ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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いよいよリオレウスとの決戦です。


決戦!リオレウス ~天冠山に紅蓮咲く~

迎月の戦場でリオレウスを撃退し、無事に鱗を手に入れた。いつ襲撃が来るともわからないので、慎重に歩を進めていく。

 

「……ところでさっき拾った鱗、すごく綺麗だったな。あんなに綺麗に光っている鱗、初めて見たよ」

 

「私も初めて見ました。……『りゅうのうろこ』とは、また違った存在感ですね」

 

私はポーチから鱗を取り出し、空に翳してみたりして眺めてみる。先輩もしげしげと鱗を見ていて、本当に珍しい物なんだと改めて実感する。

輝く真紅の鱗……多分これは、リオレウスの鱗だ。触れてみた感じからして、過度に力を加えると砕けてしまいそうな気がする。それに、心なしか熱を帯びているような気もする……このことから、リオレウスはほのおタイプを持っている可能性があることがわかった。

ラギアクルスと同じと考えるなら「ほのお・ドラゴン」、リザードンの亜種的なものと考えるなら「ほのお・ひこう」といったところだろうか。

 

「それにしても、さっきショウが繰り出したグラビモス……だっけ。ハガネールでさえドロドロに熔かしたリオレウスの炎を真正面から受け止めて、しかも無傷なんて……」

 

「グラビモスは、体内に熱エネルギーを溜め込む習性があるんです。その習性のためなのか、グラビモスにほのお技は効果がないんです」

 

「そうなのか。……最後のビームも、凄かったな。リオレウスのはかいこうせんよりもずっと強そうだった」

 

「……あのビーム、実はただの排熱行為だって言ったら……信じます?」

 

「え?いや、まさか……え、マジで?」

 

「マジです」

 

「うっそだろ……?」

 

私も初めて知ったときは、先輩と同じような反応だった。

時折、岩ポケモンを捕食したグラビモスが定期的に口から炎を吐いたり、下腹部から高熱のガスを噴き出しているところは、移動中の訓練や野営で何度か見たことがある。

それが熱エネルギーの排出だと知ったのは、食後と排熱後でグラビモスの体温に変化が生じていることに気づいたからだ。岩ポケモンの中には「じばく」の技を使うポケモンもいるので、その自爆エネルギーが熱エネルギーとしてグラビモスの体内に溜まってしまうそうで……だから時折ボールから出して、排熱させてあげないといけない。それとは別に、白色の催眠性の効果のあるガスを噴き出すこともある。これは食後によく見られるので、食事の際に発生したガスなのだろう、と考えられる。

ただ、あの時リオレウスに向けて放つほどの威力になったのは初めて見た。岩ポケモンを食べただけでは熱で体表が赤くなるような変化は起きていなかったから、極端に熱を溜め込み過ぎるとあんなふうに変化してしまうのかもしれない。ますます排熱の必要性が高くなったわけだ。

……何かこういうの、図鑑タスクを埋めているみたいでちょっと楽しくなってしまう。最近では思い立ったが吉日とばかりに、ポケモン図鑑の空いたスペースにジンオウガたちの生態を書き記している。もちろん、グラビモスの排熱も記入済みだ。

 

「他のポケモンも、グラビモスのようなすごい生態があるのか?」

 

「そうですね……例えば、電気を操る海竜ポケモンに、ラギアクルスというポケモンがいます。このポケモンは背中にある背電殻という器官に、電気を溜めることができるんです。この電気を限界まで溜めて放たれる一撃は、同じでんきタイプのライチュウですら受けきれませんでした」

 

「えぇ!?ライチュウは無事だったの?」

 

「もちろん無事でしたよ。……ひんし状態にはなりましたけど」

 

でんきポケモンがでんき技を受けても自分のエネルギーに変換したり、ダメージが少なく済むけれど……ラギアクルスのソレは過剰供給とばかりにライチュウに浴びせられた。結果、電気を過剰に溜め込んだライチュウは高熱を出してぶっ倒れてしまい、二日ほど寝込んでしまった。

……ライチュウですら受けきれなかったラギアクルスの電撃、ジンオウガは全く無傷だったから行ける、と思ったけど……やっぱりそんな簡単に済む話ではなかったみたい。

 

「すごいんだなぁ……グラビモスも、そのラギアクルスってポケモンも。ひょっとして、ジンオウガも?」

 

「それは、まだ……ジンオウガのことは、まだまだ知らないことだらけです」

 

「ガウ?」

 

ジンオウガが「どうした?」と言いたげに振り返るけれど、「なんでもないよ」と伝えれば直ぐに前へと向き直った。

ラギアクルスは背電殻へと電気を溜めることができる……それなら、ジンオウガは?ジンオウガにもおそらくだけど、ラギアクルスと同じように電気を溜める器官が存在するはず。ジンオウガのでんき技を見た感じ、発電能力が欠けているというわけでもない。けれど、ジンオウガは電気を溜めるようなことをしない。でんき技を受けても、周囲に放出することで電気が溜まらないようにしているのだ。

どうしてそんなことをするのか、気になって聞いてみたところ……しきりに背中を気にしているようだった。どうやら電気が溜まりすぎると、私を乗せるのに支障をきたすそうだった。そういう事情があるなら仕方ない、と諦めたけれど……いつか、限界以上に電気を溜めたジンオウガの様子を見てみたいと思う。

 

「……もうすぐ、カミナギ寺院跡です」

 

「いよいよか……絶対に勝とうな、ショウ」

 

「もちろんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ、カミナギ寺院跡が見える崖の上にたどり着いた。そこは……。

 

「これは……」

 

「ここが、カミナギ寺院跡……?」

 

そこはかつて、私が訪れた時とはひどく様変わりしていた。

私が初めて訪れた時は、たまたまリオレウスが留守だったのか不在であり、所々に昔の建物の名残のような石柱がいくつも立っていた。

しかし、今はどうか……石柱は尽く破壊され薙ぎ倒されていて、無理やり広いスペースを作ったかのような印象を受ける。唯一無傷だった建造物は、古代のポケモンを象ったと思しき二つの石像のみだ。その石像は地面から強引に引っこ抜かれたのか、隅の方に二つ揃って並べられていた。……どうしてアレらだけ破壊しなかったんだろうか……。

リオレウスは、カミナギ寺院跡の中央で蹲って眠っているようだった。体力を回復しているのだろうか……やはり彼らといえど、決して無敵の存在というわけではないようだ。

 

「リオレウスだ……眠っているのか?」

 

「おそらく、グラビモスのすてみタックルが相当効いているんだと思います。泥沼だと自重で沈んでしまうほどに重いポケモンですからね、グラビモスは」

 

「……そんな奴に全体重をかけてぶつかられたら、死ぬほど痛いだろうな。実際、食らってすぐはだいぶふらついていたし……」

 

「体力回復のために休眠が必要なほどのダメージなら、今すぐ仕掛けたほうがいいかもしれません……」

 

「だな……よし、行こう!」

 

「ジンオウガ!」

 

「ウオオオォォォォンッ!!」

 

ジンオウガがわざとらしく大きな声で咆哮を上げると、一気に崖から飛び降りた。ジンオウガの咆哮で飛び起きたリオレウスはすぐさま周囲を警戒し、そして私たちに気がついた。

 

「リオレウス!あなたの言うとおり、戦場に置いてあった鱗をこうして持ってきたわ!」

 

「…………」

 

「……私の話を聞いて欲しいの、リオレウス」

 

「グォン……?」

 

首をかしげながらも小さく頷くリオレウス。私は少しばかり深呼吸をしてから、話し始めた。

 

「……あの時、あなたが殺そうとした三人の人間たちのことなんだけど。あの三人は人から物を盗ったりする悪い人たちなの。だからあの時、あなたが三人を殺そうとした時に……考えてしまったの。あのまま殺されたら、それをありがたいと思う人が居るんじゃないか……って」

 

「……グヌゥ」

 

「けどね、同時にそれは、今の私自身にも当てはまることなんだってことにも気づいたんだ。この赤い空の異変……私が原因なんじゃないかって考える人達もいる……。そういう人たちにとって、私が死んだ方が安心できるんじゃないかって……」

 

「グオオォンッ!グル、グルオォォアッ!!」

 

オウメが言っていた言葉……「ギンガ団が私の死を望んでいる」という言葉が、今も頭にこびりついて離れない。もちろん、先輩がいるようにギンガ団全員がそう考えているとは微塵も思っていない。

けれど、もし。あの時空の裂け目から落ちてきた私に、直接的な要因でなくても何かしらの因果関係があったとしたら……そう考えると不安に駆られてしまう。ついその不安を弱音として吐いてしまったけど、リオレウスは首がちぎれんばかりにブンブンと横に振っていた。まさかの全否定だった。

 

「ガウガウ」

 

「ジンオウガ……」

 

見れば、ジンオウガも首を振っている。「それは違う」と、「そんな訳がない」と、私の不安を否定してくれる。

 

「馬鹿なことを言うなよ、ショウ。もしもお前が死んじゃったら、泣くぞ、おれ」

 

「先輩、泣いちゃうんですか?」

 

「あぁ、泣くよ泣く。男泣きの大泣きだ。ひょっとしたら恥ずかしくなってショウが化けて出てくるかもな」

 

「あぁ、それは……たしかに、恥ずかしいですね」

 

思わず苦笑いを浮かべてしまう。私なんかのためにコトブキムラで大声を張り上げて泣き喚く先輩の姿を想像すると、考えるよりもずっと恥ずかしい。今、私の周りにはこんなにも私のことを思ってくれる人やポケモンたちがいる……それだけで、とても安心することができた。

 

「大丈夫です、先輩。私、ちゃんと気付けましたから。……あの三人を助けたこと、私は間違ったことはしていないと思っています。

あの時も言いましたけど……あそこで三人を見殺しにしていたら、私は人の命を奪うことに躊躇がなくなってしまうかもしれませんでした。ともすれば、復讐のためにコトブキムラを襲撃していたかもしれません。

でも、私はまだ人を信じたいんです。今はまだ、自分が信じたい人だけを信じたい……そんな私ですが、いつかはかつてのようにみんなと信じ合っていけたらな……って、思ってます」

 

人を信じることは、まだ怖い。けど、それならせめて私を信じてくれている人たちだけは、信じていたい。

 

「リオレウス……あなたはあの時、私を試そうとした。人を信じることに臆病になっている私が、人を助けたいと思うだけの心があるのかどうかを。人に裏切られた私が、未だに人を憎んでいるのかどうかを。だから、あの三人を殺そうとした。私の反応を見るために」

 

「…………」コクン

 

「私の不安、私の悩み……全部気づいていて、どうにかしようとして、結果的にあんなことをしたのは、わかる。でもね……私、すごく怒ってるの。わかる?」

 

「……ッッ」ギクッ!

 

「どんな理由であれ……あなたは人を傷つけ、あまつさえ殺そうとした。それは、それだけは、許すことはできない。だから……」

 

その言葉とともに、ジンオウガが前に出た。全身に青い稲妻を奔らせながら敵意を剥き出しにしていた。

 

「ここからは、全力でお説教をしてあげる。……バトルをしよう」

 

「ウオオオオォォォォォンッ!!」

 

「グルオオオオォォォォォッ!!」

 

私の宣戦布告に合わせて、ジンオウガが咆哮を上げた。対抗するようにリオレウスも咆哮を上げると、その場で飛び上がって空中に滞空した。

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【咆哮】~モンスターハンター~

【陽昇る水景】~モンスターハンター3rd~

【戦闘!伝説のポケモン】~ポケットモンスター LEGENDS アルセウス~

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジンオウガ!かみなりパンチ!!」

 

「ウオオォォォン!!」

 

まずは先制攻撃、とばかりにジンオウガにかみなりパンチを指示した。ジンオウガは一気に駆け出して距離を詰めると、右前脚に電撃の力を込めて思い切り振り上げた。リオレウスの顔面めがけて振り下ろされた脚は、しかしわずかにバックステップをしたリオレウスに躱されてしまった。

空に逃げられる前に、なんとしても一撃を!!

 

「素早く!でんこうせっか!!」

 

「ウオォン!!」

 

「グゥ……!」

 

でんこうせっかの早業!先手を取れる技であるでんこうせっかを、素早く行動ができる早業で繰り出すという荒業で強引に先手を取りに行く。こちらの手持ちに飛行能力を持ったポケモンはいないし、なによりリオレウスとまともに戦えるポケモンが少なすぎるという問題もあった。

でんこうせっかが命中し、ジンオウガはすぐさま体勢を整える。このまま攻める!

 

「げきりん!!」

 

「グルルルゥゥオオオオォォォォォォンッ!!」

 

「ギギャアアァァッ!?」

 

リオレウスのタイプを予測して、げきりんを繰り出したけど……この反応、かなりいい!四倍弱点を突いた時と、似たような反応だ!リオレウスは、ドラゴンタイプに極端に弱い!!

 

「ドラゴンクロー!」

 

「ウオオォン!!」

 

「グルッ……グオオォォ!!」

 

攻め手を緩めず果敢に攻撃を仕掛けるも、リオレウスの強烈な羽ばたきで、ジンオウガの足は止まってしまった。あれは……たつまきの技か!いけない、ジンオウガが怯んでしまった……!

 

「グオオオォォン!!」

 

一瞬の隙を突き、リオレウスは飛翔した。低空をホバリングするように飛んでいるけど、空に上がられるだけで厄介だ……!

 

「ジンオウガ!10まんボルト!!」

 

「ガウ!ウオォン!!」

 

「グオンッ!!」

 

ジンオウガの放った10まんボルトが、尽く躱されていく……!?なんて空中機動!あれだけの巨体なのに、あそこまで機敏に動けるなんて……!!

 

「グオオォ!グオオォ!!」

 

リオレウスの翼から、空気の刃が大量に放たれた。エアスラッシュ……!?数が多すぎる!ジンオウガは躱しきれずに受けてしまった!

 

「グルグル……ッ!」

 

「ギャオオオォン!!」

 

続いて、リオレウスは翼から黒い風を放ち始めた。あやしいかぜも使えるのか!

 

「グオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

リオレウスの声が、力強くカミナギ寺院跡に響く。この感じ……攻めと守り、二つの力が上昇しているかもしれない……!

リオレウスは二度の羽ばたきで大きく上昇すると、全身に炎を纏った。マズいっ……あれは、フレアドライブだ!!

 

「ジンオウガ!ワイルドボルト!!」

 

「ウオオオオオォォォォォォンッ!!」

 

リオレウスの飛行能力を考えれば、回避は難しい……ならば、正面から迎え撃つ!!炎を纏ったリオレウスと、電撃を纏ったジンオウガが激突し、大爆発を起こした。炎と雷が激しく飛び散り、爆煙の中からジンオウガとリオレウスが飛び出した。

……ジンオウガよりもリオレウスの方がダメージを多く受けているような気がする。ジンオウガにほのおタイプは効きにくいけど、リオレウスはドラゴンタイプでありながらでんきタイプが通じるようだ。それなら、ひこうタイプとの複合……?いや、判断するにはまだ早計だ。

 

「ジンオウガ!らいこうだん!!」

 

「……!グルウゥオォン!!」

 

ジンオウガは電気を集めるとそれを弾丸のように形成し、小さく飛び上がって着地と同時に前方へ放った。この技は雷光弾(らいこうだん)といって、ジンオウガのみが使える特別な技で疲れやすい代わりに威力はお墨付きの強力な技だ。

弧を描くように迫る複数の電撃の弾を、リオレウスは素早く火球を連射することで撃ち落とした。あの火球……ポケモンが使うひのこよりもずっと強力だ。リオレウスの専用技なのかもしれない。

 

「一気に行くよ!素早く、きりさく!」

 

「ウォン!!」

 

再び早業を指示して、次の行動を予測し選ぶ技を決めていく。彼らとのバトルは、思考にすら一瞬の隙を作ってはならない。わずかでも思考が逸れれば、その合間を縫うように攻撃が差し込まれてしまう。攻められるときに、一気に攻める!

ジンオウガの爪による攻撃は、リオレウスが空を飛ぶことで回避されてしまった。さらに、その隙を突くようにリオレウスの足に頭を掴まれた!

 

「ウオォンッ!?」

 

「ジンオウガ!!」

 

なんて力……!掴まれたジンオウガの体が持ち上がってる!ジンオウガも必死に抵抗するけれど、一番力が入る前脚が宙に浮いている時点でどうにもならない……!

 

「グオォォオッ!」

 

「ガアァァッ!!」

 

リオレウスはジンオウガの頭を掴んだままさらに上昇すると、そのまま勢いをつけてジンオウガの顔面を思いっきり地面に叩きつけた!あれはマズイ……ダメージが大きすぎる……!

 

「負けないでジンオウガ!振り切って!!」

 

「グウゥ……!」

 

頭を叩きつけられて動きが止まったジンオウガだけど、私の声はちゃんと届いた!ジンオウガは強引に頭を振ってリオレウスを地面へと引き剥がした……着地直後、隙あり!

 

「アイアンテールッ!!」

 

「ゥワォンッ!!」

 

隙を晒したリオレウスにアイアンテールが直撃して、なんとか吹っ飛ばすことに成功した。リオレウスはすぐさま態勢を立て直し、両者は睨み合いとなった……いや、待って。

 

「ジンオウガ……?」

 

「グゥ……」

 

ジンオウガの様子が変だ……。ダメージ以上に何か、手痛い一撃をもらったかのような……いや、ジンオウガの体が一瞬、紫に光った……って、まさか!?

 

「(まさか、毒!?一体どうして……っ!リオレウスの爪!!)」

 

冷静に考えれば、どこから毒をもらったのかは容易に想像がついた。ジンオウガとリオレウスが接触したのは、フレアドライブとワイルドボルトの衝突時と、ジンオウガがリオレウスの足に捕まった時の二回。

一回目の接触で毒を付与できるとは思えない……そうなると必然、二回目の接触時だ。ジンオウガに触れていたのはリオレウスの足……そして、爪だ。そうか、リオレウスは爪に毒を持っているのか……!

加えて、ジンオウガは迎月の戦場に来るまでにリオレウスの攻撃を回避していて体力を消耗している……。

 

「(ジンオウガはもう戦えない……これ以上戦えば瀕死になる……!)戻って、ジンオウガ!」

 

「グッ……!」

 

一瞬、何か言いたげに振り返ったジンオウガだけど、無理をさせたくないから無視をしてボールに戻す。……まずい、本格的にまずい。

リオレウスの制空能力……そして、空中機動能力はこれまで見てきた飛行能力を持つポケモンたちをはるかに凌駕している。これに対抗するには、同等以上の制空能力を持つポケモンか、機動能力を持ったポケモンを出すしかない。

けれど、普通のポケモンではまず勝ち目がない以上、同格のポケモンを出さざるを得ない……でも、私の手持ちでリオレウスと同格のポケモンはグラビモスとラギアクルスのみだ。ジンオウガは毒で弱ってしまっているため、しばらくボールから出すことはできない。

グラビモスはリオレウスの得意タイプであるほのおタイプに対して絶対優位に立てる……けれど、グラビモスは超重量級ポケモン。リオレウスの機動力には明らかについていけない。

ラギアクルスはリオレウスが苦手であろうでんきタイプもドラゴンタイプも両方使いこなせる。……だが、ラギアクルスの本領は水中戦において発揮される。宙を舞うリオレウスを相手に、対等に戦えるだろうか。

……いや、悩んでいる場合じゃあない。私自身、分かっていたはずだ。この状況で誰を選ぶのか、だなんて。迷いは一瞬、けれど、決断はもっと早く!

ボールを手に取り、力強く投げつける!!

 

「ラギアクルス!!」

 

「グルオオオオオォォォォォォォォォッ!!」

 

私の意思に答え、ラギアクルスがボールから飛び出した。たとえ戦場が地上で、敵が空中にいようとも、戦意が衰える様子はない。むしろ、群青の海岸でバトルをした時と同じか、それ以上に滾っている!

 

「やるよ、ラギアクルス!チャージビーム!!」

 

「グルラァ!!」

 

攻撃と強化を同時に行えるチャージビームを先手に放つ!攻撃自体はリオレウスに回避されてしまったが、チャージビームの本命は自己強化にある。逃げるというのなら、逃げられない技で!

 

「りゅうのはどう!」

 

「グラアァ!!」

 

「……ッ!グオオォン!!」

 

りゅうのはどうは必中技……決して避けることはできない。以前は、ギリギリまで引きつけて高速で移動することで強引に回避したけど、リオレウスはそこまで器用にできないはず!

案の定だ、リオレウスは回避ではなく迎撃に出た。使った技はりゅうのはどう。おなじ技同士がぶつかるけれど……今、ラギアクルスの攻めの力は増している!押しきれ!!

ラギアクルスのりゅうのはどうが……リオレウスのりゅうのはどうを打ち破った!

 

「ギャアオオォン!?」

 

「素早く!10まんボルト!!」

 

「グラララララ!!」

 

「グオオォォンッ!!」

 

りゅうのはどうのダメージで怯んだ隙を逃さない!早業で繰り出した10まんボルトも命中して、リオレウスに連続でダメージを与えられた!

たまらずリオレウスは地上へと降り立った。攻め手を緩めちゃダメだ!!

 

「アクアブレイク!!」

 

「グルオオォォ!」

 

水の力で相手にぶつかるアクアブレイクで、リオレウスの守りを崩す!ラギアクルスが一気にリオレウスへ突っ込んでいく……いや、リオレウスが足を半歩引いて……しまった!!

 

「マズっ……止まって!ラギアクルス!!」

 

「グオオオオオオオ!!」

 

「グラッ!?」

 

リオレウスが、オマツのゲンガーを叩き落とした宙返り……サマーソルトを放ってきた!リオレウスの尻尾は的確にラギアクルスの顎をかち上げ、ラギアクルスの動きを完全に止めてしまった。

 

「グオオオンッ!グオオオンッ!グオオオンッ!」

 

「グラアアアアッ!?」

 

「ラギアクルスッ!!」

 

サマーソルトから体勢を整えてホバリングをすると、リオレウスはそのまま火球を三連発で放ってきた。すべてがラギアクルスに直撃し、彼が悲鳴を上げる。ここで動きを止められたら……!!

 

「グオオオッ!」

 

リオレウスが、足の爪を構えている。まずい、あの毒の爪だ!躱せない……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライチュウ!力強く、かみなりだ!!」

 

「ラーイ……チュウゥーーーー!!」

 

「グオッ!?」

 

と、ここで突然横合いから電撃が差し込まれてリオレウスは動きを止めた。まさか……。

 

「先輩、どうして!?」

 

「どうして?……言っただろ、ショウ。これ以上、ショウばっかりに背負わせたくない、って。

おれも、力になる。ショウ、お前はひとりじゃないんだぞ!」

 

「……!!」

 

そうだ……私には、頼れる先輩がいるんだった。どうして忘れていたんだろう。

今まで、ずっと一人で彼らと相対してきた。ジンオウガと出会った時も、グラビモスと出会った時も、ラギアクルスとバトルした時も……私は、自分と自分のポケモンたちだけで、ここまでやってきたんだと思っていた。

でも、今回は違う。私の後ろには、ずっと先輩がいてくれた。先輩が、私のことを見守っててくれた。彼らとまともに戦えるのは自分だけなんだと、いつの間にか独りよがりになってたみたい……あーあ、カッコ悪いなぁ、私……。

 

「……先輩、お願いします。力を貸してください」

 

「……任せろ!ライチュウ!」

 

「ライラーイ!!」

 

ライチュウは勢いよく走りだすと、そのままジャンプしてラギアクルスの背中に乗り込んだ。ラギアクルスはわずかに背中を気にしたように振り返ったが、すぐにリオレウスの方へと向き直った。

対して、リオレウスは……意外、と言うべきか、先輩の参戦に関して何も言ってこなかった。むしろ、「かかってこい」とばかりに首をクイッ、クイッ、と動かしている。

 

「先輩!ラギアクルスの背電殻に電撃をお願いします!!」

 

「わかった!……ライチュウ!ラギアクルスの背中の突起に10まんボルト!!」

 

「ライ、チュウ!!」

 

ライチュウが放った電撃が、四本の背電殻へと直撃した。みるみるうちに電撃が溜まり、背電殻は青く輝き始めた。これなら……!

 

「ラギアクルス、10まんボルト!!」

 

「グルルルル……グルアアアアアァァ!!」

 

ラギアクルスから放たれた10まんボルトは、先程よりも明らかに威力が増していた。電撃の一つ一つが太く力強くなっていて、攻撃の威力だけでなく範囲も広がっているようだ。現に、リオレウスは先程よりも回避しづらそうに旋回している。

 

「ライチュウ!お前からも10まんボルトを喰らわせてやれ!!」

 

「チュウーーーー!!」

 

先輩のライチュウもまた、10まんボルトで支援してくれる。ライチュウの10まんボルトが羽先を掠め、リオレウスが僅かに体勢を崩した!その直後、ラギアクルスの電撃が一斉に襲い掛かり、リオレウスに多大なダメージを与えていく!!

 

「先輩!!」

 

「わかった!ライチュウ!もう一度、力強く!かみなりだ!!」

 

「ラーイライライ!チュウーーーー!!」

 

ライチュウの力業で放たれたかみなりが、ラギアクルスの背電殻へと伝わっていく。背電殻の輝きが、ついに限界まで達した!!

 

「行って、ラギアクルス!!」

 

「グルオオ!!」

 

ライチュウが飛び降りると同時にラギアクルスが腹這いで素早く移動し、未だに空中で停滞するリオレウスの真下へと滑り込んだ。……今だ!!

 

「ラギアクルス!せんらんばんらい!!」

 

「グルオオオオオォォォォォォォォォッ!!」

 

ラギアクルスが使える最強の技……それが、旋嵐万雷(せんらんばんらい)だ。

体を丸めたラギアクルスが、自信を中心に広範囲に雷を一気に放出する大技で、懐近くで放てばおいそれと回避できない強力な技!

ラギアクルスが解放した電撃は力強い旋風となって渦を巻き、真上にいるリオレウスに直撃した!!

 

「ギャアオオオオオオオオオォォォッ!?」

 

強力な電撃を浴びせられたリオレウスが、力なく墜落していく……ここだ!!

 

「行け!モンスターボール!!」

 

私が投げたモンスターボールが、リオレウスを格納した!ラギアクルスの背中の上で、激しく揺れるボール……。

 

「お願い……!」

 

「頼む!頼む!頼む!!」

 

私も先輩も、祈るようにボールを見つめる。やがて、ボールがぴくりとも動かなくなると……捕獲を示す花火が打ち上がった。

 

「あ……」

 

「……や、った……?」

 

「……や、やった……。やった……!やりました!先輩!!」

 

「あぁ!やったんだな、おれたち!!」

 

「「リオレウス、ゲットだぜ!!」」

 

思わず声が揃ってしまったけど……けど、ここまで本当に緊張しっぱなしの苦労の連続だった。

 

「「……あ」」

 

と、ここで。私と先輩がお互いに抱き合った状態になっていたことに気がつき、慌てて離れた。……なんか、すごく顔が熱いんだけど……。

 

「……行こう、ショウ」

 

「あ、はい」

 

一先ず気まずさはさておいて、背中からボールを落とさないようにゆっくりと戻ってくるラギアクルスのもとへと駆け寄った。

 

「お疲れ様、ラギアクルス。ライチュウもありがとう」

 

「お手柄だったぞ、ライチュウ」

 

「ライラーイ♪」

 

……って、あれ!?そういえば!

 

「先輩!ピカチュウが……」

 

「えっ、進化させたんだけど……って、今更!?」

 

「えぇっと……なんか、色々ありすぎて完全にスルーしてました……」

 

そうだ!先輩のピカチュウ、なんか進化してるんだけど!?そういえば、カミナギ山道で先輩、『バトルの腕をめちゃくちゃ鍛えた』って言ってたけど……ピカチュウの進化も、その一環ってコトォ!?

 

「言っただろ、ショウ。おれ、強くなったんだって」

 

そう言って、先輩がボールを五つ放り投げた。……え、五つ?出てきたのは……。

 

「ヌメルゴン、トゲキッス、ガチグマ、ゴウカザル、ジュナイパー……」

 

「そして、おれの相棒のライチュウ。……今は、この六匹でパーティを組んでるんだ」

 

「へ、へぇ……」

 

やばい、ちょっとバトルするのが楽しみになってきた。しかもヌメルゴンとガチグマはオヤブン個体だ……先輩、相当血の滲むような努力をしたんだろうなぁ……。

 

「ショウくん!」

 

「あ……」

 

声がして振り向いたら、ラベン博士が走ってきていた。その後ろをキャプテンの二人とセキさんが歩いていた。全員が合流してから、話し合いとなった。

 

「まさか……まさか、まさか!捕らえたのか!?あのバケモノを!?」

 

「ツバキさん」

 

「えっ?……ヒェッ」

 

「次はないです」

 

私、相当怖い顔になっていたのかツバキさんが怯えた表情になっていた。ちょっとセキさん、なんでそんな引いたような顔をしてるんですか。

 

「ショウ、あんたのバトル見ていたぜ。……凄まじいな、ジンオウガにラギアクルスにリオレウス……本当に同じポケモンなのか、ちょっとばかし疑わしいくらいだぜ」

 

「はい。三匹が繰り出す技は、通常放たれるポケモンの技の威力を凌駕しています。少なくとも、わたくしの記憶には一切ございませんね。思い出すこともなにもありませんでした」

 

「ボクもポケモン博士としていろんな地方に出向いてきましたが……先ほどの三匹のような強力かつ巨大なポケモンは見たことも聞いたこともないのです。もしや、古くからヒスイ地方に根付く特殊な個体なのでしょうか……?」

 

みんな、どうやら背後にある崖の上からバトルを見ていたみたい。……別に、見られたところで減るようなものは……あー、あるかもしれない。

 

「しっかし、ショウは本当にスゲェな!あのリオレウスに勝っちまうんだからな!」

 

「加えて捕獲まで……やっぱり、ポケモン図鑑の完成にはショウくんの存在が欠かせないのです!あと、できれば先ほどのジンオウガ達のことももっとよく観察させてもらえると……」

 

「ダメです」

 

「即答ですか!?」

 

ラベン博士、ごめんなさい。反射的にNOと答えてしまうくらいには、ジンオウガたちのことをあまり多くの人に知られたくはないんです。……少なくとも、今は。

 

「……ふむ。ショウよ、次に向かうのは純白の凍土だな?」

 

「え……いえ、それは……。いつも向かう先はジンオウガに任せていたので……」

 

「そうか……それなら、ちょうどいいかもな」

 

セキさん……?なにがちょうどいいんだろうか……。

 

「離れ湧水では黙っていたんだが……実は、ジンオウガやリオレウスに似たポケモンが、純白の凍土にも一匹存在する」

 

「えっ!?」

 

いや、仮にそれが本当だとして……どうしてセキさんがそのことを?

 

「どうして知ってるのか、って顔をしてるな?……いや、実はそのポケモンとだな……ウチのワサビがべらぼうに仲良くなっちまってな……最近では日がな一日、一緒に行動をするようになっちまったんだ」

 

「ワサビちゃんが!?」

 

「危なくねぇか、何度か様子見には行ってるんだが……ハマレンゲさんはともかく、あのカイまでそのポケモンと打ち解けちまってるんだよ……はぁ……」

 

「えぇ!?」

 

なんか疲れきったようにため息をつくセキさんだけど……いや、こっちはそれどころじゃない情報を聞いちゃったんだけど!?

次の目的のポケモンは純白の凍土にいて(暫定)、しかもそのポケモンはジンオウガたちと違って人間に対してすごいフレンドリーなの!?

人目を避けて過ごしてきたであろうジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス……そして、人を積極的に襲ってきたリオレウス……次のポケモンは、この四匹とは気色が明らかに異なるようだ……。

 

「……わかりました。とりあえず、私は純白の凍土に向かいます」

 

「頼む。……そいつは琥珀色の牙を持ったポケモンで、体長はグラビモスとそう変わらん。あんたならすぐにわかるだろうよ」

 

「はい」

 

「ボクとテルくんは、報告のためにムラに戻るのです」

 

「ショウ……次の場所でも、気をつけてな」

 

「わかってます。……先輩、いつか、バトルしましょうね」

 

「……!あ、あぁ!!」

 

「ブラボー!!スーパーブラボー!!未知のポケモンとのバトル、しかし臆することなく捕獲する勇気……リオレウスが求めた勇気を、あなたさまは見事に示したということですね!」

 

「ありがとうございます、ノボリさん」

 

「ショウ、次に会うまでにリオレウスのことをもっと調べておいてくれよ。そのときは、このツバキとスカタンクで、必ずやリオレウスにリベンジをしてみせる!」

 

「……頑張ってください」

 

ノボリさんは素直に賞賛してくれて、ツバキさんはなにやらリオレウスに再戦をしたいと意気軒昂だ。……まぁ、頑張ってください。

博士とテル先輩は報告のためにムラに戻る、と……。どうしよう、くちふ――じゃない、口止めをしておくべきだろうか。

 

「先輩、あの……」

 

「ショウくん……白状すると、ボクたちだけではジンオウガたちのことを隠しきれる保証はないのです。ギンガ団の団員は、各地に散らばって点在しています。どこの団員が見ているのかは、流石にボクらでもわからないのです」

 

「あ……」

 

そうだった……失念していた!私も調査の途中でほかのギンガ団員と会うことがたまにあったりするけれど……ひょっとしたら、この二人以外のギンガ団員がジンオウガたちを見ていて、それを団長に報告しないとも限らない……!

 

「だからこそ、ボクたちが先んじて団長に報告するのです!」

 

「ジンオウガたちに悪い印象が植え付けられないように、おれたちも頑張るから……ショウも、頑張ってくれ」

 

「……はい。お二人共、ありがとうございます」

 

「困った時はお互い様なのです!」

 

ラベン博士の笑顔に、思わず釣られて笑みがこぼれる。よかった、私はまだ人を信じられる……まだ、誰かの為に頑張れるんだ。

ジンオウガをボールから出して、かいふくのくすりでラギアクルス共々回復させる。その後、ラギアクルスをボールに戻して……あ。

 

「そうだ。ジンオウガも戻っていいよ」

 

「ウォン!?」

 

「なんで!?」と言いたげに声を上げたジンオウガをボールに戻し、代わりに出したのは……。

 

「リオレウス!」

 

リオレウスをボールから出して、すぐに回復をさせてあげる。そして……。

 

「それじゃあ、お約束のお説教ね」

 

「グオン!?」

 

「お黙り!そこにお座り!!」

 

リオレウスを無理やり座らせて、懇懇とお説教をする。時間にして三十分くらいかな……途中からセキさんとノボリさんも加わってお説教をしたあと、十分に反省したようなので許してあげた。ツバキさん?煽りそうだったからテル先輩に止めてもらってた。

 

「リオレウス。次は純白の凍土に行きたいの。あなたの背中に乗せてもらえる?」

 

「グオオオオオォォォォォッ!!」

 

そうお願いすれば、まるでテンションが上がったように声を上げたリオレウス。……意外と、人を乗せて飛ぶことが好きなのかもしれない。姿勢を低くしたリオレウスの背中に乗ってから、私はみんなの方へと振り返った。

 

「それでは、私は行きますね」

 

「あぁ、オレも後でそっちに行く。終わる前には合流する……つもりだ」

 

「待ってますね、セキさん」

 

リオレウスが飛び上がり、一気に空へと飛翔した。

 

「気をつけてなー!」

 

「先輩こそー!」

 

先輩の言葉を最後に見送られながら、私を乗せたリオレウスは一路、純白の凍土へ向けて翼をはためかせた。

 

 

 

 




そういえば、レジェンズの主人公の身長っておよそ1.5m半って感じですよね。
オヤブンワンリキー(1.6m)と並べたら、そこそこ身長が近かったので……。
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