ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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そろそろこっち側にも焦点を当てるべきかと思いまして。



狩人たちのその後の話 ~現大陸~

「ヘェーーーイwwwwwwwww」

 

「ヘェーーーイwwwwwwwww」

 

「アッアッオーーーウwwwwwwwwwwwwwww」

 

「ヒィーーーーフフンwwwwwwww」

 

「ヘェーー「うるさい」ギャヒィン!?」

 

『遺跡平原で数頭のドスジャギィの鳴き声が聞こえてくるので何とかして欲しい』という依頼を受けてきてみれば、そこにいたのはジャギィフェイクを被って無駄にクオリティの高い声真似をしている一般ハンターの集団だったというオチ。少し離れた場所ではジャギィがひどく困惑した様子でその集団を眺めているのが見えた。とりあえずシズカは集団の一人を側頭部への回し蹴りで一撃KOした後、残りのメンバーも徒手空拳で黙らせて縛り上げた。

 

「……くっだらね」

 

「姉様ー!」

 

シズカが現場を制圧したタイミングで、周囲への哨戒に出ていたネネが戻ってきた。ネネのすぐ足元にはシズカのオトモであるリュウセイとネネのオトモアイルー(名前はクワイエット)がいる。

 

「姉様?……あら、この方たちは?ドスジャギィは?」

 

「犯人はこいつら」

 

「……え?」

 

「なりきるのは構わないんだけど、本物のジャギィすら迷うようなクオリティはやめてほしい……」

 

「えぇ……」

 

モンスターの仕業ではなくモンスターの真似をしていただけの人間の仕業と知って、ネネも呆れたように下手人たちを見下ろした。

 

「なんにせよクエスト完了だよ。さっさとこいつらをギルドに引き渡して――伏せてっ!」

 

咄嗟の指示にもかかわらずネネもオトモ達も素早く反応してその場に伏せた。その直後、彼女たちの頭上を素早く何かが通り過ぎていった。伏せていた顔を上げてその正体を見やり、思わず舌打ちが出る。

 

「ちっ、アルセルタスか」

 

「どうします、姉様?流石にアタシたち二人だけで拘束者四人を庇いながらの戦闘は苦しいですわよ」

 

「……面倒だけど、力を借りるしかないね。中型モンスターなら、まだ彼らでも対抗できる」

 

「ですわね」

 

二人はそうして頷き合うと、アイテムポーチから道具を取り出す。上半分が赤色に塗装された、中央にスイッチ機能が付いたボール……そう、モンスターボールである。

 

「イーブイ!」

 

「ギャラドス!」

 

「ブイッ!」

 

「ギャラアァ!」

 

ボールから飛び出したのは、しんかポケモンのイーブイときょうあくポケモンのギャラドスだ。ヒスイ地方から帰還する際に、別れを惜しんだポケモン達の要望に応える形でこの世界へ連れてきたが、ポケモン達の存在は以外にも馴染むのが早かった。

というのも、ポケットモンスターという存在自体が技巧種の起源とも言うべき存在であるだけに、龍歴院をはじめとする研究者たちはむしろ大歓迎であった。加えて、ショウ達をはじめとするポケモントレーナーという存在に触れていたのも、歓迎が容易であった一因であった。

余談だが、ネネのコイキングは案の定というかかわらずのいしを飲み込んでいたようで、バトルの衝撃でそれを吐き出してからすぐにギャラドスへと進化したことをここに記す。

 

二匹は空を舞うアルセルタスに睨みを効かせると主人からの指示を待つ。ギャラドスの特性いかくが発動し、アルセルタスがわずかに怯むも果敢に咆哮を上げて対抗心を見せてくる。

 

「ネネ」

 

「様子見、ですわね」

 

「そう。あいつが技巧種かどうか、見極めるよ」

 

「技巧種であればむし・ひこうタイプといったところかしら……通常種であれば氷属性に耐性があるでしょうから、こおり技でもぶつけてみましょうか」

 

「お願い。……時間をかけたくない、サクッとボコって捕獲するよ。戦闘はイーブイ達に任せて、私達は撤退の準備を」

 

「了解ですわ!ギャラドス、れいとうビーム!」

 

「ギャラ!」

 

ギャラドスのれいとうビームがまっすぐ放たれ、予期せぬ遠距離攻撃に動揺しながらもアルセルタスはかろうじて身を捩り回避する。しかし、戦う相手は決して一人ではないのだ。

 

「イーブイ、こちこちフロスト!」

 

「イブァ!」

 

瞬間的に冷気が高まり収束し、アルセルタスの直下から氷の柱が突き出された。それに直撃したアルセルタスだが、あまり動じた様子はない。その様子を見て、シズカとネネはわずかに肩の力を抜いた。

 

「通常種……よかった、これで技巧種だったら本当に面倒くさいことになってた」

 

「あぁ……報告書にありましたわね。『急にまとわりついてきた』だの、『体力を奪われた挙句向こうに回復された』とか、『技巧種の突進半端ないって!』とか……」

 

アルセルタス技巧種。その最大の脅威は巨大な角から繰り出されるむしタイプ最大最強の大技『メガホーン』。所詮はアルセルタスと舐めてかかった多くのハンターが、このメガホーンの一撃で尽くキャンプ送りにされた話はかなり有名だ。さらに前述した『まとわりつく』や『ギガドレイン』など、厄介な技をかなり豊富に持っているのだ。

だが、今回のアルセルタスは通常種。そうとわかれば恐るるに足らずだ。

 

「動きを封じて!」

 

「了解ですわ!ギャラドス、ぼうふう!」

 

「イーブイ、めらめらバーン!」

 

ギャラドスがぼうふうを起こし、空を飛ぶアルセルタスを翻弄すると、その隙を突いてイーブイが炎を纏った体当たりを仕掛ける。弱点属性というだけあって、ほのお技はかなりの大ダメージだ。自由落下するイーブイに突進を仕掛けるアルセルタスだが、ギャラドスが口内にイーブイを含みつつ回避したため、攻撃は空振りに終わった。

めらめらバーンによってやけど状態……火属性やられになったアルセルタスは徐々に体力を削られていく。

 

「これも食らって……イーブイ、すくすくボンバー!」

 

「イブイ!」

 

ギャラドスの口から飛び出したイーブイが一声鳴くと、なんの前触れもなく地面から植物が螺旋にねじれながら生えてきて、そのまま多量の種を振り落とす。アルセルタスは回避を試みるも、いくつかは命中している。アルセルタスに触れた種は急速に成長すると根を伸ばし始め、アルセルタスの体を拘束するとさらに体力を奪い始めた。俗に言う、やどりぎ状態である。

 

「……これで、あとは力尽きるのを待つだけ」

 

「いや、本当に便利ですわねすくすくボンバー。やどりぎ状態……でしたっけ?属性やられとは定義が異なる特殊な状態変化……特に根っこで拘束しつつ体力を奪い、その分だけ自身の体力を回復する……とんだインチキ技ですわ」

 

「でも、万能じゃないよ。根っこは火属性で普通に焼かれるし、体が大きいと根っこが育ちきる前に振り切られる可能性もある。だから、確実に動きを止める必要がある」

 

「あぁ、そのための確定で麻痺属性やられにできるびりびりエレキなんですわね」

 

「今回は必要なかったけどね」

 

しばらくもがいていたアルセルタスの動きが緩慢になると、シズカはシビレ罠を仕掛けて確実に動きを封じ、その後でネネが捕獲用麻酔弾を打ち込み捕獲を完了させる。アルセルタスが戦闘不能になったと判断されたからか、やどりぎ状態は自然に解除されていた。

 

「さぁ、あとは彼らを連れて帰るだけ」

 

「すっかり慣れましたわねぇ、ポケモンとの狩猟も」

 

「戦う相手は選ばないとだけどね」

 

シズカとネネはジャギィフェイク集団をオトモ達が運んでくれた荷車に載せるとそのまま帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狩猟を終えて集会所まで帰ってきた二人はジャギィフェイク集団を引き渡すと、集会所を後にする。二人が現在いる場所はベルナ村であり、集会所エリアを離れて今は村エリアまで移動してきたところである。そこで茶をしばきつつ、今回のアルセルタスについて振り返る。

 

「最近、モンスターの通常種が増えてきた……言い換えれば、技巧種が減ったことにほかならない」

 

「技巧種化した古龍種の討伐も、ヒスイ地方から連れ帰ったモンスター達の支援でどうにか可能な範囲に落ち着きましたわね」

 

「ん、モンスターに頼るのはハンターとして情けない限りだけど、既存の生態系を守るためだし……みんな、納得してくれてよかった」

 

「ですわねぇ。それにしても、今回のアルセルタスが通常種で良かったですわ。前に狩猟依頼が来ていたゲネル・セルタスとの技巧種コンビの際は……」

 

「やめて、ネネ。その記憶は私に効く。やめて」

 

「あぁ、はい。そうですね、やめておきましょうか……」

 

技巧種モンスターに苦戦を強いられてもなんとか狩猟してこれたのは相手側が一頭のみで、こちらが複数のハンターチームだったからの話だ。テスカ夫妻やセルタス夫妻、リオ夫妻のような二頭一組で真価を発揮するモンスターや、そもそも群れる習性のある中型モンスターが相手の場合は本当に地獄絵図である。

なんせ、相対するモンスターすべてが技巧種なのだ。技巧種モンスターを複数同時に相手するには、人類はまだまだ未熟だった。だからこそ、ヒスイ地方から連れ帰った人慣れした技巧種モンスターは天の助けであった。

ポケモンバトルを通してモンスターへの指示出しに経験のあるシズカやネネ、シュラークが積極的に駆り出され、これら集団技巧種モンスターの討伐・捕獲に奔走する羽目になったのは完全に余談だろう。

ニールはヒスイゾロアークとともに新大陸へすぐさまとんぼ返りし、今頃はあちらで発生した技巧種モンスターの対応に追われているに違いない。

ヒューイは気づかないうちにどこかへ消えていた。どうせ祖龍とハネムーンにでも行ったんだろ、あの色男。

 

「さて、私はそろそろ『我らの団』の方に戻るよ。明後日にはメタモンを連れて龍歴院に行かなきゃだし。……ネネは?」

 

「アタシも龍歴院に……と、言いたいところですけど」

 

「ん?なんか、予定アリ?」

 

「えぇ。ですので、しばらくは龍識船に詰めることになりますわ」

 

「……まさか」

 

龍識船と聞いて、なんとなく嫌な予感がしたシズカ。その予感を肯定するように、ネネも頷いた。

 

「はい、そのまさか……天彗龍バルファルク。その技巧種と思しき個体が確認されたとのことですわ」

 

シズカはたまらず天を仰ぐ。シズカが個人的に来て欲しくない技巧古龍種のなかでもトップ5に入るモンスターだ。ちなみに全人類が決めた技巧種化して欲しくない古龍種のぶっちぎりの第一位がオストガロアである。

 

「カムラが発見した特殊個体でもなく……か」

 

「はい。技巧種化に伴い、生態が変化した可能性があるとのこと……それ故に本来の周期よりも早くに出現したものかと。確認された様子から龍気エネルギーの暴走の予兆は見られなかったそうですわ」

 

【天彗龍】バルファルク。ネネが所属している龍歴院が龍識船を造船して追い続けていた百年に一度の周期で出現する古龍である。カムラの里では本来の生態から外れるほど常識を逸した特殊個体が出現したのだが、技巧種化したのはそちらではなく本来の生態を生きる個体の方である。

 

「バルファルクの通常種の技巧種化……いや、カムラが相手をしている特殊個体もどっこいか」

 

「そんなわけで、またバルファルクと鬼ごっこですわ……。あぁ!なんと世知辛い世の中かしら!!世界はそんなにもアタシと姉様の間を引き裂きたいというの!?」

 

「これが世界の意思だって言うなら、とんだノマカプ厨な世界だね」

 

「うっ、うぅ……この上、来年から姉様は新大陸古龍調査団の六期団として新大陸へ行ってしまわれるなんて……」

 

「あはは……けど、六期団なんて大げさなもんじゃないよ。名分上はそうだけど、実際は対技巧種モンスター戦での援軍ってだけだし」

 

ネネの言うとおり、シズカは新大陸に出現した技巧種モンスターに対応するための援軍部隊として新大陸へ渡ることが決まったのだ。フローラやチルカ等からは最後までレジェンドラスタへ勧誘され続けていたが、シズカもまた最後まで首を縦に振らなかった。

 

「くっそぅ、くそぅ……確かに姉様は優秀なハンターです!十人中十人、百人中百人、いっそ全人類が認める超天才健気系最強美少女ハンターですが、新大陸にいるハンターだって選りすぐりの精鋭たちばかりなんでしょう!?わざわざ姉様に名指しで要請することはないじゃあありませんの!現大陸にいる一部のハンター(姉様のファン達)は『引き抜きだー』だの『横暴だー』だの不満を爆発させますし!かくいうアタシもその一人ですが!

姉様は我々の大事な財産であり希望なんです!おいそれと他所へ渡せますか!?そりゃあ調査団の全期団長及び【青い星】の満場一致による直接指名とあらばこれをNOと断る勇気は黒龍とにらめっこするのと同じくらい必要かもしれませんけど!!姉様も安請け合いするもんじゃありませんわよ!?あれ絶対に囲い込みに来てますから!隙あらば外堀埋められて二度と現大陸の地を踏めなくなってしまいますわ!!」

 

「いや、そんなバカな……」

 

「というか、【青い星】!【青い星】って、あの男ぉー!なんであの男まで署名してるのよーっ!!私情入ってる!ずぇーったいに私情が入ってるに決まってますわー!アタシに姉様を取られて自分がイチャコラできないからって、絶対に逆らえない方法を使ったに決まってますわ!卑怯者!卑劣漢!大の男が大人げない!アタシから姉様を奪いたきゃ、正正堂堂と正面からかっさらっていきやがれぇー!!」

 

「うるさい」

 

「あひん!?」

 

今すぐに止めないと暴走が止まらない気がしたシズカは、ネネの脳天にすかさずチョップを叩き込む。テーブルに突っ伏したところで、ようやくネネは静かになった。

 

「はぁ……あのね、ネネ。【技巧種事件】はまだ終息していないの。現大陸もだいぶ数を減らしてはいるけれど、完全にいなくなったわけじゃない。技巧種と通常種を見極める方法は攻撃手段と属性耐性で判断するしかなくて、肉眼での目視なんて論外なんだから。

なにより、新大陸で技巧種に関するノウハウがあるのはニールさんと少しかじっただけのエイデンさんだけ……ようするに、圧倒的人手不足ってわけ。そこで技巧種関係で最も造詣の深い私が選ばれるのは言い逃れのしようもない事実なの。一言で言うと、"しょうがないこと"」

 

「うぅ~……そ、それなら姉様のお師匠様だって……」

 

「師匠は現在進行形で各地を飛び回ってるよ。わざわざ一度離れた『我らの団』に戻ってきたのだって、安定した拠点と移動手段を確保するためなんだし」

 

「いやだぁ~……姉様ぁ、ネネを一人にしないでくださいましぃ~……」

 

「はいはい、よしよし」

 

抱きついてくるネネをあやしながらも歩みは止めず、船着き場へと到着した。よく見ると龍識船とイサナ船が同じ船着き場の対角上に船を停めており、もはや因果すら感じられる。

 

「それじゃあ、ネネ。次に会えるのは……何年後かな」

 

「うぅ~……姉様、姉様っ!ネネは姉様のこと、心からお慕い申し上げております!!」

 

「……ふふっ、うん。私もネネのことは大好きだよ」

 

「……!そ、それでしたら、次にお会いするまでに必ず女を磨き上げますわ!!姉さまに相応しい伴侶となるために!!」

 

「伴侶ってそんな……」

 

「それまでに!絶対にあの優男なんかに引っかからないでくださいね!!」

 

互いに船に乗り込みながらも、最後まで会話を続ける。ネネの最後の言葉を受けたシズカは、ほんの一瞬だけ思考に隙が生じる。

 

「(優男……)ニールさんと、か……」

 

この時、ネネの「伴侶」発言と「優男」発言から自身とニールがひとつ屋根の下で暮らす様子を想像してしまい……無意識に顔が赤らみ、それでいて少しだけ嬉しそうな笑みが浮かんだ。

 

浮かんでしまった。

 

「え……姉様……?」

 

ネネが狩猟で培ったガンナーとしての優れた視力が、見えなくなるまで親愛なる姉の姿を見納めようと取り出した双眼鏡を介して、その表情と唇の動きを読み取ってしまった。

 

ネネは真っ白に燃え尽き、その場にぶっ倒れた。

 

 

 

 




・シズカのイーブイ、まさかの相棒イーブイ
・技巧種対策、順調に進む
・ネネ、(勝手に)フラれる

の三本です!

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