ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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書いてしまったぞ、どうしてくれる。
こちらはショウちゃん視点となります。


其の邂逅(であい)は霹靂と共に

「ギンガ団を退団してもらう」

 

その一言に、私の頭の中は真っ白になった。

アルセウスを名乗る何者かによって、着の身着のままこのヒスイ地方に飛ばされた私は、コトブキムラの人達に拾われた。

知ってる人が誰もいない中、私はムラの人の信頼を得ようと必死になって働いた。死に掛けたことだって数えきれないほどある。……なのに、ムラのみんなはあっさりと私を見捨てた。

 

信頼を得るために、皆の頼みだって嫌な顔一つしないで請け負った。依頼だってどんなに困難だろうと、一生懸命にやってきた。なのに、なのに……その結末が、こんなのって……そんなの、あんまりだよ……。

荒ぶるキングを鎮めてこいと命令したデンボク団長に至っては、鎮めた結果時空の裂け目が悪化したことをすべて私のせいだと決めつけてきた。

「お前の実力は認めているから身の潔白を証明するための調査の機会を与える」……と、体のいい言葉を使っているけど、15の娘をムラの外に放り出して一人で調査しろだなんて……それってつまり、「死ね」ってことでしょ?

直接手を下すのは後味が悪いからなのか……どちらにしても、良い意味ではないのは間違いないだろう。

 

セキさんとカイさんは団長を宥めようとしていたけれど……二人にもそれぞれの団長としての責任があるからか、それ以上は何もできず。また、私を受け入れることさえできなかった。

博士やテル先輩は団長に抗議すると息巻いていたけど、さすがにそれは二人に迷惑を被ってしまうので私とシマボシ隊長で止めておいた。

シマボシ隊長も、門までで良かったのにわざわざ原野ベースまで同行してくれて、しかも絶対死なずに問題を解決して帰って来いと激励までしてくれた。調査のための便宜も図ってもらった……何から何まで、頭の上がらない素晴らしい隊長だ。

 

そうして私は三人に見送られ、一人で削り橋の上に立っていた。時空の裂け目から落ちてきてから、今に至るまで……本当に、目まぐるしい日々を送っていた。思い出すのは忙しくも充実した日々……嬉しい悲鳴という言葉の意味がよく分かる、そんな毎日。

 

先が見通せないこれからのことに不安を抱いていると、野生のコリンクが声をかけてきた。

「何してるの?」と言いたげな純粋な目に、私はほんの少しだけ心が癒された。そのコリンクは、すぐに仲間のルクシオたちと共に去って行ってしまったけど。

 

「……頑張ろう」

 

先のことなんてわからない。

どうすればいいのかわからない。

何をすればいいのかわからない。わからないことだらけで、この場に突っ立ったまま一日が過ぎてしまいそうだ。

……ともかく、ここにはもういられない。あまりじっとしていると、野生ポケモンに襲われる可能性がある。私はすぐさま移動を始めた。一先ずは雨風を凌げるような、隠れられる場所を探そう。

 

「絶対に、負けない」

 

決意を胸に、私は歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

何とか、一日は乗り越えた。

ただ、この一日を乗り越えるのに随分と神経がすり減ったように思える。

どこに行ってもポケモンだらけで、少なくとも調査のおかげですぐに襲ってくるポケモンとそうでないポケモンの区別はついていたから、その知識を頼りに野宿できる場所を探した。ただ、やはりポケモンたちにもそれぞれのテリトリーがあるわけで、私が何もしてこないとみるや否や、大人しい筈のポケモンたちでさえ私をテリトリーから追い出そうと襲い掛かってきた。

そうして一日中、黒曜の原野を駆けずり回った。ポケモンたちにも見張りを頼み、休める時に休んで英気を養う。……あまり養えた気はしなかったが。

 

そして、私は一日を生き延びた。でも、だけど。

たかが一日、されど一日……その一日で、私の心は散々に打ちのめされた。帰る場所がある事のありがたみと、それを奪われた怒りが心を満たしてくる。

今、私は蹄鉄ヶ原にいる。オヤブンギャロップが縄張りとしている場所に生えている、きのみが狙いだ。空は赤いままだが、今は曇天が広がっているのでその赤は見えない。多分、この様子だと雨が降るはず。雨が降ればポニータやギャロップは姿を消すので、それまで待つことにした。

 

「…………」

 

岩にもたれかかり、脚を抱えて座り込む。小山座りと呼ばれる座り方だ。そのまま雨が降るまでじっとする。万が一にもバレないように、息を殺して身を潜ませる。

ぐぅ、とお腹が鳴った。私は咄嗟に周りを見渡し、気づかれていないか確認する。よかった、バレてないみたい。

 

「はぁ……」

 

憂鬱な気持ちをため息にして吐き出す。ため息を吐くと幸せが逃げるとは言うが、この状況ではため息の一つでも吐かないとやってられないのである。

 

「……どうして」

 

どうしてこんなことになってしまったんだろう。昨日からずっと呟き続けてきた、私の気持ち。

もう何度目かなんてわからない、たった一日で随分と同じことを言い続けてきた気がする。

 

「こんなはずじゃ、なかったのにな……」

 

何が悪かったんだろう?私がもっとムラに貢献すればよかった?

何がいけなかったんだろう?私が時空の裂け目から落ちてきたから?

何が足りなかったんだろう?言われたこと、何一つ過不足なく果たしてきたのに?

 

「……うっ、くっ……。ひっく、えぐっ……うぐっ……」

 

辛い。憎い。悲しい。許せない。苦しい。怖い。

様々な負の感情が私の頭をグルグル回る。涙が溢れて止まらない。あれだけ覚悟して、決意したと思ったのに……存外、私はただの15歳の小娘に過ぎないらしい。何もかもが足りなかった、決意も覚悟も。

この広大な世界で、ポツンと一人ぼっちになってしまった。行く当ても頼れる人もいない、この世界で。

雨が、降ってきた。まるで、私の気持ちを表すかのように。ギャロップもいなくなるだろうけど、私は動くことすらできなかった。どうやら……私の心は、折れてしまったらしい。

 

「寒い……」

 

雨に濡れた体から、体温が奪われていく。冷たくなっていく感覚に、私は死を予感した。

……死ねば、元の世界に帰れるのかな?実は今までのは全部夢で、ここで寝て覚めたら、全てが元通りになったりしてないかな?

 

「……帰りたい……。お母さん……お父さん……会いたいよぉ……」

 

誰か。

 

「だれか……」

 

だれか……。

 

「たすけて……」

 

そう呟いた、その直後だった。

 

 

 

 

ドガアァァンッ!!!!!

 

 

 

 

一瞬、目の前が真っ白になったかと思うと同時に、すぐ背後で爆音が響いた。落雷したのかもしれない。私は状況を確認しようと立ち上がろうとして……すぐにその動きを止めた。

 

ズシンッ。

 

足音。それも、かなり大きい。この足音は明らかに蹄ではないから、オヤブンギャロップではない。その足音が、徐々にこちらに近づいてくる。そして……

 

「グウゥゥゥ……」

 

「……ッ!!」

 

ソレ(・・)は、姿を現した。

胴体部を覆う青緑の鱗。

頭部や背面、腕部などに立ち並ぶ黄色の甲殻。

そして腹部や首回りなどを中心に生え揃った白色の体毛。

頭の二本角に、団長の体程はありそうなほどに太い前脚。

あらゆるものを切り裂いてしまいそうな鋭利な爪。

何よりも、ハガネールは優に超えるであろう、その巨大な体躯。

そんな見たことも聞いたこともないポケモンが、岩陰からのっそりと姿を現した。

 

「あ……」

 

どうやらここにきて、腰を抜かしてしまったらしい。私の体は動かなくなってしまった。

謎のポケモンは、オヤブンギャロップの首を口に咥えている。ギャロップは絶命しているのか、炎の鬣は消え失せ、ぐったりとしていた。

 

「グルゥ……」

 

そのポケモンは私に気付いたようで、実に緩慢とした動きでこちらへと首を回した。蒼い瞳と目が合う。

しばらくこちらを見つめた後、ポケモンは首を一振り回し、咥えていたオヤブンギャロップを川へと投げ捨ててしまった。そしてゆっくりとした動作で私の正面へと回り込んできた。

 

……死。私の脳裏にそんな言葉がよぎるとともに、心内には諦めにも似た感情が沸き上がる。

おそらく、私はこのポケモンに食われて死ぬ。相棒のポケモンたちを繰り出すよりも、おそらく目の前のポケモンの方が速い。だから、せめてみんなを巻き込まないようにそっと腰からモンスターボールを外す。よかった、バレていない。

 

そして、私は迫り来るであろう死を覚悟して、膝を抱えてそこに顔を埋めた。死の瞬間を見続けられるほど、私の心は強くないから。

 

「……?」

 

しばらく待ち続けるも、一向にその瞬間が来ない。私がそっと顔を上げると……なんと、謎のポケモンはお座りのような姿勢で私をじっと見つめていたのだった。

この時、初めてこのポケモンの尻尾も見たが、こちらも長く太い。棘状の突起が多いから、振り回すだけで脅威だろう。

何でこのポケモンは、何もしてこないんだろう。ギャロップを咥えていたから、肉食系のポケモンだと思ったのに……それに、あの目は……。

 

「(どうして……そんなにも優しい目で、私を見るの……?)」

 

まるで、幼子を見るような……悲しそうで、優しそうな目で、私を見ていた。

どうして、このポケモンが私をそんな目で見るのかはわからない……だけど……。

 

「……ねえ……」

 

「……?」

 

「……聞いて、くれる……?」

 

「……(コクン)」

 

「ありがとう……」

 

気が付いたら、私は目の前のポケモン……彼に、これまでのいきさつをすべて話していた。

時空の裂け目から落ちてきたこと。

コトブキムラに拾われたこと。

ムラの人たちの信頼を勝ち取るために頑張ってきたこと。

その結果、時空の裂け目に変化が起きたこと。

その原因が私にあるんじゃないかと疑われ、追い出されたこと。

全部、全部、話してしまった。目の前の、何者かもわからない謎のポケモンに。

 

「私、わたし……頑張ったんだよ?頑張って、頑張って……がんば、って、きたんだけどなぁ……」

 

「……クゥーン……」

 

そうして私が再び涙を流すと、彼はそっと顔を近づけて頬ずりをしてきた。

これって、もしかして……。

 

「……慰めて、くれるの……?」

 

「ウオオォーン……」

 

そう尋ねれば、そうだと言わんばかりに遠吠えをする彼。初めて出会うはずの未知のポケモンが、私のことを思いやり、心配すらしてくれている。

 

「……ハハッ……」

 

人間に捨てられた私が、今度はポケモンに助けられるなんて……。

 

「ありがとう……」

 

「…………」

 

彼はさらに姿勢を低くするように座り込むと、尻尾をこちらに差し出してきた。さらに彼は首の動きで自身の背中を示している。

 

「……もしかして、乗れってこと?」

 

「……(コクン)」

 

「……!!」

 

相変わらず、その目は優しさを湛えている。私も小さく頷くと、一度外したモンスターボールを再び腰に装着して、尻尾から乗ってそのまま背中まで一気に登った。かなりの高さがあるから、意外と眺めが良かった。

 

ウオオォォォーーーンッ!!

 

「きゃっ!」

 

彼は大きく鳴くと同時に、一気に駆けだした。

アヤシシにライドしている時とは全然違う!アヤシシが跳ねるように駆けるなら、彼は力強く踏み込み駆ける。多分だけど、彼の太い前脚だからこそこれだけの力が発揮できるんだと思う。

 

川だって簡単に跳び越えて、崖だって一度のジャンプで簡単に越えてしまった。その度に上下に揺さぶられる私だけど、彼も気を遣ってくれているのか、飛んだり跳ねたりするたびに首を動かしてこちらへと視線を投げかけてくれた。その度に大丈夫だと知らせるように、彼の背中を何度も撫でた。

それと、彼に乗っている間はとても不思議だった。道行く先にいるポケモンたちが、我先にと逃げて行ったのである。私が乗っているこのポケモンのことを、とても恐れているようだった。

 

そうしてシシの高台も越えて行って、奥の森に辿り着いた。巨木の戦場を通り過ぎて、奥の森のさらに奥へと向かって行く彼。やがて彼の体がすっぽり入ってしまいそうな、大きな穴へとたどり着いた。そのまま穴の中へとゆっくりと入っていく。

どうやらここが、彼の住処らしい。ゆっくりと座り込むと、尻尾を滑り台のようにしてくれた。彼に感謝しながら、私は彼の背中から降りた。

 

改めて、彼の姿をよく見てみる。どことなくライボルトのような印象を抱きそうだけど……もしかして、ライボルトのリージョンフォームなのかな?それにしてはライボルトの姿からあまりにもかけ離れすぎだけど。

走っている時、足元を電撃が走っていたから多分だけどでんきタイプ。でも、それ以外のことはまだわからない。もっと調査しないと……って、あぁ、ダメだなぁ。

すっかりギンガ団としての職業病が染みついちゃってる。けど、それとは別に彼のことは純粋に気になっている。一体どんなポケモンなんだろう。

 

「……っと、そうだった」

 

今の状況をポケモンたちに説明しないと。私は手持ちのポケモンたちを外に出し、この状況を説明することにした。した……の、だけど……。

 

「「「!?!?!?!?」」」((((;゚Д゚)))))))ガクブルガクブル

 

「「グルルルル……!!」」

 

「ウキャキャキャキャッ!!」((*´゚∀゚`*))wwww

 

全員を外に出した途端、彼を見た反応は様々だった。

ミミロップとロズレイドとライチュウはお互いに身を寄せ合って彼に対して怯えているし、ダイケンキとガブリアスは彼を見るなり威嚇し始めてしまった。ゴウカザルに至ってはそんな皆を見て笑ってるし……。

 

「…………」

 

そして彼は彼で、なんかすごく微妙な表情で私の手持ちを見ていた。

 

「もうっ!みんな、彼は敵じゃないわ!雨に降られたところを助けてくれたんだから、そんな反応しないの!」

 

「「「「「…………」」」」」(・ω・`)

 

「ウキャキャキャキャッ!!ギャッハハハハハ!!」

(。 ノ∀<)σwwwwwwww

 

「ゴウカザルッ!いつまでも笑っていないの!!」

 

それにしてもゴウカザルは笑いすぎよ!何がそんなに面白いのよ……。

 

「クックッ……」

 

「……!」

 

挙句、彼にまで笑われてしまう始末……うぅ、凄く恥ずかしい……。

とにかく、必死に彼が敵ではないことと、彼を怖がったりしてはいけないことをしっかりと説明した。ダイケンキとガブリアスは未だ警戒状態だけど、他のみんなは私の言葉に一先ず納得してくれたのか頷いてくれた。

あっ、そうだ。

 

「私、ショウ。これからよろしくね」

 

「ガウ」

 

挨拶は大事だ、それを忘れるなんて……まして相手は恩人ならぬ恩ポケモンなのに。

……さて、これから先はどうしよう。

私としては勝手な都合でこちらを利用するだけ利用して、あっさりと捨てたムラのみんなやデンボク団長のことが憎いという思い。

そして村の長としてギンガ団の団長として、それら全部を守らなければならないという団長の想いもわからなくはないからしょうがないという思いの、二つの思いに揺れている。

組織とは、社会とはそういうものだ。まして、上に立つ者ならば下々にいる人たちのことを考え、守るための行動をとらなければならない。現代を生きてきた者として、そういった社会的な問題は理解できる。けど……理解はできても、感情が従ってくれない。

 

どうすればいい?復讐をするべきなの?それとも目の前の事態を解決するべき?

不安になった私は、思わず彼を見上げてしまう。私の視線に気づいたからか、彼は「どうした?」と言いたげに私の方へと顔を向けてくれた。それだけで安心感を覚えた私は、そのまま彼の前脚に縋りついた。

 

「ねえ……どうすればいいのかな?」

 

「……?」

 

「私、自分を追い出した人たちが許せない。でも、彼らが私を追い出す理由も理解できるの。

だけど……理解できても、納得できない。許せないって思うし、しょうがないとも思う。

ねえ……私、どうすればいいの?わからないよ……」

 

しばらく彼の目を見つめ続ける。彼は変わらず優しい眼差しを私に向けてくれる。しばらく考え込むように目を細めた彼は、唐突に外へ向けて歩き出した。

 

「あっ……」

 

私も慌てて後を追う。手持ちを代表してなのか、ダイケンキもついて来てくれた。

外に出た彼は、ある一点へと目を向けていた。同じ場所へ目を向けると、その先には時空の裂け目が。

 

「グルル」

 

「え?」

 

彼の方へ振り向くと、彼は器用に指を丸めて私の胸へとそっと押し付けてきた。それからダイケンキの方にも視線を向けてから、再び時空の裂け目へと目を向ける。

 

「私と、ダイケンキと、時空の裂け目……?」

 

あの時空の裂け目は、私にとって始まりも同然の場所。ダイケンキとだって、ミジュマルだった頃に落ちてきた場所で……始まりの浜で出会った。私にとっての、全ての始まり……って、あれ?

 

私、最初はどんな気持ちで、あの場所にいたんだっけ……?

 

「…………」

 

「……?」

 

気付けば彼は、今度は巣穴の方へと目を向けていた。

彼にとっての住処……彼にとってここは、いつでも帰ってこられる場所……あ!

 

「そうだ、私……!」

 

元の世界に、帰りたい。お母さんと、お父さんに、会いたい……!

 

「帰りたいんだ……私の、家に……!」

 

アルセウスは言っていた。全てのポケモンに出会え、と。

そして、その後にまた会おう、と。だから、私は……!

どうして忘れていたんだろう。私にとっての原初の願い、元の世界への帰還。とても大切な願いだったのに……!

 

「(それだけ余裕がなかった……ってことかな。まぁ、そんなこと考える暇もないほどに忙しかったし……)」

 

けれど、今……はっきりと思い出した。村の信頼を得るためだとか、困っているコンゴウ団やシンジュ団を助けるだとかあったけど、一番根っこにある感情――帰巣本能と言ってもいい――こそが、私にとって一番重要だったんだ。彼は、それを思い出させてくれたんだ。

結局のところ……私は徹頭徹尾、自分自身のために頑張ってきたんだ。そう考えると、急に肩の力が抜けていった。何というか、気が楽になった。

 

「(そうだよね……私は、私自身のために頑張ればいい。その結果、この状況が良くなればそれでよし。そうでなくとも、元の世界に帰る私には関係の無い話ね)」

 

頭の中がスッキリしていく。「きりばらい」の技を使ったような気分だ。

 

「ありがとう」

 

「……!」

 

なんだか、久々に笑ったような気がする。見れば彼も、わかりやすく笑みを浮かべていた。ダイケンキも安心したように微笑んでいる。どうやら手持ちのみんなにも心配かけていたみたい。後で謝って、そしてお礼を言おう。

 

再び巣穴に戻る。この時、彼が一時的に席を外したけど、ものの数分で戻ってきた。……ボロボロになったオドシシを咥えたまま。そのままオドシシを放ると、器用に前脚でオドシシの解剖を始めた。私でも一口で食べられるようなサイズにまで肉片を小さくすると、それを私に差し出した。

 

「……食べろ、ってこと?」

 

「……(コクン)」

 

「……ゴウカザル、火をお願い」

 

「ウキャ」

 

ポケモンを食べる、というのは中々にない経験だ。食用のポケモンはいるとは聞いていたが、ポケモンが常に隣にいる環境が当たり前だった私にとって、ポケモンは食べ物だ、などと考えたことはない。けれど、生きるためにはポケモンですら食す必要がある……彼はそれを教えようとしているのだろうか。

私はゴウカザルに頼んで火を起こしてもらった。彼が小さくしたオドシシの肉を必要な分だけ木の棒に突き刺して、火に晒す。ポケモンたちは事前に集めた木の実を食べていたが、彼は私が食べなかった分のオドシシの肉の余りを容赦なくバリボリと食べていた。

ポケモン同士の間では食物連鎖が成立するというのは話には聞いていたけど……こうして現実を目の当たりにすると、中々にショッキングな映像だ。

 

血のにおいが充満しないようにと、わざわざ外で食べてもらったことに感謝しながら、私も空っぽの胃の中に食べ物を放り込む。さすが食欲は人類の三大欲求の一つに数えられるだけあって、お腹が満たされると自然と気持ちも落ち着いた。みんなでお腹を満たした後、彼が戻ってきたのを確認してから寝る準備に入る。

 

すると、彼は何を思ったのか巣穴から出て行こうとした。また、見捨てられるかもしれない……そんな風に思いつつも、けれどここは彼の巣穴だからどこへ行こうとも彼の自由なのだと、自分を納得させるような考えがいくつも浮かぶ。けど……。

 

「…………」

 

「……ガウ」

 

じっと彼を見つめていると、私の不安を感じ取ってくれたのか、彼が戻ってきてくれた。そのことに感謝と申し訳なさを感じながら、私は何とか寝る態勢に入る。

 

「…………」

 

ふと、彼の尻尾が目についた。私の体よりも広い幅を持つ、大きな尻尾。

 

「ねえ」

 

「?」

 

「その……尻尾の上、で……寝て、いい?」

 

「!?」

 

我ながら、なんて変なことを聞いてるんだろう……。彼の方からも驚きが表情から伝わってくる。けど、しばらくして尻尾をこちらに差し出してくれたことから、大丈夫、ということだろう。

 

「……おやすみなさい」

 

「ガウ」

 

予想通り、彼の尻尾はかなり幅広く、私が横になってもわずかに余裕がある。尻尾は真ん中に左右を分けるように棘が生えているけど、それを避けて寝ても問題はなかった。

 

次第に睡魔が襲ってくる。こんなにも安心感に包まれて眠れるなんて、ムラの中にいてもそうなかったのに……なんだか……ふしぎ、だ……なぁ……。

 

 

 




と、いうことでショウちゃん視点でした。
多機能フォームとやらを使ってみたはいいものの……上手いこと使えてますかね?自分ではわかりかねます。
それでは、このへんで……ありがとうございました。ノシ
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