ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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ガブリアスの暴走に、決着をつけるとき!


激突!断ち斬る刃(ダイケンキ) VS 蹂躙する竜爪(ガブリアス)!!

シロちゃんとのバトルを終えてベースキャンプへ戻ってきた私に届いた急報……それは、突然龍属性エネルギーを纏ったガブリアスが暴走を起こし、黒曜の原野で暴れているという話だった。

私たちは紅蓮の湿地から大急ぎで黒曜の原野の高台ベースへと戻ってきた。高台ベースから見下ろすと、蹄鉄ヶ原方面で赤黒い稲妻が嵐のように渦巻いている様子が確認できた。……あそこに、ガブリアスが……!!

 

「……凄い龍属性エネルギーだ。ここからでもひしひしと感じられるね……」

 

「シロちゃん、わかるの?」

 

「ふふん。アカイにできることなら、私にだってできるもん!」

 

えっへん、と胸を張る様は見目相応で可愛らしい。ただ、後ろにいるキリンはすっかり呆れたようにため息をついているけれど……。

 

「シロさん、龍属性エネルギーとはなんですか?龍、というからには、ドラゴンポケモンとなにか関わりが?」

 

「龍属性ってね、遥か太古の時代から存在が確認されている力なの。古龍種が苦手としている力でもあるよ。……まぁ、キリンみたいに龍属性に強い古龍種もいるけどね」

 

「ヒヒン!」

 

キリンが自慢気に鳴き声をあげた。古龍種か……実際に戦ってみたら、どれくらい強いんだろうか。

 

「太古って、そんな昔から……?」

 

「うん。龍属性は主に古龍種が操る力でもあってね、これってポケモンのタイプとしてのドラゴンタイプに結構近い性質をしているんだ。ドラゴンはドラゴンに弱い……ほら、どこか似てるでしょ?」

 

「た、確かに……」

 

「ここヒスイ地方と私たちの地元の地方……生息するポケモンも、ポケモンの生態もなにもかも違うけど、ドラゴンポケモンだけは共通点が多いね。やっぱり竜種って特別なのかな」

 

「竜種、ですか……。我々がドラゴンポケモンと呼ぶそれらを、アカイさんやシロさんはそう呼ぶのですね」

 

……言われてみればそうだ。アカイさんもシロちゃんも、竜種……ドラゴンポケモンに関してはドラゴン使い以上に強い思い入れがあるみたい。シロちゃんに至っては二戦連続でドラゴン統一パーティだったし。

 

「……私見だけど、ガブリアスは急速に龍属性エネルギーを取り込んだことで制御できずに暴走しているみたい……。龍属性エネルギーって強力な反面、扱いを誤ればかえって自分を傷つける危険な力なんだ。私の地元にね、そうやって自分が操る龍属性エネルギーに蝕まれて暴走してしまったポケモンが実際に二体存在したの」

 

「……参考程度に、聞かせていただいても?」

 

「いいよ、博士さん。

一体はイビルジョー。"恐暴竜"の別名を持つ獣竜種の一種だよ。イビルジョーって代謝が高いせいで非常に食欲旺盛な子でね、いっつもお腹を空かせているの。そのせいで、獲物以外にも同種同士で共食いをすることもあるんだ。そうして捕食や共食いを続けた結果、体内に蓄積された龍属性に耐えられずに蝕まれて暴走状態に陥った個体が誕生することがあるの。

もう一体は"天彗龍"の別名を持つ古龍種、バルファルク。バルファルクは龍気と呼ばれる龍属性エネルギーを操るんだけど……希にこの莫大な龍気のエネルギーを持て余した結果その力に支配され、限りなく暴走に近い状態と化してしまった異常個体が現れることがあるの。

前者は『怒り喰らうイビルジョー』、後者は『奇しき赫耀のバルファルク』って呼ばれてる。どっちも危険すぎて、出会ったら倒すか逃げるかの二択を即断即決しなければならないほどなの」

 

「え……古龍種って、龍属性エネルギーを操る種族なんだよね?それなのに、逆に支配されちゃうの!?」

 

「……龍属性って、そういう部分も含めて未だに謎の多い属性なんだ。私の地元でも専門の研究機関なんかが創設されたりしてるけど……わかっていることはほとんどないんだよね……。

けど、古代から存在する強力なエネルギーだからね。太古より悠久の時を生き続け、あらゆる生態系から逸脱した存在である古龍種とも密接な関係でもあるし、世界的にも重要な立場に位置する生物に、龍の存在は欠かせないのかもね」

 

……もしかして。このヒスイ地方も含めて、伝説のポケモンにドラゴンポケモンが多いのは、そういうことなの?アルセウスが生み出したディアルガ、パルキア、ギラティナもみんなドラゴンタイプだし、もしかしたらアルセウスにも龍の因子が含まれているのかもしれない。

遥か古代から存在する龍属性……アカイさんたちが異世界人である可能性を加味しても、龍という存在は全世界共通の生物なのかもしれない……。

 

「なまじ、ガブリアスはドラゴンポケモン……竜種だから、龍属性を受け入れられてしまったのかも。けど、当たり前だけどヒスイ地方には龍属性みたいな極端に強力なドラゴンパワーって存在しないから、いきなり与えられた強すぎる力を制御できていないんだよ。どうしてそんな事態になったかは……まぁ、お姉ちゃんのポケモンだから、きっと理由は一つだよね」

 

「それって……」

 

「ガブリアスは、強くなりたかったんだと思う。ほかならぬ、お姉ちゃんのために」

 

「……!!」

 

「うーん……多分だけど、オドガロン亜種かな?お姉ちゃんが捕獲したポケモンの中で龍属性エネルギーを明確に操っているのって、多分その子だけだよね?どっちが先かまではわからないけど、どっちかが協力を申し出たことでオドガロン亜種がガブリアスに自分の龍属性エネルギーを分けたんだと思う」

 

ガブリアス……そこまでして強くなりたかったの?ガブリアスの独断は褒められたものじゃないけど、未知のエネルギーに手を出してまで強くなりたいと思い悩んでいただろうことに気付けなかった、私の落ち度だな……。シロちゃんとのバトル前に入れ替えのことを相談した時に上の空だったのは、きっとこのことだったんだ……。

……それはそれとして、"おや"抜きで勝手に話を進めたことについてはしっかりお説教しないと。

 

「行こうよ、お姉ちゃん。このままじゃガブリアス、取り返しがつかなくなっちゃう……」

 

「……うん!行こう!!」

 

シロちゃんに促され、私たちは早速蹄鉄ヶ原へ向かった。途中、逃げていくポケモンたちと何体もすれ違った。そして現場に到着すると……そこは至る所が穴ボコだらけで、本来の蹄鉄ヶ原が見る影もないほどに破壊し尽くされていた……。

 

「これはひどい……これが、龍属性の恐るべき力ですか……」

 

「……!ショウ、あそこ!!」

 

先輩が指をさした先には、赤黒い稲妻による竜巻が起こっていた。その中心に見える、見覚えのある影……!

 

「ガブリアス!!」

 

「…………」

 

私が呼びかけると、ガブリアスはゆっくりとこちらに振り返った。龍属性エネルギーによる渦巻きで姿が見えにくいけど、間違いなくガブリアスだ……!

 

「生半可なポケモンじゃあ、きっと勝てない……お姉ちゃん、ここは特殊個体のポケモンで挑むべきだと思う」

 

「……そうだね、ちょうど同じことを考えていたよ……!ミミロップ!」

 

「……!ミミ……!?」

 

私がミミロップを繰り出せば、ミミロップは目の前のガブリアスに酷く驚いたようで短く声を上げていた。

 

「ミミロップ!ガブリアスは今、酷い暴走状態になっている……ガブリアスをボールに戻すために、動きを抑えて欲しいんだ!」

 

「……ミミィ!!」

 

「ありがとう……それじゃあ、行くよ……!」

 

「ガブアアアアァァァッ!!」

 

ガブリアスが大きく吠えると、龍属性の渦が消滅した。けど、ガブリアスの目は明らかに正気じゃない……!なんとかして、目を覚まさせないと!

 

「ガバアアアアッ!!」

 

あれは、ドラゴンクロー!心なしか、爪が纏う龍のオーラが大きい……威力が上がっているかもしれない……!!

 

「りゅうのはどう!」

 

「ミミー!」

 

ミミロップが放ったりゅうのはどうが、まっすぐこちらに向かってくるガブリアスに迫る!

 

「ガアアアア!」

 

……だが、ガブリアスはドラゴンクローを一閃し、りゅうのはどうをあっさりと切り捨てた!?

 

「くっ……はどうだん!(上に撃って!その後に素早くあくのはどうを!!)」

 

「ミッミ!」

 

ミミロップは真上に向かってはどうだんを放つと、すぐさまガブリアスに向けて早業あくのはどうを放った。ガブリアスはかなりこちらに接近していたけど、間一髪間に合った!ガブリアスはあくのはどうを防御し、わずかに後退させられた。そのまま再び突撃してこようとした……その時だ。真上に撃ったはどうだんが時間差でガブリアスに直撃!これは効いたはず……!

 

「ガアアァァッ……!!」

 

「なっ……!?」

 

「ミ……!」

 

ガブリアスは確かにダメージを負った……けど、まるで意に介さないかのようにガブリアスが再び突撃してきた!

 

「なんだ、効いていないのか!?」

 

「ううん……あれは痛みに鈍くなってるんだ。龍属性による暴走で、破壊衝動が極度に刺激されすぎて、ほかの感覚がほとんど効いてないんだと思う」

 

そんなっ……それじゃあ、こっちがしっかり様子を見て戦わないと勢い余ってガブリアスを殺してしまいかねない……!

 

「(ミミロップ、加減していこう。けど、下手な手加減はかえってこっちが危険だから、波導でガブリアスの様子を見てあげて)」

 

「ミミ!」

 

「(お願いね)みずのはどう!」

 

「ミミミ!」

 

向かってくるガブリアスに向けて放ったみずのはどうは、ガブリアスのアイアンヘッドでそのまま突破された……!

 

「ミ……!!」

 

「ミミロップ!平気!?」

 

「ミミ!」

 

技は命中したけど、ミミロップはまだまだ大丈夫だ。

 

「はどうだん!」

 

「ミッミィ!」

 

「ガバアァッ!!」

 

ミミロップがはどうだんを撃ち、ガブリアスがアクアテールで迎撃した。はどうだんが爆破しガブリアスが煙に包まれた……ここだ!

 

「力強く、りゅうのはどう!!」

 

「ミミミ……」

 

「ガブアアアアァァッ!!」

 

「ミッミイィ!!」

 

「ガバァッ!?」

 

力業りゅうのはどうが直撃!ガブリアスは吹っ飛んで盛大に倒れた……今だ!!

 

「戻って!ガブリア――」

 

「ガ、ガ……ガアアアアアアッ!!」

 

……!!ま、またガブリアスから膨大な龍属性エネルギーが……!どこにこんな力が……!?

 

「……変ね」

 

「……?えっと、シロちゃん?一体何が変なんだ?」

 

「ガブリアスが持つ龍属性エネルギーよ。オドガロン亜種から受け取ったにしては、余りにも量が多すぎる……。

最初からこれだけの量の龍属性エネルギーを与えられたなら、ガブリアスはとっくに死んでいる……。それじゃあ、一体どこからこれだけのエネルギーが……?」

 

「……む、遅かったか」

 

先輩に尋ねられたシロちゃんがブツブツと何かを呟いていると、さらに別の声が加わった。この声は、アカイさん!

 

「アカイ、わかるのね?」

 

「無論。……君は、人と竜から離れて随分と久しいからな、この現象がなんなのかがすぐに思い当たらないのも無理はない。……だから、そう気落ちすることはないぞ」

 

「む……べ、別に気落ちなんて……」

 

「それに、こういうことは私の役割だ。君は君の役割を果たすといい、シロ」

 

「……ありがとう」

 

「礼には及ばんよ」

 

シロちゃんがアカイさんに励まされてる……?"人と竜から離れて久しい"って、シロちゃんは隔離でもされていたの……?

 

「さて、久しぶりだなショウ。君のガブリアスが暴走していると聞いて、私も私で準備をしてきたんだが……少々、遅かったようだな……」

 

「アカイさん……?」

 

「では、状況を説明しよう。先ほど、シロはガブリアスが保有する龍属性エネルギーの量に対して違和感を覚えていた。あれだけの量……本来なら、力に飲まれて死亡していてもおかしくはない量だ。だが、ガブリアスは龍属性エネルギーを放出しながらも生き続けている。それはなぜか?

答えは簡単だ。……今、目に見えている龍属性エネルギーはすべて、ガブリアス自身が生成しているものだからだ」

 

「えぇっ!?」

 

私は思わず振り返ってしまった。だって、いくら力を与えられたからってそこまで成長するなんて誰も思わないじゃん!

 

「オドガロンから与えられたエネルギー量は、それほど大したものではないだろう。……だが、竜種であるガブリアスは暴走しつつも本能で龍属性を理解し、その力を生み出し操る術を得た。だが、今度は自身が生成し始めた龍属性に蝕まれ始めたのだ。それが、今の暴走につながった……と、私が考えうる限りではこんなところか」

 

ガブリアス……あなたって、本当にすごい子なんだね。あなたは私の誇りだよ、ガブリアス。だから、絶対に助けてあげるからね……!

 

「……気をつけろ、ショウ。どうやらガブリアスは龍属性のエネルギーと、その生成と操作の術を得たことによって、更なる限界を超えるようだぞ……!」

 

「え……?」

 

「ガアアアアアアアッ!!」

 

私が視線を戻すと、いつの間にか立ち上がっていたガブリアスがずっと放出していた龍属性エネルギーを、自身の体内へと還元していた。すべての龍属性エネルギーがガブリアスの体内に収まると、ガブリアスが光に包まれた……こ、この現象は!

 

「まさか、メガシンカ……!?」

 

「いや、違う。……もっとタチの悪いものだ……!」

 

アカイさんが険しい顔のまま否定した……そうして、ガブリアスに変化が起きた。

 

元々3m弱あった高さが、一回り大きくなって4m弱に。

腕が太くなり、その影響か爪が一本から二本へと増え。

尻尾も長さを増し、先端の方では側面から大きな刺が片側二本ずつ生えた。

背びれも大きく巨大化し真っ二つに裂けて、まるで飛行機の翼のように。

 

雄々しい……というより、禍々しい変化を遂げたガブリアスが、姿を現した。

 

「ガア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!!!!」

 

さらに激しく龍属性エネルギーを放出しつつ、黒い風を全身に纏い始めた。……な、なに?あの風……すごく嫌な予感がする……。

 

「グルルル……ガッ!ブアアアァァァッ!!」

 

突然、ガブリアスが大きく咆吼した!それから、物凄い速さで空高く飛び上がってしまった!

 

「え、どこに……?」

 

「……!全員、今すぐに伏せろぉっ!!

 

「……っ!!(ミミロップ、回避!!)」

 

私がガブリアスの行方を目で追っていると、アカイさんが信じられないほどの大声で警告を発した!私も反射的に後方に下がりつつ、波導を通じてミミロップに指示を出す。ミミロップはすでに波導でガブリアスの気配を追っている……きっと避けられるはずだ!

 

「ヌメルゴン、ドダイトス!」

 

「ヌメラ!」

 

「ドダァイ!」

 

「命令する、肉壁となれ。お前たちの重量と耐久力が必要だ」

 

「ヌメ!」

 

「ドダ!」

 

「全員、こっちだ!」

 

アカイさんの指示で、ヒスイのヌメルゴンとドダイトスが身を寄せ合って壁を作ってくれた。その後、全員でその壁の後ろへと集まる。

 

「アカイさん!なんで急に!?」

 

「あのガブリアスの攻撃……私の考えが正しければ、かなり広い範囲を巻き込みかねない大技だ。その攻撃範囲内に、おそらく我々も巻き添えを食う。そのための用心だ、しておくに越したことはない」

 

「い、一体どんな技が……」

 

「来るぞっ……!!」

 

空に一瞬、赤い光が見えた……と、次の瞬間!!

 

「ガブアアアアアァァァァッ!!」

 

物凄い勢いで、ガブリアスが突撃してきた!まるで空から降ってくる流星のような勢いでこちらに向かって突撃をしてきたガブリアスは、そのまま進行方向にあるものすべてを薙ぎ倒しながら飛んでいった!?

幸いにして、ガブリアスは私たちの頭上を越えていった……よかった、直撃はしなかったみたい。

 

「ミミロップ!」

 

「ミミィ!」

 

よしっ、ミミロップもガブリアスの突撃を回避――

 

「馬鹿者っ!まだ立つな、伏せろ!!」

 

「――え」

 

アカイさんの怒号が聞こえて、私が思わず振り返った……その時。

 

 

ビュゴオオオオオオォォォォォッ!!

 

 

「きゃああああっ!?」

 

「くっ……!」

 

ぼうふうの技が可愛く思えるような、とんでもなく強烈な突風が襲いかかってきた!私は危うく吹き飛ばされそうになったが、それより早くアカイさんが私を引きずり倒すように引っ張ってくれたおかげで事なきを得た。ただ……。

 

「あっ、モンスターボール……!」

 

ガブリアスを格納していたモンスターボールが、突風で吹き飛ばされてしまった。さらに強烈な風圧に巻き込まれてしまったせいか、一瞬で木っ端微塵に砕け散ってしまった……。

 

「そんなっ、モンスターボールが……!」

 

「命には替えられん!それよりも、君のミミロップの心配もするんだ!」

 

「そうだ、ミミロップ……!」

 

私は目を閉じて集中し、ミミロップに波導を送る。ミミロップは……私たちの真上!?あの風に吹き飛ばされたんだ!

長く続いた突風が止むと、空から物凄い勢いで何かが落下してきた……ミミロップだ!私はすぐに身を潜めていたポケモンたちの影から飛び出すと、そのままミミロップの下まで駆け寄った。

 

「ミミロップ!大丈夫!?」

 

「ミ……ミミィ~……」

 

ミミロップはすっかり戦闘不能になっている。……あんな強烈な突風、とてもじゃないけど回避できないよ……。私がミミロップをボールに戻すと同時に、再び何かが地面に降ってきた。それは、先ほどの突風を引き起こした張本人……ガブリアスだった。

 

「ガアアァァァ……」

 

「なんて技なの……辺り一帯を、悉く薙ぎ倒して……」

 

「凄まじい龍属性エネルギーだ……さらにそれを、体当たりのみにすべて注いだ結果が、これか。さらに、体当たりが直撃せずとも遅れて発生する龍風圧によって、全てを蹂躙する……形態が変化したこともあわせて、これは紛う事無き極み個体。

名付けるならば、『極み蹂躙するガブリアス』。

先ほどの大技は、『アブソリュートドラゴンストーム』と呼ぶべきだな」

 

極み蹂躙するガブリアス』……確かに、アブソリュートドラゴンストームの一撃は、文字通り蹂躙と言っても過言ではない。さらに、ガブリアスの全身を覆う黒い風……あれが、先ほどアカイさんが言っていた龍風圧なのかな……?

 

「ダイケンキ!」

 

「……!」

 

ミミロップの次に出したのは、ダイケンキ。ガブリアスが極み個体へと成長したなら、同じ極み個体でなければ対抗できないだろうと判断してのことだ。

 

「ショウ、極み個体と化したガブリアスの力がどれほどのものかは未知数だ。だが、間違いなく物理攻撃能力が飛躍的に向上していることは、あの形態を見ればわかるだろう。背中の背びれも……あれでは、鰭というより翼だな。空を飛ぶ能力もあると見ていたほうがいい。気をつけるのだぞ」

 

「はい!」

 

アカイさんはヌメルゴンとドダイトスをボールに戻しながら、私にヒントを出してくれた。ダイケンキもかつての戦友としてではなく、立ちはだかる強敵として、ガブリアスを見据えている。……油断しないようにしないと。

 

「行くよ、ダイケンキ!ガブリアス……必ずあなたを救ってみせる!」

 

「……!!」

 

「ガバアアアアアァァァッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【ASGORE】~Undertale~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガアアアアアアッ!!」

 

ガブリアスは再びドラゴンクローを繰り出してきた!

 

「つばめがえし!」

 

「!」

 

ダイケンキに指示を出し、攻撃を迎撃する。ドラゴンクローの激しい猛攻を、ダイケンキは冷静にアシガタナで捌いている!

 

「ガブリアスッ!正気に戻って!!」

 

「……ッ」

 

私がガブリアスにそう呼びかけると、僅かに動きが鈍った……?そして、その隙を付いたダイケンキがつばめがえしを命中させた!ガブリアスはひるんでいる……!

 

「モンスターボール!」

 

以前のモンスターボールが壊れてしまったので、新たにモンスターボールを投げる……が。

 

「ガブアァッ!!」

 

ガブリアスから龍風圧が放たれると、モンスターボールが弾かれてしまった……!

 

「ショウ。龍風圧は古龍が操る強力な風だ。その風は近づく者を吹き飛ばし、弓や弾丸でさえ弾き返すほどの力がある……まずは、あの龍風圧を解除しなければならない」

 

「どうすれば!?」

 

「状態異常だ。件の古龍が操る龍風圧も、その古龍を毒状態にすることで龍風圧を解除することができた……理屈が同じならば、毒状態でやれるはずだ。さらに言えば、その極み個体のダイケンキならば、龍風圧を断ち斬ることができるはずだ。一瞬とはいえ、隙を作れるだろう」

 

「わかりました!!」

 

「……」コクリ

 

それならラッキーだ!ダイケンキはどくづきの技が使える……それに、ダイケンキの太刀筋ならば龍風圧も斬れるそうな……まずはどくづきで、毒状態にできれば……!

 

「行けるね、ダイケンキ?」

 

「……!」

 

「よしっ、行けっ!!」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……保険をかけておくべきか)テル少年」

 

「え……あ、はい!」

 

「君はクラフトが得意と聞いた。私が持ち込んだこの鉱石を使って、モンスターボールを作れないかね?」

 

「この石は……?」

 

「この状況を打破するうえで、決して欠くことのできない代物だ。君に預ける……彼女の力になって欲しい」

 

「おれが、ショウの力に……」

 

「英雄とは、決して一人でなれるものではない。英雄とて、最初から英雄だったわけでもなければ、英雄然とした力があったわけではない。……君のように、支えてくれる者がいるから、英雄はどのような脅威であろうと立ち向かえるのだ」

 

「……!」

 

「だから、君に預けると言った。

龍の力を封じ、その効力を抑制する力を持った鉱石……滅龍石をな」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイケンキとガブリアスの戦いは、一進一退の攻防を極めていた。ダイケンキは何度も何度も龍風圧を切り裂いて隙を探るけど、ガブリアスもまた抵抗が激しく、容易にどくづきを打たせてくれない……!

ダイケンキが頭上からシザークロスを放つが、ガブリアスはアイアンヘッドでこれを受け止めるとそのままダイケンキを押し返した!なんなく着地を決めたダイケンキに、ガブリアスは容赦なくアクアテールで襲いかかる!

 

「素早く、ひけん・ちえなみ!」

 

「!!」

 

「ガッ……!」

 

攻撃を回避し、さらに早業ひけん・ちえなみを命中させた!ガブリアスに破片が突き刺さり、痛みでダメージを与えるとともに動きを封じる!

……!!また、龍風圧が!

 

「切り裂け!」

 

「……」

 

ダイケンキの一太刀で、風圧が途切れた……今だ!

 

「力強く、どくづき!!」

 

「!!!!」

 

「ガアァ……!ガブアアアァ!!」

 

「ルシッ……!」

 

よっし!どくづきが命中!!……ただ、反撃のドラゴンクローで、こっちも結構なダメージをもらってしまった。ダイケンキはまだまだ戦えそうだけど……いや、待って。

 

「……ッ!!」

 

ガブリアスから、龍風圧が完全に消滅した……!それに、ガブリアスの体が僅かに紫に光っている……毒状態だ!

 

「一気に攻めて!つばめがえし!!」

 

「!!」

 

「ガバアアアァッ!」

 

……!ガブリアスもつばめがえし!?つばめがえし同士の激しい応酬が始まった!

ダイケンキが懐に飛び込み斬り上げるが、ガブリアスも上から爪を振り下ろしぶつかり合う。一瞬、ダイケンキの動きが止まったのを見て、ガブリアスが反対の腕の爪を使ってダイケンキを逆に斬り上げた!宙に打ち上げられたダイケンキ……それを、翼と化した背びれを広げて追撃するガブリアスだが、咄嗟にダイケンキがアシガタナの一本をガブリアスに投げつけた。それを回避したことで僅かに体勢が崩れたガブリアスに、今度はダイケンキが一撃を加える。

僅かに吹っ飛ぶも、すぐに空中で立て直したガブリアスはダイケンキに突貫した!体当りされたダイケンキに爪を振り下ろすガブリアスだが、ダイケンキも負けじともう一本のアシガタナを振るってこの一撃を相殺し、二体は揃って地上へと着地した。

 

「ガバアァ……!!」

 

「ル……!」

 

息もつかせぬって、こういう事を言うんだね……!二体がぶつかり合ってから地上に戻ってくるまで、無意識に呼吸が止まってた。……どうする、毒状態もいつ自然回復するかはわからない……早いところ弱らせるか正気に戻して、ボールに入れないと……!

 

「……間に合ったか」

 

「(……?)」

 

後ろでアカイさんが何か言ってる……間に合った?何が?

 

「できましたよ!これでいいんですか!?」

 

「……あぁ、上出来だ。さすがはクラフト名人だ……ショウ!」

 

アカイさんが呼んでる……?私はダイケンキとアイコンタクトをしてから、アカイさん達の下まで後退した。

 

「どうしました?」

 

「テル少年が、ガブリアス救出に最適な道具を作ってくれたぞ」

 

「え?」

 

「……これ、なんだけど」

 

そう言ってテル先輩が渡してきたのは……紫色のモンスターボール?この色合い、まるで……いや、でも、まさか……?

 

「あの、これは……?」

 

「……我が地元では、時として古龍が人類を脅かす障害となり立ち塞がる。そんな時、人類は龍属性の武具を携え、その武器に宿るとある力を用いて古龍に対抗してきた。その力とは龍封力。特定の古龍種の力を封じ込み、抑制する力のことだ」

 

「龍封力……」

 

「そして、その龍封力を持つ鉱石、滅龍石を材料にクラフトして作り上げたモンスターボール。……龍とはあらゆる生物の頂点に位置する者。それらの生物の力を押さえ込み格納する力をもつこのボールは、理論上は全てのポケモンを捕らえることができる(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

名付けるなら……マスターボール、がいいだろうな」

 

「マスターボール……!」

 

まさか、このヒスイ地方でマスターボールを見るなんて……!!

正直マスターボールなんてお父さんの部屋で山積みになっていたのを腐るほど見てきたから見飽きてたんだけど……ぼんぐり製のマスターボールなんて超レアだ!記憶に一生焼き付けておこう!

……お父さん、「運だけはいいんだよなぁ」ってよく言ってたけど……その運をバトルに持ち込むのは本当にズルだと思います。

 

「このマスターボールならば、ガブリアスの龍属性エネルギーを抑え、正気に戻せるはずだ。さっそく捕獲してみたまえ」

 

「ありがとうございます、アカイさん!テル先輩!」

 

「お、おう!絶対にガブリアスを助けるんだぞ、ショウ!」

 

「はい!」

 

テル先輩からも激励され、私はますます体に力が漲ってきた。

 

「ダイケンキ!」

 

「!!」

 

「ガブアアアアアァァァッ!!」

 

……!!ガブリアスの全身から、また膨大な龍属性エネルギーが……まさか、またアブソリュートドラゴンストームを使うつもり!?

 

「ふむ……。本来大技は一度使うとしっかり休む必要があるんだが……どうやら龍属性エネルギーのパワーを利用して、強引に二発目を放つつもりらしい」

 

……!ならば、ここで決着をつける!!

 

「ダイケンキ、奥義装填!!」

 

「!!!!」

 

「ガバアアアアッ!!」

 

ガブリアスが龍属性エネルギーを纏うとともに、再び大空へ飛び上がった!ダイケンキも、第三のカタナを抜刀し、水の力を収束している。チャンスは一度。技の威力からして、競り合いに負ければそのまま敗北に直結する!!

……空に一瞬、赤い光が見えた……今だ!

 

「ぜっけん・はとう!!」

 

「ガッブアアアアアアァァッ!!」

 

「ルッシャアアアアアァァッ!!」

 

水の巨剣と、龍の竜巻が激突する!力は……完全な互角だ!!どちらも押されず、しかし押しきれない……!完全な五分と五分……これが、極み個体の力……!!

 

「ガッ……バッ、アアアアア!!

 

「ルッ……シャ、アアアアア!!

 

力の拮抗はついに限界を迎え、激しい大爆発を起こした!!私はその強烈な爆風に耐えながら、決して目を逸らさず状況を見守る。ダイケンキ……ガブリアス……!!

煙が晴れてきた。……!

 

「ガブ……ガブ……!」

 

「ルシ……ルシ……!」

 

二体とも、立ってる!!肩で息をしているけれど、二体とも健在だ!!ガブリアスの龍風圧も、今は解除されている……これなら!

 

「よし……マスター――」

 

「ルシャアアッ!!」

 

「ガブァアアッ!!」

 

「ちょ」

 

私がマスターボールを投げようとした直前、ダイケンキとガブリアスがお互いに猛烈な勢いで走り出すと……そのまま頭をぶつけ合った!?お互いに頭突きを繰り出した状態になった二体……やがて飛びかかったダイケンキが地面に降りると……そのまま二体とも、倒れてしまった。……両者戦闘不能、かな……?

 

「……えいっ」

 

私は倒れているガブリアスに向かってマスターボールを投げた。マスターボールはガブリアスを格納すると、ほとんど抵抗なく捕獲できた。

 

「……最後のアレ、なんだったんだ?」

 

「さてね……ただ、お互いに勝つべき相手が健在な状態で立っているとわかれば、何もしないわけにはいかないだろう?まして、あの二体はお互いに好敵手だと聞く。考えるよりも先に、体が動いたのだろう。……ククッ。なかなかどうして、熱い心を持っているじゃないか」

 

「あぁ、なるほど……」

 

そんな話を背中越しに聞きながら、私はガブリアスを繰り出した。その後、二体とも回復をさせてからガブリアスに声をかけた。

 

「ガブリアス、大丈夫……?私のこと、わかる……?」

 

「……ガブ?」

 

なぜか首を傾げるガブリアス……えっ、そんな、まさか……!?

 

「ガブリアス……まさか、記憶が……?」

 

「????」

 

「そ、そんな……!!」

 

わ、私のせいでガブリアスまで……!ごめんなさい、ガブリアス、本当にゴメ――

 

「(……プククッ)」

 

「おい今笑ったな?おい?」

 

「(ギクッ!!)」

 

私は見逃さなかった……ガブリアスが一瞬、吹き出したその瞬間を!このっ、このっ……!

 

「"おや"をおちょくるんじゃありません!ガブリアス、正座!!」

 

「ガバッ!?ガブガブ……」

 

「うるさい!正座ァ!!」

 

「ガバアァッ!?」

 

「……フッ」

 

私はガブリアスに無理やり正座をさせてお説教を始めた。極み個体化してからめっきり笑わなくなったダイケンキがすぐ後ろで小さく笑っているけど、そんなことは些細である。

 

「ショウ、ひとまずはその辺にしておけ」

 

「なんでですか、アカイさん。私はガブリアスに……」

 

「ムラに共犯者がいるだろうから、どうせならまとめてお説教をしてはいかがか?」

 

「それもそうですねそうしましょう」

 

そうだった、まだムラにオドガロンがいた。どうせ叱るなら二体同時の方が手間が省ける。さすがはアカイさん。

 

「ほら、帰るよダイケンキ、ガブリアス。ボールに戻ってね」

 

「ガブゥ……」

 

「ルーシア」

 

「ガバァッ!!」

 

「正座する?」

 

「ガッ!?……ガブ……」

 

ガブリアスは「やめときゃよかった」と後悔するようにため息をついている……そのすぐ横でダイケンキが小さく鳴いた。……音的に「バーカ」と言ったようで、ガブリアスが直ぐに怒り出した。けど、正座を持ち出したら一瞬でおとなしくなった。

……あぁ、よかった。いつものガブリアスだ。ダイケンキとのやり取りを見ていると、それがものすごく実感できる。

 

「良かったな、ショウ!」

 

「ガブリアスまで極み個体に……また新しく図鑑を作り直さなければいけませんね!」

 

「いやはや、見事なものだ。ガブリアスも、新たな力を無事に得られて良かったよ」

 

「やったねお姉ちゃん!ガブリアス!」

 

みんなも、口々にガブリアスの無事を喜んでくれている。

 

「おかえり、ガブリアス」

 

「ガッブアァ!」

 

私がそう声をかければ、嬉しそうに鳴いてくれたガブリアス。……本当に、よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コトブキムラへと戻る彼らを見送った二人……否、二頭は、彼らの姿が見えなくなってからようやく口を開いた。

 

「それにしても、今回の件は想定外だったな。さすがに祖といえど、この展開は読めなかったか?」

 

「当たり前でしょう。……けど、ポケモンがモンスターの力を取り込めたということは、ある意味ポケモンとモンハンの世界が並行世界であるということの証明になったわね」

 

「こちらとしては、良くも悪くも誤算だったがな」

 

「最初に生まれたのがアルセウスかミラルーツかの違いに過ぎないわ。誤算ではあったけれど、誤差の範囲で済んだ。……それより、アノ子は?」

 

「……状況は芳しくない。引き続き監視はするが……こちらが終わる頃には、アルセウスも限界だろう」

 

「そう……一刻を争うことになりそうね。頑張ってちょうだいね、ショウ。英雄とは、当人の望む望まぬに限らず世界が求めるもの……そして、この世界はまさに英雄を求めている。もしも英雄が現れるならば、それは……」

 

白く小さな少女は……その幼さに似合わぬ妖艶な笑みを浮かべた。

 

 

 

 




なんとかなって良かったですね。
最後のガブリアスの雰囲気ぶち壊しギャグは、ガブリアスなりにショウちゃんを気遣った結果でございます。まあ、ちょっとタチが悪かったせいで叱られちゃいましたがw
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