ポケットモンスターHUNTER アルセウス   作:箱厨

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ナルガクルガ希少種との対決と、あの謎について迫ります!


諸事情で投稿期間が延びたり投稿時間に遅れが生じたりと、問題だらけの箱厨でございますが、今後とも応援のほどよろしくお願いします!


天冠の朧月と伝承の詩

久々に過ごしたコトブキムラでの生活……帰還早々からイロイロとありすぎてかえって落ち着かないのはなぜぇ……?

やはりヒューイさんか、ヒューイさんなのか……四六時中シロちゃんがべったりだし、そのせいでアカイさんはキレ散らかすし、シズカさんたちも何か諦めたような顔をしていたし……。

ポケモンバトルの腕前も見事なものだった。まさか私と同じ二つ名個体と極み個体でメンバーが構成されていたとは。……なに気に私が予想していた極みバクフーン、的中してたし。

しかし、本当に強かったな……本当にポケモン始めて数ヶ月の実力か?ポケモンだけじゃなく、ヒューイさん自身も戦いなれた勝負師だ……技の的確な指示や奇抜な戦い方は、きっとその経験から着想を得たのだろう。ああいう"戦い方を知る人"は本当に強い。

 

さて、今日はいよいよ夜霧の予報がされた日……ナルガクルガ希少種を捕獲して、天冠の山麓の夜の安全を確保しなくちゃ!

 

「いよいよ今夜だな」

 

「ヒューイさん」

 

私が気合を入れていると、ヒューイさんが話しかけてきた。頭以外を防具で包み込んでいる。

 

「そちらも準備万端ですね」

 

「まぁな。今回は秘策も用意してある……確実に奴さんを仕留めるぞ」

 

「はい!」

 

秘策……ひょっとして、私がドジを踏んだあの時、本来なら使うはずの作戦だったのかな?楽しみにしておこう。

 

「……それにしても、良かったんですか?」

 

「ん?なにがだい」

 

「今回の作戦、シズカさん達も同伴させなくて。自信がないわけじゃないですが、やはりハンターの数は多いに越したことはないじゃないですか」

 

「あぁ、それか」

 

今回のナルガクルガ希少種捕獲作戦……実働班は私とヒューイさんの二人だけだ。というのも、ヒューイさんが私と自分だけで良い、と打診したんだそうだ。

 

「理由はいくつかあるが……まあ、一つは意地だな。俺が何十と挑み続けた相手だ、今更他人に協力を申し出るつもりも、まして他人任せなどせんよ。浅はかな考えだがな、既に攻略の糸口は見えている……故に、これ以上はむしろ過剰戦力だ。

もう一つは、ショウの腕を見てみたいっていうのがある。お前さんは俺たちの世界で言うライダーのようにモンスターに指示を出して操り、このヒスイに現れたモンスターを次々と捕獲していったそうじゃあないか。ナルガクルガ希少種相性でも、情報さえあれば苦戦はすれどお前さんなら回数を重ねていずれは勝利するだろうよ。そう考えて、今一度お前さんの実力を発揮してもらおうと考えたわけだ」

 

「なるほど……期待に応えられるよう、全力を尽くしましょう」

 

「その意気だ!……あと、シズカっていったっけか。アイツはしばらくは狩りに身が入らんだろう。それくらい、なにかいいことがあったみたいだしな」

 

「ですね」

 

実はシズカさん、昨晩こっそりとどこかへ出かけたのをニールさんが目撃していたのだが、あえて後を追わないでいたそうだ。そうして朝になる前にシズカさんが帰ってきたわけだが、まるで別人になったかのように表情が穏やかになり、より溌剌とした感情表現をするようになったのだ。今まで無表情に近い顔ばかりだったシズカさんが、初めてポケモンを捕まえた時のような明るさを常に見せ続けてくれるようになった。

……そんなシズカさんにネネさんは常時限界化状態だし、ニールさんもシズカさんが微笑むだけで顔を真っ赤にして何も喋れなくなるし、シュラークさんはアルカイックスマイルと共に後方腕組み待機するだけでフォローなし。なんだか、以前よりもカオス具合が増している気がするのは気のせいか?

 

それと関係があるのかは知らないけど、なぜかラギアクルスの表情が死んでいた。それと、わかりやすく黒焦げになって頭にたんこぶを作ったベリオロスも死んだように突っ伏していた。

 

「(一体何があったやら……)」

 

「まぁ、あっちは若いのに任せようか。俺たちは俺たちに出来ることをしよう」

 

「若いって……ヒューイさんもそう歳は変わらないですよね?」

 

「ん、言わなかったか?俺、実はこう見えて三十路だぜ?もうすぐ四十になる」

 

「……え、はぁ!?」

 

いやいやいや、何を言ってるのこの人!?どう見たってニールさんやシュラークと同世代の二十代後半に見えるのに!

 

「俺、ヒスイに来たときになぜか若返ったんだよ。原因は不明だがな……まぁでも、悪いことばかりじゃねぇわな。おかげで昨夜も……」

 

「はぁ……」

 

最後のほうがいまいち聞き取れなかったけど、確かに若返って損をするようなことなんて、本人確認がちょっと面倒くさくなるぐらいしかないかな?

 

「んじゃあ、行くか」

 

「え、もうですか?夜までまだ長いですよ?」

 

「だぁほ。準備や作戦会議などの段取りってのは、現地でやったほうが無駄がない。忘れ物があっても時間前なら取りに戻れるし、なんなら夜の時間は限られてんだ。……逃がさない算段もある以上、時間までのんびりするつもりはないよ。

……まぁ?お前さんはまだ子供だしな?時間までのんべんだらりとしてくれて構わんよ?なんなら俺が一人でケリをつけておこう、なのでゆっくりおやすみよ」

 

「は?」

 

なんっ……なんなの、ヒューイさん!急にこっちを煽り出して……どういう意図かは知りませんけど、そんな安い挑発にこの私が……。

 

「全然余裕ですしなんなら同じことまで考えてましたが?(早口)」(-゛-メ) ヒクヒク

 

「おぉ、そりゃあよかった。なら、何も問題はないな。現地へ行くぞ」

 

「えぇ、行きましょう」

 

負けず嫌いな私が乗らないわけ無いでしょうが!くぅ、しかし口の達者なことで……すっかり乗せられてしまったけど、ここで乗らなきゃ逆に出発を渋っていたかもしれないことを考えると、悪いことではないかもしれない……いや、やっぱり大人気ないわこの人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、早速天冠の山麓に到着した私とヒューイさんだが、すぐにナルガクルガ希少種捕獲作戦の段取りを始めた。まず、ナルガクルガ希少種(以下、ナルガクルガ)を見つける必要があるんだけど、これは無防備に歩いているだけではダメらしい。隙を晒すだけだと、尻尾の刺を飛ばしてくるだからだそうで、むしろ気疲れするレベルで全方位警戒を厳となす必要があるそうだ。ナルガクルガが「直接仕留める必要がある」と思わせる程度の脅威だと認識させる必要があるとか。

そして、ナルガクルガが姿を見せた上で、致命的な隙を晒してからが本番。ヒューイさんが用意した秘策を用いて、ナルガクルガを逃げられない状態にするらしいけど……何をするつもりなんだろう?

あ、そうだった。ナルガクルガ希少種なんだけど、アカイさんから聞いた話によればナルガクルガ希少種はあく・ひこうの複合タイプで、氷とドラゴンに弱いがみずに強く、ほのおとでんきが効かない体質らしい。……むぅ、じめんタイプでもないひこうタイプが、でんきを無効にするとは……。しかもほのおとでんきが効かないということは、私の最高戦力であるジンオウガとリオレウスが使えないも同然だ。あとは、ラギアクルスもか。すると確実に弱点が突けて機動性でも負けていないのはベリオロスしかいない。……今朝のことが脳裏をよぎるが、大丈夫だろうか……?

 

「さぁて、仕事だ!ひと狩りいこうぜ」

 

「えぇ、行きましょう」

 

ヒューイさんは既にボールから【守護騎士】エルレイドを繰り出している。かくいう私もダイケンキとガブリアスをボールから出している。この二体を選んだのは、ナルガクルガの遠距離攻撃を確実に捌ける技量と能力があるからだ。

厳戒態勢の中、以前にナルガクルガと遭遇した場所を練り歩く。すると、ヒューイさんとダイケンキ、エルレイドの一人と二体が同時に特定方向に振り返った。それと同時にヒューイさんが投げナイフを投擲、ナイフは鈍い音とともに空中で動きを止めた。

 

「いたぞぉ!いたぞおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

さらにヒューイさんは叫び声を上げた。すると、私の目の前で土煙が何度も宙を舞う様子が霧の中でもはっきりと見て取れた。どうやらヒューイさんの大声にナルガクルガが反応し、動きを激しくしているようだ。

 

「見えたか?」

 

「ばっちり!」

 

「よしっ、行くぞ!」

 

私とヒューイさんはポケモンたちと共に一気に駆け出す。土煙が何度か舞い、私達の背後でふわりと舞い……今だ!

 

「ガブリアス、りゅうのはどう!」

 

「エルレイド、れいとうパンチ!」

 

「ガブアア!」

 

「エレェイ!」

 

180°一気に反転し、後ろに向かって攻撃!りゅうのはどうは見えない何かにぶち当たり、さらにエルレイドのれいとうパンチも命中した!それによって、ついにナルガクルガが姿を現した!

 

「さぁ、とっておきだ!」

 

「カァーッ!!」

 

「ドンカラス?」

 

ヒューイさんが繰り出したのはドンカラス……一体何をするの?

 

「まずはコイツだ。ドンカラス、くろいまなざし!!」

 

「カアアァァァ……」

 

「ニ"ャッ!?」

 

ドンカラスが怪しげな眼差しでナルガクルガを見つめると、ナルガクルガは体を硬直させてしまった。そうか、相手を逃げられなくする技!ということは、次に繰り出す技は!

 

「仕上げだ!きりばらい!!」

 

「ドンカァ!」

 

ドンカラスが激しく翼を羽ばたかせると、その衝撃で周囲の霧が吹き飛んでいった。完全に月夜のもとに姿を晒すこととなったナルガクルガは、困惑と焦りからか周囲を見渡していた。

すごい……!ナルガクルガをこうもあっさりと弱体化させられるなんて!

 

「よし、これで朝まで粘ってもやつは逃げられないし、霧も晴れたから透明化の隠密能力も半減だ。さぁ、狩るとしようか!!」

 

「はいっ!ベリオロス、ゴー!」

 

「ガオオオオオンッ!!」

 

「ニ"ャア"ア"ア"ォ"ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

推奨BGM

【闇に走る赤い残光】~モンスターハンターシリーズ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ以上、好き勝手させられんのでね。悪いが対策を講じた以上、さっさとカタをつけさせてもらうぜ」

 

「ベリオロス、今回はヒューイさんを全面的に援護するよ。ナルガクルガが苦手なこおり技とドラゴン技を使っていくよ!」

 

「ガオン!」

 

これは私自身が決めたことだ。ポケモン勝負では勝ちを拾った私だけど、狩猟という面で見れば私よりもヒューイさんの方が歴戦者だ。もちろん、ヒューイさんのご希望通りに実力を披露することも忘れない。

まずは先手を打つ!

 

「こおりのつぶて!」

 

「ガオッ!」

 

「グッ……!」

 

「いいね、その攻撃!そりゃあ!!」

 

先制技でナルガクルガを牽制している間に、ヒューイさんが切り込む。ヒューイさんの太刀は龍属性、ナルガクルガ相手に有利だ!

三度斬り込み、一度距離を置くヒューイを追撃するようにナルガクルガが腕を振るった。あの巨大エアスラッシュだ。

 

「ベリオロス、ふぶき!」

 

「ガオオオォォォンッ!!」

 

空気には空気!ベリオロスが放ったふぶきはエアスラッシュを瞬く間に失速させ、ついには消滅した。

その直後、毒の刺がベリオロスに飛ばされたがベリオロスは回避。その後隙を狙ったナルガクルガが翼刃を振るってくるが、ベリオロスも器用に腕の刺で挟み込むように受け止めた。振り払ったベリオロスが回転して尻尾を叩きつけるも、叩かれた勢いを逆に利用して素早く回転したナルガクルガが同じく尻尾を叩きつけてきた。

体勢を整えたナルガクルガが飛びかかると、同じようにベリオロスも飛びかかった。空中でもつれ合うとナルガクルガがベリオロスを踏み台にしてさらに飛び上がり、縦に一回転して尻尾を叩き込みベリオロスを墜落させた。追撃とばかりに翼刃を振り下ろすが、後方へ飛び退ったベリオロスに回避され、逆に氷嵐砲を撃ち込まれて直撃した。

 

「おぉおぉ、派手にやってんねぇ!俺も混ぜろっての!!」

 

と、なんとここでヒューイさんがベリオロスとナルガクルガがぶつかり合っているところへ走り込んでいき、そのままベリオロスと殴り合いをしているナルガクルガに攻撃を始めてしまった!?ベリオロスは……一瞬、ヒューイさんの方を一瞥したけど、すぐに気にすることなくナルガクルガへの攻撃を再開した。ベリオロスがそのつもりなら、私もその気概に応えよう!

 

「ベリオロス、ドラゴンクロー!」

 

「ガオオォ!」

 

「ニ"ャア"ォ"!!」

 

「フンッ!せやぁ!!」

 

ナルガクルガがベリオロスに集中すれば、すかさずヒューイさんが猛攻を加える。このままいけば、押し切れるかもしれない……だが、ナルガクルガもただ攻撃を受けるだけじゃなかった。

尻尾を振り上げて何度か回すようにゆらゆら揺らすと、飛び跳ねながら上に向かって尻尾を素早く振るった。

 

「……!ガオッ!!」

 

「んぉ!?」

 

何かを察したベリオロスがヒューイさんを押し倒し、そのまま覆い被さった。その直後、ナルガクルガの毒の刺が雨のように降り注いできたのだ!ベリオロスはこの攻撃を知っていたの!?

 

「ちっ……そういうことか。サンキュー、ベリオロス。もう庇う必要はねぇぜ、次からは躱せる」

 

「ガオン……ッ!」

 

ベリオロスは毒状態になってしまったが、まだまだ戦えるとばかりに臨戦態勢になった。ヒューイさんもベリオロスの下から這い出ると共に、ポーチからかいふくのくすりを取り出して中身をベリオロスに使ってくれた。

 

「ありがとうございます、ヒューイさん!」

 

「なに、助けてもらった対価だよ。さぁ、ナルガクルガも本腰を入れてきたぞ!」

 

ヒューイさんの言うとおり、ナルガクルガの雰囲気が先程よりもさらに鋭く研ぎ澄まされているように感じる。気を引き締めていかないと……。

 

「ニ"ャア"ア"オ"ォ"!!」

 

ナルガクルガが上体を持ち上げつつ咆哮を上げると、そのまま姿を消してしまった。と、思った直後には再び姿を現した!

 

「ベリオロス、エアスラッシュ!」

 

「ガオオオ!」

 

ベリオロスのエアスラッシュでナルガクルガの押さえ込みを図るが、ナルガクルガは高速で大回転することでエアスラッシュをことごとく弾き返し、その回転の勢いで刃翼を思い切りベリオロスに叩きつけてきた!

あれは……たしか、アカイさんが言っていたナルガクルガ希少種の大技の一つ、『木枯らし大回転』!

直撃をもらったベリオロスは大きく吹っ飛ぶも、体勢を立て直しつつ地面に着地した。その間も、ヒューイさんは果敢にナルガクルガへ切り込んでいる。

 

「こっちの相手もしてくれよ、っと!」

 

「ニ"ャオ"ォ"!!」

 

「おっと、あぶね」

 

ヒューイさん……やっぱり、すごい。今だって、ナルガクルガの刃翼を太刀で打ち合い弾き返すと、反対側の刃翼を転がって回避。そのまま体を回転させて尻尾を振られるがこれもいつだかのように尻尾を飛び越えて回避、直後に尻尾から刺が放たれるが、しゃがみこんだことで刺は頭上を通り過ぎていった。

尻尾がビターン、と振り下ろされるがこれも躱して叩きつけた勢いで飛んできた刺も太刀で打ち落としてそのまま尻尾を斬りつけた。ナルガクルガは尻尾を地面から引き抜くと後ろ手に腕を振るったが、ヒューイさんは回避していた。そこからもう一度、反対側の刃翼で斬りつけるが、起き上りと同時に振り上げられた太刀に阻まれて攻撃は届かなかった。

……うーん、この。

 

「(もう全部ヒューイさん一人でいいんじゃないかな)」

 

初めてナルガクルガと戦った時、シズカさん達が「行かないほうがいい」と言っていた理由がわかった気がする……。

 

「……って、呆けてる場合じゃない!ベリオロス、援護行くよ!!」

 

「ガオン!」

 

同じように呆然と戦いを眺めていたベリオロスに声をかけ、私たちも攻撃を始めた。……正直、このままヒューイさん一人で勝てそう感は否めないけど。

 

「まずは動きを!ひょうらんほう!!」

 

「ガオオオオッ!!」

 

ベリオロスが複数発の氷嵐砲でナルガクルガの行動制限を狙う。弱点であるこおりタイプの竜巻が辺りに出現し、ナルガクルガはわずかに動きが鈍った。

……それにしても、ナルガクルガはあまり私たちがよく知るポケモンの技を使ってこないな……今のところ、それらしい技はエアスラッシュくらいしか見ていない。フィジカルに自信があるのか、それとも扱いづらい技よりも慣れ親しんだ戦い方を選んでいるのだろうか。面白い、これもちょっとした研究テーマになりそうだ。

さて、動きが鈍ったナルガクルガに再びヒューイさんが斬りかかる。ナルガクルガも刃翼で応戦するが、先にナルガクルガの刃翼がひび割れ欠けてしまった。部位破壊、成功だ

 

「ニ"ャア"ア"ア"ア"ア"ッ!!」

 

ナルガクルガが一層大きく咆哮を上げた。その直後、その姿が一瞬で掻き消えた。……いや、よく見たら赤い光が周囲を飛び回り、土煙が待っている。あれもナルガクルガ希少種の大技の一つだ!確か名前は『朧月』……!

 

「ヒューイさんは……」

 

ヒューイさんは……え!?太刀を納刀したまま構えを取って、じっとしている!あのままじゃ攻撃の的になるだけだ!

 

「ヒューイさん!」

 

「エルル」

 

「え、エルレイド?」

 

私がヒューイさんに声掛けをしたが、すぐにエルレイドに止められた。まるで、「見ていろ」と言わんばかりに。

 

「ニ"ャア"オ"オ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ッ!!」

 

ナルガクルガが動きを見せた!姿を見せると月面宙返りよろしく身を大きく翻して、ヒューイさんに向けて尻尾を振り下ろした!

 

「ヒュー――」

 

私がたまらず声を上げようとした、その時だった。

 

 

「チェストオオオオォォォォォォォッ!!」

 

 

裂帛の気合、その鋭い猿叫が響くと同時にヒューイさんが抜刀、一閃。振り下ろされていたナルガクルガの尻尾が、地面を叩く前に半ばで両断されていた。その凄まじい斬撃と衝撃でナルガクルガは吹っ飛び岩壁に顔面を強打した。

 

「ベリオロス!氷嵐砲連射!撃ちまくれぇ!!」

 

そこへすかさず追い討ちをかける!!何発も連射された氷嵐砲による特大の竜巻は吹雪となってナルガクルガを包み込んだ。やがて、竜巻が止んで晴れていくと、ナルガクルガは完全に動きを止めていた。

 

「ショウ、仕上げだ」

 

「はい!行け、モンスターボール!」

 

納刀しつつ自然体に戻ったヒューイさんに促され、私はモンスターボールをナルガクルガに投げた。ボールはナルガクルガを完璧に捉え、見事捕獲することに成功した!

 

「ナルガクルガ希少種、捕獲完了!」

 

「……ふぃー、疲れたなぁ」

 

「ヒューイさん、お疲れ様でした。……本当に、すごかったです。ドンドルマの英雄……これが、ミラボレアスを単身撃破した実力なんですね」

 

「いやいや、ショウがいてくれたから比較的スムーズに行ったんだよ。ショウがいなけりゃ、ドンカラスを守りながら戦わなきゃならんかった。だが、ショウとベリオロスがいてくれたおかげで、ナルガクルガがドンカラスを気にする余裕もないまま捕獲できた。間違いなく、お前さんがいてくれたおかげだよ」

 

私がヒューイさんを評価すれば、ヒューイさんも私を評価してくれた。……うん、嬉しい。初見時こそは私が足を引っ張ってしまったので、その分嬉しさも一入だ。

 

「んじゃ、帰るかぁ」

 

「はい!」

 

これは胸を張って帰ることが出来る……所謂、凱旋だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウがヒューイと共にナルガクルガ希少種を捕獲して数日。今はいつ現れるともしれないミラボレアスに備えて、各々が己を磨く日々を過ごしていた。

そんな中、ヒューイは放牧場で子供たちと遊んでいるショウとジンオウガを眺めていた。子供たちを背中に乗せたり、超帯電状態を披露したり、ショウと共に大地を駆けたり……そんな一人と一頭を眺めていたところ、なにか閃いた様子でヒューイが立ち上がった。

 

「お?……おお?おおお!キタ、キタぞ!これは行ける!!」

 

それから、どこからともなく紙と筆を取り出すと何かを走り書きし始めた。書き終えると、大変満足した様子で何度も頷いている。

 

「よしよし……早速ショウにも見てもらおう」

 

「何を見てもらおうって?」

 

紙を手にショウの方へ歩き出したヒューイだが、やや刺を含んだ声色で呼び止められた。ヒューイが振り返った先には、忌々し気にヒューイを睨むアカイがいた。

 

「お、アカイ。いやぁ、ちょいと閃いたもんだから、インスピレーションを与えてくれたショウにも見てもらおうと思ってな」

 

「何の話だ」

 

「ははは……以前、ユクモ村に寄った時の話なんだが、村長さんが面白い歌を歌ってたんだ。一行につき決まった文字数で歌うんだが、俺も一つ歌わせてもらったのよ」

 

「……で、感想は?」

 

クッソダセエ(個性的ですわ)、ってさ」

 

「あっそ」

 

興味なさ気に振舞うアカイだが、ヒューイの言う歌の内容に聞き覚えがあるような気がする。そんなアカイの思考など知らず、ヒューイは話を続けた。

 

「そうだ!今回のはかなり自信があるんだ!お前の聞いてってくれよ!」

 

「なぜ俺が……はいはい、是非とも聞かせてもらおうじゃないか、英雄さんのセンスってやつをな」

 

「なんか棘がある気がするが……まぁいいか!それじゃあ、読むぞ!」

 

コホン、と咳払いをすると共に、ヒューイは自身が紙に書いた内容を読み上げた。

 

「いざ往かん 蒼光纏う 雷狼の 咆哮響く 古の国」

 

「!?!?!?!?」

 

「どうだ?結構自信があるんだぜ?」

 

「クッソダセエ」

 

「おいいぃ!?」

 

とりあえず一刀両断にしたアカイだが、内心は激焦り状態だった。ヒスイ時代で歌われ、シンオウ時代にまで歌い継がれていた謎の和歌……その元凶が突然目の前に現れたのだから、驚く他ない。

 

「(俺がコイツに話しかけなければ、ショウはこの詩を聴いていた。それが、シンオウの時代にまで伝わっただと……!?つまり、この世界があの世界線ならどのみちミラボレアスは倒されていた……だが、詩が残ったことで特異点となったのか?……ちっ、ここでは判断できん)」

 

「クッソー……自信あったんだけどなぁ。あ、それならショウたちにも聞いてみようか」

 

「今すぐやめろ、お前のセンスはヒスイ人には受け入れられない。どうせなら向こうに戻ったあとで、ユクモ村長に聴いてもらったらどうだ。元々、貴様のセンスに酷評を下したのは彼女だろ。意趣返しにもなるし、それでいいだろ」

 

「そ、そこまで言う?うーん……だが、ユクモ村長に俺のセンスを見直してもらういい機会でもあるか。よし、ここはお前の言うとおりにするか!サンキューな、アカイ!」

 

「あぁ(あっぶねぇ~……)」

 

ヒューイは気分良く踵を返し、放牧場を後にした。その後ろ姿が見えなくなってから、アカイは天を仰いだ。

 

「オマエノシワザダタノカ」

 

急速にドッと疲れたアカイは、そのまま止まっている部屋に向かって歩き始めた。その前に一度振り返り、子供たちと遊んでいるショウに目をやった。

 

「(……英雄といえど、子供は子供。ならば、この重みを背負わせる必要はないだろう)帰るか」

 

今一度踵を返し、アカイは歩きさっていく。こうして、当人のあずかり知らぬところで、一つの謎が収束に向かっていった。

 

 

 

 




英雄の強さを見せつけた結果、ナルガクルガ希少種、あっという間に捕獲完了……いや、相手が相手だから、これくらいは普通か?

そして、詩の原因はヒューイにありました。ヒューイがヒスイにやってきた時空の歪みは祖龍が起こしたもの。その祖龍もコトブキムラで会うまでヒューイを認識していなかった。
詩を考えたのはヒューイ、そしてそれを止めたのは紅龍……うーん、この。
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