ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

86 / 125
久々に三人称視点で書いてみる。
実際、書かないと感覚忘れるし、なに気に一人称視点よりも表現が難しいから「客観的に書く」いい練習になるんですよね。




腕試し!モンスターハンターの挑戦

ショウ達がコトブキムラに帰ってきた最初の夜が終わりを迎えた。朝となり、ギンガ団の調査隊服へと着替えたテルは、ギンガ団本部を目指しながら道行く人々に挨拶をしていった。

 

「おはよう!」

 

「おはよう、テル!」

 

久々の感覚に、テルの表情も自然と綻ぶ。ようやく、自分たちが知る日常に帰ってきたのだと実感が沸いてきたのだろう、テルの足取りは軽快そのものだ。

ギンガ団本部の前で足を止め、大きく深呼吸をする。天冠の山麓に出現した巨大ポケモンのことも気になるが、今はこの瞬間を満喫したかったのだ。

 

「オハヨウゴザイマス……」

 

「あぁ!おはよ……う、わああぁぁぁあっ!?」

 

掛けられた声に反応して振り返ると、そこにはショウがいた。……ただ、なぜかショウの目は充血してるし目元にはクマがあるし、なのに目は冴えているのかギンギンに見開かれていた。端的に言って、ショウは寝不足であった。

 

「ショ、ショウ……?昨夜は眠れなかったのか……?」

 

「……エエ、オカゲサマデ……」

 

「(い、一体何があったんだ……)」

 

視線はフラフラ体もフラフラと、明らかに眠らないまま一夜を過ごしたようなショウの様子に、テルは動揺を隠せない。と、ここでまた別の人物が姿を現した。

 

「おはようさん、二人とも」

 

「ショウ!テル!おはよー!」

 

「あ、ヒューイさんとシロ。おはようございます」

 

ショウの部屋の隣部屋を使っているヒューイと、そのヒューイにべったりなシロであった。二人は今のショウとは正反対に活気満ちた様子で、心なしかシロは肌がツヤツヤになっているように見える。

 

「お、ショウ。おはようさん」

 

「オハヨウゴザイマス……」

 

「うーむ、その様子だとやっぱり昨日は騒がしくしすぎたか?すまんかったなぁ」

 

「ほらぁ、ヒューイががっつきすぎなのよ。あんなに激しくされたら、私……我慢できないもん……」

 

「そうは言うが、後半はむしろそっちの方がノリノリだったやろがい。ヤってる途中で寝落ちする経験なんてそうないぞ?まぁ、寝て覚めてもお前さんが俺の上でまだ腰振ってた時は流石に呆れてものも言えなかったぜ」

 

「だって、貴方ったらちっとも衰え知らずなんだもん。私もつい夢中になっちゃった」

 

「ははっ、女にそこまで悦んでもらえたとあっちゃあ、男冥利に尽きるってもんだ」

 

イチャイチャイチャイチャ……目の前で繰り広げられるピンクな光景にショウはもはや白目を剥いており、テルは会話の内容が理解できなかったのか目を点にして首を傾げていた。

 

「二人は一体何を……ショウ……?」

 

「何も聞かないで、テル先輩はそのままでいてください」

 

「えぇ……?」

 

それからショウは咳払い一つとともに、イチャコラする二人に向けて言い放った。

 

「ゆうべはおたのしみでしたね」

 

「あぁ、そりゃもうな!」

 

「うん!……えへへ

 

またしても隣で首を傾げるテルに対して、ショウはもはや気絶寸前である。割とここまでオープンな人物が周囲にいなかったこともあって、その弊害がモロに表れていた。

 

「キサマら……」

 

そして、ここに憤怒に染まった形相を浮かべたアカイも合流した。アカイはズカズカとヒューイ達に歩み寄るとシロの手を取って二人を引き剥がし、ヒューイの胸ぐらを掴んだ。

 

「テメェは"自重"という言葉をどこにやった……!」

 

「据え膳食わぬはなんとやら、だよ」

 

「絵面を考えろっつってんだよ!大の大人が幼女と乳繰り合ったら完全にアウトだろうが!?」

 

「そこはほら、あれだよ。"登場人物は18歳以上です"ってやつだ」

 

「お前その言葉どこで知ったんだ!?」

 

「うん?随分と前にツレが貸してくれた薄い漫画本にそんな内容が……」

 

「そいつとは絶縁しろ!!絶対にだ!!」

 

「そうよ!……私がいるんだから、そんな本はいらないでしょ?」

 

「頼むシロ……!今この場ではとにかく黙っててくれぇ……!!」

 

ヒューイに詰め寄りシロを宥めてと、感情もツッコミも忙しすぎるアカイをショウとテルは哀れみの目で見ていた。多分、アカイは一生この二人に振り回される運命だろう。そんなことが容易に想像できたのだ。

 

「おはよ……うわっ、ショウ?大丈夫?」

 

「シズカさん……はい、全然だいじょばないです」

 

「だよね……」

 

ハンター組も起きてきたらしく、シズカ達が本部前で屯しているショウ達と合流した。と、ここでショウはとある変化に気がついた。

 

「シズカさん、なんかテンション上がってます?」

 

「え!?ど、どうして……」

 

「あぁ、実はギンガ団の団長殿のご好意でね。この世界のモンスター……ポケモンを捕獲してみないかと誘われたんだ。それからシズカはずっとこの調子でね。隠せているようで、全然隠せてないだろ?」

 

「子供みたいにワクワクしている姉様は可愛くて素敵ですわ!」

 

「や、やめてよもう!!」

 

ショウの指摘は正しかったらしく、シズカのテンションは高くなっていた。その理由もニールから聞かされて、実に納得のいく話であった。ただ、後ろにいるシュラークは表情を険しくしていたが。

 

「……まぁ、それはそれとしてだ。トレーナーが使う例のボール……捕獲機能もあるなんて聞いてないぞ」

 

「言えば戦争待ったなし、ですよ。便利な反面、そういった面での利用も容易なんです。だから、モンスターボールの一部の機能についてはあえて黙っていました」

 

「人の口に戸は立てられぬ、か……まぁ、ちゃんと考えた上での判断なら、こちらはこれ以上何も言わないよ」

 

「ありがとうございます、師匠」

 

その表情も、少しの会話の後にはすっかりなくなっていた。モンスターを運搬・格納するだけでなく捕獲と使役まで出来るボール流行ることの危険性を、シュラークもただしく理解したからだ。

それから、目線がヒューイたちに向けられると、シズカはそっとショウの耳打ちした。

 

「……ところで、シロって18歳以上だよね?」

 

「じゃなかったら、色々とアウトだと思います」

 

「まぁ、あの人たちもそれくらいわかってるよね……絵面はヒドイけど」

 

これ以上、この話題には触れないほうがいいかも知れない。そう悟ったショウとシズカはそこで会話を打ち切った。

全員が揃ったところで、早速調査隊室へ場所を移した。中で待っていたデンボク、シマボシ、ラベンらとともに、天冠の山麓に出現したナルガクルガ希少種対策を講じる。その音頭をとったのはヒューイであった。

 

「さて……ここにいる皆々様。この度、天冠の山麓に出現した巨大ポケモンについて、その対策を講じるといたしましょう。さて、俺以外のハンターがどうやらあのナルガクルガについて知っているようなんで、まずはそちらから」

 

「初めまして。時空の裂け目の向こう側より派遣されてきました。ハンターのシズカ・ミズハシといいます。今回、天冠の山麓に出現した巨大ポケモンはナルガクルガの希少種個体となります。

ナルガクルガ希少種は体に生えている月白色の体毛で月の光を屈折させつつ、夜霧に紛れることで姿を消す能力を持っています。さらに尻尾には毒素を含んだ刺が隠されており、これを飛ばしたり叩きつける瞬間に逆立てるといった戦い方を得意としています。そして厄介なことに……ナルガクルガ希少種はこの能力を最大限に活かすために、霧の出ている月夜にしか姿を現しません。単純に被害を避けるのであれば、先ほど言った天気と時間帯を避ければいいだけですが……」

 

「うむ、そういうわけにはいかぬ。ナルガクルガが我々にとって脅威となるならば、民のためにもこれを取り除かなければならん」

 

「えぇ、そうおっしゃると思っていましたよ」

 

デンボクがはっきりと言葉にすれば、シズカも頷きその意思に同調した。

 

「……ただ、次の霧の夜は三日後だ。今は待機するほかあるまい」

 

「ですね。では、その間に我々ハンターは対ナルガクルガの作戦を練っておきます」

 

「よろしく頼む」

 

作戦立案等はハンターが務めることになり、ひとまず解散。ヒューイを除くハンター組はポケモン捕獲の体験をするとしてショウ達とは別れることになった。

正門でシズカたちを見送ってから、ヒューイは小さく笑みを浮かべた。

 

「一生分の思い出になるぞ、ボールを使っての捕獲ってやつは」

 

「……ヒューイさんも、モンスターボールは戦争の火種になると考えてますか?」

 

「なるだろうな、そりゃ。亜大陸にいるライダーってのにも、古龍の力を悪用しようとした悪党が出たくらいだぜ?こんなボールが出回ったら、ヤブ蚊のように湧いて出るだろうよ」

 

「……ですか……」

 

ショウの問いに対しても、さもそうだろうといった風に答えるヒューイ。ショウは改めて、モンスターボールの価値が"向こう側"においてどれほど重いかを思い知らされ表情を暗くする。バトルを通してモンスターの脅威を理解しているからこそ、容易に捕獲ができるモンスターボールの存在が必要であると同時に、存在そのものが危険であることがよくわかったのだ。

 

「……おっ、そうだ。ショウ、お前さんはギンガ団の中でもぶっちぎりにバトルが強いって聞いたぞ?」

 

「いや、ぶっちぎりってほどでは……それで、一体何です?」

 

「おう。……俺のポケモンとお前さんのポケモン、ちょいと喧嘩させてみねぇかい?」

 

「はい?」

 

喧嘩、と言われて一瞬首をかしげるショウだが、それがポケモンバトルを指していることにすぐに気がついた。バトル、と聞いてショウの中の闘争心に火がつく。

 

「いいでしょう、受けて立ちますよ」

 

「よっしゃ!それなら野外訓練場に行くか!」

 

「え……そこの訓練場でよくないですか?」

 

「いいや、よくねぇや」

 

ペリーラが管理している訓練場でもいいだろう、というショウだが、ヒューイはそれを拒否した。それから、獰猛な笑みを浮かべつつボールを取り出した。

 

「俺のポケモンは、凶暴だぜ?」

 

「……!」

 

「これまでは調査の名目で連れ歩けなかったからなぁ……。動きが鈍ってちゃいけねぇから、お前さんとのバトルに使ってやりてぇんだ。んで、俺のポケモンは強さも段違いだから、手狭な訓練場だと周囲に被害が出かねん」

 

「それで、野外訓練場ですか……わかりました」

 

ショウとヒューイは揃って野外訓練場へ向かう。その際、審判役としてアカイに声を掛け、シロと共に野外訓練場へと来てもらった。

 

「……それではこれより、ショウとヒューイによる6vs6によるフルバトルを行う。どちらかの手持ちが全滅した時点で勝敗を決する。入れ替えは自由だ、両者ともに異存はないな?」

 

「ないっ!」

 

「私も大丈夫です」

 

「では、公平を期すために最初の一匹目は、カウントと同時に繰り出すとする。では、三秒前!」

 

アカイが宣言をすると同時に、ショウとヒューイはボールを構えた。それを見てから、アカイもカウントを開始した。

 

「3!2!1……ゴー!!」

 

「ライチュウ!!」

 

「舞え、【幻舞蝶】!!」

 

「ラアァァイ!ライライラアァァイッ!!」

 

「ハァ~ン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【Power Through】~Friday Night Funkin' BB Ver2.0~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウの先手は極みライチュウ。だが、ヒューイの先手はショウが見たことない姿をしたアゲハントだった。

アゲハントの羽の模様に、ドクケイルの羽の色と模様が混じっている個体だ。それだけでなく、ただ羽撃いているだけで色とりどりに光る鱗粉が羽から舞っている。

 

「アゲハント……!」

 

「ただのアゲハントじゃあない。ドクケイルとの共生によって鱗粉の性質が変質した、アゲハントの二つ名個体……【幻舞蝶(げんぶちょう)】アゲハントだ!」

 

「【幻舞蝶】……!?」

 

「さぁ、お前さんの力を見せてやりな!アゲハント、むしのさざめき!!」

 

「躱して!」

 

「ラアアィッ!!」

 

【幻舞蝶】が放ったむしのさざめきを、極みライチュウは光速で移動し回避した。その速さにヒューイも感嘆したように息を漏らした。

 

「ほぉ、速いな」

 

「10まんボルト!!」

 

「ラララアイ!」

 

「だが、甘い。アゲハント、ミラースケイル!」

 

「ハァント!」

 

【幻舞蝶】が激しく羽を羽撃かせると、虹色に光る鱗粉がアゲハントの周囲を舞った。極みライチュウの10まんボルトが鱗粉の中に突っ込むと……激しく乱反射を起こして極みライチュウに跳ね返っていった。

 

「ラァイッ!?」

 

「ライチュウ!?」

 

当然、見たことのない現象に動揺した極みライチュウは跳ね返ってきた10まんボルトを避けられず直撃し、ショウも同じように驚いていた。

 

「ミラースケイル。これは相手が放ってきた特殊技を反射する技だ。どんな強力な技だろうが、それが特殊技ならコイツで跳ね返せる!ただし、威力は据え置きだがな」

 

「ハァ~ッハッハッハ~ント♪」

 

ドヤァ、と胸を張る【幻舞蝶】に、極みライチュウは悔しげに歯噛みしながら立ち上がった。特殊技の強制反射という、半ば反則じみた技に対する有効策をすぐさま模索する。

 

「(特殊が効かないなら、物理で攻める!)戻ってライチュウ!……よし、ゴウカザル!」

 

「ゴウカアアァッ!!」

 

ここでショウは交代を選んだ。繰り出されたのは【炎神】ゴウカザル。むしタイプである【幻舞蝶】に対して有利が取れるほか、覚えている技も物理一辺倒なのでミラースケイルを恐れる必要がないのだ。

 

「なるほど、ゴウカザルか。確かにそいつなら、物理技の方が強いだろうしむしタイプにも強い……ちょうどイイってところか」

 

「行きます!ゴウカザル、ほのおのパンチ!!」

 

「ウッキャアァ!!」

 

「アゲハント!地表スレスレで羽撃け!!」

 

「ハンッ!」

 

ほのおのパンチを使って【幻舞蝶】に突撃する【炎神】。ヒューイもすぐさま指示を出し、【幻舞蝶】もそれに従った。

【幻舞蝶】が地表近くまで高度を下げると、そこで激しく羽撃きを始めた。羽撃きによって発生した風圧が地面の土を巻き上げ、一瞬で【幻舞蝶】の姿を隠してしまった。

 

「……っ!打ち出せ!」

 

「ゴウカッ!」

 

素早く足を止めると拳を突き出し、【炎神】は拳の炎を火炎放射のように打ち出した。土煙を吹き飛ばした火炎だが、【幻舞蝶】には直撃することなくヒューイの背後にある岩を打ち抜いた。

 

「行けっ!」

 

「ハンッ!」

 

【幻舞蝶】は地面スレスレを飛行して一気に接近し、【炎神】の頭上を取った。状況判断からの行動の速さに、ショウは思わず瞠目した。

 

「速い!?」

 

「ムーンフォース!」

 

「ハァァァ……ハアァンッ!!」

 

「ウギャ!」

 

「ゴウカザル!!」

 

【幻舞蝶】から放たれたムーンフォースは寸分たがわず【炎神】に直撃し、大きく吹き飛ばした。それでも空中で体勢を立て直すと、【炎神】は地面に着地してすぐに構えを取った。

 

「ムーンフォース……!?アゲハントはムーンフォースを覚えないはず……まさか!」

 

「そのとおり!【幻舞蝶】に至ったことで、この技を使えるようになったのさ!それに伴って、コイツのタイプもフェアリータイプになっている!!」

 

「……つまり、むし・フェアリーってこと……!」

 

二つ名個体への成長とともに、タイプや覚える技にも変化が生じていた。ショウの手持ちにいるポケモンたちはタイプの変化が特になかったので、その事実を初めて知ったのだ。

 

「さぁ、どんどん行こうぜ!もういっちょ、ムーンフォース!!」

 

「ハアァンッ!!」

 

「ゴウカザル、マッハパンチ!」

 

「ウッキャア!!」

 

「フッ……」

 

マッハパンチによる高速移動でムーンフォースを避けつつ、【炎神】は【幻舞蝶】へと拳を突き出した。しかし、【幻舞蝶】はわずかな羽撃きでマッハパンチをチョン避けしてしまった。

 

「あれを躱す!?」

 

「エレキネット!!」

 

「ハンッ!」

 

「ウキャ!?」

 

「さぁ、遊覧飛行の時間だぜぇ!」

 

チョン避けした【幻舞蝶】は突き出された【炎神】の腕にのみエレキネットを当てると、ネットを引っ張って【炎神】を空中へと連れ去ってしまった。そのままジャイアントスイングの要領でぐるぐると大回転を始めた。

 

「投げ飛ばせ!」

 

「ハアアァンッ!!」

 

「ウギャアァッ!!」

 

「ゴウカザル!?」

 

力強くぶん投げられ、【炎神】は土煙が舞うほどの勢いで地面に激突。そのパワーは地面がわずかに陥没し大地が隆起するほどであった。

 

「負けるなゴウカザル!フレアドライブ!!」

 

「ウッキャアアアアッ!!」

 

「ハッ……!?ハアアァンッ!!」

 

「なっ……アゲハント!!」

 

だが、それでもショウと【炎神】の闘志は尽きはしない。煙の中から勢いよく炎を纏った【炎神】が飛び出し、そのまま【幻舞蝶】にぶち当たった。地面に墜落した【幻舞蝶】は、フレアドライブの一撃でノックアウトされてしまった。

 

「ハハァ……」

 

「アゲハント、戦闘不能。ゴウカザルの勝ちだ」

 

「よしっ!ありがとう、ゴウカザル」

 

「ウキャキャ!」

 

「おぉおぉ、流石は歴戦の猛者ってところか。戻れ、アゲハント」

 

ショウの実力の高さをおおよそ想定していたのか、ヒューイの表情は変わらず楽しげに笑みを浮かべている。そうして、ヒューイが二体目のポケモンを繰り出した。

 

「そんじゃあ、次は……コイツだ!」

 

「グマアアァァッ!!」

 

続いてヒューイが繰り出したのはリングマだった。ただ、このリングマも普通の個体ではなかった。

体の色は茶色から橙色に変化しており、爪に至っては青色に変化してしまっている。また、体中には戦いで付いたであろう傷跡が目立っている。

 

「リングマの二つ名個体、【青嵐鬼(せいらんき)】だ。縄張り争いに勝ち続けたリングマの爪は、鋼すら容易に断ち切るほどの硬度を持つぜ」

 

「……!リングマの二つ名個体……戻って、ゴウカザル。……ミミロップ!」

 

「ミッミィ!」

 

ショウは先の【幻舞蝶】との戦いで消耗した【炎神】を戻した。その後、【舞兎】ミミロップを入れ替えで繰り出した。

 

「バトル、開始!」

 

「ミミロップ!はどうだん!!」

 

「ミィー……ミミロォー!」

 

「リングマ!きあいだまだ!」

 

「グウゥ……マアァ!!」

 

【舞兎】のはどうだんと【青嵐鬼】のきあいだまがぶつかりあい、激しい爆発を起こした。爆風から顔を守りながら、ショウはまたしても本来の個体から変化が生じしていることに気がついた。

 

「くっ……ヒスイでは覚えなかった技を……!」

 

「突っ込めリングマ!ざんてっそう!!」

 

「グマァーッ!!」

 

「……!新技!?」

 

【青嵐鬼】が咆哮を上げると、青い爪がさらに深みを増した光を放ち始め、その長さも伸びて凶悪度が増した。その勢いで【舞兎】に突っ込み、爪を振るってきた。

 

斬鉄爪(ざんてっそう)はメタルクローの上位版とも言うべきはがね技!相手の能力上昇を無視してダメージを与えられる!さらに、斬鉄という名の通り、はがねに対して抜群が取れるんだぜ!」

 

「ミミロップ、集中!」

 

「ミミッ!」

 

両手足に波導の光を灯らせた【舞兎】は、繰り出される【青嵐鬼】の攻撃を捌き始めた。避け、払い、【青嵐鬼】の攻撃に対処する【舞兎】だが、その足は徐々に後退し始めた。やがて、岩を背に追い詰められると、【青嵐鬼】が大きく腕を振りかぶった。

 

「今だ!」

 

「ミィッ!」

 

「なんと!?」

 

大振りの攻撃を待っていた、とばかりに【舞兎】は高く跳び上がり、伸身三回宙返り一回捻りを披露しつつ【青嵐鬼】の背後を取った。当然、【青嵐鬼】の攻撃は岩を砕くだけに終わり、攻撃は盛大に空振っていた。

 

「あくのはどう!」

 

「ミッミィー!」

 

「グマッ……」

 

完全に隙を付いた一撃だったが、あくのはどうは【青嵐鬼】に対してあまりダメージを与えられなかった。その様子に、ショウはある可能性に行き着いた。

 

「まさか、かくとうタイプが入ってる……?」

 

「おう、そうだぜ。ノーマル・かくとうの複合タイプだ!」

 

またしてもタイプの変化に足元を掬われてしまった形になったショウ。今後はこのような変化が起こっていることを考慮して技を選ぶ必要があるだろう。

 

「ならば……ミミロップ、りゅうのはどう!」

 

「ミミィ!ミミロー!!」

 

「ぶっ飛ばせリングマ!ギガインパクト!!」

 

「グマアアァァッ!!」

 

【舞兎】が放ったりゅうのはどうを強引に突っ切り、【青嵐鬼】のギガインパクトが【舞兎】に迫る。【舞兎】も初めは波導で受け止めてみせたが、圧倒的な力で押し込まれたことで不利を悟ったのか、自ら脇へと飛ぶことで攻撃を受け流した。

 

「おぉ、巧い」

 

「くっ……はどうだん!」

 

「きあいだまだ!」

 

「ミミ!」

 

「グマ!」

 

しばらく転がってから立ち上がり、【舞兎】ははどうだんを放った。【青嵐鬼】もギガインパクト直後だというのに反動が堪えた様子もなく、すぐさま迎撃に応じた。

 

「地を這え!みずのはどう!!」

 

「ミッミィ!!」

 

ここでショウが動く。【舞兎】が地面を這うようにみずのはどうを放ち、自身もその後に続いて突撃し【青嵐鬼】に迫る。

 

「(攻撃には攻撃で対処する……その後隙を突けば!)」

 

「受けろ、リングマ!」

 

「なっ!?」

 

「グマ!」

 

ショウが予測したヒューイの指示は迎撃……しかし、実際のヒューイが出した指示は、技を受けろというものだった。予測が外れたことで、ショウの判断がわずかに遅れてしまった……その隙を、ヒューイは逃さなかった。

 

「ざんてっそう!!」

 

「……っ!はどうだん!!」

 

「グマアァァッ!!」

 

「ミィッ……!!」

 

鉄をも切り裂く鋼鉄の爪が【舞兎】を大きく勝ち上げた。それでも空中で体勢を整え、【舞兎】ははどうだんを放ってみせた。攻撃の直後ということもあって【青嵐鬼】は対応できず、はどうだんが直撃した。

 

「リングマ、無事か?」

 

「……グマァ!」

 

「よしよし」

 

「ミミロップ、大丈夫?」

 

「ミ……ミィ!」

 

バトルは続行可能だが、【舞兎】も【青嵐鬼】もどちらも消耗が激しい。このまま続ければどちらか、あるいは両方が戦闘不能となるだろう。

 

「……戻って、ミミロップ」

 

「交代だ、リングマ」

 

ここで両者ともにポケモン入れ替えの判断を下した。そして、同時にモンスターボールを投げてポケモンを繰り出した。

 

「ロズレイド!」

 

「ローズレー!」

 

「ドラピオン!」

 

「ドララララァ!!」

 

ショウが繰り出したのは【華彩剣】ロズレイド。ヒューイが繰り出したのはドラピオンだが、これまた見たことのない変化を遂げていた。

まず、両腕。両腕の鋏の内、人間の手首に該当するであろう場所からさらに二本ずつハサミが生えていた。尻尾の鋏も先端が三叉に割れて三本に増えていた。

 

「ど、ドラピオン……?」

 

「おう、ドラピオンだ。正確には……【極み待ち伏せるドラピオン】だ」

 

「極み個体……!!」

 

「あぁよ!コイツの鋏に捕まれば最後……待つのは終わりのみ、だ」

 

「ドラァ……!」

 

鋏を舌舐りする極みドラピオンに、ショウは気圧されたように半歩足を引いた。対して、【華彩剣】は冷静に、そしてゆっくりと抜剣するとその切っ先を極みドラピオンに向けた。

 

「ロゼ」

 

「ドラァア!」

 

己に臆した様子を見せない【華彩剣】に苛立ちを募らせる極みドラピオン。どうやら気が短い質のようだ。

 

「(なるほど、短気な性格か……短気は損気、そこを突けば勝機はある……)」

 

「(能力面はともかく、内面的に不利は否めないか。まさかタイプ相性じゃなくて性格相性で苦手なタイプとはなぁ)」

 

勝負はまだまだ始まったばかり。最強のトレーナーと伝説のハンターの一騎打ちは、苛烈を極めようとしていた。

 

 

 

 




今回はここまでで、次回後半戦!そして、あの兄妹の再会も……!

今回登場した特殊個体について軽く解説。


アゲハント
二つ名:【幻舞蝶】
タイプ:むし・フェアリー

ドクケイルとの共生によって、鱗粉の性質に変化が表れたアゲハント。それを裏付けるように、羽の模様にドクケイルの要素が強く表れている。そして、それはタイプも同様である。
専用技の「ミラースケイル」は、性質変化した鱗粉を多量に撒き散らすことで、相手の非接触系特殊技を乱反射させて跳ね返す効果を持っているむしタイプの変化技。他のカウンター系の技とは異なり先手で繰り出せるものの、威力が増えたりすることはない。


リングマ
二つ名:【青嵐鬼】
タイプ:ノーマル・かくとう

生存競争に勝ち続けてきたリングマが至ったとされている姿。青くなった爪は鋼も容易に断ち切る鋭さを硬度を誇り、その爪に断てぬものはない、とも。体の色が橙色に変化した他、歴戦の猛者を思わせる傷跡が全身にある。
専用技の「ざんてっそう」は、メタルクローの効果に加えて「能力上昇効果無視」と「はがねタイプに効果抜群」という効果を持っているはがねタイプの物理技。特に後者の能力は「威力を二倍にする」のではなく、「タイプ相性で有利が取れる」という意味なので状況をひっくり返す切り札になりうる。


極み待ち伏せるドラピオン
タイプ:どく・あく

ドラピオンの極み個体。鋏の数が増えたために手数が増え、鋏で捉えた相手を他の鋏で滅多打ちにするという戦法を得意とする。"待ち伏せる"と名にあるが意外にも短気な性格。
今後のバトルで詳細が明らかになるだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。