ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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幕間です。そして連投です。
いや、幕間なんであんまり間を空けなくてもいいかなって思って。文字数だって少ないし←オイ


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幕間 少女ワサビと氷牙竜、時々千里眼

コンゴウ団のキャプテンに、ワサビという少女がいる。最年少でキャプテンを任せられた少女であり、嘘か真かは不明ながら本人曰く「千里眼」を持っているという、少々変わった人物である。そんな彼女がお世話を任せられているポケモンが、ウォーグルである。

ヒスイの地に生まれたヒスイウォーグルと共に空を駆けたり、時折集落に帰省したり、相棒のポケモンたちと戯れたり……そんな日々を過ごす中、キッサキ神殿を訪れた彼女は、普段から目にしている景色の中に異物が混じっていることに気がついた。

 

「なにあれ」

 

クレベース氷塊に林立する氷塊の中でも一際巨大な氷塊……その氷塊の上に、何かがいる。遠目でもはっきりとわかるほどの存在感から、かなりの巨体であることが分かる。

 

「行こっ!ウォーグル」

 

ウォーグルにライドし、早速巨大生物の元へ向かうワサビ。着いてみれば、その大きさはより顕著であった。眠っているらしいその生物は、猫のように体を丸めていた。それでも口元から覗く巨大な一対の琥珀色の牙は、触れるだけでなんでも切り裂いてしまいそうな雰囲気さえある。

 

「なんだろう、このポケモン……?」

 

ワサビでさえ見たことのないポケモン。千里眼で何度か視た未来に、このポケモンの姿はなかった。隠れていた?最近になって現れた?疑問とともに好奇心が溢れてきて、気が付いたらワサビは巨大ポケモンに手を伸ばしていた。そこへ――

 

パチッ。

 

「……ガウ?」

 

「あ」

 

巨大ポケモンが目を覚まし、ゆっくりと体を起こした。ワサビとウォーグルを交互に見やるも、興味なさげに大あくびをしてから氷塊から飛び降りてしまった。

 

「あ……ウォ、ウォーグル!」

 

慌ててウォーグルに乗って後を追うワサビ。巨大ポケモンは極寒の荒地へとゆったりとした足取りで向かう……かと思えば、突然走り出して眼前にいたイノムーに飛びかかった。

鋭い牙を用いて噛み付き、毛深いイノムーの体をあっさりと引き裂いた。周りのウリムーたちが逃げ惑うのも無視して、一心不乱にイノムーを喰らう。

……と、その背後からオヤブンオニゴーリが接近していた。縄張りに侵入した外敵に威嚇するオニゴーリだが、全く意に介されていない。怒ったオニゴーリが飛びかかるも、巨大ポケモンは見向きもしないままアイアンテールでオニゴーリを軽く叩き潰した。

 

「すっごい……」

 

ワサビは上空から、その一部始終を見ていた。イノムーを喰らいながらも、背後のオニゴーリへ絶えずアイアンテールをビッタンビッタンと振り下ろし続ける。この世に己の敵はいないと、そう知らしめるかのように力を振う様は、まるで生態系の頂点に君臨する王者の如く。

食事を終えると同時に、アイアンテールによる攻撃も止んだ。すっかり骨だけになったイノムーと、地面にめり込んで動かなくなったオニゴーリだが、そのどちらにも目を向けることなく巨大ポケモンは極寒の荒地を練り歩く。巨大ポケモンが近づくと、大半のポケモンが怯えたように逃げ出し、次々と離れては遠巻きに動向を見守っている。

 

「(なんだろう、アレ。ポケモン?でも、あんなポケモン見たことも聞いたこともない)」

 

寝転がり、のんべんだらりと爪研ぎを始めるポケモンを見つめながら、ワサビは決心した。

 

「(もっと近づいてみよう!)」

 

普通、あんな光景を見てからこんな事を考える者はそういないだろう。だが、そこは千里眼を持つ少女、ワサビ。既に先の出来事を、予知を通して知っていた。

巨大ポケモンの目の前に降り立ったワサビ。巨大ポケモンはチラリ、とワサビを見やるがすぐに爪研ぎに集中し始める。

 

「初めまして!あたし、ワサビ!」

 

「……ガウ」

 

声をかければ、普通に反応が返ってきた。千里眼で見た通りの展開に笑みを浮かべながら、ワサビは話を続けた。

 

「あなた、すっごく強いのね。どこから来たの?」

 

「ガ」

 

「空?時空の裂け目?あそこから来たの?」

 

「……ガゥ?」

 

「あ、そこは自分でもわかんないんだ……。ねえねえ、いつからここにいたの?あたしが生まれる前から?」

 

「ガウガウ」

 

「へぇ~、違うんだ。それじゃあ結構最近?」

 

「ガウ」

 

「そうなんだ!」

 

爪研ぎをしながらも、ワサビの一言一言に丁寧に反応を返してくれる巨大ポケモン。恐ろしい形相の割に愛嬌のあるその仕草に、ワサビ自身も会話が楽しくなってきていた。

……と、その時だった。ワサビの視界に、別の景色が写りこんだ。ワサビ自身が持つ異能、千里眼による未来予知。その未来の中には目の前の巨大ポケモンの他にも、大きなポケモンたちが写りこんでいた。

 

電撃を操り、大地を駆ける狼のポケモン。

全身に鎧のように岩をまとった竜のポケモン。

広大な海を泳ぎ、電撃を纏う首長のポケモン。

雄大な翼で天を舞い、炎を吐く赤い竜のポケモン。

そして、目の前の巨大ポケモン。これら五匹のポケモンたちが一堂に会している場面だった。そして、その中央には、一人の人間の姿……。

 

と、そこで映像は終わってしまった。最後に出てきた人間の正体などはわからなかったが、それでもわかったことがひとつある。

 

「あなた、お友達がいるのね」

 

「ガウ?ガウガウ!」

 

「えへへ……今度お友達も紹介してよ!」

 

「ガーウ」

 

これが、少女ワサビと巨大ポケモン……異世界にて「氷牙竜」と呼ばれ恐れられるモンスター、ベリオロスのファーストコンタクト。この日を境に、ワサビは度々ベリオロスに会いにいくのであった。

 

 

 

 

各地のキング・クイーンが荒ぶろうが、それを時空の裂け目から落ちてきた(・・・・・・・・・・・・・)ギンガ団の人間が鎮めて周ろうが、突然空が赤く変容しようが、ワサビとベリオロスの関係は変わらない。件のギンガ団が雪原キングを鎮めるために滞在している間、ベリオロスが一切姿を見せなくなったのはさすがに気になったが、キングが鎮められてギンガ団が去るといつも通りに姿を見せてくれたのでワサビはほとんど気にしなかった。

 

キングのお世話をしているシンジュ団のキャプテンのハマレンゲがベリオロスに勝負を挑んでいることを知ったときは、素直に勝負を見学させてもらった。ベリオロスはその巨体からは想像がつかないほどの速さで俊敏に動き回り、そして想像通りの強力な威力でもって技を繰り出し、ハマレンゲのポケモンを次々と鎧袖一触で撃破していったのだ。ハマレンゲは決して弱くはない。むしろシンジュ団の中ではノボリに次いで強者として知られている。だが、そんなハマレンゲでさえベリオロスには敵わない。ベリオロスが強すぎるのだ。ポケモンという枠組みに収まりきらないほどに。

 

ワサビ自身も手合わせさせてもらったが……ワサビの相棒たちはベリオロスと戦うには鈍足過ぎたようで、動きについていけずあっさりと下されてしまった。途中、シンジュ団の長もベリオロスと手合わせをしたのだが……なんというか、彼女は相棒を遊覧飛行へ拉致されたり、超能力すら腕力でゴリ押しされたり、一撃も加えられないまま一撃で倒されてしまったりと、終始遊ばれているような気がして少々可哀想であった。それでも、ベリオロスと戦うのは純粋に楽しかった。戦いを通して、ベリオロスのことを次々と知ることができたからだ。

 

そんな毎日が、当たり前のように目の前にある。充実した日々をワサビが実感し始めた、そんな時だった。ベリオロスと遊びすぎて長く集落に帰っていなかったワサビが、久々に集落へと帰省し、そこで一泊過ごしている間のこと。眠っている間に、その予知は見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死が、目の前に広がっている

 

燃え盛るヒスイの地に、死が広がっている

 

積み重なる竜の死骸、流れ出る夥しい血

 

竜によって築かれた屍山血河、その頂点

 

と、呪いと、憎悪を撒き散らすソレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ"あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"ぁ"っ!?!?!?!?」

 

そこまで見て、ワサビは絶叫とともに飛び起きた。心臓が早鐘を打ち、嫌な汗が全身から溢れ出す。体の震えが止まらず、荒く吐く息は整える暇もない。いてもたってもいられなくなり、ワサビは集落を飛び出した。

純白の凍土に着くなり、ワサビは血眼になってベリオロスを探した。探して、探して、探し続けて……氷河の段丘でヒスイニューラの群れと争っているところを発見した。複数のニューラに飛びかかられ、攻撃を受けるベリオロス。当人には大したことはないようだが、現場を目撃したワサビにとっては全く問題ではなかった。

 

 

――千里眼で視えた、血みどろのベリオロスの姿が――

 

 

「ブーバーンッ!!ニューラを全部やっつけてっ!!」

 

勢いのままブーバーンに指示を出し、サイコキネシスでベリオロスに肉薄するニューラを片っ端から吹っ飛ばす。突然、四方八方へと吹っ飛んでいくニューラの様子に呆気に取られるも、ベリオロスは声でワサビを認識したようでそちらへと振り返っていた。

ワサビはすぐさまベリオロスにしがみつく。そこには確かに温もりが、生きているという証がある。そのことに安堵すると、より一層力強くしがみついた。

 

「ガウ?ガウガー」

 

「ブバー……」

 

「ガウ……」

 

ベリオロスがブーバーンに「どうしてこんなことに?」と尋ねるも、ブーバーンも「わからない」と首を横に振る。突然のワサビの変貌に、ベリオロスは愚か相棒のブーバーンすらついていけていない。

 

「(守らなきゃ……)」

 

千里眼で視えたモノ……あれは地獄だ。ベリオロスやその仲間でさえ敵わないナニカがこのヒスイ地方に現れ、ベリオロスたちを皆殺しにしてしまう。それどころか、このヒスイの大地を劫火で包み込み、すべてを破壊しつくしてしまう。そんな未来が……有り得てしまう。その事実に、ワサビは体の震えが止まらない。

ベリオロスとその仲間が共に倒れていたところを見るに、おそらく彼らは誰かの相棒になったのではないか、と推測される。その誰かと共にあのナニカに挑み、そして……敗北した。

 

「(守らなきゃ)」

 

幸いにして、その誰かというのが誰なのかは、おおよそ見当が付いている。己の千里眼による未来視と、地獄の未来を見る前に様子見に来た団長のセキから得た情報からアタリをつけていた。

 

「(守らなきゃっ)」

 

それは、ギンガ団のショウ。キング・クイーンを鎮め、一度は己に勝利した少女だ。たしか、現在はこの赤い空の異変の責任追及によってギンガ団を追放されたと聞いた。そして、今の彼女は目的は不明だが各地を転々としていると聞いている。

おそらく目的は、ベリオロスとその仲間たち。彼らの力を集めて、この事態の収束に乗り出そうという魂胆だろう。

 

「(守らなきゃっ!!)」

 

だが、もしそれが叶ってしまったら?ワサビが見た地獄の未来が、より現実味を帯びてしまう。ショウによって集められた彼らがナニカに挑み、そして……。

ワサビは己の意思で、未来視を使う。見えた未来は、赤い竜に乗って純白の凍土に降り立つショウの姿と、アンノーン文字を解読したショウが呟いた彼の名前……ベリオロス。

 

「絶対にやらせない。ベリオロスはあたしが守る。絶対絶対、絶対に……っ!!」

 

「…………」

 

ワサビは決意した。必ずベリオロスを守ってみせると。そのためにも、今の相棒たちだけでなく、新しい仲間が必要だ。幸い、ショウがやってくるまでに時間はある。それまでに、己の相棒たちを最高の状態に仕上げてみせる。早速ワサビは仲間集めのために踵を返し、歩き始めた。

悲壮な決意を胸に抱く己の姿を、不安に満ちた目で見るベリオロスに気が付くことなく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たのね」

 

運命の時は、近い……。

 

 

 

 




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