ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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終わらなかったんじゃが!?じゃが!?


年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 第六話

現在時刻、朝。場所はポーラスクエア。そう、カキツバタの四天王チャレンジである。早朝から集まったのも、なるべく早く終わらせてスグリとの決戦に臨むためである。

 

「朝からみんなご苦労さん。おりゃ!とくと見やがれ!ポーラスクエアのバトルコートー!……まあ、とりわけ寒いだけでほかのスクエアと変わんねえか!」

 

「だなー。カキツバタは平気なのか?」

 

「おう、オイラドラゴンつかいだけど、寒いのわりと好きだぜ」

 

パルデアには寒冷地に生息するこおりタイプのドラゴンがいるので、割と驚きはない。そもそもカキツバタは人間だし。

 

「おっと、そういやキョーダイは四天王チャレンジに来たんだったな。うちのチャンレジはドーム限定勝負だ!ルールは単純!リーグ部の後輩3人に勝ちゃあ、それでチャレンジはオシメェよ!」

 

より具体的に言えば、テラリウムドーム内で自分が捕獲したポケモン限定でのポケモンバトルだ。

 

「そんなことも」

 

「あろうかと」

 

「事前に」

 

「捕まえてきたぜ」

 

「いや、準備よすぎだろ!」

 

「ルール縛りには慣れてるからな、こいつら」

 

ポケモンスタジアムシリーズの特殊ルールで戦ってきたこいつらに死角はない。直近でも『無差別級レベル1大会』で戦ってたりもする。禁止級も平気で飛び交う地獄のような大会であった。

そういうわけで、さっそく四天王チャレンジスタート……と、その前にカキツバタから声が掛かった。

 

「ふーむ、そっちは四人、こっちはオイラを含めて四人。んじゃ、チーム戦といこうか」

 

「いいのか?急なルール変更だなんて……」

 

「いーのいーの、それにそっちのほうが楽しいだろ!」

 

「んー……まぁ、そっちがそれでいいなら」

 

こうして急遽、四対四のチーム戦となった。チームメンバーの全滅で勝敗が決まる、というものらしい。当然、ホムラ達が勝てば全員チャンレンジクリア、でいいとのこと。

相手チームはクールな女ミゾレ、茶色が大好きイワト、ナンジャモ教信者ボルタ、大将のカキツバタの四人。先鋒はミゾレ。

パルデアチームは鬼畜眼鏡リュウセイ、皆の兄貴ゴウタ、真面目系狂戦士ツッコミ兼ボケコウキ、鈍感ラノベ系主人公ホムラ。先鋒はリュウセイ。

 

「わたしはクールな女……震える準備は……いいわね?」

 

「よろしく」

 

ミゾレの手持ちはジュゴンとアローラサンドパンの二体、対してリュウセイが繰り出したのはラプラスとカメックスだ。

 

「さあ、凍えさせてあげる」

 

「ラプラス、ほろびのうた」

 

「……あ……」

 

「まぁ、なんだ、そういうことだ。お疲れ様」

 

相手の手持ちが二匹しかいないことをしっかり確認したリュウセイは初手にほろびのうたを選択。相方のカメックスはラプラスにほえるを使って退場させたあと、自身もクイックターンで引っ込むという隙のない布陣だった。ミゾレはなんとかリュウセイのポケモンを倒そうとあがいたが、耐久型みずテラスドサイドンとオスニャオニクスのいたずらごころを最大利用した徹底サポートを抜けられず、あえなく降参となった。

次はイワトとゴウタの戦いだ。

 

「茶色ってことは、いわタイプか」

 

「ご名答!」

 

「じゃあもうこれしかないな」

 

イワトの手持ちはラムパルドとトリデプスのシンオウ化石コンビ。対するゴウタはランターンとオニシズクモのみずコンビ。

 

「ちょっと雑だけどしゃーないよな。ランターン、なみのりだ」

 

「うっ……まだだ!トリデプスがまだ――」

 

「オニシズクモ、ひやみず」

 

「あ」

 

二人目も突破。ほぼワンサイドゲームだが、勝負前の些細な発言も聞き逃さずに相手のしようポケモンを予想し対策を立てるくらい、序の口である。

三回戦、ボルタとコウキのバトルだ。

 

「ナンジャモと同じでんき使いだな?」

 

「そう!ビリッとバリッとヨロシクね!」

 

「おう、対戦ヨロシク」

 

ボルタが繰り出したのはでんきタイプのジバコイルとゼブライカ。コウキはピカチュウとフライゴンの組み合わせだ。

 

「よっしゃ、ピカチュウ!ジバコイルにでんこうせっか!」

 

「うっ、ジバコイルの特性が……」

 

「ピカチュウ、そのままフライゴンの背中にジャンプ!フライゴンはじしんだ!」

 

「あーっ!!」

 

ジバコイルにでんこうせっかで突撃したピカチュウ。そのままジバコイルの体に蹴りを入れてカベキックしてフライゴンの背中に乗り込むと、それを確認したフライゴンがそのままじしんを放ってジバコイルとゼブライカを一撃で叩きのめした。

 

「おーおー、見事に三人とも倒しちまったな。無駄なく効率良く戦う……対したもんだぜ、パルデアよぅ。よしっ、それじゃあいよいよ大将戦だな、ホムラ!」

 

「だな」

 

ホムラとカキツバタはそれぞれ場所につき、対面した。

 

「ホムラ達が戦う姿……そういやコートの外からしか見たことなかったっけか。こうやって正面切んのは初めてだねぃ」

 

「おう」

 

「ブルベリーグ……キョーダイにゃ勝ってもらわねえとこまる。こまる……非常~にこまる!……とはいってもよ、ここで手抜いたらオイラが楽しくねえからな。ちぃとやる気出させてもらうぜ」

 

「おう」

 

「……ま!堅苦しいことなんざねえか。ホムラはいつもどおり戦ってくれりゃあいいのよ、ツバっさん的にはぞくぞくしてるぜ」

 

「おう」

 

「……意外と何も言わねえんだねぃ。タロやみんなとは随分と話し込んだって聞いたぜ」

 

「……別に、思い上がりをぶちのめすのに言葉は不要だろ」

 

「…………」

 

「かかってこいよ、何もかもが『さんりゅう』野郎。"ちぃと"なんてくだらねぇ見栄張ってないで、お前の全部を絞り出してぶつけて来い。さもなくば土を付けるどころか、埃一つ被らぬまま終わることになるぞ」

 

「……いうじゃねぇか……」

 

その瞬間、カキツバタの雰囲気が変わった。飄々とした雰囲気が鳴りを潜め、その表情は憤怒に染まっている。

 

「やっぱりアンタがスグリを変えやがったのか。以前のスグリはしゃべんねえわオドオドしてるわ自信ねえわで、すぐゼイユの後ろに隠れてた……でもよ!ポケモン戦わせんのだけは、誰よりも楽しそうだったんだ。それが……いつの間にか変わっちまって、自分もまわりも責め立てて追い込んでらあ。

極めつけにゃ、二言目には『ホムラならできた』、『ホムラだったら上手くやる』、『ホムラはもっと強い』……おかげで誰彼構わずアンタを引き合いに出してくる……その名の通り、スグリの脳みそを随分と激しく焼いてくれたみたいだな」

 

「だからお前は、スグリを変えてやらなきゃならんと……かつてのように、優しくのびのびとバトルを楽しんでいたあの頃のスグリに戻してやらないと、そう思ってんのか」

 

「……キョーダイのことを利用したみてえになってる現状については申し訳ねえと思ってる。楽すんのが板についちまったオイラにゃできねぇ……だから……」

 

「なぁ、そろそろマジでいい加減にしてくれねぇか?」

 

顔をしかめ、今度はホムラが怒りを顕にした。

 

「スグリが変わっちまっただの、元に戻してやらなきゃならねぇだの、まるでスグリを悪し様に言う様はほんとに反吐が出る。民度低すぎるだろお前ら、なんなんだイッシュ人。ポケモンで遊びたいだけなら、わざわざガチ勢(こっち)側にまで首突っ込んでくるんじゃねえよ。姿勢や言動に問題があるのは俺も認める。だが、スグリがあいつなりに悩んで考えて選んできた道だぞ。頑張って強くなって成長したってのに、なんでどいつもこいつも真っ先に出てくるのが現状の否定なんだよ。

くそくらえだ。そろそろ俺の心の小火も、山火事レベルにまで爆発するぞ。その言葉の軽い口を閉じやがれエンジョイ勢ども。本気なんだよ、スグリは。言動や素行はどうあれ、あいつは本気で強くなろうとしてるんだよ。テメェらが目指していない世界を目指して突き進んでんだよ。なんでまず最初にそれを認めてやれねぇんだよ……?」

 

「ホムラ……」

 

「お前とスグリのチャンピオンマッチ、見せてもらったぞ。スグリはちゃんとお前のことを研究して、勝つ方法を模索して、勝負に挑んで勝ってるんだ。それでお山の大将を追われておいてどうのこうの言ってたら、よっぽど女々しいぞカキツバタ。

俺たちなら、スグリに負けてもその成長を喜べるし、スグリに勝てたらさらに強くなるであろうその後の再戦に期待できる。スグリが折れたらそれまでだ。あいつの人生の生殺与奪の権はあいつ自身が握っている……折れるか跳ね返るか、それを決めるのはスグリ自身。

だから俺たちは笑ってこう言えるんだ。『スグリとの勝負が楽しみだ』ってな」

 

「…………」

 

「スグリだって、みんなとの勝負を楽しみにしていただろうし、実際楽しんでたはずだ。……まぁ、比較対象が俺らってのがちょっとアレだが、それでもスグリがお前ら全員に期待してたのは事実だ。俺らを引き合いに出すのも、反骨心を煽って少しでも強くなろうと志してくれるのを期待してのこと……裏返しみたいなもんだ。

まったくもって残念なことに、このブルーベリー学園には反骨心から強くなろうと本気になるトレーナーはいなかったみたいだが……まぁ、これもイッシュという国風なのかね。今のイッシュチャンピオンって誰だ?アデクさん……いや、アイr――」

 

「もういいだろ」

 

長々と話し続けていたホムラの言葉を、いきなりばっさり切るカキツバタ。物凄く複雑な表情を浮かべている。

 

「ホムラの言いたいことは、ひとまずわかった。視野狭窄に陥っていたのはスグリだけでなくオイラたちも……ってことだろ?確かにスグリは強くなった、それは認める。だが、それでもオイラは今のスグリを受け入れるわけにはいかねぇ。アンタらのような勝つバトルでしか楽しみを見いだせなくなったスグリを、あの頃のように戻してやりてぇんだ」

 

「だからスグリは今も昔もバトルを楽しんでいると……あぁ、もういい。今回は特別だ……本当に極まった奴がどんなバトルをするのか、教えてやるよ。効率を極め、あらゆる手を封じ、何もなせぬまま終わらせてやる。逃げ回りながら去ね」

 

不穏な空気のまま始まったポケモンバトル……両者が最初に出すポケモンは。

 

「フライゴン!カイリュー!」

 

「地獄を始めよう。キラフロル、サーナイト」

 

カキツバタの先発はフライゴンとカイリュー、ホムラの先発はキラフロルにサーナイトだ。

 

「おっと、いきなりフェアリーか!対策はバッチリってわけだねぃ。フライゴン、じしん!カイリューはサーナイトにしんそくだ!」

 

「キラフロル、ステルスロック。サーナイトはフライゴンにおきみやげ」

 

「っ!?」

 

カイリューのしんそくを耐えたサーナイトがおきみやげを発動する。これによりフライゴンの攻撃能力が二段階下がり、四倍弱点のタイプ一致じしんをHB特化キラフロルは耐え切った。その後、ステルスロックを放ちつつ特性のどくげしょうによってフィールドに二重の罠を仕掛けた。

 

「こいつは!?」

 

「次、チラチーノ」

 

倒れたサーナイトに代わって出てきたのはチラチーノ。

 

「(やべぇ、キラフロルは物理で攻撃するとどくびしを巻かれちまう……チラチーノもなにをしてくるかわからねぇ。フライゴンもカイリューも物理攻撃しか覚えてない……多少のリスクは背負うしかないか!)カイリュー、おいかぜ!フライゴンはじしんだ!」

 

「チラチーノ、ワイドガード。キラフロルはキラースピン」

 

カイリューがおいかぜで味方の支援をし、チラチーノもワイドガードでフライゴンのじしんを防ぐ。さらにキラフロルがキラースピンでカイリューとフライゴンを同時攻撃し、両者をどく状態にした。

 

「二匹同時に毒を……!」

 

「どうした、この程度か?」

 

「ちぃっ、カイリューはチラチーノにしんそく!フライゴンはもう一度じしんだ!」

 

「馬鹿の一つ覚えだな。最適解ではあるが、正解ではない」

 

「どういう……!?」

 

カイリューのしんそくがチラチーノに当たった直後、カイリューがカキツバタの手持ちに引っ込んだ。そして入れ替わるようにキングドラが引きずり出された。

 

「なんだと!?」

 

「レッドカードだ。チラチーノ、ワイドガード。やるぞ、キラフロル」

 

引きずり出されたキングドラがどくびしにより毒状態となり、さらにステルスロックとじしんによる巻き添えダメージを受けたのをしっかり確認してから、チラチーノにワイドガードを指示。さらにテラスタルオーブを取り出し、キラフロルをテラスタルさせた。

 

「ここでテラスタルかい!」

 

「そうだ。ノーマルテラス……キラフロル、じばくだ!!」

 

「なっ」

 

ノーマルタイプへテラスタルしたキラフロルが繰り出したじばく。チラチーノはしっかりワイドガードでじばくを防ぎ、その爆風はカキツバタのポケモンのみを巻き込んだ。爆炎に包まれたフライゴンとキングドラ。キングドラは戦闘不能になったが、フライゴンはかろうじて生き延びた。……だが。

 

「フライゴン!」

 

「フライゴンはもたんよ。計算上、毒のダメージでそのまま戦闘不能になる」

 

「あっ……」

 

ホムラの宣言通り、フライゴンもまた毒のダメージによって体力が尽き、戦闘不能になった。カキツバタはすぐに二匹をボールに戻す。

 

「……どういうつもりだ」

 

「なにが?」

 

「ふざけんな!以前までのホムラなら、おきみやげだのじばくだのと、ポケモンを犠牲にするような技は使わなかったはず!」

 

「言っただろ、本当に極まった奴がどんなバトルをするのか、教えてやるって。勝つことしか考えてないやつの戦い方を見せてやるって。勝利だけを目指すやつってのは、自分のポケモンの犠牲すら勝利の方程式に組み込み計算する。ポケモンバトルを、ただの数式としか見ない。

俺たちはいつでもどこでもこんなバトルができる。でもそれじゃつまらねぇから、好き勝手に戦ってんだ」

 

「……カイリュー!オノノクス!」

 

「ニンフィア」

 

カキツバタはカイリューを再び繰り出し、さらにオノノクスも出した。カイリューは浮いているのでどくびしは当たらないものの、弱点であるステルスロックによる大ダメージは避けられない。オノノクスもきあいのタスキを持たせているが、ステルスロックによるダメージでタスキは潰され、さらにどくびしの効果で毒状態になった。

 

「(くそっ……)こっちにはおいかぜがある!カイリューはチラチーノにしんそく!オノノクスはニンフィアにアイアンヘッドだ!」

 

「悪いな、カキツバタ。こっから作業の時間だ」

 

「作業!?」

 

「チラチーノ、ニンフィア、ハイパーボイス」

 

カイリューのしんそくを三度受けるチラチーノだが、まだ落ちない。ニンフィアもリリバのみの効果でアイアンヘッドを半減させた。反撃のダブルハイパーボイス(ニンフィアは夢特性)でカイリューとオノノクスをダブルノックアウトさせた。

 

「ジュカイン!ブリジュラス!」

 

「戻れ、チラチーノ。オーロンゲ」

 

ホムラはチラチーノを引っ込め、オーロンゲに入れ替える。カキツバタは残ったジュカインと、切り札のブリジュラスを繰り出す。ブリジュラスははがねタイプなので、どくびしの効果を受けずステルスロックのダメージも抑えられる。

 

「たぎれ……竜の血!すべてを支配しろぃ!!」

 

「そうだ、そうだ!体裁なんてかなぐり捨てろ!お前の全てをさらけ出せ!!戦場(ここ)では誰もが自由なんだ!」

 

ブリジュラスをドラゴンタイプにテラスタルさせ、いよいよ本格的に感情をむき出しにするカキツバタ。ホムラもその気色に充てられ、獰猛な笑みを浮かべた。

 

「ジュカイン、リーフストーム!ブリジュラス、ラスターカノン!ニンフィアを狙え!」

 

「そうはさせねぇ!オーロンゲ、トリック!対象はブリジュラスだ!」

 

ジュカインとブリジュラスの矛先がニンフィアに向けられる……が、それよりも早くオーロンゲが動き、トリックで持ち物を入れ替えた。持ち物を入れ替えられたブリジュラスは露骨に動きが鈍くなった。

 

「こうこうのしっぽか!?」

 

「これでブリジュラスの攻撃は間に合わねえ!ニンフィア、ハイパーボイス!!」

 

「ブリジュラス……!」

 

こうこうのしっぽを持たされたブリジュラスはすばやさが遅くなり、リーフストームを耐えたニンフィアが放ったハイパーボイスの前に倒れた。ジュカインも耐えているが、毒のダメージでほぼ虫の息だ。

 

「終わりにしよう。ニンフィア、でんこうせっかだ」

 

「っ……」

 

ニンフィアの先制技が決まり、ジュカインは倒れた。これにて決着。

 

「これが、スグリを焼いた焔か……あっついねぃ」

 

「対戦ありがとうございました」

 

ポケモンをボールに戻し、コウキ達も含めた全員が集まった。

 

「へっへっへ……いやぁ、べらぼうに強いねぃ。戦いすら数字で見る、計算する……おっそろしいもんだ。なにより恐ろしいのは、そんな無慈悲なバトルと普通のバトルを素面で切り替えられるおまえさんらだね」

 

「お前の言う無慈悲なバトルも普通のバトルも、どちらも『楽しんで』いるのが俺らだ。どっちのほうが、ではなく、どっちも楽しい。だから、どっちのバトルもできる。……今のスグリは、俺たちが見せた『無慈悲なバトル』を猿真似して、そっちに傾倒しているだけ。おまけに勝ちしか見えてねぇときた。やれやれだぜ」

 

「悪い、カキツバタ。こう言っちゃなんだが、ただスグリを倒すだけじゃ元には戻れないと思うぜ」

 

「……そうか」

 

そう言ってカキツバタは遠い目をする。少し考えるように目を閉じると、やや乱暴に頭を掻く。

 

「みんなへの入れ込み具合からして、負けたとしてもあんま効果なさそうだなとは思ってたからねぃ。んー……もう少し考えてから動きゃよかったか?」

 

「ここまで来た以上、もう勝つしかないだろ。任せろ。俺たちは勝つさ」

 

「……頼む」

 

「ホムラーッ!」

 

カキツバタが頭を下げようとした直後、スグリの声が響いた。フィールドに上がってきたスグリが走ってきて、ホムラに飛びつく。慣れたように受け止めると、とりあえず落ち着くまで振り回してから動きを止めた。

 

「ホムラ、カキツバタにも勝ったんだってな!それじゃあいよいよ……俺と、だよね」

 

「あぁ、そうだな。いよいよだ、楽しみだぜ!」

 

「……むー」

 

「ん?なんだよ、スグリ」

 

なぜか頬を膨らませて「不満です!」と言いたげなスグリ。首を傾げているとあんまりな理由が挙げられた。

 

「……知らなかった。自爆戦法」

 

「うげっ、見てたのか」

 

「あんな戦い方があったなんてな……なんで教えてくれなかった?しかもカキツバタにだけ……ずるいずるいずるいずるいずるいずるい

 

「リスキーだからだよ!上手くはめなきゃ自分のポケモンだけが一方的に減るんだぞ!付け焼刃の自爆戦法なんかで勝てるもんか!」

 

「……いや、うん。確かにそうだ、慣れるまでしんどそう……やっぱホムラはすごいべ」

 

「あははは……」

 

「(これでスグリが『実は女の子でした』とかだったらクッソ笑うんだけど)」

 

「(やめてやれ、流石にそれだとホムラの命がいくつあっても足りんぞ)」

 

相変わらず暴走気味なスグリに、さしものホムラも苦笑い。そんなスグリにカキツバタは声をかける。

 

「スグリよう、よっぽどホムラたちが気になるんでやんすねぃ?」

 

「今の俺を倒せるのは、滾らせてくれるのは、楽しませてくれるのは、ホムラたちだけだから。……ポケモンバトルの教育に力を入れていると言いながら、カキツバタのような微温湯に浸かることを良しとするような学校に、俺とまともに戦ってくれるやつなんて……」

 

「そこまでだ、スグリ。……今は俺がいるだろう。俺を見ろ、スグリ。お前を倒す敵を、ちゃんと見据えろ」

 

「ホ、ホムラ……」

 

スグリの顔を両手で掴み、無理やり自身の方へ向けさせるホムラ。お前、それをする相手を間違えてるだろ。しばらくじっと見つめ合うと落ち着いたようで、スグリは自分からホムラの手を離した。

 

「……カキツバタこそ、やけに俺の(・・)ホムラに肩入れしてるんだな」

 

「あのちょっとスグリさんもうちょい発言内容に気をつけてもろて」

 

「新入生には優しくしないと!人類みなキョーダイよ?」

 

「……よく言う。何考えてるか知らないけど、それももう終わりだ」

 

スグリは踵を返して歩き出す。一度、足を止めて振り返るも、結局は何も言わぬまま歩いて行った。

 

「いよいよだな……オイラも楽しみだ」

 

「俺たちもだ」

 

スグリとの頂上決戦……即ちチャンピオンマッチはエントランスの受付で申請すればよいとのこと。一同はエントランスへ赴き、さっそく受付を済ませた。

 

「ホムラ……それに、みんなも。スグリとは仲良かったんだろぃ?」

 

「まあな」

 

「……そうかい。スクエアでのバトルフィールドで言った通りだ。スグリにはもっと楽しみを……いや、違うな。そんな建前じゃあない。

スグリには、ちゃんとオイラ達を見て欲しいんだ。スグリはオイラ達と違う誰かを比べ続けて、いつもそいつらばっかり見ていやがる。オイラ達と勝負しながら、別の誰かと勝負をしている……それに耐えらんねえってやつもいる。他人を尊重しても妥協まではしてくれないからな、誰かさん達と同じレベルを要求してくるんだ」

 

「……その誰かさんってのが、俺らか」

 

「そして個人枠はホムラと……」

 

改めて、スグリの中心にいるのはホムラ達だということを再確認した。そして、それ以外の人間が目に入らないということも。

 

ディンドンダンドーン♪

 

校内放送により、チャンピオン戦のお知らせが響く。その間、ケンスケは受付の女性に声をかけた。

 

「すまない、パルデアアカデミー美術副担任のケンスケだが、このバトルに教師等の同伴は?」

 

「え?」

 

死に腐れ(いえ何も)

 

聞き返されただけですべてを察し、悪態を飲み込んでその場を辞する。スグリもすぐに姿を見せると、まっすぐ指を立てて、それをホムラに指した。ホムラもバトルフィールドに立ち、戦いの準備に入る。

 

「待ってたよ。ホムラに認めてもらいたくて、俺、努力したんだ。吐くほど勉強してポケモン強くして……四天王蹴散らしてチャンピオンになって……それも、全部全部全部!!今ここで、ホムラに勝つため!!」

 

「……それだけか」

 

「え?」

 

「言いたいことは、それだけか」

 

顔を上げるホムラ。そこにあったのは……無。ただの無表情であった。

 

「能書きほど薬は効かぬ。くだらねえ大言壮語を吐き散らかしてねぇでとっととポケモンを出せ。俺たちはポケモントレーナーだ。ならば言いたいことはポケモンで語れ」

 

「……は、はは……はははははははははははは!!」

 

突然天を仰ぎ、狂ったように笑い始めるスグリに、観客席にいるゼイユも不安になる。笑うのをやめたスグリが顔を戻すと……その顔は抑えきれないほどの喜色満面であった。

 

「そう、そうそうそうそう!そうだ、そうだ!!これがホムラだ!!どこまでもバトルで本気になれる!!言葉なんてくだらない……!そうだ、俺たちはポケモントレーナーだ!!だからここからは……ポケモンで語る!!」

 

「……来い……」

 

お互いにポケモンを繰り出し、いよいよチャンピオン戦が幕を開けた。

 

「オーロンゲ!テッカニン!」

 

「……!!プクリン、ドラパルト!」

 

「(なにっ、テッカニンは原作未入国のはず!なぜスグリの手持ちに!?)」

 

ホムラの先発はプクリンとドラパルト、対するスグリはオーロンゲとテッカニンという組み合わせだ。原作未入国ポケモンの登場に、ホムラ達の間で小さくない動揺が生まれる。

とにもかくにもバトル開始。

 

「オーロンゲ、ひかりのかべ!テッカニンはまもる!」

 

「ドラパルト、こっちはリフレクターだ!プクリンはわるだくみ!」

 

初手、双方ともに変化技の使用だ。オーロンゲとドラパルトが壁を貼り、プクリンはわるだくみ。テッカニンはまもるを使ったが、誰も攻撃していないのでスカされている。

 

「(やっぱり様子見できた。ホムラ……後続は特殊系だな?いいぞ、俺もやりたいようにやる。自分のやりたいバトルを、相手に押し付ける!)」

 

「(テッカバトンか。物理アタッカーは当然として、壁貼りのオーロンゲがどうするかだな。仕事後は自主退場か、攻勢に出るか)」

 

「テッカニン、つるぎのまい。オーロンゲはリフレクターを」

 

「プクリンはわるだくみ。ドラパルトはひかりのかべだ」

 

再び変化技。双方ともに攻勢に出ず、周囲には困惑が広がっている。それは当然、ブルベリーグ四天王達も同じだ。

 

「テッカニン、つるぎのまい」

 

「プクリン、バトンタッチ!」

 

「(しまった、ホムラのほうがわずかに早い!)」

 

先に動いたのはホムラ。プクリンのバトンタッチによって控えに戻り、後続のポケモンが姿を現す。

 

「サザンドラ!」

 

現れたのはサザンドラ。そこへさらにホムラが動く。

 

「ドラパルト、ドラゴンエールだ!」

 

「オーロンゲ、サザンドラにすてゼリフ!テッカニンはバトンタッチ!」

 

ここでスグリも動く。既にテッカニンの特性かそくで素早さ三段階、つるぎのまい二回で攻撃四段階上昇したのちに繰り出すポケモンは一つだけだ。

 

「カイリュー!」

 

物理技が強いドラゴンポケモンのカイリュー。素早さ三段階上昇は伊達ではない。最速、最短でサザンドラを潰しに行く。オーロンゲもすてゼリフで手持ちに戻ったので、別のポケモンに入れ替える。

 

「……ニョロトノ」

 

繰り出したのはニョロトノ。特性あめふらしにより、天気が雨に変わった。

 

「速攻で沈める!カイリュー、ドラゴンクロー!!」

 

「サザンドラ、まもる!」

 

「しまっ――」

 

「ドラパルトはニョロトノにとんぼがえり!」

 

カイリューで果敢に攻め込むも、まもるで防がれてしまう。その隙を突く形でドラパルトのとんぼがえりがニョロトノに決まり、ドラパルトが入れ替わる。

 

「ピクシー!」

 

現れるピクシー。嫌な予感を覚えたスグリだが、ここでカイリューを引っ込めるのは愚策、と考え攻撃に移る。

 

「カイリュー、ドラゴンクロー!ニョロトノ、れいとうビーム!」

 

「ピクシー、このゆびとまれ!」

 

「くっ……」

 

予感的中。ピクシーに全ての攻撃が吸われていく。ドラゴンクローは無効化され、れいとうビームも大したダメージは出ていない。

 

「サザンドラ、りゅうのはどう!」

 

「ぐうっ」

 

カイリューに放たれたりゅうのはどうは寸分違わず命中。急所に当たった一撃必殺であった。

 

「やっぱりホムラは強いなぁ!!だから、楽しい!!嬉しい!!ツンベアー!!」

 

「すいすい熊か!」

 

雨下で繰り出されたツンベアーを見て、即座に特性に思い当たるホムラ。

 

「ピクシー、このゆびとまれ!」

 

「読めている!ツンベアー、ヘビーボンバー!!」

 

「ピクシー!」

 

「これで邪魔は消えた!ニョロトノ、れいとうビーム!!」

 

「ただでは落ちん……!サザンドラ、ハイパーボイス!!」

 

サザンドラのハイパーボイスがニョロトノとツンベアーに直撃。ニョロトノは急所命中も相まって倒れたが、ツンベアーはかろうじて生き残った。最後っ屁とばかりに放たれたれいとうビームもサザンドラに届き、体力は残りはしたもののかなりのダメージを負った。

 

「やるなぁ、スグリィ!!」

 

「俺だってやれる!ホムラに届かせてみせる!!」

 

「簡単にはやらせられんな!プクリン!」

 

「オーロンゲ!」

 

壁は残っているとはいえ、その壁をぶち抜くほどの威力の技が飛び交う。スグリが繰り出したのはオーロンゲ。残り一匹は切り札なのだろう。

 

「オーロンゲか」

 

「勝たせてもらうよ、ホムラ!」

 

「ぬかせよ!プクリン、たくわえる!」

 

「ツンベアー、ヘビーボンバー!」

 

「プクリンを守れサザンドラ!ハイパーボイス!!」

 

「オーロンゲ!ソウルクラッシュ!」

 

再びサザンドラのハイパーボイスが炸裂する。サザンドラはそのままツンベアーの進路上に立ち塞がり、進行を阻むように攻撃をする。その横合いから飛び込んできたオーロンゲのソウルクラッシュが命中し、ここでサザンドラはノックアウト。阻む者が消えたツンベアーが突き進むも、既にプクリンは技を出し終えたあとだった。

 

「戻れサザンドラ!プクリン、バトンタッチ!お前も戻れ!」

 

サザンドラを戻し、技の効果でプクリンも戻し、素早くホムラはポケモンを繰り出した。

 

「カメックス!頼むぜ……ぽにこ!」

 

バトンタッチで飛び出したカメックスが、ツンベアーのヘビーボンバーを受け止めた。雨が思った以上に長く降ることから、スグリのニョロトノはしめったいわを持っていたのだろう。後から出てきたぽにこ……竈オーガポンに対してわずかに反応を見せるスグリだが、「今はダメだ」とばかりに首を振った。

 

「カメックス、アクアリング!ぽにこはツタこんぼう!」

 

「ツンベアー!ちっ……オーロンゲ、ソウルクラッシュ!狙いはカメックスだ!!」

 

オーガポンのツタこんぼうが命中し、ツンベアーが倒れた。オーロンゲの攻撃が命中するも、カメックスはアクアリングの他、特性あめうけざらで二重回復により傷を癒している。

 

「テッカニン!」

 

スグリは再びテッカニンを繰り出す。

 

「テッカニン、つるぎのまいだ!」

 

「カメックス、オーロンゲにラスターカノン!ぽにこはテッカニンにがんせきふうじだ!」

 

「くっ……オーロンゲ、ひかりのかべだ!」

 

カメックスのはどうだん、オーガポンのがんせきふうじがそれぞれに命中する。テッカニンは落ちたが、オーロンゲはひかりのかべのおかげで生き残った。

と、ここで壁の効果が消えた。ここから先は守りはあまり期待できないだろう。

 

「カミツオロチ!」

 

「……カメックス、からをやぶる!」

 

「(ぼうぎょを下げたか!なら!)オーロンゲ、ソウルクラッシュ!カミツオロチはきまぐレーザー!カメックスに集中砲火!」

 

「ぽにこ!オーロンゲにツタこんぼうだ!!ぶん投げてやれぇ!!」

 

「!!」

 

オーロンゲが攻撃のために動きを止めた直後、オーガポンが動き出す。燃え盛るツタこんぼうをぶん投げるという奇策。こんぼうがまっすぐオーロンゲにぶちあたり、そのまま戦闘不能にした。カミツオロチのきまぐレーザーを受けるも、カメックスは余裕綽々だ。

 

「戻れ、オーロンゲ。……やっぱり、ホムラは強い。追いついたと思ったけど、俺もまだまだだった」

 

「なんの、強くなったなとは思ってるよ。いや、マジで」

 

「あはは。……もう、俺の手持ちはカミツオロチだけだ。ホムラ、最後にちょっとわがままいいかな?」

 

「お、なんだ?」

 

「あのさ……最後に、おに様と一騎打ちがしたい。……ダメか?」

 

「……いいぜ。ぽにこもいいか?」

 

ホムラがオーガポンに確認を取ると、オーガポンはわざわざ仮面を外してから笑顔を見せて、それから頷いた。ホムラはカメックスを手招きしてトレーナポジションまで下がらせる。

 

「……それじゃ」

 

「うん」

 

「全力で」

 

「うん」

 

「「潰す」」

 

ホムラとスグリは同時にテラスタルオーブを構え、ポケモンをテラスタルさせる。竈のお面のオーガポンと、かくとうテラスのカミツオロチ。両者準備が整ったところで、勝負が再開された。

 

「カミツオロチ、だいちのちから!」

 

「とべ、ぽにこ!ツタこんぼう!!」

 

カミツオロチが放つだいちのちからを、ツタこんぼうで地面を叩いた反動で飛び上がるオーガポン。攻撃が外れるやいなや、スグリはすぐさま指示を飛ばす。

 

「きまぐレーザー!」

 

「こんぼうで全部受け流せ!」

 

龍の首から放たれるレーザーを、こんぼうを振り回して弾きながら自由落下するオーガポンを前に……それでもスグリは笑みを絶やさなかった。

 

「なあ、チャンピオンって……」

 

「あんなふうに笑うんだ……」

 

「なんだか……楽しそう、だよね」

 

「うん、すごく楽しそう」

 

いつの間にやら、ホムラやスグリが感じている『楽しい』という感情が周囲に伝播している。カミツオロチはオーガポンを近づけまいとレーザーを乱射し、オーガポンはレーザーを避けたり弾いたりして隙を伺っている。

 

「……!がんばれー!どっちもがんばれー!!」

 

「ア、アカマツくん!?」

 

「ほら、タロ先輩もネリネ先輩も!がんばれーっ!!」

 

「……っ!ホ、ホムラくん、がんばれー!」

 

「スグリ……頑張って……!」

 

「……あら、これツバっさんも言わなきゃダメな流れ?それじゃ……どっちも頑張れよーぃ!」

 

頑張れ。負けるな。そこだ。危ない。勝てるよ。いけいけ。あと少し。もうちょっと。

 

様々な声援が飛び交い、エントランス中が賑わいを見せる。誰もがこの勝負に熱を上げ、我が事のように歓声を上げる。

カミツオロチもスタミナ切れが見え始めた。その隙を逃さず、オーガポンが一気に懐へ飛び込む。

 

「ぶちこめぽにこ!ツタこんぼう!!」

 

「まだだカミツオロチ!テラバーストォ!!」

 

全力で振り下ろされた棍棒と、放たれたテラバーストが激突。激しく大爆発を起こし、オーガポンとカミツオロチを包み込む。

 

「「どっちだ!?」」

 

ホムラとスグリが同時に叫ぶ。煙が晴れた先で倒れていたのは……カミツオロチ。

 

「……負け、ちゃ……った……」

 

「ふぅー……対戦、ありがとうございました」

 

「あっ、対戦ありがとうございました」

 

ブルベリーグチャンピオン戦……決着。

 

 

 

 




三が日で終わらんかった……でも終わるまで投稿は続けるけど是非もないよネ!

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