ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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そういえば、なーんか忘れていることがあるような……そう思って前話を振り返って、気付いた。

……ライゼクスのタイプ相性、載せてないやん!?
というわけで、こちらをどうぞ!
ライゼクス
でんき/ひこう
弱点 火:○ 水:○ 雷:× 氷:◎ 龍:△
四倍:こおり
二倍:ほのお、みず、いわ
半減以下:くさ、かくとう、ひこう、むし、はがね、ドラゴン
効果なし:でんき、じめん
等倍:上記以外全て

メガライゼクス(青電主)
でんき/ドラゴン
弱点 火:○ 水:○ 雷:× 氷:◎ 龍:△
四倍:こおり
二倍:じめん、フェアリー
半減以下:くさ、ひこう、はがね
効果なし:でんき
等倍:上記以外

今回、ライゼクスにはメガシンカ前後でタイプが変わる役目を担ってもらいました。
弱点多いが耐性も多い通常個体か、弱点の数変わらんし耐性も減るが能力が高いメガシンカか……人によって育成論が分かれそうですね。



メイン任務:純白を往く峨々たる巨獣~怒りの母、大進撃!~

暗い。暗い。暗い。

 

「ここは……?」

 

暗い。暗い。暗い。

 

「グルルル……」

 

「……!!」

 

そこは闇。夜は明けない。終わらない終焉。

 

「あっ……いやっ……!」

 

「……ギィヤアアアアァァァンッ!!」

 

顎は開かれ。全て呑む劫火が。暗い。喰らい。暗い。喰らい。

 

「いやああああああああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はっ!!」

 

目覚めは最悪だった。悪夢に苛まれた目覚めがいいはずもないわけで、起き上がってみると全身が汗でびっしょりと濡れていた。濡れタオルで軽く全身を拭いてから、いつもの調査隊服に着替えようとタンスに手を伸ばし――

 

ズキッ!!

 

「うっ……!ぐ、あ……っ!!」

 

また、心臓が痛み始めた。しかも……。

 

ズキッ!! ズキッ!! ズキッ!!

 

「がっ……あ、うぅ……っ!!」

 

いつもよりも痛みが長い……!思わず胸を押さえてうずくまり、ついには倒れこんでしまう。うまく息ができない……苦しい……!

 

「ショウ!!」

 

私が悶え苦しんでいると、突然玄関の戸が開かれた。蹲っていた私は顔を上げることもできなかったけど……この声、シロちゃん……?

その後、背中にそっと手のひらを押し当てられる感触と、じんわりと暖かい熱が入り込んでくる感覚……。あ、れ……また、ねむ……く……。

 

「……アノ子ったら、面倒なモノを残して……!」

 

何かをつぶやいたシロちゃんの声を最後に、私の意識は沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が差し込んできて、その眩しさに顔を背けたくなる……が、二度寝をカマすつもりもないので起き上がる。うん、と伸びをしてから未だ覚醒しきっていない頭でこれからの予定をぼんやりと考える。

……なんだか、悪い夢を見たような気が……しなくもない、ような……うーん、やっぱり寝起きだからか上手く頭が回らない……。

 

「おねーちゃん、おはよー!今日はお寝坊さんだね」

 

「あ、シロちゃんおはよう……って、寝坊!?」

 

シロちゃん、いつの間に……というか、お寝坊さんってどういうこと!?

 

「……ごめん、シロちゃん。今の時間、大体でいいからわかる?」

 

「太陽が昇ってから体感3時間ぐらいはもう経ってるよ?」

 

それって確実に9時回ってる!?私ってば、どれだけ寝てたの!

 

「シロちゃん、呼び出しとかなかった?時空の歪みは……」

 

「んーん、何も起きてないよ?」

 

「……そっか。……準備するね」

 

「はーい」

 

シロちゃんが外に出ていったのを見送ってから、私は調査隊服に着替えた。それから外へ出ると、まっすぐに放牧場へ向かう。中へ入って、いつもどおりにジンオウガたちがいる場所へ向かう。

 

「おはよう、みんな」

 

「ワン」

 

「ヴァー」

 

「グルラ」

 

「ガオ」

 

「リオレウスは……」

 

「グオ……」

 

いつもの五体と挨拶をしたけど……リオレウスだけ元気がない。いや、これはむしろ疲れきっている様子だ。というのも……。

 

「……今日もライゼクスと一緒だね」

 

「ライズ♪」

 

「グオォ……」

 

リオレウスにべったりとくっついているライゼクスを見て、いつもどおりだと頷く。

捕獲したライゼクスを放牧場に放つのは、正直躊躇われた。あれほどに兇暴なポケモンをすぐに放っても大丈夫なのか、という不安があったからだ。それでも、捕獲した以上は面倒を見るつもりだったので、ひとまずボールから出して様子を見ることにした。そしたら……。

 

『ライザー♡』

 

『グオオォォォォッ!?』

 

それはもう、物凄い勢いでリオレウスに向かって行ったものだから驚いた。リオレウスも酷く動揺した様子で逃げ惑ったが、最終的には捕まってしまい……そして、今に至るのだ。

襲われるどころか、なぜか懐かれている様子にリオレウスも私も困惑。さらに私がリオレウスに近づくとめちゃくちゃ威嚇してくる。どういうことなのかさっぱり分からず、アカイさんに助けを求めた。

 

『あのライゼクス、メスか』

 

『……え?』

 

『あれは懐いているというよりも、異性に対して好意を示しているように見えるな』

 

『えええぇぇぇぇっ!?』

 

アカイさんからそんなことを言われてしまい、思わず声を上げてしまった。ただでさえタマミツネが実はオスだった件で動揺したばかりなのに、今度はライゼクスがメス個体だったなんて……。ただ、好意にしてはやたらと感情が重そうだった……。だって、リオレウスがすごく辟易とした様子でいるんだもん。

しかし、あれだけ嬉しそうにしている様子を見ると、引き離すのも気が引けるというもの……それに、もしかしたらポケモンのタマゴが発見される可能性もあるってラベン博士とアカイさんも言ってたし、それはそれとして楽しみだな。頑張れ、リオレウス。

……っと、そっちも気になるけど今は……。

 

「ジンオウガ、ラギアクルス、ベリオロス」

 

「ワウ?」

 

「グル?」

 

「ガオ?」

 

「ちょっと来て。……特訓をしよう。次こそアカイさんに勝つよ」

 

「ワン!」

 

「グルラ!」

 

「ガオン!」

 

三体をボールに戻し、訓練所へ向かう。建物の方を通り過ぎて、さらに広げられた巨大なバトルフィールドに出る。ここは、ジンオウガたちと訓練をする際に使用する専用のバトルフィールドだ。

ペリーラさんに相談した際に「そんなデカイ図体だとここは狭いだろう?」なんて言いながら、建築隊と警備隊が合同で訓練場の裏手を整地して、巨大ポケモン専用のバトルフィールドを作ってくれたのだ。

そして、ここには事前に呼び出しておいた人達がいる。

 

「おはようございます。朝早くからすいません、ガラナさん。ワサビちゃん」

 

「おはようございます、ショウさま」

 

「ショウさん、おはよう!」

 

ガラナさんとワサビちゃん。この二人に共通する点はズバリ、私以外に特定の巨大ポケモンと信頼関係にある人物であることだ。彼らを好きに戦わせるのもいいけど……やはり勝負はポケモンと人間の共同作業でもあるので、こうして彼らとともに戦ったことのある人を呼んだのだ。

 

「それでは、早速勝負を始めましょうか。ガラナさんはラギアクルスを、ワサビちゃんはベリオロスをお願いしますね」

 

「ふふっ、こうしてまたラギアクルスさまとともに戦えるだなんて、夢のようですね」

 

「やったー!はやくベリオロスと一緒に戦いたいな!」

 

「とりあえず、総当たり戦で行きますか」

 

「それでしたら、まずはあたくしとワサビさまで勝負をしましょう。なにげにこの組み合わせは初対決、ということになりますし。それに、ジンオウガは先程健康診断を終えたばかりでしょうから」

 

「よーし!ガラナさん、負けないよ!」

 

「えぇ、こちらこそ。よろしくお願いしますわ」

 

こうして、まずはガラナさんとワサビちゃんが勝負をすることになった。私は審判兼見学だ。ついでにボールからジンオウガを出しておこう、見るのも勉強だから。

今回、このような提案をしたのは……ズバリ、アカイさんとマガイマガドに敗北してしまったからだ。……こんな事を言うのもアレだが、私がヒスイ地方に来てから経験したポケモン勝負としては、あれが初敗北だった。それも、私にとって恩人にして信頼を預けるジンオウガと共に戦って。

……悔しかった。めちゃくちゃ悔しかった!負けるだなんて微塵も思ってなかったし、慢心なんて論外だ!だから、敗北を理解したとき思わず泣きそうになってしまった。正直、ジンオウガを労った時は泣いて謝りたくなったのを必死になって我慢していた。

 

勝負の後、マガイマガドについて教えてもらった。マガイマガドはあく・かくとうの複合タイプで、こおりに強く、みずとでんきに弱く、ほのおとドラゴンが効かない体質をしている。さらにメガシンカしたメガマガイマガドこと『怨嗟響めくマガイマガド』は、体質的に苦手だったでんきタイプを克服し、でんき技を半減で受けられるそうだ。

アカイさん曰く、マガイマガドは『古龍級生物』と称されるほどに危険度の高いポケモンらしい。あくまで生態系の『上位種』にすぎないジンオウガとでは、そもそも生物としての格が違うそうだ。古龍の話はシロちゃんから聞いていた……その古龍に匹敵するほどの力乃至は危険度を持つとされるポケモンを、古龍級生物と呼ぶようになったんだとか。

その一例として「アカムトルム」と「ウカムルバス」というポケモンの写真を見せてもらった。アカムトルムは"覇竜"の別名を持つ黒き神、ウカムルバスは"崩竜"の別名を持つ白き神として世に知られているポケモンで、「二体が双璧を成した時、世界は崩壊する」という伝説が残されているほどの存在だとか。

……写真越しとはいえ、凄まじい力強さを感じさせるポケモンたちだった。何も知らない人からしたら古龍種に見えかねないのに、実際はリオレウスやベリオロス、ライゼクスと同じ仲間である飛竜種らしい……。

翼は元々存在しておらず、これは「ワイバーンオリジン」と呼ばれる全飛竜種の祖先に当たる生物の遺伝子を汲んでいる姿なんだとか。……六文字を超える固有名詞はやっぱり発音しにくいなぁ……。

あと、以前にシロちゃんから聞いたイビルジョーも古龍級生物に分類されるらしい。

たしかにマガイマガドは強かった。古龍級生物と呼ばれるだけはある……だが、それがどうした?そんなものは、あくまで野生における話だ。ポケモン勝負は、ポケモンだけでなく人間だって関わってくる世界なのだ。ジンオウガだけでは、マガイマガドには勝てないかもしれない……けど、私も一緒に戦えば、まだ勝てる可能性があるはずだ。だから、たった一度の敗北で決めつけるつもりは毛頭ない。ジンオウガだってリベンジに燃えている……なら、私が臆する理由はない。

 

そうして色々と考えた結果行き着いたこと……それは、巨大ポケモンを用いた対人戦の経験不足ということだ。実際に数えてみたら、野生個体相手は相当数の場数を踏んでいるが、対人戦となると片手で数える程度しかない。群青の海岸でのガラナさん・ラギアクルス戦、純白の凍土でのワサビちゃん・ベリオロス戦、そして再び群青の海岸でのアカイさん・マガイマガド戦……うわっ、三回しか戦ってない!

巨大ポケモンたちの強大な力に、人間の頭脳が加わる事によって引き出される高いポテンシャル……それらに対峙した経験が圧倒的に少なすぎる。だから今回、ガラナさんとワサビちゃんに協力を要請したのだ。

 

一応、ルールは決めている。総当たり戦で、一試合あたり20分を考えている。時間が来れば10分のインターバルを挟んで次の試合へ……といったふうに。

試合は実に五分と五分、といったところか。高機動で翻弄するベリオロスに対し、ラギアクルスはガラナさんの指示をしっかりと聞いて死角から攻めてくるベリオロスに対応している。ワサビちゃんも特殊技で牽制をしてから、本命の物理技を叩き込もうと隙を探っている。お互いに一進一退の攻防を繰り広げているようだ。

チラ、と時計を確認する。

 

「……時間です!」

 

「……っ!!フーっ……お疲れ様でした、ラギアクルスさま」

 

「グルラ」

 

「頑張ったね、ベリオロス!」

 

「ガオガオ!」

 

勝負を終えたらディスカッション。技の選択や判断、動きへの指示などをああだこうだと討論する。少しでも相棒であるポケモンたちの能力を引き出すためにも、人間自身の成長だって必要だ。

 

「次はどうしましょう?」

 

「あっ!それなら、あたしがショウさんと勝負したい!純白の凍土のリベンジだよ!」

 

「ふふっ、うん、いいよ。今回はリオレウスじゃなくてジンオウガだけど、負けるつもりはないから!」

 

「それを言うならこっちだってー!」

 

「それでは、あたくしが審判をいたしますね」

 

ああ、楽しい。勝負を楽しいと思えるあたり、やっぱり私はお母さんの子だな。

あと、この総当たり戦の戦績だけど、ガラナさんとワサビちゃんはお互いに引き分けに終わったが、私は二人にしっかりと勝たせてもらった。……まぁ、ラギアクルスもベリオロスも、戦場の環境故に勝たせてもらった感が否めないのだけど。

そうして特訓を終えて訓練所に戻ってくると、テル先輩がペリーラさんと話をしていた。私たちに気がつくと、軽く手を挙げてくれた。

 

「ショウ」

 

「テル先輩。……ということは」

 

「あぁ、そっちの考えているとおりだ」

 

「分かりました、調査隊室ですね?」

 

「もちろん。おれは先に行って待ってるぜ」

 

「はい、私もすぐに行きます」

 

もうほとんど主語のない会話だけど、先輩とならどんな会話だって成立する自信がある。先輩がここに来たということは、時空の歪みの広域化が再開されたということだ。

せっかくなので、ガラナさんとワサビちゃんも調査隊室についてくるそうな。一度、ジンオウガたちを放牧場に預けてから、私たちが調査隊室に到着すると既にアカイさんも含めて全員が集合している状態だった。

 

「ショウ、入ります」

 

「うむ」

 

「……あ、ガラナちゃん。ショウさんと一緒だったんだ」

 

「えぇ、そうですが……人前でその呼び方はやめなさいと言っているでしょう!」

 

「うっ……ご、ごめんなさい。……やっぱり癖は早々には直らないよ」

 

「おう、ワサビ。コトブキムラに来てるってのは聞いていたが、何してたんだ?」

 

「えへへ、久しぶりにベリオロスと一緒に勝負したの!」

 

「そうか、楽しかったか?」

 

「もちろん!」

 

それぞれキャプテンと団長が話をする中、私たちの方も話を進めていた。

 

「いよいよ歪みも最後の一箇所となった。場所は純白の凍土……シンジュ集落が歪みに飲み込まれているが、巨大ポケモンが存外に大人しかったために最後に回してしまったな」

 

「先程、ラベン博士から巨大ポケモンの特徴を聞いたところだ。大人しいのも当然だろう、なにせそいつは『ガムート』だからな」

 

「ガムート?」

 

うむ、とアカイさんは首肯した。

 

「ガムートは雪山や氷海などの寒冷地を根城とする、"巨獣"の別名を持つ牙獣種のポケモンだ。これまでの三体とは異なり草食性ではあるが、寒冷地という過酷な環境下に棲息しているために縄張り意識が極めて強くてね……外敵には一切の容赦なく排除にかかる。

分厚い体毛や堅牢な甲殻、圧倒的な巨躯から殆どの捕食者を歯牙にも掛けないほどに非常に防御能力が高く、一部では『不動の山神』の異名でも知られているほどだ」

 

「アカイさんに確認してもらったところ、どうやらあの雪原キングに勝るとも劣らぬほどの大きさなんだとか……。キングに匹敵するなんて、とんでもない話ですよ」

 

アカイさんに続いてラベン博士もそう話す。うーむ……あの雪原キングに匹敵する大きさ、かぁ……立ち回りには気を付けないといけないかな……。

 

「ガムートはこれまでの巨大ポケモンと比較するとだいぶ温厚なポケモンだ。既に報告で聞いているだろうが、接近するポケモンを追い払うにとどめていること、既知の種族に似たウリムーやイノムーを守る行動を取るなど、な。

さらに我が子を別のポケモンの群れに預ける代わりに、自身はその群れを守るといった共生関係を築くこともできるのだ」

 

「おぉ……なんか、こうして見ると一番まともな奴に見えるな」

 

テル先輩はそう言うが……多分、それは直前のポケモンがライゼクスだった反動が大きいかも知れない。

ライゼクスは群青の海岸に住むポケモンを、目に付いた存在から片っ端から襲いかかっていた。反面、ガムートは基本は何もせず、それどころか最近では特定種族のポケモンを守る行動をとり始めていた。こうも真逆の行動を取る者同士が現れたら、どうしても比較してしまいがちだ。特にライゼクスの行動はインパクトが強かったのもあって、ガムートがまともなポケモンに見えるのも仕方がないのかもしれない。

 

「ただ、注意してほしいのはあくまで"ほかの三体に比べて大人しい"というだけで、決して安心安全なポケモンではないということだ。最初に話したが、外敵に対しては決して容赦はしない。今のところは、たまたま外敵と呼べるほどの脅威がいないだけで、それに匹敵するポケモンと遭遇すればその限りではない。

たしか、やつは今は豪雪谷と極寒の荒地の境界にいるんだったな……あのあたりに生息するポケモン程度なら、ガムートの脅威にはなりえない。それどころか、近縁種らしきウリムーやイノムーというポケモンがいるくらいだから、尚の事だな」

 

「では、下手にポケモンを嗾けるのは愚策、と?」

 

「その通りだ、デンボク殿。そも、こちらすら歯牙にも掛けないというのなら、近づいてボールを放り、争わぬまま捕獲するほうが無難だろう」

 

「うむ」

 

アカイさんの言うとおりだ……戦わないで済むなら、それに越したことはない。隠密して捕獲するのは結構得意だ。その手が通用するなら、使わない手はないだろう。

 

「カイさん、だいぶお待たせしてすみませんでした」

 

「いいんだよ、ショウさん。これもガムートが大人しかったからなんだし。むしろガムートが大人しかったのって、周りに居たウリムーやイノムーたちのおかげなんじゃないかなって、最近は思い始めたくらいだよ」

 

「まあ、身近に身内みたいなのがたくさんいたら、そりゃあ暴れるわけにもいかねえわな」

 

「それなら、ウリムーたちにも感謝しないとだな!」

 

「(……そういえば、ベリオロスってウリムーやイノムーを主食にしてたっけ。ガムートに知られたらたくさん怒られそうだなぁ)」

 

「どうしたの、ワサビちゃん?」

 

「んーん、なんでもない!」

 

「……?」

 

なんだろう、一瞬だけどワサビちゃんが気まずそうに目線をそらしたような……?

 

「では、早速純白の凍土へ――」

 

「長っ!長ーっ!!」

 

デンボク団長が号令をかけようとしたところ、シンジュ団の団員が血相を変えて飛び込んできた。完全に顔面蒼白だ……何があったのかな……?

 

「ど、どうしたの?そんなに慌てて……」

 

「はぁ、はぁ……そっ!それが!あの巨大ポケモンが唐突に暴れ始めたんです!!」

 

「……!!」

 

調査隊室に電流が走った。それは、先程まで大人しいと言われ続けていたガムートが、暴走を始めたという報告だったからだ。

 

「そ、そんなっ!?どうしていきなり!」

 

「わ、わかりません……。それから、例の巨大ポケモンはまっすぐシンジュ集落の方角に侵攻しています!」

 

「(集落の方角に、だと?ふむ……)ラベン博士、図鑑を見せていただいても?」

 

「え……?あ、はい。どうぞです」

 

「失礼」

 

報告を聞きながら、アカイさんはなぜかラベン博士に図鑑を見せてもらうように頼んでいる……今この状況で、一体何に気づいたんだろうか……。

 

「そ、それと……巨大ポケモン侵攻に伴い、雪原キングが極寒の荒地で迎撃に出たのですが……」

 

「……!!キングの身に、なにかあったのか!」

 

「……自分が見た限り、戦況はほぼ互角……いや、キングが不利でした……。いつ押し切られてもおかしくありません……!長、集落に戻ってきてください!ハマレンゲさんも、キングとともに巨大ポケモンを迎撃しています!」

 

「ハマ先生が……!わかった、すぐに戻る!」

 

報告を聞いたカイさんは、一度こちらに振り返ると申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すまない、皆。私は一足先に集落に戻る事にするよ」

 

「それならば、シマボシのケーシィの力を頼るといい。シマボシ、良いな?」

 

「はい、団長」

 

デンボク団長がシマボシ隊長に声をかけ、隊長もこれを了承した。ゆっくりとケーシィが近づいて来ると、その身にサイコパワーを溜め始めた。

 

「気をつけてな、カイ。オレ達もなるべく準備をしてから、そっちに向かう」

 

「セキ……いいの?だってこれは、私たちシンジュ団の問題で……」

 

「関係ねえよ。シンジュもコンゴウもない……カイ、オレがお前を助けたいから助けるんだ」

 

「セキ……!」

 

「(先輩、なんか前にもこんな光景見ましたよね)」

 

「(だな。そして例のごとく砂を吐きそうなんだが)」

 

セキさんカイさん、あなたたちもか……群青の海岸で、ガラナさんとススキさんから嫌というほど砂を吐きそうな場面を見せられたのに、1、2週間とはいえ間を置かずに同じような光景を見せられるなんて……。

……いや、これは組織の垣根を越えた素晴らしい絆だ、うん。……そう思わないとやってらんねぇやこりゃ。

 

「では、早速――」

 

「長っ!長ーっ!!」

 

シマボシ隊長がケーシィに指示を出そうとした直前、シンジュ団の別の団員がさっきの団員と同じように飛び込んできた。……この二人、実は双子だったりしないだろうか。

 

「こ、今度は何!」

 

「そ、それがっ……」

 

「もったいぶってないで!」

 

「……っ!きょ、巨大ポケモンと争っていた雪原キングが……敗北、しました……!」

 

「なっ!?」

 

「し、しかも……うっ、うぅ……!せ、雪原キングと共に戦っていたキャプテン・ハマレンゲさんも……消息がわからず、生死不明で……!!」

 

「……っ!?」

 

「ハマレンゲさんが!見つからないんですよぉっ!!」

 

キングの敗北、そしてキャプテンの安否が分からず生死不明って……そんな、そんなことが……!!

 

「カイっ!!」

 

突然、セキさんの叫び声が聞こえたかと思うと、セキさんがカイさんの両肩を支えているところだった。どうやら、カイさんが膝から崩れ落ちそうになったところを、セキさんが咄嗟に抱きとめたようだ。カイさんは先程の団員と同じ……いや、それ以上に酷いレベルで顔面蒼白になっている。

 

「セ、セキ……先生が……ハマ先生が……!」

 

「落ち着け、カイ!ハマレンゲさんがそう簡単にやられるような人じゃねえってことくらい、おめえだってわかってるだろうがよ!おめえがハマレンゲさんを、キャプテンを信じねぇでどうすんだ!それでもシンジュ団の長かっ!!しっかりしろ、カイ!!」

 

「……!!」

 

セキさんの厳しくも励ましの意を含んだ言葉に、カイさんは大きく目を見開いた。それから、セキさんは飛び込んできたシンジュ団員に目を向けた。

 

「おい!その巨大ポケモン、今はどうしてる!?」

 

「えっ!?えっと、キングとの勝負でそれなりに消耗はしたのか、じっとしていましたが……」

 

「純白の凍土からコトブキムラまではかなり距離がある……キングとは長く勝負していたとして、するってぇと……」

 

「そろそろ動き出すかもしれないな。雪原キングとやらが如何程の実力者かは預かり知らぬが、ガムートのことならわかる。巨大ポケモンとて生き物だ、激しく動いて疲れたなら休む……それくらいはするだろう」

 

セキさんの思考をフォローするように、アカイさんが言葉を付け足した。……なんにせよ、大急ぎで純白の凍土に向かう必要がありそうだ……!!私は大急ぎで放牧場に飛んで行き、ジンオウガたちとダイケンキたちを回収して手持ちを整え、再び調査隊室に戻ってきた。

……リオレウスをボールに戻す時のライゼクス、めっちゃ怖かった……ディノバルドとタマミツネが宥めてくれて助かった。ただ、なんでリオレウスはボロボロだったのだろうか……ジンオウガたちがやたらホクホク顔だったことと、何か関係があるのかな?

 

「シマボシ隊長!ケーシィ!超特急で私たちを凍土に送ってください!!」

 

「あたくしもともに参ります!シンジュ団のキャプテンとして、集落の危機を見過ごせませんわ!」

 

「あたしも一緒に行くよ!」

 

「シマボシ」

 

「了解です、団長。やれ、ケーシィ!」

 

「ケー」

 

そうして私、テル先輩、ラベン博士、セキさん、カイさん、ガラナさん、ワサビちゃん、シンジュ団員二人にアカイさんの大所帯で純白の凍土へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シマボシ隊長のケーシィによるテレポートによって、私たちはシンジュ集落内、長の屋敷の前に到着した。すぐに状況を確認しようとした、その時だった。

 

「パオオオオォォォォォォンッ!!」

 

凄まじく大きな咆哮が轟き、純白の凍土の空気を揺らした。それと同時に、集落内にいるシンジュ団員たちが慌てふためいている。カイさんはすぐに集落の中心部まで走ると、ありったけの声量で叫んだ!

 

「皆、落ち着けえええぇぇっ!!」

 

「!!」

 

「シンジュ団の長、カイ!ただ今帰参した!!子供と老人は集落の奥へ避難を!若い者、特にポケモンを連れているものは私に続け!!」

 

「お、長だ……長が帰ってきた!!」

 

「長が戻ってきたぞー!」

 

「長が帰ってきた!これで勝つる!!」

 

そこには、ハマレンゲさん行方不明を聞いて膝から崩れ落ちた少女の姿はなかった……あるのは、一組織を率いる、凛とした佇まいの力強い長の姿だ!

 

「……へっ!やるじゃねえか、カイ……」

 

「惚れ直しました?」

 

「ああ、そりゃあもう……って、おいっ!ショウ!?」

 

「ふふっ……セキさま、どうかカイのこと、よろしくお願いしますね?」

 

「ガ、ガラナさんまで……!」

 

「……よしっ。セキさんをからかうのはこの辺にして、私たちも行きましょう!」

 

「(ショウ……!後でマジで泣かす……!!)」

 

なんだかセキさんの視線が怖いが、恋愛ヘタレに睨まれたって怖くないですよーだ。

私たちがカイさんの元へ向かうと、ちょうど集落に残っていた団員から話を聞き終えたらしく、こちらへと振り返ってくれた。

 

「カイさん!」

 

「ショウさん……それに、皆……」

 

「かっこよかったぜ、カイ。流石はシンジュ団の長だな」

 

「や、やめてよ恥ずかしい……!って、そうじゃない!

いきなりで悪いけれど、力を貸して!どうやらガムートは極寒の荒地の中程まで侵攻してきているみたい……このままだと集落に侵入されるよりも先に、クレベース氷塊にある氷塊が壊されちゃう……!」

 

「それはマズイですわね……クレベース氷塊に林立する氷塊には、雪原キングが好むえいえんのこおりがありますから。破壊されたとあっては、目も当てられませんわね」

 

「よっしゃ!それなら早速ガムートを倒すとするか!」

 

「待て」

 

セキさんが勢い勇んで行こうとするも、アカイさんから待ったをかけられた。……そういえば、アカイさんはラベン博士から図鑑を見せてもらってたっけ。なにかわかったのかな……?

 

「アカイの旦那、なぜ止める?」

 

「先程からずっと言っているが、ガムートは外敵が現れぬ限り、無為に暴れるようなタチではない。ほかのポケモンと共生している以上、食糧難ということもありえぬ」

 

「……!!なるほど、アカイさんはガムートの暴走の原因が、外部による何者かの干渉によるものだと考えているのですね!」

 

「流石はポケモン博士、その通りだ。そして、原因が分からぬまま事態を解決しては、今後の対策も難しくなるだろう。そこで私から提案だが、二手に別れようと思う」

 

「二手……」

 

「一方はガムートの足止めだ。そしてもう一方は、ガムート暴走の要因を突き止める。

……私自身、おおよその原因は見当が付いているが、確定事項でない以上はむやみに話すつもりもない。こういうのは、きちんとはっきりさせておかないとな」

 

なるほど、アカイさんの言うとおりだ……。各地のキング・クイーンを鎮めていた時も、"なぜ?"の部分がうやむやなまま解決してしまったわけで、その後にディアルガとパルキアが暴走した時も直接的な原因が「鎮めたこと」になってしまったわけで……。

 

「……私は、アカイさんの意見に賛成です。実際、原因がわからないまま解決した結果、痛い目を見た経験がありますので」

 

「……ショウさんが言うと、言葉の重みが段違いだね……」

 

「耳が痛いよ……」

 

すみません、先輩。

 

「ボクはアカイさんについていきます。一ポケモン博士として、ガムートの暴走に原因があるのなら、ちゃんと調査したいのです!」

 

「それじゃ、組み分けは決まったようなもんじゃねえか。ギンガ団がガムート暴走の原因調査、コンゴウ・シンジュ両団で原因解明までの足止め、だな!」

 

「さっき話を聞いたんだけど、ハマ先生が事前に他の地域にいるキャプテンに文を飛ばしたらしいんだ。今はキクイとノボリさんが前線で応戦してて、ユウガオさんが後方で薬を用意して支援してくれている。

シンジュ団はコンゴウ団と共に、総力を持ってガムートを止める!だから、ガムートの暴走の原因、しっかり調査してね、ショウさん!」

 

「はいっ!」

 

集落の存亡を賭けた一大事に、皆が手と手をとって協力している……これが、この世界にとって必要な、理想的な姿なんだろう……。

 

「ガムートと、一手交えるのか」

 

「……アカイ殿、あのガムートはアカイ殿の故郷に住まうポケモンと聞いた。すると、ガムートが苦手としているタイプについても存じているはず……是非、教えて欲しい!」

 

「……わかった。

ガムートはこおり単タイプのポケモンで、みずに強く、ほのおとでんきに弱く、こおりとドラゴンが効かない体質をしている。仮に戦闘するなら、ほのおポケモンで対抗するのが無難だろう」

 

「ほのおなら、あたくしのウインディがいますわ」

 

「あたしもブーバーンがいるよ!」

 

そう言いながら、ガラナさんとワサビちゃんはそれぞれモンスターボールを持ち出した。

 

……そう、今回の時空の歪み事件をきっかけに、コンゴウ団とシンジュ団の間にもモンスターボールが流行りだしたのだ。特に、巨大ポケモンをモンスターボールで捕らえることで鎮める、という一連の流れが関心を呼び、実際に捕らえられた巨大ポケモンたちが軒並み大人しくなっていることから高い評価を得られた。

元々モンスターボールを使っていたシンジュ団のノボリさん、そしてベリオロスを守るためにボールを使ったコンゴウ団のワサビちゃんと、奇しくも各組織にボール使用経験者がいたことも、この流行を後押ししていた。特にギンガ団以外の者がモンスターボールで巨大ポケモンを御していたという事実は衝撃的だったようで……ワサビちゃんの存在が、大きな呼び水になっていたようだ。……当のワサビちゃんは苦笑いだったけどね。

 

「ふむ……であれば、倒しきることはできずとも足止めはできるだろう。だが、くれぐれも無茶はしないように。あの巨体で暴走とくれば、同じ巨大ポケモンでなければ対等にはなれないだろう。ライゼクスに襲われたガラナ女史なら理解できるだろうが、気をつけるように」

 

「もちろんですわ」

 

「うん!」

 

「では、各自行動を開始しよう。各々、己が役割を果たすように!」

 

応っ!!という掛け声とともに、私たちは一斉に行動を開始した。

橋を渡ったあとは、私をはじめとする調査隊は心形岩山方面から迂回して、ガムートが元々いた極寒の荒地と豪雪谷の境界地を目指す。

カイさん率いる迎撃組は、そのままクレベース氷塊方面を南下して、極寒の荒地でガムートを迎え撃つ。

なんとしても、原因を解明しなければ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガムートとコンゴウ・シンジュ連合のバトルを横目に、私たちは目的地へ向かう。その際、ガムートの姿を盗み見たけど……なんだ、あのデカさは。体長……というより、体高がヤバい。脚の太さなんて大人何人分……?人間なんて簡単にペシャンコにされそうなんだけど……。さらにその向こうには、雪原キングが倒れていた。あのデカさなら、雪原キングと対等どころか倒してしまえるのも納得か……。

 

「で、でけぇなぁ……」

 

「ガムートは牙獣種最大の大きさを誇るポケモンだ。最小サイズでも体高は20mは下回らないぞ」

 

「そんなに大きいの!?」

 

うへぇ……こんなに大きいポケモンは初めてだ……。アカイさんの地元、ますます行ってみたくなったかも。

現場に到着した私たちだけど、そこはいつもどおりの風景が……いや、待って!

 

「あれ……」

 

「ん?」

 

私が指をさした先には、大量のイノムーやウリムー、そしてマンムーが集まっていた。多分、群れかな……まるで輪になるように集まっているようで……私はウォーグルにライドして空から様子を見ることにし、テル先輩たちにはそのまま群れに近づいてもらうことにした。

空からなら、いろんなことが見えてくる。実際に空を飛んで見下ろしてみると、群れの中心に一際小さなウリムーの姿が見えた。……ただ、遠目で見てもはっきりとわかるくらいに弱っている。そして、時折見える紫の発光……まさか、毒状態?そして、群れから離れた場所に、なにか別のものの存在も見えた。こちらは遠めではわからない……私はひとまず降りて合流し、実際に見たものを博士たちに伝えた。

 

「そこで、テル先輩とアカイさんにはそのナニカの確認をお願いします。私とラベン博士で、群れの方を見てきますので」

 

「わかったよ、ショウ!アカイさん、行きましょうか」

 

「ふっ……あまり張り切りすぎるなよ、テル少年。頼られて嬉しい気持ちはわかるがな」

 

「ばっ!?ちょ、なっ!?い、いいから行きますよ!!」

 

「はっはっは」

 

「"はっはっは"じゃなくてぇ!!」

 

……テル先輩とアカイさん、いつの間にかあんなに仲良くなって……。

 

「それじゃあ、私たちも行きましょうか」

 

「そうですね!」

 

私は事前に用意していたものを手に持ち、群れの方へと近づく。ある程度接近すると、マンムーたちは露骨に激しく威嚇してきた。……ウリムー・イノムー・マンムーのオヤブン個体も勢ぞろいか、対応をミスるとマズイな……。

 

「……あなたたちの群れの中に、病気になっている子がいると思う!病気に効く木の実を持ってきたから、私たちにあなたたちの子供を助けさせて欲しい!!」

 

「…………」

 

そう言って、私は手に持つモモンの実を見せながら、必死に訴えた。彼らも困惑……というより、迷っているのかお互いに顔を見合わせている。木の実だけでは心もとない……ということで、私はまんたんのくすりのクラフト材料であるオボンの実とキングリーフも取り出した。流石はポケモン、材料元は知っているようで幾分か警戒が和らいだように思える。

私がゆっくりと近づいていくと、近づくにつれて群れが道を開けるようにどけてくれた。ラベン博士とともに群れの中心部にたどり着くと、毒に侵されて弱りきっているウリムーがいた。私はすぐにオボンの実とキングリーフをまんたんのくすりにクラフトすると、モモンの実と一緒にウリムーに施した。しばらくすると、ウリムーはすっかり元気になったようでぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

 

「ウリー!」

 

「よかったね、ウリムー」

 

「では、アカイさんとテルくんに合流しましょう!」

 

「ですね」

 

こっちの問題は解決した……あとは、テル先輩たちがナニカの正体をつかめたらいいけど……。

 

「ショウ、こっちだ!」

 

「テル先輩」

 

極寒の荒地の方へ向かうと、テル先輩が手を振ってくれている。急いでそちらへ向かうと、テル先輩とアカイさんは下を向いていた。

 

「これを見てくれ」

 

「これは……」

 

それは、なんというか……グシャグシャに潰された肉塊だった。ただ、潰した足の大きさからして、アカイさんはガムートの仕業だという。

 

「ミンチよりひでぇよ……どうしてガムートはこんなことを?」

 

「それに、この死体……紫の爪っぽい形状、これは……」

 

「間違いないですよ、ショウくん。これはニューラなのです!」

 

ラベン博士の言うとおり……ガムートに潰された死体の正体は、ニューラだった。そして、直前に見た毒を負ったウリムー……まさか……!!

 

「……ガムートは、ウリムーを傷つけられた報復として、ニューラを……?」

 

「この死体が下手人なら、報復は既に終えたはず……ですが、ガムートは現在も侵攻中です。どういうことでしょう……」

 

「簡単な話だろう、ラベン博士。……ガムートは、この純白の凍土からすべてのニューラを一体残らず殲滅するつもりなのだろう。ニューラの生息地はクレベース氷塊を中心に集落方面から氷河の段丘にかけて広がっている……もしもこれらが一ヶ所に集まっていて、なおかつ集落方面に避難していたとしたら?」

 

「……!!ガムートがニューラへの報復のために、集落方面に侵攻する理由も納得がいくのです!」

 

「でしたら、ウリムーを既に治療した事を伝えれば止まるんじゃ……」

 

ガムートが侵攻する理由はわかった。それなら、ウリムーが完治したことを伝えて、侵攻は不要だということを伝えればなんとかなるかも知れない。そう思ってアカイさんに進言したのだが、彼は力なく首を横に振るだけだった。

 

「ガムートはそう単純なポケモンではない。……君は、大事な家族が貶められたものの示談が成立したからといって、黙って見ているだけで済ませるか?やられた側には、大きく深く傷が残るもの……たとえウリムーの傷が治ったからといって、ウリムーが傷つけられたという事実は無くならない。

ガムートはな、堪忍袋の緒が切れたのだ。我が子も同然のポケモンが、自身の不注意によって襲撃を許し、あまつさえ怪我してしまった。怒り狂ったガムートは、最も安全かつ確実に我が子らを守るための方法として、ニューラ殲滅を選んだ……ということだろう」

 

「……!!」

 

そこまで強い思いがあったなんて……私は、ガムートのことを軽視していたのかもしれない。人間よりもずっと情の深いポケモンなんだ……。

 

「だが、これでウリムーを傷つけた犯人がニューラで、ガムートはマンムー族をポポの同族として扱いこれを守護していた……という、私の仮説が正しかったことが証明されたわけだ。ついでに、ガムートがニューラへの報復目的で行動を起こしたことも、な」

 

はっ……!!まさか、調査隊室でラベン博士から図鑑を見せてもらっていたのは、その仮説を裏付けるため!?そして、ある程度裏が取れたから今度は実際に現場を目にすることで、仮説が正しかったことを確実なものにしたということ!

すごい、アカイさん……!この人、天才だ……!!

 

「さあ、迎撃組と合流しよう。ウリムーの完治報告だけでは、ガムートは止まらない……本格的な迎撃が必要だ。そうなると、ショウが連れている巨大ポケモンたちの力が必要だ」

 

「はい!」

 

私たちは再びシンジュ集落へと向かう。その途中、クレベース氷塊の一番大きな氷塊の前にカイさん達が集まっているのを見つけたので、私とアカイさんはそちらへ向かった。テル先輩とラベン博士には、シンジュ集落内に避難した可能性があるニューラたちを探すように頼んでおいた。

 

「カイさん!」

 

「ショウさん!」

 

「おう、ショウ!ガムートが暴走した原因はわかったのか?」

 

「はい、実は……」

 

私はカイさんとセキさんに、調査した結果を報告した。話を聞き終えた二人は、かなり難しそうな表情をしていた。

 

「なるほどな……子供を傷つけられた報復に、ニューラを……」

 

「それだけじゃありません。ガムートは、この凍土に生息するすべてのニューラを皆殺しにするつもりです。そして、そのニューラたちがシンジュ集落の方向に避難している可能性があるんです」

 

「なっ……全部か!一体残らず!?」

 

「はい」

 

「おーい!!」

 

するとテル先輩たちが戻ってきた。あの様子、もしかして……。

 

「見つけたぞ、ショウ!集落の奥にある温泉!そこに集まってた!!しかも、オヤブン個体も含めて、みんな一様に何かに怯えているようだったぞ……」

 

「……ガムートの怒気と殺気に当てられたのだろう。人間の生活圏が、ポケモンが近づきにくい場所だと知っていたのかもしれんな……だから、そこに逃げた。誰も気がつかなかったのは、雪原キングとガムートの戦いに、シンジュ団が気を取られていたからだろう」

 

「な、なんという……」

 

「パオオオオオオオオオンッ!!」

 

カイさんが愕然としている中、ガムートの咆哮がけたたましく響いた。振り返ってみると、ガムートが前足を振り上げてふみつけたり長い鼻を振り回している。その周囲にはキクイさんとヌメルゴン、ガラナさんとウインディ、ノボリさんとダイノーズがおり、ガムートと戦っているようだった。ワサビちゃんは三人よりもやや後方でドサイドン、ブーバーン、ルカリオの三体を繰り出して、三人をそれぞれ援護しているみたいだ。ほかにも、シンジュ団員たちがガムートを包囲しつつ、相棒ポケモンの特殊攻撃による遠距離攻撃で牽制を仕掛けている。

……あれだけの総攻撃を受けているにも関わらず、ガムートはまるで意に介した様子もなく、目の前の邪魔者を排除しようとしている。なんて高い防御力なんだ……。

 

「あああ!まったく!!これだけ攻撃を浴びせているのに、まるでびくともしないね!ヌメルゴン、てっていこうせん!!」

 

「流石は巨大ポケモン……たいしたものですわ……!ですが、負けるわけには参りません!ウインディ、かえんほうしゃ!!」

 

「聞きしに勝る、不動の山神……ですが、お客様の進行ルートはこちらではございません!脱線事故は、早急に解決します!ダイノーズ、パワージェム!!」

 

キャプテン自慢の手持ちポケモンたちの一斉攻撃……しかし、ガムートはそんな総攻撃すら、鼻を一振り振り回すだけで全て打ち消してしまった!

 

「まだだ!ヌメルゴン、アイアンヘッド!!」

 

「ヌメーッ!!」

 

ヌメルゴンが正面からアイアンヘッドをガムートにぶつけた……が、僅かに動きを止めただけで、あっさりと押し返されてしまった。それどころか、素早く伸ばされたガムートの鼻に絡めとられ、ヌメルゴンが捕まってしまった!

 

「ヌ、ヌメーッ!?」

 

「ヌメルゴンッ!!」

 

「……!ウインディ、ヌメルゴンの救助を!フレアドライブ!!」

 

「わおおんっ!」

 

ウインディがヌメルゴンを助けるべく、ガムートの側面からフレアドライブで突撃する。だが、ガムートは冷静にそちらへ振り向くと鼻を振り回して、ヌメルゴンをぶつけるという方法でウインディを吹っ飛ばしてしまった!

 

「きゃうんっ!!」

 

「ウインディ!」

 

「ダイノーズ、ラスターカノンです!」

 

「ノーッズ!」

 

今度はダイノーズがラスターカノンを構えるが、いち早く反応したガムートはなんとヌメルゴンを直接投げつけてダイノーズを撃ち落としてしまった!

 

「ヌメ"ッ!!」

 

「ノ"ッ!?」

 

「ヌメルゴンッ!!」

 

「ダイノーズッ!!」

 

キクイさんとノボリさんが急いで相棒の下へ駆けていく。キャプテンの相棒たちはダメージを負って肩で息をしているのに対し、ガムートは余裕綽々といった様子で右へ左へと鼻を揺らしている。

キャプテンたちは一度集まり、態勢の立て直しを図った。

 

「くっ……つ、強すぎるね!ショウさんはこんなのと同格のポケモンを何体も相手にしたのかね!」

 

「えぇ……それだけでなく、その力を御することにも成功しています。本当に、すごい方ですわ……」

 

「だからこそ、我々はショウさまが戻ってこられるまでガムートを足止めせねばなりません。これ以上の侵攻は、重大な事故につながりますので」

 

「ガッムーッ!!」

 

ガムートが大きく口を開くと、その口から激しいふぶきを放った!普通のふぶきとは違う……明らかに過剰威力だ!直撃したらオーバーキルじゃすまない……!!

 

「ブーバーン!力強く、かえんほうしゃ!!」

 

「ブバー!」

 

「ルカリオははどうだん!ドサイドンはストーンエッジ!」

 

「クアァオッ!」

 

「ドッセェイ!」

 

と、ここで割って入ってきたのはワサビちゃん!ブーバーンの力業かえんほうしゃが拮抗している僅かな隙に、ルカリオとドサイドンの同時攻撃が決まった!ドサイドンのストーンエッジがガムートの顎を勝ち上げてふぶきを強制的にシャットアウトした直後、ルカリオのはどうだんが顔面にヒット!ガムートは一歩、二歩と後退……これは効いたか……?

 

「おぉ、ワサビさん、見事!」

 

「みんな、油断しちゃダメ。ガムートはまだまだ元気だよ」

 

キクイさんが歓声を上げるが、ワサビちゃんは至って冷静だ。……流石、ベリオロスと絆を紡いだだけはある。巨大ポケモンの脅威を、正しく理解しているからこその冷静さだ。

さて、私たちもそろそろ合流しよう!!

 

「みんな、お待たせ!ショウさんが戻ってきたよ!!」

 

「ショウさん!待ちくたびれたね」

 

「ショウさま、なにかお分かりになったことがありましたでしょうか」

 

「はい、ノボリさん。実は……」

 

私はガムート暴走の原因と、その後の対処法などを説明した。

 

「うむむ……まさか、ガムートと懇意にしていたウリムーをニューラが傷つけ、その報復として凍土中に生息するすべてのニューラを殲滅しようとするとは……とんでもなく大激怒しているね。その恨み辛みの根深さ、想像がつかないね」

 

「さらに、ニューラたちが安全圏として人間の住処であるシンジュ集落内へ避難したことで、結果的にシンジュ集落がガムートに狙われることとなるとは……」

 

「……ニューラたちも、この純白の凍土で生きる一個の命です。安易に差し出して絶滅させるわけには参りません。しかし、元気になったウリムーを見せつけてももはや止まらぬ程に怒り狂っているとなると……」

 

「……私が、ガムートと勝負をします」

 

「ショウさん……!」

 

……と、言ったものの……実は今、すこぶる状況が悪いのである。

現在、凍土は猛吹雪……そう、いつかワサビちゃんと戦った時と同じ荒れ模様である。これではリオレウスを繰り出すことはできない。加えて、リオレウスを連れて行く際にライゼクスが暴れそうになり、それを宥めてもらっていたためディノバルドも置いてきてしまった。

ジンオウガとラギアクルスはタイプ相性で不利……ベリオロスは同タイプ同士だけど、耐久力と体格に差があるために持久戦に持ち込まれると難しい……。

空を飛べず、しかしガムートとのタイプ相性で有利を取れて尚且つガムートと遜色ない耐久力と体格とくれば……!

 

「グラビモスに全てを掛けます。"鎧竜"と呼ばれる彼なら、きっとガムートを止められます!」

 

「よしっ、ならそれで行くか!」

 

「おれも、今回は見ているだけじゃないぞ。精一杯援護させてもらうからな、ショウ!」

 

「はい、先輩!」

 

「……ショウさん。実は、私に考えがあるの。聞いてもらえる?」

 

「カイさん?」

 

カイさんの作戦とはこうだ。

まず、カイさんをはじめとする全戦力でガムートを正面から迎え撃ち、気を引き付ける。その間に、ガムートに感づかれないように私がガムートの側面に回り込む。ガムートが完全に釘付けになったタイミングを見計らって、私がグラビモスを繰り出して不意打ちを仕掛ける。その巨体と重量によるギガインパクトの不意打ちでガムートを横倒しにして、動けない隙を突いて一斉攻撃を仕掛ける、というものだ。

 

「本当はここまでのことはしたくはなかったんだけど……集落の存亡の危機に、非道も王道も選んでられない。集落を守ってみせる……なんとしてでも、ここでガムートを倒すんだ!」

 

「おめえが覚悟を決めたって言うなら、オレたちだって文句は言わねぇよ。よしっ、それなら作戦通りに動くとするか!」

 

「ありがとう、セキ。ポケモンの回復が必要な人はすぐに後退してほしい。後方にてユウガオさんが薬を作って支援してくれているからね。……よしっ、みんな。やるよ!!」

 

カイさんの掛け声とともに、私たちは一斉に行動を開始した。まず、ガムートに不意打ちを仕掛ける私は、ガムートのことをよく知るアカイさんを伴って側面へと隠密で移動する。

その間に、テル先輩とカイさん、セキさんの三人も加わった迎撃組が、全力でガムートを攻撃する。ガムートも先程よりもより激しさを増した攻撃に苛立ちを隠せないのか、長い鼻を振り乱して迎撃組を追い返そうとしている。よし……幸いにして、ガムートはまだ気づいていない……このまま行けば……。

 

「……むっ」

 

「アカイさん?」

 

「マズイな……」

 

「え?」

 

マズイって、一体――

 

「パオオオオオオオンッ!!」

 

ガムートが大きく咆哮を上げると前足を大きく持ち上げてそのまま地面に叩きつけた。すると、あちらこちらからだいちのちからが広範囲かつ断続的に放たれた!

 

「うわあああ!?」

 

「な、なんだこの攻撃範囲!?」

 

「パオオオオオッ!!」

 

ガムートがさらに吠えると、上空に氷の柱が出現した。あれは、つららおとしの技!というか、氷柱がデカイ!大の大人ほどの巨大なサイズだ!!

足元ではいまだだいちのちからの攻撃が止んでいないにも関わらず、ガムートは立て続けにつららおとしを放つ!

 

「くっ!こいつぁ……!!」

 

「セキ!気をつけて!!」

 

「わかってらぁ!カイ!!ワサビも無理するんじゃねえぞ!」

 

「了解だよ!」

 

「一度距離を取るしかないね!後退するぞ、ヌメルゴン!」

 

「ウインディ!ヌメルゴンの援護を!!」

 

「テルさま!ダイノーズのビットに掴まってください!」

 

「ありがとうございます!ノボリさん!!」

 

流石、勝負に手馴れている人はお互いにフォローし合っている。ただ……。

 

「た、助けてくれぇ!!」

 

「ひいぃ!目の前に氷柱が!!」

 

「ど、どこに逃げたらいいんだぁ!?」

 

シンジュ団の一般団員たちはてんやわんやと右往左往。それも仕方がない……今や戦場は上から氷柱が、下からエネルギー放出が襲いかかって上から下から阿鼻叫喚。ガムートの底なしじみたパワーに、なすすべなく翻弄されている。

 

「きゃあっ!」

 

「カイッ!!」

 

その時、だいちのちからを避けたところへつららおとしが放たれたことで、カイさんはバランスを崩して倒れてしまった。そこへ接近してきたガムートが大きく鼻を振り上げている!

 

「ブアァー!」

 

「あっ……!!」

 

ガムートの鼻が振り下ろされようとした、その時だ!カイさんのブースターがカイさんに体当たりをして、その攻撃範囲から逃がしたのだ。当然、ブースターが避けられるはずもなく……雪が舞い上がるほどの強烈な勢いで、ブースターめがけて鼻が叩きつけれられた!

 

「ブースターッ!!」

 

「ガムーッ!!」

 

「ああっ!!」

 

さらにガムートは倒れ伏すブースターに対し、鼻からふぶきに似た雪の暴風を吹き付けて吹っ飛ばしてしまった!慌ててブースターに駆け寄るカイさん……だが、巨獣は決して待ってはくれない。

 

「パオオオオオオオオオンッ!!」

 

「……っ!は、はかいこうせんだ!!」

 

「退避っ!退避いぃっ!!」

 

だいちのちからとつららおとしのコンボ攻撃は止んだのも束の間、こんどははかいこうせんを放ったのだ!はかいこうせんを放ったまま右へ左へと照準を動かし、辺り一帯を攻撃するガムート。シンジュ団員たちは大急ぎでガムートから離れていき、安全圏へと避難する。

 

「カイ!逃げろっ!!」

 

「……っ!!」

 

セキさんたちも退避しようとしたけれど、ブースターを介抱していたカイさんが逃げ遅れてしまった!急いでセキさんがそちらへ走って行くも、ガムートは両者を分断するようにはかいこうせんを地面に叩きつけた!

しかもそのまま、はかいこうせんの照準はカイさんの方へ……っ!!

 

「あっ……」

 

「カイィィィィィィィィィィッ!!」

 

カイさん……!!

 

 

 

 




次回予告的ななにか

怒り狂う巨獣は、立ち塞がる全てに牙を剥く。
集落を守るべく奮闘する少女に対し、その脅威が迫る。
少女の運命は……そして、巨獣の怒りを鎮める方法は……!

……いやぁ、それにしてもガムートは強敵ですねぇ。
ガムートのタイプ相性は次回の後書きにて!
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