ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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竜と浪曼と!モンスターハンターの世界へ!レッツゴー!


狩人たちの世界へ……

アカイさんの友人だというムフェトさんと、彼の手持ちポケモンとのポケモン勝負……結果は私の敗北だった。巨大ポケモンを用いた6VS6のフルバトル……巨大なポケモンたちが縦横無尽に駆け回り技を繰り出す様は熾烈を極めた派手な勝負となった。

そして、古龍級生物ラージャン……あのマガイマガドに勝るとも劣らぬその力に、私の自慢のポケモンたちは全タテされてしまった。……やはり、古龍級生物の壁は高い。超えるには並大抵の努力では全然足りない、やはりリオレウスのような進化が必要かもしれない。しかし、メガストーンを飲み込んで進化って……いや、アカイさんの地元にはメガシンカ個体が野生個体として生息しているくらいだから、普通に進化できてもおかしくはないだろうけど……。

 

一勝負を終えた私たちは一度シンジュ集落に戻ることにした。コトブキムラに帰還するための荷造りをしなければならないからだ。そうして荷物をまとめている最中に、ソレは来た。

 

ズキッ!!

 

「ぐぁっ……!」

 

「ショウ!?」

 

あの、例の胸の痛みだ。よりにもよってみんなの前で……もうちょっとだけ耐えてよ……!

 

「う……ぐっ、うぅ……!」

 

「ショウ!ショウッ!!しっかりしろショウ!」

 

「ショウくん!?急にどうしたのですか!」

 

「わかりません博士!突然ショウが胸を押さえて……なんだか苦しそうです!」

 

痛い!痛い!!痛いっ!!心臓が鼓動を打つたびに、締め付けられるような痛みに襲われる!みんなが心配して駆け寄ってくれるけど、今の私にそれを気にかけている余裕はない……!

 

「あっ、があっ!うあああ……!!」

 

「おいっ、一体どうなってやがる!?」

 

「ショウさんに、一体何が起こっているの!?」

 

「ショ、ショウくんがなにかしらの病気にかかっているなんて話は、今まで一度も聞いたことがないのです!ショウくん、しっかりしてください!!」

 

「(みんなの、声が……だんだん、とおく、なっ……て……)」

 

「どいてっ!!」

 

一際大きな声とともに、何かが空から降ってきた。地面に降り立ったのは、古龍種キリンと、その背に乗ったシロちゃんだった……。

 

「ショウッ!!」

 

キリンの背から飛び降りたシロちゃんの鋭い声を聞くと同時に、その小さな手が私の背中に添えられた。……すると、背中がじんわりと暖かくなり、やがてその熱は全身に広がっていく……胸の痛みも、段々と引いていった。

 

「……がはっ!!はぁ……!はぁ……!」

 

「ショウ!大丈夫!?私の声、わかる!?」

 

「……シロ、ちゃん……?」

 

「……!あぁ、よかった……間に合ってよかった……!」

 

シロちゃん……なんだか、今までと全然違う雰囲気と喋り方をしてる。どっちが素の状態なんだろう……。

 

「……恐れた事態になったな」

 

「えぇ……最早一刻の猶予もないわね」

 

「どうする」

 

「私たちの故郷へ連れて行きましょう……確実ではないけれど、間違いではないはずよ」

 

「了解した」

 

「あ、あの?アカイさん、シロさん、お二人は一体何を……?」

 

なにやら意味深な会話をするアカイさんとシロちゃん……そんな二人に、恐る恐るといったふうにラベン博士が声をかけた。二人は一度お互いに顔を見合わせると、小さく頷きあった。それから、アカイさんが懐から一枚の紙を取り出した。

 

「ショウ、病み上がりのところ済まないが、これを見てくれ」

 

渡された紙を受け取り、そこに描かれた絵を見る。

それは、一体のドラゴンの姿だった。黒い体に大きな翼、鋭い爪と牙に口元に湛えられた火炎、龍の足元はまるで炎上しているかのように炎と一緒にがれきのようなものが描かれており、長く黒い尾は鋭さを思わせる。

絵は横顔だったが、私はそのドラゴンに見覚えがあった……そう、アルセウスが押し返そうとしていた、時空の裂け目から顔をのぞかせた、あの黒い龍だ。

 

「単刀直入に聞く。君はこの龍を見たな?嘘偽りなくはっきりと答えてくれ」

 

「……っ!!……見ま、した……」

 

「そうか……。あぁ、そうか……クソッ」

 

「……あの、このドラゴンがどうかしたのですか?」

 

「どうかもなにもない……君はこの龍によって呪いを掛けられている。君が感じている痛みは、その呪いが原因だ」

 

「……ッ!?」

 

「の、呪い!?」

 

集落中がざわ……ざわ……と、騒がしくなる。……まさか、あの時……目が合ったその時に……?

 

「ど、どういうことなんだショウ!呪いって!?」

 

「……実は」

 

私は槍の柱での出来事を話した。……ウォロのことは、まだアルセウスが私を帰せないとはっきりわかったわけではないので黙っておく。だから、「全てのポケモンと出会い、そののちにアルセウスと出会った」ことだけに留めておいた。……そして、アルセウスから分身を託された直後に、例の黒龍が姿を見せたことを話した。

 

「教えてください、アカイさん。……あの龍は、ポケモンは、一体何なんですか?」

 

ミラボレアス

 

答えたのはアカイさんではなく、シロちゃんだった。

 

「古龍目、源龍亜目、ミラボレアス科に属する古龍種……"黒龍"の別名を持ち、遥かな昔からその名が語り継がれる【伝説の黒龍】。

太古に栄えた古代文明の時代よりその存在は伝承され、各地に残る壁画や一族伝来の口伝などから自然をも超越する存在と謳われた厄災の化身。人間が繁栄を極めた大国『シュレイド』を一夜にして滅ぼした地獄の権化。

その名は個を指す名にあらず。"運命の戦争"、"運命を解き放つ者"、"運命の始まり"……あらゆる伝承から伝わる彼の存在を統括し表す言葉が、長い時を経て『特定の個体を指す呼び名』に変じた名。

邪龍とも呼ばれし彼の龍は、自分以外全ての存在を認めず、己の思うがままにその猛威を振るい、生物を超越した破壊の力を以ってこの世界の全土をわずか数日で焦土へ変える。世に災いを齎し、生きとし生けるものすべてを脅かす生ける災厄であり、その存在の前では"山の如き巨龍"でさえも恐怖に駆られ、その領地を前にすれば"古の龍"たちすらも踵を返し逃げ去ってゆく。

その存在を、正しく現実のものと認識する者は少ない……御伽噺と断ずる者もいるほどに。だが、黒龍が現実に存在し、そしてあらゆる伝承の全てが真実とされた場合……それはもはや生物の枠組みを超越した存在『ミラボレアスという現象』と評するより他にない……」

 

長々と話したシロちゃんはふぅ、と息を吐いた。ただ、話している間の雰囲気というか、その重苦しい言葉一つ一つに真実味があって、私たちは誰ひとりとして言葉を発することができなかった。

ただ、わかっていることは一つ……アルセウスが敵対している存在は、文字通り世界を滅ぼしうる存在だということだ。

 

「ミラ、ボレアス……」

 

「……"地は揺れ、木々は焼け、小鳥と竜は消え、日は消え、古の災いは消え、これらが続いて数か月後、シュレイドは消えた"。

……シュレイドに関する記録の中でも、滅亡したと思われる時期に記された国交書や民間の手記に、必ずと言っていいほど記されていた記述だ。

ミラボレアスは実在する。そして、その災厄の龍がこのヒスイ地方とすべての世界に牙を向かんとしている。アルセウスというポケモンは、その災厄から世界を守るためにミラボレアスと戦っているのだろう」

 

「……けど、ショウの呪いが日に日に強くなっているのを見るに、ミラボレアスの影響がヒスイに表れ始めているかもしれない……」

 

「……!!それって……、まさか……!」

 

「……一番最悪の想定……アルセウスが、ミラボレアスに敗北したかもしれない」

 

アルセウスが……!?

 

「馬鹿なッ!?シンオウさまが……アルセウスさまが負けたっていうのか!?」

 

「ありえないっ!!それが真実なら、このヒスイは……!?」

 

セキさんもカイさんも、声を荒らげている……当然だ、二人が属する組織はそれぞれディアルガとパルキアを信仰する組織……当然、二体の親元であるアルセウスのことは、信仰以上のものを感じているに違いない。

 

「……だが、事実だろう。もしもアルセウスがミラボレアスを倒していたなら、ショウの呪いがここまで酷くなることはない。生きていたとしても、深手を負ったことは想像に難くない。シロ、どうだ?」

 

「……ショウの呪い、かなり危険よ。もって半年……短いと、あと一月以内の命ね……」

 

「……ッ!?うそ、だろ……?」

 

先輩が絶望に染まった顔で膝をついた……かくいう私も、きっと顔色は真っ青になっているはずだ。最短一月、最長半年……後、一年も生きられないなんて……。

集落全体が、お通夜のような沈痛な空気に包まれる。そんな中で、アカイさんは小さく息をついた。

 

「……先ほどシロが言ったと思うが、今の我々にはショウの呪いを解く方法として、確実ではないが間違いではない方法が一つだけある」

 

「そ、それはなんだよアカイさん!教えてくれっ!!」

 

「落ち着けテル少年、今からちゃんと説明する」

 

藁にも縋るという言葉通りに縋り付いてくる先輩を引き剥がしつつアカイさんは説明してくれた。

 

なんでも、アカイさんの地元には歌声を用いて古龍種と共存を目指した一族が存在するらしい。現在は逆に龍の怒りを買ってしまい滅ぼされ、ほとんど生き残りがいないらしい。そして、その一族の生き残りであり"歌姫"と呼ばれる『ラウラ』という女性の歌には特殊な力が秘められていることが分かり、彼女はその歌の力を狩人たちのために与えてきたらしい。……素晴らしい人だ。

しかもその歌姫……ラウラさんは、住んでいた場所を二度も古龍種に滅ぼされるばかりか想い人がとある飛竜種のポケモンの狩猟で死亡した上、その人に師事して狩人になっていた生き別れの妹に恨まれるという、波瀾万丈なんて言葉が軽く思えてしまうほどに重い人生を歩んでいた。そのせいで一時期は歌えなくなってしまったそうだが……現在は立ち直り、歌姫としての役割を十全に果たしているんだとか。

 

アカイさんとシロちゃんが提案するのは、歌姫であるラウラさんの歌声と、龍の力を封じ込める滅龍石と、龍の巫女として古龍種と近しい存在であるシロちゃんの祈りによって、ミラボレアスの呪いを解呪しよう、というものだ。

 

「シロちゃん、そんなこともできるんだね……」

 

「まぁね」

 

「それで、アカイさんの故郷にはどうやって行くのですか?」

 

ラベン博士が至極最もな疑問をぶつける。……私の寿命は最短で一月なので、あまり時間をかけられないんだけど……。

 

「お答えしよう、その問いに。……シロ」

 

「はぁい」

 

アカイさんがシロちゃんに呼びかけると、シロちゃんは両手を組んで祈るように目を閉じた。すると、そこへ私たちから少し離れた場所にいたムフェトさんが近づいてきた。

 

「おぉ、()の力の一端を間近に見られるとは。いやはや、やはりお前の誘い乗ってよかったよバルカン!こりゃあ生きているうちに見られるかどうかのものだ!」

 

「いや、だから俺のことはアカイと……はぁ、もういい。それと、彼女のことは……」

 

「わかっている、他言無用だろう?」

 

「なら、いい」

 

……『祖』の力?シロちゃんって、何か特定のポケモンと深い縁でつながっているのかな……?

そうして物思いに耽っていると、シロちゃんの体から赤い雷のような力の本流が溢れ出した。やがてその雷が一点に収束すると、そこを基点に時空の裂け目が開いた……えっ!?

 

「時空の裂け目が!?」

 

「ど、どうして!!」

 

「……シロはな、君を呪ったミラボレアスと同種でありながらその存在を知る者がほとんどいない幻の龍、『祖龍』と深い繋がりがあるのだ」

 

「そりゅう……?」

 

「名は黒龍と同じミラボレアス……いわば、黒龍のリージョンフォームだな。

我々は黒龍との差別化のため、この祖龍を

"この世すべての竜種の起源"

"原点にして頂点"

"運命の始まり"

という意を込めて……ミラルーツと呼んでいる」

 

「ミラルーツ……」

 

この世すべての竜種の起源……それって、まるで、アルセウスのような……。

 

「……うん、大丈夫。繋がった」

 

「そうか」

 

まだ見ぬ『祖龍』に思いを馳せていると、シロちゃんが組んでいた手を解いてこちらへ振り返った。それを見たアカイさんも大きく頷いている。

 

「おいおいおいおい……さっきから何が起こってるんだ?時空の裂け目はアルセウスさまへの反逆を目論んだギラティナってポケモンが起こした現象だって聞いていたのに、どこからともなく現れた白い嬢ちゃんが同じことができるとは……」

 

「……アカイ殿、そちらの少女は一体……」

 

「私の親類だ、諸事情で預かっている。彼女が時空の裂け目を開くことができたのは、彼女の魂を通じて祖龍に働きかけたからだ。祖龍……いや、ミラボレアス種には、自力で時空間を渡る力があるからな。時空の裂け目の制御くらいは造作もないということだ」

 

「……つくづくとんでもねぇポケモンだな、ミラボレアスっつーのは……。時空の裂け目は開くわ、世界を滅ぼしうる力を持つわ、挙句の果てにゃ自力で時空間移動が可能ときたか……」

 

「"自然を超越する"というのは、そういうことだ。我々の常識や森羅万象の理程度で測りきろうなど愚の骨頂、軽視しようものなら命をもって償うこととなるだろう」

 

「……なるほど、な……」

 

(だからこそハンターは生物ですらないナニカに決まってる)

 

「アカイさん……?」

 

「いや、なんでもない」

 

コホン、と小さく咳払いをすると、アカイさんは改めて私の方へと向き直った。

 

「ショウ、我々はいつでも準備万端だ。空路や海路ではどうやっても一月以内に到着できないのでね、こういった手段を使わせてもらった。……君にとってコレが、因縁深いものであることは百も承知、しかし手段を講じている時間はない。

君の目の前には二つの"いく"道がある。生き延びるために行く(・・)か、命を投げ捨てて逝く(・・)か」

 

「……選択肢なんて、あってないようなものですね」

 

私は頬をパシン!と叩くと、改めて気合いを入れ直した。

 

「私は生きる……そのために、アカイさんたちの故郷へ行きます!」

 

「よく言った!」

 

「……!!ま、待ってくれ!おれも一緒に行かせてくれ!!」

 

私が決意を表明すると、我に返った先輩がすぐさま飛びついてきた。アカイさんは僅かに逡巡するが、頷いてくれた。

 

「構わない」

 

「でしたらボクも……」

 

「いや、博士はここに残って欲しい。これから我々が向かう場所は、雄大な自然の中で過酷極まりない弱肉強食だけが全てを物語る。……言ってしまえば、戦闘経験のない者を擁護できる余裕はない。かなりの強行軍になるのでな」

 

「うっ……」

 

アカイさんに諭されて、ラベン博士は苦い顔になる。実際、ラベン博士はポケモン勝負が得意ではないし、むしろ博士だし。対して、ポケモンによる戦闘能力があるテル先輩は見込まれた、ということだろう。

 

「しかし、テルだけで大丈夫か?」

 

「……私たちもついていけたらいいんだけど、団を放っておくことはできないし……」

 

「あら、あまり舐めてもらっては困りますよ、カイ」

 

「えっ、ガラナちゃ……ん"ん"っ!ガラナ、どういうこと?」

 

セキさんとカイさんが難しい顔をしていると、後ろからガラナさんが声をかけてきた。一瞬、昔の呼び方が出そうになったのかカイさんが咳払いをしている。

 

「先程までの話を聞いて、一つ考えが浮かびました。……コンゴウ団、シンジュ団に設立する調査隊の件、前倒しで実施できないものか、と」

 

「……あぁ、例の件?でも、前倒しって……」

 

「そちらのアカイ殿の故郷……住まうポケモンたちはほとんどが巨大ポケモンばかりだと聞き及んでいます。ですので当然、ショウさまが巨大ポケモンを連れ歩くは必定……しかし、今後も今回のような時空の歪みが発生しないとも限らない。ですので、ショウさまのポケモンたちの中から全てとは言わず数体だけを借り受け、団長が不在の間にポケモン調査の慣熟訓練をこなしておきますわ」

 

「えっ、それじゃあ……」

 

「……いや、それならイケる、のか……?ワサビ、どうだ?」

 

「全然大丈夫だよ!他のキャプテンや団員のみんなにはあたしから伝えておくから、セキさんも行ってきなよ!ううん、絶対に行ったほうがいい!」

 

「お、おう……千里眼でなにか見えたのか?」

 

「ううん、全然!だからこれは、あたしの勘!!」

 

「いや、自信満々の割には勘かよ!……だが、ありがとうな、ワサビ」

 

「どういたしまして!」

 

……なんか、しれっと重大な情報が流れていかなかった?ワサビちゃん、千里眼が見えていないの?私がそっちを見ながら首を傾げたのが見えたのか、ワサビちゃんがそっと駆け寄ってこっそりと耳打ちしてくれた。

 

「……実は、さっきまでは見えてたんだけどね……そっちの赤い男の人と白い女の子が見えてからは、急に砂嵐みたいになって見えなくなったの……なんでだろう?」

 

「(ワサビちゃんの千里眼はテレビタイプだった……だと……?)」

 

千里眼が見えなくなったのって、祖龍さんがなにかしたのかな。時空間移動できるらしいし、出来たとしても不思議ではないか。

 

「ふむ……テル少年、セキ殿、カイ殿……あと一人、猛者が欲しいところだが……」

 

「ジブンが参りましょう」

 

その声に、全員が一斉に振り返った。……特に私は光の速さもかくやとばかりの速さで。

そこにいたのは……かつて、槍の柱で袂を分かち、世界の命運を賭けた勝負をした因縁の敵……。

 

「……ウォロ……」

 

「…………」

 

実に久しぶりに見た顔……ウォロは、神妙な顔つきで私をジッと見つめていた。服装は最後に見た変な衣装ではなく、見慣れたイチョウ商会のものだ。

 

「君は?」

 

「初めまして、ですね。ジブンはウォロと言います。イチョウ商会の者ですが、イチョウ商会のことはご存知ですかね?」

 

「イチョウ商会……あぁ、なるほど。それで、勝負の腕前のほどは?」

 

「私が保証します」

 

ここであえて、私はウォロをフォローする。実際、本気のウォロと勝負したのは私だけだ。そして、ヒスイでもポケモン勝負が特に強い私が肯定するということは、それだけで彼の実力が認められたようなもの。

……ぶっちゃけ、時間が惜しかったので有無を言わせたくなかっただけだったりする。

 

「ほぉ……ショウが認めるほどか。ならば、信用としては申し分ない。ウォロ殿、協力してもらうぞ」

 

「喜んで」

 

……さて、セキさんとカイさんから微妙に戸惑った雰囲気が感じられる。それもそうか……二人が知るウォロは、好奇心旺盛で飄々とした、それでいて掴みどころがない人物だ。

私だけが知る、本性を現した状態のウォロ……好奇心旺盛はそのままに冷静になった、素の状態とも言えるこのウォロを知る者はほとんどいない。

……アカイさんと話し終えたウォロが、私に近づいてきた。

 

「……少し会わない間に、大変なことになりましたね」

 

「おかげさまで……それより、もう二度と会うことはないと思っていたのですが?」

 

「先程そちらのアカイ殿から、委細聞き及びました。……まさかアルセウスを倒してしまうポケモンがいるとは、ワタクシとしても想定外でした」

 

「……それで、ジンオウガたちの故郷に行けるいい機会だと、首を突っ込んできたわけですか」

 

「それもまあ、あります。ないとは言い切れませんね。……ただ」

 

「ただ?」

 

「……アルセウスが創造したこの世界を滅ぼそうなどと、そのようなことを目論んでいると知って、ワタクシが黙っていられるとでも?」

 

「ああ……」

 

流石はアルセウス狂信者……やっぱりそんなことだと思ったよ。ある意味、期待を裏切らない男だね。

 

「……さて、諸々の準備が必要だろう。出発は明日、明朝とする。

……ショウ、焦る気持ちはわかるが、だからこそ冷静にならねばならん。今の君の顔色は、冗談にならないくらいに悪い。ポケモンたちの選別も必要だろう……今日のところは、ムラに戻りたまえ」

 

「……はい、わかりました……」

 

うっ……表に出さないようにと意識していたけど、やっぱりアカイさんにはバレバレか……。

結局、この日はそのまま解散となった。時空の裂け目はこのままシンジュ集落に開いておくそうなので、私たちはそれぞれの拠点へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コトブキムラに戻ってからは、明朝に向けて準備のためにせわしなく動いた。

まず、コンゴウ団とシンジュ団の調査隊発足のためのポケモン選び……私はグラビモス、ラギアクルス、ベリオロスの三体にした。理由としては、いざ戦闘になった際にグラビモスだと機動力に難があること、ラギアクルスとベリオロスはそれぞれ得意とする環境の戦場があることで、なるべく場所や状況を選ばずに戦えるとなれば、ジンオウガとリオレウスしかいなかった。

次に選別したのは、テル先輩たち同行者組に預けるポケモンだ。巨大ポケモンが跋扈する場所で、普通のポケモンだけではどう考えても戦力不足だ。ドスジャギィ達のような中型ポケモン程度なら、工夫次第で私たちもよく知るポケモンたちで対処可能だが、それ以上の大きさとなるジンオウガたち大型ポケモンが相手となると、力の差は歴然だ。

力関係で言えば『一般ポケモン=中型ポケモン≦極みポケモン<大型ポケモン<古龍級生物≦古龍種<禁忌ポケモン』となる。"禁忌ポケモン"というのは、シロちゃんから教えてもらったポケモン郡で、ミラボレアスをはじめとする世界で数体のみしか存在しない"世界規模の被害をもたらすほどの力を持つ"存在……らしい。

 

さて、話が逸れた。そうして選んだ結果、テル先輩にライゼクス、セキさんにタマミツネ、カイさんにガムート、ウォロにディノバルドを預けることとなった。……なんとなく"電の反逆者"の異名を取るライゼクスとウォロの組み合わせが浮かんだけど、あのウォロに空戦能力を持つポケモンを与えるのは不安だったので、ライゼクスはテル先輩に任せることにした。一方で私はというと、極み個体であるダイケンキ、ライチュウ、ガブリアスの三体と二つ名個体であるミミロップ、ジンオウガとリオレウスの計六体が手持ちになる。テル先輩たちも同じ考えのようで、先輩はジュナイパー、セキさんはリーフィア、カイさんはグレイシア、ウォロはトゲキッスのみを連れて行くことにしたようだ。

当初の予定通りグラビモスをコンゴウ団に、ベリオロスをシンジュ団に、ラギアクルスをガラナさんとススキさんの二人にそれぞれ預け、私たちは明朝にシンジュ集落へ集まった。

 

時空の裂け目を前に整列する私たち……そんな私たちの前に立つアカイさんは、一度こちらへ振り返った。

 

「……さて、今更問うようなことではないが、敢えて問おう。覚悟のほどは十分か?」

 

「無論です」

 

「もちろんだ!」

 

「いつでもいいぜ」

 

「大丈夫だよ!」

 

「問題ありません」

 

「よろしい。……今回の旅の目的は、ショウに掛けられた黒龍の呪いを解くことだ。期限は最短日数の一ヶ月を想定するので、そのつもりでいるように」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「では……ムフェト」

 

「心得た。お前たちが不在の間は、私がヒスイに留まるとしよう」

 

「頼んだぞ。……行こうか、シロ」

 

「わかったわ」

 

先導者として、シロちゃんが最初に入っていく。続いてアカイさんが入っていき、そのあとに私たちが続いた。

時空の裂け目の中は、いくつもの次元が物凄い速さで通り過ぎていく光景が広がっていた。あまりの速さに目では追いきれず、ただただ圧倒されるだけだった。

 

「不用意に動くなよ?別次元に飛ばされるかもしれないからな」

 

「わかってます」

 

「すげぇ……こいつが時空の裂け目の中か……!」

 

「……ショウさんは、ここを通ってきたんだよね?」

 

「えっと、はい。……ただ、あの時はこれほど賑やかな景色ではなかったかと……」

 

セキさんが興奮気味に呟き、カイさんが私がヒスイに来た時のことを尋ねてきた。……あの時は、アルセウスに導かれる形でやってきたから、目の前に広がる景色は初めて見る。テル先輩は……絶句しているのか、だんまりだ。ウォロも沈黙……いや、よく見たら目の奥が輝いている。好奇心旺盛は相変わらずか。

しばらくの間、流れていく景色に目を向けていて……途中で気がついた。

 

「(あれ?シロちゃんは?)」

 

一番最初に入ったはずのシロちゃんの姿がどこにも見えないのはなぜなのか。アカイさんも気にした様子はないし、一体……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ギュアアアァァァァンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時だ。どこからともなく甲高い咆哮が聞こえ、裂け目内部の空間を大きく揺らした。

 

「な、なんだ今のは!?」

 

「ポケモンの……声……?」

 

「ほぅ……珍しいな、ここまで出血大サービスとは」

 

「アカイさん……?」

 

「皆、目を逸らすな。一瞬の瞬きすら惜しめ。……今、幻が降臨するぞ」

 

アカイさんがそう言った直後、私たちの足元に何かが飛んできた。大きく翼を広げたそれは、一息に私たちを追い越すとそのまま眼前に陣取った。

 

 

 

 

――輝く白い鱗と体毛――

 

 

――禍々しくも神々しい壮麗な純白の翼――

 

 

――煌々と輝く王冠の如き4本の角――

 

 

――全てを見透かすかのような澄んだ真紅の瞳――

 

 

 

 

姿形はまるで同じ……しかし黒龍ミラボレアスと対を為すかのような、真っ白なドラゴンが目の前に現れた。

 

「……うつくしい……」

 

果たして、それを呟いたのは誰だったか。誰もがその白いドラゴンから目を離せず、瞬きすら出来ずにいると、白いドラゴンはそのまま踵を返して私たちよりもはるかに速い速度で遠く前方へと飛んで行き、消えていった。その直後、目の前が強烈な光を放ち始め、目を開けてられなくなり思わず目を閉じた。

 

 

 

 

――ギュアアアァァァァンッ!!

 

 

 

 

私は意識を失った……遠くにポケモンの声を聞きながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――!」

 

「……ん、ぅ……」

 

「……ショウ!」

 

「うっ……あ、あれ……?」

 

誰かに呼ばれて、私はゆっくりと目を開いた。……たしか、時空の裂け目で白いミラボレアスを見て、それから……?

 

「あぁ、よかった!無事に到着できたみたいね」

 

「……シロちゃん?」

 

「うん、シロだよ?」

 

私を呼んでいたのはシロちゃんだった。……一瞬、シロちゃんの向こう側にあの白いミラボレアスが見えたような……。……気のせい、かな……?シロちゃんもあのミラボレアスも同じ色白で真紅の瞳だから、きっと見間違えただけだろう。

 

「それにしてもびっくりしたぁ。いの一番に着いたから出口を維持してたら、ギャグマンガばりにみんなボトボトと降ってくるんだもん。狙ってるのかと思っちゃった」

 

「……あ!そうだ!みんなは……」

 

私は慌てて辺りを見渡す。そういえば、みんなの姿が見えない!一体どこに……!

 

「先ほど駆け抜けていったのがドスファンゴといって、ファンゴの成体だ。空を飛んでいるあれはホルクと言って……まぁ、鷹だな。遠くに群れが見えるだろう?あれはアプトノスという草食竜の群れだ」

 

「すっげー!すっげーっ!!」

 

「おい、テル。さっきから語彙力が……まぁ、言いたい気持ちはわかるけどな」

 

「……でも、本当にすごいよ。ヒスイと同じ……いや、それ以上に力強い大自然と、そこに生きるポケモン……ううん、モンスターたち。生命の輝きが、こんなにも身近に感じられるなんて……」

 

「世界一つ、環境一つ変わるだけで、ここまで変化するとは……久々に好奇心が刺激されました!ちょっとそこまで見に行っても?」

 

「ダメだ」

 

「ダメぇ!?いやいやそんなケチなこと言わないでくださいよ!ちょっとだけ、本当にちょっとだけですから!」

 

「ダメなものはダメだ」

 

「そんなぁ……」

 

…………。

 

「……私が一番最後だったんだね」

 

「一番最初に起きたのはウォロさんだったよ」

 

「ぐぎぎぎぎぎぎ!」

 

ショウ、女の子がしちゃいけない顔になっちゃってるよ?

 

なんでよりにもよってウォロが一番に目覚めてるんだふざけやがってぇ!

 

「それより、アカイから聞いたよ!すっごいラッキーだったね♪」

 

「ラッキー……って?」

 

「時空の裂け目の中で、白いミラボレアスを見たってアカイが言ってたよ。

……ショウ。あなたたちが見た白いミラボレアス、あれこそが『祖龍ミラボレアス』。通称、ミラルーツだよ」

 

「……ッ!?あ、あれが……!!」

 

「ショウが槍の柱で見た黒龍ミラボレアスは、祖龍ミラボレアスの分体なんだよ。祖龍は時々、分体として黒龍を創造するみたい。……溢れる力を分散させて抑制するためなのか、人間に試練を与えて試すためなのか……真相は定かじゃないけどね」

 

「ぶ、分体……」

 

私に強烈な呪いを植え付けたあの黒龍が、祖龍の分体……黒龍であれほどなんだから、祖龍は最早想像の域を超えている。人間の手には負えないんじゃないかな……。

私が改めてミラボレアスという存在に呆然としていると、シロちゃんは立ち上がってみんながいる方へ声をかけた。

 

「みんなー!ショウが起きたよー!」

 

「……!ショウ!!」

 

シロちゃんの声に一番に反応したのは、先輩だった。……さっきまで「すっげー!」を連呼してはしゃいでいたのに、こういう時だけ……ふふっ♪

 

「ショウ!よかった……このまま目が覚めないんじゃないかって、おれ……!」

 

「やれやれ……直前までの自分の言動を省みたまえ。まぁ、その切り替えの速さには素直に感服するがな」

 

「うぐっ……」

 

痛いところを突かれたとばかりに、苦い顔になる先輩。あとから追いついてきたセキさんたちも、苦笑いを浮かべている。

 

「……アカイさん、ここは……」

 

「待て」

 

私が尋ねようとすると、アカイさんは即座に待ったをかけてから、地図を取り出した。地面に広げられた地図……ヒスイ地方とは全然違う大陸の形に、まったく知らない場所に来たんだという実感が沸いてくる。

アカイさんは地図の中の左側……広い大陸の、ほぼ左端よりもちょっと内陸部分を指で差した。

 

「我々の現在地はここ、アルコリス地方……『森丘』という名称で知られる狩り場付近に居る。ここから最寄りの村である『ココット村』に向けて北上する。なるべく日が暮れる前にたどり着きたいところだが、なにか質問は?」

 

「オレからいいか?アカイの旦那は歌姫の力を借りるっつってたが、その歌姫はどこにいるんだ?」

 

「歌姫がいるのは、ここだ」

 

そう言ってアカイさんが指差した場所は、地図的には真反対……右側の端に近い場所だ。

 

「……って、真逆かよ!?」

 

「……歌姫はここ、『メゼポルタ』にいる。我々の目的地でもある」

 

「だったら、どうして真反対のここに出てきちゃったの?」

 

「……ごめんなさい。時空の裂け目を開いたり閉じたりは出来るんだけど、場所までは選べなくって……。私がもっと祖龍様と強く結びつけていれば……」

 

「ああ!シロちゃんを責めているんじゃなくってね……!えぇと、ごめんね!」

 

カイさんの疑問は尤も……だけど、結果的にシロちゃんが落ち込んでしまったせいで、慌てて謝罪をしている。……うん、誰もシロちゃんを責められないもんね。

 

「では、ひとまずはこちらのココット村を目指す……ということで、よろしいんですね?」

 

「そういうことだ、ウォロ殿。なににつけても休める場所は必要だ、その点で言えば村の近くに出てこれたのは僥倖と言えるだろう」

 

「そうだな……この南の方って、絵的に砂漠っぽいよな?こんなところのど真ん中じゃないだけ良かったよ」

 

「だな。テルの言うとおりだ」

 

セキさんが同意するように、テル先輩の言うとおりだと私も思う。北にある雪の島だとか、南の砂漠だとか、高い山の中だとかじゃなくてよかった。確かに目的地からはとても遠いけど、幸先は決して悪くはないと思うし。

 

「それじゃあ、早速ココット村って場所に行きましょう。日暮れまでに着けばいいんですよね?」

 

「無論。……あぁ、そうだ。ショウは最後に目覚めたから、この大陸における注意事項をよく聞いてくれ」

 

「はい」

 

アカイさん曰く……この世界ではポケモンのことは『モンスター』と呼称するように、とのこと。呼び方からして、根本的に違うらしい。

ジンオウガやリオレウスのような巨大ポケモンは、無闇に人前に出さないこと。……特に、ダイケンキたちはなおのことで、人前に出せば新種のモンスターとして調査されかねないので気をつけるべきだとか。

そして……モンスターの殺生に関して、なるべく口を挟まないこと。この大陸ではモンスター……ポケモンを殺し、その体から素材を得ることで生計を立てている『ハンター』が主な稼ぎ口らしく、彼らは"生きていくうえで必要なこと"だからモンスターを狩る。だから、彼らに対して"狩るな殺すな"はNGで頼みたい、とのこと。

私はそれらの注意事項に同意し、早速ココット村を目指して出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

歩き続けること数時間……私たちはようやくココット村に到着した。

ココット村は、なんというか……不思議と懐かしさと高揚感を感じさせる場所だ。村全体としてはコンゴウ集落やシンジュ集落とそう規模は変わらないのに、広く大きく感じるのはなぜだろう……。

 

アカイさんは迷うことなく村の中心部へ歩いていく。右も左も勝手すらわからない私たちは、黙ってアカイさんについていくだけだ。

 

「ご無沙汰しております、村長殿」

 

「ン……?おぉ、貴殿か。随分と久しぶりじゃあないか。最後に会ったのは……」

 

「十年以上前に、黒龍がシュレイドに出現した時ですね」

 

「おぉ、そうじゃったわい。……あれから十数年、シュレイドが再び不穏に包まれておる。貴殿も知っておろう?」

 

「えぇ……アレ(・・)、ですね?」

 

……アカイさんと話をしている、この人……ポケモン、じゃ、ないよね……?老人にしては背が低すぎるし指は四本しかなく耳も尖っている。でも、普通に人間の言葉が通じているし……一体何者?

 

「それにしても、貴殿に連れがいるとは意外じゃな。貴殿はいつも一人じゃったろうに」

 

「少々事情がありまして、旅人の真似事をしているのですよ。こちら、左からウォロ、セキ、カイ、テル……そして、シロと、ショウです」

 

「ふむ、随分と大所帯じゃな。何もないところではあるが、ゆっくりしていくと良い」

 

村長さんは朗らかにそう言って、私たちを歓迎してくれた。……いやいや、こんな背格好もバラバラの集団なんて、怪しさしかないだろうに……。

……と、私がしょうもない疑問を抱いていると、村の奥から全身を鎧で固めた重武装の集団が歩いてきた。一人は巨大な剣、一人は巨大な槍と盾、一人は砲口のついた槍と盾、一人は弓である。彼らの足元には、同じように鎧を纏って武装した二足歩行の猫たちが追随していた。

彼らに気づいた村長さんも、そちらへと振り返った。四人のうち、巨大剣を背負った人が村長に声をかけてきた。

 

「村長殿」

 

「おや、ハンター殿。もう出発するのか?」

 

「えぇ、怪我を負った仲間の傷が癒えましたので。我々ハンターの急な受け入れ、感謝します」

 

「なに、気にするでない。ハンターの力になれたならば重畳、それこそがワシらの望みじゃて」

 

「……本当に感謝する。必ずや、あの巨大ティガレックスを狩猟してみせます」

 

「俺らが休んでいる間にも、各地からハンターが集まってるらしいからな……いいとこどりされる前に、とっとと戦線に復帰しねえとな!」

 

「しっかし、あのバカでっかいティガレックス、いったいどこから現れたんだ?観測所によれば、空が赤くなったかと思うといきなりデカくなったって話だが……」

 

「関係ないでしょ。僕らはハンター……人類を脅かすモンスターがいれば、これを狩猟する。それが役目なんだし、相手が誰であろうと変わらないよ」

 

「へいへい~、真面目くんは偉い子でちゅね~」

 

「馬鹿にしてんだろ!?」

 

「おい、そろそろ行くぞ。……村長殿、それではまた」

 

「うむ、気をつけるんじゃぞ」

 

会話が終わり、四人の男性たち(声で把握)は東の方角へと歩いて行った。……それより、気になる情報がいくつか出てきたな……。

 

「あの……」

 

「ん?君は……そうだ、ショウ殿、だったな」

 

「はい、村長さん。……あの、さっきの話は……」

 

「うむ……そういえば、お主らは旅をしている、という話だったな。残念だが、この大陸の東側に行くには南下して海を渡る以外に術はないのじゃ、申し訳ない」

 

「あぁ、いえ!お構いなく!……それより、先ほど巨大化したポケ……モンスターがいる、というのは……」

 

「ふむぅ……貴殿。貴殿も聞いておくか?」

 

「えぇ、現大陸に帰ってきたのも最近のことなので、少々世情に疎く……」

 

「相分かった、聞かせよう」

 

そう言って、村長さんは現在この世界で起こっていることを話してくれた。

 

 

 

 

 

~数ヶ月前~

~遺跡平原にて~

 

 

 

 

 

「ふわぁ……」

 

「おい、不謹慎だぞ」

 

「っと、すまん」

 

空を浮かぶ気球の中、望遠鏡を覗き込む男があくびをしたところ、相棒のもう一人の男が注意した。彼らは望遠鏡を通して各地に存在する古龍の動向を観測することが始まりとなった『古龍観測隊』であり、大元となるドンドルマに存在する『古龍観測所』からの指示で各地を飛び回っているのである。

現代では古龍以外のモンスターも積極的に調査しているとはいえ……元々は古龍種という強力無比な存在を観測するという役職であった以上、のんびり欠伸なんてしている場合ではなく、一切の余談と緊張が許されない仕事だ。しかし、男が欠伸をするのも、ある意味では無理らしからぬことであった。

 

「だってよぉ……古龍や他のモンスターならいざ知らず、ただ漠然と"世界各地を観測し、これを常とし怠らないこと"なんて言われても、ねぇ……」

 

古龍観測所からの命令である『世界各地を観測し、これを常とし怠らないこと』という内容に対して、男は懐疑的であった。反面、紙に筆を走らせている真面目な男は、これまた真面目な調子で返した。

 

「そうせざるを得ないだけの理由があることを、お前も知ってるだろう?」

 

「知ってるよ……アレだろ?シュレイドの上空に出てきた、変な裂け目。あれが出てきてから、こう……ケチが付いてばっかりじゃないか」

 

「ケチ、って……お前なぁ」

 

「世界中からいろんなモンスターが忽然と姿を消すし、なによりあの裂け目が出てきたせいでミラボレアスに逃げられたって話だぞ。

ミラボレアスだぞ、ミラボレアス!かつてシュレイド王国を一夜にして滅ぼした伝説の黒龍!御伽噺が実在したかと思いきや、謎の怪奇現象に自ら突撃して行ってどこへともなく行方を眩ませたって、もう世界中で知らない人間はいないぞ」

 

「……本来、ミラボレアスの一件は秘すべき情報だが……」

 

「そうも言ってらんねえだろ。あの変な裂け目がなんなのか、未だにわかってないんだから」

 

シュレイドの上空に出現した、謎の裂け目……ヒスイ地方で『時空の裂け目』と呼ばれている裂け目が出現してから、奇妙なことばかりが起きていた。

まず、シュレイド城で討伐作戦中だったミラボレアスが、裂け目の内部へと逃走し姿を消した。次に、世界各地で一部のモンスターが姿を消した。狩猟直後にモンスターの遺体が飲み込まれるところを見たと言う報告もあれば、狩猟中に突如現れてモンスターを吸い込んだ、という報告も上がっている。最近では、秘境の塔にまで謎の裂け目が出現したという報告が上がっている。

これらの現象が立て続けに起こっているため、予断を許さないと判断したハンターズギルドは古龍観測所に打診。その結果、24時間態勢で古龍観測隊が世界中を飛び回る事態となったのだ。この気球に乗っている男たちも連日飛び続けていて、つい最近ようやく休みが取れたかと思うと、翌日にはまた出発、とハードなシュケジュールをこなしている。

ブラックかな?

 

「一応、あの裂け目の調査は続けられている。……進捗については聞くな」

 

「デスヨネー。……はぁ、今までどれだけのモンスターがいなくなったんだか……」

 

「最初はミラボレアス。その後はジンオウガ、グラビモス、ラギアクルス、リオレウス、ベリオロス。そこからさらにゴシャハギ、ホロロホルル、オドガロン亜種……直近ではキリン、ディノバルド、イャンクック、タマミツネ、ドスジャギィ、ドスフロギィ、ドスバギィ、ライゼクス、マガイマガド、ガムート、ラージャン、ムフェト・ジーヴァ……」

 

「後半のラインナップのえげつなさよ。古龍まで巻き込むとか、いよいよ厄ネタの予感だぜ……」

 

「ただ、不思議なことにこれらのモンスターは最後の一体を除いて全員にある共通点がある」

 

「あぁ~……偶然で片付けられた、アレか」

 

「そう、アレ」

 

「「全員名前が六文字以下」」

 

二人声を揃えて言ってみたものの、当然なんの意味もなく無駄にため息だけが出た。

 

「……そのうち、名前が六文字以下のモンスターがみんないなくなったりして」

 

「おいばかやめろ、生態系ぶっ壊れるだろ」

 

「だよねー、草食種のモンスター郡なんて大半が名前六文字以下だし、食物連鎖に大きく影響が出そうだ」

 

「それだけではない。……アイルーが絶滅したらどうすんだ」

 

「あっ」

 

『アイルー』とは、猫の姿をした獣人族であり、人間の生活にも密接に関わっている存在だ。アイルーに仕事や狩猟の手伝いをしてもらったり、地域によってはオトモや食事に農場の管理すらアイルーに任せている場所もある。もしもそれが全部いなくなったら……想像しただけで、男たちはゾッとした。

 

「……それ、は、そこはかとなくヤバいな……」

 

「実際、世界中からアイルーがいなくなったらいろいろと死活問題が起きそうだな」

 

「それだけじゃないぞ……プーギーとかグークとかフルフルとか、俺たちの大事な癒やしまでいなくなっちゃうじゃないか!」

 

「最近、カムラの里からやってきて現大陸で流行り始めた、新たなオトモの存在もな」

 

「あぁ……『ガルク』、だっけ?確かにアレも便利だよな。……いや、いなくなったらマジで困るんだが!?」

 

「だからこそ、可及的速やかにこの事態を解決しなければならない。我々古龍観測隊は、その糸口を掴むために、日夜こうして飛び続けているんじゃないか」

 

「そうだ……そうだったな!よぉーし、頑張って観測続けるぞ!おーい!解決の糸口、出てこーい!」

 

「いや、呼んで出てくるもんかよ」

 

すっかり調子が戻って望遠鏡をのぞき始めた男に、相棒男は呆れながらも笑みを浮かべた。彼らは現在、遺跡平原付近を飛行している。ミラボレアスの後にいなくなった、リオレウスとライゼクスが住処としていた場所だ。

 

「……そういえば」

 

「どうした?」

 

「最近になってわかったことだが、遺跡平原に生息していたリオレウスのことを覚えているか?」

 

「あぁ、アイツか……」

 

「ハンターに狩猟された直後、襲撃してきたライゼクスが遺体を持ち帰った、あのリオレウスだ。そのリオレウスがライゼクスとともに竜の巣にいたところ、例の裂け目に飲み込まれたそうだ」

 

「死体を飲み込んだってのか?……あぁ、ライゼクスの暴走が始まったのも、ちょうどその頃か」

 

「実はリオレウス狩猟中の同時刻に、リオレウスの番のリオレイアも狩猟されたんだが……」

 

「……え、まさか?」

 

「あぁ……リオレイアの死体が見つかっていないらしい。おそらくは、ディノバルドらとほぼ同時に吸い込まれた可能性がある……と、龍歴院では予測を立てている」

 

「マジかぁ……骨すら残ってないわけ?」

 

「あぁ、ない。だから、他のモンスターに死肉を漁られた、というわけではないようだ」

 

「……あの裂け目、変な収集癖を持ってるんじゃないだろうな?」

 

「生きてたら、ありえるかもな」

 

「やめろよマジで」

 

望遠鏡を、右へ左へ。この時、男の視界に一体のモンスターが写りこんだ。

 

「おっ、ティガレックスだ」

 

「なに?どこだ?」

 

「ほら、あれ。遺跡平原に向かって突っ走ってる。住処を変えた個体かもな」

 

位置を変え、相棒男が望遠鏡を覗き込んだ。

 

「ほう……かなり大きい。金冠サイズじゃないか?」

 

「はぁ……人間は忙しなくあれこれ動き回っているっていうのに、モンスターは呑気でいいね。俺も都会に引っ越したい」

 

「ドンドルマに来るのか?それともロックラック?」

 

「いや、ジャンボ村」

 

「……お前の中の都会とは一体」

 

「うるさいっ。住めば都だし、好みの問題だろうが!」

 

男二人、軽口を叩きあっていた……その時だ。

 

「……ん?なんだ!?」

 

「お、おい!なんだこれは!?」

 

男たちは突然声を荒らげた。というのも、突然、遺跡平原上空の空模様がマゼンタ色の渦巻く暗雲へと変わったのだ。どうやら遺跡平原の上空のみが変化しているようで、遺跡平原から離れた場所の空は変わらず青空が広がっている。

 

「また奇っ怪な現象が……観測所へ報告を!」

 

「いや、待て!まだ何か起きるぞ!!」

 

相棒男が手紙を書こうとしたところを、男は待ったをかけた。あれを見ろ、とばかりに差した指先を目で追えば、渦巻く暗雲の中心から赤い柱とも言うべき光が一直線に放たれた。その先にいたのは……。

 

「あれは!」

 

「金冠サイズのティガレックス……!」

 

ティガレックスも、突然変化した空の様子が気になったのだろう、足を止めて空を見上げていたようだった。そこへ、赤い光の柱が伸びてきてティガレックスに直撃。ティガレックスを覆い尽くすように、赤い粒子があたり一面に飛び散った。それらの粒子が、ティガレックスに吸収されるように消えていった、その直後。

 

「な――」

 

「は――」

 

ティガレックスが、巨大化した。

 

「なああぁぁぁぁっ!?」

 

「はああぁぁぁぁっ!?」

 

男たちはそろって絶叫した。そして、絶叫したい気分に駆られたのは、どうやら人間だけではないようだ。

"轟竜"ティガレックスの咆哮。ティガレックスの体内には「大鳴き袋」と呼ばれる特殊な内臓器官があり、これを利用して暴力的なまでの膨大な音量を誇る咆哮を放つ事を可能としている。それは最早「音」の常識を超え、放たれた瞬間に衝撃波のように周辺の物体を破壊してしまうほどの威力に達する。

さて、ここで質問。ただでさえ強力な咆哮を放つティガレックスが、全長520m超えの超巨大個体となった状態で、これまでどおりに咆哮を放つと……?

 

「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!?!?!?!?」

 

「「うわあああああああ!?」」

 

正解は……世界が揺れる。

巨大化したティガレックスの、これまた巨大な咆哮は空間を揺らし、大地を震わせ、物という物を破壊しつくし、衝撃波は一瞬にして超広範囲に放たれた。その範囲内には当然、古龍観測隊の気球が存在していた。

気球はド派手に吹っ飛ばされたが、幸運なことに半壊しながらの墜落となった。墜落時に完全に木っ端微塵になった気球の下敷きから抜け出した男二人は、視線の先に遠く見える巨大ティガレックスを呆然と見上げることしかできなかった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「……地獄だ、この世に地獄が顕現した……!」

 

「は、はやく伝えなければ……観測所に、ギルドに……世界に……!」

 

男たちは這う這うの体で一路、ドンドルマを目指した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、こうして突然現れた超巨大ティガレックスによって、この大陸は東西に分断されてしまったんじゃよ……」

 

「「「「「…………」」」」」

 

「ふむ……我々の知らぬ間に、そのようなことになっていたとは……」

 

「大変だったね、おじーちゃん……」

 

村長さんから話を聞き終えた私たちは、絶句していた。

現在、私たちは村長さんの家におり、そこで話を聞いていた。話の途中、シュレイドに現れた時空の裂け目や遺跡平原という場所に出ているマゼンタ色の空など、しっかりと確認をしている。

 

「まさか、ここにも時空の裂け目が開いているとは……」

 

「ウォロ、あなた本当になんてことをしてくれたのよ」

 

「……少なくとも、ワタクシもギラティナもここまで事態を広げるつもりはありませんでしたよ。そもそも、時空の裂け目を通らなければならないほどに遠い場所にまで、なぜ裂け目が開いているのか……ワタクシが聞きたいほどです」

 

「ふぅん……嘘は言ってないみたいね」

 

「当然です。むしろこの状況に好奇心が刺激されまくって今すぐ体を動かしたい気分です!」

 

「あっそ……」

 

ウォロは平常運転か……。チッ、自分で広げた風呂敷なんだから、しっかり畳んどきなさいよ。それにしても、ポケモンが巨大化って、なんかどこかで聞いたことがあるような……。

 

「ティガレックス……あれ?」

 

「どうしたんだ、ショウ?」

 

「いえ、あの……名前が六文字を超えているのに、普通に発音できるなーって……」

 

「え?」

 

テル先輩は首をかしげているけど……多分これは、私にしかわからないことだ。

前に古龍級生物の話から飛竜種の祖先である「ワイバーンレックス」の話をしたと思うが、実はこの時「ワイバーンレックス」の名前が非常に発音し辛かったのを覚えている。その後、いろいろな名前をアカイさんから聞いてあれこれ検証した結果、「名前が六文字を超える生き物の名前」が発音しにくいことがわかったのだ。そして、ティガレックスの名前は七文字……六文字を超えているのに、滑らかに発音することができた……なんでだろう……?

 

「そのティガレックスってモンスターは、遺跡平原って場所に居座ってるのですか?」

 

「うむ……動けないのか、動かないのか、ほかに理由があるのか……。真相は明らかではないが、ティガレックスに動く気配がないのは事実じゃな」

 

「なるほど……先程、ハンターが向かったのも遺跡平原ですか」

 

「……なんでも、大規模な討伐作戦を検討しているそうじゃ。世界各地から兵器やハンターが招集されていると聞く……ドンドルマ方面へ行くというのなら、やめておくことじゃな」

 

「……ご忠告痛み入ります、村長殿」

 

「(セキが敬語で喋ってる……!)」

 

「(敬語で喋ってるセキさんにカイさんが目を輝かせている……)」

 

「(敬語で喋ってるセキさんに目を輝かせているカイさんに先輩が砂を吐きそうになってる……)」

 

セキさんが神妙な顔つきで敬語を喋ってる……なにげにセキさんの敬語、初めて聞いたな。そして、その隣で目を輝かせるカイさんに、さらにその隣で顔が虚無ってる先輩……なんだこのカオス。

 

「そうもいかんのだ、村長殿。我々は一月経つまでに、メゼポルタへ向かわねばならない」

 

「……なにやら、ワケアリのようじゃな」

 

「……こちらのショウが、黒龍の呪いを受けている。解呪するためにも、メゼポルタの歌姫の力が必要なのだ」

 

「なんじゃと!?」

 

村長さんが驚愕に相貌を歪めて私を見てきた。……ちょっと怖い。

 

「まさか……!ショウ殿、お主……黒龍に会ったというのか!?」

 

「あ、いえ……私たちの地元にもシュレイドのような裂け目が開いて、そこから顔をのぞかせたミラボレアスと目が合った、だけですけど……」

 

「……ふぅ。なんにせよ、無事で良かった。……いや、厳密には無事ではなかったのじゃったな。しかし、なぜミラボレアスがただの娘であるショウ殿に呪いを……?ショウ殿、なにか心当たりは?」

 

「いえ、まったく」

 

「……これは私の仮説になるが、聞きたいか?」

 

「アカイさん、お願いします」

 

アカイさんの仮説……仮説という割には結構的を得ていて、もはや仮説という名の事実ではないか、と思い始めたほどだ。アカイさんは一拍置いてから、話し始めた。

 

「……ショウの地元、ヒスイに現れたミラボレアスはおそらく、ついこの間まで討伐作戦が実施されていたミラボレアスと同個体ではないか、と考えている。すると、ミラボレアスを敗走にまで追い込んだハンター……人間がいるはずだ。

おそらくミラボレアスは、そのハンターとショウを同一視した可能性がある。肉体的にか、精神的にか……いずれにせよ似ている部分があったからこそ、ミラボレアスはショウに呪いをかけた……と、これが私が考え得る理由だな。これが事実かは定かではないが、一考の余地はあるだろう」

 

「ぬぅ……かの黒龍が、ただの個人に強い恨みを抱く、か……。いや、でなければヒトに敗れた黒龍が『紅龍』に転ずることはないだろう……貴殿の一説、妄想や虚言では片付けられまいよ」

 

「感謝する、村長殿」

 

「待った!」

 

私は思わず声を上げた。というのも、村長さんの言葉の中に、無視できない言葉があったからだ。

 

「黒龍って、姿が変わるんですか?さっき、"黒龍が紅龍に転ずる"って……」

 

「……むぅ、それは……」

 

「いや、私から話そう村長殿。彼女は一度だけだが黒龍と相対し、今尚生きている。かの存在を知っても、動じることはないだろう」

 

「……そうか」

 

アカイさんが、改めて私の方へと振り返った。

 

「……黒龍が紅龍に転ずる。その言葉に偽りはない。

……今から十数年前、黒龍ミラボレアスがシュレイドに出現した。この時、ジャンボ村という村の発展のために村を訪れ、後に専属ハンターとなった男が黒龍をシュレイドから退けたのだ。

……脆弱な生物と見下していた人間に一泡吹かされ、撤退を余儀なくされ苦汁を嘗めさせられた黒龍は前人未踏の火山の最奥地へと逃れ、想像を絶する激怒ともに力を蓄えた。

許さぬと、生かさぬと……必ずやあの人間を!脆弱なる下等生物を血祭りにあげるのだと!!紅き怒りは限界に達し、ついに復讐の時が来た!!

黒き鎧を真紅に染め上げた特殊個体紅龍ミラボレアスへと変じたのだ!!

紅龍は咆哮する!"ついにこの時が来た!血染めの鱗を纏いし紅き災いが、獄炎の大地に降り立つ時が!ハンターよ、止められるものなら止めてみるがいい!"と!!

 

……アカイさん、テンションたっか!爆上げのアゲアゲだ。

 

「落ち着きなさい、おバカ」

 

「うごっ!?」

 

と、興奮冷めやらぬアカイさんをシロちゃんが止めた。……ただ、音が"パシッ!"とか、"バシッ!"とかじゃなくて"ゴッ!!"だったんだけど……。あ、やっぱりグーでいったのね。

 

「はっはっは!貴殿は本当に紅龍を崇拝しているのだな」

 

「アイデンティティーなもので」

 

「この紅龍バカ……」

 

またアカイさんの知らない顔を見てしまったな。

……おいコラ、ウォロ。その「仲間を見つけた」みたいな顔でウンウン頷くな、あんたとアカイさんは違うんだからね!

 

「……失礼、取り乱した。我々はこの真紅のミラボレアスを黒龍と同一個体でありながらまったく別の存在と扱うため、ミラバルカンという固有名をつけた。私、アカイが最推しするミラボレアス種である」

 

「……はぁ……。黒龍、紅龍、そして祖龍……ミラボレアスって、意外とたくさんいるんだね。情報量だけでお腹いっぱいだよ……」

 

「しかもその内の一体が、ショウに呪いを掛けて行ったんだからな……とんでもない話だぜ」

 

「ふぉっふぉっふぉ!もしも今の話をハンター達に聞かせたら、誰もが腰を抜かしてひっくり返るじゃろう。ハンターでもない娘が黒龍と相対するばかりか、呪いを掛けられたとはいえ生きて帰ってきたのじゃからな。ワシも長く生きとるが、ショウ殿のような者は前例がない。それだけに、驚きも一入じゃったわい」

 

「あはは……機会があれば、お話はすると思います」

 

とはいえ、そんな機会は来ないで欲しいが。

 

「……さて、長旅とあって今日のところは疲れたじゃろう。ワシの家と、隣の家を開放してあるので、どちらでもくつろいでいくと良い。……隣の家は本来、ハンター用に開放してあるのだが、ハンターがいない今となっては意味もない。存分に利用すると良いぞ」

 

「では、ここはわかりやすく男女に分かれるとしよう。……部屋の広さ的に考えれば、女子三人は向こう側、男どもは村長宅でいいだろう」

 

「デスネ。男女七歳にして席を同じゅうせず、と言いますし」

 

「「((私は別に……))」」

 

「……っ!?な、なんだ……?急に悪寒が……」

 

「セ、セキさんも?実は、おれも……」

 

どうやら男女別に分かれることになったらしい。……しょうがないなぁ。

 

「……カイ、何かあったときはすぐに呼べよ?もしもの時は……」

 

「わかってる。でも、それは最終手段……でしょ?」

 

「あぁ」

 

「ショウも、なにかあったらすぐに呼ぶんだぞ」

 

「わかってます」

 

セキさんとカイさんが話していた最終手段……ヒスイから連れてきたポケモンたちで自衛をする、という意味だ。……人前で出すことがないように祈ろう。

 

この日は解散となり、そのまま村で一泊することになった。明日から、解呪のための旅が始まる……しっかり準備をして、旅の備えるとしよう。

 

 

 

 

――ショウ 余命29

 

 

 

 




本日のモンハン占い!狩人なあなたのラッキーカラーは……白!
白色のモンスターを狩猟すると、レアな素材が手に入るかも!?
それでは今日も元気よく~……ひと狩り、いこうぜ!

※占いの結果は保証しないものとする
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