「……っ」
なんだか、長く眠っていたような気がする……少しずつ覚醒に近づく意識を自覚しながら、私はゆっくりと目を開けた。そこはメゼポルタの宿のようで、私が寝泊まりしている部屋でもあった。
「……!そうだ!バトル……」
「お前の勝ちだよ、ショウ」
「……!?クロノ……!」
起き上がった私が一番に気になったのは、もちろんバトルの勝敗だ。少し曖昧ではあるが、クロノのイビルジョーを倒した……かもしれないところまでは覚えている。そんな私の記憶を補強してくれたのは、クロノだった。窓縁に腰掛け、暇だったのかあくびをしながらこちらを見ている。
「なぜ――」
「待った、俺は聖徳太子じゃないからな。一問一答といこうぜ」
「……わかったわ、じゃあ一つ目。……なぜここに?」
「そりゃあ、俺様もついてきたからな」
「ついてきた!?」
クロノ曰く……ポケモンバトルは私の勝ちに終わったが、どうやらバトル後に私はジンオウガ共々気絶してしまったらしい。そこで私の様子を見に来ていたアカイさんが、私とジンオウガをメゼポルタまで運んでくれたそうだ。その際にクロノもついてきたらしく、みんなには「アカイの弟」として紹介したそうだ。
……兄弟、か。なんか、そう言われるとそう見えるし、そうでもないように感じる……。アカイさんとクロノ、不思議な関係だなぁ。
「私、気絶しちゃったんだ……」
「おう、三日な」
「三日も気絶……え"っ、三日もぉ!?」
「そりゃあ、黒龍の呪いを限界まで弱体化させつつショウの状態を把握したり、治療が必要なら施したりと忙しかったからな」
私、三日も気絶していたの……!?慌てて外を見ると、最後の記憶と同じ夜の景色が広がっている。うぅ……ただでさえ時間がないのに……!
「あ、あと四時間くらいで0時回るから、実質四日だな」
「完っ全に寝過ごしてる!!」
「まぁ、落ち着け。ココアでも飲んでリラックスしな」
「これが落ち着いていられ――」
「大事な話があるんだ」
……真剣な表情のクロノに、私も思わず黙り込む。あのバトルの間の様子といい、一体クロノの身に何があったのか……いや、それよりも大事な話があるんだった。
「大事な話って?」
「あぁ……だが、その前にお前が聞きたいことを全部聞いとかないとな。他にはないか?」
「他……じゃあ、ジンオウガは……?」
「ぐっすりだぜ。……お前よりはだいぶ寝ているがな。まぁ、無理もない。角を折られたから、その再生に時間を使っているんだ。まだ二時間は起こしてやるなよ」
ジンオウガ……かなり無理をさせちゃったからね……今はしっかりと休んでね……。
「わかった。それじゃあ……クロノはどうしてお母さんのことを知ってたの?」
「お前のお袋さんにも喧嘩売ったからな」
「えぇ~……」
「つーか、お前のお袋さん何者なんだよ……りゅうのまい一回積んだギャラドスに、俺様のメガシンカポケモン軍団を全タテされたんだが?」
「……それは、ご愁傷様。あと、お母さんは普通の人間だよ」
……内心、娘の私自身も疑わしくなってきた。私でさえ特殊個体の手持ちを半分に減らされたのに、お母さんは普通のギャラドスで全タテって……。
「……まぁ、それもあの稲妻光輝の従姉とくればさもありなん、といったところか」
「イナヅマコウキ?」
誰……?お母さんに従兄弟はいないはずだけど?
「お母さんに親戚従兄弟はいないけど」
「あー……うん、実はそのことで話があるんだ。さっき言ってた、大事な話ってやつだ」
「……どうして?」
「せっかくだから、お前とジンオウガに一つ、ケジメをつけさせてやろうと思ったんだ。俺様なりの気持ち、ってやつさ」
「ケジメ……?」
私がつけなくちゃいけないケジメ……?それと、どうしてジンオウガに関係が……?
「……っと、その前に。とある前提条件があるんだが、ひとまずはそれを受け入れてくれ。これから話すことはすべて真実であり、嘘など欠片もない。信じる信じないは勝手だが、信じなければ話にならないし話も進まない。
つまり……一切の疑問疑惑を捨てて、これから俺様が話す内容を掛け値なしに信じること。これが条件だ」
「……話して」
すこしだけ迷ったけど……三日前のバトルでのクロノの様子や今の真剣な表情から、信じてみようと思った。私が信じる姿勢を見せたからか、クロノはニィッ、と笑った。
「それじゃあ……話そう。……あっ、そうそう。ショウ、一つ聞くぜ」
「なに?」
「お前……
前世って信じるか?」
メゼポルタのショウが寝泊まりしている部屋の前に佇み、何度もノックしようとした手を上げては下ろす。三日前の夜、突然ショウが姿を消した……かと思えば、気絶した状態でアカイさんに運ばれてきた。ジンオウガも酷い怪我を負っていて、とても回復道具だけで回復しきれるような傷ではなかった。こういう時、モンスターは睡眠をとることで体力を回復し、再生力を促進させるらしい。なのであえてボールから出し、回復道具で回復させた上でジンオウガを眠らせている。
……また、おれ達の知らないところでショウが頑張っていた。どうやらショウは果たし状を受け取り、ポケモン勝負をしていたそうだ。対戦相手はアカイさんの弟だというクロノ。アイツとの勝負の途中で呪いが進行したらしい。勝負には勝ったものの、気絶してしまったのはそのためだ。
アカイさんが気絶したショウを連れて帰ってきたとき、その姿を見て身の毛がよだった。ひび割れが顔の左半分にまで達していたからだ。さらに呪いを抑えたシロちゃん曰く、呪いによるひび割れは下半身はふくらはぎまで、上半身も顔面左半分・左前腕・右二の腕にまでひび割れが達している。前面にまで及んではいるが、かろうじて心臓部に達していないところからまだ大丈夫らしいけど……状態から察するに、次の零時で残り一週間になるらしい。
ショウが気絶している間、おれは足繁くショウの元へ通いつめていた。出来ることなんて知れているけど、何もしないよりはいいはずだから。……でも、このままショウが目覚めなかったら……そんな不安がこの三日間ずっと続いていて、その不安を少しでも和らげたいから、こうして看病目的でここにいるのかもしれない。
「……ダメだな、情けないぞおれ……」
ショウはもっと不安だろうに、おれの方が参ってどうするんだ……!意を決して扉を開けるためにノブに手を掛けようとした、その時だった。先に扉の方が開き、中からクロノが姿を見せた。
「……お?お前、確か……テル、だったか」
「あ、あぁ……えっと、クロノはどうしてここに?」
「概ねお前と同じ目的だぜ。……あと、ショウは起きたぞ」
「本当か!?」
「うわっとぉ」
思わずクロノを押しのけて部屋の中へ入ってしまったが……そこには体を起こしてベッドの上に座るショウの姿があった!
「ショウ!」
「……先輩」
「……ショウ、どうした?」
ショウは……なんだか元気がなさそうだった。……無理もないか、多分クロノから残り時間を聞かされたのかもしれない。それに、あんなこともあったから……。
「……ショウ、気分はどうだ?」
「……まぁ、ぼちぼち、ですかね……。それより先輩、私が眠っている間のこととか、なにかありましたか?」
「……えっと……」
どうする……本当のことを伝えるべきか……?いや、でも、それでショウが傷つくなんておれには……。
「起きたか、ショウ」
「アカイさん」
「うっ……」
おれが言い淀んでいると、アカイさんが姿を見せた。後ろにはクロノもいる……アイツが連れてきたのか。
「起きて早々に悪いが、降りてきてもらえるか?状況を説明したい」
「……何かあったんですね?」
「あぁ……想像しうる限り、最悪の事態だ」
「分かりました、行きます」
「ショウ!無理に起きなくても……」
「大丈夫です、先輩。……片目が使えないのは、ちょっと不便ですけどね」
そう言ってショウは小さく微笑んだ。……今のショウは、呪いの影響で左目の瞳が変色してしまっている。悪い影響がないとは言い切れないので、包帯で眼帯のように顔の左半分を包んでいる状態だ。それでも、ショウはしっかりとした足取りで床に足を付き、立ち上がった。
「行きましょう」
「了解した」
「……いや、なんで立てるんだよこいつ……母娘揃って化物か……?」
おい、クロノ。失礼な事を言うな、ショウは至って普通の女の子だぞ。
おれたちは揃って一階にある食堂へ向かう。……これからする話、ショウにとってはかなりキツイだろうな……。
食堂に着くや否や、セキさんとカイさん、そしてニールさん達ハンターの皆が駆け寄ってきてくれた。……あれ?
「ショウ!大丈夫か!?」
「呪いが酷くなったって聞いて、いてもたってもいられなくなって……」
「ここまで酷くなるとは……ショウ、本当に済まない……!」
「……えっと、シズカさんは……?」
「……あ、えっと……」
そう、食堂に入ってからシズカさんの姿が見当たらないことに気づいたのだ。そこでシズカさんはどうしたのかと尋ねれば、ニールさんが気まず気に目を逸らす。……なにかあったな、これ。
「ニールさん、その腕は……」
「えっ!?いや、全然たいしたことないさ!ははは……!」
ニールさんも、なぜか左腕に包帯を巻いている。……若干だけど血が滲んでいる所を見るに、まだ傷は塞がっていない……最近出来た傷かな?
「……姉様はただいま寝込んでいます。誰かさんのせいで……ね!」
そう言うネネさんは憎々し気にニールさんを睨みつけた。ニールさんはまたも目を逸らし居心地が悪そうだ。
「えっ、シズカさんがっ!?何があったんですか……!!」
「……えーっと、話すとめちゃくちゃ複雑でわかりにくいんだが……いいかな?」
「構いません、聞かせてください」
「……わかった」
それから、ニールさんは話し始めた。時は遡ること三日前……時間的に、私がクロノとポケモンバトルをしている最中のこと……
――三日前――
「ソウヤ・ニシノ」
「おや、君は……」
その日の夜、シズカは荷物を整理しているソウヤに話しかけた。ソウヤは荷物整理を一度止めて、シズカと向き合う。
「ハンターさんだね。初めまして」
「初めまして。私は、シズカ・ミズハシ……いえ、水橋静香」
「え?」
その名乗り方に、ソウヤは違和感とかすかな希望を抱いた。違和感は、『この世界』では珍しい家名を名乗ったこと。希望は、ひょっとしたら自分と同類かも知れないということ。
「(僕や彼以外にも転生者がいたのか……お互いの前世のこととか、色々と話せないかな……)」
ソウヤの胸中は、少しずつではあるが期待が膨らんでいた。……ただし、シズカはソウヤの期待に応えるというより、むしろ……。
「西野颯也、トラック運転手、飲酒運転でファミリーレストランに突っ込み死亡、享年56歳……」
「……まさか、君は……!?」
自身の経歴……それも、前世の死因までつらつらと述べるシズカに、ソウヤはある可能性に思い至った。そして、それは的中してしまうことになる……。
「ようやく出会えた……兄さんの仇……!!」
それまで顔を伏せていたシズカが顔を上げると……その表情は憤怒と憎悪に染まりきり、左手には剥ぎ取りナイフを持っていた。今にも刺しかねない勢いだ。
「兄さん……それじゃあ、君は……!」
「そうだ……私は、お前が前世に道連れにした五人の高校生たち……その内の一人、水橋流静の妹、水橋静香だ!
……ずっとずっと、心のどこかで願っていた。兄さんの仇を討ちたいと……けど、それは叶わない願いだと、どこかで諦めようとしていた……。私は転移者で、相手は転生者……転生なんて、黙っていればわからないし生まれた時代によっては会えないこともざらにある……前世の記憶がない可能性だってある……だから、諦めかけていた。
……フ、フフ……アハハハハハ!だが、天は私を見捨てなかった!私の味方だった!だって、こうして!お前と私を引き合わせてくれたのだから!!」
ナイフを突きつけ、一歩ずつ近づいていくシズカに対してソウヤは一歩も動かない。恐怖で動けないのではなく、動く気配すらなかったのだ。
「……そうか、君が……。いつかは、こんな日が来るんじゃないかと思っていたけど……やっぱり、そういう運命なんだな……」
「は……?」
「……僕はね、最初に転生したことに気づいたとき、思ったんだ。……"どうして僕なんだ"……って」
「どういう意味だ……」
「……ままならない人生に仕事疲れ……どんなことがあってもお酒に逃げないって決めてたのに、あの日だけはそれを破ってしまった。……バチが当たったんだな、僕だけで完結しなければならない問題だったのに、五人もの少年を巻き込んでしまった。そんな僕は、地獄に落ちて当然だ。……なのに、こうして転生してしまった。どうして僕を地獄に落としてくれなかったのか?それともこれは、生き地獄という意味なのか?
……色々と悩み、考えながらも僕は今日まで生きてきた。いつか、僕が殺してしまった彼らが僕と同じように転生した時のために、前世と同じ名前を使い続けた。……彼らが望むなら、復讐も受け入れるつもりで」
「お前……ッ!!」
ギリッ、とシズカが歯軋りする。その表情はますます怒りと憎しみを募らせていて、いつ爆発してもおかしくはない。
「ふざけるな……今更殊勝なフリでもする気か!」
「まさか、そんなんじゃないよ。あの時の僕は、紛れもない悪だった。普通、そんな奴が死んだら転生なんて許されず地獄に落ちるのが正解だ。……でも、僕は転生した。転生してしまった。それならきっと、この転生に意味があるはずなんだ。最初に言ったとおり、彼らの復讐を待ちながら、けれど前世の罪滅ぼしのために生きなければならないと……。
そのために、僕は商人を始めた。まさかモンスターハンターストーリーズ2に転生するとは思わなかったけど、少しでも主人公たちの手助けができたらと思ってね」
自嘲するように笑みを浮かべるソウヤに対し、シズカは苦い顔をしている。少なくとも、ソウヤ自身に罪悪感と罪の意識からくる償いの意思が感じられたからだ。それでも、一度出した手を引っ込めるつもりはなさそうだが。
「……それで、そのナイフで僕を殺すのかな。僕は構わないけど……後の処理とか、大丈夫かい?ちゃんと考えてきてる?もしそうじゃないなら、衝動に身を任せずにきちんと計画を練ってからにした方がいい。特に君はハンターだ……ハンターが一般人を手にかけるのは御法度だ。殺るにしても、ちゃんとバレないように――」
「黙れっ!!」
ソウヤの言葉を遮るように、シズカは吠えた。ソウヤが驚きに目を見開く中、シズカはまくし立てるように言葉を紡いだ。
「さっきから黙って聞いていれば……いい加減にしろっ!勝手に生きるのを諦めたかのようにほざきやがって!お前みたいなやつに殺された兄さん達が哀れすぎる!!復讐を受け入れる……その心意気は買ってやる。
だがな!死者に対して申し訳ないという気持ちがあるのなら、生きることを諦めるようなことをするな!!無様に生にしがみついて見せろ!逆恨みして逆上して見せろ!!そうでなければ、私は……!!」
「……っ。君こそ何を言うんだ!復讐に正当性を求めるなんて、それこそ綺麗事じゃないか!!君は僕を殺したいんだろう!?殺したいくらいに憎くて、許せないんじゃないのか!君の怒りは……憎しみは、僕の懺悔一つで揺らぐ程度のものなのか!?
その手にナイフを持っているのは何のためだ!家族を殺した仇に復讐して、死んだお兄さんの無念を晴らすためじゃないのか!!本当に許せないと怒り心頭に達した人は、相手がどれだけ反省し、懺悔し、許しを乞うても決して許さないものだ!!君のように物理的に仕返しをしようと考える人だっている!君だってその一人だろう!?
これから殺されようとする僕が言うことじゃないけど……躊躇うな!一度決意と覚悟を抱いたなら、失敗しても間違ってもいいから行動しろ!もしも失敗しても、間違えたとしても……きっと、君を想う誰かが君を止めてくれるはずだ。だから、遠慮するな。君が正しければ僕は殺され、君が間違っているなら誰かが君を止めてくれる……だから!!」
「うわああああああああっ!!」
シズカはナイフを構え、ソウヤに向けて突き出した。ソウヤは覚悟を決めたように静かに目を閉じる。そのまま、シズカのナイフがソウヤの心臓に突き立てられ――
グサッ――!
「シズカッ!!」
――ることはなかった。横合いからニールが左腕を伸ばし、その腕にナイフを刺したからだ。
「ぐっ……!!」
「……ッ!?ニール、さん……!!」
「なにを、やっているんだ……君はっ!!」
「うっ……!」
シズカは反射的に腕を引いてしまい、その結果ナイフはニールの腕から抜かれた。ニールは防具を着ておらず、私服と思しき軽装を身に纏っているだけだ。ナイフが抜かれた腕から血が流れ、ポタリポタリと大地を濡らす。
「あなたは……」
「……商人さん、下がっててくれ。彼女のことは、俺が」
「だが、僕は彼女を……」
「下がれっつってんだっ!!」
「……っ」
ニールの剣幕に押され、ソウヤは何度かシズカに目配せしながらも荷物の背後に隠れた。それを察したニールは、改めてシズカと視線を合わせた。
「……さて、説明してくれるよな?」
「……あいつは、あの男は!……兄さんの仇、殺さなければならない……!」
「どんな理由であれ、殺しが正当化される訳無いだろ!第一、君はハンターじゃないか……無辜の民をモンスターの脅威から守るハンターが、その民に手を掛けちゃダメだろう……!」
「あいつは違うっ!あいつは例外だ!自分の胸中にあるストレスを酒にぶつけた結果、無関係の少年たちを五人も巻き込み死なせたクソッタレだ!!あんな奴が、無辜である筈がない……!」
「ちょ、ちょっと待て、彼は亜大陸の人間だろう?シズカは亜大陸人じゃないし、なのにどうやって彼が君のお兄さんを……」
「……あいつは、転生した」
「え?」
そこからは、ニールの理解を超える話の連続だった。
亜大陸の商人ソウヤ・ニシノは転生者で、前世でシズカの兄を含む五人の少年を飲酒運転による事故に巻き込み死亡させ、自身も死んだ男であること。そして、シズカはソウヤに殺された五人の少年の一人、水橋流静の妹である水橋静香であること。ただしシズカは転生ではなく転移という形で、ソウヤの前世の世界から『この世界』に15歳の時にやってきたこと。ハンターとして生きていくうちに『この世界』に順応したものの、心の片隅では復讐を捨てきれなかったこと……。
「そして、私とそいつは出会った……これは、私の復讐を成せる千載一遇のチャンス……例えニールさんでも、その邪魔はさせない……!」
「……だったら、俺が来るまで問答なんてしないで、さっさと殺せばよかっただろ」
「それは……ッ」
ニールの指摘に、シズカは言葉を詰まらせた。それを見て、ニールもすかさず畳み掛ける。
「君が、さっきまで叫び散らすほどに本気で怒り狂っているなら、彼が一人でいる隙を突いてさっさと始末すればよかったんだ。けど、君はそうしなかった。……それは、彼が後悔から改心しているのかを確かめたかったからだ。
彼が後悔から反省して改心し、今を必死に生きようとしているなら……優しいシズカのことだ、きっと責めはしても殺しはしないだろう。逆に開き直って反省の色がなければ、殺しても自分が抱く罪悪感は軽くなるだろうし、少なくとも殺した後に後悔することはない。君はそこまで考えられるくらいには、賢い女の子だ。
だから、今君が怒っている理由は……ソウヤさんが反省し改心して、罪滅ぼしのためにできることをしているのに、それらをあっさりと捨てて君に殺されようと……生きることを諦めようとしていたからだ」
「!!」
ニールの言葉に、荷物の裏に隠れるソウヤも大きく目を見開いた。ニールの言葉はまだまだ続く。
「少なくとも、シズカは罪滅ぼしのために生きようとしている彼を殺すほど、無慈悲な人間じゃないだろう?前世の事を忘れることなく、償うために必死に生きる彼を心のどこかで認めているんじゃないか?
だから、無責任も同然に死にたがった彼が許せなかった。なぜなら、シズカにとって死は
「……あなたに……あなたに何がわかるんですかっ!!」
「わかるよ。少なくとも、シズカが本当に優しい人間だってことくらいは」
「……え……?」
思わず吠えるシズカだが、続くニールの言葉に呆然となる。ニールは穏やかに微笑みながら、ゆっくりとシズカに近づいていく。
「だって、君は傷ついた小型モンスターを見捨てられないくらい……ハンターに向いていないくらい優しいからさ。ケルビを守るためにナルガクルガに立ち向かったり、怪我をしていればジャギィだって助けるくらいだし、依頼主には逐一手紙を出す君だ……そんな君が、本気で人間を殺せるとは思えないんだよ……」
「…………」
「……なぁ、シズカ……もう、いいだろ?」
「……わ、私……は……!」
悲痛に顔を歪めながらも、シズカはナイフを持つ手を離さない。しかしその手は震えており、先程までの憤怒も憎悪も、すっかり霧散しているようだった。
「それでも、私は……私が、やらなきゃ……!だって、兄さん、転生してない……あいつと違って、兄さんは死んだまま……!そんな、そんなの……兄さんが、報われない……!」
「シズカ……」
「なんで……なんでなの……!?どうしてあいつが転生して、兄さんは……!一体兄さんは、何のために死んだのよ……どうして兄さんが殺されなきゃいけないの……!!」
「シズカ」
ニールがそっと優しくシズカを抱きしめると、ようやくシズカはナイフを手放した。そこで様々な感情が限界に達したのか、シズカは涙を流し始めた。
「かえして……かえしてよ……!わたしのにいさん……まだ17歳だったのに……!!」
「ああ」
「うっ……うぅ……!
うあああああああああああっ!!」
ニールにしがみつき、大声で泣き声を上げるシズカを、ニールは黙って抱きしめ続けた。少しでも彼女に痛みが、苦しみが、悲しみが和らぐように。泣いて、泣いて、泣いて、泣き疲れて果てるまで、ニールはシズカを抱きしめ続けた。
――回想終了――
「……てわけで、シズカは精神的に参ってて休んでいるんだ」
「……そんなことが……」
シズカさん……お兄さんを死なせた相手が転生してて、自分の兄は転生していない……そんな理不尽を前にしても、堪えることができたんだ……本当に、凄い人だ。
「姉様の心の傷を癒すのは、アタシの役目なのに……!」
「すまないな、ネネくん。男の性だ、好いた女の前でくらいカッコつけさせてくれ」
「うぐぐ……!」
ネネさんは相変わらず悔しげにニールさんを睨みつけるが……ニールさんはどこか吹っ切れたのか、余裕たっぷりだ。
「それじゃあ、ニールさんが左腕を負傷しているのは、シズカさんの復讐を阻んだからなんですね」
「まぁね。実はそれほど傷は深くなくてね……きっとシズカも、本気で刺すつもりはなかったんじゃないかな」
そう言って、どこか安心したような顔で傷を眺めるニールさん。……本当に、彼は本当にシズカさんのことが好きなんだな……。
「ふむ……シズカ・ミズハシの不在は痛いが、止むを得ん。事は急を要する……特に、ショウにとってはな」
「それほどのことが起こったんですか……アカイさん、一体何が……?」
「あぁ……まったく、本当に質の悪いことだ」
アカイさんが深くため息をついている……一体何があったんだろう……。
「ショウ……実は、滅龍石輸送隊が襲撃を受け壊滅した。下手人は積荷の滅龍石を奪い、逃走した」
「――――」
私は一瞬、言われたことが理解できなかった。輸送隊が?壊滅?滅龍石が?奪われた?
「な、な、どっ……え、どうして……!?」
「目的は不明……しかも、犯人も一切分からないときた。正体がわからない以上、犯人の目的や動機が一切予想つかない」
「誰が……一体、誰がっ!!」
「煌黒龍、アルバトリオン」
私がアカイさんに問い詰めると、意外なところから答えが返ってきた。
「クロノ……?」
「ボレアス種と同じく禁忌のモンスターに名を連ねる古龍種だ。輸送隊を襲ったのは奴だ」
「……なぜ、貴様がそれを知っている?」
アカイさんが険しい表情でクロノを睨む。クロノは……遺憾だと言わんばかりの憮然とした表情を浮かべている。
「俺様が黒龍の禰宜の役割を担っているのは知っているな?当然、黒龍も俺様を介してお前たちを見ているわけだ。己が呪いを掛け、俺様を差し向けてでも殺そうとしたショウの実力……それを見誤っていた。
そのことに焦りを覚えた黒龍に、煌黒龍が接触した。黒龍が事の仔細を煌黒龍に告げた結果……ショウ、奴がお前に興味を持った」
「なぜわざわざ告げたのだ……!煌黒龍の性格を知らぬはずがないだろう!!」
「だな。あいつは大の下克上好きだ。……そして、それを捩じ伏せ叩き潰し、踏み躙ることはもっと大好きだ」
「ハンターでもない人間が禁忌の古龍の心情を動かす……そんなことを奴が知れば、こうなることはわかっていただろうに……!!」
「……黒龍も、焦っていたんだ。状況が見えていなかった。だから失敗した」
「それで済まされる問題か!!」
アカイさんが、クロノの胸ぐらを掴み上げた!対するクロノはされるがままで、一切抵抗しない……!
「貴様が犯した失態だ……貴様が責任を取れ!」
「……言わずもがな……」
「アカイさん、待って!」
私は二人の間に割って入り、アカイさんの手に自身の手を乗せる。それが意味するところ理解できないアカイさんではなく、私の方を見て驚愕に目を見開いた。
「ショウ!なぜ止める!?」
「クロノは黒龍の禰宜……つまり、黒龍の味方なんです!その彼が、危険を冒してまで私達に告げ口をしてくれたんですよ?放っておけば……黙っておけば、私はそのうち勝手に死ぬ……つまり、黒龍にとってこの状況は有利なはずなんです。
なのに、クロノはわざわざ私たちに教えてくれたんです。クロノは黒龍の代弁者……いわば、名代!その彼が教えてくれたということは、今回の輸送隊襲撃は黒龍としても不本意なものなんじゃないんですか!?」
そう、私が違和感を覚えたのはそこだった。さっき言ったとおり、どこの誰かも知らない輩によって滅龍石が奪われたことで、私の生存率は著しく下がってしまった。ミラボレアスにとって断然有利……むしろラッキーなこの状況を利用しないはずがない。
なのに、ミラボレアスはクロノを通して今回の事件の黒幕……煌黒龍アルバトリオンの話をしてくれた。……ひょっとしたら、クロノに変化が表れたように、クロノを介してミラボレアスにも変化が表れたんじゃないかな……?
「……!ばかな、黒龍が……?ショウの死を誰よりも望んでいるはずの、奴が……?」
「アカイさんも気づいているでしょう?クロノは変わりました……少なくとも、以前の彼ではありません。きっと彼を通して、ミラボレアスにも変化があったんじゃないでしょうか。
きっと、ミラボレアスはこう考えています。……"直接息の根を止めてやる"と」
「ショウ……」
「私は彼を……クロノを信じます!」
「ショウ、お前……」
言い切った私を前にアカイさんは逡巡するように目を閉じると……クロノを掴んでいた手を離した。
「……わか、った。では、クロノを信じるといった君を信じよう。……クロノ、犯人がアルバトリオンということは、行き先は……」
「当然、『神域』だ。奴はあそこで、ショウを待っている」
「私を……?」
「言っただろ、アルバトリオンがショウに興味を持った、って。奴はお前を挑発するために、お前が必要としている滅龍石を盗んだんだ。……お前が、確実に神域に来るように仕向けるために」
「本当か……?だとしたら、すごく厄介だな……」
ニールさんが、何か考え込んでいる……ひょっとしたら。
「ニールさんは、アルバトリオンとの交戦経験が?」
「あぁ、ある。ミラボレアスの前にな……あいつは、強かった。それだけは言える」
「ニールさんが言うほどですか……」
戦ったことのあるニールさんが、冷や汗を浮かべながらそう言った。……それほどの、敵なのか……アルバトリオン……。
「……とりあえず、ショウが行かないで済むならそれに越したことはない。ギルドに打診して、ハンターを派遣してもらえ」
「……そうだな、そちらは私がやっておこう」
「ま、待ってくれ!アルバトリオン討伐なら、俺が……」
「君は名目上、歌姫の護衛のためにここにいる。名目から外れた行動をするにしても、許可取りは必要だろう?」
「うぐっ……こ、こんな時まで正論で返さなくてもいいじゃないか……!」
「君のような類の人間は、感情を優先するあまり道理を蹴飛ばしかねないのでね。誰かが制する必要があるだろう?」
「グウの音も出ません……」
あぁ……ニールさん、あっさりと言いくるめられて……シズカさんだったら、アカイさんに言われるよりも先に許可取りに行くんだろうな。
「……とにかく、今日のところは出発できない。神域の場所なら、俺様やアカイが知っている。……焦るなよ、ショウ。俺様……いや、黒龍の呪いは、負の感情によって増幅される」
「負の感情?」
「あぁ……それも、不安・悲哀・恐怖といったマイナスに働く感情だ。逆に憤怒・憎悪といった、状況によってはプラスに働く負の感情に関しては無反応だ。……まぁ、とりあえず前向きにポジティブに、ってことだ。気持ちで負けるなよ」
「……まさかクロノに励まされるなんて」
「おいっ、ちょっと失礼すぎやしないか!?」
いや、だって、日頃の行いを考えればむしろ残当では……。
この話し合いは、今日のところは解散として終わった。……でも、私にはまだ、やるべきことがある。
「おい、行くのか?」
「クロノ……うん、まあね」
「そうか……まぁ、どんな結果であれ、俺様はお前を後押しするぜ」
「ありがとう……お母さんのこととか、いろいろ」
「ハッ!そういうことは、全部終えてからにするんだな」
「うん……行ってきます」
「きぃつけろよぉ」
私はしっかりとした足取りで外へ出る。向かう場所は、決まっている。
さあ……ケジメをつける時だ。
「……あいつ、大丈夫かね?うーん……おっ!おーい、テル」
「うぇ!?えっと、クロノ……?おれに何か用か……?」
「おぅ、実は……」
明るい月夜、今宵は満月、時間は……零時を過ぎている。……私は、あの人と一緒に夜道を歩く。私から誘ったのもあるんだけど……ホイホイ付いてくるこの人もどうかと思う。
「いやー、嬉しいねー!まさかショウちゃんの方から誘ってくれるなんて!」
「いえ……私も一度、あなたとお話したかったんですよ……ユージさん」
モンスターライダー、ユージ。この人を見た時から感じていたあの感情は、間違いなんかじゃなかった。クロノからすべてを聞いた今、そのことをはっきりと実感できる。
「それにしても……みんな寝静まったタイミングで呼び出しなんて……これ、期待しちゃってもいいのかな?」
「期待……ですか?」
「とぼけちゃって」
ユージさんが私の肩を抱いて自身の方へと寄せてきた。身の毛がよだつ。
「深夜に男女が二人きり……もうこれ、狙ってるとしか思えないんだよね」
「それって経験則ですか?」
「あっはは、そう思う?」
「だってユージさん、手馴れてるから……」
笑え、笑え、笑え。しっかり働け表情筋。まだだ、まだその時じゃない。
「ははっ、まぁ向こうの大陸じゃあ俺、結構モテ男だったしね?」
「自分で言っちゃうんですか?」
「それだけ女の子に優しいって自負があるってわけよ」
「……ふふっ、面白いですね」
ホントウに。オモシロイことをほざく。
「ショウちゃん……これも経験さ。人生、様々なことを経験して人間は大きくなるのさ。俺の女の子の扱いの上手さだって、方向性を変えれば人間関係の円滑な構築に役立ったりするし、無駄じゃないのさ」
「へぇ……いいこと言いますね……」
「あっ、褒めてくれた?やっりー」
…………。
「じゃあ、せっかくだし……大人の階段とか、登っちゃおっか」
「え……?」
気づけば私のすぐ隣には岩壁があった。気づかないうちに誘導されていたらしい……なるほど、こういった手を使うのか。
この男は、こんなやり方で……。
「階段って……」
「まぁ?男と女が夜中にヤることなんて、一つしかないじゃん?」
ユージさんの手が、私の体に伸びてくる。……あぁ、そうか。そうやって……。
「そうやって、お母さんのこともめちゃくちゃにしたんですね」
「……へ?」
「たしかに母は愚かだったかもしれません、間抜けだったかもしれません。……けど、傷つき疲弊し苦しんでいた母に付け入るお前なんかに、母を嗤う資格はない」
「……えーっと、ショウちゃん?一体何を言って……」
「イナヅマ・ミツリ、知ってるでしょ?」
「!?!?!?!?」
ユージさん……ユージが物凄い勢いで後ずさりした。その顔には驚愕と恐怖が浮かんでいる。
「な、なんで知って――」
「私の母は……お前を巻き込んで死んだあと、転生した。転生した先で素敵な出会いに恵まれて、たくさんの人に恵まれて……そして、私が生まれた」
「なっ!?ま、まさか……!!」
「私の名は、ショウ!母の名はヒカリ!そして……母の前世は、イナヅマ・ミツリ!」
「嘘だろ……!?」
言った。言ってやった。奴はもう、驚きすぎて脳の処理が追いついていないのか硬直している。
「ユージ……オグラ・ユージ。こっちではユージ・オグラって発音するんでしたっけ?……よくも母を騙して辱めた挙句、脅して縛り付けて二年もの間傷つけてくれたな。
母は……お母さんは、今も前世の記憶に苦しんでいる……!お父さんや見知った人じゃないと、男性相手だと無条件で震えが止まらなくなって発作が起きているんだ!そのせいで挑戦者とまともにバトルできず、チャンピオンだって辞退したんだ!
私は知らなかった……お母さんがずっと苦しみ、傷ついていたことを!今……やっと、お母さんの無念を晴らすことができる。それだけじゃない……お母さんに近づくために利用された、従兄弟のコウキさんの無念も!!」
クロノから聞かされた『大事な話』……それはお母さんの前世についてだった。
前世で医者だったお母さんは、大好きだった従兄弟のコウキさんを事故で亡くしたことが原因で、心に深い傷を負っていた。そんなお母さんに近づいてきたのが、オグラ・ユージ……そう、目の前の男だ。
この男は従兄弟のコウキさんを亡くして傷ついていたお母さんに付け入って、お母さんを辱めて二年間も苦しめ続けてきた!その話を聞いた時から、私はユージに対して初対面にも関わらず憎しみにも似た感情を抱いた理由が、ようやく理解できた。
私の中に流れる、お母さんの血……お母さんの遺伝子が、無意識に目の前の男を拒絶していたんだ。前世で己を苦しめた男……その存在を察知していた。だから、私は彼に原因不明の嫌悪感を抱いていたんだ!
……それに、前世で死んだお母さんが今世で大好きな家族と同じ名前の人と結ばれたことは、きっと運命を超えた因果のようなものだと思う。だから、私が目の前の彼に、母や従叔父に変わって仇討ちをするのも、奴の因果応報なのだ!
「く、くそっ……ふざけんな!大体、そんなのどこに証拠があるんだよ!!」
「ソウヤさんに全部話してるんでしょ?あの人が同じ転生者だからって、べらべら喋りすぎ。今世で罪に問われないからって、前世のこと全部話しちゃうなんて馬鹿なんじゃない?」
「はぁっ!?あ、あのオッサン……!!」
そう、私はクロノの助言を得て、ソウヤ・ニシノさんにも話を伺っていた。私が、ソウヤさんが前世で殺してしまった少年の従姉の転生体の娘と知って、彼はひどく胸を痛めていた。
因果とは、どこで結ばれるかはわからない……ソウヤさんの言葉だ。そして、私はソウヤさんからオグラ・ユージの話を全て聞いた。
どうやら母とオグラ・ユージはソウヤさんや少年たちよりも遅くに死んだらしく、ソウヤさんの名前を聞いて交通事故の加害者であることに気づいたらしい。そのことをネチネチと突っつかれながら、ユージはまるで武勇伝のように己の過去を語ったらしい。
……本当に憎たらしいったらない……!!
「お前は……お前だけは絶対に許せない……!!」
「ハッ!だったらなんだってんだ!前世は前世、今世は今世だろうが!いつまでも終わったことを引きずりやがって……」
「終わったこと……?終わっていない……いや、始まってすらいない!!勝手に終わらせるな!!お前を一発殴らなきゃ、お母さんは前に進めない!!私がお母さんに代わって……あんたをぶん殴る!!」
「うるせぇうるせぇうるせぇええ!!来いっ、モノブロス!!」
「ギシャアアアアアアァンッ!!」
ユージの呼びかけに応じて、地面からモノブロスが姿を現した。私は迷うことなくボールを手に取ると、ポケモンを繰り出した。
「ダイケンキ……!!」
「…………」
ダイケンキは……わかりにくいだろうけど、全身からあらん限りの怒りと敵意を滲み出している。私の感情が、ダイレクトに伝わっているのかもしれない。
「は、ははははは!!そんなちいせぇポケモンで、モンハンのモンスターを倒せるわけねぇだろうが!!」
「倒す……絶対に!!」
「ジンオウガもリオレウスもいねぇメスガキに負ける俺じゃねえよ!わざわざ俺が戦うまでもねぇ……モノブロスだけでしばいてやる!!」
「叩き斬れ、ダイケンキ!!」
【The Deathmatch】~Friday Night Funkin' DEATHMATCH~
【Burning In Hell】~Friday Night Funkin' IndieCross~
【No More Deals】~Undertale AU No More Deals~
「やれ、モノブロス!ホーンスピアーだ!」
「ブロォォス!」
「シェルブレード!!」
「ルシャ!!」
モノブロスは角を振り回してダイケンキに攻撃を仕掛けてきた。しかし、ダイケンキは冷静に攻撃を見極めるとシェルブレードで角攻撃をいなしている!
「オトモンは普通のモンスターに比べると小さい……だが、小さいからって舐めるなよ」
「モンスターを舐めたりはしない。ライダーは知れてるだろうけど」
「テメェ……ポケモンしばいたら、徹底的にブチ犯してやる……!!」
「その前に私のダイケンキの太刀が、お前を叩っ斬る……!」
「黙れ!グラウンドダイブ!!」
「ブロス!」
モノブロスは物凄い速さで地面を掘り進めると、あっという間に地面の中に姿を隠してしまった。
「どうだ、俺のモノブロスの速さ!とことんまで磨き上げたスピードだ、追いつけるわけがねぇ!」
「……ダイケンキ、見極めて」
「ルシ」
ダイケンキは静かに目を閉じ、精神を集中させる。そのまま数十秒が経過する……。
「……ヘル・トゥ・ヘル!」
「回避!」
「モノォス!!」
「……!」
足元の地面から勢いよく飛び出したモノブロス……だが、ダイケンキは攻撃を察知して素早く身を翻した!
「なっ、躱した!?……えぇい、続けてヘル・トゥ・ヘル!!」
「連続で回避!」
モノブロスが何度も何度も地面から強襲を仕掛けてくるが……動きが単調だからか、尽くダイケンキに避けられている。……やっぱりだ。
「なぜだぁ!?なぜ躱し続けられる!モンスターよりも弱いポケモンのくせに!!」
「敢えてこういう言い方をしよう。……私が強いんじゃない、お前が弱いんだ!!」
「なんだと……!?」
「ポケモンとトレーナーが共に切磋琢磨し成長するのと同じ……ライダーとオトモンも、共に成長していくんだ!つまり……ロクデナシなライダーであるお前のオトモンが、強くなれる道理はない!!」
「偉そうに……ポケモントレーナーのくせに!!ホーン・フロム・ヘル!」
「ひけん・ちえなみ!!」
「ブロオォス!!」
「……!!」
地面から飛び出しつつ、その勢いを利用して角を振り回すモノブロス……対するダイケンキは攻撃をしっかりと見極め、モノブロスをの一撃を回避して逆に攻撃を加えた!
「モノォ!?」
「おいっ、モノブロス!何やってんだ!しっかりしやがれ!!」
「哀れね……モノブロスが可哀想よ。彼はあなたの指示に従って戦っている……つまり、彼が傷ついているのは、あなたの判断ミスが原因よ」
「テメェ……」
「ポケモンを!小さい生き物だからって馬鹿にしないで!!」
なんならコイツにあのメタボレアスを見せてやろうか。……あ、メタボレアスっていうのは「メタモンが変身したミラボレアス」ということで、フラウさんが名付けた名前だ。
……私は誰に説明しているんだろう?
「ちぃっ……それなら、パワーチャージ!」
「グルル……」
モノブロスが、なにか構えている……ソーラービームのような、チャージ系の技か?
「よし……ブレイクホーンだ!!」
「ブロオォッス!!」
「……!シェルブレード!!」
モノブロスが、先程よりも力を増した勢いで角を突き出してきた!ダイケンキもシェルブレードで対抗するが、押し返されてしまった……!
「……ッ」
「ダイケンキ!大丈夫?」
「ルシ」
「よし」
「ちっ、耐えられたか……」
そう言いつつ、ユージが懐から袋を取り出した……あれは!
「まさか、回復するつもり!?手は出さないと言ったはず!!」
「あー、言ったな!それじゃあ、前言撤回!これでいいだろ!!」
「ふざけ――」
ふざけるな!そう言おうとした、その時だった!
「うわっ!?」
「え?」
突然、死角から何かが飛んでくると、ユージが手に持っていた袋……生命の粉塵を貫き手放させた!
「あー!?生命の粉塵が!!だ、誰だ!!」
「おれだ!!」
え……そ、その声は……!!
「テル、先輩……!?」
「あぁ!おれが来たぞ、ショウ!!」
テル先輩……それに、隣にいるのはジュナイパー……あれ?
「ジュナイ……パー……?」
「ん……?どうした、ショウ?」
「いえ、あの……」
なんだか……ジュナイパーの姿、変わってない?
編み笠状のフードや外套の赤色はそのままだが……翼が一回り大きくなっている。それだけでなく、左目にはまるでスコープのような形状の飾りが付いている。いや、よく見たら外套も背中の方が大きく長くなっている。爪も先端が赤い色に変化しているし……なんだこれ?
「あぁ、ジュナイパーが気になるか?」
「ジュパ」
「えっと、はい」
「……とりあえず、その話は後だ。今は……」
そう言いつつ、テル先輩もユージを睨みつけた。
「お前のケジメを、ちゃんとつけないとな」
「……はいっ!!」
新たな変化を得たジュナイパー……気になるけど、今はやつが先だ!
「ふ、ふざけんなっ!こうなったら……モノブロス、絆技、行くぞ!!」
「ブロオオォス!!」
モノブロスにユージが乗り込み、左手につけている石が光り始めた。……あれが、絆石。ライダーとモンスターの絆の証……トレーナーとポケモンにとっての、キーストーンとメガストーンと同じか。
たしか、絆技はライダーとモンスターが人竜一体となることで繰り出せる大技のはず……それなら!!
「ダイケンキ!」
「ジュナイパー!」
「「奥義装填!!」」
「ルシャ!」
「ジュパ!」
……!ジュナイパーの奥義!?……ということは、このジュナイパー……まさか、【極み個体】!?
ダイケンキが第三の刀を抜く一方、ジュナイパーは自身の矢羽を大量にばら撒き、さらにそれを収束し始めた。やがて矢羽が巨大な弓を形成した。また、それとは別に矢羽が集まり巨大な矢羽を形成していた。ジュナイパーは両方を手に持つと高く飛び上がり、足で弓を抑え両手で矢と弦を支えている!
「くたばれ雑魚どもがっ!デモリションスパート!!」
「
「
「ルッシャアアアッ!!」
「ジュナッパアアッ!!」
ダイケンキの水の巨剣と、ジュナイパーの深緑の巨大矢が、怒涛の勢いで迫り来るモノブロスとぶつかりあい……激しく大爆発を起こした!!
辺り一帯が煙に包まれ、徐々に晴れてくる……。
「うっ……うぅ……クソッタレ……!」
ユージはフラフラと立ち上がった。……だが、モノブロスは完全に目を回して倒れている。……終わりだ。
「クソがっ!なんでだ!モンスターの方が、ポケモンよりもずっと強いはずだろうが!?なんで……」
「知識だけで、なんの経験もないあなたにはわからない」
「なにがっ……!?」
「確かにモンスターは強い……私が知る限り、ポケモンよりもずっと。……でも、少なくとも私は、あなたよりも上手にモンスターを戦わせられる人たちを知っている。その人たちと比べたら、あなたとなんて雲泥の差よ!」
「クソがっ……!!」
さて……お母さん、コウキさん、しっかり見ててね……!
「……私、前々から思ってたの」
ボールを投げつつ歩み寄る。
「モンスターの素材で作られた防具……どれくらい頑丈なのかなって」
「ウキャ」
「え、ゴウカザル……なんで……」
「だから……その頑丈さを参考程度に思いっきり試してみたいって思ってたの」
「あ、ちょ、おま、まっ……!」
一歩ずつ後退するユージ……だが、決して、逃がしはしない……!
「このケジメは――」
「ちょ!?」
「拳一発では済まない!!」
「た、助けて!許して!!」
「"助けは来ない!誰も許さない!"お前が!!お母さんに言った言葉だ!!」
「ああああぁぁ……!?」
ユージの表情が、完全に絶望に染まった……これからだ、これから始まるんだ!!
「ゴウカザル!!」
「ウッキャア!!」
「喰らえ!お母さんへの愛と!お前への怒りと!すべての因果への悲しみのぉ!」
「インファイトだぁッ!!」
「ウゥキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャアァッ!!」
ゴウカザルの拳の猛ラッシュが、ユージの全身に余すことなく叩き込まれる!!
「ウオォ!ゴウカアアアァァッ!!」
締めの拳は、顔面にクリーンヒット!!
「ぶげらぁ!?」
派手に吹っ飛んだユージは岩壁にめり込み、その衝撃なのかゴウカザルのパワーなのか、防具は木っ端微塵に吹き飛んだ。
「……ケジメ、つけさせてもらったわ」
「ウキャ」
「ルシ」
ゴウカザルはまだ殴り足りないとばかりに拳を打ち鳴らし、ダイケンキもアシガタナ同士を擦りあげて今にも斬りかかろうとしている。私はあえて二体を制し、ボールに戻した。
「……良かったのか、ショウ?」
「なにがです?」
「いや……正直、あんな奴を生かしておくのもどうかと……」
テル先輩はそう言うが……私には、ひとつの懸念があった。だから、ゴウカザルに指示をして敢えて最後の一発以外は全て防具が纏われている部分を意図的に狙わせた。その理由は……。
「下手に殺して、また転生されたら困りますから。来世の人たちに迷惑がかかります。それに……簡単には死なせない。死は楽になる方法で、逃げの手段ですから」
「……なるほど、ね」
先輩も納得した様子で、ポーチから縄を取り出すとユージを拘束し始めた……って、準備良すぎじゃありません!?
「というか、そもそも先輩はどうしてここに……」
「クロノに言われたんだ。……"ショウがケジメを付けに行くから、見届けてやってくれ"って。……まぁ、結局見ているだけってわけにはいかなくて、思わず手を出しちゃったけど」
「先輩……」
ユージを拘束し終えて立ち上がった先輩に、私は思わず抱きついた。先輩は一瞬、体が固まったようだが、すぐに平常心を取り戻していた。
「ありがとうございます、先輩……」
「……次は、アルバトリオンだ。……絶対に勝とうな、ショウ」
「……はい!!」
シンオウ地方のお母さん……そして、天国のコウキさん、見ていますか?私、しっかりケジメをつけてやりました。だから……安心して、私の帰りを待っていてくださいね。
先輩の温もりを感じながら、私は心の中でそうつぶやいた。きっと、お母さんやコウキさんに届いていると信じて……
――ショウ 余命7日
――一方、近くの岩場の影にて
「クウゥン……(やっべ、ずっとスタンバってたのにゴウカザルのオラオラに見蕩れててすっかり出遅れた……)」
影でこっそり様子を見ていた雷狼竜が、密かに肩を落としていた。