ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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今回もいろいろと導入部分が多いこと多いこと……





クロノ再び!迫るリミット……

メゼポルタの四方から襲来してきたバゼルギウス、そして時空の裂け目から出現したミラボレアス……もとい、メタモンを倒した私たちは現在、メゼポルタに集まって最終報告会を開いていた。

それぞれ、トレーナーに同行していたハンター達から報告を聴き終えたギルドマスターさんは「ご苦労」という言葉とともに鷹揚に頷いた。

 

「……皆、聞けっ!爆鱗竜の脅威はトレーナーとハンターの協力のもと、無事に取り除かれた!これ以上、メゼポルタが荒らされることはないじゃろう。我々の勝利じゃ!」

 

その言葉に、メゼポルタのギルド職員たちが歓声を上げた。そんな中、ギルドマスターが私の方へと振り返った。

 

「……実は、物見から"黒龍を見た"という報告が上がっておる。一部始終を見ていた者からは、黒龍はそなたらの手によって討ち取られたとも聞いておるが……」

 

「あー……」

 

その話題が出た途端、隣で話を聞いていたシズカさんが頭を抱えた。……結局、メタモンをどうすればいいのかわからないままここまで戻ってきてしまったのだ。後でアカイさんに意見を聞こう……。

 

「えー……実は、その……ミラボレアスはミラボレアスじゃなかった、といいますか……」

 

「はい?」

 

「見て見てギルドマスター!メタちゃんだよー!可愛いでしょ?」

 

「うわぁ!?なんじゃこのモンスターは!?」

 

「フラウさーん!?」

 

こっちが話題の切り出し方に困っていると、フラウさんがメタモンを抱いたままギルドマスターの元へ駆け出していた。こうなっては仕方ないので、私とシズカさんはお互いに頷きあって事情を説明することにした。

 

「……他の生物や物体に変身するモンスター、メタモン……じゃと……?……いやはや、竜人族としてそれなりに歳月を重ねてきたつもりでおったが、まさか他者に化けるモンスターが存在するとは思わなんだな……」

 

「……まぁ、そんな反応になりますよね……」

 

「実は、メタモンの扱いについて非常に困ったことになりまして……」

 

「失礼、ショウ。そちら側のモンスターが見つかったと聞いたのだが」

 

「アカイさん!」

 

やった、我らが知恵袋のアカイさんの登場だ!

 

「アカイさん、実はメタモンがミラボレアスに変身して……」

 

「なに?ふむ……それは少し、いやかなり厄介な事態になったな」

 

「そんなにマズイですか?」

 

まぁ、ミラボレアスに変身できるって時点で普通のメタモンじゃないよね……。

 

「あぁ、実にマズイ。このメタモンをそちら側に連れて帰ってもいいが、その場合は決して野生に帰すことはおすすめしない。ミラボレアスの姿とその強さを覚えてしまったメタモンが、外敵に遭遇した際にミラボレアスに変身しないという保証はない。過酷なヒスイという環境で生きていくには、本来ならメタモンは少々力不足だ。このメタモンは例外だろうが、ミラボレアスに変身できるメタモンなどショウほどの使い手で無ければ逆に持て余してしまうだろう。

ではこちら側に残していくか?……となると、また話が変わってくる。他のモンスターの姿に変身するモンスターなど、古今東西探してもこの大陸には存在しない。文字通り、世界で一匹しかいない存在だ。龍歴院をはじめとする研究機関としては喉から手が出るほど欲しいだろうし、その扱いも慎重になるだろう。

……どちらにせよ、そのメタモンの今後はひたすら肩身が狭くなること請け合いだ。こちらとあちら……どちらの世界にいることがメタモンにとって幸せ……とまでは言えないが、生きやすいかだろうな」

 

……そうか、メタモンは非常に観察力・洞察力に優れたポケモンだ。一目見ただけで相手の特徴を正確に把握する眼力は、一般的には知られていないがどのポケモンよりも優れているのだ。

そんなメタモンが、ミラボレアスの特徴を完全に把握しているのだ……こちら側に連れて帰っても自衛のために変身しないとは限らないし、保護してもいいけど私だって不老じゃないので他の人だといつかは面倒を見きれなくなってしまうかもしれない。

かといって、こちら側に残していくのもな……ミラボレアスはこちら側の人達にとっては御伽噺の中の存在で、伝説上の生物と言われているそうだし……ミラボレアスやほかのポケモンの研究のために、このメタモンは間違いなく利用されるだろう……それもなんだか可哀想だ。

アカイさんの説明を受けたギルドマスターも、おそらく私と似たことを考えているのか、非常に難しい顔をしていた。

 

「……確かに、難しい話じゃな。そちらの……ヒスイの事情はよう知らぬが、こちら側ならある程度想像はつく。まず間違いなく、龍歴院はそのメタモンを欲しがるじゃろう。なんせ、ミラボレアスじゃ。これまでその存在のほとんどがベールに包まれたモンスター……近年、研究が進んでおるとは言え、まだまだ謎の部分が多いのじゃ。

だが、そのメタモンがおれば話は変わる。ミラボレアスに変身させれば様々な方面から研究ができるじゃろうし、ミラボレアス以外のモンスターにも変身できるのじゃろう?そんな便利なモンスター、求めるなという方が無理があろう」

 

「だな……メタモンについては、私もギルドや龍歴院と交渉を続けていこうと思う。ギルドマスター殿も、よろしく頼む」

 

「無論じゃ。……それにしても、こんなちっこいモンスターがミラボレアスに……ほれほれ」ツンツン

 

「モンモン♪」キャッキャ(≧∇≦*)キャッキャ

 

「……か、かわいい……!」

 

どうやらメタモンの扱いについては、ギルドや龍歴院にしっかりと交渉をするらしい。この辺のことは、アカイさんに任せれば万事オーケーなので、安心だ。

……ギルドマスターさんがメタモンをつっついて和んでる。まぁ、可愛いよね、メタモン。

今夜はメゼポルタ防衛成功ということで、小さいながらに宴を開くこととなった。今は英気を養って、その後メゼポルタを復旧させていこう、ということらしい。どうやら復旧資源の回収のために出払っていた他のレジェンドラスタ達が、現在メゼポルタへの帰路に着いたことが報告に上がってきたそうなのだ。ついでに、ドンドルマが用意することとなった滅龍石についても、メゼポルタへ輸送中とのこと……すごく順調に事が進んでいる!このまま何事もなければいいけれど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メゼポルタ到着から、三日が経過した。シロちゃんから聞かされたのだが、ドンドルマで呪いが酷くなった時点で私の寿命は二週間だった。そこから半日かけてメゼポルタに着き、流れでバゼルギウスとメタモンの相手をして、プチ宴会も開いて三日……あと十一日か。

……落ち着け、大丈夫。まだ時間はある。滅龍石の輸送も道中滞りなく向かっているとのことなので、最速で明日には到着するだろう、とのこと。ただ、この三日間は実に忙しい日々だった。

まず、メゼポルタの復興である。私たちだけでなく、ポケモンたちの力も借りて全力で復興に勤しんだ。……ブイズはどこに行っても人気者、はっきりわかるんだね。めちゃくちゃ可愛がられてたなぁ。

 

それと、この三日でメタモンの件はひとまず決着がついた。まず……ミラボレアスの姿を覚えている以上、私たちの地元に連れて帰ることは困難となった。実際、へんしんとはいえあんな巨大サイズのドラゴンが頻繁に出現するようなことになれば、近隣に迷惑がかかることは必至。捕まえて保護してもいいけど……事情が事情だけに迂闊に話すことも憚られる上に、この手の話は時間の経過とともに忘れられたり曲解されたりして、ロクなことにならないのはお母さんから口を酸っぱくする勢いで言われ続けていたので、よーく理解している。

 

では、この大陸に残していく場合どうなるのか。まぁ……可愛がられはするだろう。メタモンの高さは0.3m……アイルーやプーギーといったこの大陸のマスコット的生物よりも小さい体に、骨格を持たない軟体性の体はぷにぷにと柔らかく、実際にメタモンをだっこしたフラウさんはその柔らかさと気持ちよさに瞬殺された。今ではよほどのことがない限りメタモンを離そうとしないほどだ。……余談だが、フローラさん、チルカさん、クロエさんも、みんなメタモンの柔らかさにイチコロだった。レイラさんだけは珍しそうにしていただけで平気そうだった。

 

話が逸れた。この大陸に残していった場合、間違いなくモンスターの生態研究に協力させられることだろう。へんしんは一目見るだけで相手の特徴を把握できるので、モンスターとメタモンを対面させるだけで十分だし、素材の方はわからないけど……けど、なんの収穫もないことはないだろう。龍歴院所属のネネさんは、「目撃例が少ないモンスターの研究」にメタモンの力が必要になるだろう、とのこと。

例えば、ラージャン。ラージャンの目撃例がすくない理由は、「目撃者の生存率が芳しくない」から。だが、メタモンにラージャンの姿を覚えさせて変身させれば、わざわざ危険なラージャンを見に行ったり無理に狩猟に趣いたりせず、能力把握や生態研究が可能だからだ。他の生物で言えば、古龍がそうだろう。以前シロちゃんが乗り物にしていたキリンも、"幻獣"の別名を持つ通り本当はとても珍しいポケモンなんだとか。そういった生物の研究なんかにも、メタモンの力が生かされるだろうとのこと。……もちろん、メタモン自身も研究対象だ。

 

そのことをシズカさんとアカイさん……さらに大きなハンターズギルドを持ついくつかの地域のギルドマスターが議会を開いて話し合ったそうだ。ミナガルデ、ドンドルマ、ロックラック、タンジアの港、バルバレ、龍歴院……二つしかわからなかったけど、それだけ大きなギルドが複数あるってだけでも、ハンター業がこの大陸にとってどれだけ重宝されているかがよくわかる。

……議会がめちゃくちゃ紛糾しまくって疲れた、とシズカさんが死んだ魚のような目をしていたのが印象深かった。シズカさんはメタモンに関してかなり知見が深かったので呼ばれたそうだけど……多分、普段の信頼関係もあるんだろうな。

 

さて、結論を述べるとしよう。……メタモンは、この大陸に残していくこととなった。ただし、メタモンはギルドが直接管理するのではなく、メタモンに詳しいシズカさんと、シズカさんが所属する"我らの団"というキャラバン隊が管理することとなった。この決定の決め手となったのは、メタモンが私たちの地元に生息していることと、そんな私たちと最も縁が深い人物がシズカさんだろう、ということだ。月に一度、生態研究のために龍歴院に行かなければならないこと以外は、普通にペットとして飼う形になるそうだ。

 

そんなこんなな三日を過ごした今日。メゼポルタ到着から三泊した四日目、ダイアーさんが亜大陸からライダーを連れてきた、とのこと。なんでも、リオレウスの今の状態に詳しいらしい。シズカさんも言ってたっけ……たしか、「破滅の翼」……。

ただ、なんか亜大陸で「破滅」と呼ばれていたのは実は濡れ衣で、実際に破滅をもたらそうとしたのは古龍の方らしい。その古龍を撃退したリオレウスの方が、長い年月の果てに「破滅の翼」と呼ばれるようになったんだとか。……理不尽すぎない?ただ、実際に破滅を齎しかねないほどの力を秘めていて、リオレウス自身も制御を誤れば暴走する危険性もあるらしい。こういう知識はちゃんと本場の人に聞いておいたほうがいいということで、私はシズカさんと共にライダーさんの話を聞くことになった。

……ぶっちゃけ、シズカさんから話を聞けたのでこれ以上は別にいいかな、とも思ってたりする。

 

「やあやあショウ!三日ぶりだねー」

 

「ダイアーさん!お疲れ様です」

 

「うんうむ、君のリオレウスの状態をよく知るために、ライダーさんを連れてきたよ。彼らから話を聞いてくれー」

 

ダイアーさんが連れてきてくれた人間の数は四人。防具を纏う人間が二人、背が小さいのと高いの。あれがライダーか……。それと少女、中年の男性だ。少女の方は竜人族っぽいので、外見年齢は当てにならないだろう。それと、アイルーよりも全体的に丸みを帯びたフォルムの獣人族もいる。……ネコっぽいし、アイルーの親戚かな。

そして、彼らの後方に控えるポケモン……リオレウスと、もう一体は知らない個体だ。

 

後頭部に張り出した大きな襟飾り。

雄々しく天を突く真紅の角。

 

見た目からして荒々しさを感じさせる力強いポケモンだ。

 

「こんにちは!」

 

「あっはい、こんにちは」

 

リオレウス……っぽい見た目の防具の、背が低いほうが話しかけてきた。"ぽい"、と表現したのは、背中に生えている翼の装飾が今の私のリオレウスのような青色だったり、全体的に黒っぽい色合いが目立つからだ。……見た目と違って、中の人はすごく明るい人っぽいけど。

 

「ボク、『ツバサ』って言います!こっちはオトモンのレウスと、相棒のエナとナビルーです!もしかして、トレーナーの人、ですか?」

 

「……えっと、はい。モンスタートレーナーのショウです。本日からよろしくお願いします」

 

「初めまして、トレーナーさん。私は『エナ』。ツバサの相棒……うん、相棒です。よろしくお願いします」

 

「オレはナビルー!よろしくな、トレーナーさん!」

 

「エナさんと、ナビルーさん……よろしくお願いします」

 

「"さん"はいらないぜ。オレのことはナビルーって呼んでくれよ!」

 

エナさんはどこか神秘的というか……冷静だけと冷徹じゃなくて、穏やかな気質も感じさせる女性って感じだ。やっぱり竜人族の年齢を外見で判断するのは無理があったか。ナビルーさん……ナビルーは、気前のいいお調子者って雰囲気が外見からは感じられたが、話をしてみるとそれだけじゃないことが容易に分かる。いい相棒なんだろうな……。

 

「こんにちは、お嬢さん。僕は『ソウヤ・ニシノ』。行商人の真似事なんかをしながら、ライダーさんを支援しているんだ。よろしくね」

 

「……!!」

 

話しかけてきたのは中年の男性。名前はソウヤ・ニシノさん……あれ、シズカさんと名前の雰囲気が似ている?思わず隣にいるシズカさんを見――

 

「…………」

 

「シ、シズカさ――」

 

「話しかけないで」

 

シ、シズカさんが猛烈に殺気立ってる……!?さらによく見ると、剥ぎ取りナイフに伸びて柄まで掴んでいる手を、反対側の手で掴んで強引に抑えている。……ぼ、防具がミシミシ音を立てているんですけど……!?

 

「へぇー、本物は直に見るとやっぱ違うなー……すっげぇ可愛いじゃーん」

 

「…………?」

 

続いて話しかけてきたのは背の高い方。全体的に茶色の配色で、所々に赤い角やトゲのような装飾が目立つ防具だ。

 

「あなたは?」

 

「ウィッス!俺、『ユージ』っつーの。よろしくね、可愛いお嬢さん方。俺のオトモンはコイツ、『モノブロス』ってんだ」

 

「ブオォン」

 

もうひとりのライダーはユージさん。オトモンはモノブロス……うーん、うーん……。

 

「(気のせいかな……?)」

 

「さて、挨拶が済んだところで……おい、ツバサ。とっとと本題に入ろうぜ」

 

「おぉ、ユージさんが珍しく真面目ですね」

 

「騙されるなよツバサ。どーせこいつのことだ、さっさと目的を済ませて女漁りに行きたいだけに決まってるぞ!」

 

「おいこらナビルー!この駄猫!人をナンパ野郎みたいな言い方すんじゃねー!」

 

「そんなこと言って、エナにセクハラしたこと、忘れたとは言わせねーぞ!」

 

「ちがーう!あれは事故だ!クアン村の雪に足を取られて――」

 

「それ、アユリアの時にも同じ言い訳してなかったかしら?」

 

「故意じゃない!事故、断じて事故!ぐあー!誰も信じてくれねー!!」

 

「日頃の行いかと」

 

……なにか、漫才が始まってしまった。ユージさん……信用がないのか、ある意味信用されているというべきか、どうやら性格に難があるようだ。ソウヤさんはそんな三人と一匹のやり取りを、少し離れた場所で見守っている。……そして、シズカさんが殺気立ったまま、ソウヤさんを睨みつけているのも変わらない。変だな……初対面の相手に対して、シズカさんがここまで殺気立つなんてこと、あるのかな……。

 

「……よっこいせ」

 

そうこうしているうちに、ツバサさんが頭防具を外した。顔に傷跡が付いている、好青年って印象の顔だ。ユージさんも続けて防具を外した。こちらは……いかにもなイケメンっぷり。ただ、あの顔ならナンパ野郎なんて言われても納得してしまう。

……うーん、うーん……。

 

「……おっ、どうしたんだいショウちゃん。俺の顔に、なにかついてるか?」

 

「……いえ、別に……」

 

なんだろう……ユージさんを見ていると……こう……

 

 

――腸が煮えくり返る思いが溢れてくる。

 

 

「それで、ショウさん。破滅の翼を持つレウスはどこに……?」

 

「あっ、すみませんエナさん。ここに……」

 

「……あの、それ、ボールでは?」

 

「えぇ、はい。この中にいます」

 

「中に!?」

 

エナさんが驚きを顕にした。まぁそうだよね、普通ボールの中に入るなんてありえないよね。

 

「出てきて、リオレウス!!」

 

「……グ、ウゥ……」

 

私はボールを放り投げ、中からリオレウスを繰り出した。……相変わらず、青くなった翼をたたんで、体を丸めて蹲っている。

 

「これは……」

 

「デ、デケェ……!これ、21mはあるんじゃないか!?」

 

「うーわ、マジで"はめつば"じゃん。しかも金冠サイズとか……」

 

「……この、レウスは……」

 

ライダー二人とエナさん、ナビルーは思い思いの反応を見せている。……確かにツバサさんのオトモンのリオレウスと比較すると、私のリオレウスの方がふた回り以上は大きい。オトモンはなぜ小さいのか……。

 

「……ッ」

 

「……!リオレウス、大丈夫……?」

 

リオレウスがパチリ、と目を開き、すぐに私の方へと顔を向けてくれた。私もすぐにリオレウスに駆け寄り、その頬をそっと撫でた。すると、エナさんも近づいてきて、同じようにリオレウスに触れた。

 

「……この子、すごく弱ってる……。どうしてこんなになるまでほうっておいたの……!」

 

「そ、それは……」

 

「グオオンッ!!」

 

「きゃっ!」

 

エナさんの鋭い指摘に私が言葉を詰まらせると、リオレウスがエナさんを鼻先で小突いてしまった!それから私の方に顔を寄せつつ、エナさんの方を睨みつけている。

 

「エナ!大丈夫か!?」

 

「え、ええ……」

 

「……このリオレウス、怒ってる。多分、エナがショウさんに掛けた言葉に反応したんだ」

 

「あー……エナ殿、あまりショウを責めないでやってくれ。ショウのリオレウスが破滅の翼の姿になったのは、本当につい最近なんだ。具体的には三日前。それで、こちらの大陸には破滅の翼についての情報がまだ届いてないから、どうすればいいのかわからなくて途方に暮れてたんだよ」

 

「それは……」

 

ダイアーさんが、咄嗟に間に入って仲裁してくれた。エナさんは申し訳なさそうに顔を伏せると、すぐに謝罪してくれた。

 

「ごめんなさい、ショウさん、リオレウス。責めるつもりはなかったの……」

 

「いえ、こちらこそもっと事前に早く伝えられていれば……」

 

「クルルル」

 

お互いに謝り合っていると、ツバサさんのリオレウスが喉を鳴らしながら私のリオレウスに近づいてきた。リオレウスは気だるげな様子で頭を上げると、目を細めてツバサのリオレウスを注視している。

ツバサさんのリオレウスは、リオレイアがしていたように頬を寄せてすり合わせると、そっと目を閉じた。私のリオレウスも同じように目を閉じている。……これは……?

 

「レウス……」

 

「……やっぱり同じリオレウス同士、レウスも心配なんだろうな……」

 

「ツバサさんのリオレウスも、翼が青かった時期があったんですよね?」

 

「うん。最初は上手く行かなくて、暴走したりすることもあったけど……けど、ボクはレウスを信じているから。レウスもボクを信じてくれている……ボクは最後まで諦めなかったよ。だから、ボクのピンチにレウスも力に目覚めてくれた。

絆の力は、どんな不可能だって可能にしてくれるのさ。だから、ショウさんもリオレウスを信じてあげて」

 

「ツバサさん……はいっ!」

 

ツバサさんの言葉は、私の胸に強く響いた。絆の力……私とリオレウスの間にも、確かな絆があるはず……今は、絆の力とリオレウス自身を信じるしかない!

 

「グオン、グオン」

 

「……ん、どうしたレウス?」

 

「グウゥ」

 

「ふむ……」

 

「ツバサさん、リオレウスの言葉が分かるんですか?」

 

「ん?あぁ……漠然と、だけどね。でも、ボクのレウスが言いたいことは、なんとなくわかるよ」

 

「なんて言ってるんですか?」

 

「うーん……どうやら自分とショウさんのリオレウスを比べてみて、ショウさんの方のリオレウスがはるかに弱いって言いたいのかも」

 

「えぇ!?」

 

い、いきなり失礼なことを言われたー!?

 

「あぁ、違う違う!?別に馬鹿にしてるとかじゃないよ!ただ……破滅の力を使いこなすには、君のレウスは弱すぎる、と言いたいんだと思う」

 

「そういうことなら、相棒のレウスの言葉は間違いないだろうな!なんせ、破滅の力に関しては一日之長があるからな!」

 

「……確かに、この子の弱り方はレウスとは違う。まるで、大きすぎるものを無理やり押さえ込もうとしているかのような、無理をしている感はあるかも……」

 

「そんなっ……!」

 

リオレウス……まさか、そんな無理をしてまで強くなろうとしたの……!?嬉しいけど、なんだか複雑だよ……。

 

「……で?要するにコイツがザコいせいでつれーんだろ?だったら強くなればよくね?」

 

「それはそうだけど……ユージ、言い方があるだろ!」

 

「へいへい……」

 

ナビルーに叱られて、そっぽを向くユージさん。確かにいい方が悪すぎるし……さっきからこの人を見てるとむかっ腹が立ってくる……本当に何なんだろうか……。

 

「……確かに言い方は悪いけど、ユージの言い分に間違いはない。ショウさんのレウスに必要なことは、破滅の力に耐えうるほどに力をつけること。そのために、もっと戦闘経験を積んで、力の使い方を学ぶ必要があると思うわ」

 

エナさんはユージさんの言い分を認めてはいる。確かに、弱いなら強くなればいい。実にシンプルだけど、ヒスイとは違って野生の個体に片っ端から勝負を仕掛けるわけにもいかないし……。

そうやって悩んでいると、ユージさんがポン、と手を叩いた。

 

「……あ!だったらいいもんあるじゃんよ」

 

「なんだよユージ……適当なこと言ったら、怒るぞ?」

 

「うるせーよ、駄猫!……あのな、ショウちゃん。ギルドは闘技場って建物を管理してるんだが、これを使わせて貰えりゃよくね?って思うわけよ」

 

「闘技場?」

 

「まぁ、文字通りの意味で、だな。ハンターの狩猟を見たがるもの好きや、放置してたらモンスターの巣窟になってたとか、いろんな理由でハンターがモンスターを狩ることがある場所だ。特定の武器種での狩猟時間を競うこともあるな。

リオレウスくらいの大型モンスターが暴れても大丈夫なくらい広い闘技場もあるし、そこを使わせて貰えればショウちゃんはリオレウスを鍛えられる、ギルド側も無闇矢鱈に野生のモンスターを襲われないで済む、一石二鳥じゃん」

 

「なるほど……」

 

そんな場所があるなら、是非とも借り受けたいところだ。

 

「……一理ある。龍歴院も、破滅の力や技巧種について研究したいだろうし、交渉材料にはちょうどいいか」

 

「……ふん、どうだ駄猫。俺だってまともな事を言うだろうが」

 

「普段からそうしろよな、オマエ……」

 

「うぐっ……」

 

嫌味たっぷりにドヤ顔をするユージさんだが、ナビルーには堪えていない様子。それどころか、逆に釘を刺されていた。

シズカさんも肯定してくれたし、本格的に闘技場を借りるよう交渉しておこう。

 

「……グ、グググ……!」

 

「リオレウス……!」

 

リオレウスが立ち上がろうとするも……すぐに力なく倒れ込んでしまった。

 

「無理はしないでね、リオレウス……一緒に強くなろう。だから、焦らなくてもいいよ」

 

「……グオン……」

 

ひとまず、リオレウス強化計画に関しては闘技場を借りる、ということで決まった。後のことは、シズカさんがアカイさんと共にギルドに交渉するらしい。……この二人が揃うと無敵だな、もう二人だけでいいんじゃないかな?

ツバサさんたちライダーはメゼポルタに滞在するらしい。私のリオレウスに合わせてくれているのだ、大変ありがたい。……ユージさんは早速レジェンドラスタの女性陣にちょっかいをかけに行ってレイラさんに瞬殺されていた。ザマァ……はっ!私は何を……?

 

あとは滅龍石の到着を待つだけ……そんな時だった。

 

「ニャ」

 

「え?」

 

私が一人でいるタイミングで、黒い毛並みのアイルーが近づいてきた。……いや、コイツ、メラルーか。メラルーは私に近づくと一枚の手紙を差し出してきた。それから丁寧に一礼すると、どこかへ走り去っていった。

 

「……?」

 

私は手紙を開いて、中身を見る。手紙の内容は……。

 

「……『メゼポルタ南部にて待つ。 クロノ』……果たし状、ってやつか」

 

クロノ……前回は、ポケモンを狂竜化させるだけでなく、私の知らないポケモンを多用してきたり自ら参戦してきたりと、ルール無用もいいところな戦い方をしてきたけど、はたして……。

手紙には特に何も書かれていなかったけど、ここは一人で向かったほうがいいだろうな……隠してもしょうがないだろうから、アカイさんとシロちゃんにだけは伝えておこう。

私は誰にも気づかれないようにこっそりと準備をすると、さっそくメゼポルタの南部へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メゼポルタの南側から出発して、ジンオウガの背に揺られることしばらく……待ち人はそこにいた。

 

「クロノ!」

 

「……来たか」

 

クロノはそこにいた。……ただ、なんだか以前会った時よりも雰囲気が変わった?なんだか気落ちしているというか、少しナイーブになっているというか……簡潔に言うと、「落ち込んでいる」ようだった。

 

「約束通り、来たよ」

 

「…………」

 

「……クロノ?」

 

本当にどうしたんだろうか……クロノはなにやら考え込むように黙り込んでいる。先程まで唸り声を上げていたジンオウガも、流石に違和感を覚えたのか首をかしげていた。

 

「……ショウ、お前はなぜ強くなろうとする」

 

「え……?」

 

ど、どうした急に……?

 

「お前が強くなろうとするのはなぜだ?生きるためか、勝つためか、負けないためか、そもそも強くなることが目的か?」

 

「……全部、だよ。ミラボレアスの呪いに抗い生きるために、そのためにもこれからの戦いに勝つために。だから、私は強くなる。……まあ、最近はもう一つ強くなる理由もできたけどね(リオレウスの破滅の力のためにも……)」

 

「……そうか。俺様が強くなる理由は一つ……負けないためだ」

 

「"負けないため"……」

 

「俺様はミラボレアス……の、代弁者。ミラボレアスの名代たる俺様の敗北は、ミラボレアスという存在に泥を塗る行為そのもの……そのような結果は認められない。だから、俺様はありとあらゆる方法を……外法・外道とも言えるような手段だって選びながら強くなろうとした。

……だが、誰も彼もが口を揃えてこう言う……"それは間違っている"と。……なぜだっ!!」

 

ダンッ!!とクロノが力強く地面を踏みしめた。その体は怒りからかワナワナと震えている。

 

「真っ当な手段で誰よりも強くなれるというのなら、とっくのとうにそうしている!!それではどうやっても、どうあがいても届かないから!だから俺様は俺様なりに考えてあらゆる手段を模索した!強くなるために、勝つために、負けないために!

……それが誤りだ嘯く輩は、きっと恥も敗北も知らぬのだ。成功ばかりを収めてきた果報者の言葉など、失敗と敗北を重ねてきた者には凶器にしかならん!!そうやって無意識に他者を見下して楽しいか!?満足か!?きさまら勝者の善意という奴が、敗者を傷つけているのだとなぜ気付かん!?

……ふぅ。チッ、頭に血が上ったか……。ショウ、お前は所謂、勝ち組というやつなのだろう。では、お前に敗れていった者たちの気持ちがお前に分かるか?」

 

「それは……」

 

……クロノの言葉は、完全に理解できないというわけじゃない。だけど……!

 

「……言いたいことはわかるけど、だからといってそれは道を踏み外していい理由にはならない!確かに、人によっては勝ち続けることができる人もいれば、負け続ける人もいる……でも、どんな人だって勝利するための努力を続けているんだ!

同じやり方で強くなるからこそ戦う者同士は対等になり、勝負を通してお互いをよく理解していく!その結果として勝者と敗者が存在するのは事実だけど、勝ち負けに囚われるほど心が弱い人はクロノが言うほど多くはない!」

 

「……ふんっ!そのセリフ、母親の前でも同じ事が言えるのか?」

 

「……え?」

 

ど、どうしてお母さんが……?

 

「俺様から見ても、お前の母親は随分と勝利に執着していたようだが?ポケモンの能力や性格、あらゆる数値を厳選し強いポケモンを求めていた。赤子のお前を抱いての散歩のついでに、孵化厳選作業もやっていたようだしな!」

 

「……!!」

 

確かにお母さんは私を抱っこして歩くついでに、ポケモンのタマゴをいくつも持ち歩いていたけど……あれって、そういうことだったの……!?

 

「俺様はむしろ感心したぜ。お前の母親は、勝敗を意識する真っ当な人間だとな。……そうだろう?現にお前の母親はお前の父親に一度敗北したきり、ただの一度も負けていないのだから。

あの強さ……死んだ従弟(・・・・・)でも目指していたのか?存外に未練がましい女だ……」

 

「従弟……?」

 

「グルルルルルルッ!!」

 

従弟って……お母さんに親戚兄弟はいなかったはずだけど……?と、ここでジンオウガが激しく怒りを顕にしている。こっちもこっちでどうした急に……!?

 

「あの強さ……俺様も、あれくらいの強さが欲しかった、だから目指した。そのための狂竜化だ。……なのに……」

 

「クロノ……」

 

「……もういい、さっさと勝負をしよう。今度こそ、お前に勝利してその息の根を止めてやる……!」

 

「来るか……!!」

 

私とクロノは、ほぼ同時にボールを構えた。そして、同時に繰り出す……!

 

「ライチュウ!」

 

「ラアアァァァァイッ!!」

 

「デンリュウ」

 

「リュー!」

 

私はライチュウを繰り出し、クロノはデンリュウを繰り出した。……あれ?

 

「そのデンリュウは……」

 

「あ?……あぁ、別に狂竜化させてねーよ。普通の個体だ」

 

「前はあんな手を使ってきておいて、一体どういつもり?」

 

「別に。……ただ、狂竜化個体なんて使ってちゃ、こんな俺様を"弱くない"って言ってくれたチャンピオン(女優さん)に顔向けできねーからな」

 

「女優……?」

 

さっきからいったい誰のことを言ってるんだ……けど、これはいい傾向では?

あのクロノが、真っ向勝負を挑んできているのだ。小細工抜きの真剣勝負……ある意味、手強い敵になってしまったかもしれないな。

 

「さて……やるか、デンリュウ」

 

「リュ」

 

クロノは手を組むとそれを顔の前まで持ってきた。まるで祈るような状態になると、クロノの心臓部から黒と紫の光の線が伸びてきて、デンリュウと結びついた!

 

夜中(やちゅう)()らす、残光(ざんこう)(ひと)

 

(みち)(しめ)(みちび)きの()

 

(やみ)()()一筋(ひとすじ)光明(こうみょう)

 

目覚(めざ)めよ、竜魂(りゅうこん)(ねむ)りし(りゅう)()

 

光竜(こうりゅう) (われ)此処(ここ)()

 

デンリュウ……メガシンカ!!」

 

「リューッ!!」

 

デンリュウが光に包まれて……メガデンリュウにメガシンカした!!

 

 

――導きの灯 光竜 メガデンリュウ――

 

 

「さぁ……ポケモンバトルを、始めよう」

 

「……望むところだ!」

 

勝負だ、クロノ……!!

 

 

 

 

――ショウ 余命11

 

 

 

 




黒龍、カロス巡りより帰還直前のこと――

「…………」

――大丈夫。貴方は、貴方自身が思うほど弱くはないわ――

――だって、こんなにも強くなりたがっているでしょう?――

――その想いは決して、間違いなんかじゃないわ――

「……あー、クソッ。俺様としたことが……」

「……やってやろうじゃねーか……見てろよ、チャンピオン!」



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