突然ですがこんにちは。アタシの名前はネネ。愛しき姉様、シズカ・ミズハシの恋人妹分にして、龍歴院所属の専属ハンターです。今回、貴重な体験をしていることを自覚したため、拙いながらもこうして手記にまとめることにしました。
さて、我々は次代の超新星にしてアタシの姉様のシズカ・ミズハシ、間男新大陸古龍調査団第五期団のニール、姉様のお師匠にしてキャラバン隊『我らの団』所属のシュラーク、そして龍歴院所属のハンター兼書士隊のアタシ、ネネの四名で時空の裂け目なるゲートをくぐり、ここ『ヒスイ地方』へと降り立ちました。……まさかそのヒスイ地方に伝説の狩人と呼び声高いドンドルマの英雄・ヒューイさんがいるとは思いもよりませんでしたが。
我々の目的は、このヒスイ地方へ降臨し蛮行を働こうとする黒龍ミラボレアスの討伐。そのために、こうしてハンターが派遣されたわけですが……なんなんですか、この世界は。
そこらにいる生き物……『ポケットモンスター(通称:ポケモン)』は体こそは小型モンスターと大差ないくせに、秘められたポテンシャルは中型・大型モンスターに匹敵するほどだったのです。ポケモンは『技』と総称される攻撃手段があり、その種類は千差万別、正直全てを完璧に把握することなど不可能ではないかと思わされたほどだ。ポケモンにも覚えられる技とそうでない技とがあり、しかもそれは個体ごとに大きく異なる。
例を挙げよう。ピカチュウ、と呼ばれるポケモンがいる。このポケモンは体高はアイルーよりも小さい小型モンスターだが、頬にある電気袋に電気を溜めることができ、それによりフルフルに匹敵するほどの電撃を操ることが出来るのだ。特に『かみなり』など、直撃すればただでは済まないような威力の電撃すらを放つ。
我々の世界では小型モンスターは『数が揃うと脅威だが、単体では程度が知れる』という感じに、弱い生き物という認識が強い。だが、このヒスイ地方ではアイルーより小さいピカチュウですら大型モンスター張りに電撃を操り、人間を殺めてしまうのだ。そしてそんなピカチュウも群れて行動するというのだからとんでもない話だ。
ポケモンは本当に小さい。現地民から聞いたが、最大サイズのポケモンがムゲンダイナというポケモンで、それでもリオレウスやジンオウガの金冠サイズ程度しかないそうだ。こちらの世界には20mを超えるモンスターがたくさんいるというのに、巨体のポケモンはほんのひと握り程度の種類しか存在しないらしい。
それでも我々が知るモンスターとほぼ同スペックに感じられるのは、『技』の存在の他に『タイプ相性』というものがある。これはいわゆる『属性』のことであり、ポケモンはこの属性が18種類も存在する。さらに二つの属性を身に宿す個体もいるらしく、複合属性は153通り存在し、単属性18種と合わせて合計で171通りも存在する。そのうえ、いまだ未発見の複合属性も存在する……これにはアタシの同僚が皆悲鳴を上げていましたわ。
ポケモンの属性はノーマル・ほのお(火属性)・みず(水属性)・でんき(雷/麻痺属性)・くさ・こおり(氷属性)・かくとう・どく(毒属性)・じめん・ひこう・エスパー・むし・いわ・ゴースト・ドラゴン(龍属性)・あく・はがね・フェアリーと、簡単に説明できそうな名前から理屈では理解しがたい名前の属性が存在する。
このヒスイ地方で確認できた各属性の代表ポケモンは以下の通り
ポリゴンZ(ノーマル)
ゴウカザル(ほのお)
エンペルト(みず)
エレキブル(でんき)
ドダイトス(くさ)
ユキメノコ(こおり)
ルカリオ(かくとう)
ドラピオン(どく)
カバルドン(じめん)
ムクホーク(ひこう)
クレセリア(エスパー)
メガヤンマ(むし)
ラムパルド(いわ)
ヨノワール(ゴースト)
ガブリアス(ドラゴン)
ドンカラス(あく)
ジバコイル(はがね)
トゲキッス(フェアリー)
いずれも強力なポケモンであり、これらの個体を完璧に使役できるトレーナーは相応の実力を持っていることが分かる。実際にアタシも戦っているところを見せてもらったが、凄まじいものだった。あんな小さな体の一体どこに大型モンスター級の力を秘めているのやら、まるで意味がわからない。
そればかりか、これらポケモンと全く同じ属性を宿したモンスターが我々の世界の各地で発見されるようになったのだ。
ポケモンと同様、巧みに技を操ることからそれらのモンスターを『技巧種』と新たにカテゴライズし、今もなお調査が続けられている。技巧種モンスターは数々の技を駆使してハンターや他の縄張りのモンスターや一般市民を脅かしている。最近では中型モンスターの群れが古龍級生物を撃退したという報告すら上がっている。
技巧種モンスターの最も厄介な点は、本来得意とする属性以外の属性攻撃を可能としている点だろう。例えばジンオウガ。ジンオウガは本来雷属性のモンスターで、攻撃手段も当然雷属性だ。だが、技巧種化したジンオウガは"ほのおのキバ"や"こおりのキバ"、"ドラゴンクロー"といった雷属性以外の属性攻撃を使える。いくら雷耐性値の高い防具で身を固めても、属性値の低い属性攻撃を仕掛けられてはひとたまりもない。
さらにポケモンが持つ特別な力『特性』も無視できない。ポケモンごとに効果が異なる特殊能力である特性を、我々がよく知るモンスターたちも獲得してしまったのだ。特性にも様々あり、攻撃力を高める攻撃系や状態異常を無効化する防御系、条件こそあるが発動すれば強力な特殊系の三種がある。
攻撃系の典型例はやはりファンゴだろう。ブルファンゴ・ドスファンゴ共に『すてみ』という特性を得てからは突進攻撃の威力が馬鹿みたいに強くなったという。"とっしん"、"すてみタックル"、"もろはのずつき"などの技でマスターランクのハンターが次々と一撃でキャンプ送りにされたらしい。
他にも『かたいツメ』、『がんじょうあご』、『てつのこぶし』など部位に応じて攻撃力を上げる特性。
自身の属性と技の属性が一致すると攻撃力が上がる『てきおうりょく』や元の属性から別属性へ変化させさらに強化する各『スキン』系。
『もうか』、『げきりゅう』、『しんりょく』などピンチになると特定の属性攻撃の威力が上がる特性など、強化手段にも事欠かないようだ。
防御系ではフルフルなどは『じゅうなん』という特性で麻痺状態が効かなくなったという報告もあった。眠らないウラガンキンも、『やるき』という特性の影響で睡眠状態が効かないということがわかっている。テツカブラも『めんえき』で毒属性を無効化し、ネルスキュラに至っては毒状態にすると治癒効果が働く『ポイズンヒール』を獲得していた。
……そういえば、ガララアジャラが『だっぴ』で属性やられを無効化したとか、ラングロトラが『ぼうだん』の特性でガンナーを役立たずにしたとかも聞きましたわね。
特殊系の特性についても記す。ウルクススの『ゆきかき』、ガノトトスの『すいすい』、テオ・テスカトルの『サンパワー』、ハプルボッカの『すながくれ』など、天候によって効果を発揮する特性の存在も確認が取れた……今後は狩猟環境に天候を記す必要があるだろう。
ラージャンやブラキディオスをはじめとした一部の強力モンスターは、会心が決まった直後に攻撃力がおかしいレベルにまで跳ね上がったと聞いた。その特性は、たしか……そう、『いかりのつぼ』だ。
……アオアシラが全身ハチミツまみれなっているのも『みつあつめ』という特性の影響だそうだし、クルルヤックの巣に大量のアイテムが発見されたのも特性が『ものひろい』だからだろうと彼女は言いますけど、一体何の意味があるのかしら……。少なくとも、飼い慣らせば我々人間の役に立つこと請け合いですし、実際に飼い慣らそうという試みも為されているとか……正気か?
このように、特性の存在によって本来そこまで危険度が高くないモンスターの危険度が軒並み上方修正されるという事態にまで発展している……。技巧種モンスターも増加の一途をたどっていると言うし、こうも異世界で見られた特徴が自分たちにとって身近なところで出てくるともはや他人事では済まされないだろう。
個人的には……ナルガクルガ亜種の特性に『ぼうおん』があるのは許せない。『ぼうおん』は音による攻撃を防ぐ特性なのだが、どういうことなのか音爆弾の音すら防いでいるそうだ。モンスターの典型的な弱点が特性で克服された最悪な事例の一つだ。こちらの会心率を実質0にする『シェルアーマー』という特性も厄介だ……あの蟹どもめ。
これは元の世界に戻った後の技巧種狩猟が億劫になりそうだ……。
話が逸れた……とにかく、本来ならポケモン達だけが持つ能力が我々の世界のモンスターにまで浸透し始め、それにより自然界のパワーバランスが崩れかけているとの報せを受けた。具体的には、技巧種モンスターの縄張り拡大に伴う生態系の崩壊だ。それら全ての元凶は、ミラボレアスにあると推測されている。黒龍討伐を可及的速やかに遂行しなければならないが、肝心の黒龍は未だ姿を見せず……。
つい先ほど、黒龍の遣いを名乗る輩から挑戦状を送られたモンスタートレーナーが、挑戦を受けるべく『やりのはしら』へと向かった。姉様も一緒なので、よほどのことはないと思うが……懸念事項もある。何事もなければいいのだが。
……おかしいですわね、いつからアタシは報告書を書いていたのかしら。これが職業病というやつなのね……。
ちなみにポケモンの種類は1000を優に超えるとか。……なにかの間違いでは?
これも後でシロさんに頼んで、時空の裂け目経由でギルドに送付しなければ……。
月刊 狩りに生きる 特別号
技巧種モンスターの続出止まず!古龍種、ついに動く
これまで様々なモンスターが発見されてきたが、今回ばかりは大変厄介な事態になっているようだ。
事の始まりは、シュレイド城上空に開かれた謎の裂け目にミラボレアスが逃亡してからのこと。属性耐性が変化したり、見たことのないような攻撃手段を用いるモンスターが急増している。ギルドはこれらのモンスターを『技巧種』と分類付けし、捕獲・研究による対策が急ピッチで行われているらしい。
ギルドの有識者によると、いつだかに出現した超巨大ティガレックスも技巧種化に伴う影響により巨大化をしていたらしい。技巧種モンスターに関してはどこもかしこも手探り状態であり、かくいう我ら『狩りに生きる』取材班も独自の路線で技巧種モンスターの情報を集めているが、かなり難航している。
実際に技巧種モンスターと戦ったハンター達も
「『技』があるから何をしてくるのか全く予測がつかない」
「『タイプ相性』のせいで弱点を克服してる奴もいる」
「『特性』ってなんだよインチキ効果も大概にしろ」
「群れで遭遇すると地獄」
「ケツがいてぇ」
など、そのほとんどが「技巧種モンスターに苦戦を強いられた」というものばかりであった。
このような不測の事態に、最も動きを見せたのが古龍種だった。各地で姿が見られた古龍種は技巧種化したモンスターを積極的に攻撃し、縄張りの拡大や生態系の崩壊を阻止するべく行動を起こしていることが古龍観測所より報告が上がっているとの情報を得た。特に異界人達と共に煌黒龍アルバトリオンと戦った古龍種である鋼龍クシャルダオラと霞龍オオナズチは、ハンターと共同で対処に当たっているという話も聞けた。
あの古龍種が、人間とともに手を取り合い、事態の収束に動いている……その事実だけで、こんなにも胸が熱くなるのだろうか。同じく煌黒龍と戦ってくれたテスカ夫婦は姿を消したそうだが、彼らもいつか我々人間に手を差し伸べてくれるだろうか。
嵐の前の静けさか?未確認の希少種個体の発見、相次ぐ
今回の一件との関連性は現在調査中ではあるが、もう一つの怪現象として『希少種モンスターの相次ぐ発見報告』があげられている。
全身に鋼鉄を纏ったグラビモスやら体に電撃を迸らせるベリオロスやら、光に包まれ姿を消すジンオウガ……先に挙げた三種は、出現と同時に赤衣の男が未知のボールを用いて捕獲したとの報告が上がっている。なので、ここではそれ以外に発見された個体を列挙する。
取材によれば……
体色を変化させ擬態するギギネブラ
睡眠性の液体を保有するロアルドロス
放射性物質を含む鉱石を食すウラガンキン
高山地帯で初めて姿が見られたバフバロ
異常発達した後ろ足で跳ね回るアビオルグ
砂嵐と陽炎を駆使して姿を消すデュラガウア
捕食者に反逆した金色のキリン
虹色のイャンクック
……今のところはこれくらいだが、この短期間でこれだけの希少種個体の発見は異常である。ハンターズギルドも警戒態勢を厳とし、技巧種モンスターの増加と希少種個体の相次ぐ発見の双方に対応するとの見解を示している。
今や世界各地で問題となっている技巧種モンスター……この問題を引き起こしたとされる黒龍ミラボレアスは、異界の地へ逃げた。その黒龍を追って異界へ渡ったハンターの中には、黒龍と戦った調査団のニールや、あのシズカ・ミズハシもいる。彼女達ならば、必ずや黒龍を討伐してくれるに違いない。
我々は彼らの力を信じて、自分たちに出来ることをするしかないのだ。
世界も混沌としつつありますね……。
さて、せっかくなので明日から三日、即ち三が日投稿頑張りますか!