翌朝。朝食を済ませた一行は早速キャニオンエリアにあるキャニオンスクエアに向かう。コライドンとミライドンにそれぞれ相乗りをするとさっそく移動開始だ。
「(なにもありませんようになにもありませんようになにもありませんように)」
「じゃあ、行こうか」
「ウェーイ」
そして、そのまま移動を始めた。
「……おっ、今回は何もなしか!いやー流石に毎回アレだとついにネタ切れか?」
「そうだなー……なにか載せれたら良かったんだけどな」
そのままダッシュを始める。次第にキャニオンエリアとの境界が見え始めた。するとその途中でサイホーンが走ってくるのが目に付いた。しかも方向的にちょうど接触しそうだ。
「おい、あれいつかぶつからんか?」
「ん……?おっと危ない」
ドヒャア!!
「のゎお!?」
「おっと急カーブ。気をつけろよ、コウキ」
「悪い悪い」
「いや待てや今のQBやろがいどうなっとんねん!?」
「いや、どうなってって……こうなったとしか。おっとドードリオ」
ドヒャア!!ドヒャア!!
「ぎゃあ!?」
「おいおい、なるべく安全運転で頼むぜ?」
「なんでリュウセイは平気なんだよ!?」
「安全運転了解!!」
ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!ドヒャア!!
「あ~ん~ぜ~ん~っ!?」
「⊂⌒~⊃。Д。)⊃ コジマ……コジマコワイ……」
「で、ケンスケはあの様と」
「だらしねぇな」
「とりあえず、キャニオンスクエアには着いたぞ」
野を越え山を越え、一行は無事(?)にキャニオンスクエアに到着した。そのまま受付を済ませると、さっそくネリネの四天王チャレンジに挑むこととなった。場所を変え、高台へと移動する。
「アナタ方がリーグに挑むのは特例中の特例。ネリネは反対しましたが、学園が承認したならそれが規則。ネリネは四天王として、つつがなく進行するだけ」
「特例か……まぁ、たまにの
「それに
「……ですね」
それからネリネから四天王チャレンジの説明がされた。内容は『空飛ぶタイムアタック』だ。ライドポケモンの飛行能力でドーム上空に設置されたリングのコースを飛び、タイムを競うというものだ。時間内にゴールまで到着できれば合格だ。
「お手持ちのライドポケモンをお出しください」
「「おk」」
「アギャッス」
「ギャオッス」
コウキとホムラがそれぞれミライドン/コライドンを出す。ネリネは鳴き声からミライドンを「アギャッスさん」、コライドンを「ギャオッスさん」と呼び、丸薬を食べさせてくれた。これにより、ミライドンとコライドンは一時的に飛行能力を獲得したのであった。
さっそく始まった四天王チャレンジ。しかしコイツら、「時間内にゴール」を「〇〇秒以内じゃないのかヨシ!(現場ネコ)」と考え、ガバルール万歳とばかりにショートカットしまくったのだ。そのため、過去最速の四天王チャレンジクリアとなり、さしものネリネも言葉を失っていた。
「よし、全員無事に終わったな。コライドン、ありがとな」
「ミライドンもご苦労さん。……どうした、ネリネ」
「……いえ」
「はっきり言ってくれていいぜ?俺たち、なるべく無駄は省きたい人間だからああいう場合はショートカットしがちなんだ。わかってくれ」
「ええ、それは……はい」
とりあえず当たり障りのない対応にとどめておいたネリネ。スクエアに戻ったところで、唐突にこんなことを言いだした。
「……提案」
「ん?どうした?」
「ネリネはまず、ホムラ……アナタと戦いたい」
「お?俺か」
「そういえば、部室でもホムラに宣戦布告してたな。なにか理由が?」
「…………」
「言いたくないなら、それでもいいさ」
ネリネはリーグ部の部室でも、ホムラに対しては「負けたくない」と言っていた。そこには並々ならぬ感情が込められていたように見えたが、真意のほどは定かではない。ケンスケがその辺の事情を尋ねてみるが、ネリネは沈黙を貫いた。
「オーケーオーケー、やろうか」
「では、フィールドへ」
フィールドへ移動し、対面。コウキ達は変わらずスクエアの受付で待機だ。
「……ネリネはアナタに聞いてみたかったことが、ひとつ。ホムラはスグリをどのように認識しているのですか?」
「認識ってのは、どういうやつかってことか?それなら簡単だ。スグリは俺の友達で、ライバルだ」
「友達で、ライバル……ですか」
「おう。俺は欲張りだから、バトル関係でのライバルも欲しいし、バトルとは無関係な友達も欲しいわけ。せっかくだからスグリには兼任してもらおうかなと」
「……なるほど」
「せっかくだ、こっちからも質問を返していいか?」
「いいでしょう。ネリネにとってスグリは、友ゼイユの令弟。今の彼は以前とは違う……ネリネも案じています。そして願わくば、ネリネが彼を救いたい。したがって、負けることは許されません」
「……救い、ねぇ」
この時、ホムラはこれまで見せなかった表情へと初めて変えた。その感情の名は、呆れ……そして、憐憫。
「さて、俺はネリネに対してなんと返すのが正解かな?『友達思いのいい人だ』というありきたりな賞賛か、『烏滸がましいな弁えろ』というありふれた非難か。うーん、悩める」
「悩める……?アナタはスグリの友人兼ライバル。なぜ彼を救うことが烏滸がましいと」
「あん?そりゃスグリの方から『助けてくれー』と言われれば助けるし、『どうすりゃええの?』って相談されたら話を聞くさ。スグリが悩み、迷ってるなら『大丈夫か?』、『手ぇ貸そうか?』って声くらいはかける。
けど、スグリの方からなにも聞いてないのに勝手な思い込みで『苦しんでるなー、困ってるなー、大変そうだなー』って決めつけて『ほな助けるか』ってなるのは傲慢だろ。ネリネ……言っちゃあ悪いが、お前はどうしてスグリがああなったのかをざっくりにしか理解してないだろ」
「それは……!」
ホムラの指摘に対して、しかしネリネは何も返せない。ゼイユからもいくらか話を聞いているが、
「あぁ、そうか。ゼイユも言うほど語っちゃいないか。そりゃ事情が分からなきゃ林間学校から戻ったスグリに何かがあった、としか考えられないわな」
「原因なら既に、理解しています。ホムラ……アナタが、スグリを変えた。今のスグリは、アナタが中心にいる」
「だから、俺に勝てばスグリも多少は変わるだろうと……浅はかだねぇ」
「アナタがそれを言うのですか……!」
「さて、俺はスグリとポケモンバトルをしただけだぜ?俺自身にスグリをどうこうという意図がない以上、それでスグリが変わったなら変わろうと決めたのはスグリ自身。……少なくとも、俺からどうのこうのと言う資格はないな」
「それでも……アナタがやらないのなら、なおのことネリネが……」
「いい加減にしろよ、テメェ」
ここでついに、ホムラの言葉に怒気が宿る。心なしか髪が揺れ、オーラのようなものまで溢れ出す。
「なぁ、なんで気づかねぇんだよ?救うだなんだとかアホ抜かすテメェが一番スグリを見下してんだよ。庇護すべき存在だと?スグリは要介護者じゃねえ、一人で立って歩ける男なんだよ。その男が試行錯誤して間違えながらも必死こいて成長しようとしてるのを、言うことに欠いて『異常だ』とでもほざくのか」
「なっ……」
「俺らだって今のスグリは普通じゃないと感じてるし、普段のスグリとは打って変わった成長に驚いてるよ。でもな、あいつ自身は本気なんだよ。だから俺たちはひとまず今のスグリの成長っぷりを見てやりたいって思ってるし、バトルを介して受け止めてやりたいと考えてる。俺らより強くなったなら素直に賞賛するし、俺らだって次こそ勝つために再度強くなる。ダメならダメでしゃーない、頑張ったことに意味があるんだし無駄なことなんて何もない。敗北を糧にスグリはまた一つ成長するだろうよ。
なのにお前ら揃いも揃ってスグリの努力そのものを全否定する気かよ。いいご身分だな、何様だよテメェら。方向性や手段は道を正すなり導いてやればいいだろうが。だがな、努力をしようとする、努力をしているスグリの姿勢まで否定するようなら……二度と
それは、あまりにも強すぎる決意の力。その背後に、青の結晶に身を包んだ飛竜のような姿のポケモンを顕現させるほどのオーラを放つホムラに、寡黙かつ機械的なネリネも目を見開いて震え慄いた。しかし、それも一瞬のこと。ホムラの背後の竜が姿を消し、ホムラがボールを構えていたからだ。
「なんかスグリだけどげんかせんといかんとか思ってたが……他にも荒療治が必要な奴がいたとはな」
「ホ、ホムラ……アナタは、いったい……」
「俺か?話長くなるけどいいか?俺はパルデアアカデミーオレンジクラスのホムラ、幼馴染で同級生の……」
「いえ、結構です」
「ちぇ……それじゃ、戦闘開始と行こうか」
「ええ。行きなさい、ダグトリオ、エアームド」
「ライチュウ、ズルズキン」
ネリネの先発はアローラダグトリオとエアームド、ホムラの先発はアローラライチュウとズルズキンだ。
「(アローラのライチュウ……エスパーとの複合のでんきタイプ。エアームド及びエンペルト対策と推測。ズルズキンはネリネの得意とするはがねに加え、対ランクルスを想定と断定。ならば、まずはライチュウから……)エアームド、ステルスロック」
「ズルズキン、ねこだましだ!ライチュウ!」
「……っ、ダグトリオ!」
「「ふいうち!/はやてがえし!」」
初手の行動、ネリネの行動は実にわかりやすい。エアームドはステルスロックを巻きつつ、ふきとばしで相手を強制交代させてダメージを与え、ダグトリオはエアームド対策のほのおやでんきのポケモンを刺すためのじめん技をぶっぱなす。これにより、幾人もの挑戦者を屠ってきた。だが、ホムラはその上を行った。
エアームドの機先を制したのはズルズキンで、エアームドへの追撃を警戒したネリネはダグトリオのふいうちであくに弱いアローラライチュウを落としにかかった。だが、ライチュウが繰り出した技はふいうちやねこだましといった先制技を上から潰す先制技のはやてがえし。さらにはやてがえしには怯み効果もあるため、ダグトリオもまた動きを封じられたのだ。
「なっ……(手が、読まれた?そんな、ばかな……)くっ、ダグトリオじしんです!」
「ライチュウ、エアームドにボルトチェンジ!」
手の内を読まれて先手を取られるという、少なくともネリネ自身は未だ未経験の展開に、らしくもなく焦りが出た。じしんでまとめて倒そうと試みるも、ライチュウはそれよりも速く動いてボルトチェンジによる交代技でエアームドを倒しつつ入れ替わった。
「ロトム!」
ライチュウと入れ替わりで出てきたのは特性ふゆうを持つヒートロトムだ。ここでダグトリオがじしんを放つべく構えを取り――
「ロトム、ダグトリオにトリック!ズルズキンはロトムに乗れ!」
――ここでさらに奇想天外な指示がきた。ズルズキンは指示通りヒートロトムの腕のプラズマに掴まり、ロトムはトリックでダグトリオと道具を入れ替えた。
「入れ替えたのはこだわりメガネだ。つまり?」
「……ダグトリオは今後、じしんしか使えない……」
「そしてロトムは浮いてるし、ロトムに乗っかるズルズキンにもじしんは当たらない。ほかにそっちに浮いてるポケモンがいないなら、そちらばかりが被害甚大……さぁ、どうする?」
どうする、とホムラは問うが、ネリネ自身に選択肢などあってないようなものだ。ネリネの手持ちポケモンでじしんを半減ないしは無効化できるポケモンはエアームドしかおらず、他は等倍以上と一貫している。ランクルスにはまもるを覚えさせているが、言い換えれば二回に一度は必ずまもるを使わざるを得ないという行動制限が課せられる。だから、選択肢などあってないようなものなのだ。
「……行きなさい、ランクルス。ダグトリオは交代……エンペルト!」
ネリネは倒れたエアームドに代わりランクルスを出し、こだわりメガネで思うように動けないダグトリオを下げてエンペルトに入れ替えた。
「おk、潰すか。ズルズキン、ランクルスにかみくだくだ」
「ランクルス、まもる!エンペルトはロトムにハイドロポンプ!」
「ロトムはかみなり!タスキあるから攻撃は受けてもいいぞ!」
「ロトト!」
ロトムから跳躍したズルズキンはランクルスに技を見舞うもこちらは防がれる。逆にズルズキンが飛び出す直前に動きを止めたロトム目掛けてエンペルトのハイドロポンプが迫るが、ロトムは事前にトリックでダグトリオのきあいのタスキを所持していたため耐えられる。逆にハイドロポンプを利用して水流に電撃を流し、確実に避けられない状況で効果抜群技をぶち当てた。
「エンペルト……!ならばランクルス、トリックルーム!」
「させねぇんだわこれが!ズルズキン、ちょうはつ!」
「くっ……」
エンペルトは戦闘不能、ランクルスも後続につなげるためのトリックルームを仕掛けようとするも、ズルズキンのちょうはつで変化技を封じられてしまった。
「ハッサム!」
ネリネ、三番手にハッサムを繰り出す。
「一匹、仕留めます……ハッサム、ロトムにバレットパンチ!ランクルスはズルズキンにエナジーボール!」
「おっと、そうはい神崎!ロトムもどれ!行け、スコヴィラン!」
残り体力が少ないロトムを先制技で落とそうとするも、ホムラは判断素早くロトムをボールに戻し、入れ替わりでスコヴィランを繰り出した。スコヴィランはくさ・ほのおの複合タイプなので、ハッサムのバレットパンチは効果はいまひとつだ。
「わかってりゃ、即時交代も容易いのさ。ズルズキンも、よく耐えた」
「手応えがない……ほのおタイプですか」
「そのとおり!」
ここでホムラはテラスタルオーブを構えた。テラスタルエネルギーが収束し、オーブを投げた先にいるスコヴィランがほのおテラスへとテラスタルした。
「あげていくぜぇ!!スコヴィラン、ハッサムにかえんほうしゃだ!」
「させない……ランクルス、スコヴィランにサイコキネシス!」
「盾になれ、ズルズキン!」
「ハッサム、躱しなさい!」
まず、スコヴィランがハッサムにかえんほうしゃを構え、その時点でランクルスがサイコキネシスを放った。だが、サイコキネシスはスコヴィランへの射線上に立ちはだかったズルズキンのあくタイプによって消失する。スコヴィランのレッドヘッドからかえんほうしゃが放たれ、ハッサムはこれを跳躍して回避するが……。
「判断が甘いなぁ!グリーンヘッド、テラバーストだ!!」
「!?」
ホムラの指示を受けて動き出したのは、炎を吐けないグリーンヘッドだ。グリーンヘッドはレッドヘッドと異なり火炎を放てないが、それはほのお技の話。テラスタルの力を借りれば、火炎を吐けないグリーンヘッドもテラバーストという形で炎を吐き出すことができるのだ。跳んだばかりで身動きが取りにくいハッサムへ、グリーンヘッドからのテラバーストが炸裂した。直前にオッカのみを食べていたが……焼け石に水だったようだ。
「ハッサム……!ランクルス、サイコキネシス!」
「ズルズキン、ふいうちだ」
ランクルスの攻撃の矛先が再びスコヴィランに向けられるも、それよりもさきに動いたズルズキンのふいうちにより、ランクルスもまた倒れた。
「残りはメガネダグトリオと……なんだ?」
「(ポケモンの戦闘能力もさる事ながら、トレーナーの判断力も凄まじい。特に学園に生息していないポケモン……手の内を探りながらでは、先にこちらが敗れてしまう。現に、ネリネは追い詰められている。それでも……それでも、負けるわけにはいかない……!)」
ネリネの脳裏をよぎるのは、死に物狂いで強くなろうと必死になるスグリの姿。強くなり、ブルベリーグチャンピオンとなってもなお追い続ける遠い背中、呟かれたその名は……ホムラ。
「メタグロス」
「(お、600族)」
「……時間がおしています。そろそろ決着とまいりましょう」
「面白い、来いよ」
ネリネの最後の一匹はメタグロスだ。さらにネリネはメタグロスをはがねテラスへとテラスタルさせ、決戦へと臨んだ。
「まずはスコヴィランを落とします。ダグトリオ、ストーンエッジ。メタグロスはしねんのずつき」
「(スコヴィランは落とされちゃ困るな)ズルズキン、スコヴィランを庇え!」
ホムラの指示にも決死の覚悟で従い、ズルズキンはストーンエッジを受け止め、さらにしねんのずつきも阻む。だが、ここでメタグロスがズルズキンを腕の爪で捕まえた。
「捕捉しました」
「あぁ、ズルズキンはここまでだ」
「では、遠慮なく……ハードプレス!」
メタグロスのハードプレスが炸裂し、ズルズキンは戦闘不能となった。だが、ホムラにとってはこの戦闘不能も織り込み済み。冷静にズルズキンをボールに戻し、次のポケモンを繰り出した。
「よっしゃ!サーフGO!!」
ホムラが次に繰り出したのはサーフゴーだ。全国図鑑番号No.1000に選ばれたポケモンで、SV実装済みポケモンの中で唯一のはがね・ゴーストのポケモンだ。ギルガルドの入国はよ。
「また、未知のポケモン……」
「はがね・ゴーストのサーフゴーだ。さあ、バトルを終いにしようか」
「いえ、まだです……ダグトリオ、ストーンエッジ。メタグロスはハードプレス!」
「サーフゴー、きあいだまで蹴散らせ!スコヴィランはレッドヘッドがかえんほうしゃ、グリーンヘッドがテラバーストだ!」
サーフゴーが「オラに気合を分けてくれー!」とばかりに構えを取ると、スコヴィランのダブルヘッドが火炎で援護する。弱点であるほのお技に阻まれ動きが封じられたメタグロス達に、特大にまで巨大化させたサーフゴーのきあいだまが放たれ炸裂した。
二匹まるごと飲み込み大爆発。煙が晴れた先では、目を回して倒れるメタグロスとダグトリオの姿があった。
「ネリネでは……ダメですか」
「対戦ありがとうございました」
バトル終了。全てホムラの想定通りに展開することができた。二人は再びフィールドの中央に集まる。
「ポケモンの強さ、それは思いの強さ。スグリを思う気持ちは、ネリネよりホムラのほうが強いのですね」
「ん?そんなことはないと思うが。さっきはあんなこと言ったけどよ、伊達や酔狂、ましてや同情や偽善でスグリを助けようとしてるわけじゃないってことはわかってるぜ。ただ……あのままスグリを救おうなんてしようもんなら、きっとネリネまで傷ついちまう。そう思っての忠告のつもりだったんだが……言葉が悪かったよな、すまん」
「……ホムラ……優しいです」
「なはは、そんなでもないさ」
ホムラは否定しているが、ネリネもまたそんなことはないと言った。勝利後の写真撮影を終えると、ホムラの方から話しかける。
「ネリネ、今のスグリは俺らしか見えてない。だが、俺らがスグリを倒したところで劇的に変化するとも思えん。アイツは一人で強さを追い求めている。けど、他に追い求める者が、仲間がいれば、あいつも少しは足並みを緩めるかもな」
「仲間……ですか」
「ネリネよ、お前はどうして強くなる?強さにだって千差万別の理由が、目的が、意味がある。俺らだって怠惰で強くなってるわけじゃねえ。強いってのは、それだけでできることがある。
例えば、そうだな……悪の組織なんかが台頭した時の対抗馬になれる、とか」
「!!」
ホムラが一例を上げると、ネリネの顔が僅かに強ばった。ホムラはその変化に気づかないフリをしながら、話を続ける。
「仮の話だがな。今のところそんな話は聞いてないが、もし仮に現れた場合、力あるトレーナーが立ち上がらなければならないだろう。例えそれが子供であろうとな……」
「……そのようなことが、ありえるのですか」
「ありえないなんてありえない、だぜネリネ。もし悪い奴らがパルデアに侵略に来たんなら、ジムリーダーよりも前線に出て戦ってやるよ」
「ホムラだけで勝てるのですか」
「そのための仲間、だろ?」
「あ……そう、ですね」
パルデアにはホムラだけではない。コウキ達もいるし、ホームウェイ組もいる。力ある子供は、決して一人ではないし、徒党を組むのは恥ではないのだ。
「俺から言えるのは、最後までスグリを見捨てないで、見守ってやってくれってことだ。それは、ネリネやリーグ部のみんなにしかできないことだ。だから、俺から言わせてもらう。スグリのこと、頼んだぜ」
「……ネリネが言いたかったこと、先に言われてしまいました」
どうやらネリネも納得したようだ。最後まで、スグリを見守る……その役割をしっかりと噛み締め、時間を確認したネリネは休憩のためスクエアを去っていった。
そして、入れ替わりで再びカキツバタが姿を見せた。
「おーす、未来のチャンピオン。もう四天王2人目撃破ときたかい……持ってるねえ」
「別に持ってねえよ。ただ十全に調え、当然に勝つ……それで勝てねぇのはこっちに不足があるからだ」
「十全に調え、当然に勝つ……か。アカマツ相手にもそうやってしっかり準備して勝ったんだよな。対策の対策なんて、オイラ達だってしてるはずなんだけどなぁ……」
「それで勝てないなら準備が甘いんだよ。……んで?今日は何の話だ?」
前回、アカマツに勝利したあとに声掛けされていたのを覚えていたので、今回もその流れだろうと考え、話を促す。
「お、そうだ。ネリネのやつ、おもしれえだろ?あいつがゼイユと話してっと、不思議と噛み合ってんのがまた笑えんだよな」
「うーむ、確かにあの二人って性格的には真逆っぽいよな」
「はっは!ホムラから見てもそう見えるかい。ネリネはよ、マジメで堅物で……でも人一倍繊細なんだ。誤解されやすいけっど、ホムラはわかっといてくれよ」
「ああ、今のスグリをかつての優しいスグリに戻してやりたいって、悩んでたぜ。……仮にも同じリーグ部なんだから、お前も手を貸せよ」
「いやぁ、すまん。そっち方面じゃオイラは力になれそうにねぇや」
「おまえさあ、そういうところ――」
「ホムラ!!」
二人の会話に割って入るように声が上がり、さらにそっちの方向からスグリが走ってきてホムラに飛びついた。ホムラは衝撃を逃がすよう回りながら受け止めた。
「おっとと、スグリか」
「ブルベリーグ、順調みたいだな」
「おっとチャンピオンさま、敵情視察ですかい?」
「まあね。ホムラは強いから」
意外とカキツバタの問いを否定しなかったスグリ。だが、声色が硬いところを見るに、ただ聞かれたから答えただけといった様子だ。
「俺、心配だったんだ……ブルベリーグ、退屈になってホムラ達が途中で辞めちゃったらどうしようって。でも……今のところは楽しんでもらえてるみたいで、良かった」
「あぁ!最っ高に楽しいぜ!四天王チャレンジもミニゲーム味があっていいし、四天王もまだ二人目だけど手持ち構成がしっかり考えられていてディ・モールトベネ!次の相手も楽しみだよ」
「えへへ、そっかぁ。タロもカキツバタも、みんなを楽しませるようにちゃんと言っとくからな」
「お~い、チャンピオンさま。オイラここにいるんだけど?」
「……聞いてたなら、やれるんだろうな?」
「まぁ、チャンピオンさまたっての"お願い"だからねぃ」
頭を掻きながらもそういうカキツバタ……スグリの目は胡乱げだが、ひとまず頷いている。
「ホムラ、途中で負けないでな。俺の力……見せられないから」
「あぁ、俺も楽しみにしてるぜ。必ず勝つからよ、首を洗いながら長くして待っててくれよ」
「ふふっ……」
するりとホムラから離れると、スグリはそのまま背を向けて歩き出す。途中、カキツバタの横をすれ違う際に声を掛けた。
「抜かりのないように。ハンパは許さない」
「へぃ」
そして改めて、スグリはキャニオンスクエアから去っていった。それを見送ると、カキツバタもまたニヤリと笑みを浮かべる。
「へっへっへ、いい感じにうずいてらあ。……おっと!時間をとっちまったな……そいじゃ、残り半天王がんばってくれーい」
カキツバタも帰っていったところで、ホムラもメンバーと合流する。
「よぉ、スグリ来ただろホムラ」
「おう。……やっぱ、ただ叩き潰すだけじゃ治らねえよ、あれ」
「だよなあ」
五人で話し合うのは、現在のスグリに対してどうするかだ。ただ倒すだけでは変わらないだろうが、それでも勝負をする以上は勝者と敗者が存在する。どちらに転んでも、あまり状況は好転しない気がしてならないのだ。
「まぁ、その時はその時だ。俺らもブルベリーグを勝ち上がるぞ」
「よっしゃ、次は誰が挑む?」
「俺がやる」
「おう、ゴウタ頑張れよ」
ホムラ、ゴウタ、コウキ、リュウセイの順に挑み、四人全員が勝ち抜いたことで次のエリアに移動することが決まった。次に向かうのは、タロの待つコーストエリアだ。
「というわけで!凄いやつがやってきた!パルデア四天王最弱(先鋒敵陣全タテ担当)のホムラさまだ!」
「いや待て括弧内がおかしいやろがい」
「最弱の先鋒がなんで敵勢を皆殺しにしてるんですかねぇ……」
「おい、大将の出番を残せや」
「尺の都合上そんなものはない」
「おい!もっとちゃんとしたプロットを組めよ作者!行き当たりばったりで書いてるからこんなことになってんだろうが!」
面目次第も無い by作者
「あのー……?」
「あ、タロ!すまんすまん、ちょっとのっぴきならないことがあってな……たった今、解決したところだ」
「あ、そうだったんですね。では、コホン……みなさん、チャレンジ場に移動しましょう!」
タロの案内でスクエアから少し離れた場所に移動する一行。どうやらそこで四天王チャレンジを行うようだ。
「改めまして、ようこそコーストスクエアにいらっしゃいました!」
「邪魔すんでー」
「邪魔すんねやったら帰ってー」
「「「「あいよー」」」」
タロから歓迎の言葉を受けた直後、すかさずコウキがボケに走った。耳慣れたフレーズだっただけにケンスケも素で関西ネタを返してしまった。そのまま踵を返して数歩歩き、再び踵を返すホムラ達。
「「「「って、なんでやねん!!」」」」
「いや、お前らが言い出したんやろがい」
「あはは……みなさん、本当に息ぴったりですね」
「ほんとスマン、こいつら隙あらばすぐボケてくるから……」
「うふふ、わたしも楽しいので全然いいですよ。見てて飽きませんし」
「そう言ってもらえると助かる……」
頭痛をこらえるように頭を押さえるケンスケ。教職の立場なのに、なまじ付き合いが長いだけにどいつもこいつも普段通りである。
「みなさんのブルベリーグ参加、反対しちゃってごめんなさい。校則的にイレギュラーなのも理由としてあるんですけど……みなさんをリーグ部のゴタゴタにまきこみたくなかったんです」
「……スグリ……リーグ部の内輪揉め……ピンポイントの名指し……ふむ、見えてきたな」
「おっ。リュウセイ、閃いたか?」
「まぁな」
「……えっと、なにがわかったんですかリュウセイさん?」
タロの懸念を耳にして、リュウセイはこの留学に潜む小さな意図に気がついたようだ。タロも気になるのか、続きを促している。
「シアノ校長はゼイユから林間学校の話を聞いて、俺たちを留学生として名指ししてきたんだ。俺たちは自分達で言うのもなんだが、学園じゃ割と問題児扱いでな……あぁ、問題児といっても素行不良ってわけじゃなくてな。先生曰く『優秀だが自由すぎる』ってんで、そう言われてるだけだ。
……話を戻そう。シアノ校長は林間学校後から豹変したスグリ周りの問題をどうにかしようとしてたんだろう。だが、生徒の自主性を重んじるという校風が邪魔をする……そこでスグリと関係があり、なにかしらの事情を知る俺たちを留学生として迎え入れた。スグリの素行不良によるマイナスイメージが外部に流出する前に、秘密裏に事態を解決させるために……」
「そ、そんな……」
「……長々と語ったくせして申し訳ないが、全て俺の憶測だ。だが、外部から見たからこそ感じたブルーベリー学園の"ズレ"から、こんな邪推をしてしまったんだ。悪い」
「いえ……でも、そっか。シアノ校長も、スグリくんのことを気にかけてくれてたんですね」
どうやら、タロはスグリの現状を学園が意図的に放置しているのではないかと、不安になっていたようだ。しかし、リュウセイの推理を聞いて、ほんの少しだが希望が持てたらしい。
「よしっ、タロも元気になったところで、早速チャレンジを始めようぜ!」
「はいっ!始まったからにはとことんまで楽しんでもらいますよ!」
タロが考案した四天王チャレンジは、ポケモンクイズ。その名の通り、ポケモンに関するクイズを五問出題し、その全てに正解することでチャレンジクリアとのことだ。当然、ポケモンに関する知識なら並々ならぬものをもつホムラ達にとってはお茶の子さいさい。
特に描写することもないのでカットしよっと。
「みなさん、すごいです!全員が全員、見事チャレンジクリアです!!」
「いえーい」
「やったぜ」
「ふっふー」
「ばんざーい」
「みんなお疲れさん。……タロ、君の方からリクエストとかないか?」
「リクエストですか?」
ケンスケの言葉に首をかしげるタロ。ケンスケは言葉を続ける。
「アカマツの時はチャレンジをクリアした順に挑んだんだが、ネリネは最初に戦う相手にホムラを指名したんだ。だから、タロの方からも指名したいなら聞くが……」
「あ……そ、それでしたら、ホムラさんと是非。スグリくんが言ってたホムラさんの実力、ちゃんと見せてもらおうかなって……」
「オーケー、了解。ホムラー!ご指名入ったぜー!」
「わかったー」
ホムラとタロだけがフィールドへ移動し、残りは受付付近で待機。フィールドに到着した二人は、手持ちを確認しながら話し始めた。
「まさか他校のホムラさん達がブルベリーグに挑戦されるなんて、正直驚きですけど……わたし、私情ははさみませんので!」
「え!?俺、バリバリ私情でバトルしてるんだけど!」
「えぇ!?い、一体どんな私情なんですか?」
「スグリや四天王のみんなとバトルがしたい!つまり、現在進行形で私情挟みまくりなんだな、これがな」
「あ……」
ポカン、と口みたいな栗……じゃなかった、栗みたいな口で呆然となるタロ。それも少しのことで、直後に吹き出し笑い出していた。
「プッ、アハハハハ!な、なんですかそれ……もぅ。そういう意味なら、わたしも私情を挟んじゃいますよ?」
「おっ、どんな私情だ?」
「ふふふ……わたし、フェアリータイプのポケモンを多く連れ歩いているんですよ。フェアリーってピンクだしキュートでかわいいですよね。今回はわたし、本気でお相手しますので……いっぱい知ってもらえると思うんですよ……かわいいが最強ってこと!」
「それがタロの私情か!よっしゃ、行くぜ!」
四天王三戦目、その幕が切って落とされる……!
第三話終了……次で四天王戦終わらせたいなぁ。