ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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以前、感想にてクロノの成長のきっかけの話が見たい、的な内容があったのを思い出し、本編と並行して書いてたら……なぜかこっちが先に完成していた。
何を言ってるのかわからねぇと思うが、自分にはよくわかった。

要は書いてて楽しかった、ってことなんだよなぁ!




幕間:その強さは何が為に

カロス地方。五芒星のような形をした土地が特徴で、地方の中央部には最大都市のミアレシティが位置する地方。直近でカロスリーグ・ミアレ大会やカロスチャンピオン・カルネも出場したポケモンワールドチャンピオンシップスなど、様々な大会が開かれており、その熱意は今なお、余韻となってカロストレーナーへの強い刺激となっている。自然豊か、人々の暮らし、それらは決して他の地方に劣ることはない。

特にメガシンカ発祥の地として広く知られるカロス地方……だが、今。そのカロス地方は、各地で阿鼻叫喚の様相を呈していた。

 

 

――紫紺の瘴気を纏うメガシンカ使い――

 

 

昨今、カロス地方を騒がせているお尋ね者も同然のトレーナーの存在が原因だ。そのトレーナーは、メガシンカ使いのトレーナーを探し出しては有無を言わさずバトルを仕掛け、問答無用のまま一方的に蹂躙していくという非常に危険な思想を持ったトレーナーだ。

特にそのトレーナーが使うポケモンたちもまた、まるで狂気に駆られたような禍々しい姿をしており、それらと戦ったトレーナー達は皆、口を揃えて「明らかに正気ではなかった」と語っている。

目的も動機も一切語ることなく、ただ一方的にバトルを仕掛けて蹂躙しては去っていく。特に周囲を顧みない荒々しいバトルスタイルは、美しいカロス地方の自然をいたずらに傷つけていた。事態を重く見たカロスポケモンリーグは、件のトレーナーに注意喚起をすべく四天王のガンピとドラセナを派遣した。……しかし、返って来たのはガンピとドラセナの敗北と、件のトレーナーによる複数体同時メガシンカという悪夢のような報告だった。

さらにトレーナーはパキラ、ズミ両名に対しても襲撃紛いのバトルを仕掛けこれを圧勝した。この時、四天王パキラから「トレーナーはキーストーン及びメガストーンを用いていなかった」という報告まで上がった。

これまで、カロス地方に点在するメガシンカ使いは大半が襲撃を受けていた。そんな中、襲撃を受けていないトレーナーはごく僅かのみ。

 

カロスリーグ・ミアレ大会ベスト4、ショータ

カロスリーグ・ミアレ大会優勝者、アラン

カロスリーグポケモンチャンピオン、カルネ

 

しかし、残された彼らにもまた、狂竜の爪牙が突き立てられようとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【GAIA×CHAOS×ABYSS】~機動戦士ガンダムseed destiny~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カロス地方、某所。陽気な暖かさに包まれる日中……木々をなぎ倒すように次々と爆発が起きていた。そこでは、ポケモンバトルが行われていたのだ。

 

「カイィッ……!」

 

「ジュカイン!大丈夫ですか!?」

 

「ジュカイィ!」

 

「ホッ……」

 

木々を掻き分け飛び出したのは、一人のトレーナーと一匹のポケモン。カロスリーグ・ミアレ大会ベスト4の成績を持つ少年、ショータと相棒であるジュカインだ。しかし、トレーナーとポケモン、双方揃って肩で息をしており、満身創痍であることが見て取れる。

 

「なんだぁ?リーグじゃああれだけ派手なバトルしていたくせに、今回は随分と控えめじゃあないか、えぇ?」

 

後から森の中から姿を現したのは、黒衣を纏う少年とポケモンだ。少年の名はクロノ。黒龍ミラボレアスが仮初の姿として得た人間の姿である。そして、彼が連れているポケモンもまたジュカインだ。だが、クロノのジュカインは明らかに普通ではなかった。

全身から紫の瘴気を立ち上らせており、目は赤く血走り光すら放っている。吐息にすら瘴気が溢れているほどで、どう見ても普通の状態ではなかった。

狂竜化。とあるモンスターを病源とする状態変化で、感染した生物は例外なくおぞましい姿へと変貌する。クロノのジュカインの姿はその狂竜化をさらに超えた『極限状態』と呼ばれる姿で、その強さは狂竜化の比ではない。

 

「……っ!やはりそのジュカインは普通じゃない……一体何をしたんですか!!」

 

「なんでテメェなんかにこっちの身の上語って聞かせなきゃなんねえのよ?テメェ、腐ってもトレーナーだろうが。トレーナーなら黙ってポケモン出して戦わせろや、トレーナーズスクールにはちゃんと通ってたのか?教えはどうなってんだ教えは!」

 

ショータの質問等無視して、クロノは一方的に言いたいことだけを言い放った。まともに答えが返ってこないことに、ショータは歯噛みする。

 

「……答える気はないんですね?」

 

「言葉なんぞ重ねるだけ無駄ぞ。偉い人はこう言った、"拳で語り合おう"とな。剣士同士が剣を交えて、格闘家同士が拳を交えてお互いを理解し合うように、トレーナーならポケモンを交えて理解し合おうや。……ま、テメェに理解出来るだけの頭があるならな!」

 

「くっ……!」

 

頭を指さし挑発するクロノには、悪びれるといった様子は一切ない。まして、「理解し合おう」などと言いながら、その言動からは理解し合う気など毛頭ないことがショータには分かってしまった。

ならば、トレーナーである己がやるべきことはひとつのみ。

 

「……それなら、このバトルで僕が勝ったら、これ以上の蛮行はやめていただきます!」

 

「言うねぇ!そうでなくっちゃあ面白くない!」

 

クロノは歯を見せつけ獰猛な笑みを浮かべた。まるで獲物を噛み砕かんと、今か今かと待ち構えている狂犬の如くだ。

 

「ジュカイン!行きますよ……僕たちの全てを!!」

 

「カィン!!」

 

「メガシンカッ!!」

 

「ジュカイイイイィンッ!!」

 

ここでショータは迷うことなくメガシンカを選んだ。目の前の、狂竜ジュカインを倒すには、メガシンカするしかないと判断したのだろう。メガシンカを経てメガジュカインとなったショータのジュカイン……しかし、クロノはその笑みをますます深めるばかりだった。

 

「ハッハハハハッ!いいぞ、全てだ!お前の全てを出し切れ!こっちはテメェから絞れるもの全部絞り出してやる!……だから、全力で抗ってその果てに倒れるがいい」

 

「っ!ジュカイン、リーフブレード!!」

 

「ジュカイ!!」

 

「こっちもリーフブレードだ」

 

「GAAAAAA!!」

 

メガジュカインと狂竜ジュカインが激しくぶつかり合う。その実力差は完全に互角であり、両者一歩も退かない一進一退の攻防と相成った。

 

「(こっちはメガシンカもしているのに……!むしろこれで互角だなんて……!!)」

 

「なにをそんなに驚くことがある?メガシンカの有無が勝利の絶対条件でもなかろうに、笑わせる。地力がちげぇんだよ、こっちとそっちではな」

 

「なに……!」

 

「今までしばいてきた連中、四天王以外は歯ごたえがなかった。こっちがメガシンカするまでもなく、どいつもこいつも簡単にくたばっていきやがった……はーつっかえ。おい、小僧。テメェは少しは保ってくれよな?」

 

目の前のバトルすら退屈だと言わんばかりに、ジュカインたちを無視してショータに目を向けるクロノ。その目はまるで蛇……否、龍に睨まれたように思えて、ショータは思わず息を飲んだ。

 

「……!ジュカイン、ハードプラント!!」

 

「ジュカアアアイッ!!」

 

身の内から湧き出る恐怖を誤魔化すように、ショータはメガジュカインに指示を出す。メガジュカインは即座に距離をとりハードプラントを繰り出すと、その全てを狂竜ジュカインに差し向けた。

 

「斬れ」

 

「GUOOOOO!!」

 

一言。たった一言の命令だが、狂竜ジュカインは果たして唯々諾々と従った。迫る大量の樹木を、片っ端から斬り捨て始めたのだ。どれだけ攻撃を仕掛けようと、疲れ知らずとばかりに暴れまわる狂竜ジュカイン……次第にメガジュカインのパワーの消耗具合が、狂竜ジュカインのスタミナを上回り始めた。

 

「……ッ」

 

「ハッ!隙を晒したな!!」

 

「GUOOOOAAAA!!」

 

メガジュカインが僅かに呼吸を挟んだ、その一瞬。それすら逃さずクロノが指示を出せば、狂竜ジュカインはハードプラントをあっという間に突破しメガジュカインにリーフブレードを叩きつけていた。

 

「なっ!?ジュカイン!!」

 

「ジュッ……!」

 

メガジュカインにまとわりつく瘴気に、ショータは緊張と焦りが止まらない。謎の瘴気については、一度まとわりつかれるとボールに戻すまで回復できず、攻撃以外の技を選ぶとより症状が悪化する、位にしか聞いたことがない。何分、使い手であるクロノが何も説明しないのでわからないことのほうが多いのだ。

 

「ふんっ……そろそろ終いにでもするか」

 

「……!ジュカイン、リーフストームッ!!」

 

「グオオオォッ!カイイィンッ!!」

 

メガシンカしたメガジュカインによるリーフストームは、再生する尻尾の先端をミサイルのように発射して放たれる。螺旋回転しながら迫る尻尾を前に、クロノは退屈気にため息をついた。

 

「邪魔」

 

「AAAAAAAAッ!!」

 

鬱陶しそうな呟きとともに、狂竜ジュカインが放ったリーフブレードがリーフストームを両断した。真っ二つになった尻尾はそのままクロノも通り過ぎて、後方で爆発した。

 

「なっ――」

 

「くだらん、バカみてぇにブッパするだけか?そういうの、なんて言うか知ってるか?"馬鹿の一つ覚え"って言うんだよ」

 

呆れたとばかりに首を振るクロノ……その直後、祈るように両手を組んだ。

 

「メガシンカだけに教えてやるよ……進化の現実ってやつを」

 

「……!まさか!?」

 

「メガシンカ!!」

 

「GUOOOAAAAAAAッ!!」

 

クロノの心臓部から伸びた光は、狂竜ジュカインの心臓部と結びつく。その後、光に包まれたジュカインはメガシンカし、狂竜メガジュカインとなった。

 

「そんなっ!キーストーンもメガストーンもないのに、どうやって!?」

 

「お前にはできない、俺様にはできる……you see?」

 

クロノはやはり、一切説明するつもりはないようだ。むしろショータの困惑と混乱を見て、愉悦に満ちた笑みを見せていた。

 

「俺様が本当のリーフストームの使い方……教えてやるよ。やれ、ジュカイン」

 

「GAGAGAGAGAAAAAA!!」

 

「くっ……ハードプラント!」

 

「ジュカアアァインッ!!」

 

狂竜メガジュカインは奇声じみた咆哮を上げると、一気に突撃した。メガジュカインも、近づけまいとハードプラントを繰り出す。樹木の群れを突き進む狂竜メガジュカインだが、やがて勢いを失っていき、最終的には捕まって地面に思い切り叩きつけられた。

 

「よしっ!!」

 

「(バーカ)」

 

直撃を確信するショータに対し、クロノは内心で舌を出す。ハードプラントが解除されると……そこにいるはずの狂竜メガジュカインはどこにもいなかった。

 

「えっ!?どこに――」

 

「もらったぁ!!」

 

「AAAAAAAAッ!!」

 

クロノが叫ぶと同時に、狂竜メガジュカインが姿を現した……地面の中から。メガジュカインの真下から現れた狂竜メガジュカインは、メガジュカインの首を掴むと飛び出した勢いのまま宙へ躍り出た。

 

「まさか……!」

 

「あなをほるって技、便利だよなぁ!!ジュカイン、叩きつけろ!!」

 

「GUOOOOOッ!!」

 

「ガァッ!!」

 

「ジュカインッ!!」

 

狂竜メガジュカインは、メガジュカインを地面に投げつけ叩きつけるとそのまま落下、着地時に後足でメガジュカインの首を押さえつけた。

 

「ガッ、グッ……」

 

「ジュ、ジュカイン……!」

 

「ほぉら、これで逃げられない……ジュカイン、息の根止めてやれ。リーフストーム」

 

狂竜メガジュカインは尻尾を持ち上げるとリーフストームを発動し、その先端をメガジュカインに向けた。

 

「に、逃げてくださいジュカイン!」

 

「逃げられるわけねーだろーが、バーカッ!!惨めたらしくおっちんじまえ!!」

 

リーフストームが臨界に達し、今まさに発射寸前となった……その時だった。

 

「リザードン、フレアドライブ!!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

「GYAッ!?」

 

突然、横合いから攻撃を受けた狂竜メガジュカインが吹っ飛んだ。だが、血走った目で下手人を見つけると、強引に体勢を変えつつリーフストームを放った。

 

「かえんほうしゃ!!」

 

「グオオオアッ!」

 

下手人のリザードンはかえんほうしゃを放ち、リーフストームを撃ち落とした。その後、狂竜メガジュカインは着地を決めて態勢を整えると、クロノの下まで戻っていった。

 

「wellwellwell(おやおやおや)?無粋な横槍だなぁ、もう少しで決着ってところだったのによ。ポケモンバトルに水を差してはいけないって、ご両親から教わらなかったのか?」

 

「これが普通のバトルなら、な」

 

「グオン」

 

「ア、アランさん……」

 

横槍を入れたのは、カロスリーグ・ミアレ大会優勝者にしてポケモンワールドチャンピオンシップスにおいてマスターズエイトの一人として決勝トーナメントにコマを進めた青年、アランであった。

アランとその相棒であるリザードンはカロスリーグ・ミアレ大会で優勝経験もあり、さらに同大会にてポケモンワールドチャンピオンシップスの新チャンピオンに対し、当時は決勝戦で優勝を競い合い白星を挙げたという実績を持っている。

ポケモンワールドチャンピオンシップス終了後はカロスに帰省し、リザードンとともに己を磨き続ける旅を続けていた。だが、今回の騒動を受けて事件の元凶であるクロノを探し続けていたのだ。

 

「アラン~?アラン、アラン……あー、それじゃあお前か。ミアレ大会の優勝者にして、マスターズエイトの三番目に弱い奴。ドラゴン擬きの使い手だっけか」

 

「随分と棘のある言い方をする……人を煽らないと落ち着かないのか?」

 

「なんだよ、事実じゃねぇか。お前はマスターズエイトの中じゃ下から数えたほうが早いし、リザードンなんて見た目は竜のなんちゃってドラゴンだろ。蜥蜴に翼が生えた程度で偉そうに」

 

「グルルルルッ!!」

 

「落ち着け、リザードン」

 

クロノの心ない言葉の暴力にアランは動じていないが、相棒のリザードンはそうでもないようだ。口元に火炎を滾らせ、ともすれば勢いでクロノを攻撃しかねないほどだ。

 

「俺様も見てたぜ~、ポケモンワールドチャンピオンシップス。大したジャイアントキリングだったぜ、あの……サ、サ……まぁいいや。

わざわざ横槍を入れるなんて真似をしてくれたんだ、今度はテメェが相手か?あぁ、さっきの小僧もポケモンを回復して参戦してくれても構わねぇぜ?テメェら如きの一人二人も、千人も二千人も大差ないから」

 

「……ジュカイン、大丈夫ですか?」

 

「ジュァ」

 

「どうする、ショータ」

 

「……!もちろん、参戦します。これ以上、彼の行いをのさばらせるわけには行きません!」

 

「……あぁ、わかった。二人がかりで行くぞ!」

 

「はいっ!」

 

アランとショータ。ともに同じ人物をライバルに持つ者同士による、共同戦線がここに誕生した。

 

「クッハッハッハッハッ!あぁ、そうだ。それでいい。もがいてあがいて努力して、何も為せぬまま終わっていけ。……では、俺も対等になるようにポケモンを増やすとするか……リザードン!」

 

「…………」

 

クロノが追加で繰り出したポケモンはリザードン。……しかし、このリザードンもまた紫紺の瘴気に覆われており、狂気に満ちていた。

 

「ミラーマッチ、ってやつだな。はたしてキサマらの実力で、この俺様のポケモンを何匹減らせるかな?」

 

「お前のような奴のやり方を、断じて認めるわけには行かない!行くぞ、リザードン!」

 

アランは左手につけたメガリングに指を当て、キーストーンを起動させた。

 

「我が心に応えよ、キーストーン!進化を超えろ……メガシンカ!!」

 

「グオオオオオッ!!」

 

アランのリザードンはメガリザードンXにメガシンカした。漲る敵意を、眼前の狂気のリザードンに向ける。

 

「おぉおぉ、勇ましいねぇ。それじゃあ、俺も……メガシンカ!!」

 

「GOOOOAAAAAAッ!!」

 

クロノも両手を組み、光を結んで狂竜リザードンをメガシンカさせた。その姿は、アランと同じメガリザードンX……しかし、本来は青い色の炎が紫色に変化していた。

 

「……やはり、キーストーンもメガストーンも使わないか」

 

「便利だろう?楽だぞ。ただしテメェらにゃあ教えねぇ」

 

「必要ない。このキーストーンとメガストーンが、俺とリザードンの絆の証だ!」

 

「……くだらねぇ、叩き潰せ!!」

 

その一言で、狂竜メガジュカインはリーフブレードを、狂竜メガリザードンXはドラゴンクローを発動し、それぞれ狂竜メガリザードンXはメガリザードンXに、狂竜メガジュカインはメガジュカインに向かっていった。

 

「「ドラゴンクロー!/リーフブレード!」」

 

「「グオンッ!/ジュカィ!」」

 

アランとショータも同時に指示を出し、それぞれメガジュカイン同士、メガリザードン同士激しくぶつかりあった。しかし、互角に見えるぶつかり合いはその実、クロノの狂竜ポケモンの圧倒という形に終わった。

 

「かえんほうしゃ!」

 

「グオオオンッ!」

 

「メガリザードンXの特性をご存知でない!?フレアドライブ!!」

 

「GUOOOOO!!」

 

メガリザードンXがかえんほうしゃを放つが、狂竜メガリザードンXはフレアドライブでかえんほうしゃを突っ切り、そのままメガリザードンXにぶちあたり思い切り地面に叩きつけた。

 

「リザードン!?」

 

「ジュカイン!ドラゴンクロー!!」

 

「ジュカイィ!」

 

「リーフブレードだ」

 

「GAAAAA!!」

 

メガリザードンを援護しようと動いたメガジュカインだが、狂竜メガジュカインに行く手を阻まれ上手く立ち回ることができない。

 

「かみなりパンチ!」

 

「グオン!」

 

「はがねのつばさ!」

 

「GYAAAAO!!」

 

一方、メガリザードンXがかみなりパンチを繰り出すと、狂竜メガリザードンXもはがねのつばさで迎え撃った。狂竜メガリザードンXはバレルロールで激しく回転をはじめると、そのままの勢いでメガリザードンXのかみなりパンチとぶつかりあった。何度もぶつかり合うが、ひたすら回転を続けているため隙がない狂竜メガリザードンXにメガリザードンXも攻撃を打ち込むタイミングがなかなか掴めないでいた。そのため、向かってくる狂竜メガリザードンXの攻撃を逸らすだけで精一杯だった。

 

「くっ……なんなんだ、この強さは……!!」

 

「はははははは!!テメェらなんかじゃ一生たどり着けねぇ境地だ!大人しく負けを認めたらどうだ?」

 

「黙れ!明らかに異常なポケモンを使っておきながら!」

 

「受け入れたのはコイツらだ、ポケモン自身が望んだ力だ!トレーナーとして、その意欲は買ってやらねぇとなぁ!!」

 

「ですが、こんな力は間違っています!ポケモンたちを元の正気に戻してください!」

 

「間違っているだぁ?『勝てば官軍負ければ賊軍』って言葉を知ってるか?歴史ってのはいつだって勝者が正しくあり続けた!テメェらが正しいって言うんなら俺に勝ってみせろよ、簡単なことだろ?」

 

アランとショータの訴えも、クロノは涼しい顔で聞き流す。歯噛みする二人を前に、クロノは愉悦に歪んだ笑みを浮かべた。

 

「ははははは!!さあ、リザードン、ジュカイン!終わらせてやれ、ドラゴンクロー!!」

 

「「GYAAAAAO!!」」

 

二体の狂竜ポケモンが同時にドラゴンクローを発動し、襲いかかる。既に激しいぶつかり合いで満身創痍に近いメガリザードンX達は動きが鈍く、万事休す……。

 

「ムーンフォースッ!!」

 

「サァーナァー!!」

 

……と、思われた、その時だ!頭上から突然放たれたムーンフォースに攻撃を阻まれ、狂竜ポケモンは大きく吹き飛ばされた。

 

「はぁ?またか……今度は何処の馬の骨だ」

 

「……貴方ね?ここ最近、カロスを騒がせているというメガシンカ使いは……」

 

「へっ、俺様も有名になったもんだ。……んで、あんたは?」

 

「私はカロス地方ポケモンリーグチャンピオン、カルネです。異常な状態にあるポケモンたち、必要とする道具を用いないメガシンカ……貴方には、聞きたいことが山ほどあります。大人しく、ついてきてくれないかしら?」

 

姿を現したのは、カロス地方のチャンピオン・カルネと、相棒のサーナイト。彼女は厳しい目でクロノを見つめるが、クロノは愉快げに口角を吊り上げるだけでまるでものともしていない。チャンピオンすら脅威だと感じていない様子だった。

 

「ハハッ!ついにチャンピオン直々にお出ましか。待ってたぜぇ、あんたをよぉ」

 

「……それはつまり、最初から狙いは私だったと?」

 

「いぃや?あんたに簡単に会えるとは思っていなかったからな。会えなかったら会えなかったで、そのままサヨナラするつもりだったぜ。でもまぁ、探す手間が省けたと考えりゃ、そっちから出向いてもらってありがとさん、くらいは言ってやってもいいぜ」

 

「……っ」

 

カルネは狂竜ポケモンたちを見て、悲痛な表情を浮かべる。明らかに狂っているとしか言いようのない姿が、痛ましくてかなわないのだろう。

 

「……ここで手を引いて欲しい……と、お願いしても聞いてくれないわよね」

 

「だなぁ。そっちのザコ共も降参しねぇし、加えてあんたが出てきた。生憎と、こっちが手を引く理由はなくなっちまったわけだ」

 

「……なら、やむを得ないわね。サーナイト」

 

「サァナ」

 

サーナイトは構えを取り、応戦の意思を示す。それを受けたクロノは、本当に楽しそうに笑い声を上げた。

 

「あっははははは!そうこなっくちゃなぁ!!」

 

「GAVAAAAA!!」

 

クロノはカルネの参戦を悟って三つ目のボールを投げた。そこから出てきたのは、ガブリアス。やはり極限状態となった個体であった。

 

「さあさあさあ!楽しい楽しいポケモンバトルの時間だぁ!!」

 

「GUGAVAAAAA!!」

 

そうして、クロノは狂竜ガブリアスを狂竜メガガブリアスへとメガシンカさせた。初めて見る現象を前に、カルネも思わず顔を顰めた。

 

「……意味がわからない。なぜメガシンカができるの……必要なものが何一つないというのに……」

 

「つまり、そういう理屈が一切通じない相手だということ……彼について今分かることは、それだけです……!」

 

「戦うしかない……それを知るためにも……!」

 

「むしろそんな道具頼みでしか為せないお前らが解せない。メガシンカとは現象ではなく可能性だ。ポケモンとトレーナー双方の想念、バトルの中でしか見いだせない極限状態、殺意と闘争……絆だ心だと、そんなくだらねぇ綺麗事で飾り立ててんじゃあねえよ!

要らないよなぁ、心なんか!それで勝てるっていうならさ!!さぁ、テメェら!あいつらをとことんまで叩き潰せ!!」

 

「来るわ!二人共、構えて!!」

 

「「……!!」」

 

迫り来る狂竜ポケモンを前に、カルネはアランとショータに檄を飛ばす。ポケモン共々、気を引き締めた彼らは一斉にポケモンたちへ指示を出した。

 

「シャドーボール!」

 

「かえんほうしゃ!」

 

「リーフストーム!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

一斉に攻撃を放つカルネたちのポケモンだが、狂竜ポケモンはそれらをすべて一撃で消し去ると、そのまま距離を詰めて攻撃を放った。

サーナイトは攻撃を回避したが、メガリザードンXとメガジュカインは攻撃を避けられず直撃をくらい、そのまま戦闘不能になってしまった。

 

「リザードン!!」

 

「ジュ、ジュカイン……!?」

 

「クソが……雑兵だらけか、カロスは。どうなんだ、テメエは?えぇ?チャンピオンさんよ!」

 

「くっ……」

 

リザードンとジュカインが倒れて戦線離脱。戦況はサーナイトと狂竜ポケモンによる1VS3となった。

 

「さぁどうする?もはや敗北確定に近いが、まだ続けるか?やめといたほうがいいと思うけど」

 

「……いいえ、止めないわ。だって、私のサーナイトはまだまだ元気だもの」

 

「サーナ!」

 

「……意味わからん。3VS1だぞ、勝てると思ってんのか」

 

「えぇ……負ける気はしないわ」

 

「……ッ!テメェ……!!」

 

クロノの表情が憤怒に歪む。舐められていると感じているのだろう、身の内から溢れる怒りを隠そうともしていない。

 

「だったらここで、無様に敗北を刻み込め!!ジュカイン、リーフブレード!」

 

「GUOOOOA!!」

 

「サーナイト、リフレクター!!」

 

「サナ!」

 

サーナイトが展開したリフレクターは、極限状態によって著しく強化されているはずの狂竜ポケモンの攻撃を受け止めた。さらにクロノに苛立ちが募り、続けて指示を出した。

 

「テメェも行け、リザードン!!かみなりパンチ!」

 

「GAAAAA!!」

 

「……ッ、サナ……!」

 

続けて繰り出された狂竜メガリザードンXのかみなりパンチも受け止めた。……が、ここでリフレクターにひび割れが生じた。それを見逃すクロノではない。

 

「まだ耐えるかっ!!ガブリアス、アイアンヘッドだ!!」

 

「GAVAAAAA!!」

 

「……ッ!サナァ……!!」

 

「サーナイト……!」

 

「……!チャンピオンのポケモンでも、奴らを抑えきれないのか……!」

 

最後に繰り出された狂竜メガガブリアスのアイアンヘッドが止めとなり、ついにリフレクターが破壊された狂竜メガガブリアスはそのままの勢いでサーナイトにアイアンヘッドをぶち当て、大きく後退させた。チャンピオンの強さをよく知るアランは、その事実に苦々しい顔になった。

さらに接触したことで狂竜症を発症し、サーナイトは苦しげに顔を歪めた。

 

「……!これが、未知の状態異常……!」

 

「さあさあさあ!楽しくなってきたなぁ!!嬲り殺しにしてやれ……!」

 

「「「GAAAAA!!」」」

 

「サーナイト!」

 

「サナ!」

 

迫り来る狂竜ポケモン……しかし、カルネとサーナイトに焦りはない。カルネは首に掛けているペンダント……メガチャームを掴むとキーストーンを起動、サーナイトのメガストーンと共鳴を起こした。

 

「サーナイト、メガシンカ!」

 

「サアァナアァー!!」

 

光に包まれ、サーナイトはメガサーナイトにメガシンカした。その後、狂竜ポケモンたちの連続攻撃を、次々と回避してみせた。

 

「なっ……ちぃっ!ジュカイン、リーフブレード!リザードンはかみなりパンチだ!」

 

「GUOOOOO!!」

 

「サイコキネシス!」

 

「サナ!!」

 

サーナイトは両手にサイコパワーを集めると、それを用いて狂竜メガジュカインと狂竜メガリザードンXの攻撃を次々と捌き始めた。サイコパワーで攻撃を受け流し、反撃の一撃を見舞っている。狂竜メガジュカインと狂竜メガリザードンXも怒涛のラッシュを仕掛けているが、その大半が回避されたり受け流されているのだ。

 

「……ハハッ、この感じだ!闘争だ!俺様達にはそれが必要だ!」

 

「なんですって……?」

 

「俺様達のような力を持つ者は、戦いの中でしかその価値を見いだせない!!この力を戦い以外に使うなんて、俺様は真っ平御免だね!ポケモンは戦わせるものだ!」

 

「……!力だけが、ポケモンの全てではないわ!!」

 

「ならばどうする!ポケモンに力があるからこそ、悪の組織はゴキブリみたいに湧いてくる!己の欲望のためにポケモンを使う輩がいる!ポケモンが無力で無価値でなければ、決して起こりえないことだ!!何を知ったとて、何を手にしたとて変わらない!最高だな、人は!!」

 

「そんな理屈が!」

 

「ポケモンという力が降って沸けば、使わぬ輩はおらんだろうさ!ポケモンを戦わせ競い合う……それはなぜか!強くあること、高みへ至ること、誰よりも先へ至ること!その全ては人から生まれる欲望なのさ!人の夢、人の望み、人の業!他者より強く、他者より先へ、他者より上へ!!

人間同士でさえ戦争を、争いを起こすのだ!スポーツマンシップってのは、そういった闘争心を美しく着飾るための綺麗事に過ぎない!!お前も俺様も、誰よりも高みへ至る者は穢れていて当然なのだ!だからこそ、俺様はあえて言おう!その穢れこそが、何よりの美しさだとな!!」

 

「穢れが、美しさ……!?」

 

「そうだろう、チャンピオン?お前は、今までチャンピオンの座を奪おうと、乗り越えようと挑んできた人数を覚えているか?そいつらの夢、欲、野望を踏み潰してへし折った数を覚えているか!?一度でもお前に敗れた奴が、再びお前の前に姿を見せたことは!?

あるのか?一度でも!!ないだろうな、当然だ!そうやって踏み潰してきた夢の数だけ、お前は長くチャンピオンの座に座っている!夢破れた者たちの屍を積み上げでできた玉座に座する気分はどうだ!?」

 

「……っ」

 

カルネは思わず顔を伏せてしまった。それは、ほんの一瞬でも、ほんの一度でも考えたことのある話だから。チャンピオンの座を得んと挑んできた者たちを破り、この椅子を守り続けてきた。敗れていった者たちの中には、悔しがる者もいた、諦める者もいた、泣き崩れる者もいた。そうして去っていった者たちが、二度目の挑戦に臨むことはなかった。

カルネの心が僅かに揺らぐ。

 

「だがな、俺様はそんなお前を肯定しよう!なぜなら!強くあることが悪なのではない、弱いことが悪だからだ!!そうして弱い己に妥協して、諦めて……弱者という奴は、そうやって勝手に失望していくのだ。

だが、俺様は違う!!弱者の謗りを受けたなら、それを覆すだけの力を手に入れてみせるまで!!そして、俺様は手に入れた!この力を!!極限状態となった俺様の最強のメガシンカポケモンたち……これが力だ!誰にも負けず、何にも逆らわせぬ、究極絶対の力ァ!!

勝ち続ける強者よ!勝者よ!!今こそ地に伏せ泥を被る時だ!!地獄を見せてやろう……敗北という名の無間地獄をな!!」

 

「……!!」

 

「GUAAAAA!!」

 

「サナァッ!!」

 

狂竜メガガブリアスのアクアブレイクを受けたメガサーナイトが吹き飛ばされ、カルネの下まで後退した。倒れはしなかったものの膝をついており、肩で息をしている状態だ。

 

「サーナイト!」

 

「……サァナ!!」

 

それでも、カルネの呼び声に応えて立ち上がる姿は、さすがはチャンピオンの相棒といったところか。カルネは毅然とした面持ちでクロノをしっかりと見据えると、しっかりと彼と目を合わせた。その真っ直ぐすぎる視線に、クロノは思わずたじろぐ。

 

「な、なんだテメェ……」

 

「……なるほど。ポケモンの様子が普通ではないことに加えて、複数体も同時にメガシンカできる……確かに貴方は強いわ。……でも、強いだけよ」

 

「なに……?」

 

「ただ強いだけの力は、暴力と同じよ。貴方はその強さで何をしたいの?何を求めてそこまで強くなろうとするの?その強さの先には……いったい、何があるというの?」

 

「だ……黙れ……黙れ、黙れ!」

 

「ただ強くなるだけなら誰にだって出来るわ。けど、トレーナーには強さの中に確かな思いと願いがある!その思いと願いはポケモンを通して、さらに強く大きくなる!バトルを通して、トレーナー同士ポケモン同士、お互いに思いを交えれば、さらに強くなれる!」

 

「黙れっ!!競技の枠に収まった闘争に何の意味がある!一度の敗北がすべてを決める世界において、競い合い高め合うことの実に無駄なこと!!負ければそれまでだ!……それまでなんだよ……!」

 

「!」

 

カルネはそこで、初めてクロノが追い詰められたような表情をしていることに気づいた。ポケモンチャンピオンとして、何より一人の人間として生きてきたカルネは、その僅かな表情の変化から、クロノの心情を瞬時に読み取った。

 

「貴方は……」

 

「俺様は勝つ!勝てばその全てが証明される!!俺様が正しいのだという、確かな証が!!」

 

「……ならば、私が証明しましょう。その力、その強さは、誤りであるということを!!」

 

 

 

 

推奨BGM

【one way】~機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ~

 

 

 

 

「黙れ!!リザードン、フレアドライブだ!!」

 

「GOAAA!!」

 

紫の獄炎を纏った狂竜メガリザードンXが、サーナイト目掛けて突撃する。

 

「サーナイト、シャドーボール!!」

 

「サナー!」

 

メガサーナイトはシャドーボールを形成すると、それを自身の足元に放った。土煙が舞い上がり、メガサーナイトの姿を覆い隠す。狂竜メガリザードンXは煙の中を突っ切るが、当然のように空振りに終わった。

 

「ちっ……ガブリアス、はかいこうせんだ!!ジュカインはあなをほる!」

 

「VAAA!!」

 

「GYUGAAA!」

 

「来るわ、サーナイト!サイコキネシス!!」

 

「サーナー!!」

 

煙の中で視界が効かないのはメガサーナイトも同じ……だというのに、まるで見えているとばかりに放たれた狂竜メガガブリアスのはかいこうせんをサイコキネシスで受け止め、上空へと受け流す。間髪入れず、狂竜メガジュカインのあなをほるが迫るが、それも跳躍して回避してみせた。

 

「バカが!隙だらけだ!!」

 

「そうかしら?サーナイト!!」

 

「サー!」

 

メガサーナイトが手を上に掲げると、上空へ逸らされたはかいこうせんがサイコキネシスによって方向転換し、反対に真下へと向けられた。

 

「はかいこうせんにムーンフォース!」

 

「サァナー!!」

 

放たれたムーンフォースははかいこうせんとぶつかり合い……はかいこうせんがちりぢりに飛び散った。それはまるで、りゅうせいぐんの技のよう……散弾のように飛び散ったはかいこうせんは、狂竜ポケモンたちに次々と降り注ぎダメージを与えていく。

 

「なんだと!?」

 

「ムーンフォース!!」

 

「サナ!サァーナァーッ!!」

 

「GYAAAA!?」

 

驚くクロノを余所に、カルネは空中で自由が利かず自由落下する狂竜メガジュカインに目を付け、即座にムーンフォースを指示した。指示通りに放たれたムーンフォースは狂竜メガジュカインに直撃し、戦闘不能にしてみせた。

 

「馬鹿な!?」

 

「やった!さすがはチャンピオンです!!」

 

「三対一の状況から、あの狂ったポケモンを倒すとは……!」

 

ショータもガッツポースで喜びを顕にし、アランは改めてチャンピオンの強さを認識していた。一方、クロノは極限状態となった狂竜メガシンカポケモンが倒されたという事実に驚愕を抑えられないようだ。

 

「あ、ありえん……信じられない、こんなことが……!」

 

「これが、ポケモンと信頼を築いたトレーナーと、その想いに応えんとするポケモンの力よ!」

 

「くっ……調子に乗るなぁ!!リザードンははがねのつばさ、ガブリアスはアクアブレイクだ!!」

 

「GUOOOO!!」

 

「GAVAAA!!」

 

狂竜メガリザードンXと、狂竜メガガブリアスによる、空中と地上からの猛攻が始まった。メガサーナイトは両者の攻撃を捌いてはいるが、相次ぐ猛攻と受けたダメージで疲労が蓄積しており、僅かだが躱しきれなくなってきていた。

 

「くっ……」

 

「ハッハハァ!!もう限界みてぇだなぁ!いい加減におっちんじまえ!!」

 

「まだよ!サーナイト、リフレクター!!」

 

「サナァ!……サナ……!」

 

「サーナイト!?」

 

メガサーナイトのリフレクターが、狂竜ポケモンの攻撃を受け止めた。……だが、攻撃以外の技を選択したことで狂竜症が効果を発揮し、サーナイトから攻撃能力を奪っていく。

 

「フン!この状況で、攻撃以外の技を選ぶとはな!」

 

「……ムーンフォース!!」

 

「サナ!」

 

メガサーナイトは両手にムーンフォースを構えると、それぞれ狂竜ポケモンに放った。……だが、直撃下にも関わらず、狂竜ポケモンはケロリとしている。それどころか、効果は抜群のはずのメガガブリアスが、まるで堪えた様子がなかった。

 

「そんな!フェアリー技は、ドラゴンタイプには効果は抜群のはず……!」

 

「あぁ~、説明してなかったなぁ。狂竜症は攻撃以外の技を使うと、次の攻撃で弱点を突いても威力が落ちるんだ。残念だったなぁ?」

 

「なるほど……!」

 

ショータの驚いた反応を見て気を良くしたのか、クロノが余裕のある笑みとともに狂竜症について説明した。今まで多くを語ることがなかった謎の状態以上について、カルネも一定の理解を得た。現在、メガサーナイトから瘴気が消えている所を見るに、狂竜症は回復したと判断していいだろう。

 

「サァナ……サァナ……」

 

「(サーナイトの息が上がっている……体力も限界に近いわね……。対して彼のポケモンたちは……リザードンは消耗しているようだけど、ガブリアスはまだまだ、といったところかしら)」

 

冷静に状況を見定め、次に取るべき行動を吟味する。こういうところが、チャンピオンとうたわれる強さの所以なのだろう

 

「(苦しい展開ね……けど、狂竜症という状態異常は回復しているようだし、次の攻撃であと一体くらい落としたいところね)」

 

「何を考えているのかは知らねぇが、"下手な考え休むに似たり"って言うだろ!思考に没入する暇があったら、とっととポケモン嗾けて来いやぁ!!」

 

「……フッ、そうね。まだ、勝負は付いていないものね」

 

「テ、テメェ……この状況で、まだ強がるか!!」

 

「強がりではないわ……私もサーナイトも、負けるつもりは一切ないから!」

 

「サーナ!」

 

「いい加減に……!諦めろ!!リザードン、かみなりパンチ!」

 

「GUOAAAA!!」

 

「サーナイト、突撃!」

 

「サナ!」

 

狂竜メガリザードンXがかみなりパンチを構えると、メガサーナイトは狂竜メガガブリアスに向かって突っ込んだ。

 

「な、何を考えて……ええい、ガブリアス!はかいこうせんだ!!」

 

「GAVAAA!!」

 

「サイコキネシス!」

 

「サァナー!!」

 

正面から迫り来るはかいこうせんに対し、メガサーナイトはサイコキネシスを発動すると上体を逸らしつつはかいこうせんを後方に受け流した。逸らされたはかいこうせんの進行先には、メガサーナイトを猛追していた狂竜メガリザードンXがいた。

 

「まずい!?リザードン、避けろ!!」

 

「GUOOOOO!?」

 

狂竜メガリザードンXは突然自身に向かってくるはかいこうせんに驚き、動きが止まってしまった。それによってはかいこうせんが直撃し、地面に墜落してしまった。

 

「チィーッ!!ガブリアス、アクアブレイク!」

 

「GAAAAA!!」

 

「ムーンフォース!」

 

「サナッ……!サァナー!!」

 

「GUAAA!?」

 

狂竜メガガブリアスのアクアブレイクを受けて吹き飛びながらも、素早く体勢を変えてムーンフォースを放ち、命中させた。効果は抜群だが、体力に余裕があるのか戦闘不能になることはなかった。

その一方で、墜落から起き上がった狂竜メガリザードンXが怒りに炎を滾らせながら、メガサーナイトへ突撃した。

 

「リザードン、はがねのつばさ!!」

 

「サーナイト、シャドーボール!!」

 

背後から迫る狂竜メガリザードンXのはがねのつばさを、メガサーナイトは掠めるようにして回避した。そのままシャドーボールを放ち狂竜メガリザードンXへと直撃させた。狂竜メガリザードンXは再び墜落し、メガシンカが解除され戦闘不能になった。

 

「なぁ……!?リ、リザードンまでもが……!!」

 

「すごい……すごいですよ、カルネさん!」

 

「これなら、勝てるか……!?」

 

二体目の極限メガシンカポケモンが倒れたことで、クロノの動揺はさらに大きくなった。しかしそれも一瞬のことで、次の瞬間にはカルネに強い憎悪と敵意が篭った目を向けた。

 

「テメェ……!もうただじゃおかねぇ……ぶっ殺してやる……!!」

 

「(……どうして……どうして貴方は、こんなにも……)」

 

カルネに対して激情を向けるクロノ……そんなクロノの姿もまた、カルネにはあまりにも痛々しく映っていた。

痛みも苦しみも、何もかもを顧みず……強くなるために必死になるその姿。努力を重ねる姿は微笑ましいはずなのに、どうしてかクロノのそれはまるで違った。まるで何かに怯え、逃げるように。必死に抗い、逆らうように。むき出しの感情から感じ取れるクロノの悲鳴のようなものが、カルネの心を苦しめていた。

 

「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!ガブリアス!はかいこうせん!!」

 

「GUOAAVAAA!!」

 

「サイコキネシス!」

 

「サナ!」

 

はかいこうせんをサイコキネシスで逸らし、直撃を避ける。

 

「アイアンヘッド!」

 

「GAAAAA!!」

 

「ムーンフォース!」

 

「サナァー!!」

 

突撃してくる狂竜メガガブリアスに対し、ムーンフォースで迎撃する。ムーンフォースは鋼鉄の頭突きで逸らされ、直撃には至らない。

 

「シャドーボール!」

 

「ドラゴンクロー!」

 

少しでも勢いを止めるべくシャドーボールを指示。こちらはクロノの機転で技を変更したことで、ドラゴンクローにより打ち消された。

 

「アクアブレイク!」

 

「サイコキネシス!」

 

「GUOVAAA!!」

 

「サーナアアァッ!!」

 

アクアブレイクによる猛攻を、サイコキネシスによるサイコパワーで受け流す。体力的にも限界が近づいており、完全には躱しきれない。少しずつダメージが蓄積する中、カルネはクロノから目が離せない。

 

「……なんだよ」

 

「…………」

 

「なんだ、その目は……なんで俺様を、そんな目で見る……!」

 

「…………」

 

「俺様をっ!憐れむなぁ!!」

 

その言葉がキーとなったのか狂竜メガガブリアスはほぼゼロ距離にも関わらずはかいこうせんを構えた。

 

「サーナイト」

 

「サナ」

 

「……ムーンフォースッ!!」

 

「サアアァナアァッ!!」

 

だが、カルネがとった選択は回避でなく、迎撃。それも、ゼロ距離によるムーンフォースだ。狂竜メガガブリアスのはかいこうせんと、メガサーナイトのムーンフォースがゼロ距離で搗ち合い、大爆発を起こした。周囲一帯を飲み込む巨大な爆発だ。

クロノは咄嗟に翼を顕現し、爆風から自身を守った。爆風が収まり煙が晴れた先では、戦闘不能となったメガサーナイトが倒れており、さらにそこから離れた場所ではトレーナー達も倒れていた。狂竜メガガブリアスは膝をついているが、かろうじて保ったようだ。

 

「……ハ」

 

クロノは勝負に勝ったのだ。

 

「ハ、ハハ!ハハハハハハハ!!」

 

思わず溢れる高笑い。勝負に勝ったのだから、笑いが溢れるのは自然なことだろう。

 

「どうだ!見たか!?俺様の強さ!俺様の正しさ!!これが力!これが!これこそが!!ハハハハハハ!!」

 

しばらく一人で笑い続けていたクロノ……だが、次第にその笑い声も小さくなっていった。

 

「…………」

 

やがて、完全に笑わなくなった頃……クロノはカルネたちの方へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の激突から、気を失っていたらしい。カルネは少しずつ覚醒に近づく意識の中で、そう認識した。ゆっくりと目を開けて、少し首を動かすと同じように寝かされたアランとショータの姿があった。続けて反対側に目を向けると、クロノが座っていた。

 

「……おう、起きたかチャンピオン」

 

「……貴方が、介抱してくれたの……?」

 

「……ん、まぁな……」

 

目を合わせることなく答えるクロノだが、そこにはバトル中に感じられていた傲慢さや不遜さがなくなっていた。むしろ、燃え尽きてしまったかのような虚脱感が漂っていた。

 

「勝負は俺様の勝ちだ。俺様は勝ったのだ、貴様らにな」

 

「……そう……」

 

「……なのに、なぜだ?」

 

そう言って顔を向けたクロノは、苦しそうな表情を浮かべている。

 

「なぜ、嬉しくない?楽しくない?勝利とは美酒に酔いしれるようなもので、心地よいもののはずだ。

なのに、まったく感じられない。むしろ……なぜ、こんなにも虚しいんだ?俺様は勝ったのに……勝ったはずなのに……」

 

「……苦しかったのね、貴方も」

 

「え……?」

 

「負けられない理由があるのかしら……だから、どうしても強くなりたかったのね」

 

「……そうだ。だから、俺様は……」

 

「けど、あんなやり方は間違っているわ……それは、絶対」

 

「……!では、どうしろと――!!」

 

「けど、その想いは間違いではないわ」

 

カルネは優しく微笑みながら、ゆっくりと諭すように言葉を紡ぐ。

 

「貴方が抱えている想いは、誰もがみんな持っているもの……人ぞれぞれに想いがあって、その人の想うがままに強くなろうとしている……。みんなね、必死なの。少しでも強くなろうと、みんなが必死になってもがいて、足掻いている……それは決して、貴方一人だけじゃないわ……」

 

「……人それぞれに、か」

 

「それにね……貴方は"自分は弱いから強くなろうとしているんだ"と言うけれど……そんなことはないわ」

 

「それは、どういう……?」

 

思わずクロノは聞き返した。その様子はまるで藁にも縋るような、迷子の子供のような不安を浮かべていて、その様子を見てカルネは静かに安堵した。

 

「大丈夫。貴方は、貴方自身が思うほど弱くはないわ。……だって、こんなにも強くなりたがっているでしょう?」

 

「……あぁ」

 

「それなら、大丈夫。その想いは決して、間違いなんかじゃないわ。それにね、勝ったのに嬉しくないって、つまらないって思えるのはね……それだけ、貴方がバトルに真剣に……夢中になっていたからなのよ……?」

 

「……!!」

 

クロノが驚きに目を見開いた。自分のことのはずなのに、まったく考えに及ばなかったからだ。

 

「俺様が、バトルに……?」

 

「えぇ……。貴方も最初は、ただ勝つことだけを考えていたのかもしれない……けれど、バトルをしていくうちに、いつしか対等に戦いたいと思うようになったはずよ……。

対等に、真剣に、お互いを認め合って、高め合って……ポケモンバトルはね、それを可能とする最上のコミュニケーションツールなの。きっと貴方も、強く影響を受けているはずよ。

それにね、これは勝負なの。けっして一度きりの戦いなんかじゃない、機会があれば何度でも何度でも臨むことができる……だから、負けたっていいの。その敗北を糧に、もう一度立ち上がって、また挑めばいい……そして、次に勝利すればいい。それが、勝負というものなの」

 

「……そう、か……」

 

完全には理解しきれていないのだろうが、納得の意思を示したクロノ。クロノは立ち上がると、そのまま歩き始めた。

 

「どこへ……?」

 

「……どうしても、勝ちたい相手がいるんだ。そいつに勝つためにも、まずは……ポケモンたちと向き合ってみようと思う。それから、色々と特訓してみるよ」

 

「そう……。大丈夫よ、貴方なら、きっと勝てるわ」

 

「"負けてもまた挑めばいい"……だろ?」

 

「えぇ」

 

「……ありがとう。チャンピオン・カルネ……お前のこと、ずっと忘れない」

 

関係者には連絡してるから、と言い残して、クロノはその場を去っていた。クロノが去ってから少しして聞こえてきたヘリコプターの音を耳にしながら、カルネは再びゆっくりと意識を沈めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時空の裂け目を通り、元の世界へ戻ってきたクロノ。最初にすべての手持ちポケモンをボールから出すと、自身が持つ生体エネルギーを用いて極限状態を回復させた。正気に戻ったポケモンたちに対し、クロノは言い放った。

 

「……俺様はショウを倒すために、手持ちを用意する。お前らはもう好きにしろ。どこへなりとも行け」

 

それから背を向けて歩き出そうとした、その時だった。

 

「チルル~♪」

 

「のわぁ!?チ、チルタリス……?」

 

なぜかチルタリスが飛びつき、クロノに抱きついたのだ。すると、後に続けとばかりにポケモンたちがクロノに飛びつき、一斉に抱きついてきたのだ。

 

「わああぁぁっ!なんなんだお前ら!?俺様と一緒に行きたいのか!?」

 

「チル~!」

 

「リュー!」

 

「グオン!」

 

「カィン!」

 

「ボマー!」

 

「ガブア!」

 

「……!!お、お前ら……」

 

クロノは自覚していなかったが、ポケモンたちはクロノにかなり懐いていた。だから、極限状態に関しても"それがクロノの力になれるなら"と受け入れたのだ。知らず知らずのうちにポケモンたちと信頼関係を構築できていたことに、遅まきながらに気づいたクロノ。

彼はニィッ!と口角を釣り上げるとポケモン一匹一匹の頭を撫でていく。

 

「……そうか!よぉし、そうとくれば……早速特訓だ、お前ら!!俺様について来い!!」

 

ポケモンたちが一斉に声を上げ、クロノは鍛錬に最適な場所を目指して歩き始めた。

 

「(待ってろよ、ショウ!最後に勝つのは……俺様だ!!)」

 

その表情は、吹っ切れたように晴れやかだったという。

 

 

 

 




クロノの成長の一端が垣間見えたでしょうか?おかげでこっちは19000文字も書く羽目になりました(自業自得とも言う)。

そしてこの後、特訓したクロノがショウとバトル……という展開になります。

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