犯罪者ユージを連行する道中、拘束を解いて暴走するという事件が起きたものの、おかげ("おかげ"とはあまり言いたくないが)で私のリオレウスが『破滅の翼』の力に覚醒するというラッキーが起こった。予期せぬ形で新たな力を手に入れることができたので、お礼とお礼参りという二重の返礼をするためにポケモンたちの一斉攻撃で大目に見てやることにした。
起こった問題はそれだけで、その後は恙無くドンドルマに到着した。飛行船から降りると、私たちを出迎えてくれる影が見えた。
「ショウ、無事に着いたか!」
「ニールさん!」
そう、ニールさんだ。歌姫護衛のために同道したハンター組は大長老からの許可取りのため、先んじてドンドルマに向かっていたのだ。
「許可の方は?」
「もちろん!無事にもらってきたよ。これで俺たちハンターも、君たちのアルバトリオン討伐に同行できるようになった……必ず勝とう、ショウ」
「はい!……ところで」
「ん?」
「良かったんですか?……シズカさんを置いてきてしまって」
「……あー……」
ニールさんが気まずそうに目をそらす。……そう、実は今回のアルバトリオン討伐にシズカさんはいない。というのも、彼女のメンタルを考慮したニールさんが独断でメゼポルタに置いていくことを決めたらしい。なので、今ここにいるハンターはニールさん、エイデンさん、ネネさんの三人のみだ。……どうやってネネさんを丸め込んだんだ?絶対に「姉様の傍にいます!」って駄々をこねただろうに……。
「絶対に怒ってますよ、シズカさん」
「……うん、わかってる。大丈夫だ、誠心誠意……全力で土下座するよ」
「情けないなぁ……」
「うぅ……け、けど、あの状態のシズカを連れて行くわけには……」
「そうじゃなくて、『黙って』置いていったことに問題があるんですよ。ちゃんと相談すれば、シズカさんだってわかってもらえたはずですが?」
「うぐっ!」
ニールさんなりに気遣った結果なんだろうけど……なんというか、不器用な人だなぁ。狩猟では手際よく立ち回れるのに、それ以外では……うん。
「とりあえず、帰ったら謝りましょう。私も一緒に謝罪しますから」
「いや!俺が一人で謝るよ。それくらいの責任はあるさ」
「そうですか……わかりました」
そうして話していると、飛行船からユージが降りてきた。ソウヤさんが縄をしっかりと握っているので、簡単には逃げられないだろう。
ボコボコのボロボロになっているユージを見て、ニールさんは何とも言えない表情を浮かべている。
「……前世、か。前世来世とかって言葉自体はよく聞くが……まさか、記憶をそのまま受け継いで転生する、なんてことがあるなんてな」
「はい……ソウヤさんはシズカさんのお兄さんを殺してしまった前世が、ユージは私の母を陵辱した前世が……」
「その口ぶりだと……ショウのお母さんも?」
「はい」
「……本来、転生する際に魂は浄化される……つまり、前世の記憶は洗い流されるはずだよな、何かの本で読んだことがあるよ。けど、魂はそのままに転生だけが起こる……そんなことってありえるのか?」
「ありえることが、目の前で証明されてますよ」
「……それもそうか」
と、ここでユージがまたしてもなにか喚き散らしながら逃げ出そうとしている。……だが、ソウヤさんは流石は元ハンターの現ギルドナイトだけあって、ユージを逃がすことはない。と、ここでなぜかカイさんが動き出した。
「うーーー
るーーー
せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
カイさんが叫ぶと同時に、グレイシアがはかいこうせんをブッ放した。加減はしたのか小規模の爆発後、真っ黒になったユージの姿が。その一撃が決め手となったのか、完全に抵抗力を失ったユージはそのままソウヤさんに連行されていった。
「……あんな小さな体の、一体どこからあんなビームが出てくるんだ……」
「それがポケモンですから」
「ポケモン……ポケットモンスターという、ショウの地元であるヒスイに生息するモンスターか。多彩な技と多様性という意味では、ウチのモンスターと脅威度は五分ってところかな。技巧種モンスターも、時空の裂け目を通してヒスイの環境の影響を受けたって聞いたけど……」
「実際、時空の裂け目で繋がりが出来てから技巧種モンスターも増えてます。無関係ではないでしょう」
私たちの会話に入ってきたのは、ネネさんだった。
「ネネさん……やはり、増えてますか」
「えぇ。各狩猟地から、『技巧種と思しきモンスターを確認した』という報告が上がっています。なるべく捕獲を推奨していますけれど、やはり技巧種……捕獲にせよ討伐にせよ、一筋縄では行かないようですわ。
特に、鳥竜種。一部の個体は群れを形成するのですけれど、群れが丸ごと技巧種化したと聞いたときは、我が耳を疑いましたわ……あぁ、頭が痛い……」
「……このまま技巧種モンスターが増えれば、生態系に著しく影響が出るな」
「既存のモンスターが、技巧種モンスターによって縄張りを脅かされているという状況が各地で観測されています。彼らは最大で18種の属性を操れますからね……既存モンスターでは太刀打ちできないようですわ。技巧種化したとはいえ、ドスランポスの群れが古龍級生物を撃退するなんて誰が想像できますか……」
……どうやら、こちらの大陸でも影響が表れ始めたらしい。多種多様な技を豊富に得た技巧種モンスターが、現存する通常個体のモンスターたちを追いやり始めたそうだ。そのために一部のモンスターは縄張りが変化し始め、龍歴院も多忙を極めているらしい。
現在はハンターズギルドから全ハンターへ下知し、技巧種モンスターを捕獲もしくは討伐するようにすることで対応しているそうだ。
「古龍種はどうなんだ?」
「中型以下の技巧種モンスターには遅れをとりませんが、大型モンスターが相手だとそれも難しいですわね。一部の古龍が縄張り争いで惨敗した様子が確認されています。おそらく相手は、技巧種でしょう」
「古龍すら脅かされるか……改めてとんでもないな、技巧種は」
「実際に戦ってみなければ、その脅威は理解し難いですわ。そのせいで、ハンター側にも決して少なくない被害が……」
「龍歴院は属性相性の早見表を作っているんだったか」
「各種族の代表モンスターを優先して、急ピッチで仕上げていますわ。……"タイプ相性"について、我々龍歴院の理解が遅れていることは否めません。姉様をはじめとする、もっと造詣の深い御方がサポートしてくださると助かるのですけど……」
そう言いつつ、チラッ、と私を見るネネさん。……あぁ、結局あの三人の学者さんはお手上げだったのかな……。
「ミラボレアスに動きがなければ、呪いが解けた後にでもお手伝いはできますが……」
「可能であれば、よろしくて?もちろん、そちらの……ヒスイの事情を優先してくださって構いませんわ」
「了解です」
呪いが解けてすぐにミラボレアスが動き出すならわからないけど、もしも呪いが解けても目立った動きがないようなら龍歴院のお手伝いをしてもいいかも知れない。ネネさんと簡単に約束を取り付けたところで、テル先輩がこっちに来た。
「ショウ、こっちにいたんだ」
「先輩……あ、そうだ先輩」
「ん?どうした?」
「先輩のジュナイパー、随分と姿が変わってましたけど……進化したんですか?それともメガシンカ?」
「いや、あれは進化じゃないよ。ショウが気絶してた三日間、ショウのお見舞いと並行してアカイさんと特訓してたんだ。その成果もあって、ジュナイパーが極み化できたんだ」
「ジュナイパーの極み化ですか!?」
「あぁ、アカイさんが【
「ふふっ……それは、すごく楽しみです!」
ジュナイパーの極み個体……【極み射狩るジュナイパー】、か……勝負がすっごく楽しみだ!
……そういえば、一匹だけヒスイに残してきたヒノアラシはどうしているだろうか。もうほかの調査隊員に譲られたのかな、それともまだラベン博士が面倒を見ているのだろうか。もしかしたら誰かが育てていて、極み化していたりして!……それはないか。
「おーい、ニール!」
「エイデン!」
今度はエイデンさんが……っと?なんだか表情があまりよろしい色をしていないな、なにかあったのだろうか……?ニールさんも察しているのか、表情を険しくしている。
「エイデン、何かあったか?」
「あー……あまり、良くないことが。ひとまず、大老殿に来てくれ。大長老様が話があると」
「……了解した」
エイデンさんからの話で、私たちは大老殿へと向かう。全員が集まったところで、話し合いが始まった。
「ムォッホン!数日ぶりじゃな、モンスタートレーナー諸君。メゼポルタでの一件は既に聞き及んでおる……また貴君らに助けられてしまったな。そのことについて謝礼を……と言いたいが、貴君らは謝礼よりも先に欲しいモノがあるようだな」
「えぇ、大長老殿。ギルドから派遣されたハンターは……」
「うむ……」
ニールさんが話を振ると、大長老様は渋面を浮かべて唸った。……一体どうしたの?すると、隣にいる大臣さんが話し始めた。
「滅龍石輸送部隊の壊滅を受け、ギルドは早急にハンターへ要請を出し、アルバトリオン討伐及び滅龍石奪還を依頼した。ハンターを派遣すること、都合七度……いずれも壊滅状態とのことじゃ。
さらに質の悪いことに、挑んだハンター達から速達で届いた文書にはこのように書かれていた。
"煌黒龍アルバトリオン、技巧種と化す"……と」
「なっ……!?」
ニールさんが小さく声を上げ、ネネさんが息を飲んでいる。……禁忌のモンスターが技巧種化ってハンター達からしたらシャレにならないんじゃ……。
「アルバトリオン技巧種の強さは未知数……もはや直接対峙してなお測りきれぬとのことじゃ。アルバトリオンは世界で唯一、すべての属性を操ることが出来る禁忌のモンスター……それが技巧種となったとあっては、もはや人の手に余る存在じゃろう……。
……おぉ、そうじゃ。積荷の滅龍石についても確認が取れたそうじゃ。アルバトリオンに守られておるせいで奪還とはいかなかったが……ひとまず、積荷は無事だそうじゃ」
「……ありがとうございます」
アルバトリオンが技巧種に……けど、滅龍石が無事で良かった。クロノの言うとおり、アルバトリオンは私を待っている……私と戦おうとしているんだ。
「……エイデンが言いたかったことって、これのことだったのか……」
「あぁ……信じられねぇよ、アルバトリオンまでもが技巧種になっちまうなんて……。ティガレックスにバゼルギウス……技巧種になったあいつら、とんでもねぇ強さだった。それが今度は禁忌の古龍か……」
「関係ないな、俺は神域に行く。行って、アルバトリオンを討伐して滅龍石を取り戻す!これ以上、ショウにツケを払わせるわけには行かない……!」
エイデンさんは若干だが辟易とした様子……だけど、ニールさんは逆に闘志を燃やしている。
「……フフフ……ここでアルバトリオンをさくっと討伐すれば、サプライズということも併せて姉様からの好感度はうなぎのぼり……!いずれは一線越えてキャッキャウフフ……アハッ♪」
……ノーコメントで。
「……ところで、シズカ・ミズハシは大丈夫かね?なにやら精神的な不調が見られたというが……」
「ご心配痛み入ります……ですが、大丈夫です。彼女がいなくとも、アルバトリオンを討伐してみせましょう」
「うむ……いてくれればこの上なく心強いが、彼女は少々頑張り過ぎるきらいがある。休ませることができるなら、こちらとしても吝かではない。気をつけてくれたまえ」
「わかりました」
そうして話し合いを終えて、私たちはドンドルマを発ち神域へと飛行船を飛ばしていた。その間、アカイさんからアルバトリオンについての話を聞くことにした。
「さて、アルバトリオンについて知りたいのだったな?」
「はい、お願いします」
「知ってのとおりアルバトリオンは禁忌のモンスターに名を連ねる存在であり、"暗黒の王"、"闇夜に輝く幽冥の星"、"黒き光を放つ神"など多種多様な異名を持ち、『神をも恐れさせる最強の古龍』と謳われている。あらゆる天災を操り、あらゆる生命を奪う『破壊の象徴』とされている存在だ。
やつの全身は逆さ鱗……即ち、逆鱗で構成されおり、これらで構成された甲殻である逆殻に覆われている。故に、奴の体は直接触れるものを無慈悲に引き裂く凶器であり、逆殻は受けた衝撃を跳ね返し、攻撃そのものを破壊する不壊の鎧……なぜこのようになっているのかは、未だ解明されていない。奴の特徴は他にも……そうだな、角にある。
数多の角が折り重なり、二股に分かれて形成された異形の大角……天を貫くかのように伸び、天を統べるほどの力を持つことから『統天角』と呼ばれるこの角は、その身に宿す桁外れの自然の力を操るための制御器官ともされ、不気味な紫光を放ち、巨大な龍属性エネルギーを滾らせるという。
そして……奴は不安定かつ規格外の規模で生成される、あらゆる属性エネルギーを内包している。こちらの大陸で確認されている火、水、雷、氷、龍の五属性すべてを操ることが出来るのだ。本来、モンスター一体が扱える属性エネルギーは基本的に一種類のみ……だが、やつはこの常識を覆すことができる。……もっとも、それはポケモンも同じことだがな」
ポケモンも同じ……?……あ!
「……!そうか、こちら側では操れる属性は原則一つまで……けど、ポケモンたちは……」
「あぁ、複数の属性を操ることが出来る」
「まるで安値でたたき売りされているアルバトリオンのバーゲンセールですね……」
「さらには時空の裂け目によってヒスイの影響を受けた技巧種モンスターも、同様に複数の属性を操ることが出来る」
「すると、時空の裂け目はさしずめ量産型アルバトリオン製造機ってところですか……どうりで龍歴院の皆さんが頭を抱えるわけです。余計なことをしてくれましたね、ミラボレアスは」
「あぁ、本当に……本っ当にいらんことしかせんな、あいつは……!」
アカイさん……心底腹立つとばかりに苛立ってる。禁忌のモンスター絡みとなると、アカイさんも繕ってる余裕がなくなるのかな……?
「……続けよう。アルバトリオンはそれぞれ属性を活性化させる特殊な形態……『活性変化』と呼ばれる能力を持っている。『炎活性状態』、『氷活性状態』、『龍活性状態』の三つの活性状態で構成されている。ハンター達が持ち帰った情報をまとめると、炎活性時にはほのおタイプとみずタイプ、氷活性時にはでんきタイプとこおりタイプと同じ耐性を得ることがわかった。……ただし、弱点は克服されているようだな」
「炎活性時にはほのおタイプとみずタイプ、氷活性時にはでんきタイプとこおりタイプの耐性を得る……けど、弱点は克服している。つまり、氷活性時にじめん技やはがね技で攻撃しても効果は抜群にならず、またどちらの活性時でもいわ技で弱点は突けない、ということですね」
「さすがだな、ショウ。もうそこまで理解したか」
……想像の何十倍も厄介だ。そんな能力があるだなんて……!
「アルバトリオンのタイプとしては……おそらく、ドラゴン単タイプ。そこへ各活性状態の耐性を合わせると……ふむ、こんなところか」
そう言ってアカイさんは紙に筆を走らせると、私に見せてくれた。そこには、アルバトリオンのタイプ相性が簡潔にまとめられていた。
「その紙をよく見て、タイプ相性を把握して臨んでくれ。他のトレーナー諸君にも、既に同じものを配布している」
「はい、完璧に頭に叩き込んでおきます」
「うむ」
紙に目を走らせ、そこに記されたタイプ相性の把握に全力で望む。……しかし、タイプには弱点と耐性があるにも関わらず、弱点は無視して耐性のみを得るなんて……これが、禁忌のモンスターの力というやつなのだろうか……。特に龍活性時にはほのお・みず・でんき・こおりすべてのタイプの耐性のみを得ることになるため、よく使われるメジャーなタイプの攻撃は通じにくいと考えていいだろう。
その代わり、それら全てとは無関係なタイプ……アルバトリオンで言えば、ノーマル・どく・エスパー・ゴースト・あくの五タイプはどの活性状態でも無関係にダメージを与えることができる……積極的に活用していいだろう。あとは……弱点を突くことはできなくても耐性がないタイプ……かくとうタイプといわタイプも積極的に攻撃に使えそうだ。特にジンオウガはかくとうタイプ持ち……タイプ一致で高い威力が見込める。しっかりと念頭に置いておこう。
すべての属性を操る古龍……そうなると、18タイプ全ての技が使えると想定しておいて損はないだろう。自分のポケモン……モンスターたちが何に弱いのか、しっかり記憶して対応していかないと。体質的に効果がない技は、仲間を庇ったりするうえで役に立つし、アルバトリオンが使う技を、その一挙手一投足から予測して行動しないと。
「……フッ」
「……?アカイさん、どうしました?」
今、アカイさんが小さく笑ったような……そう思って尋ねてみると、アカイさんは微笑ましそうに笑みを浮かべながら話してくれた。
「いや、なに。……君は、実に戦士に向いているなと思ってな」
「戦士?」
「あぁ。タイプ相性を把握していたのだろうが……その時の君は、戦場に赴かんとする戦士の顔をしていた。自らの寿命が迫る中でそのような顔を出来る人間はそういないものだ。多少なりとも、不安が顔に出るのは仕方がないだろうが……君の場合、その様子が一切なかったものでね」
「クロノも言ってましたからね……黒龍の呪いは、マイナス要素にしかならない感情によって増幅すると。だから、彼の忠告に従ってプラス思考で行こうと思ったんです。その中でも、今この状況に最適なプラス思考……即ち、闘争心を掻き立てているところです。
どうやって戦おうか?どうやって攻略しようか?弱点は?使用技は?……戦いに関して考えている間は、マイナス要素なんて考えてる余裕はないです。この胸の内の闘争心が消えない限り、私の心は決して折れません。これが、私なりに考えた黒龍の呪い対策です」
「……フッ、ハハハハハッ!!素晴らしい……あぁ、素晴らしいなショウ!やはり君でなければならない……黒龍と相対し、そしてこれを打倒する者は!君以外に誰が居る……もはや私自身、君以外には考えられないよ。君ならば必ず、黒龍ミラボレアスを倒すことが出来る!この私が保証しよう!!」
「あはは、そんな大袈裟な……けど、我らが知恵袋のアカイさんのお墨付きなら、本当に勝てそうな気がしますよ」
「そう言っていただけて光栄だよ」
私の決意を聞いたアカイさんはとても楽しそうに……そして、とても嬉しそうに笑い声を上げると、必ずミラボレアスに勝てると、そう言ってくれた。アカイさんに言われると、こんなにも心強いことはない。アカイさんのお墨付きとあって、自然と私も笑みが浮かんだ。
「……そのためにも、まずは……」
「あぁ……必ずやアルバトリオンを倒し、君の呪いを解こう。私もシロも、協力は惜しまぬよ」
「お願いします」
ちょうどアカイさんとの話が一区切りついたタイミングで、ニールさんが姿を現した。……ひょっとしたら、待っていたのかもしれない。
「二人共、ちょうど良かった。神域に着いてからのことを話そうと思ってたんだが……」
「構わない、ちょうどこちらも話に区切りがついたところだ」
「はい。ニールさん、作戦会議ですか?」
「そんなところだ。早速行こう」
ニールさんの案内で船内に入っていく。ちょうど全員が集まっていたようで、私たちが最後だったようだ。
「……さて、神域に到着してからの行動について、話し合おう。俺としては全員でアルバトリオンに挑んでもいいんだが……ショウに残された時間を考えると、アルバトリオンとの戦闘を避けて滅龍石を確保しに行く必要も考えられる」
「そこで、アタシとニールさんで話し合った結果、ひとまず二手に別れて行動することにしましたわ」
二手……ということは、アルバトリオンとの戦闘組と、滅龍石確保組、かな。
「内訳としては、まず滅龍石を確保する者……これは、シロちゃんとエイデンに任せたい。そして、二人の護衛のためにショウたちトレーナーからポケモンを借りたいんだ」
「ポケモンはアタシ達が知る既存のモンスターよりもずっと小柄……なれど、その力は下手な中型モンスターよりも強力と聞きましたわ。そこで、滅龍石を奪還し、飛行船へと運ぶ作業を、ポケモンにお願いしたいのですわ」
「ポケモンへの指示はシロちゃんに任せる。エイデンは彼女を守ってくれ」
なるほど、理に適っている。シロちゃんは祖龍の巫女を勤め、リオレイアを従えているとはいえ見た目は幼い少女そのものだ。そんな彼女を出来るだけ戦場から遠ざけたいと考えるのは、さすがは大人といったところだ。そして、その護衛に貴重な戦力であるハンターを使うところも、用心に用心を重ねてのことだろう。
……すごいなぁ、私だったらアルバトリオンを最速で倒すことしか考えられなかった。これが、ハンターなんだ……。
「シロ」
「……ん、わかったわ。よろしくね、エイデンお兄さん」
「あぁ、君のことは俺が全力で守るっスよ。アカイ殿も、安心して任せてください」
「うむ、シロを頼むよ」
シロちゃんは最初、渋っていたのか即答しなかった。けど、アカイさんに促されたことでようやく首を縦に振った。
「それじゃ、忘れないうちにモンスターボールを預けておくね」
「……ショウ、そのボールはダイケンキの……」
「そりゃあ、シロちゃんを守るなら最高戦力を渡さないとね!」
「……アハハ!ありがとう、ショウ!」
みんなが相棒ポケモンを預ける中、私がシロちゃんの護衛にと託したのはダイケンキ……それと、積荷の運搬用にガブリアスとゴウカザルも預けておく。これだけいれば、運搬も護衛も十分だろう。
「では、残りのメンバーでアルバトリオンと戦うんですね?」
「あぁ。積荷の奪還が成功すれば、エイデンとシロちゃんのリオレイアも参戦できるはずだ。そうすれば、あとは総力を持ってアルバトリオンを討伐するのみ!
討伐が確認され次第、ショウは積荷とともにメゼポルタへ直帰だ。……そのためにも、ショウはリオレウスをなるべく温存するように。いくら体力を回復できる道具があるとはいえ、使う時間も惜しむくらいのつもりで行かないとな」
「うっ……は、はい」
さ、先に釘を刺されてしまった……今回のアルバトリオン戦で、私はジンオウガもリオレウスもどちらも投入するつもりでいた。それだけに、ニールさんからの指摘に私は思わず言葉を詰まらせてしまったのだ。道具を使う時間も惜しむ、か……そうかもしれない。それくらいのつもりでいないと、最悪の場合間に合わないかもしれないと……。
「幸いにして、俺もネネくんもアルバトリオン討伐の経験がある。技巧種化したことでどのような技を使ってくるかはわからないが、俺たちが知っている限りのアルバトリオンの攻撃手段や行動パターンを教えておこうと思う」
それから、ネネさんが作ったのだろう資料がいくつか手渡された。そこには、アルバトリオンの攻撃手段と行動パターンが詳細に書き込まれていた。これはありがたい……!
「……さて、俺たちが懸念すべきことは、技巧種化したアルバトリオンが使ってくる技の数と種類だ。そのために、今度はトレーナーのみんなの力を借りたい」
「……私たちだって、ポケモンたちが使える技の全てを把握しているわけじゃありませんよ?」
ハンター組が何を要求しているのかを察した私は、あらかじめ伝えておかなければならいことを伝えておいた。ポケモンは伊達に"不思議な生き物"とは言われていない……全ての技の把握など、それこそポケモン博士の分野だ。
「構いませんわ。むしろ、アルバトリオンならどんな技を使ってくるのか、それがどんな技なのかを教えてくださいな。予想でも一向に構いません、今は些細な情報でも必要ですから」
「……分かりました。この会議の後、トレーナーで集まって予想される使用技を可能な限り書き出します」
「お願いしますわ」
こうして会議終了後の予定も立てつつ、対アルバトリオン戦に向けた様々なシミュレーションをディスカッションしていく。移動中は可能な限り、戦闘シミュレーションは欠かさないようにしよう。
「今回アルバトリオンが出現した神域には、拘束用バリスタが残されている。可能なら、積極的に使っていこう。……それと、『エスカトンジャッジメント』についても説明しないとな」
「エスカトンジャッジメントですの?」
ネネさんは初めて聞いたのか、首をかしげている。なんだろう、アルバトリオンの大技か?
「そうか、ネネくんは知らないか……。エスカトンジャッジメントとは、アルバトリオンが持つ最大にして最強の大技……無策で挑めば全滅は必至の最終奥義だ。
エスカトンジャッジメントはアルバトリオンが龍活性状態から別の活性状態へと移行する際に使用される技……いや、行動だな。龍活性状態から移行するときのみにしか使われないのだが、凄まじい勢いの属性エネルギーの衝撃波を放ちフィールド全域に途轍もないダメージを叩き込んでくるんだ。
エスカトンジャッジメントの対策としては、アルバトリオンに属性攻撃を当てることだ。炎活性時には氷属性を、氷活性時には火属性をぶつけるといい。タイプ相性ってやつを考えれば威力を半減されてしまうかもしれないが……ダメージを与えられずとも、アルバトリオンの属性を抑制するという意味では、十分に効果がある。だから、ダメージを与えられずともエスカトンジャッジメント対策のために火と氷による攻撃は積極的に行って欲しい」
ふむふむ……ダメージとは無関係に、エスカトンジャッジメントによるダメージを抑えるためには攻撃が必要、と。
「特に、ネネくん。剣士はともかくガンナーは属性弾によって効率的にアルバトリオンの力を抑制できる……この点では、君が一番重要となる。期待するぞ」
「えぇ、お任せあれ。ガンナーの真髄を、とくと御覧じくださいな」
「エイデンにも、そのためにヘビィを持ってきてもらった。なるべく早い合流を期待しているよ」
「あぁ、任せとけ!」
「……では、本日の対煌黒龍対策会議は終了する。各々、神域到着まで英気を養ってくれ。また、もし話し合いが必要ならいつでも掛け合ってくれ。こちらもいつでも応じる所存だ。以上、解散!」
こうして、第一回対煌黒龍対策会議は終了した。……なにげにアカイさんが議長役を務めなかったのは珍しいな。
移動中、何度か対策会議を開いたり、アルバトリオンが使用すると思われる技の予想表をトレーナー総出で作成したり技の効果や内容を説明したりすること三日……周囲の空気が、突然豹変したのを感じ取った。
「……この、感じは……」
「あぁ、わかるか。……神域が近づいてきている」
「神域……」
「神域というのは特定地域を指す言葉ではない。具体的には、アルバトリオンが出現して居座った場所と、その周辺地域を指す言葉だ。……アルバトリオンが持つ属性エネルギーが周囲の環境や天候にも影響を与えるせいで、人が踏み入ることが難しくなることから、そう名付けられたのだ」
アカイさんが説明してくれたとおり、神域は炎が舞っていたり落雷が起きたり、かと思えば吹雪いていたりととにかくもうめちゃくちゃだった。今も限界ギリギリまで高度を下げて飛行しているけど、それでもまだ危ないくらいだ。
「そろそろ着陸したほうがよさそうだ……。準備はいいか?」
「もちろん!!」
「これから挑むは最大にして最強の脅威……古龍種。その中でも特に危険な禁忌のモンスターだ。古龍級生物など比ではない、身の毛のよだつような恐怖と戦慄が君を待ち受けているだろう」
「それでも勝ちますよ。……生きて迎える明日を、掴み取るために!!」
待っていろ、アルバトリオン……私はお前を乗り越えて、明日を手に入れてみせる!!
――ショウ 余命4日
……あれ、アルバトリオンが出てこなかった、だと……?
えっと、すみませんでした!アルバトリオン戦、次回から開幕です!
その前にアルバトリオンのタイプ相性を……えいっ
アルバトリオン
タイプ:※ドラゴン
※特性「活性変化」によってタイプ相性が変わる
特性:活性変化
戦闘時の状況に応じてタイプ相性が変化する。
通常タイプのドラゴンに加えて炎活性時にはほのおとみず、氷活性時にはでんきとこおりのタイプの相性が参照される。龍活性時にはすべて適応される。この時、「効果は抜群」は参照されない。
炎活性 ドラゴン(・ほのお・みず)
弱点 火:× 水:○ 雷:△ 氷:◎ 龍:△
四倍:なし
二倍:なし
半減以下:みず、でんき、くさ、こおり、むし、はがね
こうかなし:ほのお
等倍:上記以外全て
↓ ↑
龍活性 ドラゴン(・ほのお・みず・でんき・こおり)
弱点 火:△ 水:△ 雷:△ 氷:△ 龍:○
四倍:ドラゴン
二倍:なし
半減以下:ほのお、みず、でんき、くさ、こおり、ひこう、むし、はがね
こうかなし:なし
等倍:上記以外全て
↓ ↑
氷活性 ドラゴン(・でんき・こおり)
弱点 火:◎ 水:△ 雷:○ 氷:× 龍:△
四倍:なし
二倍:フェアリー
半減以下:みず、でんき、くさ、ひこう、はがね
こうかなし:こおり
等倍:上記以外全て
……誰がこんな化け物と戦いたいってんだ、正気を疑う(←オイ作者)