ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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タイトルで壮大なネタバレ(?)をぶち込んでみる。いや、ネタバレかどうかも怪しいね、これ。





その血の運命~前世より"ごきげんよう"

決戦の覚悟で臨んだアカイさんとのバトル……三本先取ルールでは私の勝利に終わったけど、私はそのままかつて辛酸を舐めさせられたマガイマガドへのリベンジに挑むことにした。

その過程で、私はついにきずなへんげを完成させることに成功した!新しく生まれ変わった姿、【極み照らすジンオウガ】となったことで、私はより心に近い距離でジンオウガを感じられる……これなら、メガマガイマガドにだって勝てる!

 

『よっしゃぁああっ!やってやろうぜ、ショウ!!』

 

「もちろんだよ、ジンオウガ!見せてやろうじゃん……私とあなたの力を!!」

 

『応っ!!』

 

よしっ、ジンオウガもやる気十分だ!負けないぞ!

 

「……ショウのやつ、さっきから誰と話してるんだ?」

 

「誰って……そりゃあジンオウガですよ、ニールさん。他に誰がいるんです?」

 

「ちょ、ちょっと待てシズカ……ジンオウガはモンスターだぞ?ジンオウガがショウの言葉を理解しているならまだしも、その逆はさすがにありえないだろ」

 

「さぁ、どうでしょう?今の二人は絆の力で心身共に一つとなっています。案外、テレパシーに近いものを感じているのでは?」

 

「そういうものか。……ん?二人?ジンオウガは人間では……」

 

「(頑張ってショウ、光輝さん……今の二人なら、きっと勝てます)」

 

心から理解できる……これが、ジンオウガの心、ジンオウガの気持ち、ジンオウガの思考……すべてが伝わって来る!これがジンオウガなんだね……。

 

『イェーイ!お前ら見てるかー!どうだ?この姿、美しいだろ?当然だ、ショウリスペクトのこの意匠!すごいぜ……チビッ子が熱中するわけだ。肉親は、身内の能力を過小評価する癖があるというが、ありゃ嘘だな。見事ショウをここまで育ててくれた!才能の塊の人間を育てて、なんとするか!やろうぜショウ!君が俺になるなら、俺は……俺も、君になる……!マガイマガド、覚悟しろよ……この猫野郎!お前を殺す……今の俺たちはかーなーり、強い!この一撃、死ぬほど痛いぞ。お前は俺達に勝ってるんだ……悪く思うな。一回は一回だ。うーん、セリフが噛み合うと気分がいい!さ、戦闘をしに行くぞォ デッデッデデデデ(カーン)』

 

……ちょっと、バトルに集中してもろて。

 

「フッ……フハハハハ……ハーっハッハッハ!!」

 

「アカイさん?」

 

「流石、流石だ……見事、という他ない。かくなる上は、俺も本気で殺らせてもらおう。これよりは一切容赦しない。君への負荷など鑑みることなく、全力でジンオウガを叩き潰す。殺意と敵意をもって君と相対し、撃滅する」

 

「……なるほど、本気で……」

 

「あぁ……本気で、殺してやる……」

 

その瞬間、アカイさんの殺気というか、圧が私に襲いかかる。ジンオウガも感じ取っているようで、冷や汗を流しているのが感じられた。

……というか、アカイさんの背後に紅いミラボレアス、ミラバルカンが見えたような……?

 

「ヤバイですわ、姉様!」

 

「くっ……アカイもいよいよ、本気を出すみたいね……!」

 

「大変だねショウも」

 

「殺してやるぞヒューイ」

 

「Σ(゚д゚lll)」

 

「なんで!?なんで俺なの!?」と騒いでいるヒューイさんを他所に、アカイさんの闘気がメガマガイマガドにまで乗り移ったかのように戦意が高揚している……気を引き締めないと、本当に持って行かれそうだ。

 

「さあ……始めようか!マガイマガド!」

 

「ジンオウガ!」

 

「ヴルガアアァァァ!!」

 

「ワオオオォォォン!!」

 

「「きりさく!」」

 

 

推奨BGM

【蒼鬼序章~蒼鬼テーマ】~新 鬼武者 DAWN OF DREAMS~

 

 

まずは小手調べ。完全体になったのはこれが初めてだから、これまでの未完全状態とどう違うのか、確かめないと!

ジンオウガが右足で切り込めば、メガマガイマガドも右足で応戦してきた。雷爪と腕刃がぶつかり合い、火花を散らす。一度弾かれ合うが、メガマガイマガドはすぐに左の腕刃を振り上げてきた。私が咄嗟に上体を反らせば、ジンオウガも体を反らして掠めるように回避する。そのまま、ジンオウガと一緒に頭を突き出せば、メガマガイマガドに頭突きを食らわせられた!だが、反撃に振るわれた右の腕刃は躱しきれずに食らってしまった……痛い!

 

「ガウゥッ!ワオゥン!(……ってぇな!ショウ、平気か!)」

 

「私は大丈夫!もっと攻めていこう!雷光閃弾!!」

 

「ワオォン!(よっしゃあ!)」

 

「ちっ、鬼火弾!」

 

「グルオァ!」

 

ジンオウガから放たれる雷撃弾がメガマガイマガドに命中!反撃の鬼火弾が迫って来るけど……!

 

「なんのぉ!」

 

「ワン!(無駄ァ!)」

 

私の腕とともに突き出されたジンオウガの前足が、鬼火弾を受け止める!!

 

「なに!?」

 

「返すわ!」

 

「ワオォン!(SFFだ!)」

 

「グルァ!?」

 

「跳ね返した……いや、投げ返したのか!」

 

鬼火弾はメガマガイマガドの足に当たって爆発!その衝撃でメガマガイマガドは転倒した!

 

「畳み掛ける!轟雷跳弾!!」

 

「ワオゥン!(押し潰す!)」

 

「避けろ!」

 

「グルァ!」

 

全速で駆け出し、一気に跳躍して押し潰そうとするが、間一髪でメガマガイマガドが起き上がり避けられてしまった!

 

「怨嗟突き!」

 

「グルオラ!」

 

「(腕で防ぐ!)」

 

「ワン!(間に合わせらぁ!)」

 

ジンオウガも素早く立ち上がりつつ、腕に電気を集めて盾を形成すると怨嗟突きを受け止めた!……が、急ごしらえだったからなのか大勢が悪かったのか、それでも吹っ飛ばされてしまったけれど。

 

「ジンオウガ、大丈夫?」

 

「ワンワン!ワオォン!(モーマンタイ!屁のツッパリはいらんですよっと!)」

 

おお、言葉の意味はよくわからないけど、とにかくすごい自信だ!……で、実際のところどういう意味?

 

「(いや、知らん)」

 

知らんのかいっ!

 

「まだまだ余裕そうだな、ショウ!かえんほうしゃだ!!」

 

「グオラアァァァ!」

 

「かみなり!」

 

「ウオォォォン!(ふんぬらばー!)」

 

かえんほうしゃとかみなりの激突!爆発が起こって視界が遮られる!

 

「(どうする、ショウ?動くか?)」

 

「(そうだね、機先を制するよ!)でんじほう!」

 

「ワオン!(よしきたっ!)」

 

ジンオウガから放たれたでんじほうは、まっすぐメガマガイマガドへと飛んでいく!煙を突っ切った段階で、アカイさん達もようやく気が付いたようだ!

 

「当たれば麻痺か……!マガイマガド、れんごくだ!」

 

「グルアアァァァァ!!」

 

相手を炎で包み込むれんごく……それを防御に使うなんて!でんじほうは炎に巻かれて消滅……だが!

 

「尖衝雷閃!」

 

鬼炎(きえん)走駆(そうく)!」

 

ジンオウガが電撃の衝角を作り出せば、メガマガイマガドは鬼火で巨大な鬼面を作り上げる。双方、同時に突撃し、ジンオウガの衝角をメガマガイマガドの鬼面が口を開けてその顎で受け止めた!炎と雷が周囲へ飛び散り、状況は押し合いへと変化した!

 

「うぐぐ……ま、負けるかぁ!」

 

「ワウン!ウオオォン!!(力勝負で!負けるわけにはいかないぜ!!)」

 

「やるなぁ、ショウ。そしてジンオウガ!」

 

「グルルル……!」

 

この拮抗状態はいつまで続くか……そう思い始めた頃になって、ようやく技が臨界を超えたようで爆発を起こした。弾け合い、再び距離ができた。さて、どう攻めようか……。

 

「こちらから仕掛ける!龍怨螺旋突き!」

 

「グルオラァ!」

 

こちらが攻め手を考えている間に、アカイさんは既に指示を出し終えている!

 

「(直撃コース……)」

 

「避けてみせて!」

 

突撃を開始するジンオウガ。迫る尾の槍を、次々と回避する!

 

「軸線を合わせて……」

 

「(足と!!)」

 

「同時攻撃を!」

 

「(なんだ、動きが急に……!)鬼怨斬!」

 

二撃、三撃、四撃、五撃、六撃……七撃目を前方斜めへ跳躍回避しつつ、雷光閃弾を対象の向こう側へ。

着地、放電しつつ突撃。対象がこちらへ振り返り……直後、放電に引き寄せられて雷光閃弾が反転。

 

「(今迄の様には行かねぇ!)」

 

「そうでしょ?ジンオウガ!雷鳴拳!」

 

攻撃は雷鳴拳。かみなりパンチを超える、霹靂の拳。腕刃と激突、迫る雷光閃弾が尻尾で打ち払われた……ここ!

 

「腕を引いて」

 

「(肩、借りるぜ)」

 

「「跳ぶ!/(跳ぶ!)」」

 

受け止められた右足を下げて迫り合いをキャンセル左足を対象の肩に乗せて、そのまま跳び上がる!!

 

「(もっとだ……かみなりパンチよりも、プラズマフィストよりも、雷鳴拳よりも強く!強い、強い稲妻の拳を!)」

 

「(ぶち込んでやるぜ、ショウ!)」

 

高く跳んだジンオウガが、辺り一面に雷光閃弾を放ち……それを、再び自身の右前足に収束する!昼光色よりも、さらに明るい……もはや純白とも呼べる純粋な色に染まった電撃が、ジンオウガの右前足を包み込む!

体を捻って構えに入れば、電撃によって形成された足は一気に巨大化する!!

 

「いっけえぇぇぇ!かみなりパンチィ!!」

 

「ウオオオォォォォォォン!」

 

大回転で勢いをつけて、メガマガイマガドの背中に思い切り拳を叩き込む!!瞬間、激しい閃光がフィールドを包み込み視界が真っ白になった!!

 

「うわあああ!?」

 

「こ、これは凄いな……!」

 

「師匠、大丈夫ですか!?」

 

「俺は平気だ。シズカも大丈夫そうだな」

 

「(姉様を心配するのはアタシの役目なのに!!)」

 

先輩やシズカさんらが必死に耐えている中、ヒューイさんとシロちゃんは平然としている……やっぱりあの二人だけ、まるで別次元だ。普通じゃない。

ジンオウガが閃光から飛び出してきた。電撃が収まった先では、メガマガイマガドが肩で息をしている。だいぶ追い詰めることができたようだ。

 

「やるな……それでこそだ、ショウ。こちらのマガイマガドももはや限界に近い……ここいらで一つ、決着としよう」

 

「……わかりました」

 

「では」

 

「はい」

 

「「奥義装填!!」」

 

アカイさんはマガイマガドが限界だと言っていたけど……表に出していないだけで、実は私たちもいっぱいいっぱいになりそうなのだ。これまでのバトルからは想像できないほどに疲労感がある……それに加えて、ジンオウガが受けたダメージのフィードバックもあるから、余計に疲労感を感じやすいのだ。

なるべくポーカーフェイスを維持しているけど……アカイさん、意地悪そうな笑顔をしてるなぁ。あれ、こっちの限界に気づいてるよね?本当、ズルい人だ。

 

「大鬼火怨み返し!!」

 

「雷迅っ!!」

 

お互いにさらに距離をとり、鬼火を纏ったメガマガイマガドが宙へ躍り出て、ジンオウガも駆け出し加速する。鬼火の隕石と化したメガマガイマガドと、両前足を揃えて雷の矢と化したジンオウガが、激突する!!

 

「ぐうぅぅぅ……!」

 

「ウウゥゥゥ……!」

 

「「いっけえぇぇぇ!/(いっけえぇぇぇ!)」」

 

最後の最後まで!全力で力を振り絞る!!最後、わずかにメガマガイマガドを押し返したかと思うと、その直後に爆発を起こした。

 

爆発の光に目を焼かれそうになったその時、私の眼前には別の景色が広がっていた…….

 

 

 

 

 

「んじゃあ、来年までね」

 

《は~い。バイバイ、コウちゃん》

 

 

 

 

「今年はそっちに帰れそうだよ」

 

《楽しみだねぇ、お正月!》

 

 

 

 

「ん……?」

 

「おい……!ヤバい、逃げ――」

 

 

 

 

「いやああぁぁぁ!!コウちゃん、コウちゃん!なんで!どうしてぇ!?」

 

 

 

 

「ウオオオオォォォォォォォンッ!!」

 

 

 

 

「コウちゃん……私も、そっちに……逝くねぇ……」

 

 

 

 

「じん……おうが……。『ジンオウガ』……?」

 

「ガオウッ!」

 

 

 

 

「(……あぁ、そっか。私は、ジンオウガは……お母さんは……)」

 

少し惚けていると、爆煙の中から影が二つ落下した。一つはジンオウガ、一つはメガマガイマガドだ。ただ、メガマガイマガドはメガシンカが解除されているから、戦闘不能は必至。すると、私のジンオウガが立てるかどうかにかかっている。

 

「ジンオウガ……!」

 

「立つか……倒れるか……!」

 

「(光輝さん……)」

 

「……て……立て……立って、立ち上がれ!ジンオウガ!ジンオウガァ!!」

 

私の心はまだジンオウガと繋がっている……!ここで私が呼びかけなくちゃ、誰がジンオウガを起こすというんだ!!

お願い……頼む……私はあなたを信じてる!だから立って!ジンオウガ……!

 

 

光輝叔父さん!!

 

「……ワン(……呼んだ?)」

 

ムクリ、とジンオウガが起き上がった。上体を起こし周囲を確認して、倒れるマガイマガドを見て、それからゆっくりと時間をかけて四肢で立ち上がった!!

 

「やった……やった!やったよジンオウガ!!」

 

「ワンワン!」

 

「シロ」

 

「ん。……マガイマガド、戦闘不能!ジンオウガの勝ち!よって勝者、ショウ!!」

 

シロちゃんから勝利宣言が出された直後、ジンオウガの姿が【金雷公】に戻った。さらにその直後、ジンオウガがぶっ倒れてしまい、私も一緒にぶっ倒れた。なんていうか、うん……すっごい疲れた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「ショウ!だ、大丈夫か!?」

 

「せ、先輩……はい、ただめちゃくちゃ疲れました……」

 

「つ、疲れ……よかった、もしかしたらまたショウの身に何かあったんじゃ……」

 

「えへへ……もう今更何が起こっても、私は驚きませんけどね」

 

「俺が!心配するの!!」

 

先輩がいの一番に駆け寄ってくれた……嬉しい。ちょっと意地悪しても許してくれるかな?

 

「お疲れ様です。かっこよかったですよ」

 

「ワン!」(*゚∀゚*)ニパー

 

「……兄さんの次くらいには」

 

「…………」( ゚_゚ )スン……

 

「ふふっ、ここは譲れませんから」

 

シズカさんはジンオウガに話しかけてた。……敬語で話してるけど、やっぱりそういうことなのかな。あの景色の中で、一瞬だけど見えたシズカさんに似た男の子……。

 

「いやはや……負けてしまったか。すまんな、マガイマガド。俺もどうやら、まだまだ青かったようだ」

 

「グルル……」( ´゚д゚`)

 

「……は?"紅龍が青いとは片腹痛い"?……処すぞ」

 

「グオラァ!?」Σ(゚Д゚;!

 

「アカイさん」

 

「む」

 

私は先輩に肩を貸してもらいながら、アカイさんの方へ歩いていく。アカイさんはすぐにこっちに気づいてくれて、マガイマガドをボールに戻していた。

 

「アカイさん、ありがとうございます。おかげで私は、忘れてはならないことを思い出せました。それに、ジンオウガとのきずなへんげも……」

 

「あぁ、こちらこそな。侮っていたわけではなかったのだが、勝機も勝算もあったのはたしかだ。だが、その上で負けた……完敗だ、これ以上にない完敗だった」

 

「アカイさん……」

 

「……あとは、黒龍襲撃に備えて各々で鍛えるだけだ。だが、黒龍に挑むとなれば、必ず奴が立ち塞がる」

 

「クロノ、ですね」

 

「ああ」

 

クロノ……次に戦う時が、彼との決戦になる。クロノを乗り越えれば、その先はミラボレアスだ。

 

「私、絶対にクロノに勝ちます。そのためにも、ジンオウガ達も私自身も、全力で鍛えます!」

 

「あぁ、その意気だ。君には期待しているんだ……頑張ってくれ」

 

「はい!」

 

ひとまずこの場は解散になった。その夜、私は一人で放牧場を訪れた。

 

「ジンオウガ」

 

「ワン?(どしたん?)」

 

あれから、ジンオウガとは簡単ではあるがテレパシーのようなやり取りができるようになった。だからこそ、ジンオウガに聞きたかったんだ。

 

「ジンオウガって、お母さんの前世でお母さんの従兄弟だったコウキさん?」

 

「…………」

 

ジンオウガは即答してくれなかった。けど、しばらくしてから答えが返ってきた。

 

「(……敵わんなぁ、ショウには。そうだぜ、俺の前世は稲妻光輝。ショウのお母さんであるヒカリの前世、稲妻光梨は俺の従姉妹さ)」

 

「そうだったんだ……」

 

「(驚いたか?)」

 

「うん、すっごく」

 

ジンオウガはまるで悪戯っ子のようにニヤッ、と笑った。私は……。

 

「ジンオウガ……ううん、コウキ叔父さん」

 

「(おう、ショウよ。俺の名前は『光り輝く』と書いて光輝ってんだ。ちゃんと発音しておくんなまし)」

 

「お、おくんなまし……?えっと、わかった。光輝叔父さん、今までごめんなさい」

 

「(え、なんで?)」

 

「だって、私……叔父さんのこと何も気づかないで、無茶なことも指示したり、出会った時なんて一番迷惑かけちゃったし……」

 

私がやりたかったことは、叔父さんに謝ることだ。それはもうとにかく迷惑をかけまくってるし、クロノのイビルジョーとの戦いの時なんて、角を折られる重傷を負わせてしまった。とにかく、まずは謝ることから始めたいと思っていたので、これ幸いと早速行動に移すことにしたのだ。

 

「(ショウ……)」

 

「うん……」

 

「(このおばかちん)」

 

「へっ?……あ痛っ!?

 

いきなり罵倒されて驚きに顔を上げると、すかさず鼻先で小突かれた!うぅ……なんか、すごく覚えがある光景……。

 

「(寝言は寝てから言うもんだぜ?迷惑なんていくらでもかけな。前世での関係とはいえ、俺たちは身内……つまりは家族だ。家族からかけられる迷惑なんて、タチの悪いもんじゃなけりゃ大歓迎さ。

そりゃあ、死んだらモンスターで前世の従姉妹の娘がやってきてと、波瀾万丈が可愛く見える大展開ではあったが、それも人生のスパイスってやつさ。……ん?今は人間じゃないから人生じゃなくて竜生か?)」

 

なんだか、こういうところはお母さんにそっくりだ……これが、血の繋がりなんだね。

 

「ふふっ……それ、今大事なこと?」

 

「(大事だぞ!己が何者かという定義が乱れた日にゃ、明日には自我崩壊を起こすかも知れないだろ!?だから、どんな生き方になろうが俺は、"俺"が"俺"であることを誇りに思っている!……まぁ、前世から置いていったものに関しちゃ、申し訳なさもあるが)」

 

「前世……」

 

そうだ、前世……是非とも叔父さんから聞いてみたかったんだ。

 

「光輝叔父さんの前世の話、聞きたいな」

 

「(ええんか?たかだか十七年の短い人生だが……)」

 

「それでも、だよ。光輝叔父さんから見た、前世のお母さんの話も聞きたい」

 

「(それなら、お相子だな。俺も、シンオウ地方で転生したミツ姉のことを聞いてみたかったんだ。……そうだ、あいつらも呼ぶか)」

 

叔父さんはそう言うと、牧場の奥へ歩いて行った。しばらくすると、叔父さんはゼルレウス達を連れてきた。

 

「(語り部がいるなら、聞き手もいるべきだろ?)」

 

「そうだけど、どうして……?」

 

「(こいつらみんな、俺のダチだからな――いでぇ!?)」

 

叔父さんがそう言って振り返った直後、ゼルレウスに頭突きされていた。それからグラビモス、ベリオロス、ラギアクルスと揃ってボコボコにしばき始めてしまった……。

 

「(いて、いてぇ!やめろオメェら!何すん――いだぁ!?やめ、ヤメルルォ!!)」

 

「あぁ!待って待って!みんなストップ!ラ・ロ、手伝って!」

 

「グアォン」

 

ラ・ロと協力してなんとかゼルレウス達を引き剥がすことができた。……叔父さん、ピクピクしてるけど……大丈夫、かな?

 

「えっと、叔父さん?大丈夫……?」

 

「(ふ、ふふ……大丈夫か、だと……?この俺をぎゃふんと言わせたければ、その三倍は持って来い。……ぎゃふん)」

 

「ダメみたいだね」

 

……あ、ゼルレウス達が驚いた顔をしてる。そういえば、言ってなかったっけ。

 

「あのね、私。ジンオウガとテレパシーみたいに話ができるようになったの。多分、きずなへんげの影響……かも。それで、ジンオウガが私のお母さんと前世で従兄弟だった光輝さんだってわかったの」

 

「(まぁ、みんな知ってるけどな)」

 

「……へ?」

 

どういうことなのか叔父さんに聞いてみると……衝撃の真実が明かされた!!なんと、ゼルレウス達は……いや、ゼルレウス達も前世では人間であり、さらに光輝叔父さんの友人だったというのだ!!

ゼルレウスの前世は、赤羽焔さん。赤い色が大好きなヒーロー気質な人で、幼馴染もいる人生勝ち組(?)らしい。ゼルレウスって青いけど、それはいいのかな?

ラ・ロの前世は、陸上葵さん。さっき言った焔さんの幼馴染さんで、焔さんとは亡くなった時期はズレてたそうだけど、転生後に再会できたらしい。……うん、愛が重い理由がよくわかったよ。

グラビモスの前世は、岩木剛太さん。なんと2回り年上のお兄さんの子供たち十人越えの人数の面倒を見ていたらしい!どうりで面倒見がいいわけだ……。

ベリオロスの前世は、氷室剣介さん。大企業の御曹司だったそうだけど、そんな実家に嫌気がさして飛び出すゴーイングマイウェイなところもあったみたい。それと、前世では謂れ無きロリコン疑惑を度々向けられていたらしい。……今生も十分ロリコンな気が……いや、言わないでおこう。

そしてそして!ラギアクルス!前世の名前は、水橋流静!そう、シズカさんのお兄さんの流静さんだったのだ!!妹さんにはお世話になってますと頭を下げたら、「こちらこそ」とばかりに頭を下げてくれた。流静さんはこの場の中では一番のインテリらしく、学校の偏差値も一番だったみたい。

そして、この場にはいない……稲妻光梨。前世では光輝叔父さんの従姉妹で、今生では私のお母さん。とても身近なところで、身近な人を亡くした人達……こうして転生後に出会えるなんて、なんて因果なんだろう。

 

「(ちなみに、結果論とはいえ俺達が転生できたのはアルセウスのおかげだぜ)」

 

「嘘!?」

 

「(マジデジマってな。アルセウスがこの体をヒスイに持ってきたとき、ちょうど死んでた俺らの魂が入り込んだらしい。それで結果的に転生できたってわけよ。あ、葵は違うみたいだ。葵の転生にはミラルーツが絡んでるらしい)」

 

「アルセウス……ミラルーツ……」

 

アルセウス……一瞬でも邪神とか考えてごめん。家族と再会させてくれてありがとう!そしてミラルーツはシロちゃんを介して色々と助けてくれてありがとう!!

あ、シズカさんは私よりも先に皆の正体に気がついたらしい。……愛の力ってすげー。

 

「(ショウ、俺達のことだが……未来を思えば、俺達の存在は抹消したほうがいいと思う)」

 

「……物理的にじゃなくて、歴史的に消すってこと?」

 

「(そうだ。自分で言うのもアレだが、俺達は普通のポケモンよりも強すぎる。そんな存在がいつまでものさばってちゃあ、既存の生態系を壊しかねない。ヒスイに骨を埋めるにせよ、どこか遠い地方へ行くにせよ、俺達の存在が未来のシンオウ地方にまで伝え残るのはまずい。どっかで聞きかじった輩が、俺達を探そうとするかもしれん)」

 

「……そうだね」

 

「(骨も残さないほうがいいだろうな。化石になって復元されちゃあ、たまったもんじゃない。ラベン博士に交渉して、全てが解決したあとで俺達モンスターのデータを破棄してもらえるように頼んでくれ)」

 

「……わかった」

 

「(そんな不満げな顔をするんじゃない。これも未来のため……ショウとミツ姉が生きる、シンオウのためだ)」

 

「わかってるよぉ」

 

そうは言っても、やっぱりもったいないと思う。確かによからぬ人はジンオウガ達の痕跡を探すだろうけど、きっとよからぬ人ばかりじゃないと思う。例えば、シンオウチャンピオンのシロナさん。考古学者でチャンピオンのあの人なら、きっとジンオウガ達の情報を悪用したりはしないはずだ。

 

「……それを言ったら、ダイケンキ達もどうしよう。あの子達も普通のポケモンから随分とかけ離れちゃったし……」

 

「(あー……それなら、どこか別の地方に連れ出すか?データの破棄は必須だが、生涯くらいは保証されてもいいだろ。ヒスイ以外の何処か遠く……人が容易に近寄れない場所がいいな)」

 

「わかった。全部終わったら、そんな場所を探してみるね」

 

「(頼んだぜ)」

 

ダイケンキ達の引越しも必要かぁ……過ぎたるは猶及ばざるが如し、とも言うし、彼らの存在が未来で新たな火種になっちゃ笑い話にもならない。引越しは要検討、だね。

 

「今度はシズカさんも一緒に話したいな」

 

「(俺達はいつでもいいぜ。……おい、流静。いいじゃねえかよ、せっかく縁が繋がったんだ。静香もいい加減に、元の世界のことを隠しながらはしんどいだろうしな)」

 

「そうですよ、流静さん。私はお二人兄妹に助けられてきました。その時のお礼もまだですし、まだまだ話し足りないことばかりです!シズカさんにも、もっと遠慮なく話をして欲しいですし……」

 

ちょっとあざとげに小首を傾げて「ダメですか?」と言ってみれば、流静さんは「ぐぬぬ」と言いたげに唸っている。……あとひと押しか?

 

「何してるの、ショウ」

 

「あ、シズカさん」

 

「」(。Д。」)」

 

あ、流静さんがひっくり返った。

 

「随分と遅くまで起きてるね。何してるの?」

 

「光輝叔父さん達と話をしてました」

 

「……なんて?」

 

シズカさんにもテレパシーで光輝叔父さんと繋がり、そこから芋づる式にみんなの前世を知ったことを話した。すると、それまで無表情に近かったシズカさんが表情を崩した。

 

「そっか……じゃあ、私も遠慮はいらないね。ショウ、改めてよろしくね」

 

「それが素なんですか?なんだか、可愛らしいですね」

 

「(。_。(゚_゚(。_。(゚_゚ )」

 

「ちょ、やめてよ……って、兄さんも頷いてないで!」

 

シズカさん……ううん、静香さんの表情もすっかり豊かになって話してくれるようになった。この繋がり……なんだか、暖かいな。

 

「不思議ね……またこうして知ってる人同士、あるいはその関係者と出会えるなんて」

 

「それ、私も思いました。静香さんと流静さんには兄妹揃って助けていただいて……感謝してもしきれないです」

 

「それはお互い様だよ、ショウ。私もショウと出会って、そしてショウについていかなかったら、兄さんと再会することなんてできなかった……。だから私もショウに、ショウとの出会いに感謝してるの。ね、兄さん?」

 

「グルラァ」

 

「(もちろん、俺も感謝してるぜ。前世で悲惨な最期を迎えたミツ姉も、第二の人生で家庭を築いて幸せに生きてるって知って、心底安心してるんだ。俺がミツ姉を泣かせたようなもんだからな……だから、今が幸せそうで良かった。ありがとうな、ショウ)」

 

「うん!!」

 

……あぁ、こんなにも胸が暖かくなったのはいつ以来だろうか。この幸せを、絶対に守らなきゃいけない。そして、願わくば……お母さんと光輝叔父さんを再会させてあげたい。一度だけ、一日だけでもいいから、未来のシンオウへ連れていけないかな……。

 

「(ショウ)」

 

「あ、うん。なに?」

 

「(俺達は絶対に負けない。必ずミラボレアスを倒す。だから、ショウも俺達を信じてくれ。俺達とショウ達……力を合わせれば、必ずあんちくしょうだってぶっ飛ばせる!だから……勝とうな)」

 

「うん!」

 

私は、この月下に誓う。必ずクロノにも勝ち、ミラボレアスにも勝ち、このヒスイに……いや、世界に平和を取り戻してみせる!!

待ってろ、クロノ……次に戦う相手は、お前だ!

 

「(それはそれとして、ショウ)」

 

「なぁに?」

 

「(今度、テル少年も連れてきてくれ。ショウの家族として、一度話し合わないとな……!)」

 

「いや、何の話!?」

 

この後滅茶苦茶夜更けまで話し込んだ。

 

 

 

 




ついにショウにまで身バレしました……が、あまり支障がないようで安心ですね。叱り方が同じなのはさすが血族。

というわけで、ジンオウガ族の紹介です。

ジンオウガ希少種
種族:技巧牙竜種(竜盤目 四脚亜目 雷狼竜上科 ジンオウガ科 技巧種)
別名:天狼竜(てんろうりゅう)
英語表記:bright Zinogre
危険度:不明。可及的速ヤカナ検証ヲ求ム
狩猟地:塔の秘境
肉質・耐性タイプ相性
フェアリー/かくとう
弱点 火:◎ 水:× 雷:△ 氷:△ 龍:○
四倍:なし
二倍:ほのお、どく、ひこう、エスパー、はがね、フェアリー
半減以下:でんき、こおり、かくとう、いわ、むし、あく
こうかなし:みず、ドラゴン
等倍:上記以外全て

塔の秘境で新発見されたジンオウガの希少種個体。それまでまったく存在を認知されなかった希少中の希少。
ジンオウガの体の内、碧色は灰色、黄色は白に、体毛の白は青に変化している。さらに蓄電殻にあたる部位は電気の代わりに「光」を蓄えることができる「集光殻」になり、その神々しい輝きから【天狼竜】という別名が名付けられた。
全身から吸収した光を前述の集光殻に蓄え、一気に放出することで光の粒子を発生させることができる。この光を集める原理としては、新大陸で発見された導蟲の光を利用している。導蟲の特徴である特定の物質や匂いに反応して群がる性質を利用して導蟲をかき集め、そこから発せられる光を吸収しているらしい。そのことから、一説では「新大陸生まれのジンオウガが現大陸へ移動した個体」とも言われている。
また、周囲が粒子で満たされている状態で攻撃を受けた際、自らを光の粒子へと変化させて回避しつつ、瞬間移動もできる。その原理は『未だに不明』で、ギルドが総力を挙げて解明中である。
現在、情報提供のため捕獲者である赤衣の男と交渉中である。


【極み照らすジンオウガ】
メゼポルタギルド管轄域で発見された、雷狼竜ジンオウガの極めて特殊な個体である【極み吼えるジンオウガ】に限りなく似た姿の別個体。
【極み吼えるジンオウガ】と似た特徴を持つが、爪や角といった武器となる部位よりも特徴的な変化は、なんといってもその容姿である。
前足や後ろ足、しっぽなどの黄色い甲殻は空色に変化していて、黒い稲妻模様が所々に走っており、碧色の鱗は銀色になっているだけでなく、体毛の変化が特に著しい。前足と後ろ足の毛は黄色、後頭部から背中にかけては濃紺、さらに尻尾の付け根からは赤という、なんともバラエティー感あふれるカラーリングへと変化している。どうやらこれは操り手となる少女の特徴が色濃く表れているようで、少女が身につけているものや髪色が表れているそうだ。
このモンスターも要調査対象だが、肝心の操り手の少女とは連絡が付かず、またジンオウガも行方不明となっているため、目撃したハンターからの証言のみでこの記事を執筆するものとする。
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