ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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年末年始特別編!ポケモンSV脳内シミュレーター 藍の円盤 最終話

青のディスクにより行き先が変わり、たどり着いた場所は『ゼロの大空洞』と呼ばれる未知の空間だった。コウキ達も初めて訪れる場所だけあり、周囲をせわしなく見渡している。

ブライアがスマホロトムで確認すると、ゼロラボ内よりもさらに下層へと降りていることが判明した。

 

「……これは、オーリム博士とフトゥー博士のレポートか」

 

「なんだって!?」

 

いの一番に机を発見し、そこに置いてあるレポートを確認していたケンスケの呟きが耳に届いたのか、ブライアがそちらに駆け寄ろうとして――ケンスケのボールから飛び出したドリュウズに阻まれた。

 

「あんた、さっき言われたことをもう忘れたのか?」

 

「す、すまない……つい、興奮してしまって……」

 

「やれやれ……」

 

ケンスケが読み上げたレポートには、ゼロの秘宝テラパゴスや、未知のテラスタルタイプ『ステラタイプ』について書かれていた。さらにレポートの内容からして、この時はまだオーリムとフトゥーは古来と未来のパラドックスポケモンの件で仲違いをする前のようだった。

 

「とにかく、先へ進みましょう。我々の目的はテラパゴスであって、遺品整理ではありませんから」

 

「まだ読み足りないが……ううむ……そうだね!」

 

ドリルをちらつかせてくるドリュウズに慄きながらも、ブライアは先へ進むことを決めた。これで怪我人が出たら本気で訴えてやる、とケンスケが考えているなど露とも知らず、一行は先へ進む。

その道中は決して楽ではなかった。初めて見るステラタイプのテラスタル、道を塞ぐ結晶と繋がっているポケモン達を倒しながら、どんどん下へと降りていく。キラフロル、オンバーン、やっぱり争いあっていたスナノケガワとテツノイバラ、キョジオーン……少しずつ道を切り開きつつ、彼らは先に進む。

 

「それにしても、アンタたちの強さって全然別次元よねー。アタシも強くなったとは思ってたけど、ここじゃ思いっきり足引っ張りまくりだし……」

 

「うん……改めて思うけど、ホムラ達はすごい」

 

「ははっ、どーも」

 

「鍛え方が違うからな」

 

さらに奥へ進んでいくと、テラスタルオーブが反応を示すほどの濃度の高いテラスタルエネルギーが放出されていることがわかった。その根源がさらに奥にあるとわかるやいなや、ブライアは走り出してしまった。そのブライアの後をケンスケとスグリ、ホムラが追い、後からゴウタ達が続く形で最奥部へ進入した。

 

「ゼロの秘宝、どこだろう?」

 

「スグリくん、あれだ!奥の柱に何かある!」

 

「あ、ちょいブライア先生!アンタさっきから暴走しすぎだ!」

 

「ホ、ホムラ……」

 

「仕方ない、行くぞ!……ったく、ヤクでもやってんだろこのヴァカ女が!!」

 

いよいよ隠しきれないほどの悪態を吐きつつ、三人がブライアに続く。後続はゴウタとコウキが周囲を警戒しながら、慎重に進んでいる。

 

「この石が、ゼロの秘宝?」

 

「確認するので待ちたまえ」

 

「……とりあえず、ぶっこ抜いたら良いのでは?」

 

「わかった!」

 

「おいホムラ!スグリも、乗せられるな!」

 

「大丈夫だケンスケ。何かあったらここにいる全員でタコ殴りにして、ケンスケのポケモンで一撃必殺を叩き込めばいい」

 

「いや、究極的にはそうなんだが……」

 

一方、後方から様子を見守っていたリュウセイ達は、安易にゼロの秘宝に触れようとするホムラ達……とりわけ、ここに来てから情緒が暴走しがちなブライアを心配していた。

 

「ねえ、あれ……だいじょうぶなの?」

 

「わからん……だが、ケンスケが一撃必殺技のポケモンを持ってるし、いざとなれば俺たちがお膳立てして一発ぶち込んでもらえばいいだろ」

 

「……嫌な予感がする。リュウセイ」

 

「奇遇だな、コウキ……俺もそう思ってた」

 

絶対にロクなことにならない。そう予感がしてならないコウキとリュウセイはいつでもポケモンを繰り出せるようにスタンバイする。

 

「やはりその結晶しか考えられない!さあスグリくん……ゼロの秘宝を引っこ抜くんだ!!」

 

ブライアの後押しもあって、スグリは全力でゼロの秘宝を引っこ抜いた。かなりの勢いで飛んでいったので、傷がないか心配になったスグリはすぐに秘宝を持ち上げた。

 

「びっくりしたぁ……」

 

「間違いない!その結晶こそ、テラパゴスだ!」

 

スグリが拾い上げてすぐ、いきなり結晶は光を放ち始め……光が弾けると、四足歩行のカメのようなポケモンへと姿を変えた。

 

「おお」

 

「カメだ」

 

「カメだな」

 

率直な感想が漏れた。その言葉が届いたからなのかは定かではないが、顔を上げたテラパゴスが周囲を見渡し――ケンスケを見止めると、そちらへ足を踏み出した。

 

「うおっ、こっちに来る!」

 

「……!スグリ、ボールだ!」

 

「え、なんで……?」

 

「テラパゴスが何してくるかわからんからだ!ひとまず捕獲して、安全確保!」

 

「わ、わかった!!」

 

ホムラに捕獲を促され、その理由も納得のいくものだったのでスグリはマスターボールをテラパゴスに投げた。あらゆるポケモンを捕まえる究極のモンスターボールは、その性能に偽りなくテラパゴスを捕獲してみせた。

 

「……ふぅ、なんか起こる前になんとか出来て良かった」

 

「素晴らしいよスグリくん!マスターボールを所持しているとは用意がいいね!!これでいつでもテラパゴスを研究できるが……今ここでテラパゴスの力、見せてもらうことは可能だろうか?」

 

「寝言は寝て言えよ、ブライア先生。当初の目的であるテラパゴスの発見はもとより、捕獲まで出来たんだぞ?これ以上は欲張りってもんだ、ささっと引き上げようぜ」

 

「頼む!少しだけ、本当に少しだけで構わないから!!」

 

「あのなぁ……」

 

すっかり呆れかえるケンスケだが、この場ではケンスケの判断が正しい。目的を果たしたというのに余計なことをして時間を取られるなどもってのほかで、安全が完璧に確保できたわけでもないのにわずかでも危険な可能性のある行為に手を出すなどありえない。

 

「……ちょっとだけなら、いいんじゃない?」

 

「スグリ……」

 

「さすがにちょっと……可哀想だべ」

 

「スグリくん!!」

 

オーガポンに出会えた頃の自分の姿が重なってしまったのか、スグリが了解の意を示してしまった。これ幸いとばかりにブライアも乗っかってしまったので、仕方なくホムラが相手をすることにした。

 

「いいすか?これっきりですからね。終わったら速攻で帰宅ですからね」

 

「ああ、わかってるとも!!」

 

「……クラベル校長には、一度人間関係を見直してもらいたいものだな」

 

「あはは」

 

ケンスケは事ここに至り、呆れから失望へと目の色を変えている。リュウセイはクラベルにシアノとの縁を割と本気で切って欲しいと願い始めた。

 

「えーっと……じゃあ、行くよ?」

 

「おう」

 

こうして始まったテラパゴスの試運転……スグリは図鑑アプリでテラパゴスの技を確認し、戦闘態勢に入った。

 

「俺はこいつだ」

 

ホムラが繰り出したのはハルクジラ。こおりタイプのポケモンだ。バトルが始まる直前、テラパゴスの姿が変化した。フォルムチェンジができるようだ。

 

「じゃあ、行くよ。しねんのずつき!」

 

「すてみタックル!」

 

テラパゴスのしねんのずつきとハルクジラのすてみタックルが激突。体格差もあってか、テラパゴスが押し返された。

 

「ん?あまりダメージがない……?」

 

「あ、多分特性かも。姿が変わったのも同じかも」

 

「なるほど……よし、続きやるぞ」

 

「うん。だいちのちから!」

 

「じしん!」

 

続けてだいちのちからで攻めてくるテラパゴスだが、ハルクジラのパワーから放たれたじしんが技をかき消してしまう。

 

「うーん、やっぱり捕まえてすぐだから戦いにくい……それに、テラパゴスも本調子じゃなさそうだべ」

 

「そう見えるな……」

 

「よし……みずのはどう!」

 

「れいとうビームだ!」

 

テラパゴスのみずのはどうだが、哀れこおり技の前では無力にも凍りつき粉々になった。伝説とうたわれるには余りにも地味すぎる能力に、ブライアが幾度も首をかしげていた。

 

「終わらせるか、ばかぢから!」

 

「え、最初よりも効いてる!?」

 

ハルクジラから打って出る。使われた技はばかぢからで、これが予想以上のダメージをたたき出した。どうやらダメージ軽減の特性の効果は最初に攻撃を受けるときのみのようだ。

まぁ、蓋を開けてみればあんまりにもあんまりな決着であった。スグリもテラパゴスに近づき勝負終わりの労をねぎらい、ホムラ達もすぐに集まった。

 

「もう終わり?なーんだ、呆気なかったなぁ」

 

「いくらテラパゴスが伝説のポケモンだとしても、勝手が分からねぇうちから使いこなせるものか」

 

「ま、そのへんは追々研究して解明すればいいじゃんか。よーし、それではかいさ……」

 

「やはり、おかしい」

 

なんとか解散の空気に持っていこうとしたものの、そうは問屋が卸さない。疑問を口に出したブライアが、しきりに本を見返していた。

 

「テラスタルエネルギーの出力が低すぎる……両博士の書籍に描かれた姿と違うのも気にかかる……」

 

「まだ言ってんのか、あんた」

 

「テラパゴスはゼロの秘宝じゃないってこと?」

 

「いや……足りないのか?秘宝たりえる条件が……そうか!テラパゴスはテラスタルエネルギーそのもの!スグリくん!今すぐテラパゴスをテラスタルしたまえ!!テラスタルオーブのエネルギーに呼応して……秘宝は秘宝たるかがやきを発するだろう!!」

 

「え!?わ、わかった!?」

 

「いや"わかった"じゃねえんだわスグリ待てえええぇぇぇ!!」

 

ブライアの勢いに押されてしまったのか、スグリはホムラが制止するのも間に合わずテラパゴスをテラスタルしてしまった。結晶に包まれ、光の奔流とともにテラパゴスがその真の姿を現した。

 

「やはり!博士の書籍は正しかった!!テラパゴスが、完全に目覚めた姿!これこそが!ゼロの秘宝!!」

 

「(クッソが!最悪の予感ってのは、なんでいつも大体当たるんだよ!!)」

 

ケンスケは一番起こって欲しくなかった状況が目の前で起きたことに悪態をつきつつ、退避か迎撃かの二択を考える。と、その時だ。テラパゴスからテラスタルエネルギーが溢れ出し、爆発が起こった。誰がどう見ても暴走している。さらに、一筋の光がスグリ目掛けて放たれたではないか。

 

「スグリッ!!ぐあっ……」

 

「え」

 

その光がスグリに当たる直前、ホムラがスグリを突き飛ばした。その結果、光はホムラを遠く吹き飛ばしてしまった。

 

「ホムラァッ!!」

 

「総員戦闘態勢!!」

 

「ヤバイよ、スグ!ボールに戻したほうがいいって!」

 

「う、うん……!戻れ!テラパゴス!」

 

ホムラが吹き飛ばされたことに唖然とするも、ゼイユの声掛けで我に帰ったスグリはすかさずマスターボールを構える。ところがボールから放たれたビームはテラパゴスには届かず、むしろバリアを張ったテラパゴスにボールを弾かれ、さらに真っ二つに砕けてしまった。

 

「……えっ?戻らない……どうし……」

 

「スグリ、下がれ!コウキ、リュウセイ、ゴウタ、頼む!俺はホムラを見る!」

 

「頼む!」

 

「結局こうなるのか……!」

 

「やるしかねえな!」

 

「ゴウタ!アタシも戦うわ!」

 

「わかった、ゼイユ!」

 

ケンスケの素早い指示を受けて、全員が動き始める。コウキはエクスレッグを、リュウセイはノクタスを、ゴウタはサザンドラを、ゼイユはヤバソチャを繰り出した。

 

「エネルギーが暴走している!?このままでは危険だ!」

 

「あんたが蒔いた種だろうが!!邪魔にならねぇようにどっかいってろ!!」

 

「うっ……すまない、みんな!テラパゴスを……止めてくれ!!」

 

「ねえ!スグもはやく!テラパゴス、なんとかしないと……!!」

 

「こ、こんなはずじゃ……違う、俺のせいで、ホムラが……!?」

 

なんとかブライアを下がらせ、ケンスケの下へ合流させた。ゼイユはスグリにも応援を呼びかけるも、ホムラが負傷したことに気が動転してしまい、その声は完全に届いていない。

 

「ゼイユ、向こうはあとだ!今は……」

 

「う、うん……行くよ!ヤバソチャ、シャカシャカほう!」

 

「ノクタス、くさわけ!」

 

「エクスレッグ、かかとおとし!」

 

「サザンドラ、りゅうのはどう!」

 

全員が一斉に攻撃を仕掛けるも、テラパゴスはバリアを張ることでダメージを軽減してきた。さらに反撃のテラクラスターで全体攻撃を仕掛け、コウキ達のポケモンにダメージを与えていく。

 

「クッソ!いきなりバリアたぁマジでめんどくせえ!!」

 

「とにかく殴って、テラスタルオーブをチャージするしかない!」

 

「物理技くるぞ!ノクタス、ニードルガード!!」

 

「後隙は無くす!エクスレッグ、とびかかる!」

 

再びテラパゴスがしねんのずつきで襲い来るも、リュウセイの機転により逆にテラパゴスの攻撃を防ぎつつダメージを与えることに成功した。その隙を逃さずコウキのエクスレッグがとびかかり、さらに攻撃力を下げていく。

 

「ホムラ!おい、しっかりしろ!」

 

「ホ、ホムラ……どうしよう、ケンスケ先生……おれのせいで、ホムラが……!」

 

「泣き言は後!お前もホムラに呼びかけてくれ!」

 

一方、ホムラは当たり所が悪かったのか意識を失っており、ケンスケが何度も呼びかけたり揺すってみるが反応がない。スグリはますます顔色を悪くするが、ケンスケも特に余裕があるわけではないのであまり相手にしていられないのが事実だ。とにかくホムラを起こすための一助になってもらうことに期待するしかない。

 

「おっしゃ、テラスタル来たぜ!」

 

「一気に行くぞ!!」

 

まず、リュウセイとコウキがテラスタルを使用し、それぞれ最大打点となる攻撃を叩き込んだ。

 

「タネばくだん!」

 

「かかとおとし!」

 

二匹の攻撃が同時に炸裂し、テラパゴスのバリアを破ることができた。だが、その直後だ。テラパゴスにテラスタルエネルギーを吸収されたことでテラスタルが解除されてしまい、反撃のテラクラスターが放たれたことでコウキのエクスレッグとリュウセイのノクタスが同時に倒れてしまった。

 

「(な、なんだこの威力!?おい、リュウセイ!)」

 

「(イベントの強制力かもしれん!次のポケモンを出すのは待て!)」

 

「(チッ……!)」

 

テラパゴスは吸収したテラスタルエネルギーを利用して再びバリアを張り、体勢を整えた。

 

「うそ……あんなに強かったコウキ達のポケモンがあっという間に……」

 

「ボサっとするなゼイユ!次来るぞ!」

 

「う、うん!ヤバソチャ、いのちのしずく!」

 

「サザンドラ、あくのはどう!」

 

コウキとリュウセイが一時戦線離脱となり、動揺するゼイユを宥めつつゴウタはテラパゴスへ果敢に攻め立てる。ゼイユはゴウタをサポートしつつ、後ろにいるスグリに呼びかけた。

 

「スグ!あんたも戦いなさい!ゴウタだけ頑張ってるじゃん!」

 

「む、無理だ……!おれなんてて……で、できっこない……!」

 

だが、スグリは「自身の不用意な行動がホムラを傷つけた」という自責の念に苛まれ、完全に自信を喪失していた。

 

「サザンドラ前へ!ゼイユ、サポート頼む!」

 

「任せなさい!ヤバソチャ、もう一回いのちのしずく!」

 

「サザンドラ、りゅうのはどう!!」

 

「今度はこっちからも!シャドーボールよ!」

 

「あくのはどうだ!」

 

テラパゴスもしねんのずつきやだいちのちから、みずのはどうで対抗するが、しねんのずつきはあくタイプのサザンドラが受け止め、だいちのちからもサザンドラがヤバソチャを背中に乗せることで回避、みずのはどうもサザンドラが受け流し、折を見てゼイユがいのちのしずくを指示することでうまく立ち回っていた。

 

「テラスタルだ、サザンドラ!ありったけのりゅうのはどうをくらえ!」

 

テラスタルオーブの再チャージが完了し、ゴウタがテラスタルで一気に追い込みをかける。ドラゴンテラスタルのサザンドラが放つりゅうのはどうはテラパゴスのバリアを破り、再び体勢を崩した。

だが、再びテラパゴスにテラスタルエネルギーを吸収されてしまい、サザンドラのテラスタルは解除されてしまった。さらに追撃のテラクラスターが放たれ、ゴウタのサザンドラもゼイユのヤバソチャも倒れてしまった。

 

「クソ!サザンドラが……!」

 

「ヤバソチャ、やられちゃった……。何これ……強すぎなのよ!スグ!みんなが大変!ねえ!あんたも!がんばんなきゃ!!」

 

「で、でも……ダメだ……お、おれは……おれなんか……」

 

「……スグリ、ホムラを頼む。かくなる上は俺が……!」

 

未だ自信が戻らないスグリを置いておき、ケンスケが戦おうと立ち上がった、その時だ。ちょうどケンスケ達の頭上にある結晶が砕け、破片が落下してきたのだ。

 

「スグッ!!危ない!!」

 

「あ……」

 

結晶が落下し、生き埋めになる――その直前。突然中空に黒い靄が現れると、そこから赤い翼爪を生やした黒い翼が飛び出して結晶を防いだ。

 

「え、あ……え?」

 

「な、なにあれ!?」

 

「翼……!?」

 

さらに黒い靄から竜が顔をのぞかせた。漆黒の甲殻に怒りを湛えた真紅に輝く目……コウキ達がよく知る、超弩級生物だった。

 

「(おいおいおいおいおいおい、過干渉が過ぎませんかね!?)」

 

「(いやいくらホムラがやばいからってそこまでする!?)」

 

「(やべぇよやべぇよ、憤怒バーニングファッキンストリーム化してるぞ!)」

 

「(死なない程度によろしく)」

 

「グアオン(わかってるわ)」

 

「「「(リュウセイィィィィ!?)」」」

 

謎の黒い竜()は口元に豪火を滾らせ、強烈な灼熱の火炎をテラパゴスに放った。その一撃はバリアを一撃で破り、テラパゴスに大ダメージを与えるほどのものだった。

 

「テ、テラパゴスが!」

 

「な、なんてパワーなんだ!?」

 

「なに、これ?ポケモン……?」

 

「……い、てて……」

 

と、ここでようやくホムラが目を覚ました。それと同時に黒い竜は靄の中に引っ込み、靄と共に消えていった。体を起こすホムラ……左腕と顔の左半分がテラスタル結晶に包まれている以外は目立った外傷はないようだ。

 

「よっこいしょ……っと。ったく、なにしょぼくれた顔をしてんだ、スグリ。ウジウジしてないで、さっさとこの問題を片付けるぞ」

 

「ホ、ホムラ!そ、その顔……!!」

 

「言いたいことは、後にしてくれ。今は……テラパゴスをなんとかしないとな!」

 

酷い目に遭い、現在進行形でヤバそうにも関わらず、ホムラは普段と変わらぬ笑顔でスグリをみやる。その目にまっすぐ射抜かれたスグリは、ようやく顔を上げて、テラパゴスと向き合った。

 

「ホムラ!お……おれも、戦う!!」

 

「よっしゃあ!!」

 

「もう……本当!遅いのよ!ふたりで全部なんとかしなさい!」

 

ついにスグリが立ち上がり、二人で揃ってテラパゴスと対峙する。ゼイユも相変わらずな言葉だが、その顔は笑顔になっている。

 

「ケンスケ、ボールスタンバっとけ!トドメと同時にぶん投げるんだ!」

 

「いや、お前……ああ、くそっ。わかったよ!」

 

「行くぜ、スグリ!」

 

「うん!」

 

「「ぽにこ!/カミツオロチ!」」

 

ホムラはオーガポンを、スグリはカミツオロチを繰り出した。

 

「はっはははは!なんか全身から力が激ってくるようだぜ!!ぽにこぉ!テラスタルいったれぇ!!」

 

ホムラが左手でオーブを握り締めると、一瞬でエネルギーがチャージされていった。そのままオーガポンをテラスタルさせ、一気にトドメを刺しに行こうとする。危機感を覚えたのか、テラパゴスがエネルギーの吸収・バリア再展開を目論むが……先程の黒い竜の攻撃がかなり効いたのか、そのどちらもうまくいかなかった。

 

「エネルギーの吸収やバリア再展開は不可能なようだね!好機だよ!」

 

「いけ!二人共!!」

 

「あたしが許可するわ!やっちゃえあんたたちー!」

 

「ぽにこ!ツタこんぼうだ!!」

 

「カミツオロチ!きまぐレーザー!!」

 

カミツオロチのきまぐレーザーがテラパゴスの注意をそらしているうちにオーガポンが接近、その脳天にツタこんぼうが振り下ろされた。その強烈な一撃に残った体力も削りきり、テラパゴスは元のフォルムへと戻った。

 

「今ならボールに入るかも……!!」

 

「ケンスケ……ッ!ぐっ……」

 

「ホムラ!ケンスケ先生、頼む!けっぱれ!!」

 

「任せろ!行けや、マスターボール!!」

 

膝をつくホムラを支えつつ、スグリがケンスケに呼びかける。すかさずケンスケがマスターボールを投げ、テラパゴスを捕獲することに成功した。

 

「終わっ……たの?」

 

「……みたいだな」

 

「まったく……心臓に悪すぎる」

 

「もうこういうのは勘弁してほしいぜ……」

 

ゼイユ達もホムラ達のもとに集まり、お互いに労をねぎらう。ホムラはスグリに肩を貸してもらう形で、なんとか立てていた。

 

「皆、無事かい!?」

 

「命はあるかどうかって意味なら、まあ無事です」

 

「ブライア先生!ホムラが……」

 

「あー……なんか体がだるいけど、平気っすよ。大丈夫大丈夫」

 

「「「寝言は寝て言え」」」

 

「辛辣ぅ……」

 

実際、AI博士のように体の一部が結晶化しているのに大丈夫とか寝言以外の何ごとだというのか。

 

「……私のせいで、皆を危険な目にあわせてしまった……本当に……申し訳なく思うよ」

 

「それは本当にそう!!先生テラスタルバカなんだから、もっと大人として自覚しなさい!」

 

「返す言葉もないよ……」

 

「ブライア先生。申し訳ないが今回の一件について、ブルーベリー学園側に対して正式に抗議を入れることになるだろう。そちらの都合で我校の生徒が危険にさらされ、挙句ホムラがこの様だ。……本人がまったく気にしていないので何とも言えないが、相応の処分は覚悟していただきたい」

 

「ああ……承知の上だよ」

 

「……まぁ、あまり重いものにならないよう、我ら一同も掛け合ってみますので。とりま、しっかり反省してくださいね」

 

「本当にすまなかった……」

 

ブライアも深く反省しているようだ。スグリがそっと手を伸ばし、ホムラの左手に触れた。

 

「ホムラ……これ、大丈夫なの?」

 

「ん?あぁ、痛みも何もないぜ。不思議なことにな、なんかガワだけ変わったみたいな感じだ。ほれこのとおり」

 

本当に大丈夫だ、とばかりにその場で手話を始めるホムラ。その様子にホッとすると同時に、安心しきったからかスグリはまた泣き出してしまった。

 

「本当に、もう……」

 

「ゼイユもよく頑張ったな。えらいぞ。怖かったな」

 

「……う、ううぅぅぅ……ゴウタぁ……!」

 

なんだかんだやせ我慢だったらしいゼイユも、ゴウタに頭を撫でられ労られると安心感から泣き出した。

 

「さあ、エリアゼロ調査は終了だ!ブルーベリー学園に戻ろう!終わり!閉廷!!」

 

「やったぜ、帰ったらパルデアの宝食堂で打ち上げだ!!」

 

「あ、ホムラは諸々の後始末終わったら病院にぶち込むんでそのつもりで」

 

「\(^o^)/オワタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のこと。ブルーベリー学園に戻ってきた一行。諸々の連絡は移動の合間にケンスケが既に済ませており、ブライアには好奇心で無闇に生徒を危険に晒したとして謹慎処分が下された。懲戒免職じゃないのは、ケンスケ達(特に最も被害を被ったホムラによる五体投地)の擁護もあってのことで、「この失敗をきっかけに成長して欲しい」という意を込めてのことだ。

ホムラ達は改めてスグリと「ゼロから友達」になった。以前から言っていたように、スグリは学園を休学し、実家で養生するという形で自省する……はずだった。

 

「せっかくだし、スグリも冒険してみりゃいいじゃんか」

 

「冒険?」

 

「そそ。そうだな……ブルーベリー学園にちなんで、イッシュ地方とかどうだ?」

 

「イッシュを冒険……うん、いいかも。やってみたい、冒険!」

 

「よっしゃ!思い出の写真とか、なんかいろいろ送ってくれよ?」

 

「うん!」

 

こうしてホムラに勧められるがままに、「実家で自省」から「イッシュで冒険」に目的が変わっていた。それでも、当人が割と楽しみにしていたので、これはこれでありだろう。

そして……。

 

「ホ、ホムラくん!?その腕は……」

 

「あー……えっと……ク、クリスタルパ~ンチ!……なんちて」

 

「バカァァァァ!うわぁぁぁぁん!」

 

「わあああ!?タロ泣かないでくれー!!」

 

「いやジョーク下手かよ」

 

ホムラの有様からかなり危険な目に遭ったことを悟ったタロが泣き出してしまったり、新しく発見されたテラスタルタイプ・ステラについて四天王達と話し合ったりした。

ホムラがパルデアの病院で検査入院になると知ってからは「お見舞いに行く」とタロが息巻き、そんな彼女の後ろ姿を見て何かを理解したらしいアカマツが男泣きしていたりと、リーグ部もかなり騒がしくなっていた。また、スグリが休学中にイッシュを冒険すると知った四天王達から出身地のオススメスポットなんかをまとめた手製のパンフレットをもらったりして、スグリはだいぶ照れくさそうだった。

 

楽しい時間はあっという間に過ぎ去り……。

 

「は~るばる~来たぜ、パ~ルデアへ~♪」

 

「まぁ、正確には帰ってきた、が正しいがな」

 

コウキ達はパルデアに帰ってきた。理由は単純、留学期間が終了したからだ。ただ、シアノ校長からは好意と謝意の二つの理由から、コウキ達はいつでも好きな時にブルーベリー学園を訪ねても良いと許しが得られた。

 

「いやーしんどかった!でも帰ってこられてよかったー!!」

 

「だなー」

 

「ホムラはこの後、休学手続きをして即入院だがな」

 

「おい、やめてくれよ……」

 

「あ、そうだ。良かれと思って、ホームウェイ組に事の顛末を伝えておいたよ」

 

「お前かコウキーッ!!おかげでネモからのLINEがとまらんのだが!?」

 

「知らん、そんなことは俺の管轄外だ」

 

「お前のせいやろがい!!」

 

「……ん?おい、あれ……」

 

ゴウタが何かに気がつき、足を止めた。全員で足を止めると、アカデミーの正門の前で、一人の生徒が立っていた。振り返った生徒は外が白、内が青のつばの広い帽子を被っており、ホムラやゴウタと同じオレンジクラスの制服に身を包んでいる。いつもの三つ編みと呼ばれる髪型で、大変可愛らしい少女だ。

 

「おお、アオイだ」

 

「アオイ……?」

 

「ほら、原作主人公。女主人公のデフォルト名だよ」

 

「あっ、あぁ……そ、そうだよな(流石にあいつじゃないよな……)」

 

そのまま歩き出す一行。原作女主人公は五人を見るとそのまま軽く会釈してくれた。コウキ達もそれに応じて会釈し、通り過ぎようとしたところで――

 

 

ガシィッ!!

 

 

そのまますれ違おうとしたホムラの腕を、凄まじい力で掴んだ。

 

「……あれ?えーっと、君?いったいどうし――」

 

ホムラ

 

「ヒエッ」

 

ゆっくりと上げられた顔、その瞳にはハイライトが存在していなかった。というか、名乗ってないはずなのにホムラの名前を知っていた。

 

「……あの、もしかして……(アオイ)さん?」

 

正解

 

原作主人公(アオイ)だと思った?残念!陸上葵(アオイ)でした♪

 

「……スーッ……。あ、あのー……手を離してもらえると嬉しいなーって……その、さっきから骨がミシミシいっててすっごく痛いなーって……」

 

「そう?……私はホムラがほかの女の子とも楽しそうで心がギリギリいっててすごく痛かったなー……

 

「アババババババ……!」

 

「それに大空洞じゃ下手したら死んでたかもしれないのに……ホムラにはもう少し、自愛って言葉の意味を教えてあげなくっちゃね?」

 

「アガガガガガガ……!

 

「そういうわけで、少しホムラを借りてくね?」

 

「どうぞどうぞ御遠慮なく」

 

「手加減いらんので好きにしてください」

 

「周辺の人払いはお任せ下さい」

 

「今夜はお楽しみですね」

 

「うわああああああああ!待ってくれえええええぇぇぇ!ワンチャンレウスボディならまだ許容できるけど人間ボディは流石に倫理観がやばいいいいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

「大丈夫よ、ホムラ……倫理なんてね、愛の前じゃ無力なの

 

「たーすけてえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「「「「南無」」」」

 

十字を切って念仏を唱え、コウキ達はアカデミーに背を向けて歩き出した。一方、アカデミー内の自室に引きずられ姿を消したホムラ……。

このあと?そりゃもうめちゃくちゃ(略)

 

 

 




やっと特別編が終わりました。果たしてホムラは明日の朝日を拝めるのか!
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