ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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物語もいよいよ大詰めです……!


宣戦布告!!

ついにモノにしてみせた、きずなへんげ!ジンオウガとのシンクロ率もより高まり、なんとジンオウガとテレパシーができるようになった!

あれから二週間。ジンオウガ……ううん、光輝叔父さんとの会話のおかげで、お母さんにまつわるいろんな前世のお話を聞かせてもらうことができた。ゼルレウスの焔さん、グラビモスの剛太さん、ラギアクルスの流静さん、ベリオロスの剣介さん、ラ・ロの葵さん、ハンターの静香さん、私のお母さんの光梨さん……こうしていろんなところでいろんな縁が繋がって、一度は解れたけれどまた繋がることが出来た。……あぁ、お母さんに無性に会いたい。今この場に召喚して、みんなと再会させてあげたい。泣いて喜ぶお母さんが容易に想像できる……。

それにしても、お父さんと叔父さんの名前が一緒って、とんでもない縁もあったもんだ。

 

それはさておき、今私は放牧場に来ている。光輝叔父さんと話ができるようになってからは、もっぱら放牧場にいる私だ。叔父さんとの話が面白くて、特に用がなくても足繁く通ってしまう。

あ、テル先輩はまだ呼んでないよ。どう考えても叔父さんの親バカが暴走しそうだったからね。それどころか、先輩も私に隠れて(隠せてるとは言ってない)アカイさんと修行してるみたい。今じゃ、ヒューイさんも混じってポケモンを鍛えているようだ。……そのうち、先輩の手持ちポケモンもヒューイさんみたいになりそう。

 

『それは楽しみだなぁ。ま、ミツ姉仕込みのてぇんさいポケモントレーナーのショウには勝てんよ。せめて乱数調整を体得してからかかってこい』

 

「あんまり持ち上げないでよ、叔父さん。そういうの、慢心って言うんだよ」

 

『慢心せずして何が(チャンピオン)か!!』

 

「私、チャンピオンじゃないんだけど?」

 

あ~ヤバい、この中身のないスッカスカな会話が楽しすぎる。叔父さん達、前世じゃ呆れるくらいこんな会話をしてきたんだろうなぁ。……羨ましい……アルセウスに頼んだら、お母さんの前世の世界につなげてくれないかな?

 

「何考えてるのか容易に想像つくけど、やめたほうがいいよ。あの世界に行っても顔が割れてるの私だけだし、なんなら光輝さん達はプログラミング上の架空生物だから」

 

『おまけに説明すんのも面倒だしな』

 

「グオグオ」

 

「グアオン」

 

私の考えを読んだ静香さんに釘を刺され、叔父さんも静香さんに同意していた。その隣で焔さんと葵さんも頷いている。

 

「そんなことより、私はシンオウ地方に行きたいかな。今世の光梨さんに挨拶しときたいし」

 

「グラァ」

 

「あー……けど、私のパルキアは権能を失っているし、アルセウスも生きてるのかどうか定かじゃないし……」

 

「いや、死なないでしょあの邪神」

 

『いや、死なんだろあの邪神』

 

「ガオ」(´ー`)ウンウン

 

「……辛辣ですね、皆さん」

 

前々から気になってたけどあえて尋ねなかったんだけど……なんでみんなそんなにもアルセウスに当たりがきついの?そりゃ許可なく勝手に人を呼びつけておいて放任するし、具体的に何がどうとか説明もなく問題解決に当たらされたし、こっちが命懸けで手探りこいてジタバタあがいているのを見てただけとはいえ……。

 

『戦犯だろ残当』

 

「邪神でしょ常考」

 

「ヴルアアアアアアアアッ!!」

 

「あー!剛太さん落ち着いて!またじばくが暴発しちゃうから!あー!」

 

定期的にガス抜きしているとはいえ、メンバーで唯一のじばく使いだから!興奮しすぎると"じばく"ならぬ"ごばく"が起きちゃうから!世話好きで親身になってくれる剛太さんだけど、キレる度に体力減ってたらシャレにならないから!!

 

話は変わる。今度は静香さんが転生ではなく転移した件についてだ。

 

「ここしばらく、兄さんとひたすら討論を重ね続けたの。時空の裂け目か、ミラボレアスか、はたまたその両方か……私はミラボレアスが原因かなと思ってたけど、100%そうだというわけではないっぽい」

 

「やっぱり、ギラティナとウォロも絡んでます?」

 

「そうね。今代のミラボレアスは随分と用心深い……言えば、慎重な性格。時空の裂け目が利用できるかどうか、実験しようとしたのかもしれない。その実験に、私は巻き込まれたと考えている」

 

『……ってことは、シュレイド城に時空の裂け目が現れたのは偶然じゃねぇってことか?ミラボレアス自身が持つ時空渡りの力で、時空の裂け目を引き寄せたと?』

 

「グルオァ」

 

流静さんも頷いてる……アカイさんはミラボレアスが時空の裂け目の存在に気づいて、利用しようと計画したそうだけれど……。

 

『んー……するってぇと、どれもこれも計画的犯行ってわけか。やってくれたじゃねえか、あの黒龍』

 

「でも、ミラボレアスが時空の裂け目の存在に気付けたのは偶然だろうって、兄さんが。これ幸い、渡りに船とばかりに利用された……」

 

『アカイのでっち上げも、的を得ていたってわけか』

 

「いや、あの男のこと……多分だけど、気づいててあえてあの場で説明するまで黙っていた可能性がある」

 

『いやいやまさかそんな……いや、ありえるな』

 

たまたま見つけたものが掘り出し物で、利用価値があるから検証結果を踏まえて利用させてもらった、と……してやられたって感じだなぁ。

 

「でも、それじゃあなんで静香さんが?」

 

「グラァ、グルル……グルオラ」

 

『ふむ……なるほど』

 

「叔父さん、流静さんはなんて?」

 

『ミラボレアスが俺達の転生に気づいていたと仮定した場合、流静との縁を辿って静香に行き着いた可能性が高いってよ。んで、ミツ姉の転生もその流れを組む形だろうと』

 

「……つまり、ヒスイ地方に転生した光輝叔父さんの魂に引っ張られて……?」

 

『魂にも強度というか、レベルというか……とにかく、強さのような概念があってな。ミツ姉の魂じゃヒスイ地方にはたどり着けなかった……シンオウ地方に転生するのがせいぜいだったんだろう……』

 

「お母さん……」

 

『けど、おかげでショウが生まれて、時空を超えて家族と出会えたんだ。悪いことばかりじゃないとは思ってるさ』

 

「……光輝さんが考えてることを予想した上で言うと、私も悪くはないと思ってる。頭に"皮肉"の二字がつくのがクソムカつくけど、現状に満足できてしまった私にはとやかく言える資格はないし……」

 

静香さんの言いたいこと、すごくわかる。要するに、「いいことづくめな今が全部黒幕の手のひらの上という事実に心底腹が立つ」ってことだよね。そして、腹が立つけど今が充実していることも認めているから、ミラボレアスに対してどうこうは言えない、と。

 

「……そうだ!ショウに伝えておきたいことがあるんだった」

 

「伝えておきたいこと?」

 

「うん。これも兄さん達と議論してたんだ……クロノって奴の手持ちについて」

 

「クロノ……」

 

次が決戦となるであろう、クロノ……クロノが使うモンスターがどんなやつなのか、静香さん達は考えてくれてたのか。みんなが揃って顔を寄せてきたからちょっと手狭になったけど、構わず話を続けた。

 

「まず、第一候補は『イャンガルルガ』。ショウも話には聞いたことあるよね?イャンクックそっくりの、紫の竜よ」

 

「はい、クロノが移動手段として使っているところを見ました」

 

「よろしい。イャンガルルガのタイプ予想としては、ドラゴン・ひこう。肉質はみずとドラゴンに弱く、こおりに強く、ほのおとでんきが効かないわ。……ポケモントレーナーの視点としては何とも言えないけど、ハンター目線でならヒントはあげられる。イャンガルルガは『小型リオレイア』と思えばいいよ。リオレイアと同様に尻尾に毒を持ち、火を吐き空を飛ぶ。凶暴性ではあちらに軍配が挙がるけど、それだけ。タイプと肉食から弱点をちゃんと把握すれば、さっき言ったとおり『小型リオレイア』だと思って対処すればいいよ」

 

「なるほど……!」

 

すごくわかりやすいなぁ。ハンター目線での注意喚起もありがたい。

 

「次は、神域で見せたゴリラ顔……名前は『ガランゴルム』」

 

「ガランゴルム……」

 

「【剛纏獣】の別名を持つ牙獣種のモンスター。タイプ予想はくさ・かくとう。そして肉質だけど……すっごい面倒くさい」

 

「面倒?」

 

「ガランゴルムは怒り状態になる際に、より攻撃性を高めるために両腕に付着物を纏わせるんだけど、その前後で肉質の耐性に違いがあるの。両腕に何も纏っていない状態だと……ほのお・でんき・こおりに強くてみずとドラゴンが効かない」

 

「は?」

 

くさタイプがほのおとこおりに等倍でみず無効とか許されると思ってんの?審議だよ審議!

 

「そして、怒り状態になると両腕に付着物を纏わせる。右腕に可燃性の草や溶岩を、左腕に水分を含んだ苔を纏わせるようになるわ。怒りが高まれば、今言った溶岩と苔が混ざったような付着物を頭にも纏わせてくるようになるの。そして面倒なことに……付着物を纏った部位だけ(・・・・)、肉質による弱点が変化するわ」

 

「えぇ~……」

 

「溶岩を纏った右腕はみずとこおりに弱くなるけど、ほのおとでんきが効かなくなる。反対に苔を纏った左腕はほのおとでんきに弱くなるけど、みずとこおりが効かなくなる。頭に纏えばほのお・みず・でんき・こおり全部に弱くなるわ。あ、何を纏ってもドラゴンは効かないから忘れないでね」

 

「……強化?弱体化?」

 

「うん、言いたいことはわかる」

 

弱点が増えたり消えたり、でも纏わなければ五大属性のほとんどが効かない……そして、部位ごとに弱点が異なるということは、五大属性に限って言えば両腕がそれぞれ効かないタイプに対する盾の役割を持つことになる。でも……。

 

「ひこうタイプで殴れば関係ないですね」

 

「それを言っちゃいけない」

 

思わず二人して笑ってしまう。けど、クロノのことだからきっとひこう対策はバッチリのはずだ、警戒は怠らないようにしないと。

 

「それから、【鏖魔】か【臨界】も可能性があるんだっけ?」

 

「グルラ」

 

「……その名前、もしかして」

 

「そう、特殊個体……こっちで言うなら、メガシンカだね」

 

メガシンカ……やはり、来るか。

 

「【鏖魔】というのは、『ディアブロス』の二つ名個体で、【臨界】というのは『猛り爆ぜるブラキディオス』というブラキディオスの特殊個体の通称ね。

ディアブロスは【角竜】という別名を持つ飛竜種で、ブラキディオスは【砕竜】の別名を持つ獣竜種よ。ディアブロスは大きく発達した二本角が特徴で、砂漠地帯に生息することからタイプ予想はじめん・ドラゴンもしくはじめん・ひこう。ブラキディオスは火山地帯や寒冷地帯に出没するわ。タイプとしてはかくとうタイプは確定なんだけど……」

 

「あ、ブラキディオスは龍歴院でほのおとかくとうの複合だと判明してますよ」

 

「そうなんだ。ブラキディオスの肉質はみずとこおりに弱く、でんきとドラゴンに強く、そしてほのおが効かない。ディアブロスはみずとこおりとドラゴンに弱く、でんきに強く、ほのおが効かないよ」

 

さらに話を聞いたんだけど、ディアブロスとブラキディオス……この二頭はかなりヤバさが際立つモンスターだ。ディアブロスは凶暴極まりなしという他なく、特に二つ名の【鏖魔】は極みに極まった狂暴生物で、何人ものハンターを帰らぬ人にしてしまったそうだ

そして、ブラキディオス。こっちは原種の時点でヤバいと感じた。爆発性の粘液を分泌するどころか、それを腕や頭に塗ったくった上でこちらを殴りつけるなどの行動で粘液を擦り付け、爆殺してくるらしい。獣竜種としてはフットワークもかなり軽いらしく、さながらボクサーのようだと静香さんは言っていた。あと、リーゼント。……リーゼント?

 

「どちらかは確実にメガシンカして、特殊個体にしてくるはずだよ」

 

『どっちだろうが、危険であることに変わりはねぇ。頭に叩き込むんだぞ、ショウ』

 

「うん、叔父さん。静香さん、他には?」

 

「そうね……素早さの高いモンスターは用意してそうだよね。例を挙げるなら、やっぱりルナガロンか」

 

「ガロン?オドガロンと同じ牙竜種ですか?」

 

「さっすがショウ!察しがいいね」

 

『我が従姉姪のトレーナー力は世界一ィィィィーーーーッ!勝てん相手はいないイイィーーーーーーッ!!』

 

「叔父さん、おすわり!」

 

『わん!』

 

光輝叔父さんは時々だけど、『意☆味☆不☆明』なこと言い出す……静香さんはミームがどうのこうのって言ってたけど……どういう意味なんだろう?

あと、私は未だに両親に勝てないんですがそれは。

 

「ルナガロンは【氷狼竜】の別名を持つ狼のモンスターよ。別名通り冷気を操る力があり、体温調節のほかに戦闘能力としても活かされてるわ。その体温調節を止めることで体温を上昇させて筋肉を膨張しつつ、全身に氷を纏うことで重心位置を変えて二足歩行での行動を可能とするわ」

 

「歩くんですか!?」

 

「歩くのよ」

 

なんだろう、いきなり興味を深いこと言うのやめてもらっていいですか?さっきからずっと見てみたくてたまらないんですけど!あと、光輝叔父さんと同じ狼だし。

 

「タイプ予想は牙竜種らしくかくとう複合のこおりタイプ。そしてこおりタイプらしくほのおが苦手。ただし、でんきとドラゴンは効きにくいし、みずとこおりは効かない。しっかりほのお技で攻め立てれば、どうにでもなるけど……」

 

「ゼルレウスやグラビモスで戦うには、機動力が不安ですね……」

 

話を聞く限り、ルナガロンは相当素早さに長けるモンスターだ。地上で素早く動き回るなら、私の手持ちだとジンオウガかベリオロスくらいになる。ゼルレウスのように空中戦主体だったり、グラビモスのようにそもそも鈍重だったりだと、ほのお技を撃つ前に懐に飛び込まれそうだ。

 

「今、大体予想がつくのはこのへんかな……」

 

「ありがとうございます、静香さん。おかげで対策が練られそうです」

 

「それはよかった」

 

流石に手持ち全部の予想は贅沢というものだ。情報をもらえただけでもありがたい……本当に、感謝してもしきれないよ。

 

「ニャー」

 

「ん?」

 

「……メラルー?」

 

と、その時だ。どこからか迷い込んだのか、一匹のメラルーが私たちの前にちょこちょこと歩いてきた。……いや、待て。この流れはもしや……。

 

「どうしてメラルーがここに……」

 

「……こんにちは、クロノからのお手紙?」

 

「ニャ!」

 

「ッ!!クロノ!?」

 

やっぱりだ。クロノは以前もこうしてメラルーを介して果たし状を渡しに来たことがあった。今回もその流れというわけか……。

 

「ありがとう、クロノによろしくね」

 

「ニャー!」

 

「いや、馴染み過ぎか……それで、手紙にはなんて?」

 

「今開けます。……えーっと、"やりのはしらで待つ。万全を期し、身命を賭して来い"……ですね」

 

「決闘のつもりか……いや、実際に決闘なんでしょうね。受けるのね、ショウ?」

 

「もちろんです」

 

向こうから売ってきた喧嘩だ、買うのが礼儀というもの!そしてクロノから買った喧嘩を、ミラボレアスに倍返しにしてやる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後私は事の仔細を皆に話したあと、アカイさんと静香さん同伴のもとクロノが待つやりのはしらに向かった。到着した先では、クロノが待ち構えていた。

 

「よぉ、ショウ。……なんか余計なものまでついてきたな」

 

「"一人で来い"って一文を添えなかったあなたが悪い」

 

「そりゃそうだ」

 

カラカラと笑った後、クロノはしばらく目を閉じてから、こちらに鋭い目を向けてきた。

 

「……これまでは油断も慢心もあったが、全力ではあった。今回とて、全力であることに変わりはない。今度は殺す、間違いなく殺す。本気でその息の根を止めてやる」

 

「いいよ。私も全力で相手をする。私はこんなところで殺されるわけにはいかないんだから」

 

ようやく、他のメンバーもメガシンカが安定するようになってきたのに、私だけが一足先にリタイアとか冗談ではない。クロノに勝って、ミラボレアス襲来に備えなくちゃだ。

 

「……といっても、ここじゃあ狭かろう。来いよ、案内してやる」

 

「え、案内って……」

 

そう言っていると、クロノの背後に階段が現れた、長く長く、先の見えない階段……まるで、アルセウスと私が最後に戦った場所みたいな……。

あれこれ考えているうちに、クロノは階段を上り始めた。私はアカイさんと静香さんに目配せをする……二人が頷いてくれたので、クロノの後を追って階段を上り始めた。

 

「……クロノ」

 

「なんだ、ショウ」

 

「聞きたいことがあるんだけど、いい?」

 

「あん?なんだ、言ってみろ。彼の黒龍も今となっては気前のいいこと。聞かれたことには答えよう」

 

せっかくだ、クロノはミラボレアスの名代だというし、クロノから聞けることは聞いておこう。

 

「結局、ミラボレアスが時空の裂け目を利用したのは偶然?それとも狙って?」

 

「……フン、まずはそこからか。結論だけ言えば偶然だ。ギラティナが引き起こした異変と冥灯龍の生誕、二つの現象が重なったことで起こった次元境界線への意図せぬ攻撃。時空間を渡る力を持つ黒龍は、次元境界線へのダメージを感知しその原因を探った。そこでギラティナと時空の裂け目の存在を知り、自らの力を使いその原理を解明したのだ」

 

「……つまり、今開いている時空の裂け目は全てミラボレアスが起こしている現象ってこと」

 

「そういうことだ」

 

階段はまだ続く。

 

「じゃあ、どうしてミラボレアスはヒスイ地方に来たの?」

 

「そこはそれ、お前の腰にぶら下がってるモンスターどもの存在だ」

 

「ジンオウガ達が……?」

 

「当然だろう?平行世界ですらない、次元の異なる世界に自分達が住む世界の者の匂いがすれば、何事かと気になるだろう?」

 

「つまり、ミラボレアスはジンオウガ達の気配に釣られて、やりのはしらに顔を出したってこと!?」

 

「そうだが、何をそんなに驚く?」

 

「ふざけるな!だったらミラボレアスがショウに呪いをかけたことは、どう説明する気だ!?」

 

静香さんが激昂し、怒号が空間上に広がっていく。その木霊が完全に聞こえなくなってから、クロノは口を開いた。

 

「そりゃあ、黒龍とて一個の命。モンスターを従える人間はいるが、それでもせいぜい一人一頭だ。ライダーってのがそうだな。だが、ショウはどうだ?ほとんどが生態系において上位に食い込むほどの猛者が腰元に五頭。そんな連中が見たことのないボールの中に押し込められた挙句、座して大人しくしてんだぜ?さらに遠く離れた場所には多種多様な者らが領域を共有しつつ寛いでやがるときた。狂ってんのか、って思うだろ?

そして、それらの匂いの中心はたった一人の人間だ。ハンターよりもうら若い、女のガキだ。そして、その目はハンターに似た強い覚悟と決意、闘志を秘めていた。黒龍の防衛本能を刺激するには十分すぎるだろう」

 

「複数のモンスターを同時に従え、さらに使役するショウが異常者に見えたとでも?」

 

「これで婆なら、老練した様も相まって見逃されたかもな」

 

……私、モンスター目線だとそんなにヤバい奴に見えるの?心外なんですけど!?

 

「……つまり、ミラボレアスは初対面でショウにビビったわけだ」

 

「……なんだと……?」

 

静香さんがミラボレアスを鼻で笑うと、殺意を剥き出しにしたクロノが振り返った。まるで我が事のように怒ってる……まぁ名代、つまり名前を背負ってるわけだから当然か。

 

「だってそうでしょ?ジンオウガ達を味方につけるショウを恐れ、危機感を覚えたからこそ呪いをかけて殺そうとした。正攻法では勝てないかもしれないから、ズルをしてでも命を奪おうとした……何がおかしい?」

 

テメェ……ッ!!……フーッ……。認めよう、確かに黒龍はショウの存在を危険視した。自らの身が脅かされる予感とともにな」

 

「(ほぅ……成長したな)」

 

一度は激情に駆られたクロノだけど、すぐに冷静になって静香さんの指摘を認めた。……え、私ってそんな初期からミラボレアスに警戒されてたの?偶然とかじゃなくて!?

 

「認めるんだ」

 

「認めざるを得んよ。現に、ショウはここまで来た。世界を渡り、煌黒龍を打ち破り、呪いを解き、そして再び戻ってきたのだ。これで認めないのであれば、それはくだらん意地の張り合いだ。

……ショウ、改めて言うことではないかもしれんが、黒龍は貴様を敵として認めた。倒すべき……いや、殺すべき敵としてな。まさか、ハンターですらない小娘を敵認定することとなるとは、彼の黒龍も想定外だったろうよ」

 

「そこは、胸を張ってもいい感じ?」

 

「存分に誇れ」

 

「(`・ω・´)」

 

「……ドヤ顔って実際に見たら結構腹立つな」

 

「そっちが誇れって言ったんじゃん」

 

「それはそう」

 

階段はまだまだ続く。

 

「ミラボレアスの最終的な目的は、ニールさんへの逆襲?」

 

「そうなるな。己に手傷を負わせたにっくきハンター……やつを見返すために、黒龍は力を得るべくこの地に舞い降りると決めた。この世界、特にポケモンを余さず喰らい尽くし、そのすべてを力への糧とするためにな」

 

「たかが一人の人間に対して、なんて大仰な……!」

 

「それ、古龍を十把一絡げに狩猟するハンターが言えたことか?」

 

ゲーム(空想)リアル(現実)は違うんだよ!実際、古龍一頭倒すのにどれだけの時間と労力が必要なことか……」

 

「ハハッ、そこは身を持って痛感してもらえたようでなによりだ」

 

ミラボレアスにとって、ニールさんは世界一つを生贄にしてでも倒すべき存在だと認識しているのか……。そんなニールさんとおよそ同格に扱われてた私って一体……?

 

「モンスターの技巧種化について、当のミラボレアスはどう考えてるの?」

 

「あれこそ偶然の産物だ。それぞれの世界の成り立ち……いわば規則や法則みたいなものが融合し始めてんだ。モンスター達はポケモンの技とタイプを、ポケモンはモンスターの特殊個体などの特徴を……取り込み、混ざり合い、馴染み合う。

それぞれの世界を住居に例えると、はじめこそは交流なんて全くない遠く離れた地区同士が徐々に近づき始めていき、やがて気づかぬ間に隣り合う地区のルールが紛れ込んでいた、みたいな感じだな」

 

「……一応聞くけど、元に戻る保証は?」

 

「手遅れだ、とだけ」

 

「……そう」

 

階段は、少しずつ終わりが見え始めた。

 

「まぁ、モンスターにせよポケモンにせよ、全ての生き物にそれぞれの法則が適用されたわけじゃねえんだ。だが、一度そっち側の法則を充てられた連中は元には戻らん。そして、それは世界にも言えること」

 

「どういう意味?」

 

「この世界と向こうの世界……時空の裂け目を基点にして、お互いの世界が近づき合ってるって言ったよな?黒龍はそれを利用して、この世界に自らの聖域……即ち、シュレイド城を召喚しようとしている」

 

「なんですって!?」

 

静香さんが驚きに声を上げ、アカイさんは厳しい目でクロノを睨んでいる。私は……ちょっと何言ってるのかわからなかったので、口を開けていることしかできなかった。

 

「具体的に言うと、時空の裂け目を基点にしてここ『天冠の山麓』一帯を『シュレイド城』というテクスチャに上書きする。黒龍が住まう城ごとこの地に置き換え、後は根こそぎポケモンを食べる。テキスト上は『シュレイド城』となっているから、向こうの世界からもシュレイド城に干渉できる……そうしてハンターを待ち構え、逆襲するっていうのが黒龍の狙いだ」

 

「……言ってること、難しすぎるんだけど」

 

「簡単に言うと、"天冠の山麓をシュレイド城に変えるよ"ってこと。それも入れ替えとかじゃなく上書きだから、成功すれば天冠の山麓はそこにいる全ての命まるごと消滅するけどな」

 

「……ッ!?そんな、ふざけてる!!」

 

それって、ウォロがアルセウスでやろうとしていた新世界創造並にタチが悪いやつじゃ!?

 

「そんなバカなこと、絶対にさせない!!」

 

「だったら俺に勝ってみろ。そもそも俺に勝たないと黒龍との謁見すらできないぜ?」

 

いつの間にか、私達は階段を上りきっていた。そこはやはり、私がアルセウスと戦った場所に良く似た、とても広い空間だ。ジンオウガ達が縦横無尽に駆け回っても、全然余裕でスペースがあるくらい、って言えばわかるかな?

 

「勝つよ、クロノ。ミラボレアスの野望を阻止するためにも!」

 

「あぁ、そうこなくっちゃあ面白くない!」

 

お互いにボールを構える。この戦い、そしてミラボレアスとの戦い……その全てに、この世界の運命がかかっている!!

 

「勝負だ、クロノッ!!」

 

「来いよ、ショウッ!!」

 

これが私たちの宣戦布告!絶対に負けるものか!

 

 

 

 




今回は導入、次回からバトルが始まります!!



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