野外訓練場で行われたショウとヒューイによるポケモンバトル。現在の状況はヒューイが一体倒されて6対5。しかしお互いに繰り出したポケモンの数は既に半数に達している。
ヒューイが繰り出した四体目は極み個体と化したドラピオンこと【極み待ち伏せるドラピオン】、対するショウは【華彩剣】ロズレイドで対抗した。短気な質の極みドラピオンは冷静な【華彩剣】に対して苛立ちを募らせているが、果たして勝負の行方は……。
「おーい、ドラピオン。落ち着けなー、苛立ったってしょうがねぇぞー」
「……!ド、ドラ!」
イライラしていた極みドラピオンだが、ヒューイの呼び掛けでなんとか冷静さを取り戻したようだ。トレーナーとの絆は確かなものなようで、ショウは内心で舌を打つ。
「(なるほど、トレーナーの声が届く程度には余裕もあるのか……)ロズレイド、相手は極み個体だ……気をつけていこう」
「ロズ」
「……バトル、開始!」
推奨BGM
【bombllitz】~Funkin Aside~
「リーフブレード!!」
「ロゼッ!」
「迎え撃て!どくづき!!」
「ドォラアアッ!!」
アカイが再開の宣言をすると同時に両肩のブーケを背面に回し、エネルギーを放出しながら【華彩剣】は一気に極みドラピオンとの距離を詰めた。対する極みドラピオンもどくづきを使い、【華彩剣】の攻撃に対抗して剣劇を演じた。
極みドラピオンは硬い甲羅とタイプ相性で【華彩剣】の攻撃を受け流しつつ反撃のどくづきを繰り出す。【華彩剣】は素早い身のこなしで極みドラピオンの攻撃を避けつつ、堅実に攻撃を当てていった。片やダメージは微量だが攻撃を当てており、片や攻撃が掠りもしない。その違いは歴然で、次第に極みドラピオンは攻撃が大振りになり始めた。
「(あ、ヤッベ……)ドラピオン!相手をよく見ろ!!がむしゃらに振ったって当たらねぇぞ!!」
「ドラアアァァァッ!!」
「……あーあー、すっかりプッツンしやがって……。しゃあねぇ、仕切り直しだ!!地面を穿て!!」
「ドラァッ!!」
イライラしながらもヒューイの指示には忠実に従い、極みドラピオンはどくづきで思い切り地面を殴りつけた。土煙が舞い上がり、視界が封じられる。
「なっ、ここで……?」
「ふっ……"砂の悪魔"の真髄を見せてやるよ」
「え?」
やがて土煙が晴れると……極みドラピオンが姿を消していた。
「なにっ!?」
「ロゼ……!?」
これにはショウも冷静な【華彩剣】も面食らい、辺りをしきりに見わたす。完全に姿も気配も見失い、ショウは冷や汗を流した。
「これは……!」
「ドラピオンはどうも、乾燥地帯でも平気で生きられるポケモンらしい。今でこそ海岸沿いで見かけられるが、元々はもっと内陸部で生きられるポケモンなんじゃないかね。これは、そんなコイツの生態を全力で生かした戦法だ。……やれ!」
「ドラアア!!」
ヒューイが指示を出すと、極みドラピオンが【華彩剣】の背後の地面から姿を現した。咄嗟に反転しつつ後方に飛び退る【華彩剣】……だが、ヒューイの狙いが読めたショウは、咄嗟に呼びかけた。
「ダメ、ロズレイド!後ろはマズイ!!」
「ロ……?ロゼェッ!?」
ショウの言葉に動揺する【華彩剣】だが、その言葉は当たっていた。後ろに跳んだ【華彩剣】を同じく地面に隠していた極みドラピオンの尻尾がしっかりと掴んで捉えたのだ。三叉に割れた尻尾の鋏は胴と両腕を掴み、完全に【華彩剣】の動きを封じ込めた。
「ロ、ロズ……!」
「しまった!!」
「ドォラァ……!」
「ドラピオンは頭部を180度回転させることができる!だからこんな戦い方もできるのさ。どくづき!!」
「ドラアアァッ!!」
「ローゼッ!?」
「ロズレイド!」
「まだまだぁ!ミサイルばりだ!!」
「ドラァ!」
極みドラピオンのどくづきが直撃し、そのまま空中へ打ち上げられた【華彩剣】にさらに追撃が迫る。両腕六本、尻尾三本の計九つの鋏から一斉に放たれたミサイルばりによる凄まじい弾幕が向かってくる中、ショウは焦らず指示を出す。
「ロズレイド!打ち落とせ!!」
「……!ロッゼエェッ!!」
ブーケから高出力のエネルギーを放出し姿勢制御をこなし、体勢を立て直すとともに手に持つ剣で次々とミサイルばりを叩き落とす【華彩剣】。少しずつ地面に降り立ちながらも手を休めることなく、ひたすら攻撃を捌き続けた。
やがて【華彩剣】が地面に降り立ったのを確認したショウは、状況を変えるために次の手を打った。
「ロズレイド!リーフストーム!!」
「ロー……ズレエエェイッ!!」
ブーケを前面に動かし、そこから放たれたリーフストームはミサイルばりを次々と撃墜しながら極みドラピオンへと迫る。だが、ヒューイと極みドラピオンに焦りはない。
「ドラピオン、ぶんまわす!」
「ドオオラアア!!」
ミサイルばりを中断し、頭部を物凄い勢いで大回転し始めた極みドラピオン。ぶんまわすの攻撃は【華彩剣】のリーフストームを散らしてしまうほどの威力で、攻撃を完全に凌ぎきってしまった。
「突っ込めロズレイド!」
「ロゼ!」
「フッ、何をする気だ……?どくづき!」
「ドラアァ!!」
突撃してくる【華彩剣】に、容赦なく攻撃を繰り出す極みドラピオン。だが、それこそがショウの狙いだった。
「ロズレイド!はながくれ!!」
「ロゼ!」
「なに!?」
「ドラ!?」
どくづきが直撃する直前、【華彩剣】の姿が花びらとなって舞い散り消えた。突然の現象にヒューイも極みドラピオンも驚き動きが止まってしまった。
【華彩剣】は極みドラピオンの左側に姿を現し、その時には既に攻撃を構えていた。
「どくづき!」
「ロゼ!」
「ドラッ!?」
「ちっ……ぶんまわす!」
「ドラアア!!」
「もう一度、はながくれ!」
「ロゼロゼ!」
再び攻撃が当たる直前、姿を消す【華彩剣】。極みドラピオンの技が【華彩剣】に対して「効果は抜群」ではないため反撃されることはないとはいえ、立て続けに回避と反撃を繰り返されては、たとえポケモンでなかったとしてもストレスは相当なものとなるだろう。
「ド……ドラアアアアアアッ!!」
「あっ、こら!落ち着けドラピオン!!」
ついに我慢の限界を迎えたのか、極みドラピオンは辺り一帯にミサイルばりを乱射し始めた。当然だが狙いがついていない攻撃が当たるわけはなく、【華彩剣】には一つも当たらなかった。
「よしっ……隙を突いて、リーフブレード!!」
「ロゼ!」
「くそっ……いや、待て?」
目論見通りに暴走を起こした極みドラピオンの隙を突かんと接近してくる【華彩剣】に対して舌打ちをするヒューイ。……しかし、その直後に閃めきが降りてきたようで、ニヤッと笑みを浮かべた。
「どうしたどうしたドラピオン!お前の実力はこんなものか!?お前ならもっともっとミサイルばりを撃てるだろう!本気を出せ本気をよぉ!!」
「ドラアアアアアアアアッ!!」
「え、なにを……!?」
「ロゼ……?」
なんと、突然ヒューイが極みドラピオンを煽り始めたのだ。それによってますます怒りのボルテージを上げた極みドラピオンが、さらにミサイルばりの弾幕を分厚くしていく。突然の奇行に目が点になるショウだが、すぐに気がついた。
弾幕が厚くなったことで接近が難しくなったばかりか、地面に着弾したミサイルばりが土煙を巻き上げ、さきほどどくづきでやったように徐々に極みドラピオンの姿を隠し始めていたのだ。
「マズイ……ロズレイド!姿が見えなくなる前に攻撃を!!」
「ロゼ!」
また隠れられたら厄介だと、ショウはすぐさまロズレイドに攻撃を指示した。ロズレイドもショウの考えを理解し、剣を構えて極みドラピオンに肉薄した。
「事を急いたな、ショウ!!」
「え!?」
「ドラピオン!てっぺきだァ!!」
「……!ドラァッ!!」
だが、それこそがヒューイの狙いだった。ヒューイの指示で我に返った極みドラピオンは、眼前に迫る【華彩剣】を視界に捉えてすばやくてっぺきを発動した。防御力を大きく高めたことで、極みドラピオンは【華彩剣】のリーフブレードをその身一つで受け止めてしまった。
「そんな!?」
「ロズ……!?」
「捕まえろ!」
「ドラッ!」
極みドラピオンは両腕の鋏で【華彩剣】を捕まえると、一度やや後ろに向けて放り投げると尻尾の鋏で捕まえ直し、頭部を180度回転させた。
「決めるぜ、ドラピオン!ここが、拳を叩き込みやすい角度!!」
「ドラアァッ!!」
「奥義!!ヴェノム・デモリッション!!」
「ドラララララララララララララララララララッ!!ドォラアアァッ!!」
「ロゼーッ!!」
「ロズレイドッ!!」
両腕の六本の鋏から毒を滴らせつつ、そのまま猛ラッシュを叩き込み相手を滅多打ちにする奥義『ヴェノム・デモリッション』が【華彩剣】に炸裂した。締めの一撃まで打ち込まれた【華彩剣】はそのまま吹っ飛んで倒れこみ、起き上がることはなかった。
「ロ……ゼ……」
「ロズレイド、戦闘不能。ドラピオンの勝ちだ」
「くっ……戻って、ロズレイド……!」
ポケモン同士のみなら冷静さで分がある【華彩剣】だが、トレーナーという存在がある以上それも絶対ではない。ここは、極みドラピオンの性格をうまく利用したヒューイに軍配が挙がった。
「これが、【極み待ち伏せるドラピオン】!その所以!!待ち伏せるとは即ち息を潜めることにあらず……決定的な瞬間を待ち、雌伏の時を凌ぐ頑強さ!これが【極み待ち伏せるドラピオン】だ!!
「なるほど、強い……!次は……あなたに託す!!」
「ガッブアァッ!!」
ショウが繰り出した四番手は極みガブリアスだ。極みドラピオンと極みガブリアス、極みポケモン同士の対決となった。
「ガアアアァァブッ!!」
「……ッ!ドラアアアアアッ!!」
極みガブリアスが咆哮を轟かせれば、負けじと極みドラピオンも声を上げた。
「おぉー!そいつが龍風圧を操るガブリアスか!!話には聞いていたが、本当にクシャルダオラみたいなことをする!」
「クシャルダオラ……」
「あぁ、龍風圧はあいつの専売特許みたいなもんだからな。うーん、これが生命の神秘ってやつか……モンスターもポケモンも、まだまだ奥が深いぜ」
クシャルダオラの名を聞いて、ショウは自然と笑みが浮かんでいた。アルバトリオンとの決戦において、傷を手当した恩を返しに現れたクシャルダオラ。真っ先にそのことを思い出したからだ。
「では、バトル開始だ!」
「ドラピオン!ミサイルばり!!」
「ドラアァァ!!」
「ガブリアス!龍風圧、展開!!」
「ガブッ!」
先手必勝とばかりに放たれたミサイルばりだが、龍風圧に阻まれたことで極みガブリアスにはほとんど届いていない。その様子に、ヒューイはたまらず舌打ちをした。
「チッ!クシャルダオラにも弾丸や矢が届かなかったが、それはこっちも同じか……!」
「ガブリアス!ドラゴンクロー!!」
「ガッブアァ!」
「ドラピオン、てっぺきだ!!」
「ドラッ!」
龍属性エネルギーの赤黒い電撃をオーラにしたドラゴンクローで、一気に突撃し距離を詰める。対する極みドラピオンは防御の構えを取りつつてっぺきでさらに防御力を高めた。
「ぶち抜け、ガブリアス!」
「ガブアアアァッ!!」
「ドッ!?ドラアアァッ!!」
「なに!?」
防御力が上がっているにも関わらず、極みガブリアスの一撃は極みドラピオンを吹き飛ばした。そのパワーたるや、爪でブレーキをかけても尚、地面を大きく抉り引きずってようやく停止したほどだ。
「な、なんつーパワーだ……防御を固めてなかったら、普通に倒されてたぞ……」
「アクアブレイク!」
「どくづきだ!」
「ガアアァブッ!」
「ドラアアァッ!」
ショウと極みガブリアスもすかさず畳み掛ける。相手の物理防御を下げることもあるアクアブレイクで一気に攻勢に出た。極みドラピオンも高めた防御を活かして攻撃を受け流して反撃するという手段で極みガブリアスに対抗した。
だが、やはり龍風圧という壁は厚く、極みドラピオンは龍風圧の風に流されて何度かバランスを崩しそうになっていた。
「くそっ、龍風圧が厄介だな……!」
「アイアンヘッド!」
「ガブァ!」
「ドラッ……!」
極みドラピオンの攻撃を受け止めて両腕を抑えると、そのまま引き込み接近したところでアイアンヘッドを叩き込んだ。攻撃が直撃した極みドラピオンはフラフラと体を揺らした後、力なく倒れこんだ。
「ドラピオン!」
「……ドラピオン、戦闘不能。ガブリアスの勝ちだ」
「よしっ」
「なんと……いや、本当に強いな……!!」
「まだまだ、勝負は始まったばかりですよ」
「そうだな……よしっ、俺の次のポケモンは、コイツだ!」
「グマアアァァッ!!」
ヒューイは再び【青嵐鬼】を繰り出した。気合充分、意気軒昂。極みガブリアスを前にしても怯むどころかむしろやる気満々になっている。
「よし……バトル開始だ!」
「リングマ!ざんてっそう!!」
「ガブリアス!ドラゴンクロー!!」
お互いに爪を用いた攻撃を繰り出した。【青嵐鬼】が最初に仕掛け、それを受け止めた極みガブリアスも返しの一撃を見舞う。それを【青嵐鬼】が受け止めると、両者は大きく弾かれた。
「「いけぇっ!!」」
「グマァッ!!」
「ガブァッ!!」
力と力による、真正面からのぶつかり合い。【青嵐鬼】が極みガブリアスに攻撃を当てれば、すかさず極みガブリアスもやり返す。両者、一歩も退くことなく攻撃を繰り出し続け、時には頭突きで頭をぶつけ合うとそのままガンを飛ばして睨み合ったりしていた。
「(不良の喧嘩だ、コレ)」
「おぉおぉ、楽しそうに殴り合うなぁ」
「楽しそう!?」
「ん?あぁ、ウチのリングマは楽しそうだなぁってさ。闘争心も相当高まっているようでな、強敵を相手にしてる時なんか特にそうだ。見ろ、あの楽しそうな笑顔を!」
「グマアアァァッ!!」
「(さっぱりわからん!)」
再び激しくぶつかり合い、弾かれ合った両者はそのまま大きく距離をとった。
「リングマ!きあいだまだ!!」
「グウゥ、マアァッ!!」
「弾き返せ!」
「ガブアァ!!」
【青嵐鬼】が放ったきあいだまを、極みガブリアスは爪のひと振りで跳ね返しそのまま【青嵐鬼】へぶつけた。その様子を見て、ヒューイが動きを見せた。
「戻れ、リングマ!さぁ、お前の出番だ……行け、エルレイド!」
「エルッ!!」
ヒューイが繰り出した四匹目はエルレイド。だが、このエルレイドもまた姿が変化していた。
まず、体の緑色の色素が薄まり鮮緑と呼ばれる鮮やかな色合いに変化している。さらに踵から脹脛にかけてわずかに色合いが変化している部分が見られた。瞳の色が青く変化しており、肘の先端が欠けていた。
「これは……」
「二つ名個体、【
「…………」モグモグ
「ちょっとまって、エルレイド何か食べてません?」
「あっ!お前、今度の狩猟用にって取っておいた携帯食料を勝手に食べたな!?」
「!?」Σ(゚Д゚;)ギクッ
「……ったくよー、アイツとそろってつまみ食い癖ばっかりつきやがって。好きなのはわかるが勝手に食うなっての。ちゃんとお前らの分も用意してやるから」
「エルゥ……」(´._.`)
反省してます、というように肩を落とす【守護騎士】にヒューイは元よりショウも思わず笑顔になった。強力な個体である【二つ名】に成長しても、根底に宿る性格は変わらない。それを教えてくれる一幕であった。
「さぁ、気を取り直していこうか!アカイ、合図頼む!」
「やれやれ……では、バトル開始!」
「エルレイド!サイコカッター!!」
「エレィ!!」
「ガブリアス!ドラゴンクロー!!」
「ガブァ!!」
【守護騎士】はサイコカッターを発動すると、欠けている肘の先端をサイコパワーで補いさらにリーチを伸ばした。そのまま刃を飛ばさずに極みガブリアスのドラゴンクローとぶつかりあった。【守護騎士】の斬撃は極みガブリアスの体に着実にダメージを重ねていく一方、極みガブリアスは度重なる連戦で疲労がたまってきたのか、動きに精彩を欠き始めていた。
「(マズイか……)ガブリアス、戻って!」
両者が弾かれた瞬間を逃さず、ショウはすかさずガブリアスをボールに戻す。すぐさま繰り出すポケモンを吟味し、選出する。
「ミミロップ!」
「ミミィー!」
再び飛び出した【舞兎】は【守護騎士】を見据えると手足の先に波導を集め、臨戦態勢に入った。
「行きます……!はどうだん!!」
「ミミィ……ロォー!!」
「サイコカッター!」
「エルッ!レイッ!」
【舞兎】のはどうだんと【守護騎士】のサイコカッターがぶつかり合い、爆発を起こした。次に繰り出す技を判断し、指示を飛ばす。
「りゅうのはどう!!」
「ミミロオォォー!!」
「切り裂け、エルレイド!ヒールリッパー!!」
「エルレエェイッ!!」
向かってくるりゅうのはどうに対して、【守護騎士】は走り出した。その直後、【守護騎士】の脹脛が展開して刃なると、そのまま回し蹴りを繰り出してりゅうのはどうを一刀両断してしまった。
「なぁっ!?」
「そのまま叩っ斬れぇ!!」
「エレエェイッ!!」
「ミィーッ!!」
【守護騎士】は勢いそのまま突撃し、今度はもう片方の足も展開すると両足を揃えたサマーソルトキックで【舞兎】を斬り上げた。舞兎は宙を舞い、ショウの後方にまで飛んで行った。
「ミミロップ……!」
「……ミィ~……」
「ミミロップ、戦闘不能。エルレイドの勝ちだ」
「ヒールリッパー……二つ名エルレイドの新技……!」
「そうさ。【守護騎士】エルレイドは、脹脛を展開することで踵に刃を持つことができる。その刃で敵を蹴り斬るかくとう技……それが、ヒールリッパーだ」
「……戻って、ミミロップ……」
必殺技を携えた【守護騎士】を相手に、次に誰を出すべきかを考えるショウ。ショウの残りの手持ちは【炎神】ゴウカザル、極みライチュウ、極みガブリアス、極みダイケンキの計四体。対するヒューイは【青嵐鬼】リングマと【守護騎士】エルレイド、そして今だ姿を見せていない二体の計四体。数の上では五分五分だが、ヒューイは極みポケモンを一体失っている。そういう意味ではアドバンテージがあると言えなくもないが、ヒューイの残り二体が極みor二つ名によっては状況がさらに変わる可能性がある。
「戻れ、エルレイド」
「エル」
と、ここでヒューイも入れ替えを選択した。それを受けて、ショウは次に繰り出すポケモンを決めた。
「よし……ライチュウ!」
「ララララアアアイッ!!」
「それじゃ、俺は……コイツだ!!」
「ギャラアアアァスッ!!」
ヒューイが繰り出したのはギャラドスだ。だが、その姿はショウが知るソレとは大きくかけ離れていた。
体の色は水色から紺碧と呼ぶべき深い色へと変化しており、体中には赤く発光する謎の傷跡が余すことなく刻み込まれていた。
背びれの色の方が水色になっており、さらにメガギャラドスのように二つに分かれているものが背中から尾にかけて翼のように片側四つずつ生えていた。
「ギャ、ギャラドス……」
「そう……【
「【極み】……!?」
「あぁ、コイツは強くて凄くて……ヤバイぜ?」
「グルルル……」
見た目からして既にヤバさがにじみ出ている極みギャラドス。ショウは小さく息を飲むと、先制攻撃を仕掛けた。
「ライチュウ、でんこうせっか!!」
「ラララァイ!」
光速で疾走する極みライチュウのでんこうせっかは、真っ直ぐに極みギャラドスへと直撃した。だが、極みギャラドスはまったく堪えた様子がなく、そのまま体をくねらせて極みライチュウを弾き返してしまった。
「ラ、ライッ……!」
「なんて頑丈な……それなら、10まんボルト!!」
「ラアアィチュウウゥッ!!」
「かえんほうしゃだ!」
「ギャラアァアアッ!!」
極みギャラドスのかえんほうしゃは広く広がりつつ極みライチュウの10まんボルトを阻んだ。ショウは一気に決着をつけるべく、奥義の使用を決めた。
「(敵が本領を発揮する前に、叩き潰す!!)ライチュウ、奥義装填!!」
「ラァイッ!!」
電撃を纏ったライチュウが光速で動き、極みギャラドスに何度も体当たりを仕掛けていく。最後に尻尾で足元を払うと真下に潜り込み、両手を極みギャラドスに向けて掲げた。
「ボルテージスマッシャー!!」
「ラアアアアアアアアアアイッ!!」
光の柱と見紛うほどの巨大な雷を相手に叩き込む極みライチュウ最大の奥義「ボルテージスマッシャー」が直撃した。極みギャラドスは大きく吹き飛び、頭から地面に墜落した。間違いなく直撃……ショウは勝利を確信した。
「よし!ナイスだよ、ライチュウ!!」
「ラララァイ♪」
「……あー……喜び勇んでいるところ申し訳ないが、お二人さん?」
「「え?/ラ?」」
ヒューイに声をかけられ、視線をそちらに向けるショウと極みライチュウ。すると、倒れていた極みギャラドスがゆっくりと体を起こし、ついには完全に起き上がったのだ。
「ギャラ」
「なっ……まだ、戦える……!?どうして!ギャラドスのタイプは……」
「あ、言い忘れてたか……コイツ、ドラゴン単タイプだ」
「ドラゴン!?」
「ライ!?」
まさかの新情報に、二人は驚きを禁じ得なかった。極みライチュウはその特性上、でんき技が通じにくい相手にも等倍以上のダメージを与えられる。ギャラドスが本来のタイプのみず・ひこうなら四倍ダメージで間違いなく確殺であった。だが、それら元のタイプが完全に消滅しドラゴン単タイプとなったことで弱点がなくなり、結果ダメージを抑えることができた、ということだろう。
これがみず・ドラゴンorドラゴン・ひこうだった場合、ダメージは二倍になるので継戦を難しくする程度にはダメージを与えられたかもしれない。
「勝ったつもりになったところを、すまんかったな」
「……いえ、慢心していたのは事実です。もう油断はしません」
「おう、そうしてくれ。……んじゃあ、続けるか!ギャラドス、アクアテール!」
「ギャラアアアスッ!!」
「ライチュウ!10まんボルト!!」
「ラアアィチュウウゥ!!」
接近してくる極みギャラドスを近づけまいと、極みライチュウが10まんボルトを放つ。だが、極みギャラドスは体をくねらせ絶妙に回避すると、そのまま一気に極みライチュウとの距離を詰めた。
「速いっ……!躱して!!」
「ライッ!」
「そのままアイアンテール!!」
「チュウウゥッ!!」
極みライチュウは跳躍してアクアテールを躱すと、アイアンテールを繰り出した。極みギャラドスも勢いそのままにアクアテールを振るい、極みライチュウのアイアンテールと鍔迫り合いに持ち込んだ。
「押しきれギャラドス!パワーなら負けねぇ!!」
「ギャラアアッ!!」
「ラァイッ……!」
「しまった……!」
「よしっ、そのまま仕留めろ!!」
「ギャラアァス!!」
「ヂュッ!!」
「ライチュウ!」
極みギャラドスは尻尾を振り切り、強引に鍔迫り合いを突破した。飛行能力を持たない極みライチュウは体勢を崩し、空中に放り出される形になってしまった。極みギャラドスは飛び上がり、空中で一回転するとそのまま極みライチュウにアクアテールを叩きつけた。
「チュ、チュウ~……」
「ライチュウ、戦闘不能。ギャラドスの勝ちだ」
「戻って、ライチュウ!」
勢いよく地面に叩きつけられた極みライチュウはそのまま戦闘不能。ショウは戻すと同時にボールを手に取り、次のポケモンを繰り出した。
「ガブリアス!!」
「ガッブアアァッ!!」
極みガブリアスと極みギャラドスの、極みドラゴン対決。竜として最高の力を手にしたガブリアスと、竜に例えられながら真に竜と化したギャラドス。お互いに相手の実力を把握したのか、睨み合うだけで言葉ひとつ発することがない。
「(ガブリアスは連戦が続いている……長期戦に持ち込まれるとこっちが不利だ)」
「(なんとか耐えたが、あの奥義の一撃はかなりデカイ。誤魔化しちゃいるが、短期決戦で攻められると厄介だな)」
「(なるべく、一撃で仕留める!)」
「(近づかれるまでは、上手く攻撃を躱していくか)」
「……バトル開始!」
「ギャラドス!かえんほうしゃだ!!」
「ギャラアアス!!」
「……!アクアブレイク!!」
「ガアアァブッ!!」
極みギャラドスがかえんほうしゃを放ってきたことから、ショウは相手方も実は余裕がないのでは、と予想した。そして、ほのお技を見てからすぐにみず技を選択する。
水の力を纏った極みガブリアスはかえんほうしゃを突破していき、ついに極みギャラドスの下までたどり着いた。
「ドラゴンクロー!!」
「げきりんだ!!」
「ガブアアァッ!!」
「ギャラアァッ!!」
極みガブリアスのドラゴンクローが極みギャラドスを切り裂けば、すかさず極みギャラドスが反撃に尻尾や体当たりで攻撃を仕掛ける。お互いに弱点であるドラゴン技同士のぶつかり合いによって、凄まじい勢いで体力が削られていく。
「ここは一か八か……ガブリアス!」
「奥義にかけるか!ギャラドス!」
「「奥義装填!!」」
トレーナーの指示を受けガブリアスは龍属性エネルギーを纏いつつ天高く飛翔した。ギャラドスもドラゴンパワーを全身から滾らせ、それら全てを口元に収束していった。
「アブソリュートドラゴンストーム!!」
「
「ガアアァブアアアアァァッ!!」
「ギャラアアアァァァァァッ!!」
空から猛烈な勢いで突撃を仕掛ける極みガブリアスに対し、極みギャラドスはドス黒いはかいこうせんのようなビームを放った。さらに自ら自発的に跳躍し、極みガブリアスに突撃していきながら、だ。
両者の距離がゼロになった直後、巨大な爆発が起こった。おそらく、この爆音と爆風はコトブキムラにまで届いていることだろう。ショウとヒューイも顔を守りながら、地震のポケモンの安否を見守る。やがて煙の中から二つの影が姿を見せると、そのまま二体揃って地上に落下した。
「ガ、ブ……」
「ギャラァ……」
「……ふむ。ガブリアス、ギャラドス、共に戦闘不能」
「あ、相打ち……戻って、ガブリアス」
「サンキュー、ギャラドス。おつかれさん」
二人はそろってポケモンを戻し、そしてそろってポケモンを繰り出した。
「ゴウカザル!」
「ウキャア!!」
「リングマ!」
「グマァ!」
ショウは【炎神】、ヒューイは【青嵐鬼】を繰り出した。ショウの残りは【炎神】と極みダイケンキのみ。ヒューイも【青嵐鬼】と【守護騎士】、そしてもう一匹を残すのみとなった。
「速攻で、カタをつける!!」
「そうはさせねぇよ!リングマ!きあいだまだ!!」
「グマァ!!」
「ゴウカザル、マッハパンチ!!」
「ウッキャア!!」
後に控えている相手のことを考え、ショウは速攻を選んだ。ヒューイもさせじと特殊技を指示して遠距離攻撃を仕掛けるが、【炎神】のマッハパンチで懐に飛び込まれた【青嵐鬼】はそのままマッハパンチを喰らった。
「グマァ……!」
「なに!」
「かかとおとし!!」
「ウッキャ!」
「グマアアアッ!!」
「止め……!マッハパンチ!!」
「ゴウッカアァッ!!」
マッハパンチを喰らってからは、連撃が続いた。反撃の隙を与えることなく繰り出されたかかとおとし、止めのマッハパンチによるアッパーカットの、弱点連続攻撃をまともに食らった【青嵐鬼】は一歩、二歩と後退し……そのまま仰向けに倒れ込んだ。
「リングマ、戦闘不能。ゴウカザルの勝ちだ」
「さすが、やるな……!それじゃ……エルレイド!!」
「エルレィ!」
ヒューイは【青嵐鬼】をボールに戻しつつ、【守護騎士】を繰り出した。この【守護騎士】を倒せば、ヒューイの残りは未だ姿を見せていない一匹のみとなる。
「いくよ……ゴウカザル!」
「ゴウカッ!」
「やるぞ、エルレイド!」
「エルッ!」
「ほのおのパンチ!」
「サイコカッター!」
【炎神】のほのおのパンチと、【守護騎士】のサイコカッターが激しく打ち合う。実力のほどはほぼ互角。均衡が崩れれば、一気に攻め込まれることだろう。
「……っ!かかとおとし!!」
「ゴウカァ!!」
「ヒールリッパー!」
「エレェイ!!」
振り下ろされる足と、振り上げられる足。二つの技が同時に繰り出され、火花を散らしてぶつかりあった。
このぶつかり合いは【守護騎士】に軍配が挙がった。【守護騎士】が足を振り切り、【炎神】は回転しながら後方へ跳び、そのまま着地を決めた。
「ほのおのパンチ!打ち出せ!!」
「ウキッ!ゴウカアァ!!」
「サイコカッターだ!!」
「エルレェエイ!!」
【炎神】が拳から炎を打ち出せば、【守護騎士】も念力の刃を発射した。サイコカッターは炎を切り裂いて突き進み、【炎神】に直撃した。
「ウギャアァッ!!」
「ゴ、ゴウカザル!!」
「……ゴウカザル、戦闘不能。エルレイドの勝ちだ」
「くっ……!戻って、ゴウカザル……!」
「よぉし。最後の一体だな、ショウ!」
「えぇ……ですが、この子は私のパーティの中でも、最強の子!出てきて!ダイケンキ!!」
「…………」
ショウに残された最後の一体、極みダイケンキが戦場に降り立った。その眼差しに睨まれた【守護騎士】は小さく息を飲んだ。
「ほぉ、これは……あぁ、確かに強いな。こいつは」
「さぁ……この子で残り二体、狩らせてもらいます」
「やってみな!エルレイド、リーフブレードだ!」
「エルレェエイ!!」
「ダイケンキ!アクアカッター!!」
「……!!」
肘の刀を伸ばす【守護騎士】と、アシガタナを抜刀して水を纏わせた極みダイケンキの剣技がぶつかり合った。極みダイケンキが新たに獲得した新技「アクアカッター」はみずタイプの技。くさ技であるリーフブレードとはタイプ相性的には不利だ。だが、極みダイケンキが扱う剣技は、普通ではない。一見すると互角に見えるが、徐々に【守護騎士】が押され始めた。
「……っ!剣術は向こうが一枚上手か!!」
「切り裂けダイケンキ!ひけん・ちえなみ!!」
「!!」
「エルウゥッ!!」
「エルレイド!!」
一拍。まさにその一瞬とも言うべき間で、極みダイケンキは技を繰り出して【守護騎士】に直撃させた。無数の斬撃に晒された【守護騎士】はその一撃を耐え切れず、あえなくダウンした。
「エルレイド、戦闘不能。ダイケンキの勝ちだ」
「かぁー……やはり、何度もバトルに出してたらダメージ的にこうなるか……戻れ」
「ようやく、最後の一体ですね」
「だなぁ。……ふっ、まさかあの博士が連れてきたポケモン同士でトリを飾るとはな」
「……!まさか!!」
「そう!俺の最後のポケモンは……こいつだぁ!!」
天高くボールを投げ、その中からポケモンが飛び出した。
首周りの紫の炎が全身を包み込むローブを形成、それを手に取り羽織ると周囲をいくつもの霊魂が漂い始めた。
「【
「フゥー……」
「バクフーン……!!」
かつて、ショウは誰かがバクフーンを極み個体に育てているのではないかと想像したことがあったが、ここでソレが的中してしまった。
極みダイケンキは、目の前の極みバクフーンがかつて共にヒスイ地方へ連れてこられた個体だと気づいたようで、珍しくキョトンとした表情を浮かべていた。それに対して、極みバクフーンも嬉しそうに笑みを深めていく。
「さあ……ラストバトルと行こうぜ!!」
「えぇ……望むところです!!」
「では……バトル開始!!」
ショウとヒューイのバトルが決着に向かおうとしていた頃、コトブキムラではテルと共にハンター達が黒曜の原野から戻ってきていた。
「いやぁ、モンスターボール!すごい技術だ、これがあったら捕獲クエストが随分と楽になるぞ」
「ですわね。わざわざ罠に掛けて、捕獲用麻酔玉を用意しなくていい分、とても楽ですわ」
「…………」
「よかったな、シズカ。捕まえたいポケモンが捕まえられて。そんなに嬉しいかったか?」
「なっ、なっ!?べ、別に私、なんでもないです……!」
「(動揺してる。図星なんだなぁ)」
「(姉様が今日もか"わ"い"い"ッ!!)」
相変わらずテンションの高いシズカだったが、ふと放牧場が目にとまり足を止めた。それにあわせてニールたちも足を止めた。
「……テルくん、ちょっと放牧場に寄って行っても?ここにモンスターたちが放し飼いされていると、シュラークさんから聞いてね」
「え……?あぁ、いいですよ。おれも付き合います」
「助かるよ」
テルの案内で、放牧場内を練り歩くことが決定した。しばらく歩いていると、早速モンスターたちの姿が見えてきた。
「おぉ、ドスジャギィにドスフロギィ、それにドスバギィだ」
「ホロロホルルに……あれは、カムラの里近辺の狩場で発見されたゴシャハギ……」
「オドガロン亜種!?いつの間に新大陸にも時空の裂け目が開いていたんだ……」
トレーナー達が手持ちとして連れ歩いていた個体以外で、ヒスイ地方に飛ばされていたモンスターたちを見て、各々が反応を示した。ただ、一人だけ黙ったままのシズカは他にモンスターがいないかどうかを確認するように辺りを見渡していた。
「モンスターはこれだけ?」
「いや、多分あっちの方に……あ、いた!」
テルが放牧場内に人影を見つけて、そちらへ走っていった。シズカも後に続き、少し遅れてニールたちも続いた。
「ヨネさん、ガラナさん、ワサビさん!」
「あぁ、テル。久しぶりだね」
「お久しぶりです、テルさま」
「久しぶりー!」
そこにはコンゴウ団キャプテンのヨネとワサビ、シンジュ団キャプテンのガラナがいた。三人が見つめる先には、五頭のモンスターが揃っている。
「どうですか、彼らの様子は」
「いつもどおりの仲良しさん、だよ。いや、むしろ仲が良すぎるくらいさ」
「まるで、十年来の友と出会ったようでしたね」
「あの五頭は友達だもん、当然だよ!」
「五頭?」
「ほら、あそこの……ジンオウガ、リオレウス、グラビモス、ベリオロス、ラギアクルス達ですよ」
「……ラギア……クルス……」
シズカたちが見つめる先には、テルがさきほど説明した五頭のモンスター達が集まっていた。
何か、うんうんと頭を悩ませるように首をひねるラギアクルス。そんなラギアクルスに陽気な雰囲気で話しかけるのはベリオロスとリオレウスだ。だが、そんな二体に対して拒否するように首を振るラギアクルス。すると、今度はグラビモスが歩み寄り、器用に翼でラギアクルスの頭をポンポンと叩き始めた。
慰めるようなその動きにラギアクルスも小さく息をつく……と、ここでベリオロスがなにか閃いたように頭を上げると、そのままラギアクルスに何か話しながら近寄った。……その直後、ラギアクルスに角でどつかれた。何故か急に怒り出したラギアクルスに、ベリオロスが平謝りしている。それを笑うリオレウスとグラビモスに、呆れたように大あくびをして終始状況を見守っていたジンオウガ。
「……確かに、驚くほど仲がいいな」
「いずれのモンスターも、生態系が異なるというのに……」
「一体どういうつながりなのやら……」
「…………」
「……シズカ?」
ニールたちが五頭の関係について考えを巡らせていると、徐にシズカが動き始めた。五頭がいる方へ一歩、また一歩と近づいていく。
と、ここでジンオウガがシズカに気がついた。急に頭を上げたジンオウガに気づいたグラビモスもまた、シズカの存在に気がついた。何事か、とベリオロスとリオレウスもそちらを見やる。なぜか四頭は揃いも揃って「あ……」と言いたげな顔で硬直していた。と、ここでラギアクルスも振り返ろうとして……グラビモスに頭を押さえつけられた。ジタバタともがくラギアクルスを、懸命に押さえつけるグラビモス。まるで「見てはいけない」とばかりに制しているが、構わずシズカは近づいていく。
そして……。
「兄さん?」
「Σ( □ ) ° °」ビックゥッ!!
ラギアクルス、ではなく、兄さん。そう呼びかけられたにも関わらず、ラギアクルスは盛大に体をはね上げて反応した。そっと、抑えていたラギアクルスの頭を離すグラビモス。恐る恐るといった様子で振り返ったラギアクルスがシズカを捉えると……。
「ε=ε=┏(; ・Д・)┛」ダダダダダダ!!
「……ッ!!待って!!」
爆速でその場から逃走した。水中ではないとはいえ、巨体のラギアクルスが全力で走ればかなりの速度になる。人間が追いつくのは到底不可能だ。それでもシズカは追いかけようとして……ジンオウガに行く手を阻まれた。
「……!なにを……!!」
「ワウワン……」フルフル
「グオン」コクッ
まるで、「やめとけ」とばかりにシズカを止めるジンオウガとリオレウス。なんとなく二頭が言いたいことがわかったのか、シズカは逸る気持ちを抑えて深呼吸をした。だが、それと同時に何かを確信したような表情になった。
「……そう、そういうこと。……みんな、ここにいたんだ。ずるいよ、どうして教えてくれなかったの……?」
「ワン……」(;¬_¬)
「グオ……」(;¬_¬)
「ヴー……」(;¬_¬)
「ガオ……」(;¬_¬)
「……ふーん、みんなグルだったわけだ……ふーん……」
「「「「((((;゚Д゚))))」」」」ガクブルガクブル
シズカが尋ねると、全員が一斉に目を逸らした。それを受けて一瞬で目のハイライトが消えたシズカを見て、ジンオウガたちは一斉に震え上がった。
「おーい、シズカー」
「……また、後で来ます。……絶対に、逃がさないでね……?」
「「「「(・・;)」」」」コクコク
ニールが駆け寄ってきたので、シズカは一旦話を切り上げることにした。……最後に、脅しつけるように約束を取り付けることを忘れずに。それから踵を返してニールと合流した。
「急にどうしたんだ?テルくんが驚いてたぞ、ラギアクルスがあんな風に逃げ出すなんてって」
「多分、私が着ている防具が原因かもしれませんね。ほら、彼にとっては同族を狩ったハンターですし」
「……まぁ、あいつらは普通のモンスターよりずっと賢いらしいし、その辺を理解できてたのか……」
「かもしれませんね」
息をするように嘘をつくシズカだが、好いた女を疑うつもりがないのかニールは素直に信じきっていた。
そのまま、テルたちの下へ戻っていく。ただ、シズカはしばらくラギアクルスが逃げていった先を見つめてから、戻っていった。
はい、途中で話を切って次回こそは決着&再会になるはずです!!
ホント、時間ギリギリまで粘るからこんなトラブルに遭うのか……もっと余裕を持って投稿できるようにスケジュールを管理しなければ……。