「あれ、ショウちゃんサイドの日常回はいずこ……?」と。
掲示板回でギャグやったりわちゃわちゃしたりと日常感はあるけど、ショウちゃんサイドでそういう日常回がないことに気がついた。大抵は導入回だったりバトル回ばかりだし……。
なのでショウちゃんサイドで日常回です!
ギンガ団調査隊隊員、ショウの朝は早い。
目を覚ました彼女がまず最初にすることは、隣の部屋で眠っている異邦人の様子見である。静かに扉を開けて、中の様子を伺う。布団に寝かせられている男性は、規則正しく呼吸をしながら眠り続けている。体の傷はほとんどが古傷で、致命傷などはなし。身につけていた武具などは、鎧は非常に硬くとてもではないが人の手で傷つけることはできないと見える。武器である刀剣に関しても、切れ味鋭く触れたそばからモノが斬れていくほどである。
ラベン博士が特に注目したのはこの刀剣で、この刀剣にはオドガロン亜種や極みガブリアスが持つ龍属性エネルギーと同じエネルギーが込められていることが判明したのだ。現在、刀剣は貴重な研究資料として大切に保管しているとのこと。
「(まぁ、持ち主が目覚めたら返すんだろうけど)」
先の発見を受けて、ショウが気にかけているのは「武器に属性が込められている」という点だ。
ポケモンたちにはタイプ、巨大ポケモンには更に体質という形で固有のタイプ……即ち属性を持っている。そこへ来て、フェアリーの泉を訪ねた際にアカイから聞いた「ポケモンを狩り、素材を武具に加工した」という話……彼が持つ刀剣に備わった龍属性も、元はポケモンのものだと思うと、少々複雑であった。
「(生きるためには必要だったんだろうけど……といっても、生きるためにポケモンを食べた私が言えたことではないか)」
実はショウは、今も出かけてはジンオウガたちとともに狩りに勤しみ、内緒でポケモンを食す生活を送っていた。ジンオウガたちも今の生活には不自由していないが、時折狩りをしたがるような素振りを見せることがあり、それに合わせてショウが外へ連れ出して狩りをさせていた。ショウはそのおこぼれを預かっているようなものである。
部屋を辞して、その足で放牧場へと向かう。放牧場に着けば、牧場主のオハギが声をかけてくれた。
「あら、ショウ!ポケモンを預けていくかい?」
「いえ、ジンオウガたちの様子を見たくて」
「あぁ、そうだったのかい!そういえば、今朝も朝早くからラベン博士が訪ねてきたねぇ。……ショウのガブリアス、すっかり姿が変わっちゃってるけど大丈夫なのかい?」
「えぇ、大丈夫です。ただ、ひときわ強い個体へと成長しただけですから」
「そうなんだね。ふふっ、こうしてみるとポケモンって本当に不思議な生き物だよねぇ。ガブリアスのようにさらに姿が変わるポケモンもいれば、ジンオウガたちみたいにバカでっかいポケモンだっているんだから」
「本当、そうですね」
改めてオハギに通してもらい、ショウは放牧場のさらに奥まった場所へ向かっていく。ちょうどそこでは、ショウがよく連れ歩くポケモンたちに加え、これまで捕まえた巨大ポケモンたちが集められていた。
少し歩くと、ラベン博士が極みガブリアスを調べていた。オドガロン亜種もともにいることから、龍属性エネルギーの調査をしているようだった。
「博士、おはようございます」
「おぉ、ショウくん!おはようなのです!」
「ガバァ!」
「オドルル」
「うん、ガブリアスとオドガロンもおはよう」
ガブリアスとオドガロン亜種については、暴走事件の後ムラに帰って早々に説教をした少しばかり脅かしすぎたか、と思い返すショウだが、ガブリアスの命に関わりかねないことはアカイたちから聞かされていたので改めて妥当だったか、と考える。
『さて……ガブリアス、オドガロン、覚悟はいい?』
『サーナ』
『クシー』
『キッス』
『フィアー』
『『!?!?!?!?』』((;゚Д゚)ガクガクブルブル
ガブリアスは強制的に正座させ、オドガロン亜種はすぐ隣で伏せをさせ、さらに逃げないように四方をフェアリーポケモンで包囲してから、あの時の暴走事件がいかに危険なことだったか、下手をすればガブリアスの命に関わる危険性もあったことも含めて、一、二時間は説教をした。そして最後に「今後は"おや"への相談無しに勝手なことをしない」という約束を取り付けて、ひとまずは決着がついた。
「(大丈夫。むしろあれは必要なことだ、問題ない)……?ジンオウガたちは?」
「ホロロ」
ショウがジンオウガたちを探していると、ホロロホルルが飛んできた。地面に降り立ってショウの方へ近づいて来ると、そのままズイッ、と頭を突き出す。
「あはは、はいはい」
ショウはホロロホルルが望むまま、そのまま頭を撫で始めた。手懐けてみると一番人懐っこくなったホロロホルルは老若男女問わず人気があり、最近では様子を見に放牧場まで足繁く通う住人が増えたほどだ。
人気、と考えたところで、ショウはぐるりとあたりを見渡した。
「……最近、オドガロンたちを見に来る村人が増えましたね」
「コトブキムラのみんなが、彼らを受け入れてくれているという確かな証なのです。喜ばしいですね」
「ふふっ……それもそうですね」
辺りを見渡した際、面白い光景がいくつか見えた。ゴシャハギが持ち前の氷の力で刃を形成すると、無造作に木を次々と切り倒してはドスジャギィたちに放牧場の外へと運ばせていた。どうやら整地をしているらしい。
あと、外に運び出された木はそのまま建築隊に回収されていた。ちゃんとWin-Winの関係を築けているようで何よりである。ショウはひと安心した。
「(あっちは男性陣か。やっぱりディノバルドの尻尾って、男の人からするとロマンなのかな)」
ディノバルドの様子を観察しているのは、若者を中心とした男性陣だ。全員が全員、ディノバルドの尻尾に注目をしている。鎧の男性が身につけていた武器もそうだが、男性陣には刀剣類がブームとなっている。ディノバルドの尻尾のような、力強くも美しく、斬れ味抜群の刃物作りが話題を呼んでいるのだ。その参考資料として、ディノバルドの尻尾はまさに適任なのである。
ディノバルドの牙をイメージした砥石も近々製作予定らしく、刀剣ブームがますます賑わいそうだ。
すると今度は、女性の黄色い悲鳴が聞こえた。そちらへ目を向けたショウは、そこにいるポケモン……タマミツネを見て悲鳴の意味にすぐ納得した。
「(タマミツネの女性人気、予想よりもすごい。放牧場に馴染むのも早かったし、元々穏やかで温和なイメージがある分、ムラの人たちからも早くに受け入れてもらえた)」
タマミツネを放牧場に放ち、ムラの人々に説明をしたのだが……誰もがタマミツネの優美さに見蕩れて、ほとんどの人がショウの話をスルーするという事態が起きたのだ。
呉服屋のシャロンに至ってはタマミツネのあまりの美しさにテンションが天元突破してしまい、奇声を上げながら新衣装に着手し始めたほどだ。結果、タマミツネをイメージした着物が一大ブームとなり、今やほとんどの女性が身につけている。
しかし、なんといっても衝撃的だったのは……。
「あぁ……タマミツネ、本当に綺麗なポケモンよね~……」
「ほんとほんと。私なんてでっかい花が咲いてるのかと思ったわ!」
「しかも、あれでいてタマミツネは……」
「うんうん、しかもタマミツネって……」
「「あんなに綺麗なのにオスポケモンなんだから、ニクイわよね~!」」
女性たちの会話が耳に届き、ショウもウンウンと頷く。ショウが捕まえたタマミツネは、なんと性別がオスだったのだ。
『タマミツネって、本当に綺麗なポケモンですね』
『そうだろうな。我が地元でも、かなり人気の高いポケモンだ』
『人間で言うエンジュ美人ってやつですね』
『だがオスだ』
『……え?』
初見では完全にメスポケモンだと思い込んでいたショウは、捕獲後にムラにやってきたアカイとこんな会話をしていた。そこで初めて、タマミツネがオス個体だということを知ったのだ。
アカイ曰く、タマミツネのメス個体は幼体と共に群れを形成して暮らしており、人里に姿を見せる事はほとんど無い。反面、オス個体は成熟すると基本的に単独行動を取るらしく、一般的に目撃されるのも大多数がオス個体であるらしい。
あんなに綺麗なのに……と愕然とするショウに、アカイはボソリと呟いた。
『……ミミロップやサーナイトのオス個体を思えば、対して違いはあるまい』
『なるほど!!』
納得した。
「……あ、いた」
ジンオウガたちはあっさりと見つかった。いつもの五体で並んで座っており、その後ろ姿がどこか愛嬌があってショウはつい微笑んでしまう。
「ジンオウガ」
「……ワウ?」
「何してるの?」
「ワン」
尋ねてみれば、「アレ」と言うように首で何かを指している。ジンオウガの横から覗き込むと、二体のポケモンが組手を行っていた。
「クオオァ!!」
「ウッキャキャ!」
ルカリオとゴウカザルだ。ゴウカザルの骨折は骨がくっつき始めているそうで、激しく動かさなければ回復に支障はないらしい。だからなのか、ゴウカザルはルカリオの攻撃を足だけで捌いていた。
流石にこれはかくとうポケモンのプライドが許せないのか、ルカリオがほぼゼロ距離ではどうだんを構えたが、放つ前に振られたゴウカザルの蹴りがはどうだんを蹴飛ばしてしまった。
蹴っ飛ばされたはどうだんはまっすぐ進み……ベリオロスの顔面に直撃した。
「…………」(^ω^#)
「「…………」」(゚ω゚;)
「ガオオオオオオオッ!!」(゚Д゚#)
「「ウキャアア!?/クオアア!?」」。゚(゚´Д`゚)゚。
怒ったベリオロスが二体にふぶきを放ち、そろって吹っ飛ばしてしまった。吹っ飛ばされたゴウカザルとルカリオだが、大したダメージはない様子からどうやら威力が下がる早業で放ったようだ。
それよりもショウが気になったのは、ルカリオのはどうだんを弾いたゴウカザルの蹴りだ。
「さっきのゴウカザルの蹴り、炎を纏ってたよね?」
「ワンワウ」
「グオン」
ジンオウガだけでなく、リオレウスも肯定した。そのことから、ショウは炎を纏う蹴り技を名前をすぐに思い出した。
「ブレイズキック……ゴウカザルったら、いつの間にそんな技を」
「ヴァヴァ」
今度はグラビモスが動いた。グラビモスはジンオウガの前足を顔でつついたあとに首を横に振り、今度は後ろ足をつつくと頷いた。
ショウは頭をフル回転させ、グラビモスが言わんとすることを必死に読み取った。
「腕が使えないから、足で戦おうとした……ってこと?」
「ヴァー!」
どうやら解釈はあっていたようだ。グラビモスの嬉しそうな声に笑みを浮かべると、ショウはすぐに思考に没入する。具体的には、ゴウカザルが他の蹴り技を習得している可能性があるので、その調査についてだ。
再び組手を始めたゴウカザルとルカリオの二体を見つめながら、ショウはラベン博士への報告内容を黙々と纏めていった。
紅蓮の湿地の時空の歪みを解決してから、二週間が経った。
この間、時空の歪みは不気味なほどに大人しく、広域化現象も停滞し続けていた。それ自体は良いことなので、ショウはしっかりと休みを取っている。放牧場に足繁く通いジンオウガたちの調査をしたり、極み化したダイケンキやガブリアスの実力を改めて知るために模擬戦を催したり、極み個体・二つ名個体のような特殊な成長をする可能性を秘めたポケモンがほかにいないか探したり、ゴウカザルの新技の確認と、忙しない日々を送っていた。
そんな中、ベリオロスが幼い女の子たちを背中に乗せて放牧場を練り歩いている様子が見えて、思わずほっこりとしたショウ。ただ、すぐそばまで近づいてきたリオレウスがからかっているのか、ベリオロスはリオレウスに対して不機嫌な様子を隠さない。少し離れた場所にいるジンオウガとラギアクルスも、リオレウスと同様にベリオロスをからかっていたらしい。ニヤニヤと意地悪な笑み浮かべていた。
……と、子供たちを下ろしたベリオロスが何かを探すようにキョロキョロすると、そのままジンオウガ、ラギアクルス、リオレウスらのいつものメンバーで移動を始めた。そしてショウもまた、いつもなら一緒にいるはずの後一体の姿が見えないことに気づき、周囲を見渡す。
「……グラビモス、どこに行ったんだろう?」
「そういえば、グラビモスですが……どことなく調子が悪そうでしたよ。様子を見たほうが良いのでは?」
「そうなんですか!?ありがとうございます!」
今日も今日とて龍属性エネルギーの調査をするラベン博士から聞かされた話に、ショウは驚いた。グラビモスの不調など、ショウはたった今初めて知ったからだ。グラビモスは元々よく我慢するポケモンで、何かあってもショウに隠してしまうことがあった。反面、ショウに関することについては一切隠すことなく感情をあらわにするのだが。
「(なにかあったのかな……とにかく、様子を見に行かないと)」
ショウがグラビモスを探しに行こうとした、まさにその時だ。
ドオオオオォォォォォンッ!!!!!
「きゃああっ!?」
「な、なんですかこの爆発音は!?」
突然、放牧場の奥の方から爆発音が聞こえたかと思ったら、立派なキノコ雲が出来上がっていた。嫌な予感がしたショウが、大急ぎで現場に駆けつけると……。
「……みんな、何をしているの?」
「クゥ~ン……」
グラビモスを中心に輪になっていたジンオウガたちが、全員揃って仰向けになってひっくり返っている奇妙な光景が広がっていた。グラビモスの足元が大きく凹んで抉れているのを見るに、どうやらグラビモスが爆心地のようだ。
「……排熱しようとして、うっかりじばくの技を使っちゃったってこと?」
「ヴ……」
ひっくりかえったまま頷いたグラビモスの反応から、ショウもすぐに納得した。
考えてみると、最近グラビモスの排熱をすっかり忘れていたような気がする。グラビモスの体調が悪かったのも、ガスだまりが原因だろう。そうしてグラビモスの不調に気がついたジンオウガたちがグラビモスの容体を心配して近寄った直後……限界を迎えたグラビモスが排熱のために自爆を決行、近くにいたジンオウガたちを巻き込んでしまった……ということだろう。
よく見ると、自爆の影響かグラビモスの甲殻の一部が吹き飛んで剥がれてしまっている。そこからは溢れんばかりの熱エネルギーが滾っており、かなり限界まで堪えていたことがよくわかる。
「……排熱処理を忘れてた私も悪かったけど、だからって自爆しなくても良かったよね?」
「ヴ~……」
ジンオウガたちにかいふくのくすりを使って治療しながら、安易に自爆を選んだグラビモスに軽く説教をするショウ。ラギアクルスも加わって二言三言言葉を交わしたあと、ラギアクルスが川の水を飲んだ、その直後だ。
リオレウスとベリオロスが、心なしか愉快げな様子で真似するように川に顔を突っ込んだのである。ノリなのか本気なのか、ジンオウガが怯えた様子で二体を見ている。すると、先ほどの自爆の件もあってか、ひどくイライラした様子のラギアクルスがリオレウスたちに睨みを効かせた。今度はグラビモスが川の水を飲むと、リオレウスたちはまたしても真似するように川に顔を突っ込んだ。……そしてついに怒りが頂点に達したのか、ラギアクルスが二体諸共飲み込むほどの巨大な力業りゅうのはどうをぶっぱなした。これは流石に効いたらしく、怒ったラギアクルスに頭を下げるリオレウスとベリオロス。そして、一連の光景を笑いながら見るジンオウガと呆れた様子のグラビモス。
そして、彼らのやり取りの一部始終をずっと見ていたショウは……。
「(相変わらず仲がいいなぁ、みんな)」
今日も平和だ、とひとりごちていた。
「……おーい、ショウー!」
「先輩?」
遠くからテルが呼ぶ声が聞こえ、ショウは心なしか嬉しくなりながら振り返った。……だが、テルの焦りに満ちた険しい表情に、嬉しい気持ちを吹き飛ばして即座に気持ちを切り替える。
「先輩、もしかして……」
「……あぁ。時空の歪みの広域化が、また始まったんだ!」
「……っ!!」
その言葉に、より一層表情が引き締まる。先程までふざけ倒していたジンオウガたちも、おふざけをやめてショウたちの方へと顔を向けていた。
「それじゃあ、すぐに会議が始まりますか?」
「あぁ、行こう!」
「はい、わかりま――」
ズキッ!!
「――っ」
「……?ショウ、大丈夫か?」
「……はい、大丈夫です」
「そうか……無理はするなよ」
「もちろんです」
テルには何でもないと誤魔化したが、ショウは思わず自身の胸……正確には心臓の位置に手を当てた。かつて、槍の柱にてアルセウスと対峙した黒い龍と目があった際に強烈な痛みを訴えた心臓部。今手を当ててみても、正常に脈を打っているし痛みも一瞬でほとんど正常と変わり無い。
「(……無理しすぎたかな?ムラにいても調査のことばっかりだったし……うん、たまには何もしない日を予定するのもありかも)」
ショウは頭を振ってからテルの後を追う。その後ろ姿を、険しい表情をしたジンオウガがジッと見つめていた。
……で、結局話の最後に次話の導入を持ってくるあたり成長しない作者ェ……