まずは日本からイタリアへ。
花梨がイタリアへ行くことになった事情と、胡散臭い紳士(オリキャラ)との出会い。
オリキャラは、6部の原作後短編のクリスマスイベントで登場したオリキャラと同一人物です。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
「あ~~~、やっと着いた……。」
大きなキャリーバックを引きずりながら、もう片手で幼い少女と手を繋いだ東方ミナミは、冬の寒空の下で目的地に辿り着けたことに思わず疲れたように声を漏らした。
イタリアのネアポリス。ここが目的地であった。飛行機での長い旅を経て空港から更に交通機関を使って移動した。幼い子供を連れた状態で旅荷物を運ぶのは大変だ。聞き分けの良い我が儘言わない大人しい子供とはいえ、長旅は堪える。むしろ泣き言ひとついわない我が子が心配であるし、それ以外の心労や疲れが日々溜まっていて母親の方も顔には出さないようにしていたが辛い状態だった。
大人しい我が子の名前は、花梨。
今年5歳になった実の娘である。
ナランチャ・ギルガと結婚して、今年になって33歳になったミナミも別居国際結婚という特殊な夫婦関係とはいえもう立派に母親である。
しかしそんなミナミも、夫のナランチャも悩ませている問題が起こっていて今回のイタリア訪問となったのだ。
簡単にハッキリとミナミとナランチャの夫婦の悩みの原因を言ってしまえば、原因は2人の娘の花梨にあった。
生まれた時から神隠しや、突然怪我をしたり、見えない何かに反応して言葉が喋れるようになるとそれが死んだ者…、つまり幽霊だということが判明した。
幽霊を見て、声を聞いて、会話ができて、触ることも可能で、生者と死者の区別ができないほどハッキリと死者と交感ができてしまう、霊能力者としてパーフェクトと言えるレベルだと判明した。
更に追い打ちをかけるように起こった異変は、幽霊だけじゃなく、死んだ人間が所持していたスタンドを使うことができたことだった。
しょっちゅうある神隠し。その内の一件で歩いたり走ることができてもまだまだ未発達で危うい足取りしかできなかった頃に、なんとかつてのナランチャの仲間であったアバッキオのスタンド、ムーディーブルースが花梨と手を繋いで家に送り届けるという出来事があった。それ以来ムーディーブルースは花梨の保護者のようなボディーガードのような感じで何かあると傍にいることが多くなった。
本来のムーディーブルースと違い色が抜けたように白いのがすでに死亡したスタンド使いのスタンドをコピーして再現しているという表れなのか詳細は不明である。しかしいつの間にか伯父である仗助のスタンド・クレイジーダイヤモンドをコピーしていてその力を使った際には本物の方と同じ色であった。色の違いが死んでいるかどうかの表れなのか花梨本人に聞いても当の本人はスタンドの力が無意識であるためうまく説明できず、コピーされたムーディーブルースも喋らないので何も分からない。
スタンド使いを中心に親族と知人で話し合い、花梨の成長に伴うスタンド能力の強大化を危惧し彼女の平穏のためにも早い内に対策した方が良いという結論になり、クリスマスを目前とした日にちに手配がやっと整ってイタリアへ来た。
待ち合わせの予定時間までまだ時間があったので、疲れたミナミはベンチに腰掛けた。花梨もミナミの横にちょこんと座る。本当に泣き言ひとつ言わない。
冬の寒空の下、雪が降りそうな天候で空気が冷たい。気温が低いとトイレが近くなるものでずっと黙っていた花梨がモジモジと動いたのをミナミが気がついて近くのジェラート屋にお願いしてジェラートを買う代わりにトイレを借りた。
店員もミナミの疲労が浮かんだ顔を見て心配になったのか店内に椅子を用意してくれるなど気を遣ってくれて、疲れが溜まっていたミナミはそれで気が緩んでしまった。
背もたれのある折りたたみできる椅子に座ったはいいが急激に来た眠気に意識が朦朧とした。店員の老女がその様子を心配して目を覚まさせてあげるためにコーヒーでもと店の奥へ行った。
ところでこの店のトイレは表からは入れず店員のいる場所を除けば裏口を通らないといけない作りになっている。なのでトイレに行った花梨はトイレから出たら裏口を通って戻ってこないといけない。ミナミが疲れ切っていたのもあるし、花梨が賢くて良い子だったという親の信頼による親の慢心もあった。
だからミナミが花梨が戻ってこないことに気づいた時には花梨の姿がどこにもなかった。
「う…そ……。」
そのことを理解したミナミはヘナヘナと力が抜け、震える手で携帯を取りだしてナランチャへの緊急連絡先へ電話した。
ジェラート屋の店員達が非常事態を知ってまだ周囲にいる可能性が高いと花梨を探しに出たり、青ざめて震えているミナミを励ましたり、どこかへ電話して迷子の情報を求めたりと騒ぎになった。
***
「やあやあ、美しく可愛らしいお嬢さん。なにかお困りごとかな?」
フワフワとファーが付いたコートの端を握りしめて俯いていた花梨の近くで男の低い声が聞こえた。
顔を上げると、白いちょびヒゲのある40代か50代ぐらいの老紳士が花梨の前にいた。
赤白の派手なスーツとシャツ、ネクタイ、ハットを頭に被り高そうなしっかりした造りの杖を手にしているが足腰は悪くなさそうである。
老いてはいるが整った顔立ちとしっかりした背格好もあり、紳士的な優しさがある笑みだが、どこか胡散臭い雰囲気が感じられて大抵の人間は一瞬引くのだが、花梨はキョトンとはしても引かなかった。赤白紳士はそれが意外だと少し驚いたような顔をしたがすぐに笑顔になり花梨の前で片膝をついて目線を合わせた。
「肝の据わったお嬢さん、何やらとても悲しそうだね? お家に帰るのは嫌なのかな?」
耳に心地良い低音で奏でられる言葉は花梨の心に刺さる。目を僅かに見開いた花梨の様子に紳士はニッコリと笑い右手を差し出した。
「一緒に家出をしよう!」
「………………えっ?」
ずっと黙っていた花梨が思わず声を漏らす提案に、けれど紳士は笑顔で言う。
「パパとママを困らせたくない!? ノンノン! たまのビッグなワガママカモーンだよ! 君はとってもよい子だ! ワガママ言って欲しいのもパパとママのワガママ! ワガママ叶えちゃいなよ!! 叶えよう!! さあ、行こうお嬢さん!!」
「えー?」
老紳士の勢いに圧されて花梨は呆れたように声を漏らした。どっちが子供か分からない。
「な~に、一生に一度ぐらいドデカいワガママ叶えたっていいじゃないかい? 大人になって年を取って大切な人に話せる話題になるのさ! きっと大切な人が笑ってくれるよ!」
「…………………ほんとう?」
年齢不相応の落ち着いた声色から一転して、花梨の声が弱る。ギリギリまで張り詰めていた糸が緩んだように弱った声の調子に、紳士はその状態が彼女の本当の心の状態だと感じ取り改めて笑顔を作り、完璧な姿勢で恭しく手を差し出す。
「お嬢さん。お手をどうぞ。」
花梨は、少し考える。
この手を取れば単純な迷子どころか誘拐案件で家族に迷惑がかかるのは目に見えている。そもそもこの紳士のおじさんが胡散臭い。しかもココは日本じゃなくて海外。イタリアは父・ナランチャの仕事の大事な場所で、迷惑かければナランチャに大迷惑がかかる。まだ5歳だしギャングのことも何一つ知らないが本能的に良くない仕事をしていることと、仕事に何かあればナランチャの色々もろもろが大変だというのは理解していた。色々もろもろの詳しい内容はまだ理解できないがナランチャにとって良くないことであるということだけは分かっていた。
「お嬢さん。」
迷う花梨を後押しするように紳士の優しく強い声が言う。
「冒険に出てみようじゃないか! 後ろの“彼”も賛成みたいだよ?」
「あっ。」
迷っていた花梨の背中を優しくポンッと押したのは、白いムーディーブルースだった。押された花梨の小さな身体がバランスを崩し、その身体を紳士が受け止める。
「エスコートはお任せあれ、お嬢さん!」
「………………あの……。」
「早速なにかな? お嬢さん?」
「………………………………名前。」
「おっと失礼した。私は通りすがりのバッボナターレさ。」
「バッボナターレ……。」
「気軽におじ様でも良いよ?」
「おじ様。」
「はい、お嬢さん。」
「……わた…っ。」
自分の名前を言おうとした花梨の口に紳士の手袋に覆われた指が当てられ言葉を遮られた。
「失礼。これは私のワガママだ。君の名前は聞かないでおきたい。いいかい? これから始まる冒険は戦士が馬鹿正直に名乗り上げて正々堂々の物語じゃないのだ。正気なのは良いことだ。ずる賢い嘘つきが勝つ物語がある。頭の良い君には分かるよね?」
空いた手で静かにと指を自分の口に当てる仕草をする紳士の言葉を聞いて花梨は頷いた。
「まったく、君は本当に真面目で良い子過ぎる! これは楽しい冒険になるよ!」
「ココって、今どこ?」
「ここはネアポリスの中心の端っこ。まんまるの外に外れるか外れないかのギリギリラインだよ。さあ、なにかしたいことあるかい? 食べたい物や行きたいところあったら言ってくれ。」
「んー…。」
「では、私のオススメに行こう!」
「えー?」
「お手々冷たいよ! まずはホットにならないとね!」
じゃあなんで聞いたの?っと聞きたかったがまだ花梨にはそこまでツッコミを入れる力は無かった。
バッボナターレと手を繋いで歩いている間、花梨ははて?とあることに気づいた。
もしかして…、この人にはオトモダチが見えていた?
花梨にとってのオトモダチとは、自身のスタンドとそれにコピーされた死者のスタンドのことだ。
バッボナターレは、後ろにいる“彼も”と言っていた。つまりムーディーブルースが見えていたということだ。スタンドはスタンド使いにしか見えない、その法則は周りから教えてもらったし身内に多いのでよく分かっている。
「…………ま、いっか。」
あれこれ考えても仕方ない。考えるのに少し疲れた花梨はバッボナターレが悪人ではないということだけは、ムーディーブルースが保障していると思えたので、投げやり気味にまあいいやと力を抜いたのだった。それにムーディーブルースは神隠しが起こると手を繋いで家まで送ってくれるし、家までの距離が遠すぎるときは家族に見つかりやすいよう別の行動をするし、悪いことから花梨を守ってくれる。ムーディーブルースは喋らないのでその気持ちは分からないが花梨にとって敵意あるものではないと、その行動から理解できる。ナランチャがムーディーブルースの本来の持ち主であるアバッキオという人物とは性格などが別人だと言っていた気がするがよく分からない。
そういえば野乃佳も『花梨は気にしすぎ。周りを気にしすぎてばかりじゃ疲れるだけだから、まあいいかって考えて気楽に行こうよ』って言ってた……。
花梨の友人である四ノ原野乃佳はすごくそう言ってくれていたのだ。野乃佳は彼女の両親が心配するほど好奇心が強く、強い霊能力があって神隠しなどの不可思議なことが多い花梨にすごく友好的で不思議な出来事を共有してくれる親族以外の他人であった。スタンド使いではないのだがそういった不思議や奇妙なことに恐れが無い。
野乃佳の言うとおり力を抜いてみた。知らない他人なうえに胡散臭い紳士と行動するという状況だがそのおかげでずいぶんと楽になった気がする。
この時に花梨は深く考えすぎず、力を抜くことを覚えた。
こうして花梨が気を抜いたことでネアポリスを舞台としたクリスマスのドタバタ劇が始まるのだが、5歳にして色々と張り詰めて自覚無く疲れていた花梨は知る由もない。
5歳でなんか色々と思考の袋小路に入っていた花梨。
このクリスマスイベントを経て、子供らしく、そして3部編ぐらいに暢気さとかを覚える予定。
あと、地味に幼馴染みで親友の野乃佳が影響してきます。
このネタ書いてて野乃佳という人物がスタンド能力抜きで親族以外の人生の恩人の立ち位置になりそうだなと思った。
なお、野乃佳はスタンド使いではなく好奇心が強いだけの普通の人間です。スタンド能力を始めとした不思議を恐れずむしろ好むため霊能力かつスタンド使いの花梨は最高の興味の対象。
次回は、オリ幹部とその部下のスタンド使いも登場させてミスタも捜索・追跡者として出動させようと思います。
あと花梨の保護者(?)として立ち回るムーディーブルース(※コピー)が迷子の花梨の捜索と保護を邪魔する予定。
このムーディーブルースについての設定を練る必要がありそう……。