンダムのコックピットへと叩き込む。

 

「とっとと死ねぇ!!」

 

『貴様など……メリッサ様が…!!』

 

声が一瞬で途切れる。杭はコックピットをぶち抜き、中に圧縮された反動を一方向に向けて放出。ガンダムの向こう側=敵艦にさえ大穴を開けた。

 

爆風。飛んでくる破片を重力波が弾く。次の目標へ、と機体を動かそうとしたが、動きが自分のイメージについて来なくなった。

 

「システムESの稼働時間が終わったのだ、通常稼働へと戻るぞ、"おしまい"だ、サヤ君」/ハロは落ち着いた声で機体を元の形態へと戻す──もっと殺したいという思いはあるが、機体が無理なのだと感覚で理解する。

 

「大半は殺した、まだ君は機体に慣れていない、無駄な動作が多い、だが、まだ君は"強く"なれる」

 

ハロは父親のような声音で僕にそう語りかけた。

 

 

 

 

 

シーウィードへと帰る──格納庫には既に京介さん達4人の機体が格納され整備されている。

 

格納庫内には艦長と京介さん達、そして整備員達が集まっていた──こちらをずっと見ている/こんな感じで見られるのは嫌い。

 

「おやおや注目の的だ、サヤ君」

 

「誰のせいだと思ってるのよ」

 

「我輩達2人のせいだろうね、普通に」

 

「ぬぅ……」

 

不安な気持ちでコックピットからハロを持って降りる──何を言われるかわかったものではない、というか言うこと聞かなかったから激しく怒られそうな気がする。殴られるかも。

 

不安な気持ちを顔に出さずに、格納庫に降り立ち、敬礼する/出来る限りしっかりと──「サヤ・エルフォード、帰還しました」

 

「お帰りサヤちゃん、乗ってきたガンダムの事とかは後でお話を聞くけど、とりあえず生きて帰ってこれて良かったわ」/バートン艦長がニコニコしながら抱き付いてきた──それを難しそうな顔で京介さんが見ていた。

 

「あ、ありがとうございます艦長」

 

「いやー、本当に生きて帰って来るとはねー、ほーら、教育係、言うことあるんじゃないのー?」/艦長が京介さんに視線を送る──京介さんは気難しそうに口を開いた。

 

「サヤ」

 

「は、はい」

 

「今回お前は俺の言うことを聞かずに撃墜された、そのあともガンダムで帰って来ても俺の静止を聞かなかった」

 

ヤベ、京介さん怒ってる。

 

「すいませ……」

 

「だが、生きて帰って来た、どっからかガンダムを拾って来てな、そして敵をほとんど落とした、"良くやった"、お前を褒めておく」

 

「え?」

 

京介さんに肩をポンと叩かれる──良くやった、みたいな感じで。褒められた事が何だか実感出来ないまま、その場で膝からへたり込む。

 

わ、と皆が駆け寄る中、何だか眠たくなって、ハロを抱き抱えながら瞼が落ちていくのを感じていた。とりあえず褒められた事を報告したい。

 

「やったよ御兄様……僕褒められたよ」

 

そこで僕の意識はパタンと無くなってしまった。

 

 

 

 

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