自分が書きたかった話が書けるということ!やったー!!
新たな異変と新たな脅威
シンオウ神殿にて、時空の裂け目を開いた元凶であるウォロとギラティナ……一人と一匹を打倒した私は、怒りのままに息の根を止めようとしたところをジンオウガに諭されて、ウォロを逃がした。ただし、アルセウスが私を元の世界に戻さなかった場合、相応の報復をすることも決めて。
さて……コトブキムラへ戻った私は、門番のデンスケさんとラベン博士が門前で立ち話をしている場に居合わせた。なんでも、群青の海岸に巨大な影が現れ、そして消えた……そうで。私は事の顛末をラベン博士に説明すると、博士はすぐにその影の正体がギラティナではないか、とアタリをつけた。さすがはポケモン博士、鋭い……私もちょうど、同じことを考えていたから。
ギンガ団本部に戻った私を、コギトさんが待っていた。どうやら、ウォロの行いをすべて聞いたらしい……その上で、私に「ウォロのことは忘れろ」と言い含めてきた。……ごめんなさい、コギトさん。その言葉は、状況次第では聞けないかもしれません。そして、コギトさんから新たなポケモンの情報をもらった。黒曜の原野にランドロス、雷雨が鳴り響く群青の海岸にボルトロス、吹雪が吹き荒ぶ純白の凍土にトルネロスがいる……とのこと。
私は早速探すため、黒曜の原野へ向かった。そこで見たランドロスは……どこかで見たことのあるポケモンだった。
どこで見たのか……それは、元いた世界でスマホで見ていたポケモンを使ったボケを投稿するサイトで、ランドロスとランドロスによく似たポケモンが合わせて三匹揃って並んでいる写真に「親戚がみんな同じ顔」というボケが呟かれててめちゃくちゃツボにハマったことがあった。
あのランドロスは、その写真で見たポケモンと全く同じ……それじゃあ、あの時見た写真に並んでいたのがトルネロスとボルトロス?なんて偶然なんだろう……ただのギャグサイトから、こんなつながりができるなんて……。
「捕ろう」
ひとまず捕獲するためにボールを投げたりねばりだまを投げてみたけど……周囲をバリアーのように覆っている嵐のような風のせいで、全然捕まえられなかった。全てのポケモンと出会う……アルセウスと対面する条件を満たすためには、トルネロス、ボルトロス、ランドロスの三匹を捕まえなければならないのに……こうなったら……奥の手だ!!
「グオ?」
「……リオレウス、ゴー」
「グオオン!?」
「黙らっしゃい!アルセウスに会うためなの!形振り構ってられないんだから!!」
「グオン……」
「ジト目で見ないで、リオレウス。私も必死なんだから」
こうして私は奥の手とは名ばかりのズルをすることにした。ランドロスたちは動きが非常に素早く、慎重に近寄ろうにもすぐに気づかれて逃げられてしまう……だから、一気に強襲することにした。
ランドロスはリオレウス、海上にいるボルトロスはラギアクルス、吹雪の中にいるトルネロスはベリオロスに頼んで取り押さえ、強制的にバトルに持ち込んで捕獲した。……ただ、みんなからの微妙そうなジト目が心にチクチクと刺さってくる……。
三匹を捕獲したあとは、三匹の図鑑作りに勤しむ。コギトさんが見たがっていたので、一生懸命に取り組んだ。特に三匹が得意としている固有技は三匹の特徴を捉えた技だけに、図鑑作りが一層捗ったことをここに明記しておく。図鑑作りを終えてコギトさんに見せると……まさかの四匹目がいることを教えてもらった。隠れ里に姿を現したのは、ラブトロスというピンク色のポケモン……このポケモンは、紅蓮の湿地に深紅沼を移動しているだろうということ……よし。
「ジンオウガ」
「…………」
「……お願いします」
「ワン……」
ラブトロスの捕獲はジンオウガに任せる。ジンオウガにもジト目で見られたけど、根気強くお願いすると「しょうがねぇなぁ」と言いたげにため息をつきながら……全速力で追いかけて数秒でとっ捕まえてきてくれた。……ジンオウガって、実はツンデレさん?
ラブトロスも無事に捕獲して、得意技らしい「はるのあらし」をしっかり観察して、図鑑タスクを埋めていく。……よしっ、図鑑レベルが10になった!なので、もう一度コギトさんの下を訪ね、ラブトロスの図鑑が完成したことを報告した。すると、「うつしかがみ」という道具をくれた。なんでも、ラブトロスたちを「けしんフォルム」から「れいじゅうフォルム」へとフォルムチェンジさせる道具らしい。……ありがたく使わせてもらおう。
あとは……。
「ギラティナ……」
「…………」
私は現在、群青の海岸にある隠れ泉への道……そこにある切り立った崖を登りきった先にある洞窟である戻りの洞窟にいる。ここに逃げてきたギラティナを捕獲するためだ。
「……ギラティナ、取引をしよう」
「……?」
「私は自分が元々いた世界に、時代に帰りたい。そのためにも、私はアルセウスに会わなければならないの。……そして……もしもアルセウスが私を元いた場所に帰してくれなかったら……私は、アルセウスをぶっ飛ばすつもりよ」
「……!!」
「だから、もしもその時が来たら……一緒にアルセウスをぶん殴ろう。元々、アルセウスに挑むつもりだったんでしょ?共犯者が変わるだけなんだし、問題はないでしょう?」
「……ギゴガゴーゴーッ!!」
「取引成立……よろしくね、ギラティナ」
こうして私はギラティナを仲間にした。いつか、アルセウスに一発お見舞いしなければならなくなった時に、一緒にぶん殴るために。
ベースキャンプに戻ると、ラベン博士がウォロに会っていたらしく、ウォロ曰く、敗北したギラティナは私に敵わないと悟り、アルセウスの反逆を諦めてヒスイ地方を守る道を選んだ、らしい。……そうとは知らず、私はギラティナに対して改めて「アルセウスに反逆しよう」と声を掛けたわけか。いや、ギラティナも割とノリノリで返事をしてくれたから、「ヒスイ地方は守るけど、それはそれとしてアルセウスぶん殴ってやる」って感じなのかな。
こうして、私は全てのポケモンを捕獲することに成功した。テンガン山、槍の柱を訪れた私は、早速てんかいのふえを吹いてみた。……すると、光の階段が出現した。……この先に、アルセウスが……。
「……行くか……」
正直、階段の先の先まで見えなくて、この時点で気が遠くなりそうなんだけど……頑張るか!
光の階段を上って上って上り続けて……ようやく終着点に到達した。そこは空が一面星空になっていて、足元は奇妙な模様が描かれた不思議な空間……アルセウスはどこだ。私があちこちをキョロキョロしていると、背後に気配が……!
「……!!」
振り返った先には、四足の白いポケモンがいた。……わかる、私にはわかる……あれが、アイツが、アルセウス!
すると今度は、アルセウスフォンに変化が表れた。アルセウスフォンが光り輝くと、私の手の中には光の玉が……これ、しずめだま?そして、そのままアルセウスとの戦闘に突入した!
アルセウス……本当に手強いポケモンだ。青いオーラに包まれたアルセウスは、衝撃波と隕石のコンボ、分身して力を溜めるとディアルガやパルキアの得意技に酷似した技を使ってきたりする。どうにかこうにかしずめだまをぶつけて体勢を崩させると、約束通りギラティナでボコボコにした。
すると今度は赤いオーラに包まれた。……自分の周囲以外をすべて攻撃する技や、ギラティナのシャドーダイブに似た技を使ってきたり、追尾するレーザーを放ってきたり……危うく目の前が真っ暗になりかけたけど、辛うじて勝利することができた!
これでようやく終わる……そう思っていると、アルセウスが突然話しかけてきた。
「全てのポケモンに出会う……貴女は見事、成し遂げました。諦めなければ、想いはいつか叶えることができる……貴女の活躍は、それを表しています。古代の英雄……彼らと同じように」
「……どーも」
どこの誰とも知らない人と同じにされてもなぁ……。
「時間、空間を超え、改めて示してくれたこと……喜びます。この世界に、貴女を呼んで良かった」
こっちはよくない、という言葉を既で飲み込む。
「これからの貴女……そして、貴女が生きていく宇宙を、私は祝福しましょう」
呪いの間違いでは?
「……私の分身を、貴女に託します。願わくば、より近くで共に世界を見せてあげてください」
そして私は一つのモンスターボールと、レジェンドプレートと呼ばれるプレートを貰った。……さて、茶番はここまでだ、本題に入ろう。
「アルセウス、私の願いを聞いて欲しい」
「……なんでしょう」
「私の願いは、元いた場所へ帰ること……あなたの力を以てすれば、私の帰還は可能なの?それとも、私はこのヒスイ地方に、骨を埋めねばならないの?」
「……結論から言うと、帰還することは可能です。貴女に捕獲された我が子のうち、あかいくさりを用いなかった子は権能を失っています……なので、私が直接力を振るうこととなるでしょう」
モンスターボールで捕まえたパルキアは、空間を操る力を失っていたのか……どうりで、ディアルガとパルキアの二匹が揃って「できない」と答えたわけだ……。
「なら、今すぐにでも……!」
「……しかし、今はまだそのときではありません」
「……!!なんで!?」
「落ち着いて。……現在、時空の裂け目の内部に"アレ"がいます。あらゆる時空につながる時空の裂け目に迷い込んだ"アレ"を排除するまでは……!」
……"アレ"?アルセウスが「排除する」とはっきり口にするような存在が、時空の裂け目に侵入しているの……?アルセウスが話しているさなか、突然、アルセウスがすごい勢いで自身の背後へと振り返った。……その直後だ!
ミシッ……ミシッ……!
なにかが割れるような音とともに、私たちの目の前で小さな時空の裂け目が開いた!その中から、ドラゴンのような黒い腕が二本出現すると、裂け目の淵に手を掛けて中から出てこようとし始めた!
「くっ……!!」
それを見たアルセウスは迷うことなく裂け目に突撃し、裂け目の内部から出てこようとするものを押し返そうとする。それでも徐々に押し返されたことで、その顔があらわになった。中から顔を覗かせたのは、ドラゴンだった。
先端に向かうにつれて白くなっている四本の角。
闇を思わせるような黒い甲殻。
黒い目に金の瞳。
そのドラゴンと、目が合った……その直後、まるで心臓が握りつぶされたかのように痛みだし、呼吸困難に陥り立っていられなくなった私は膝をついた。
「ガッ……ハッ……!!」
「……っ!はあああぁぁぁ!!」
私が膝をついたことを悟ったのか、アルセウスがさらに力を放ってドラゴンを押し返していった。最終的に、アルセウスが裂け目に向かってはかいこうせんを放ち、強引にドラゴンを裂け目の中へと押し込んだのであった……。
ドラゴンの気配が完全になくなると、私の呼吸も徐々に落ち着きを取り戻し、心臓の痛みも引いていった……。なんだったの……あの、ドラゴンは……?
「……大丈夫ですか?」
「……なん、とか……。あ、あのドラゴンがいるから、今は私を元の場所に返せないん、だよね……?」
「えぇ、その通りです。……私も全霊を持って対処にあたります。今しばらくお待ちを」
「……わかっ、た。……色々と言いたいこと、聞きたいことがあるけど、今は置いておく。……気を、付けて……」
「ありがとう」
その言葉を最後に、私は一度意識を失った。気づいたときには槍の柱にいて、あれは夢だったのかと思いもしたが……手元に有る覚えのないモンスターボールと、その中にいるアルセウスを見て、あれが夢ではないことを悟った。
……目があっただけで、自身の死を予感するほどの恐怖を感じた。……もしかして、ワサビちゃんが千里眼で見た「絶望」って、あのドラゴンのこと……?わからない……方々に確認を取らないといけないだろう……。
アルセウスの分身を託され、アルセウスが謎の黒いドラゴンを撃破するのを待つ……その間に、デンボク団長が「プレートを集めたら連絡をくれ」と言っていたのを思い出し、ひとまずプレート集めが一段落したことを伝えた。……その三日後、私はデンボク団長に呼び出され、団長室まで来ていた。
「団長、ショウです」
「うむ、参れ」
団長室に着くと、そこには団長だけでなくセキさんとカイさんもいた。……この勢揃いも久しぶりだな……。
「よう、ショウ。久しぶりだな」
「プレート集め以来だね」
「お久しぶりです、セキさん、カイさん」
「今回、ショウに来てもらったのはほかでもない。セキとカイからも、ショウに相談がある、とのことだ」
「……?お二人からも、ですか?」
なんだろう……何か問題になるようなことでもあったのだろうか……?
「ああ、実はな……うちの団員の一部に"ギンガ団は過剰に戦力を保有していないか"と不安がっている奴らがいてな……」
「セキもなの?実は、シンジュ団でも一部で同じことを考えている人がいて……」
「え?……あの、どういう意味ですか?」
本当にどういう意味だ?ギンガ団が、コンゴウ団とシンジュ団よりも過剰に力を持っているって……。その意味を説明してくれたのは、デンボク団長だった。
「ショウよ……セキとカイの言う一部の組織員が気にしている戦力というのは、おまえが個人で保有している例の巨大ポケモンたちのことだ。かのポケモンらが見目に限らず、我々が一般的に知るポケモンを遥かに凌駕する力を持っていることはコンゴウ・シンジュ両団も既に周知済みである。
ギンガ団、コンゴウ団、シンジュ団……三つの組織が助け合い、支えあっていくことは当然のこととして、件の巨大ポケモンの力を知る者としてはその力が一極集中している現状を憂いている……ということだ」
「……なるほど」
つまり、ジンオウガ達のような強力なポケモンが一つの組織に集中している現状を、不安に思っている人が少なからずいるということだろう。……冷静に考えれば、伝説のポケモンだけでなく、シンオウ様であるアルセウスの分身ですらギンガ団が保有していると考えると……うん、言いたいことはわからないでもない。
もちろん、ギンガ団がその力を悪用しないだろうということは互いの信頼関係から理解されている……が、それはあくまでディアルガやパルキア、ギラティナにアルセウスがこのヒスイ地方に伝わる伝説に登場するポケモンだからだ。
そして、ジンオウガたちの話になる。以前にも話したと思うけど、コンゴウ団とシンジュ団はギンガ団よりも早くこのヒスイ地方を訪れて、そこでの生活を築き上げてきたのだ。そんな彼らが、今の今まで全く知り得なかった巨大なポケモンたち……最近は、私が独自に調べ上げ、アカイさん監修による修正・追記によってだいぶマシになった図鑑のおかげで広く周知されているとはいえ、やはりまだまだ未知の部分が多い。
「……つまり。その一部の人たちは、ジンオウガのようなキングやクイーンとは別に強い力を持ったポケモンが居てくれればありがたい、ということですか……」
「うむ、そうなるな」
「すまんな、ショウ。……実は近々、コンゴウ団やシンジュ団にも、ギンガ団の調査隊みたいな部署を作るつもりでな。身近なポケモンならまだしも、まったく触れたことのないポケモンとなるとやはり抵抗感があるみたいなんだよ。……そこで、白羽の矢が立ったのが、ショウが連れているグラビモスたちだ」
「彼らはとても強く、大きいから恐いと感じる人もいるだろうけど……でも、彼らがヒトを襲った事例は全くないし、なんならヒトと積極的に触れ合う子もいるくらいだしね。ポケモン調査について学ぶなら、ちょうどいいかなと思ったんだ」
「あぁ、なるほど……」
つまり、調査のノウハウを学ぶためにジンオウガたちを貸し出して欲しい……ということか。あと、貸し出し中はその戦力で集落や各地域を守りたい、と。
「……私は彼らの"おや"としてお世話をしていますけど、彼らには彼らの意思があります。一応、そこはジンオウガたちに直接確認を取ってみないと、なんとも。少なくとも、私の一存で決めたくはないです。ジンオウガたちが嫌がるようなら、私としても行かせたくはありませんから」
「うむ、もとよりそのつもりである。ジンオウガたちはショウが捕獲したポケモン、ならばその処遇を決めるのもまた、ショウでなければならない。セキ、カイ。そなたらもそれで良いな?」
「あぁ、異論はないぜ」
「もちろん。そこはショウさんと、ラギアクルスやベリオロスたちの意思を尊重するよ」
ひとまず、この話し合いはここで解散となった。私はその足でそのまま放牧場に向かい、ジンオウガたちに意思確認を取っておいた。……みんな、特に嫌ということはないみたい。良かったような、しばらくはいなくなると思うとさみしいような……。
……そういえば、最近放牧場に預けてあるはずのミミロップの姿が見えない気がする。あと、ミミロップの姿が見えないときは決まって図鑑タスク用に大量捕獲したリオルやルカリオたちも姿が見えなくなっている。一体どこで何をしているのやら……。
あと、ガブリアスがオドガロン亜種に積極的に話しかけている様子も見られた。ガブリアスの焦ったような表情……なにか、思いつめてなければいいんだけど……。
コンゴウ・シンジュ両団への戦力分配の相談から一週間後……シマボシ隊長から緊急の呼び出しを受けた。私が慌てて宿舎から飛び出すと、同じように宿舎から飛び出してきたらしいテル先輩とぶつかってしまった!
「あいたっ!?」
「いって!?……って、ショウ?」
「あ、せん……ぱい……」
先輩の名前を呼ぼうとして、私はすぐに気がついた。私が先輩を押し倒すような形で二人でもつれ合って倒れてしまっていることに!!
一気に顔が熱を持ち、心臓が早鐘を打つ。嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な気持ちが湧いてきてなんかもうやばいんだけど!?
「えっと……そろそろどいてくれるとありがたいんだけど……」
「はいっ!どきます!朝からすいませんでした!!」
「い、いやいや。おれも前をちゃんと見てなかったし、お互い様だよ」
「あ、はい。…………」
「…………」
よく見ると、先輩も少し顔が赤くなってる。……意識、してくれてるのかな?だとしたら、ちょっと嬉しい……。
「……緊急の呼び出し、だったな。急ぐか」
「はい」
それから私たちは顔の火照りを落ち着かせてから、調査隊室へと赴いた。
「シマボシ隊長。テル、ショウ両隊員、ただ今到着しました」
「入れ」
「失礼します」
「失礼します」
調査隊室に入ると……またまた各組織の団長組が揃っていた。……最近よく集まるな、この面子。他には……ラベン博士もいるのか。あと、ガラナさんをはじめとする、コンゴウ団とシンジュ団の人が数名いる。
「では、テルとショウも来たので、話をしよう。……シマボシ」
「はい、団長。……本日未明、黒曜の原野、紅蓮の湿地、群青の海岸、純白の凍土の四地域にて、ほぼ同時に大規模な時空の歪みが観測された」
「時空の歪み……」
時空の歪みといえば、たまに現れる時空の裂け目の小規模版みたいなやつで……時空の歪み内部には、普段その地域には生息しないポケモンが出現することでも知られている。
けど、そんな時空の歪みが大規模且つ同時に複数も出現したって……?しかも本日未明って、結構前だよね……?
「ただの時空の歪みではないんですか?」
「これまでとは打って変わって、規模が違う。加えて、時間経過で自然消滅するはずが、現時点までその存在が確認されている」
「えっ!?」
話を聞く限りでは出現してからかなりの時間が経過しているはずなのに……今も歪みが発生したままってこと!?
「そして……これは特にショウ……お前が聞いておくべき報告である。傾注し、心して聞くように」
「は、はい」
なんだろう、改めて言われると緊張するな……。
「……時空の歪み内部にて、見たことのない巨大なポケモンが確認された、とのことだ。その容姿、風格は、ジンオウガたちと同等の気配を纏っていると思われる」
「……!!」
ジンオウガたちと、同じ……!それって、つまり……アカイさんの地元に棲むポケモンが、時空の歪みを通じて出現したってこと!?
「そ、それは本当ですか……?」
「嘘は言わない。……目撃者も連れてきた。ショウはそれぞれ目撃情報を頼りに、ジンオウガたちを駆り事態の解決に当たれ」
「ジンオウガたちのような巨大ポケモンの一匹一匹の強さは理解している……が、それと同格のポケモンが一度に複数匹現れるなど、前代未聞。この問題は、ショウ。お前にしか解決できないと判断した」
シマボシ隊長から命令を受け、デンボク団長がこの任務に私を推したことを話してくれた。……ジンオウガたちと、同格のポケモン。めちゃくちゃ興味あるし、なんなら言われずとも行くつもりだったまである。
「わかりました、お任せ下さい」
私は二つ返事で了承すると、早速目撃者から話を聞くことにした……。
case1.
最初の目撃情報は、黒曜の原野のマサゴ平原。証人はラベン博士だった。
「ぼくはテルくんと共に、時空の歪み内部への侵入を試みたのです。
入ることはできたのですが、入ってからすぐに奇妙な音が聞こえたのです。まるで、刃を研ぐような、鉄と鉄が擦れるような音です。
その音を頼りに捜索を続けると、巨大なガチゴラスを発見したのです!ただ、ぼくがよく知るガチゴラスとはかなり形状が異なっていて……特に尻尾!尻尾が剣のような形状をしていたのですよ!さすがに近づくことは憚られたので、それ以上は何もわからなかったのですが……あれはひょっとしたら、ガチゴラスのリージョンフォームか、あるいは……ジンオウガたちと同じ部類のポケモンなのかもしれないのです……」
case2.
次の目撃情報は、紅蓮の湿地の試練の中洲。証人は女性コンゴウ団員で、セキさんは付き添いとのこと。
「時空の歪みの発生は、集落からでも確認できたの。だから、ちょっと興味本位で中に入ってみたんだけど……もう、ね。凄かったわ。
あたり一面、泡、泡、泡、泡……もう泡塗れよ!しかもその泡、触ったらくっついてなかなか離れないし、しかもやたらツルツル滑って動きにくいったらないんだから!
それで、普段はオヤブンヌメイルがいるところにね、ぜんっぜん違うポケモンがいたのよ。尻尾が刷毛みたいな形状の、キツネ顔のポケモンよ!きっとキュウコンやゾロアークと同系統のポケモンに違いないわ!だからもっと近づいて調べようと思ったんだけど……あっさりとバレた挙句、泡を吐きかけられて追い返されちゃったわ……すっごく綺麗なポケモンだったんだけどなぁ……」
case3.
次の目撃情報は、群青の海岸……の、ほぼ全域。証人はガラナさん。
「群青の海岸は、海上がほぼ時空の歪みに飲み込まれた状態になっています。そのため、火吹き島へ向かおうとしても、少々困ったことがおきまして……。
えぇ、そうです。巨大な翼を持ったポケモンが、群青の海岸の海上を飛び回っているせいで火吹き島に行けなくなってしまったんです。
……そのポケモンの特徴、ですか。そうですね……鶏冠、でしょうか。翼は虫タイプのような美しさですが、電撃を纏っているようで雷が走っておりましたわ。尻尾も鋏のように二股に割れていました。あとは……先程も言いましたが鶏冠……あの鶏冠に電力が集まると、巨大な刃のようになりましたわね……。群青の海岸を飛び回る鳥ポケモンが、その刃で次々と消し炭にされていく様は、悪夢のようでした……」
case4.
次の目撃情報は、純白の凍土の極寒の荒地。証人はカイさん。
「純白の凍土で発生した時空の歪みは、極寒の荒地からシンジュ集落にかけて縦長に発生しているの。集落全体が時空の歪みに巻き込まれて、みんな不安になっている。
ただでさえ不安になっているのに、そこへ輪をかけるように出現したのが、巨大なポケモンなんだ。以前、ラベン博士から彼の故郷にいるっていうダイオウドウってポケモンの絵を見せてもらったけど……その巨大ポケモンは、まるでダイオウドウとマンムーを足して割ったような姿のポケモンなんだ。
いつかの雪原キングのように、じっとしたまま動く様子がないんだけど……あの大きさ、多分だけど雪原キングと同じくらいかも。あんなのが動き出したら、きっとひとたまりもないよね……」
一通り話を聞いてみたけど……これは、実際に見てみたほうが早いかも知れない。ただ、四ヶ所同時に出現したとのことなので、順番に行く必要があるかも……。
「さて……」
私が最初に調査するのは……。
「伝令っ!!」
どこへ行こうかと考えていると、調査隊室に警備隊の人が飛び込んできた。かなり息を切らしているようで、ぜぇぜぇと肩で息をしている。
「何事だ」
「はぁ、はぁ……も、物見より報告!各地にて発生した時空の歪みが、徐々に規模を広げているとのこと!このままでは、ヒスイ全体が歪みに呑まれるのも時間の問題かと!」
「なにっ!?」
じ、時空の歪みが大きくなってるって!?だとしたら、それぞれの集落がある地域は危険なのでは……!
「考える時間すら惜しいな……ショウ!まずは黒曜の原野だ!」
「セキさん!でも……!!」
「言ってる場合じゃねえ!今回の異変を解決するためにも、ギンガ団とおめえの存在は欠かせねえ!だったら、まずは目の前の脅威を取り除くのが先決だ!」
「わたしもセキに賛成だよ!歪みの中の巨大ポケモンがムラにまで押し入ってきたら、それこそどれだけ被害が出るかわからないよ!」
確かにそうだけど……!でも、それはコンゴウ集落とシンジュ集落も同じなのでは……!
「幸いにして、紅蓮の湿地と純白の凍土に出現した巨大ポケモンに動きはねえ……だったら先に、コトブキムラを守るべきだ!旦那、構わねぇよな?」
「うむう、我々としても異論はないが……良いのか?」
「ああ、問題ないぜ。歪みの中のポケモンのことは、ウチの団員から逐次報告を受けている」
「シンジュ団も同じく。動きがあったら、すぐに報告が入るように体制は整っているよ。だから、ショウさんは何も気にしないで、黒曜の原野に行ってきて!」
セキさん、カイさん……二人が本気でそう言っていくれているのが分かる。デンボク団長も悩まし気に顎に手を当てていたが……やがて意を決したように大きく頷いた。
「……あいわかった。ショウ、二人の気遣いを無為にしてはならぬ……が、悠長にしている暇はない。各集落のためにも、可及的速やかに解決せよ」
「了解!」
「では、出で立て!」
その言葉とともに、すぐさま踵を返して調査隊室を飛び出した。目指すは黒曜の原野、マサゴ平原……一体、あそこで何が起こっているというの……?
黒曜の原野の高台ベースにたどり着くと、私はすぐにマサゴ平原が一望できる風抜け道方面の崖を登った。そこで目にしたのは、マサゴ平原一帯を包み込む巨大な時空の歪みだった。……あれが、少しずつ大きくなっていると……確かにそうなれば、いつかはコトブキムラをも覆ってしまうかもしれない。これは、急いで解決したほうがよさそうだ……!
目撃者であるラベン博士とテル先輩の二人とともに、私はマサゴ平原へと向かった。……すると、ちょうど時空の歪みの近くで、見覚えのある姿があった。
「アカイさん!それに、シロちゃんも」
「……おや、ショウか?久しぶりだな」
「お姉ちゃん!久しぶり~!」
アカイさんとシロちゃんは、私がすべてのプレートを集めてムラに戻った時に、ちょうど入れ違いでムラを発ったのだ。ヒスイ地方を見て回る、と言っていたそうだけど……どうやら二人もこの異変が気になるみたい……。
「アカイさん!ご無沙汰なのです!」
「こ、この人がショウが言ってたアカイさんか……」
「ラベン博士も、久しぶりだな。そして、少年とは初めましてか。私がアカイだ。こちらは親類の子のシロ」
「お兄ちゃん、初めまして!」
「ああ、うん……」
「アカイさん。アカイさんも、この時空の歪みが気になるんですか?」
「うん?……ああ、うむ。まぁ、歪みそのものについてはよくわからんが……その中に見知った姿があるとなれば、話は別だろう」
見知った姿……!それじゃあ、やはり……!!
「アカイさんは、歪み内部に出現した巨大ポケモンのことを知ってるんですね?」
「……まあ、そうなるな」
「それなら……」
「その前に、ひとつ……聞いておくことがある。……本気で"アレ"に挑むつもりか?」
"アレ"……挑むつもりか、って……まるで、歪み内部のポケモンを調査することに対して正気を疑っているような言い方だ……。
「もちろんです。でないと、いつかこの時空の歪みが大きくなって、コトブキムラに達してしまうので」
「……まあ、君たちの事情を鑑みればそれも止むなし、だが……。個人的に言わせてもらうならば、命の保証は出来かねる故、引き返すべきだと思うが」
「そんなに危険なポケモンなんですか?」
「危険であることを察した頃には、既に死んでいるだろう……と、言わせてもらう」
あのアカイさんが、険しい表情でこっちを見ている……それだけ、ヤバいポケモンが闊歩しているということなのだろう……。
「……アカイさんの言いたいことは、よくわかりました。けれど、その上で言わせてもらうなら……私は、絶対に行きます。行って、調査して、事態を解決して……私たちが住む場所を守らなければならないので」
「……どうしても、行くのかね」
「行かなければ、ならないんです」
「なにも君である必要性はないと思うがね」
「どうしてそこまでして引きとめようとするんですか」
「無論、命を守るためだ」
「今この場にいる私たちだけが助かってもダメなんです」
「君の言わんとすることも、よくわかるよ」
ダメだ……なんていうか、今日のアカイさんはすごく頑固だ。ああ言えばこう言うとばかりに、私たちをこの場に引きとめようとしてくる。なんとしても、私は時空の歪みの中に入らないといけないのに……!
「いいじゃない。行かせてあげようよ」
「いや、しかしだな……」
そうして押し問答をしていると、シロちゃんもアカイさんの説得に加わってきた。
「どうして?お姉ちゃんの実力は、アカイだって知ってるでしょ?」
「それはもちろんだ。……が、今回の相手はあまりにも違う。下手をすれば、命を落とす危険性だってある」
「お姉ちゃんだって、承知の上でしょ?だったら私たちがこれ以上引き止めるのは、お姉ちゃんの覚悟を馬鹿にしてるってことだと思うな」
「私とて、通してやりたいのはやまやまなんだが……」
「でも、通せないから邪魔するんでしょ?」
「それは、まあ」
「じゃあ敵だね」
「……あっ……いやっ、あの……。……あっ……ちょっ……スーッ……」
……なんか、シロちゃんから信じられないほどの圧を感じる。そして、その圧に圧倒されて段々と語気が弱くなっていくアカイさん。……幼女から圧を掛けられる成人男性とは一体……。
「……はぁ、わかったわかった。ではこうしよう。私とショウでポケモン勝負をする。君が私に勝てば、素直にここを通すとしよう。負けた場合は……まぁ、説明は不要だろう」
「……わかりました」
こうして、時空の歪みの調査をかけて、アカイさんとポケモン勝負をすることになった。……徐々にだけど、確実に大きくなっていく時空の歪みを背景に、私とアカイさんは距離を取って向き合う。
「……思えば、君と勝負をするのは初めてだな。今回はあくまで小手調べだ、それなりのポケモンで戦わせてもらうとしよう」
……アカイさん、本気を出すつもりはないのか。それじゃあ、湖の洞穴で見たドラゴンポケモンや化石ポケモン達は使わないってことかな?
「さあ……始めるとしよう」
アカイさんはボールを取り出すと、不敵な笑みを見せた。
(祖龍様に敵認定されたら)みんな死ぬしかないじゃない!
次回はアカイとの勝負、そして……ヤツらが来た
三番目の調査地は……
-
メイン任務:翠玉の閃電、群青を断つ
-
メイン任務:純白を往く峨々たる巨獣