宣言通り、今日から三日間連日投稿します!うおー、やるぞー!
パルデア地方にあるアカデミー。その校舎の上、特徴的なモンスターボールのオブジェの前に、一人の少年が座っている。ゴールドのかきあげロブヘアーの少年は、プラプラと足を揺らしながら淵に座り込んでいる。どう見ても危険行為です良い子はマネしないでね。
暇をつぶすようにチュッパチャップスを頬張っていると、唐突にスマホロトムが鳴り出した。
《もしもし、コウキさん。私、クラベルです。今お時間よろしいですか?》
「良いか悪いかで言うと悪い寄りの良い」
《はい、よろしいようでなによりです》
「スルーせんといて……」
電話先の相手はアカデミーの校長を務めるクラベルだ。電話を受けた少年の名はコウキ。アカデミーのオレンジクラスに所属する生徒だ。
《あなた方のボケに付き合うと終わりが見えないので……》
「否定できんな。それで、なんの用すか?」
《ええ、早速ですが、本題に入りましょう。この度、お電話を差し上げたのはコウキさんに名誉あるチャンスが訪れたからです》
「チャンス?」
クラベルはああ言うが、言われた本人はチャンスが訪れるような事をした覚えがないからだ。割とやってんぞ、お前。
《イッシュ地方の『ブルーベリー学園』をご存じですよね》
「知ってるけど、それが?」
《ええ、林間学校でご一緒したとうかがってます。私の古い友人がそのブルーベリー学園で校長先生をなさっておりまして、コウキさんを交換留学生としてぜひ迎えたいとおっしゃっています》
「えぇ……?」
《広い世界を知ることができる絶好の機会だと思います。何ごとも挑戦ですからね》
「そりゃあありがたい話ですけど……なぜに俺なんです?他にも候補はいたのでは?」
コウキが気になったのはそこだ。自分以外にもアカデミーの生徒なんてごまんといるし、なんなら自分以上に優秀な生徒もぶっ飛んだ生徒もいる。それなのに、なぜ自分なのか……そのことを知りたかったコウキだが、以外にもクラベルからの返答はすぐに返ってこなかった。
《えぇ、それなんですが……いったい何故コウキさんをご指名なのか……それに、あなた以外にもゴウタさん、ホムラさん、リュウセイさんもご指名なんですよ》
「いつメンじゃないすか」
クラベルが挙げた名前は、コウキにとってなくてはならない親友たちの名前だ。相手方の校長は、コウキを含めた複数人での交換留学を希望しているらしい。
《一度彼にお会いして、真意を聞いてみましょう。かなりファンキーな方ですが、私もついていますのでご安心を》
「先生がいなきゃ心配で夜しか眠れねぇよ」
《それは大変で……って、いつもどおりじゃないですか!》
「あっはっは!」
真面目なクラベルの性格上、ボケに対してツッコミを入れてしまうのだが、それこそがコウキの狙いでもある。ひとしきり笑ったあと、コウキ自身から話を戻した。
「とりま、俺もそちらに向かったほうがいいですか?」
《はぁ……まったく、あなたという人は……。えぇ、そうしてください。もろもろのお返事は直接、校長室でおうかがいしますので》
「それじゃあ、顔出ししときますね」
《お願いします。お忙しいところ失礼しました……それでは、お気をつけて》
電話が切れると、コウキは一つのモンスターボールからポケモンを繰り出した。
「アギャ?」
「降りようぜ、ミライドン!」
「アギャッス!」
ミライドンの背中に乗り込むと、一気に飛び降りて正面玄関前に着地する。ミライドンをボールに戻し、エントランスホールへ入るといきなり目に付く人物を見つけた。どう見ても部外者にしか見えないその人物の元へコウキは怪訝な顔のまま歩いて行った。
「こんちわ。お客さん、どちらから?」
「あれー?その顔……どっかで見たなー。えーと、誰だっけ?」
「いや、こっちのセリフな?お客さんこそどちら様?まずは自己紹介から始めましょうや。俺はコウキっていいます」
「あー、そうそう、コウキさん!知ってる知ってる。んじゃ、そういうわけで行こっかー」
「いや、名乗れや」
なぜか会話が噛み合わず、コウキはこの時点で「めんどくせーなこのオヤジ」程度の所感しか感じられなかった。いっそ通報するか、とスマホロトムを取り出そうとした、その時だった。
「ちょっとちょっと!シアノ先生!」
クラベルの声が聞こえた。どうやらちょうどこの場についたようで、ひどく慌てた様子だ。
「あれ、ベルちゃんいたの!元気そうだねー?」
「いやいや、当然私はいますよ!あと生徒の前でその呼び方は……というか校長室に来てくださるとお約束したではありませんか!」
「あれー?そうだっけ?まあ、いいじゃない。だってこの子でしょ?」
「それはそうなのですが……あと、まだこの場に集まっていない子もいるので……」
「あ、そうだったね」
「(うっわこのオヤジ、俺の嫌いなタイプだ。あとリュウセイとゴウタも嫌いそう)」
どこか抜けているというかズボラというか、マイペースなブルーベリー学園校長のシアノ。仮にも責任ある立場の人間なのにマイペースなシアノの様子に、コウキの中の好感度は急転直下だ。
「おっとコウキさん、説明不足ですみません。こちら……」
「ウィース、校長~。呼ばれて飛び出てホムラさんだぜ~」
「お待たせして申し訳ありません、クラベル校長」
「スター団みんなの補習、やっとこさ区切りがついたぜ」
「引率担当のケンスケ、現着しました」
クラベルがシアノを紹介しようとしたところ、他のメンバーが集まってきた。上からホムラ、リュウセイ、ゴウタ、ケンスケだ。それぞれホムラがレッドのポニーテール、リュウセイがブルーのスパイラルパーマ、ゴウタがホワイトアッシュのオールバック、ケンスケがホワイトのピクシーカットが特徴だ。
「おっせーよオメェら」
「わりぃわりぃww。……で、こちらのオジサマはどなた?」
「ちょうどみなさん集まったようなので、改めて説明させていただきますね。こちら、交換留学先、ブルーベリー学園のシアノ校長先生です」
「うん。僕、校長ー。あれ?言ってなかったっけ?」
「言ってねーんすよ」
「さっき聞いた」
「今知った」
「……情報の伝達速度はどうなってんだブルーベリー学園……」
「俺は知ってたぜ、なんせ教職なんで!」
コウキ、ホムラ、ゴウタはそれぞれシアノにツッコミをいれ、リュウセイはキタカミでの経験から留学先の報連相に問題があるのかと危惧し、ケンスケは教師なので流石に知っていたらしい。
ちなみに、交換留学生としてコウキらが選ばれた理由には、キタカミの里で出会ったブルーベリー学園生のゼイユにあった。どうやら彼女が推薦したらしい。シアノも実際に会ってみて、いいなと感じてくれたようだ。
「(こんな校長で大丈夫か?)」
「(大丈夫じゃない、問題だ)」
「(こいつが校長やってる学校に行くんだろ?不安しかないが……)」
ただ、コウキとリュウセイとゴウタは不安があるらしく、内心でシアノを扱き下ろしていた。
「(スグリのやつ、元気にしてっかなー?)」
「(今度こそ教師として生徒をわからせる……!)」
反対に興味の欠片もなさそうなホムラと、教師としての使命(?)に燃えているケンスケであった。
「さすがに四人もとなると大所帯ですので、ケンスケ先生には彼らの付き添いをお願いします」
「お任せ下さい、クラベル校長。自分の役割、しっかりと全うしてまいります」
「よろしくお願いしますね」
「えぇ(わからせをな!!)」
……大丈夫かこれ?
~移動中……~
長い移動時間を経て、一行はブルーベリー学園に到着した。シアノ自慢のブルーベリー色が特徴的な学園で、そのほとんどが海の中に沈んでいるという画期的な校舎なのだ。
あれこれ説明してくれるシアノだったが、唐突にコウキ達に質問を投げかけた。
「……なんか、逆に聞きたいことはないの?」
「なんで海に沈めてるんすか?」
「ブルーベリーってどっからきたんすか?」
「クラベル校長と親しいようでしたが?」
「あははー、なんかいっぺんに聞かれちゃったね。えーとそれはねー……」
「海の中にあるのは、海底で運用している資源開発プラントに併設しているから……だと聞いてますよ!それと、名前の由来はブルーベリーの花言葉、『実りある人生』……から、とったみたいですよ!そしてシアノ先生とクラベル先生は大学院時代の先輩後輩……だとうかがってますよ!」
シアノが答えようとしたところ、横から答えが飛んできた。振り返った先から、ピンク色の髪に緑色の宝石をあしらった髪留めをつけた少女が歩いてきていた。少女はほかの質問にもスラスラと答えを示し、コウキ達を納得させてくれた。
「さっすがタロちゃん」
「いえいえー」
「(ほぉ、コイツがタロ)」
「(推定、イッシュジムリーダー・ヤーコンの娘の)」
ゴウタとリュウセイは、事前にある人物から受け取っていた情報からタロの情報を抜き出した。
「そちらの方々はお客さまですか?」
「そうそう、交換留学のコウキさんにリュウセイさんにホムラさんにゴウタさん!そして付き添いのケンスケ先生だよ」
「よろしく」
「よろしゅうな」
「よしなに」
「よろー」
「よろしくね、タロさん」
「わっ!パルデア地方から来るって噂の……あの!?」
それぞれが挨拶をすると、タロは両手を合わせて驚きと感激を表現する。特にタロの視線はホムラとゴウタに注がれていた。
「自己紹介が遅れました。わたしはタロ!2年生です!よろしくお願いしますね。特にホムラさんとゴウタさん!」
「ん?俺ら?」
「なして?」
「ふふっ、お二人のことは同じリーグ部の子から聞いてますので!」
「おい俺らのプライバシーが欠片もないんだが?」
「いや、別に口止めもしてねぇだろ」
「それもそうだが、それはそれだろ」
「もはやどれだよ」
「みなさん、とっても仲良しなんですね」
「いや、面目ない。うちの生徒が」
和気藹々としつつも、エントランスロビーへと歩いて向かう一行。そこで説明されたことは、ブルーベリー学園におけるテラスタル現象についてだ。どうやらブルーベリー学園はテラスタルのメカニズムを制御できる技術を開発したそうなのだ。
コウキらがそのことで感心していると、シアノからコウキ達へ、タロとのポケモンバトルを提案された。
「へぇ、いいじゃん。誰がやる?」
「じゃあ、俺が」
「俺もやりてぇぞ!」
「ホムラとゴウタか……予定が押してるから、どっちかだけだぞ」
「じゃあしょうがない……アレで決めるか」
「そうだな、アレでな」
ホムラとゴウタは少しだけ距離を取ってお互いに向き合う。その真剣な眼差しから、ただならぬ雰囲気が纏わり始めた。
「あ、あの。今からお二人でバトルするんですか?」
「いや、ポケモンバトルだと時間がかかりすぎる……だから、手っ取り早くアレで決める」
「アレ……えーっと、じゃんけんとか?」
「そんなちゃちなもんじゃないさ……まぁ、見てな」
しばらく互いに睨み合い、動きすら見せないそんな中、ホムラがゆっくりと手を挙げ、ゴウタも膝を折って腰を下ろし、手を前に突き出した。
「「セッツ!」」
「合いの手いくぞー。ワン、ツー、さん、はい」
ツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチー
ツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチーツッチー
「ずくだんずんぶんぐん~♪えすぽんしゅんぽんしゅん~♪えすぱんすん♪くすぽんすん♪えすぱんすんかんせんぷん♪」
「ずくだんずんぶんぐん~♪ずくだんぶんさんぷん~♪ずぐだんとん♪ずぐぱんぽん♪くすぱんずんほんぷんぷん♪」
「…………」
「…………」
「……ちくしょ、負けた……!」
「よしっ!」
「はい、ホムラの勝ち~」
決着は一瞬だった……どちらが勝利してもおかしくない一進一退の駆け引き、超次元級の激闘を制したのはホムラであった。
「いやいやいや、待って待って待って。え、なにこれ?なんのゲーム?」
「タロは知らないのか?ずくだんずんぶんぐんゲーム」
「なんて?」
「ずくだんずんぶんぐんゲーム」
「……パルデアってすごい(思考停止)」
少なくともずくだんずんぶんぐんゲームはこの世のどこにも流行ってないし流行らせない。なんならパルデア地方に対して盛大な誤解を招いたぞ。
「というわけで、ずくだんずんぶんぐんゲームで見事勝利したホムラとタロによる、交流試合です」
「ヒューヒュー!楽しみにしてるぜお二人さん!」
「……シアノ校長が言うには、タロは学園の四天王で父親がジムリーダー……まぁそれはどうでもいいが、学ぶものがあるのは事実だな」
リュウセイ達も完全に見学スタイルだ。バトルの審判はケンスケが務めることになった。
「バトル開始の宣言をしろ!ケンスケ!!」
「バトル開始ィー!」
「いっけー!プラスル!マイナン!」
「プララ!」
「マイー!」
タロが繰り出したのはプラスルとマイナン。お互いの特性が能力向上に役立つことで知られており、ダブルバトルで真価を発揮するといってもいいポケモンだ。対するホムラは……。
「グレンアルマ×2!!」
「「グレァ!!」」
まさかのグレンアルマ二体である。そのことで何かを察したらしいリュウセイ達は顔を手で覆ったり天を仰いだりしている。
「むむっ。パルデア地方のポケモン、それも同じポケモン二体……でも、私もブルーベリー学園代表として、恥ずかしいとこ見せられませんね」
「それじゃあ、いくぜ。二体同時にふんえん!!」
「「グレァア!!」」
「……え」
ホムラがとった行動は至ってシンプル……全体攻撃による面制圧だった。それも、グレンアルマはお互いに手を繋いで二人三脚で走りながらプラマイコンビに迫りつつふんえんを放ち、逃げ場を無くしながらの猛攻撃である。
ちなみにこのグレンアルマ、二体とも特性は『もらいび』である。
「プラ~!?」
「マイ~!?」
哀れ、可愛らしい電気鼠兄弟は一瞬で消し炭と化した。黒焦げになりながら目の前まで転がってきた自分のポケモンの姿に、タロはポカンと口を開ける他なかった。
「よーし、まずは二つ。残りはいくつだ?一つか?二つか!いくらでもだしてこい!残りのポケモン、出てこいやぁ!!」
「……なる、ほど。苛烈にして容赦なく、それでいて理に適った戦術ですべてを焼き尽くす。彼の言ったとおりの人ですね。でも、このまま終わるつもりはありませんよ!ドリュウズ!」
「ドリュー!」
タロが繰り出した最後のポケモンはドリュウズだ。コウキ達の脳裏に、イッシュのドリュウズ使いのジムリーダーの顔がよぎった。
「それが最後か?」
「はい。でも、負けるつもりはありませんから!」
「そうこなくっちゃあ、面白くない!!1号、突撃!2号はふんえん!!」
「避けて、ドリュウズ!」
グレンアルマ達は前衛と後衛に別れ、行動を開始した。一体が後方からふんえんを放ちフィールド全体を攻撃する。当然、もらいびなので味方の被害はゼロだ。対するドリュウズははがねタイプなので、もらいびで火力が上がったほのお技は直撃すれば一撃必殺待ったなしだ。
「10まんばりき!」
「受け止めろ!」
「ドリュ!」
「グレン!」
迫り来るグレンアルマに対処すべく弱点技を繰り出すドリュウズだが、ホムラのグレンアルマはやすやすと受け止めてしまった。
「そ、そんな!?」
「ここでテラスタルだ!!」
しかもそのままテラスタルオーブを起動させ、攻撃を受け止めているグレンアルマをほのおテラスへとテラスタルさせたのだ。
「アーマーキャノン!!」
「グレェェェン!!」
「ドリャッ!?」
受け止めた姿勢のまま鎧をスライドさせ砲を形成し、そのまま得意技の一撃を叩き込む。効果抜群な上に火力が上がった一撃を受け、ドリュウズはあっさりと下されてしまった。
「勝負アリ!」
「……物凄い、圧倒されちゃいました」
「また一つ、強くなれたな」
結果だけ見れば、ホムラの圧勝である。戦術というかもはや暴力なコンボ、それぞれのポケモンの特性を利用した面制圧、ダブルバトルを熟知した選出、シングルバトルが主だというパルデア出身とは思えない対応力と適応力、その全てにタロは驚いていた。
「(本気ではなくとも全力ではあろうとした……なのに、その全力すら出させてもらえないなんて)」
最近、同じリーグ部でアカデミーと林間学校で交流した友人は、アカデミー生から「自分のバトルを相手に押し付け、相手の戦術を封じる」という事を教わったらしい。
ホムラは『もらいび×2+ふんえん×2』という相互強化面制圧戦法で、タロのプラマイコンビ戦法を圧殺した。自分のバトルをタロに押し付け、タロの戦術を封じたのだ。
「(彼らから教わったんですね)」
まぁ、肝心のホムラは身内から「やりすぎ」だの「脳死やめろ」だの「ゴリ押しおもんな」など、言葉でボコボコにされていたが。どこか子供っぽいやりとりに微笑ましさを感じながら、タロはホムラ達の元へ歩み寄った。
「すごい!お上手ですね、本場のテラスタルの使い方!さすがって感じでした!」
「ははっ、それほどでも」
「ブルーベリー学園では最近テラスタルオーブが支給されたばかりで、使い方のコツ教えてもらいたいです」
「いいぜ。その代わり寝かせねぇから、そのつもりでいろよ?」
「わわっ……!な、なんだか物凄い覇気を感じる!?」
「なぁに言っとるんだ、このバカタレ」
アホな事を言うホムラをリュウセイがしばきつつ、彼らはシアノが用意してくれたブルーベリー学園の制服を受け取り、更衣室で着替えを済ませる。その後、タロの案内でブルーベリー学園が世界に誇るテラリウムドームへと向かった。
「はえ~、すっごい。これが海中に……どんだけ金かかってんだ」
「これだけの規模……某名探偵世界なら沈没オチ待ったなしだな」
「おいばかやめろ、死神フラグ立てんな」
「つまりここが、アクーシャ2023って、コト!?」
「なっつ、蒼海の王子」
コウキ達が思い思いに感想をこぼしていると、後ろからタロ達が追いついた。
ブルーベリー学園が誇る海中庭園『テラリウムドーム』。壁や天井をプロジェクターで映しているので、海中にいながら屋外にいるように感じられる仕組みだ。シアノが大金をかけて設計したというテラリウムドーム内は、四つの環境エリアが内包されている。それぞれ亜熱帯のサバンナエリア、南国のコーストエリア、渓谷のキャニオンエリア、雪国のポーラエリアとなっている。気温や湿度などがエリア毎に細かく調節されているため生息するポケモンが異なる他、ポケモンが過ごしやすい環境を人工的に作り上げているのだ。
「皆さんはどのエリアが気になっちゃいます?」
「俺はサバンナエリアだな」
「ゴウタさんはサバンナエリアですか。一番オーソドックスですしね。見晴らしがいいのでポケモンの生態も観察しやすいです!」
「俺はキャニオンエリアが気になる」
「コウキさんはキャニオンエリアですか。ゴツゴツ、お好きなんですね。電気石っていう不思議な鉱石もあるんですよ!」
「俺はポーラエリアに行きたいな」
「リュウセイさんはポーラエリアですか。寒いのお好きなんですね!わたしは苦手なんですが、こおりポケモンはかわいいですよね」
「俺はコーストエリアがいい!」
「ホムラさんはコーストエリアですか!うふっ、気が合いますね!わたしも一番好きです!ゆる~い雰囲気が落ち着きます!」
「おっ、そうか?」
すると、ここでタロがそっと顔を近づけてきた。全員が目を離している、完璧なタイミングだった。ホムラもそれに合わせて顔を寄せる。
「……気が合うついでにもう一つ。さっきのバトル、わたしもホムラさんと同じことを考えてたんですよ?」
「……と、いうことは、あのプラマイコンビは隠れ特性か」
「すごい!ご存知だったんですね!」
「そりゃもう、戦ってれば自ずと出来ることは見えてくるからな」
「ますます仲良くなれそうですね、わたし達!」
「だな!」
どうやら、ホムラとタロは意気投合したようだ。バトルで考えが通じ合ったのもあって、二人だけで会話に花を咲かせている。……こいつ性懲りもねぇな。
と、ここで校内放送が鳴り響いた。どうやらコーストエリアで授業があるらしい。コウキ達はタロからマップアプリを、シアノから図鑑アプリを受け取ると、早速コーストエリアへ移動し始め……。
「っと、サザレさん!」
……る、前に。休憩所エリアにいた人物に気がついたゴウタがそちらへ駆けていってしまった。
「ありゃ、本当だ。サザレさんじゃん」
「仕事かもな……邪魔せんとこ」
「だな、ここはゴウタに対応を任せて俺たちは先行しよう」
「行こうぜ、タロ!」
「はいっ」
「(ホムラェ……あとでどうなっても知らんぞ……)」
もう手遅れだぞ、リュウセイ。
コーストエリアで出された課題……それは、アローラの姿のリージョンフォームポケモンを連れてくること。コーストエリア以外にもアローラの姿のポケモンはいるが、ここから一番近いのはコーストエリア生息のアローラナッシーとのことだ。
「あー……」
「もういるんだよなー」
「え?もうすでに持ってるんですか?」
「うん」
そう言って彼らはボックスからポケモンを引き取ると、それをその場に繰り出した。
「ニャ~」
「ペルニャー」
「チュチュウ!」
「アローラのニャース、ペルシアン、そしてライチュウだぜ」
過去のポケモンを連れてこられる『ポケモンHOME』システムによって、彼らは初期段階で連れてこられるポケモンはすべて連れてきている。DLC実装前から連れてこられた別地方のポケモンは完全に網羅しているのだ。
「わぁ!これならあっという間に課題クリアですよ!」
「ラッキー!」
「おけおけ、次行こ、次」
「……それにしても、こんなに準備がいいところを見るに、ひょっとして授業内容を知ってました?」
「仮にもパルデアの看板を背負ってんだ、行き先の下見や情報収集は欠かしてないんだぜ」
「熱心な方なんですね、ホムラさんって!」
「恥をかきたくないだけさ、ただの見栄だよ」
「謙虚ですねぇ」
「(ホムラってさぁ……なんでこう、ねぇ?)」
「(知らん。どうせ葵も見てるだろうに、理解力ゼロかよ)」
着々と自身の手で地獄への道を舗装しているホムラを、白い目で見つめるコウキとリュウセイ。一方、授業が終わったタイミングで着信が来たのか、ゴウタがスマホロトムで通話をしていた。
《ゴウタよね!?あたし、ゼイユだけど!》
「ははっ、ひっさしぶりだなーゼイユ!元気してたか?」
どうやら電話先はキタカミの里で縁を育んだゼイユのようだ。ゴウタの声色にも、喜色の色が混ざる。
《そ、それはもちろん……じゃなくて!聞いたわよ!あんた今、ブルーベリー学園に留学してるんだって!?》
「おっ、耳が早いなぁ。誰から聞いたんだ?」
《ふふん!先生から聞いたの!まさかあんたがブルベリにいるとはね。……ね、ねえ。久しぶりにちょっと顔見せなさいよ》
「お、いいぜ!俺もゼイユに会いたかったんだ!」
《ホントに!?……あっ、ゴホン!えーと、そうね……テラリウムドームには行った?》
「今まさにテラリウムドームの中だぜ」
《あら、それならちょうどいいわね。ドームの中心にセンタースクエアって広場があるから、そこで待ち合わせしましょ!待たせたら……わかってるわよね?》
「あぁ、わかってるよ。すぐに向かう」
ゴウタが通話を切って顔を上げると、いつの間にかタロがいなくなっていた。少し離れた場所で話をしているコウキ達に合流する。
「おまた~」
「おう、誰から?」
「ゼイユ。センタースクエアって場所で、久しぶりに会わないか、だとよ」
「ほぅ、ゼイユか……久しい名前だな。センタースクエアは……中心地か」
「しからば、移動開始だ」
五人は全員で移動し、センタースクエアに向かう。どうやら各エリアの境界線を内側に向かって進んでいけば近道になるようだ。コウキはミライドンを、ホムラはコライドンを繰り出しライドし、リュウセイ達もそれぞれに相乗りする。
「……ところで、今度は変なものを積んでないだろうな?」
「残念ながら予算の都合で今回はいい感じのものを取り付けられなかったよ……」
「載せたかったわー、太陽炉」
「GN粒子でもれなく通信障害発生でNG出るからやめろ」
「しょうがないのでゲッター線(1970年代初期設定仕様)で妥協します」
「その微妙にアウトかセーフかあやふやなグレーを攻めるのやめろ!?」
「OVA版じゃないだけマシだと思え!!」
とーびだせゲッター!の掛け声と同時に緑色の光を纏ったコラミラは"ドワォ!"という爆発音とともに飛翔、不規則な機動で飛び回りながらセンタースクエアへと飛んでいった。ケンスケの絶叫だけを残して。
無駄に超高速で飛び回りながらたどり着いたセンタースクエア。そこではコウキ達五人が全員グロッキー状態でぶっ倒れていた。
「さ、流石の俺らでもゲッター高速移動に挑むには三半規管が弱すぎた……」
「こ、これがイシカワイズム……
「見事に巻き添え食った俺らに言うことはねぇのか、お前ら……」
「……それで、ケンスケは?」
「0(:3 )~ _('、3」 ∠ )_」
「あぁ、あいつはいいやつだったよ……」
まるで死屍累々の様相を呈していたが、しばらく休むと回復できたので彼らはセンタースクエアへと足を踏み入れた。ケンスケ?ふっかつそうをぶち込んだら生き返ったよ。
センタースクエアのバトルフィールドへ向かうと、ゼイユがいた。どうやら知人と話し込んでいるようだ。とりあえずコウキらはそちらへ歩み寄った。
「そうなのよ、ちょっと大変でさ……」
「心中、察する。ゼイユ……来客」
「……!!スゥー、ハァー……ゴウタ!ひさし、ぶ……り……」
「よう!ゼイユ!!会えて嬉しいぜ、元気そうでなによりだ!!」
なぜか一泊おいてから、ゼイユは満面の笑みで振り返り……ゴウタ、というよりも、その後ろの四人を見て固まった。ゴウタ達は誰も気づいていないようで、ニコニコガヤガヤ騒いでいる。
「うおっ、マジにゼイユだ」
「久しぶりだな、ゼイユ!スグリは元気か!?」
「お前友達いたんだな」
「林間学校以来だな、ゼイユ」
「コウキあんた後で覚えてなさいよ」
「やっべ」
わちゃわちゃしながらも再会を喜ぶ彼ら。ゼイユは一旦彼らに背を向けると頭を抱えていた。
「(おかしい、あたしはゴウタのことしか校長先生に話してないはずなのに、なんでコイツら全員いるわけ!?……二人でドームの中とか、見て回るつもりだったのに……!)」
どうやら、ゼイユにはとある打算が含まれていたようだが、世の中なんてそんなものである。こんなはずじゃないことばっかりだよ!
「どした、ゼイユ?大丈夫か?話聞こか?」
「うぇ!?だ、大丈夫よ!それより!ひさしぶりねゴウタ!すっごく会いたかったでしょ!?」
「あぁ、すっげー会いたかった!会えて嬉しいぜ!抱きしめていいか!?」
「だっ!?わっ、ちゃ、まっ……!ううぅ……こんなはずじゃないのに……」
「(しまった、今のは四番目の甥っ子といっつもやってるやつだった。ついいつもの感じで言っちまったぜ。あいつ、俺の筋肉質体型に憧れてたからなぁ)」
どうやら身内へのスキンシップを勢いだけで他人であるゼイユにもうっかり要求してしまったらしい。やっちまったと頭を掻くゴウタと赤面して俯くゼイユと、対照的な反応をする二人だった。
一方、ゼイユの後ろで完全に蚊帳の外になっていた少女は、なぜかホムラに対してきつい視線を送りながらも、懐中時計を取り出して時間を確認しつつ、ゼイユに声をかけた。
「時間……ゼイユ、会えてよかった。さようなら」
「あ、うん。またね!」
歩き去る少女を見送り、改めてゴウタ達の方へ振り返る。どうやらあの少女はゼイユと同級生で、いわく「おもしれー女」。おまいう。
「……それにしても、ブルベリにゴウタがいんの、なんか不思議な感じするわ。というか、よく見たらあんた……全然変わってないわね!」
「言うねぇ、『男子三日会わざれば刮目せよ吾輩の名前はラプラス・ダークネスだ』って言うだろ」
「いや、誰よラプラス・ダークネスって。ラプラスの新種か何か?」
「無関係だ、気にするな」
「じゃあなんで名前出したのよ!」
ゴウタのボケにツッコミを入れるゼイユだが、その雰囲気はどこか楽しげだ。コウキ達は頑張って背景になろうと遠巻きに二人を見つめるべく移動している。いらん気遣いである。
「あたしは最近、ブライア先生といろんな地方調査してまわってるから?前戦った時より、ポケモン強くなってるのよねー」
「へぇ……」
「うふふ。当然、見たいでしょ?ちょうどバトルコートもあるし、位置につきなさいよ」
「いいぜ……バトルとなれば話は別だぜ」
どうやらゴウタとゼイユはバトルをする流れのようだ。それぞれが位置につき、モンスターボールを構える。
「ダブルバトルでやるわよ!覚悟はいい?一泡吹かせてあげる」
「あぁ……楽しませてほしいな」
「(……っ。このプレッシャー……相変わらずバトルの時だけ怖いんだから……!)」
巨漢が凄むという絵面に身が竦みそうになるゼイユだが、己を奮い立たせて先手のポケモンを繰り出した。
「グラエナ!ドデカバシ!」
「グラァ!」
「デカバー!」
「ルガルガン、ピクシー」
ゼイユの先発はグラエナとドデカバシ、ゴウタはルガルガンとピクシーだ。
「ピクシー、ルガルガンにスキルスワップ」
「クシッ」
「何企んでるのか知らないけど、そう簡単にはやらせないわよ!せっかくだから味わいなさい、テラリウムドームの土の味!ドデカバシ、ルガルガンにじごくづき!グラエナはピクシーにあくびよ!」
ゴウタが先を弄するよりも先に機先を制する、とばかりに攻勢に出るゼイユ。ピクシーのスキルスワップが決まった直後、ルガルガンにじごくづきが襲い来る。
「ゴウタには人の心がないんか……?」
「まぁ、ゴウタだからな」
「中途半端に手を抜くなら、全力でぶっ潰すほうを選ぶだろ、あいつ」
ルガルガンはドデカバシのじごくづきを耐え切った……直後、ドデカバシはメロメロ状態になり、さらにルガルガンはゴウタの控えに戻ってしまったではないか。
「えっ、は?」
「ピクシーの特性はメロメロボディだ。スキルスワップでメロメロボディへと特性が変わったオスのルガルガンへの物理攻撃……そっちのドデカバシはメスだったみたいだな。そして、俺はルガルガンに"だっしゅつボタン"を持たせていた。これにより、俺は攻撃を受けたルガルガンを別のポケモンへと入れ替える。……キョジオーン!」
「ジオ」
だっしゅつボタン。持たせたポケモンが攻撃によりダメージを受けたとき、控えのポケモンと入れ替わる効果を持つ持ち物だ。これによりルガルガンとキョジオーンが入れ替わり、呆気に取られるゼイユを置き去りにしてゴウタはすかさず指示を出す。
「ピクシー!もう一度スキルスワップ!」
「クシー!」
「……っ!させるか!グラエナ、キョジオーンにいかりのまえば!ドデカバシもじごくづき!」
「グラァ!」
「どへへ~……」
「ちょ、ドデカバシ!?」
グラエナは猛然とキョジオーンに突っ込むが、ドデカバシはメロメロ状態で上手く行動できなかった。グラエナの動きを見てから、ゴウタはにやりと笑った。
「気持ちいいくらい予想通りに動いてくれるよな、ゼイユって」
「は?」
「キョジオーン、テラスタルだ!」
「はぁ!?」
ここでゴウタ、動く。テラスタルオーブを放り投げ、キョジオーンをテラスタルさせた。テラスタイプは……。
「ゴーストテラス、キョジオーンだ」
「はぁぁぁぁぁ!?」
まさか、ゴーストテラスという予想外の展開に、ゼイユは絶叫を禁じ得なかった。いかりのまえばはノーマル技なので、当然だがキョジオーンには効かない。
初手でグラエナからあくびを受けたピクシーだが、キョジオーンの特性「きよめのしお」とスキルスワップしたため、眠り状態にはならなかった。
「では、地獄を始めよう。キョジオーン……じわれ」
「ジオー」
「グラアァァ!?」
「グ、グラエナ!?」
特性ノーガードと化したキョジオーンからの情け遠慮容赦慈悲一切無しの一撃必殺技。当然、避けられるはずもないのでグラエナは一撃だ。
「さぁ、次はどうする?」
「……あんた、久々に会った友達とのバトルですることじゃないでしょ、これ」
「全力じゃないと悪いかなって思って」
「女に花を持たせるくらいしなさいよ!ズルズキン!」
「ズッキー!」
ゼイユの三体目はズルズキン。ゴーストテラスでゴーストタイプとなったキョジオーンからすればこの上なく厄介な話だ。ただ、ゴウタも無策で戦っているわけではない。
「キョジオーン、ドデカバシにのろいだ」
「ズルズキン、キョジオーンにかみくだく!」
「通らんよ。ピクシー、このゆびとまれ」
「ピッピピ」
「なぁ……!?」
ドデカバシはメロメロ状態で動けないところへきて、さらにキョジオーンからのろいを掛けられた。体力が減ったキョジオーンへ畳み掛けようとするゼイユだが、それもピクシーのこのゆびとまれで、躱されてしまう。
「キョジオーン、じこさいせい」
「それなら、先にピクシーを!ズルズキン、れいとうパンチ!」
「ピクシー、まもる」
「ピ」
「うがああああっ!!」
ならばピクシーから潰そうとするも、ピクシー自身にも自衛手段があったようであっさりと攻撃を防がれた。
「(ドデカバシを下げて、ヤバソチャでなんとかするしか……)戻って、ドデカバシ!」
「キョジオーン」
「行って、ヤバソチャ!」
「ソチャー!!」
「じわれ」
「あ」
「ヤバー!?」
「ピクシー、ねがいごと」
切り札のヤバソチャによるくさテラスタルで状況の打開を考えるが、その交代は完全に読まれていた。ボールから元気よく飛び出したヤバソチャは、直後にじわれを食らってワンパンされた。見事な出オチである。
「……ぐすんっ」
「あー……その、なんかすまん」
「同情なんていらない……!」
出オチしたヤバソチャをボールに戻し、ドデカバシを再度繰り出す。一度ボールに戻したことでメロメロものろいも解けているし、ドデカバシはひこうタイプなので幸いにもじわれが当たることはない。あくタイプわざのじごくづきもあるので、戦えないことはない。……戦えるかどうかは別としてだが。
「ドデカバシ、じごくづき!ズルズキン、かみくだく!」
「ピクシー、このゆびとまれ。キョジオーン、ドデカバシにのろいだ」
「ムキーッ!!」
そろそろコウキ達は「ゼイユ可哀想可愛い」とか思い始めた頃だろう。実際、弄っててもおもしれーしな、この女。
「キョジオーン、じこさいせい。……ねがいごとが決まったか」
「いや、ここまで来たら攻めて攻めて攻めまくりよ!!ドデカバシはダブルウイング!ズルズキンはれいとうパンチ!」
「ピクシー、このゆびとまれだ。キョジオーンはズルズキンにじわれを」
ピクシーが攻撃を引き受け、キョジオーンが一体ずつ相手を葬り去る。今も、ドデカバシのダブルウイングを受けた後、ズルズキンのれいとうパンチを受け止めると放り投げ、落下地点にキョジオーンのじわれが炸裂しズルズキンが戦闘不能になった。
「残りはドデカバシのみ。……といっても体力的に次の行動がラストかな」
「あ、諦めるもんですか……!ドデカバシ、キョジオーンにじごくづき!」
「キョジオーン、まもる」
「(゚ロ゚)」
最後まで諦めない心で果敢に攻めるゼイユだが、ラストアタックもキョジオーンのまもるで防がれ、ここでのろいの効果によりドデカバシの体力が尽きた。完全決着である。
「思ってたのとだいぶ……いやかなり違うんだけど」
「対戦ありがとうございました。またやろうぜ」
「二度とやるか!?」
ありえないレベルでの圧倒的な差を見せつけ、圧勝したゴウタ。敗北し、再戦すら拒否したゼイユだが、どこか嬉しそうではあった。
「あーあ、せっかくテラスタルも使いこなして強くなったと思ったのに、テラスタルさせてもらえなかったどころか、もっと強くなってるんだもん!その容赦のなさ!全然変わってないわね」
「褒め言葉として受け取るぜ。ゼイユも変わりなくて良かった。以前よりも洗練されているなとは思ってたけど、どうやら勘は当たってたみたいだ」
「よく言うわね……こっちのやりたいこと、なにもさせてくれなかったくせに」
「そこはそれ、詰めが甘いってな」
「(遠いな……ゴウタの背中……)」
以前と変わらず、いや、それ以上に強くなっているように感じるゴウタの姿に、ゼイユは突き放されたような寂しさを感じていた。だが、それも、ゴウタに頭をワシャワシャと撫でられたことで吹っ飛んだが。
「ななななな!?」
「そう落ち込むなって!ポケモンの役割とかちゃんと理解すれば、お前も強くなれるって」
「……あんたたちのバトルって、なんか別のものと戦っているみたい」
はぁ、とため息をつくゼイユ。そのため息の意味がよくわからず首を傾げるゴウタの元に、コウキ達が集まった。
「おつ~」
「あのさぁ……もうちょっとさぁ……ねぇ?」
「ノーガード戦法とかここですることじゃないと思うんだが?」
「いや、これは俺なりの敬意なんだが」
「そんな無慈悲な敬意なんぞドブに捨てちまえ!」
「(あれ、そういえばスグリの姿が見えんな……ゼイユと一緒かと思ったが)」
コウキ、リュウセイ、ケンスケがゴウタの所業にツッコミを入れる中、ホムラだけはスグリの姿が見えないことを気にしていた。前回ではだいぶ原作乖離が起こっていたので、スグリもそこまで重症化していないだろうと考えていただけに、アテが外れていた。
「ねえ、ところでさみんな。スグとは……会った?」
「スグリ?そういえば見てないな」
「俺たち、てっきりゼイユと一緒にいるもんだとばかり」
「スグリになにかあったのか?」
「あ、いや……会ってないならいいんだけど」
妙にお茶を濁すような言い方をするゼイユに全員揃って首を傾げた、その時だった。
「どうして言われたこともできないんだよ!!」
センタースクエア全体に響くような怒号。どこかで聞いたようなその声に、全員がそちらの方へ顔を出した。
そこにいたのは……
三話構成にしようとすると一話あたりの話数が馬鹿にならなくなったので、話数を増やしつつ複数話同時投稿という形で行こうと思います。
修正前の一話が30,000文字超えは流石にビビった。もうちょっと文字数絞らないと!しかし、逆に一話150,000文字(最大文字数)まで書こうとすると、一体どんな長編大作になるんだろうか……。