ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

85 / 125
ようやくヒスイに帰ってきたショウたち!

そして、あの男との再会も……。


伝説の狩人

時空の裂け目を通って、ついに私たちはヒスイ地方に帰ってきた!!さらにシズカさんをはじめとするハンターの援軍まで派遣してもらって……これなら、ミラボレアスと戦闘になっても負ける気がしない!!

……と、その前にコトブキムラに帰らないと!私達は原野ベースを通過してそのままコトブキムラを目指して歩き始めた。

 

「ふむ……すこしばかり肌寒いか?北部に位置する場所なのかな」

 

「ここがショウ達の故郷のヒスイか……」

 

「姉様姉様、もしも寒かったらアタシが人肌で……」

 

「いらん(ここがヒスイ地方……世界観がガラっと変わったって感じだ。やっぱりモンハンとポケモンとじゃ次元が違うな……)」

 

「くぅ、姉様は今日も鋭い……!」

 

……いや、順応早いな。さすがはハンター。

そのまま歩き続けて、夕方頃になってようやくコトブキムラが見えてきた。表門には、相変わらずデンスケさんが門番を勤めていた。

 

「デンスケさーん」

 

「ん?……お、おぉ……?おぉーっ!!」

 

デンスケさんも最初こそは「誰だ?」言わんばかりの反応だったが、徐々に近づくにつれて私たちだとわかったらしい。腕がちぎれんばかりにブンブンと手を振ってくれた。

 

「帰ってきたのか!おかえり!」

 

「ただいまデンスケさん!テル先輩も一緒ですよ!」

 

「お久しぶりです、デンスケさん!」

 

「オレたちもいるぜ」

 

「うーん、久しぶりのコトブキムラだぁ」

 

「いやはや……帰ってきた、とやっと実感できますね」

 

そうして話していると、ギンガ団本部の方から誰かが走ってきた。あれは……ラベン博士!!

 

「ショウくん!テルくん!!」

 

「「ラベン博士!」」

 

「お帰りなのですよ、ショウくん!テルくん!」

 

「ただいま戻りました!ラベン博士!!」

 

「何か、変わったことはないですか?」

 

「いえいえ、変わったことなんて!……ありました!」

 

「たった今、思い出しませんでした?」

 

「そ、そんなことないですよ……?」

 

ス~ッ、と目を横に逸らす博士ェ……もう、別に怒ったりなんてしないのに。

 

「何があったんですか?」

 

「……えっと、その前に後ろの物々しい方たちは?なんだかヒューイさんと似た雰囲気を感じるのです」

 

「……!?ヒューイ……?今、ヒューイって言いましたか!?」

 

「え、え?」

 

「し、師匠……?」

 

ラベン博士の口から出てきた知らない名前……その名前に、シュラークさんが過剰に反応していた。

それだけじゃない。なぜかその名前を聞いたニールさんとネネさんも大きく目を見開いているし、シロちゃんに至っては頬を紅潮させて胸に手を当てていた。……あれ、シロちゃんのこの反応って……まさか?

 

「シ、シズカ!まさか、知らないのか……?」

 

「……えっと、はい」

 

「まさか!?姉様ほどのお人が、"ドンドルマの英雄"を知らないなんて!」

 

「え、"ドンドルマの英雄"!?待って、"ドンドルマの英雄"のことは知ってるけど個人名までは知らなかった!!」

 

「なんだ、そういうことか……」

 

シズカさん達も知ってるんだ……けど、"ドンドルマの英雄"か。あの大きな都市の英雄となると、相当な経験を積んだベテランハンターってことかな。

 

「突然すみません。私はシュラークと言います。貴方が仰ったヒューイという男は、我々が知ってる人物かと思われます」

 

「そうなのですか!ヒューイさんが元々着ていた鎧も、皆さんのソレとどことなく似通っていますし、もしやと思ったら!」

 

「今、その男はどこに……」

 

「えぇっと、彼は今天冠の山麓に……と、とにかくこちらについてきてください。ショウくん、テルくん、団長のもとへ行きましょう!」

 

「そうですね、団長にはちゃんと報告しとかないと……」

 

私も頷き、同意を示したことで全員で団長の元へ向かうことに。……結構な大人数で押しかけちゃうけど、大丈夫かな?

久々に見たギンガ団本部の赤レンガ。こうして見ていると、本当に帰ってきたんだなという実感がますます湧いてくる。流石に大人数だったので、調査隊室で話し合いをすることに。ハンター達は武器を玄関ホールに置いてきている。

 

「うむ。ショウ、テル。よくぞ無事に戻った。セキ、カイ、そしてウォロ殿。ショウとテルの面倒を見ていただき、誠に感謝する」

 

「いやいや旦那、むしろ面倒かけちまったのはこっちのほうだって」

 

「うん、ショウさんを助けるつもりが、逆に助けられちゃうこともあったし」

 

「呪いをものともしない力強い姿に、ジブンたちも奮い立ちました」

 

「……そうか」

 

セキさん達の言葉を受けて、デンボク団長はすこしばかり目を閉じ考えに耽ると、目を開けてからそう呟いた。

 

「そして、貴君らが時空の裂け目の向こう側から来た者たち……ハンターか」

 

「お初にお目にかかります、デンボク団長殿。我らはショウに呪いをかけた邪悪な黒龍を討伐せんがために遣わされた者。かの龍はいずれ、ヒスイをはじめとするこの世の生ける者を根刮ぎ食い尽くす……それに抗するため、我らはこうして馳せ参じた」

 

「黒龍……ミラボレアスか。かつて、貴殿らと同じハンターが討伐したというが……やつは不死身なのか?」

 

「我々とて、ミラボレアスの全てを知り得ているわけではありません。だが、分かっていることは一つ……奴は、生きる者達の敵であるということだけ」

 

「ふむ……あいわかった。ショウ。帰還早々に悪いが、博士から仔細は聞いているか?」

 

「……いえ、話はそこそこにこちらに来たので、まだなにも」

 

「そうか……では、シマボシ」

 

「はい」

 

団長の隣で直立不動だったシマボシ隊長が会話に加わった。

 

「ショウ。お前が時空の裂け目の向こうへと向かってからしばらく後、天冠の山麓で異変が起こり始めた。霧の出た月夜に限り、野生ポケモンが何者かに次々と襲撃を受けているという報告が上がったのだ」

 

「……まさか、巨大ポケモンですか」

 

「察しがいいな、その通りだ」

 

そんな……時空の歪みは全部消えて、巨大ポケモン……もとい、モンスターはこちらの世界に来れないのでは……いや、もう一つだけあるな。

時空の裂け目……コトブキムラに来る途中、天冠の山麓の方へ目を向けると見えた、あの裂け目。あの裂け目が開いているということは、あそこからモンスターが紛れ込んだってことか……?

 

「既に何人もの調査隊員を派遣したが、結果は芳しくない。それどころか、毒を含んだ棘を遠方より放たれ、負傷者が多発した。現在は貴様が黒曜の原野で拾ったあの男が調査に乗り出している。既に交戦経験もあり、少し前にも『今宵、仕留める』と言って鎧を着込み、出て行ったばかりだ」

 

「そうですか……」

 

「(霧の出た月夜限定……ルナルガか。くっそ面倒くさいやつじゃん……)」

 

私が拾ったあの人……シズカさん達が"ドンドルマの英雄"と呼ぶ人がどれくらいかはわからないけど、技巧種化したモンスターの狩猟は容易ではないはず……。だったら……!

 

「場所は天冠の山麓ですね?」

 

「そうだが……行くのか?」

 

「もちろん!」

 

私が現場に向かう意志を示すと、ハンター組から「えっ?」と言わんばかりの顔で振り向かれた。……なんで?

 

「あの……どうしました?」

 

「いや、行くのか?わざわざ?」

 

「"わざわざ"?どうして?」

 

「だって、あの"ドンドルマの英雄"ですのよ?相手が何者であれ、苦戦を強いられることはないかと」

 

「あぁ、あの人の強さは尋常じゃない。文字通り、俺たちとは次元が違う」

 

「……かえって足を引っ張るかも知れない」

 

「シ、シズカさんまで……」

 

そ、そんな……そんなに強い人なら、行かないほうがいいのかな……?

 

「だが、奴は既に十回以上交戦して未だ仕留めきれないでいる。今回はかなり自信があるようだったが、果たして……」

 

「む……かの"ドンドルマの英雄"が十回以上の交戦で仕留めきれないのか……」

 

「(と、いうことは……MH2の主人公はルナルガの狩猟経験はゼロということ……。いや、それでもルナルガと十回以上戦って生き残ってる時点で結構ヤバいね)」

 

「ほら、やっぱり苦戦してるじゃないですか!手数は大いに越したことはないかと!」

 

「だがなぁ……」

 

「とにかく、私は行きます!団長、隊長!いいですか!?」

 

そんなに厳しい相手なら、むしろ私たちの力が必要かも知れない!そんな思いで団長達に声を掛ければ、彼らは一様に頷いていた。

 

「うむ……では、ショウ。ひとまず(・・・・)頼む」

 

「はい!(ひとまず……?)」

 

団長の言葉に引っかかりを覚えるも、私は力強く頷いて調査隊室から飛び出した。

 

「(よろしいのですか、団長。あの巨大ポケモン、初見でどうにかなるものでは……)」

 

「(だからこそだ。ショウには言葉ではなく、直接その目で奴の脅威を知ってもらいたい。……後に必ず、彼と共に勝利するために)」

 

「(……了解しました)」

 

待っててくださいよ、"ドンドルマの英雄"さん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオレウスの背に乗って全力で飛べば、ヒスイ内であれば一日もいらない。私が出発したときはもう日が沈んでいたが、リオレウスに頼んで思いっきり飛んでもらったのでほとんど時間を空けずに山頂ベースに到着した。

 

「着いた、と……」

 

それにしてもすごい霧だ。オオナズチが吐き出す霧と、どっちが濃いかな。

 

「あれ?ショウ?」

 

「……あ、ヒバキ……じゃない、ツバキさん」

 

「おい今誰かと名前を間違えなかったか?」

 

「気のせいです」

 

声をかけてきたのは、天冠の山麓でキャプテンを務めるツバキさんだ。危ない危ない、うっかり間違えてしまった……まさか蜘蛛と間違えたなんて言えないので、黙っておくことにしよう。

 

「久しぶりじゃないか。どうしてここに?」

 

「どうしてもなにも、ここに巨大ポケモンが出現したと聞いたので。調査と、可能なら捕獲をと」

 

「え……君、ここにいる巨大ポケモンがどんなやつか、聞いてきたのか?」

 

「霧の出る月夜にしか出てこないことと、毒を含んだ刺を飛ばしてくることくらいですが……」

 

「えぇ?たったそれだけ!?君、今向かって行ったら間違いなく死ぬよ!?」

 

む……ツバキさんにここまで言われるとは。けど、情報が足りていないのは事実だ……ツバキさんからなにか聞き出せないかな?

 

「そう言うツバキさんは、何か知っているんですか?」

 

「……まぁ、アイツを捕獲しようとしているギンガ団員がいるからね、彼から色々と話は聞いているよ。そいつはね、姿を消す能力を持っているんだ」

 

「姿を、消す……!?」

 

「そう!いわゆる透明化、ってやつさ。その彼も、何度も何度も奴に挑んでいるんだが、いつも時間切れになってね……朝が近づくと、奴は逃げていくんだ。そのせいで、未だに仕留めきれていないのさ」

 

姿を消す能力があるのに、朝になると逃げていく……?月夜であることとなにか関係があるのかな……。

 

「とにかく!今夜も彼は奴に挑むつもりだ。だから、ひとまず君はここに残って……」

 

「ありがとうございました、ツバキさん!」

 

「……って、おーいっ!?」

 

姿を消すことと刺を飛ばしてくるということは、透明になったところで遠距離攻撃を仕掛けてくるということ!それに、透明化しても移動の痕跡は残るだろうから、足元にもしっかり気を配っておかないと!

私はジンオウガを繰り出し、霧の濃い夜道を進んでいく。果たして、そこに待ち構えているのは何者なのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あわわわ……た、大変なことになった……!」

 

「おーう、ツバキー。どうした、顔色悪かねぇか?」

 

「ああ!ヒューイ!大変だ、実は……!!」

 

「……なんだと?チッ、予定変更だ!俺も行く!!」

 

「た、頼んだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大ポケモン捜索からしばらく……正直、見込みが甘かったことを痛感していた。

 

「……ないね」

 

「ワン」

 

「先へ進もう」

 

「ワウン」

 

そこら中に散らばる棘は確認できたが、足跡が全くと言っていいほど見つからない!おまけに霧も濃いから、しゃがみこんでしっかり見ないと見えにくいったらない。……この状況下でも相手はこちらを認識していて、透明化できて遠距離攻撃もできるんだよね……なるほど、これは確かに手ごわいかも知れない……。

 

「ジンオウガはどう?」

 

「クゥン……」フルフル

 

ジンオウガの方も芳しくないみたい。相手は気配遮断が相当巧いのか、ジンオウガでもその気配を探るのは容易ではなかった。

 

「(マズイね……舐めていたわけではなかったんだけど、相手がこれほど姿を見せてこないとは……!それに、割と早いうちに手を出してくると考えていたんだけど、その予想も外れた……向こうはこちらを襲撃するのに適切なタイミングを理解している……!一切油断ができないな)」

 

特に、こちらの予想と相手の実際の行動の乖離が大きすぎたのもある。当初、私は縄張りに侵入してからすぐに襲って来るものだと考えていた。だが、いつまで待っても相手は姿を見せなかった。それに痕跡となる足跡もほとんど見つからない。

いつ襲いかかってくるのかわからない、予測がつかない……その緊張感から、分かっていても焦ってしまう……!

 

「……行こう……」

 

「ワン」

 

私とジンオウガは再び歩き始める。……あ、そうだ。

 

「そういえばジ――」

 

「ワオゥンッ!!」

 

――ドスッ!!

 

「……え」

 

私がジンオウガの方へ振り返った、その直後。突然、ジンオウガが素早く身を翻して私の前に立つと同時に、その体に無数の棘が突き刺さった。それと同時に、ジンオウガが毒に侵され、苦しげに顔を歪めた……うそ、そんな……!タイミングが絶妙すぎる!?全く気がつかなかった!!

 

「ジ、ジンオウガ……!?」

 

「グッ、ウゥ……!」

 

「くっ……ジンオウガ、はどうだん!!」

 

「ワオォンッ!」

 

回復をする余裕はない……ならば、必中技で動きを見る!ジンオウガが刺が飛んできた方向へはどうだんを放つと、はどうだんは向かって右に向かって方向転換した。それから不規則に軌道を変えながら飛んでいく……なら、もう一つ!

 

「ジンオウガ!はどうだんの向かう先にもう一度、はどうだん!」

 

「ワゥン!」

 

ジンオウガがもう一度はどうだんを放ち、挟み撃ちのような形にする。すると、突然何かが姿を現すと同時に一回転し、はどうだんを打ち消した!

 

黒と、月白色に輝く背面の体毛。

透き通るような美しさの刃のような翼。

鞭のようにしなり揺れる細長い尻尾。

 

「ニ"ャア"ア"ア"ォ"ッ!!」

 

見たことのない巨大ポケモンが、こちらに向かって牙を剥いてきた。こいつが、姿を消す巨大ポケモンの正体……!けど、正体を明かしたなら好都合!!

 

「ジンオウガ!かみなりパンチ!!」

 

「ワオオォンッ!!」

 

一気に駆け出したジンオウガはかみなりパンチで相手に殴りかかる。だが、相手も素早い動きでジンオウガの攻撃を回避しつつ、またしても姿を消してしまった!

 

「くっ……ジンオウガ、でんげきは!!」

 

「ウオオォンッ!!」

 

ジンオウガのでんげきはは消えた相手に向かってまっすぐ進み、私の背後で命中した!……いや、これは……!?

 

「無傷……まさか、体質!?」

 

「ニ"ャア"オ"オ"ッ!!」

 

モンスターは腕を一振りすると、そこからエアスラッシュを放った。ただ、普通のエアスラッシュが空気の刃による弾幕なら、そのモンスターが放ったのは巨大な一陣のエアスラッシュだった。

 

「くっ……アイアンテール!」

 

「ゥワォン!」

 

私を飛び越え、着地したジンオウガがアイアンテールでエアスラッシュを消した……その直後!モンスターが尻尾を振るい、何かを飛ばした!あれは、棘!?刺はジンオウガの顔を掠めて――

 

「ぐぁっ!!」

 

「ワゥン!?」

 

バキッ!!と何かが壊れるような音と共に私に直撃した!その勢いで私の体は吹き飛び、岩壁に激突した。うっ……い、痛い……。

 

「ぐっ……ジ、ジンオウガ……!メガ、ホーン……!!」

 

「グッ……!ワオオォンッ!!」

 

私の元へ駆けつけようとしていたところ制止させ、技の指示を出す。ジンオウガも、グッと堪えるように足を止め、素早く反転して角を突き出した。その直後、振り下ろされたモンスターのアイアンテールとぶつかり合い、お互いに弾かれあった。……うっ……痛みが、きつい……意識を保つので精一杯だ……。

と、ここでモンスターが動いた。でんこうせっかを発動すると、ジンオウガの脇をすり抜けた。まずい、狙いは私だ……殺られる……!

 

「ぬうううぅぅんっ!!」

 

と、その時だ。私に向かってくるモンスターの横合いから、誰かが走りこんできてその背に背負った太刀を振り下ろした。モンスターは太刀を振り下ろされた左足を咄嗟に引いて太刀を躱し、逆に尻尾を振るって反撃した。謎の人物(というか、私が保護したハンターだ)は尻尾を一度飛び越え回避すると、直後にバック宙をした。その真下を、振られた尻尾が戻っていく。

さらにモンスターは右足の刃でハンターに切りかかる。ハンターはその刃を躱すと、起き上りに太刀を振り上げ逆に刃に切り込んだ。モンスターは大きく後退すると、尻尾を高く振り上げてつつ振り回している。そして、尻尾を鋭く振るって刺を飛ばしてきた!

 

「舐めんな、青二才がぁ!!」

 

ハンターはそう叫ぶと同時に駆け出した!太刀を振るい、刺と叩き落としながらも足を止めず、モンスターに接近していく!そのまま太刀を振り下ろすが、モンスターは跳躍しつつまたしても姿を消してしまった!

 

「甘ぇ!!」

 

ハンターはどこからともなく大きな針と取り出すと、それを見もせずにどこかへ投げつけた。すると、針は空中で突然停止してしまった。……いや、グサッ、という音も聞こえてきたから、刺さったんだ!嘘!どうしてわかったの!?

 

「コイツはお釣りだ!」

 

さらにハンターが何かを投げた直後……炸裂し、閃光が広がった!閃光玉だ!

 

「ニャヒイィンッ!?」

 

モンスターは眩しそうに目を閉じ、たまらず姿を現した!

 

「レントラー、こおりのキバ!エルレイド、れいとうパンチ!」

 

「トラー!」

 

「エレー!」

 

さらにハンターさんが投げたモンスターボールからレントラーとエルレイドが飛び出し、モンスターの前足にそれぞれこおりのキバとれいとうパンチを繰り出し、氷漬けにした!そして、ダメ押しとばかりにもう一つボールを投げた!

 

「エンペルト!力強く、れいとうビーム!!」

 

「エン!トォーッ!!」

 

出てきたエンペルトが力業れいとうビームを放ち、たちまちモンスターを氷漬けにしてしまった!けど、凍ったそばから罅割れ始めた……なんて抵抗力……!

 

「よしっ……退散!」

 

ハンターは私に近づくとそのまま俵担ぎで持ち上げるとそのまま撤退を始めた……って、ちょっと!

 

「と、止めは……!」

 

「バカ野郎がっ!オメェさんの安全無事が最優先だ!!」

 

「でも……!」

 

「生きている限り、奴には何度でも挑める!けどな、死んじまったらどうにもならねぇ!!だったら今は退いて、次の機会に仕留めりゃいい!生きて帰りゃあ、また来れる!」

 

「くっ!……ジンオウガ……!」

 

「ワン!」

 

彼の言い分は理解できる。動けない隙を突き、トドメを刺せるならそれに越したことはない……けど、それは私の負傷を押してまで成すことではないと言う。……今回は、完全に私に落ち度がある。それがわかったから、私はジンオウガを呼び戻した。

悔しい……畜生、これは私の負け、私の失敗だ。普段はアカイさんがいたから、挑む前に話を聞けたんだけど、そのアカイさんは不在……それすら失念して、初見相手に無謀にも挑むなんて……慢心したか、この馬鹿ショウ!

自分の不甲斐なさに歯噛みしながら、私は大人しくハンターに運ばれていった。

 

 

山頂ベースで、私は怪我の手当てをすることになったのだが……。

 

「そういやお前さん、ナルガクルガの棘を食らったっぽいのに無傷とはな?懐になんか仕込んでたのか?」

 

「え?」

 

そういえば……棘が当たったにも関わらず、刺さるような感覚がなかったような……。私が懐をまさぐると、中から一枚の鱗が出てきた。これは、たしか……。

 

「ほう!火竜の天鱗とはな!そいつがお前さんを守ったのか」

 

「……みたいですね」

 

「……あー、でも天鱗ってたしか……」

 

「え?」

 

ハンターがそう呟くと同時に、私が持っている天鱗が罅割れ、砕け散ってしまった。

 

「あーっ!?」

 

「……天鱗って、過度に力が加わると砕けちまうんだよな。どうやらさっき刺を食らった時の衝撃で限界だったみたいだな」

 

「あぁ……リオレウスからもらった天鱗が……」

 

うぅ……お守り代わりにと思って、こっちに来る時に一旦部屋に寄ってからわざわざ持ってきたのに……。でも、本当に身を守ってくれたんだね……ありがとう、リオレウス。

 

「……さて、天鱗のおかげで直撃は避けられたが、念には念を入れよだ。さぁ、コトブキムラに帰るぞ」

 

「え!?で、でも無事だったし別に私は……」

 

「ばっかやろ、吹っ飛んだ時に岩壁に全身ぶつけてんだろが。こういう時は大人しく、医者に診てもらうのが正解だ。キネさんもなぁ、毎度毎度怪我して帰ってきたら口を酸っぱくして『身の安全を優先して』って言うんだぜ?素直に従いな、女は怒ると怖い……いや、マジで」

 

「あ、あはは……」

 

これは……うん、完全に帰る流れだ。相手は歴戦のハンター……その判断力は私よりもずっと優れている。ここは大人しく従おう……。

結局、シズカさん達の言うとおり私が足を引っ張る形になってしまった。リオレウスの背中に乗りながら反省しつつ、次に挑む時の対策を考えなくては!

 

「おぉー!すげぇー!たけぇー!」

 

考えなくては……。

 

「おぉおぉー、飛行船とはまた違った感覚だなぁー!風を切ってるって感じで気持ちいーぜー!」

 

考え……。

 

「おっ、ありゃコンゴウ集落か。おぉ、グラビモス!うーん、このままもうちょっと飛んでいたいなぁー!!」

 

……まぁ、帰ってからでいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムラに着くまではしゃぎまくってたハンターさん(ヒューイさん。シュラークさんも言ってたね)に思考を中断させられ、私はまるで子供のようにはしゃぐ彼の姿を終始見つめていた。

表門の前に着地し、リオレウスをボールに戻した。そのまま表門をくぐっていくと、ちょうど皆が出迎えに来てくれていた。

 

「あれ、みなさんどうして……」

 

「いや、十中八九、してやられて帰ってくるだろうなと思ってさ」

 

「案の定、でしたわね。姉様が言うには、天冠の山麓にいるのは『ナルガクルガ希少種』とのことですけど……」

 

「ショウ、例の巨大ポケモンだけど……体毛に白い部分があったり、腕の翼が刃っぽかったり、尻尾に刺があったり、姿が消えたりした?」

 

「……はい、全部合ってます」

 

「やっぱりね」

 

「ダメだろ、ショウ。ナルガクルガ希少種を相手に、初見なのに無対策で挑むなんて……」

 

シュラークさんをはじめとして、ハンターの皆さんから口々に言葉をいただいた。うぅ、グウの音も出ない……反省……。

 

「はぁ……いや、帰還が遅れた私が言うのもアレだが、よく挑もうと思えたな、君は……」

 

「アカイさん……」

 

「……で、だ」

 

「?」

 

突然、アカイさんの雰囲気がガラリと変わった。その視線の先には、ヒューイさんが。

 

「おや、お前さんは……」

 

「テメェ……!」

 

「……あぁ、やっぱり。俺、お前さんを……貴様を知っているぞ」

 

「なんでテメェがここに――!!」

 

物凄い剣幕で憤怒の表情を顕にしたアカイさんが、ヒューイさんを睨みつけている。まるで、憎くて憎くて仕方ない、殺したくて殺したくて堪らないと言わんばかりの強すぎる殺意と敵意……!そのままアカイさんがヒューイさんに詰め寄ろうとした、その時だ!

アカイさんのすぐ隣を、シロちゃんが駆け抜けた。そのままヒューイさんに飛びつくように抱きついたシロちゃんは……。

 

「んっ!」

 

「んんっ!?」

 

なんと、抱きついた勢いのまま、すかさずヒューイさんにキスをした!うわぁ、すごい、公衆の面前でなんてことを……!しかも、大人のヒューイさんと子供のシロちゃんが思い切り口と口でキスをしてる……!

 

「んっ、んっ……ちゅ、んぅ……」

 

「んむ、んん……」

 

「はぁ……あむっ、ちゅぅ……れる、ん……」

 

「あむ、あむ……れろ、ちゅ……」

 

……ちょっとまって、キス長い上になんか変な音が――

 

「やめんかぁーーっ!!!!」

 

――と、ここで二人の間にアカイさんが割って入った。そのまま二人を引き剥がすと、ヒューイさんの胸ぐらを掴み上げたではないか。

 

「おいテメェ……なにしてくれてんだコラ……!」

 

「いや、先に仕掛けてきたのはそっちなんだが?」

 

「テメェの運動神経で躱せないわけねぇだろうがよ!?」

 

「んもぅ……アカイったら、無粋ね。どうして邪魔するのよ……」

 

「まずは鏡で自分の姿をよく見たらどうだ……!」

 

「なんだ、嫉妬か?」

 

「テメェはマジで黙ってろ!!」

 

はぁ、はぁ、と肩で息をしながら言葉を荒げるアカイさん……うわぁ、ここまで荒ぶってるのは初めて見た。ムフェトさんとの会話ですら、これほどではなかったのに。

 

「えぇい、クソッ!!この際だ、テメェがなぜここにいるのかは聞かないでおいてやる!!」

 

「そりゃありがたい。俺も、まだこっちに来て一月くらいしか経ってないからな」

 

「知るかよボケが。……えぇい、シロさっさと行くぞ!こんな奴に構ってられるか!」

 

「いけず~」

 

なんか、終始荒ぶったままアカイさんはシロちゃんを引きずるように連れて行ってしまった。

 

「……まさか、"ドンドルマの英雄"に幼女趣味があったとは……」

 

「おいおい、心外だな」

 

「そうよネネ。あれは子供の不意打ちで……」

 

「男にとって女は平等に価値がある。年齢や見目など些事よ、些事」

 

「……ネネ。多分ネネが正しいわ」

 

「姉様……!」

 

ヒューイさんがドヤ顔で持論を述べると、初めはネネさんの意見を否定していたシズカさんも秒で手のひらを返した。いや、ヒューイさん……違うなら違うと、はっきり否定しないと……それじゃ絶対に伝わってないですよ……。

 

「"ドンドルマの英雄"ヒューイ、お目にかかれて光栄の至り」

 

「あー、やめなやめな。そんな堅っ苦しくされるほど、俺は偉いもんじゃねえさ」

 

「だが、貴方が成し遂げた偉業は本物だ。特に、祖龍の討伐……これは、未だ貴方しか成し遂げられていないこと。貴方への敬意は正しいものだ」

 

「……はぁー。じゃあ、しょうがない。それでお前さんが納得するってんなら、素直に受け取ろう」

 

シュラークさんがヒューイさんに敬語で話しかけると、ヒューイさんは露骨に鬱陶しそうに反応した。ふむ、ヒューイさんは堅苦しいのが苦手、つまりフランクな関係を好むと……。

 

「ヒューイさん、初めまして。私はシズカ・ミズハシと言います」

 

「シズカ……?……あぁー!最近何かと話題になる期待の超新星か!俺もお前さんの事は人伝に聞いてたぜ」

 

「そ、そうですか……。それで、ナルガクルガ希少種についてですが……」

 

「あぁ、アイツは希少種か……うん、概ね奴さんの特徴は把握しているが、知っているというのなら改めて聞かせてはくれないか?」

 

「もちろんです。ギンガ団とも、この情報を共有しましょう。本部に行かれますか?お供いたします」

 

「おぅ、頼むわ」

 

「姉様が行くのなら、アタシも!」

 

「お、俺も行こう!」

 

ヒューイさんがシズカさん、ネネさん、ニールさんを伴ってギンガ団本部に歩いて行ってしまった。……私も、報告のために行かないと……。

 

「なんか、その雰囲気だとコテンパンにされたみてぇだな」

 

「セキさん……はい、見事にしてやられました……」

 

「でも、ショウさんが無事で良かったよ。集落に帰る前に、ショウさんの顔を見てからにしようって思ってね」

 

「わざわざお待たせしてしまいましたか……すみません、カイさん」

 

「んじゃ、無事に帰ってきたみたいだし……オレたちも帰るか、カイ」

 

「だね。……それじゃあね、ショウさん」

 

「またな」

 

セキさんとカイさんはそのまま表門を潜り、それぞれの集落へ戻っていった。ところで、ウォロは……。

 

「ウォロ殿なら、あそこ。……なにやら、自分が所属する組織の長に黙ってあれこれしていたことがバレたみたいでね、少しお説教されているよ」

 

「シュラークさん」

 

「俺は後で、シズカあたりにでも話を聞くよ。まずは、ヒスイに流れ着いたモンスターたちの様子を見ておくかな」

 

「それなら、牧場はそちらを真っ直ぐ行った先です。管理人がいるので、声をかけておいてください」

 

「あいわかった」

 

シュラークさんは牧場へ、と……それじゃあ、私もギンガ団本部に行かなくちゃ。

ギンガ団本部の中に入ると、既に調査隊室で報告が行われているところだった。やばいやばい、急がなきゃ。

 

「すみません。ショウ、ただ今到着しました」

 

「うむ」

 

「まったく……帰還早々にさっそく危険を冒すとは。怖いもの知らずも大概にしろ」

 

「うっ……すみません、シマボシ隊長」

 

さ、早速怒られてしまった……これじゃ、向こうで成長してきたっていうのに逆戻りみたい……。

 

「……まぁ、そんなわけであれはナルガクルガの希少種個体ってわけだ。今回は少々不慮の事態で撤退もやむなしとなったが……次で仕留める」

 

「うむ、次の霧夜は三日後と予測された。それまで、十二分に英気を養え」

 

「了解。……でもまぁ、俺よりも英気を養うべき人間が、ここにはいますがね」

 

「む?それは一体……」

 

「まぁまぁ」

 

そう言うと、ヒューイさんはデンボク団長の隣に立っているシマボシ隊長に近づいた。そして……あろうことか、シマボシ隊長に顎クイをしてみせたではないか!

 

「なっ、なにをする!」

 

「ふーむ……隊長殿、寝てないな?化粧で誤魔化しているんだろうが、目元にクマがある」

 

「なっ!?いや、ばかな……どうして気づいて……」

 

「おや、本当だったのか。カマかけただけなんだが、案外かかるもんだねぇ」

 

「き、貴様ッ!?」

 

「シマボシ、真か?」

 

「うっ……はい……」

 

え!シマボシ隊長、寝不足だったの!?嘘……全然わからなかった!だってシマボシ隊長ってほとんどポーカーフェイスみたいなものだし……。

 

「団長殿、あまり責めんでやってくれ。隊長殿は一番の戦力である団員がいなくなったところへ現れた巨大ポケモンに対処するために、寝る間も惜しんで頑張ってくれてたんだからよ。そこはむしろ褒めてやってくれよ」

 

「……うむ、そうだな。シマボシ、ショウの帰還までよく頑張った。後のことは我々に任せ、お前はひとまず休むといい」

 

「だ、団長まで……わかりました……」

 

「おぅい、ケーシィ。お前さんのご主人様が休養をご所望だ。さいみんじゅつをかけてやってくれぃ」

 

「ケー」

 

「おい、何を勝手に言って……って、コラ、ケーシィ!なんでお前も従っ……て……スヤァ……」

 

あ、余りにも綺麗な流れだった。団長が隊長を褒め、隊長が団長の「休め」という命令を了承するやいなや、ヒューイさんが隊長のケーシィに指示を出してさいみんじゅつを使わせていた……。

なんだこの予定調和がない方が違和感しかないやり取り。

 

「……よしっ。団長殿、俺は隊長を寝かせてこよう。この話は明日にでも」

 

「うむ。……ショウ、お前も今日は休むといい。ナルガクルガ希少種の対策は、また明日にでも話すとしよう」

 

「えっと……りょ、了解しました……」

 

なんか、私だけが完全に置いてけぼりなんですけど……?いや、いまさらどうこう文句言ったってしょうがない。私は素直に命令をに従うことにした。

ヒューイさんに言われたとおり、医療隊のキネさんの下に寄って軽く検査を受けてからギンガ団本部を後にした。そのまま真っ直ぐ部屋に戻る途中、シロちゃんと遭遇した。

 

「あ、シロちゃん」

 

「ショウ。……えっと、彼は……」

 

「あ、ヒューイさん?もうすぐ出てくると思うけど……」

 

「おや、お前さんは……」

 

「ヒューイ!」

 

言うが早いか、ヒューイさんが出てきた。そしてまたしても飛びつくシロちゃん。……うん、これはシロちゃんの方が好きすぎるパターンかな?

 

「えへへ……逢いたかったわ、ヒューイ!」

 

「そうか。俺も君に逢いたかったよ」

 

「そう?私達、やっぱり想いは通じ合ってるのね!」

 

「ははあ、そいつぁ嬉しい事を言ってくれる」

 

「……二人ってどんな関係なの?」

 

「「()し合った仲だよ」」

 

……気のせいか、言葉のニュアンスが180°真逆のような気が……。

 

「ねぇ、あの時の続き、する?流石に続きそのままだとアレだから、違う形で」

 

「おっ?そりゃあいい。だったら、お誂え向きの手段があるぜ。俺と君、ちょうど人同士でしかできないことだ」

 

「あっ……ふふっ

 

……ちょっとこの辺、空気がピンク過ぎませんかね……?なんだか胸焼けで吐き気が……。

 

「んじゃあ、俺の部屋に来るかい?そのためにわざわざアイツを巻いてきたんだろ?」

 

「うん!死ぬほど疲れてたのね……まさかの腹パンでワンパン」

 

「おっ、韻を踏んでるな」

 

「あらやだ、うふふ!」

 

「……あの、先に寝ます。おやすみなさい」

 

だめだ、これ以上ここにいたら頭がどうかなりそうだ。こういう時は、さっさと寝るに限る!

 

「おやすみ、ショウ」

 

「おぉ、そうか。お休みな。……あぁ、そうだ」

 

「はい?」

 

騒がしかったらごめんよ(・・・・・・・・・・・)

 

「……?いえ……」

 

騒がしいって……こんな夜中に一体何をする気なのか……。私はさっさと布団にもぐり、ゆっくりと意識を沈めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人とも激しすぎじゃない?

 

 

 

 




このあと、ショウが無事に寝付けたかどうかは定かではない……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。