ワサビとの勝負、六匹のポケモンすべてを倒したショウ。
しかし、勝負はまだついてない。ワサビが徐に取り出したモンスターボールから現れたのは、なんとベリオロスだった!?
決戦の時!
ワサビちゃんが投げたボールから出てきたのは、ベリオロスだった……!?
「そんな……!どうして、ベリオロスが……っ!?」
「"どうして?"……そんなの、決まってるよ。ベリオロスを守るためだよ」
「ま、守る……?」
「ショウさんにはわかんないよ。どうにもならない巨大な絶望を……救いなんて欠片もない未来を視せられた、あたしの気持ちなんて」
「絶望……?な、何を言ってるの……?」
「……これ以上の問答に、意味はないね。さあ、かかっておいでよ。この子を連れて行きたければ、あたしに勝ってみせて。あたしとベリオロスが……全身全霊で捻り潰してあげる」
「……ダイケンキ、戻って」
ダイケンキをボールに戻す。ポケモンたちを回復させないままベリオロスを繰り出してきたあたり……ワサビちゃんは相当本気らしい。そして、同時に……後がないと、焦っている。
「くっ……」
「ふふっ……いい感じに吹雪いてきた。天は、運は、あたしたちの味方だね」
「グルルル……」
「リオレウス、ダメ」
「…………」
リオレウスが前に出ようとするけど……ダメだ。これだけ強い風で吹雪いていたら、むしろ飛ぶと危ないかも知れない。
「いくらあなたでも、この吹雪の中は飛ばせられない。大人しく戻ってて」
「グオン……」
「大丈夫。……吹雪が止めば、必ずあなたの力が必要になるから」
「グオグオ」
リオレウスも納得したようで、大人しくボールに戻ってくれた。……こういう時、一番頼りになるポケモンは……!
「ジンオウガ!!」
「ウオオォォォォォンッ!!」
地上における機動力なら、ジンオウガはトップクラスだ!ベリオロスがこおりタイプであればあまり長期戦は望めない……吹雪が止めばリオレウスに交代できるから、それまでは……!
「あたしは、運命を変える!誰にもあたしの邪魔はさせないっ!!」
「ワサビちゃんにも勝って、ベリオロスにも勝って、二人に認めてもらう!!」
「ベリオロスッ!
「勝利を狩り獲れっ!ジンオウガッ!!」
「ガオオオオオオォォォォォッ!!」
「ウオオオオオオォォォォンッ!!」
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まずは先制攻撃……!
「ジンオウガ!アイアンヘッド!!」
「ウオオォンッ!!」
「躱して!」
「ガオン!!」
ジンオウガの突撃が、あっさりと回避された……!やっぱり、ベリオロスは素早さも高い……!!
「こおりのつぶて!!」
「ガオガオ!」
「ギャウッ……!」
「ジンオウガ!!」
「続いてこおりのキバ!!」
「……っ!ならこっちは、ほのおのキバ!!」
「ガオオオ!」
「ウオォン!」
こおりのつぶてでダメージが入りつつも、続けて放たれたこおりのキバの指示には間に合った!ベリオロスは氷、ジンオウガは炎の力で相手に噛み付く!爆発が発生して、煙の中からベリオロスとジンオウガが飛び出してくる……!
「ジンオウガ!きりさく!!」
「ウオンッ!」
「こっちもきりさくだよ!」
「ガオッ!」
ジンオウガのきりさくと、ベリオロスのきりさくがぶつかり合う!ベリオロスは爪だけでなく、翼についている刺にも力が宿っているみたいだ……。
一つ、二つと攻撃が交わり、迫って来るベリオロスの右前脚をジンオウガが左前脚で抑えて、右前脚でベリオロスを顎からかち上げる。一瞬怯むベリオロスだけど、持ち堪えてすぐに左前脚でジンオウガをきりさいた。激しいぶつかり合い……ラギアクルス、リオレウスと続いて三戦目だけど、やっぱり迫力が桁違いだ……!
「インファイト!!」
「ウオオォォォン!!」
長引くと厄介かも……出来るだけ早く、決着をつけないと!ジンオウガが一気にベリオロスへと接近していく!
「ふぶきだよ!」
「グァアオオオオオオ!!」
「ガッ!ウッ……!!」
「ジ、ジンオウガっ!!」
しまった、ふぶきが直撃……!まずい、抜け出さないと……!!
「ジンオウガ、はどうだん!」
「ウオォン……!」
空中に向かってはどうだんを放つ!はどうだんは必中技……どこへ向けても必ず命中する!天に向かって登っていくはどうだんは軌道変更をすると上からベリオロスへと向かっていく!
「アイスボールで撃ち落として!」
「ガオガオッ!」
ふぶきを中断して、ベリオロスはアイスボールではどうだんを撃ち落とす……ここだ!
「ドラゴンクロー!!」
「ガウッ!!」
「ギャオオッ!」
よしっ、ドラゴンクローが決まった!反応からして効果は抜群みたいだ!!
「くっ……ベリオロス!サイコカッター!!」
「グッ、ガッ!オオオオォ!!」
「ギャンッ!!」
サイコカッター!?そんな技を覚えるなんて……!完全に計算外だ、かくとうタイプのジンオウガには効果は抜群だ……!!
「大丈夫!?ジンオウガ!」
「ガウ!ワウワオンッ!!」
「よしっ……でんこうせっかだ!」
「ワウンッ!!」
「近づけないで!こごえるかぜ!!」
「フンフアッ!」
ベリオロスが口から冷たい吐息を吐き出してきた。当たると厄介だ……!
「ジンオウガ!ジャンプ!!」
「ワオウンッ!」
ジンオウガの跳躍なら、これくらい回避することは容易い!!高く跳んだジンオウガは、既に攻撃態勢に入っている!!
「力強く!ドラゴンクロー!!」
「ゥワオオオンッ!!」
「グギャオオオオッ!?」
「べ、ベリオロス……!!」
力業のドラゴンクローが頭部に直撃!!いくらベリオロスでも、これは効いたはず!!
「負けないでベリオロス!力強く、れいとうビームッ!!」
「グッ……!グガオオオォォォンッ!!」
「ギャウウウンッ!!」
「ジンオウガッ!!」
押さえつけている前脚を強引に振り切り、ベリオロスが至近距離から力業のれいとうビームを放ってきた!直撃したジンオウガは空中に押し上げられたあと吹っ飛ばされ、私の目の前に落下してきた。
「ジンオウガ……!」
「グルル……」
ジンオウガはまだ戦えそうだけど……やっぱりワサビちゃんは強い。ベリオロスのことをよくわかっているし状況に合った技選択も完璧。相手の技選択を見てからの判断も早く、即断即決で最適解を導き出せるさまは正しく天才。……同じ時代のトレーナーじゃなくてよかった……同世代にこんな子がいたら、トレーナーとしての自信をなくしちゃいそうだよ……。
「……強いね。その子を繰り出してきたあたり、ショウさんにとって一番信頼するポケモンだろうとは思ってたけど、本当に息ピッタリ」
「こっちのセリフだよ、ワサビちゃん。ベリオロスのこと、たくさん知ってるんだね」
「毎日毎日、一日中一緒に居ればいろんな事がわかるよ。……だから、何も知らないショウさんには、安易に託したくはないな」
「……それは、これから知っていくよ。どれだけ時間がかかっても、私は彼らのことを知りたいし、彼らには私のことを知って欲しい……ワサビちゃんとベリオロスのように、きっと分かり合うことが出来るはずだから」
「…………」
ワサビちゃんは、まだ難しい表情をしている。……大丈夫、ポケモン勝負は最高のコミュニケーションツールだ。きっと、ワサビちゃんもわかってくれるはず……だから、今はそれを信じて、バトルするしかない……!
「勝負を続けよう、ワサビちゃん。勝負を通して、もう一度私のことを知って欲しいんだ!」
「……!いいよ……あなたにベリオロスを託しても大丈夫なのかどうか、しっかりと見極めてあげる……!!」
……!ベリオロスが僅かに体を引いている……何をする気……!
「ベリオロス!ひょうらんほう!!」
「ガオオンッ!!」
ベリオロスの口から、アイスボールのような氷の塊が発射された……!
「躱して!」
「ガオウ!!」
ジンオウガがサイドステップで回避し、塊が着弾した、その直後……!猛烈な勢いで、氷の竜巻が発生した!?
「うっ!?これは……」
「着弾することで氷の竜巻を発生させる竜のブレス……氷の嵐を起こす大砲、
さあ、ベリオロス!もっともっと撃ち込んじゃえ!!」
「ガオッ!ガオッ!ガオッ!!」
「くっ……躱して!」
「ウオォンッ!!」
次々と打ち出される氷の大砲を、ジンオウガはなんとか避けていく。けど、着弾するたびに氷の竜巻が残留して段々と動きにくくなっている……!!
「……準備は出来た。ここで一気に仕留めるよ!!ベリオロス、しょうりゅうひょうが!!」
「ガオオオオオンッ!!」
……っ!?ベリオロスが竜巻に向かって飛んで……気流に乗ってる!?
「いっけぇ!!」
「ガオオオオオオオオオ!!」
竜巻の気流に乗っていたベリオロスが、その勢いを利用して飛びかかってきた!!
「ガウッ!!」
「ジンオウガっ!?」
ベリオロスの爪に切り裂かれたジンオウガ……ダメだ、全く反応できていない!?ベリオロスは再び別の竜巻の気流に乗り、また飛びかかってきた!
「ジンオウガ!かみなりパンチ!!」
「ガッ!ガウッ、ギャンッ!!」
「無駄だよ!この氷の嵐と、そこから放たれる連続する斬撃からは逃れられない!!
……昇り竜は氷爪を研ぎ、牙の如き刃で敵を裂く!これがっ!
「くっ……」
そんな大技を隠していたなんて……!!ジンオウガはすっかりボロボロになってる……ここは強引にでも竜巻をどうにかしないと、ジンオウガが負けてしまうっ!!
「ジンオウガ!!辺り全部にはかいこうせんっ!!」
「グルルル……ガオオオウッ!!」
ジンオウガがはかいこうせんで周囲一帯を薙ぎ払い、爆発が起こった!その衝撃で竜巻はすべて消滅、なんとか状況を変えられた……!
「ベリオロス!素早く、ふぶき!!」
「ジンオウガ!かみなり!!」
「ガオオオオンッ!!」
「ウオオオオンッ!!」
ふぶきとかみなりの激しいぶつかり合いで、再び大爆発が起こる。ワサビちゃんは早業を指示していた……はやく次に備えないと……!
「もう一度っ!ふぶき!!」
「ガオオオオンッ!!」
「グルウゥゥ……!」
「くぅっ……!!」
ジンオウガはもう限界だ……!これ以上戦わせるわけには……え?
「…………」
「…………」
「ジ、ジンオウガ?」
「ベリオロス……?」
ジンオウガもベリオロスも、突然戦闘態勢を解いて空を見つめ始めた。一体どうしたの……?今までこんなこと、ましてや戦闘中になんて一度もなかったのに……。
「ど、どうしたのベリオロス!?」
「ジンオウガ……」
……いや、待って。二匹が見つめる先……雲に、切れ間が……!
「……!吹雪が……!?」
「止んだ……!!」
いつの間にか吹雪は止み、空から分厚い雲が流れて消えていく。まさか、二匹はこれを察知して……とにかく、今がチャンスだ!!
「ジンオウガ、戻って!出番だよ、リオレウス!!」
「しまった……!」
「グオオオオオオオオオオオォォォォンッ!!」
吹雪が止んだことで、気流が安定した……これなら、リオレウスは十全に空を飛べる!私は即座にジンオウガをボールに戻して、リオレウスを繰り出した。リオレウスも「やっと出番だ!」とばかりに高らかに咆哮を上げている!
「戦いを通してわかった……ベリオロスはこおりタイプを持つポケモンで、ドラゴンタイプにも弱い。そして、私のリオレウスはほのおタイプを持っている!タイプ相性でなら、完全に上を取った!」
「タイプ相性だけで勝てるだなんて思わないで!苦手なタイプが出てくることくらい、あたしもベリオロスも想定していなかったわけじゃない!!」
「勝つよ……ベリオロスに認めてもらって、ワサビちゃんに安心してもらうために!そのために、ここまで来たんだ!!」
「負けない……あたしには、負けられない理由がある!だから……!」
リオレウスで挑む以上、負けるわけにはいかない!
「リオレウス!ごうかきゅう!!」
「ベリオロス!ひょうらんほう!!」
「グオオオオオ!!」
「ガオオオオオ!!」
火球と氷砲の激しい撃ち合いが始まった!リオレウスは宙を自在に舞い、地上に居るベリオロスに向けて得意技の
「リオレウス!つばめがえし!!」
「グオン!」
「ギャオッ!」
リオレウスが一瞬でベリオロスに接近すると、足の爪で一気に急襲した!ベリオロスが怯んだ隙を突き、リオレウスはベリオロスの背中を掴むと一気に持ち上げた!!
「よしっ、そのまま投げ飛ばして!」
「グオオオ!!」
「ガフッ……!」
「ベリオロス!」
地面に叩きつけられたベリオロスはかなり苦しそうだ!一気に追撃を!!
「追撃して!ドラゴンクロー!!」
「ギャオオオンッ!!」
「……!!躱して!!」
追撃のドラゴンクロー……は、回避された……!!
「躱された……!」
「かみなりのキバ!!」
「ガオン!!」
回避されたことで着地後の隙を突かれてしまった!リオレウスはベリオロスに飛びかかられ、背中から倒れこんでしまった。さらにベリオロスのかみなりのキバが、リオレウスの首に突き立てられる……!
「振り払ってリオレウス!シャドークロー!!」
「グ、オ……オオオオッ!!」
「ギャオンッ!!」
リオレウスは首を振ってベリオロスの牙から逃れられると、影の力を込めた足の爪でベリオロスを思い切り蹴り飛ばした!!すぐに体を起こして、ベリオロスを睨みつけるリオレウス。対するベリオロスも、ジンオウガとの戦いも含めてかなりのダメージを負っているので、息が上がり始めている。
ここで一気に仕留めるには……この連携技で!
「リオレウス!ぼうふう!!」
「グオオオオオオオ!!」
「ガッ……!」
「ベリオロス!」
リオレウスの強烈な羽ばたきで起こった暴風がベリオロスを包み込みダメージを与える……まだまだ、すかさずこの技!
「続けてかえんほうしゃ!!」
「ギギャオオオンッ!!」
ぼうふうの技が続いているうちに、一気に炎を浴びせる!!リオレウスが吐いた炎がぼうふうの風に乗せられて激しく渦を巻く……名付けて、「なんちゃってほのおのうず」!
……どうしてこの時代のほのおポケモンはほのおのうずを覚えないんだろうか……。
「ガウウゥッ……!!」
「べ、ベリオロスッ!?」
「今だ……!力強く、だいもんじ!!」
「グルルル……グオオオオオオオオンッ!!」
「ガアアアアァァッ!!」
力業だいもんじが炸裂した!!激しい爆発に飲み込まれ、ベリオロスは力なく倒れた……やった、勝った!!
「よしっ!ベリオロス、戦闘――」
「……だ」
「――え?」
「まだだ」
ワサビちゃん……?何を言って……?
「まだだよ、まだ……まだ、負けていない」
「負けられない……負けるわけにはいかない……」
「あたしは……あたしたちは、負けるわけには、いかない……!」
「負けるわけにはいかないんだっ!!」
「お願いっ!負けないでっ!立ち上がってぇっ!!」
「ベリオロスうううぅぅぅぅぅぅっ!!」
「……ガオオオオオオオオオンッ!!」
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そんな……ベリオロスが、立ち上がった……!?もうすでに満身創痍、戦闘不能もいいところ……どこにそんな力が……!!
「ベリオロスッ!!」
キャプテンの ワサビは
かいふくのくすりをつかった!▼
相手のベリオロスは
かいふくのくすりで 体力を回復した!▼
なっ、回復……!?
「あたしたちは勝つっ!負けるわけにはいかないんだからっ!!」
――少女の慟哭が木霊する……▼
「……っ、それはこっちのセリフだよ!!」
「ベリオロス!つじぎり!!」
「躱して!」
「ガオッ!!」
「グオォッ!」
体力が回復したことで動きにキレを取り戻したベリオロスが、一気に急襲してくる!回避を指示したけれど、躱しきれずに受けてしまった……!
「リオレウス!エアスラッシュ!!」
「グオオオッ!グオオオッ!!」
「力強く、クロスポイズン!!」
「ガオオン!」
リオレウスによるエアスラッシュの弾幕が、ベリオロスへと襲い掛かる!ベリオロスも力業クロスポイズンでいくつか迎撃するけれど、全ては捌ききれない!
「サマーソルトアイアンテール!!」
「かみくだくで受け止めて!!」
「ガオウンッ!」
「グオッ!?」
なっ……リオレウスのサマーソルトによるアイアンテールを牙で受け止めた!?
「引きずり倒して!!」
「ガオオウ!!」
「ギャオッ!?」
「リオレウスッ!」
「追撃のふぶき!!」
「ガオオオオンッ!」
「グオオン!?」
仰向けに倒されたリオレウスがふぶきで吹き飛ばされて、ゴロゴロと転がって私の目の前で止まった……が、すぐに何事もなかったかのように起き上がった。
リオレウスはドラゴンタイプを持っているけれど、ほのおタイプを併せ持つ複合タイプ……加えて、リオレウス自身の体質でこおりタイプが効きにくいおかげで、ドラゴンタイプなのにこおりタイプを半減で受けることができる!……こおりタイプが「効果は今ひとつ」のドラゴンってちょっとずるくない?
「リオレウス!きりさく!!」
「それならこっちは、つばめがえし!!」
「グオン!」
「ガオッ!」
リオレウスの爪とベリオロスの爪が衝突し、お互いに弾かれる。攻めるなら、ここ!
「れいとうビームッ!!」
「力強く、オーバーヒート!!」
「ガオオッ!!」
「グオオオオンッ!!」
ベリオロスがれいとうビームを放つけれど、リオレウスの力業オーバーヒートが一瞬で押し返す!オーバーヒートが直撃し、ベリオロスは大ダメージを受けた!!
「ギャオウッ!!」
「……っ!ベリオロス!!」
「素早く、めいそう!そして、りゅうのはどう!!」
「グルル、グァオオンッ!!」
「ガアアァ……!!」
「あぁ……!ベリオロス……ッ!!」
オーバーヒートの使用で失った力を早業めいそうで取り戻し、すかさずりゅうのはどうを放つ!攻撃は命中……ベリオロスは再び倒れた!
「まだまだ……!!」
キャプテンの ワサビは
かいふくのくすりをつかった!▼
相手のベリオロスは
かいふくのくすりで 体力を回復した!▼
「負けられない……負けられないんだ……!
ここで負けたらベリオロスが、みんなが……!!」
――少女の慟哭が木霊する……▼
「まだ、来る……!?」
「ベリオロス!りゅうせいぐん!!」
「ガオオオオオオオォォォォォンッ!!」
「グオオアァッ!?」
「リオレウスッ!!」
「つるぎのまい!」
「ガオガオガオ!」
再び回復したベリオロスのりゅうせいぐんが命中した!ここでこのダメージは痛すぎる……!!しかもりゅうせいぐんの効果で弱体化した攻撃力も、つるぎのまいですぐに復活させた……!
「「りゅうのはどう!!」」
「ガオオオオ!!」
「グオオオオ!!」
りゅうのはどう同士がぶつかり合い、大きく爆発する……いや、何か来る!
「みずのはどう!!」
「ガオンッ!」
「グオッ……!」
「続けてドラゴンクロー!!」
「くっ……させるかっ!フレアドライブ!!」
「ガオガオォッ!!」
「グオオラアアァッ!!」
みずのはどうは受けてしまったけど、追撃のドラゴンクローは喰らってやれない!咄嗟の判断で出したフレアドライブが功を奏し、ベリオロスのドラゴンクローとぶつかり合って爆発を起こした!
「はねやすめ!」
「グルル」
一瞬の隙を突いて、はねやすめで体力を回復する。……よしっ、態勢は整った!
「リオレウス!たつまき!!」
「こおりのつぶてで牽制して!!」
「ガオッ!」
「グッ……!」
こちらがたつまきで攻撃しようとするも、こおりのつぶてを差し込まれてしまい攻撃を止められてしまった!
「ベリオロス!シャドークロー!!」
「エアカッターで近づけさせないで!」
「グオオォォ!」
「ガオウッ……!」
ベリオロスのシャドークローを、今度はこっちのエアカッターで止めることができた!ここは畳み掛ける!!
「まだまだぁ!インファイト!!」
「グオオオォォッ!ギャオオオォォッ!!」
「ガアアッ!!グウゥゥ……!」
脚の爪や翼爪、尻尾を駆使した攻撃がベリオロスに直撃!再三、ベリオロスは倒れた!
「負けないっ!!勝つっ!!」
キャプテンの ワサビは
かいふくのくすりをつかった!▼
相手のベリオロスは
かいふくのくすりで 体力を回復した!▼
「運命をっ!未来を変えるんだっ!!
あたし達は絶対に!負けたりなんかしないっ!!」
――少女の慟哭が木霊する……▼
「力強く、リーフブレード!!」
「グアアオオンッ!!」
「ガッ、グッ!」
「まずい、急所……!」
くさ技のリーフブレードは効果はいまひとつとはいえ、急所に当たれば威力はバカにならない……!
「ベリオロス!アクアテールッ!!」
「リオレウス!アイアンテールッ!!」
「「ガオンッ!/グオンッ!」」
お互いに尻尾をぶつけ合い、激しく火花が散る。ここまで……ここまで戦おうとするなんて……!
「どうして、そこまでっ!!」
「ベリオロスを守るためっ!これから起こりうる未来を、避けるために!!」
「いつからベリオロスをボールにっ!?どうしてボールを使おうだなんて!」
「ショウさんが来る前日に、あたしからベリオロスに持ちかけたの!ベリオロスは戸惑っていたけれど、最終的には納得してボールに入ってくれた……このボールは、あたしとベリオロスを繋ぐ唯一無二の絆!!誰にも断ち切らせないっ!!ベリオロスッ!!」
「ガオン!」
「くっ……リオレウス!」
「グオン!」
「「はかいこうせん!!」」
「ガオオオオッ!!」
「グオオオオッ!!」
はかいこうせん同士が激突、大きな爆発を生んだ!……まだだ!
「「エアスラッシュ!!」」
「「ギガインパクト!!」」
「「ブレイブバード!!」」
同じ技が何度も連続でぶつかり合う。最後のブレイブバードは二匹が天高く飛び上がり、空中で何度も激しくぶつかり合っている。赤と白の軌跡がぶつかっては光が弾けて離れていって、またぶつかっていく。
何度目かの激突の後、二つの光がものすごい勢いで戦場へと落下してきた!煙が晴れた先では……リオレウスが、ベリオロスを押さえつけている!
「勝負あり!」
「いや、ないっ!ベリオロス、りゅうせいぐん!!」
「正気!?」
「正気も正気、本気も本気!あたしたちは、絶対に勝つんだっ!!」
「ガオオオオオオオッ!!」
ベリオロスがりゅうせいぐんを降らせてきた……!ベリオロスを押さえつけている関係で、リオレウスは逃げられない……!!
「グオッ!?ギャオ!ギャアウッ……!!」
しまった!りゅうせいぐんに押しのけられてベリオロスへの拘束が解けた……!
「今だ……!ベリオロス!!」
「リオレウスッ!!」
体力的にも、二匹共もう限界だ!これが正真正銘、最後の一撃っ!!
「「力強く!げきりんッ!!」」
「ガアアアオオオオオォォォォォォッ!!」
「グオオオアアアアアァァァァァァッ!!」
竜のオーラを纏った二匹が激しく激突し、戦場全体を包み込むほどの爆煙が発生した!
「リオレウス……!」
「ベリオロス!」
煙幕が、晴れていく。
「……グゥ」
……!リオレウスが、膝をついている……!!
「あ……あぁ……!」
けど、ベリオロスは……。
「……ガ……オォ……」
倒れ伏していた……。
「……どう……して……」
ベリオロスを やっつけた……▼
ようやく、決着……本当に長かった。ワサビちゃんは何度も回復してくるし、ベリオロスも何度も何度も立ち上がってきて……勝ちへの執念、そんなものが垣間見えた気がした。
「……なんで?」
「え?」
「なんで……どうして!?たくさん修行だってしたのに!あんなに考えてきたのに!どうしてなにも変えられないの!?……あたしじゃ、あたしなんかじゃ……未来を変えることは……できないの……?」
「ワサビちゃん……」
フラフラとした足取りで、ワサビちゃんは倒れているベリオロスのもとへ歩いていく。ゆっくりと開かれたベリオロスの目……その近くにそっと手を当てると、ワサビちゃんは膝をついてしまった……。
「ごめんなさい……ごめんなさい、ベリオロス……。あたし、負けちゃった……負けちゃったよぉ……!ごめんなさい……!」
「……ガ、オ」フルフル
ベリオロスに謝るワサビちゃんだけど、ベリオロスも「君は悪くない」と言うように、ゆっくりと首を横に振る。
「……ワサビちゃん。ベリオロスや他のポケモンたちを、回復させてあげよう?」
「……う、ん。あ……あたし、回復道具、切らしちゃった……」
「大丈夫。私の分があるから、それをあげるよ」
「うん……」
私はワサビちゃんに回復道具を分けてあげて、それを使ってワサビちゃんはベリオロスと自分のポケモンたちを回復させてあげた。私もリオレウスとジンオウガ、そしてダイケンキたちを回復させる。
「ワサビ!」
「ワサビちゃん!」
……と、ちょうどポケモンたちを回復させてボールに戻したタイミングだった。背後から声をかけられたので振り返ると……セキさんとカイさんの、コンゴウ・シンジュ両団長がそろって現れた。その少し後から、ハマレンゲさんもついてきている。
「……セキ、さん……」
「ワサビ……見てたぜ、おめえとショウの勝負。知らなかったな……まさかおめえがあのベリオロスを捕獲するばかりか、十全に使役し共に戦うことができたなんてよ。カイから聞いていたとはいえ、実際にこの目で見ても未だに信じられねえ」
「ベリオロスもリオレウスも、共に凄まじいポケモンだった……そんな凄いポケモンと共に戦うことが出来るなんて、二人とも本当に凄いよ。そんな二人が友達であることを、わたしは誇りに思うよ!」
「カイさんも……」
後ろにいるハマレンゲさんも含めて、バトルを見ていたのか……。バトルに夢中になりすぎて、気配とか全然わからなかった……。
「……先に謝っとく。ワサビ、すまなかった」
「え?」
「勝負の最中の二人の会話、全部聞こえてたのよ。……ワサビが何か思いつめたように悩み果てていることは、他の団員から聞いていた。だが、この赤い空の事態もあって、おめえ一人に時間を割いている余裕はなかった。……現実は、オレたちが思ってる以上に深刻なようだがな。
なあ、ワサビ。教えてくれよ。なにか千里眼でよくないモンでも視えたんじゃねえのか?それは誰にも言えないようなことなのか?あるいはこの赤い空と何か関係があるのか?」
「……ううん、この赤い空は関係ないよ。でも、アレはあまりにも恐ろしくて、悍ましいモノだった……」
「お、悍ましい……?」
カイさんが、ワサビちゃんの言葉を復唱する。一体、なにが視えたっていうの……?
「うん。……このヒスイ地方が、端から端まで燃やし尽くされるの。生きてるものが、何一つ存在しないかのような、一面火の海に……。ジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス、リオレウス……そして、ベリオロス……みんな死んじゃって、山のように積み重なって……その頂点に、ソレはいたわ」
「ソレ、ね……いったいなんだったんだ?」
「わからない……姿までははっきりとは見えなかった。けど、この世を滅ぼし尽くさんとばかりの強い意思と、恐ろしさははっきりと感じられたよ……」
……そんな存在が、このヒスイ地方に現れる……ワサビちゃんが言っていた"どうにもならない巨大な絶望"、"救いなんて欠片もない未来"って、このことなの……?
「……なるほど、わかった。とりあえず、ワサビ」
「うん……」
「バカヤロウ」
「えっ……?」
セキさんは難しい顔をしながら、ワサビちゃんにそんなことを言った。いや、いきなりバカはちょっと……。
「ちょっと、セキ!いきなりなにを……」
「カイは黙っとけ。いいか、ワサビ?オレたちコンゴウ団が崇めるシンオウ様が司るものはなんだ?」
「……時……」
「そう、時だ。……時は常に移ろい、変化を続けるものだ。決して止まることはなく、また戻ることもない。生き物の如く変化を続けるものだ。それは当然、未来にだって言えることだ。
今を生きるオレたち一人ひとりの行動が、いくつもの未来を作り出している。おめえが千里眼で視る未来だって変化させることができるモンだ。未来は変わる、変えられる……そうじゃねえのか?ワサビ」
「あっ……!」
「それにな、何もおめえ一人で背負い込む必要はねえ。ここにはオレもいる、カイだっている、ハマレンゲさんだっている。なにより勝負の腕なら天下一のショウがいる!コンゴウ・シンジュ・ギンガの垣根を越え、オレたち全員とポケモンたちの力を合わせれば、どんな困難だって乗り越えられるだろ!」
「そうだよワサビちゃん!ベリオロスという共通点を経て、わたしはワサビちゃんと友達になれた……友達のワサビちゃんがなにか悩みを抱えているなら、わたしは力になりたい!一組織の長としては頼りないわたしかもしれないけれど、一人の友人としてわたしはワサビちゃんにもっと頼られたいよ!」
「ワサビさんとベリオロスの連携、実に素晴らしい!おまえさんとベリオロスは、本当に心の底から通じ合っている!なによりもベリオロスの強さを知っている者同士として、おまえさんが懸念する未来がどれほどのものか……もはや想像すらつかん!
しかし、しかしだ!あれだよ、あれ!この世には絶対なんてものはないってことだよ!セキさんの言う通り、未来は変えることができる!ならば、我々ができる最善を尽くし、来るべき未来に備えるとしようじゃないか!」
「……!!」
ワサビちゃんの目が、大きく見開かれた。……そうだね、未来は変えることができる。だって、『
「ワサビちゃん」
「ショウさん……」
「ワサビちゃんの懸念も、予知された未来への不安も、わかるよ。先が見えないと不安になることもあるけど、見えたら見えたで不安になることだってあるよね。……でも、大丈夫。セキさんも言ってたけど、未来はいくらだって変えることが出来るんだから。
たとえこの世の終わりのような未来が待ち受けていたって、私たちには心強い仲間と、ポケモンたちがいる!ジンオウガたちも、絶対に死なせたりなんかしない。私を信じて、ワサビちゃん」
「……っ!!」
「ずっと、一人で不安だったんだよね。でも、その不安も仲間たちと分け合おう。ワサビちゃんは、決してひとりじゃないんだから」
「……う、うぅ……
うわああぁあぁあああぁぁんっ!!
ああぁああぁあぁぁああああんっ!!」
一人だけ視てしまった、絶望の未来……その不安と恐怖に押しつぶされそうになりながらも、手の届く存在だけでも守ろうとワサビちゃんは必死にもがいて足掻いていたんだ。でも、ワサビちゃんだけに何もかもを背負わせるつもりはない。みんなと一緒なら、どんな重荷だって背負っていけるんだ。
その想いを伝えると、不安から解放されたからかワサビちゃんは大声を上げて泣き始めてしまった。カイさんが膝をついてワサビちゃんを正面から抱きしめて、セキさんが後ろからワサビちゃんの頭を撫でていた。
おぉ……こうして見るとセキさんとカイさんとワサビちゃん、なんだか家族みたいだ。当然、セキさんとカイさんがふう――
「おっと、お前さん。それ以上は考えなさるな。……察知されたら面倒だぞ、いいね?」
「アッハイ」
そこまで考えたところで後ろからハマレンゲさんに声をかけられてしまった。……いや、確かに二人の関係を勝手に妄想してそれに気づかれたら、絶対に面倒くさいことになる。私は考えるのをやめた。
しばらくの間、泣き続けていたワサビちゃんがやっと泣き止んだ。でも、その表情は随分とスッキリしたものとなっている。……うん、いい顔になった。
「ショウさん、ごめんね。あたし、意地になってた……未来を見知ることができるあたしにしか、運命を変えることができないんだって、自惚れて……」
「ううん、それはしょうがないよ。それに、今度からは悪い未来が見えたら、みんなで解決しようね」
「うん!」
さて、と。あとはワサビちゃんからベリオロスを譲ってもらうだけなんだけど……。
「あの、ショウさん……」
「…………」
……うーん、よしっ!決めた!
「……今日は、ここに一泊しようかな」
「は?ここにって……この凍土にか?」
「え、そうですけど?」
「いやいや待て待て。ショウ、おめえどこで寝泊まりする気だ?カイだってメンツがあるから集落には入れてやれねぇし、ほかに寝られる場所なんて……」
「いや、セキさん。キッサキ神殿があるじゃないですか。あそこでいいですよ、私」
「マジかよ……」
いやいや、ほかに寝られる場所なんてないじゃないですか。だからセキさん、ドン引きしないでください、普通に傷つきますって。
「あ、あたしも一緒に寝る!いい?」
「もちろん!私の手持ちにグラビモスがいるから、彼に暖かいガスを出してもらって暖を取ろう!」
「やったぁ!」
「……あー、あの岩の竜か。アイツ、そんなことまでできんの?」
「ただの排熱行為ですけどね」
出力を限界まで絞ってガスを噴出すれば、暖房くらいにはなる……はず!そうじゃなくてもグラビモス自身が相当暖かいから、近くで寝るだけでも十分暖は取れる……ふっ、余りにも完璧な計画、自分が少しばかり怖いわ。
「それじゃあ、わたしは集落からお布団を持ってくるね。名目上は、ワサビちゃんへってことで」
「確かにそれなら筋が通る。ワサビさんもショウさんも、冷たい床石で寝なくて済むということですな」
「……はぁ。こりゃあ、てこでも動かねぇやつだな……しょうがない。ショウ、今夜一晩の間、ワサビのことを頼むぜ」
「任せてください」
トントン拍子に話が進み、私はキッサキ神殿で夜を明かすことが決定した。カイさんも気を遣って布団を持ってきてくれるそうなので、本当にありがたい。
カイさんとハマレンゲさんは先んじて布団の用意をしてくるために集落へと戻っていった。セキさんも、ワサビちゃんの一件が解決したことをほかの団員さんに話すために集落へ戻るそうだ。集落内でも、焦燥に駆られるワサビちゃんの身を案じる人が多数いたそうで、セキさんも度々相談を受けていたんだって。
ワサビちゃんもライドポケモンのウォーグルと一緒に、先にキッサキ神殿で待ってる、とのこと。氷山の戦場には私一人しかいない。さて、私も移動しようかな。
「やっと見つけました!」
……と、思いきや。
「……えーっと、ウォロさん?」
「ぜーっ……ぜーっ……。ふぅ……いやぁ、ホント……探しましたよショウさん!一体どこにいるのやら、東奔西走してみれば……まさか純白の凍土にいらっしゃるとは!……はぁ……」
「あの、ちょっと落ち着きません?」
「ですね……」
タイミングがいいのか悪いのか、ウォロさんが声をかけてきた。どうやら群青の海岸で別れてから、ずっと私を探し続けてくれていたらしい。……めちゃめちゃ呼吸が乱れてるじゃないですか。どれだけ探してたんですか……。
「……あの狼ポケモンはいないようですね」
「あ、あの時はジンオウガがすみませんでした。なにぶん、気まぐれな子でして」
「ジンオウガ……と、仰るのですか。いや、失礼!見たことも聞いたこともないポケモンでしたので、ついついっと興味が惹かれまして」
「あぁ……やっぱりウォロさんも知らないんですね……」
イチョウ商会がどこまで手を広げているのかは知らないけれど、そこに属しているウォロさんですら知らないときた。……ジンオウガ、あなたは……あなたたちは一体何者なの……?
「ウォロさんが私を探し続けていた、ということは……」
「えぇ、お察しのとおり。以前にも言いました、いい場所の情報です!ジブンが案内しますので、付いてきていただけると幸いです」
「……あの、ちょっとだけ待ってもらえませんか?今夜はキッサキ神殿で一夜を明かすと決めているので……」
ワサビちゃんとの約束もあるので、これだけは譲れない。……ワサビちゃんがベリオロスと一緒に過ごす、最後の夜になるかもしれないから。
「ふむ……なにやら、事情がおありのご様子。わかりました!それならジブンは、シンジュ集落の方で一泊させていただきますかね」
「すみませんウォロさん、お手数をおかけして……」
「いえいえ!群青の海岸でも言いましたが、これくらいの労力なら大したことありません。ショウさんは大切なお得意様ですからね。それでは、ジブンは集落の方へ向かいます。また明日、ここで落ち合いましょう」
「わかりました」
それでは!と言い残して踵を返すウォロさん。……さて、私もキッサキ神殿へ向かわないと。ワサビちゃんも待ってるだろうし!カミナギの笛を吹いてアヤシシに久しぶりにライドすると、私は一路神殿へと走り出した。
「ほう、これは面白い」
氷山の戦場を眼下に見て、男は呟いた。
気づけば見知らぬ土地に放り出され、己が知るソレとは全く異なるモンスター郡が跋扈するこの世界を彷徨い歩くこと幾年。あまりにも懐かしい存在を目にした男は喜色を隠せない。
「雷狼竜、氷牙竜……そして火竜、か。驚いたな、この狭く穏やかな世界にすら、彼らは存在できるのか。生物としての規格からして、彼らに比べればこの世界の生き物は脆弱に過ぎるというのに」
それが、この世界で生きてみた結果得られた男の所感だ。この世界の生物たちはお互いを無理にとって食ったりはしない。なんなら、きのみを食って腹を満たす個体だっているほどだ。血肉を喰らわずとも生きていけるなど、『あの世界』を知る者としては生温いと言う他ない。
「なによりも、彼らがああも人間に対して従順になるとは……やはり、この世界の在り方そのものが、この世界に生きるものらに何かしらの影響を与えているのか?あのようなボール一つで捕獲できてしまうとは、この世界の技術力は凄まじい……我々では、決して得られぬものだろう」
男はモンスターボールに強く興味を惹かれている。使っている人間は極僅かなようだが、それ一つで生物を収納・運搬・解放できるという点は、男にとって全くの未知の技術であるからだ。そして、そんなボールを使って竜を使役する少女たちの姿は、男の記憶に強く焼き付いている。
「ふっふっふ……急げ、少女よ。終わりは刻一刻と迫っている。その終わりが、この赤い色の空によるものか、あるいは別の……。なんにせよ、全てはひとりの少女の両肩に託されたわけだ。これからも彼女のことを、見守ってみるとしよう。
ふむ……
男はその身に纏った赤い衣を翻して立ち去っていった。
やっと終わった氷牙竜編……。
これもう(ショウちゃんとワサビちゃん、どっちが主人公なのか)わかんねえな。
次からいよいよ原作合流です!
最後の登場人物をどのように捉えるかは、あなた次第……