タマミツネを捕獲し、紅蓮の湿地に発生した時空の歪みを解決して二週間。放牧場に放たれたタマミツネは紅蓮の湿地にいた時と同じように、優雅にのんびりと寝て過ごしている。その一挙手一投足の、実に優美なこと……女性たちからは圧倒的な人気を誇り、女性はタマミツネ、少女はベリオロスと人気が二分されるほどだ。
あと、呉服屋のシャロンさんはタマミツネを見るなり「みwなwぎwっwてwきwたwww」と奇声を発しながら呉服屋へ爆走していき、これまた爆速で新衣装を仕立て上げてみせた。タマミツネをイメージしたという着物は売れ行き抜群で、特に振袖はタマミツネのヒレの特徴を余すことなく表現してみせた自信作だそうな。
……そういえば、どっかの地方に振袖で有名なフェアリー使いのジムがあったような気がする。そこのジムリーダーは美人さんだったってお父さんが言ってたから、フェアリーポケモンのタマミツネと相性良さそうだ。……美人さんって話をした時、お母さんの目からハイライトが消えていたことは私しか知らない話だ。
着物の本場であるジョウト地方の出身らしいデンボク団長とムベさんのお墨付きらしいので、私も着てみた。
……先輩に感想を聞いてみたんだけど、顔を真っ赤にして「綺麗だ……」って言われたもんだからこっちまで恥ずかしさやら嬉しさやらで真っ赤になってしまった……。
そんな心休まる二週間を過ごした私は現在、テル先輩に呼ばれて調査隊室へ来ていた。残り二箇所の時空の歪みが、広がり始めたからだ。
「よくぞ参った、ショウ」
「残りの時空の歪みは二箇所……だが同時に、可及的速やかな解決が要求される二箇所でもある」
シマボシ隊長から渡された資料を目にし、改めて頷く。
残りの時空の歪みの発生地点は二箇所……一箇所は、最大規模の歪みが発生している群青の海岸。もう一箇所は、すでに集落が歪みの内部に飲み込まれてしまっている純白の凍土だ。
「セキ、カイ。委細を」
「了解だ、旦那。オレが報告するのは群青の海岸のポケモンだ。現地に居るキャプテン、ススキから報告が上がっているんだが……あのドラゴン野郎、群青の海岸に住むポケモンに手当たり次第に攻撃しているらしい。
目についたやつから次々に襲い掛かりあっという間に叩きのめすと、そのまま見境なく喰らい尽くしているようだ。魚ポケモンだけじゃねえ、虫ポケモンすら喰ってるって報告も上がっている。オヤブンポケモンも、もう何体もこいつに喰われたそうだ。
時空の歪みの規模も考えれば、群青の海岸の生態系が崩壊するのも時間の問題だ……可能なら、早めにこいつを何とかしたほうがいい」
そこからさらに情報をまとめると、群青の海岸に出現した巨大ポケモンは翼を使って海岸中を飛び回り、広い範囲を行動しながら目に付くポケモンを手当たり次第に襲撃しているとのこと。……ジンオウガたちのような肉食系かと思ったら、昆虫食もイケるらしい。
流石の私も、虫を食べたいとは思わないなぁ……。
「純白の凍土の方の巨大ポケモンも、最近になってやっと活動を始めたんだ。……と言っても、周囲をウロウロと歩くだけで、何かをする様子は見られないんだけど。
ほかのポケモンたちが近づくと追い返してはいるみたいなんだけど……ウリムーやイノムーが近づいた時だけは何もしないで様子を見ているだけみたい。……同族意識でもあるのかな?
こっちはポケモンが動き出した以外には特に目新しい情報はないかな……」
反面、純白の凍土の巨大ポケモンは比較的大人しく、あまり動きを見せていない。それどころか、ウリムーやイノムーをまるで同族のように扱っているとかなんとか。……これなら、純白の凍土の方はまだ大丈夫そうだ。
「群青の海岸に行きます」
「そうだな。話を聞く限りやばそうな状況だし……」
「早急に巨大ポケモンをなんとかしないと、このままでは現地のポケモンたちも危険です……!」
「あぁ、そうしてく――」
「リーダーッ!!」
私が群青の海岸行きを決定し、先輩とラベン博士も同意してくれた直後、誰かが調査隊室に飛び込んできた。血相を変えた様子で姿を現したのは、ススキさんだった。
「どうした、ススキ!」
「はぁ……はぁ……!た、助けてください!ガラナさんがっ……!!」
「……っ!?ガラナちゃんがどうしたの!!」
ガラナさん……?彼女の身に何が……。
「そ、それが……時空の歪みが広域化したことで、帳岬が分断されてしまったのです。折り悪く、先代キングのウインディが安息地である帳岬端の崖に取り残されてしまって……」
「……!!まさか!?」
「は、はい……ガラナさんは、『先代キングを助けてくる』と言い残して……時空の歪みの内部へと突入してしまったんです……!」
「なんてムチャをしやがる!?」
そんな……!それじゃあ、最悪の場合……ガラナさんは今頃……!
「……あの巨大ポケモン、先代キングのことを狙っていたんじゃないか、と思うんです」
「……!ススキさん、どういうことです?」
ススキさんのつぶやきを拾ったラベン博士が、間髪を容れずススキさんへ質問をした。ススキさんも「よくはわかりませんが」と前置きをした上で話し始めた。
「どうやら巨大ポケモンは、時空の歪みの中から出られないみたいで……先代キングがいる安息地へ向かおうとして歪みの壁に激突する様子が、何度も確認されたんです」
「それはオレも聞いている、が……ただ狭くて飛ぶのに不便しているってわけじゃなく、求める獲物が歪みの外にいただけ……ってわけか」
「しかし、何故キングを狙うのかはわかりません……」
巨大ポケモンはキングを狙っているようだけど……その理由がわからない。けど、キングを助けるためとはいえ、ガラナさんの命が危険に晒されている以上、ここで議論している場合じゃない……!
「……失礼、遅れ申した。……む、何かあったか?」
「アカイの旦那か……」
アカイさんが来た。……何か、ヒントを貰えないかな。
「アカイさん。今、群青の海岸のことで……」
「あぁ、なるほど……そのポケモンならさきほど確認して、戻ってきたところだ。……よもや、"電竜"『ライゼクス』が現れるとは、とんとツイてないな」
「ライゼクス……それがあのドラゴン野郎の名前か」
セキさんの言葉に、アカイさんが首肯する。それから部屋の中を見渡すと、ひとつ頷いた。
「……なにやら、切羽詰った状況のようだ。この様子だと、群青の海岸に行くのだろう?ライゼクスについては、道中で説明しよう」
「お願いします」
私としても、そっちのほうがありがたい。アカイさんはすぐにでも出発できるとのことなので、私たちはすぐに群青の海岸へ向かうことにした。
「ショウさん……どうか、ガラナちゃんを助けて……!!」
「もちろんです!」
今にも泣きそうな表情のカイさんに乞われる中、私たちは群青の海岸に向けて出発した。
群青の海岸への道中の間、私たちはアカイさんの話に集中する。
「ライゼクスは温暖な気候の森や高地に生息する巨大ポケモンで、膨大な電気エネルギーを発生させ、それを様々な形で操る事から、"電竜"の別名を持つ。
見目は美しさも兼ね備えたポケモンなのだが、その美しさとは裏腹に基本的な性質は非常に兇暴で残忍だ。自らの縄張りに侵入するあらゆるものを攻撃対象とし、目に入れば自身よりも大柄なポケモンにも襲いかかるのだ。
例え敵が戦意を失ったとしても攻撃の手を緩めることはなく、逃走を図ろうとも執拗に追撃を繰り返し、時には同族でさえも攻撃対象とし、空腹であれば共食いも辞さない。不運にもテリトリーに足を踏み入れてしまえば最後、対象を容赦無く殴り殺して貪り食らい、同格や格上の存在とも激しく衝突する様子も確認されている。群青の海岸のポケモンたちにとって、ライゼクスは大きな脅威以外に何者でもない……セキ殿の言うとおり、可能な限り早いうちにライゼクスを捕獲するべきだろう」
「とんでもない暴れん坊だな、ライゼクス」
「まぁ、卵から孵化してすぐ育児放棄され、生後間もない状態から独力で生きていく事を強いられれば、さもありなん」
「……!!育児放棄ですか!?」
ラベン博士が大声で驚きを顕にしている。私もすごく驚いている。まさか、子育てをしないポケモンがいるなんて……。
「必死に自分の身を自分で守り、獲物を自力で確保する力を付けていく中で兇暴で残忍な性格が築かれる……人間もそうだが、子供というのは育て方一つで千差万別の成長性を見せてくれる。ライゼクスのソレも、ある意味ではその一つだ。放任主義、と言えば聞こえはいいが……生まれた直後から、というのはなかなかないだろうな」
「……人間に例えると、ライゼクスは親の愛を知らないまま、ただ生き残るために強くならざるを得なかったポケモン……なんですね」
「ふむ。人間に例えると、か……なるほど、ショウの言うとおりだな」
人間に例えると、なんてだいぶ同情的ではあるけれど、そりゃあそんなふうに育ってきたら兇暴にだってなる。逆に愛情たっぷりに育ててやれば、大人しいライゼクスへと育つのだろうか。……ちょっと想像できない。
「さて……こちらのススキ殿が言うには、ライゼクスはキングと呼ばれるポケモンを標的にしているとか。キングに関する内容は委細承知済みだ、そこから判断するに……やはり、強くなるためだろうな」
「強くなるため、ですか……」
ススキさんがアカイさんの言葉を繰り返す。アカイさんは小さく頷くと、空を見上げた。
「弱肉強食の世の中で、生き残るために強くなろうとするのは生物として当然のこと……だが、ライゼクスは特にその意識が強いのかもしれんな。その意識、感情が『生き残りたい』なのか『死にたくない』なのかは、本人のみぞ知るところだが」
「……そう考えたら、ライゼクスってなんか……可哀想な奴だな……」
「フッ……可哀想、ときたか。我が地元でライゼクスのことをそのように考える者はいなかった。ある意味、リオス科とは真逆の生態を築いているゼクス科は受けた被害が計り知れない故に人気もマチマチでな」
「リオス科?」
テル先輩が首を傾げているのを見て、そういえばあまり深くは知らないんだったことを思い出しておもわず笑みが浮かんだ。
「グラビモスとリオレウス、そしてベリオロスにライゼクス……これらのポケモンは全て"飛竜種"という分類に括られるんですよ。そこからさらに事細かく分類されるんですけど……今は省略しておきますね。
その中でもリオス科に分類されるリオレウスと『リオレイア』は、飛竜という種族を代表するポケモンとして広く名が知られているんです。……ですよね、アカイさん?」
「よく勉強できているな、ショウ。君に知識を授けた者として、大変誇らしいよ」
「えへへ」
「ぐぬぬ……」
アカイさんから教わった知識を披露したら、そのアカイさんから頭を撫でてもらえたので思わず照れてしまった。……隣にいるテル先輩が、悔しげに歯ぎしりをしている……。
そして、リオス科のメス個体にあたるポケモン、『リオレイア』……リオレウスの番だと知ってから、今私が出会いたいポケモンぶっちぎりの第一位に輝くポケモンでもある。……時空の歪みから出てこないかなぁ……。
「……む、天気が怪しくなってきたな」
「ぐ、群青の海岸はひどい雷雨に見舞われています……。ですので、ほのおタイプのキングにとっても、か、かなり負担になってしまっていて……」
「……急いだほうがよさそうですね。少しペースを上げましょう!」
ススキさんの話を聞いたラベン博士の合図で、移動速度が上がった。ガラナさん、どうか無事で……!
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【炎上】~戦国無双シリーズ~
Side:ガラナ
あたくしの名はガラナ。ここ、群青の海岸で島キングであるウインディのお世話を一任されているシンジュ団のキャプテン。……と、悠長に自己紹介なんてしている場合ではございませんでしたわね。
ある日のこと。突然、この群青の海岸の海辺を覆い尽くすほどの巨大な時空の歪みが出現しました。はじめは海上を覆うだけだったその歪みは日を追うごとに徐々に巨大化し、今では帳岬からオバケワラにかけて広く全てを飲み込むほどにまで大きくなってしまいました。
それだけでなく、時空の歪みの内部には見たことのない巨大な飛行する竜ポケモンが飛び回っており、歪みの内部に取り残されたポケモンたちはその竜ポケモンに次々と襲われてしまいました。中にはオヤブンポケモンもいたのですが……一方的に襲撃をかけられ完膚なきまでに叩き潰されると呆気なく捕食されてしまいました。時空の歪みが拡大すると、竜ポケモンの行動範囲もさらに広域化していき……つい最近ではイチョウの浜辺に生息するオヤブンドラピオンとオヤブントドゼルガまでもが、件の竜ポケモンの襲撃に遭い……もはや語るに及ばぬでしょう。唯一、ゴーストタイプのポケモンだけが難を逃れていますが、かの竜ポケモンに対抗しようという者はおらず、蜘蛛の子を散らすように逃げ隠れております。
そんな中……時空の歪みの広域化によって、帳岬が風さらしの森側と大魚の隠れ岩側とで分断されてしまう事態が発生してしまいました。この時、先代キングが帳岬の最先端、大魚の隠れ岩の真上に位置する崖の上に取り残されてしまったのです。あたくしはいてもたってもいられず、先代キングを助けるために飛び出しました。ススキ様は、「コトブキムラに応援を呼んできます!」と言って、あたくしよりも早くに行動に出ておられました。……あたくしを止めても、無駄だと悟ったのでしょうか。だから、あたくしを止めるのではなく、助けるためにコトブキムラへ……ススキ様には、またご迷惑をかけてしまいましたわね。
そして、今は……なんとか先代キングと合流を果たしたあたくしは現在、雷雨の中に紛れるようにして砂浜ベースへと移動をしております。隠れ潜みながらの移動なので、どうしても遅々として退避が進みませんが……焦ってはいけません、こういう時こそ冷静に行動しなければ……。ラギアクルス様、どうかあたくしたちをお守りください……!
「キシャアアアアァァンッ!!」
……っ!!この声……あのポケモンが来ましたか……!!
空から急降下してきた件の竜ポケモンは、地面に着陸すると辺りをキョロキョロと見渡す。……雷雨のおかげで、ある程度ではあるけれど視界が悪くて助かった。息を殺し、草むらの中でじっとしていれば、ウインディでも身を隠すことができるこの状況……使わない手はない。
すると、竜ポケモンが何かを見つけたように大声を出すと、鶏冠と翼、そして尻尾を激しくこするように動かしてから、猛然とした勢いで突撃を始めた。あたくしたちが隠れ潜む草むらを通り過ぎて、向かった先にいるのはオヤブンブニャット。ブニャットは悲鳴を上げる間もなく何度もポケモンの翼についた爪を激しく叩きつけられると、そのまま捕食されてしまった。
「……行きましょう、先代」
「ぐるる……」
先代も、かつては己が治め守っていた地を好きに荒らされ、そこに住むポケモンたちが次々と襲われているのに何もできない現状に歯噛みしている……お願いです、先代……もう少しだけ堪えてください……!
オヤブンブニャットを囮にする形で、なんとか竜ポケモンをやり過ごしたあたくしたち……ようやく、風さらしの森の入口近くにある、坂道が見えてきたところで……とうとう、見つかってしまった。
「ライザアァーッ!!」
坂道を塞ぐように飛んできた竜ポケモン……その目は先代を捉えたまま離れる様子がない。やはり、あのポケモンの狙いは先代キング!そうはさせない……!
「先代には、指一本触れさせません!ウインディ!!」
「わん!」
あたくしの相棒である、ウインディを嗾ける。例えこの身が喰い散らかされようとも、先代だけはなんとしても逃がしてみせます……!!
「いわなだれ!」
「わおん!」
視界を塞ぐように、大量の岩を投げつける!ウインディの攻撃に気を取られている間に、少しでも遠くへ先代を逃がさなければ!
「ライッ!!」
竜ポケモンは鶏冠から電撃の刃を生み出すと、それを二度振るった。それだけで、ウインディが放ったいわなだれを全て叩き落としてしまったのだから、恐ろしい威力です……!
「それなら、かえんほうしゃ!!」
「わおーん!」
例え雷雨で威力が下がっても、使わないわけにはいきません!ウインディの自慢のかえんほうしゃで視界が塞がれている間に、先代を回り込ませる。竜ポケモンははじめ、顔面にかえんほうしゃを受けて僅かに怯むも、すぐに振り切るとウインディに向かって突進していき、雷を纏った翼爪をウインディに叩きつけた!
「きゃううんっ!!」
「ウインディ!」
「……?」
ウインディを一撃で叩き伏せた竜ポケモンですが……なにか、違和感を覚えたのかウインディの顔を覗き込むと、すぐに辺りを見渡し始めた。……まさか、キングとそれ以外の個体を見分けている……!?
「……!キシャアアアァンッ!!」
そして、ぐるりと長い首を動かしてこちらを見……あたくしのそばにいる先代キングを見つけると、大きく咆哮を上げてこちらに向かって走り出した!あたくしのウインディもなんとか立ち上がり追いかけるが、明らかに速度が違いすぎる……!
「ライザァー!」
「くっ……!!」
竜ポケモンが再び翼爪を叩きつけてこようとした、その時!
「わおーんっ!!」
「ギシャンッ!?」
あたくしと先代の頭上を飛び越えて、炎を纏ったもう一体のウインディが竜ポケモンの顔面にフレアドライブを叩きつけた!あれは……今代のキング!
「ウインディ……助けに来てくれたの?」
「くぬん」
心配そうにこちらに駆け寄るキング……先代もゆっくり近づくと、キングは甘えるように先代に頬ずりを始めた。
「ギシャアアアアアンッ!!」
「うおーんっ!!」
突然の乱入者に、竜ポケモンは激しく憤っている様子……対してキングも、先程までの雰囲気を一瞬で霧散させ、竜ポケモンに激しく威嚇を始めた。キング……すっかり頼もしくなりましたね……!
「わおーん!」
キングはかえんほうしゃを放ちながら突撃を開始した。その間に相棒のウインディはなんとかあたくしたちと合流し、先代とともに慎重に移動を始めた。この間、キングの戦いの様子を見る。
かえんほうしゃを放ちながら突撃をしたキングだが、かえんほうしゃは竜ポケモンに空を飛ばれることで回避され、逆に尻尾の鋏を突き出してきた。キングはこれを頬を掠めながらも紙一重で回避し、逆にフレアドライブを腹部めがけて放ち直撃させた。
バランスを崩した竜ポケモンは一度地面に降り立つと、両方の翼爪を地面に着き緑色の電撃を複数本も放った。あれは、10まんボルト!キングも最初の二、三撃は回避できたが徐々に掠り始めて、最後は完全に捉えられて全方位から電撃を浴びせられた!
「キング!?」
キングは……!電撃が止まり、キングの姿が見えた!キングは全身から煙を上げ、肩で息をしているもののなんとか持ちこたえている……!かなりの大ダメージを負ったにも関わらず、決して足を折ることなく竜ポケモンを睨みつけている。そんなキングを、まるで嘲るように見下す竜ポケモン……。力の差は歴然……けど、キングは決して諦めていない!
「わおーん!」
「……っ!!うおおぉぉんっ!!」
「キシャアアアァァァァンッ!!」
先代が声をかけると、キングは力強く吠えるとともに力業のだいもんじを放った!……しかし、竜ポケモンも緑色の電撃を、まるでビームのようにして口から放った。チャージビーム……ではない、さらに強力な攻撃!竜ポケモンの一撃は、拮抗すら許さずキングのだいもんじをかき消すと、そのままキングへと直撃させてあたくしたちの下まで吹き飛ばしてしまった……!
「ぎゃうううんっ!!」
「キングッ!!」
あたくしはすぐにキングの下へ駆け寄った!……ああ、なんて酷い傷……!あたくしたちのために、こんなにも傷ついて……。
あたくしが敗れたキングの姿に悲痛さと己の無力感に苛まれていると、力強く足を踏みしめる音が聞こえた。見れば、先代キングが弱った体にムチを打ってあたくしたちを守るように立ちふさがっていた!
「いけません、先代!貴方には、勝負ができるほどの力が残っていないのです!」
「ぐるるる……!!」
なんとか逃げるように促すも、先代が動く様子はない……。そうこうしているうちに、悠然と歩いてくる竜ポケモン。竜ポケモンは足を止めると、上体を反らして翼を大きく広げるとともに鶏冠に電撃の刃を生み出した。敗れたキングはもとより、今の先代にさえあの一撃を受けきるだけの体力は残っていない……!
「ライッザアアアアァァァァァァッ!!」
勢いよく振り下ろされる電刃……もう、ダメ……!あたくしはキングを抱きしめ、来る痛みに少しでも耐えようと目を閉じた……!
先代……!キング……!カイ……!ススキさま……!
ラギアクルスさま……!!
……しかし、いつまでたっても痛みが来ない。あたくしが恐る恐る目を開けると……久しく見ていない、けれどすっかり見慣れた美しく蒼く光る外殻が目に入った。
「あ……」
「グルラ」
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その外殻の持ち主……ラギアクルスさまは、蜷局を解くとあたくしの顔を覗き込んで、安堵したように微笑んだ。
「無事で良かった……」そんな思いが、彼の目を通して伝わって来るようだった。
「ギシャアアアアッ!!」
「グルオオオオオッ!!」
竜ポケモンがラギアクルスさまに威嚇をすると、対抗するようにしてラギアクルスさまも咆哮を上げた。彼の力強い声を聞いて、ようやくあたくしは「助かったのだ」と実感できた。
「素早く、ハイドロポンプ!!」
「グルアア!」
少し離れた場所から、ショウさまの声も聞こえてきた。ああ、ススキさま……この上ない助けでございます。本当に、本当に……!
ラギアクルスさまのハイドロポンプは、当たりはしなかったものの竜ポケモンを追い返すには十分な威力で、竜ポケモンは一時空中へと退避していった。
「ガラナさん!無事ですか!?」
「ショウさま……あたくしよりも、キングが……」
「すぐに回復します!!」
滑り込むようにして駆け寄ってきたショウさま……あたくしがキングの事を話すと、すぐさまポーチからげんきのかたまりを取り出してキングの口の中へと放り込んでくれた。それによって回復したキングはしっかりとした足取りで立ち上がると、元気よく吠えてくれた。
「わん!」
「キング!本当に良かった……あんなムチャをして……」
「くぬん……」
「……けれど、ありがとう」
「わんわん!」
「ライザァ!」
キングを労っていると、一度は退避した竜ポケモンが再び降りてきた。あたくしは咄嗟にショウさまの様子を伺うが……ショウさまの目には、一切の焦りも不安もない。眼前の竜ポケモンを、しっかりと見据えている。
……頼もしくなったのは、キングだけではなかったようですね。
「ラギアクルス、ウェーブタックル!!」
「グルラアア!」
「……ッ!!」
ラギアクルスさまがウェーブタックルで突撃すると、竜ポケモンは咄嗟に横方向へ飛び退いた。
「力強く、れいとうビーム!!」
「グルオオオオアッ!!」
「ギシャアアア!?」
判断が早い!躱されたと見るやいなや、ショウさまはすぐさま次の技を指示していた。そして、ラギアクルスさまもそれに応えるべく素早く行動に移す!ラギアクルスさまの口から放たれたれいとうビームは竜ポケモンを背後にある崖に叩きつけた!
ラギアクルスさまが首を動かしてれいとうビームをずらすと、壁に押し付けられた竜ポケモンもあわせて動かされ……そのまま崖の切れ目から向こう側へと押し出され竜ポケモンは落下していった!竜ポケモンの悲鳴の後、大きな何かが着水する音……どうやら、海へ落とされたようだ。
「……ひとまず、これで一安心かな」
「グルル……」
「お疲れ、ラギアクルス。……間に合ってよかったです、ガラナさん」
「えぇ……ありがとうございます、ショウさま。……ラギアクルスさまも、また助けられてしまいましたね」
「グラァ」
「……ガラナさーんっ!!」
なんとか撃退に成功したようで、安堵の息をつくショウさま。ラギアクルスさまもショウさまから労いの言葉をかけられたあと、すぐにあたくしの方へと顔を寄せてくれた。……本当に、ラギアクルスさまには感謝してもしきれませんね。
そうしてラギアクルスさまの顔を撫でていると、今度はススキさまの声が聞こえた。そちらへ顔を向けると、ススキさまの他にラベン博士、ショウさまの先輩のテルさま、それから……あの全身赤い衣の方は、以前にカイが言っていたアカイさま……かしら?
「あぁ……ガラナさん、無事で良かった……。うっ、うぅ……ほ、本当に……」
「ススキさま……応援を呼んでいただき、ありがとうございました。あなた様は、またあたくしのことを助けてくださいましたね」
「そ、そんな……助けなんて……。ぼ、ぼくがしたことなんて……ショウさんを呼びに行っただけ、ですし……」
「それこそ、万人力に匹敵する助けですわ。ススキさまが早くに行動を起こしてくれたからこそ、たった今間に合ったのですから」
「あ、あはは……」
「(先輩、砂を吐いていいですか?)」
「(奇遇だな、ショウ。おれも吐きそう)」
ススキさま、そしてラギアクルスさま……いつもいつも、あたくしとキング達を助けてくれる。一体彼らに、どれだけのことをすれば恩を返しきれるかしら。
「……さて、立ち話もなんだ。ベースキャンプへ移動しよう。ライゼクスが、戻ってこぬうちにな」
「ライ、ゼクス……?あの竜ポケモンの名前、でしょうか?」
「お初にお目にかかる、ガラナ女史。我が名はアカイ。以後、お見知りおきを。……さて、その問には是、と答えよう。アレの名はライゼクス。非常に兇暴かつ残忍なポケモンだ」
ライゼクス……兇暴で、残忍なポケモン……。なるほど、どうりで目に付くポケモン全てに襲いかかっていたわけですね。
「……よく、無事だった。ライゼクスとまともに相対して、よもや生きているとは」
「ポケモンたちが、頑張ってくれましたから」
「……フッ、そうか」
「急ぎましょう。ライゼクスが戻ってくるかもしれません」
ショウさまに急かされ、あたくしたちは砂浜のベースキャンプへと再び移動を始めた。空路を利用する手もあったそうだが……先代キングの体調を考慮して、陸路で進むことになった。
坂道の中腹までたどり着いた頃、背後の遠くから激しい水音が聞こえた。そして。
「ギシャアアアアアアッ!!」
崖の向こうに、ライゼクスが姿を現した!ライゼクスはしばらく空を飛んでからこちらを見つけると、再び勢いよく突進してきた!
「リオレウス!!」
「グオオオオオオッ!!」
ショウさまは慌てることなく、また別のポケモンを繰り出した!リオレウス……赤く雄大な翼を広げたドラゴンポケモンは、まっすぐライゼクスの元へ向かうとそのまま追い立て始めた。
「時間稼ぎ!お願い!!」
「グオンッ!!」
「ライザアアアッ!!」
リオレウスはライゼクスに体当りをすると、二体は激しく空中でもつれ合いながらも制空権の奪い合いを始めた。火炎が、電撃が空を舞い、時には体を激しくぶつけ合いながら、二体は鳥ポケモン同士の戦いが可愛く見えてしまうほどの激闘を繰り広げている。
「リオレウスが、ライゼクスの気を引いています。今のうちに」
「……あの二体は、なにか……宿縁でもあるのですか?」
「リオレウスは"空の王者"の異名を取り……逆にライゼクスは"電の反逆者"の異名を取る。王者と反逆者……あの二体は、決して相容れぬ存在同士でもあるのだ」
「なるほど……」
ただ、それにしてもあのライゼクスの猛攻は……まるで、
「この坂を下れば、ベースキャンプまであと少しです!」
「みんな、頑張ろう!」
「先輩、助かります」
「気にすんなよ」
ショウさまが先導し、テルさまがあたくしたちに声をかけて下さる。テルさまへショウさまがお礼を言うと、テルさまは照れた様子で笑みを浮かべる。そんなテルさまの笑みに釣られてか、ショウさまも微笑んでいる。
あの二人の雰囲気……まるで、あたくしとススキさまのよう……あらあら♪
「(カイ……いつまでも鈍いままだと、先を越されますよ?)」
「……?あ、あの、ガラナさん?一体どうしたんですか……急に、微笑まれて……」
「いえ……未来ある若者たちの将来が、とても楽しみだな、と」
「え?……!あ、あぁなるほど、なるほど……確かに、楽しみですね」
ススキさまも気づかれたようで……。
ショウさまだけではない、テルさまも含めた二人なら……きっと、この事態も解決することができると、あたくしは信じています。
頼もしい子供たちの背中を見守りながら、あたくしたちは一路ベースキャンプへと向かいました。
――OP-1 complete――
なんとか先代キングとガラナさんの保護に成功しました。あとはBCまで護衛するだけ。
次回はVSライゼクス!そして、あのポケモンが……!!