デュエル脳はテラを救う   作:G1N

17 / 26
通常魔法(準制限カード)
(1):自分の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する場合、その内の5体を除外して発動できる。
自分はデッキから3枚ドローする。


尚、今回の場合はカードではなく、只の労働環境への嘆きな模様


終わりの始まり

――1096/12/25 午前

ロドス艦内 事務室前

 

「朝でもロドス艦内は忙しそうだな…」

 

朝早いというのに、多くのオペレーター達が艦内通路を往く。

その表情は様々で、夜勤から開放された者、これから業務に携わる者…共通しているのは、皆の顔には眠いと書いてある事だ。

 

「うぷ、やべ……ちょ、ちょっと止まろう」

 

対して俺は全く眠気など感じていなかった。

原因は昨日に引き続き、ハイビスの健康食を胃に詰め込んだからだ…

毎日食べることに意味があると彼女は言うが、アレをこれから三食摂取するなんて、考えただけでも恐ろしい。

勿論ハイビスの事も俺は事前に知っている。だから今のままでは、あの食事を毎日食べる羽目になるのは目に見えているのだ……

 

「そんな事になったら、俺の味覚が局部壊死してしまう…それだけは……」

 

その為、俺はなんとしても今の自分は怪我から復帰し、至って健康であることを示さなければならない。

オペレーターの適性検査は、俺が健康であることの訴えには十分だろう。

…どういう内容なのか全く知らないけど!

 

「確か…この角を曲がって、奥の部屋……」

 

段ボールやら、動いてないドローンやら…様々な障害を乗り越えつつ、俺が辿り着いた先は事務室。

アークナイツでは公開求人のタグリセットを早める為に、手持ちのオペレーターを配置させてたあの場所だ。

 

「う~、どうしよ……」

「んん?」

 

見れば事務室の前に、ちんまい子が手提げ鞄を持ったまま、困った様子で立っている。

全体的に紫っぽい服装に、ナイトキャップの様な帽子、前髪で多少隠れているが右目には眼帯を着けている。

…という事は、あの子はポプカルか。

 

「こんにちは、事務室前でどうしたんだ?」

「うひゃぁ!?」

「うおぅ!?」

 

そないにビックリせんでも…

俺も変な声出たわ…

 

「あ、こ、こんにちは…」

「うん、こんにちは」

「あぅ…えっと…」

「もしかして、事務室に用事?」

「う、うん…でもね…」

「じゃあ俺も用があるから、一緒に入ろっか?」

 

と、扉へと視線を向けるが…何やら張り紙がしてあり、乱雑に貼り付けられたのか、若干傾いている。

え~と何々…?

 

「急務に忙殺されているので、御用の方は時間を置いてお立ち寄りください…」

 

急務に忙殺、なんじゃそりゃ…

ロドスの事務方はそこまで忙しいのか?前線じゃなくても殺される様な環境って一体…

……いや、書類まみれになったドクターを見た後だしなぁ。そういう事もあり得る、のか?

よく見れば張り紙の字も走り書きだし、俺が思っている以上にロドスの業務量は多いのかもしれない。

 

「張り紙してあるから、入れなくて…」

「確かに入り辛いな…、でもその手に持った物は届け物なんだろ?」

「うん、オーキッドお姉さんが忘れていったの」

「それに、朝ごはんも食べてなかったから、持ってきたんだけど…」

 

オーキッドか…、確かポプカルと同室だったっけ?

細かい事はあまり覚えてないけど、取り敢えず事務室に入らない事にはどうしようもないな。

 

「そういう事なら入ろう。悪い事しに来たわけじゃないんだから、大丈夫だ」

「で、でも…」

「おじゃましま~す」

 

不安そうにするポプカルを尻目に、事務室へ入る。

幸い鍵は掛かっておらず、すんなりと中へと進むことが出来た。

 

「…誰?扉の張り紙が見えなかったの?」

「いやぁ、こっちも急用だったもので…」

「……本当に誰?」

 

突然現れた俺を訝し気に睨んでくる。

お洒落な外装に身を包んでいて、事務室での仕事をしている人間とは思えない。

だけど事務仕事を片付ける姿が様になっている…うむ、間違いなくオーキッドだ。

 

「俺の話は後で、ほれこっち」

 

そう言った後、後ろに居たポプカルに手招きする。

 

「お、オーキッドお姉さん」

「あら、ポプカル?」

「忘れものだよ。後ごはんもちょっとだけ…」

 

おずおずと手提げ鞄をオーキッドに渡す。

中の物を確認したようで、少し表情が綻ぶ。

 

「食事まで持ってきてくれたの?…ありがとう、助かったわ」

「張り紙を見て、部屋の前で困ってたんですよ」

「そうだったの…」

「…待って、カタパルトは?一緒じゃないの?」

「ポプカルのおふとんで寝ちゃった」

「……」

 

あぁ、ちょっと表情が優しくなってたのに…

また怒りのボルテージが上がっていく…

 

「はぁ…朝早くに来てくれて助かったと思ってたら…」

「カタパルトお姉さん、起こしてこようか?」

「もういいわ…ポプカルはここに居て頂戴、…退屈かもしれないけどいい?」

「うん!」

 

良い返事をしたポプカルは、部屋の一角にある少し高そうなソファに座った。

そして何処からともなくうさぎのぬいぐるみを取り出し…いや、どっから出したんだソレ…

 

「…で、貴方の用件は?」

「あっはい。…オペレーターの適正検査?っていうのはここで受けられるんですか?」

「あぁ、じゃあそこの書類に記入して欲しいのだけれど、読み書きは出来る?」

「大丈夫です」

「そう?じゃあ書いてある通りに記入して頂戴」

 

そう言うとすぐさま別業務に取り掛かり始めた。

見て御覧、あれがワーカーホリックだよ。いやシャレにならん。いやオーキッドはお洒落だけども…

 

――

 

「はい、じゃあこれでオペレーター登録も完了ね…」

「へ?こ、これで終わり!?」

「そう言ってるでしょ…後、私は貴方がどの所属になるかは知らないわよ。でも前線の方になるんじゃないかしら?」

「いやいや、話がトントン拍子に進み過ぎなんだよ。俺の心の準備は!?」

「そんな事言われても、私が知るところじゃないわ」

「そ、れは…そうかもしれないけどさぁ!」

「なんか身体測定とか運動能力のテストとかあると思ってたのに、そういうのは無いのか?」

「貴方に関しては、少なくとも今すぐには無いみたいね…」

 

書いた書類を渡したら、ものの数分で採用が決まったんだが?絶対にこれは何か裏があるウラ!間違いないウラ!

というか、"貴方は"ってどういう意味だ…

 

「ドクターくんから話は聞いているもの。私の一存で不採用になんて出来ないわ」

「へ…?」

「あ、あー……」

「そういう事…既にドクター達から話を聞いてたのか、…だとしてもだ。俺の事が怪しいとか思わないのか?」

「思ってるわよ?」

 

そんなに平然と言うなよ。それにそう思っているなら、何かしら俺に疑問を投げかけるべきでは?

それともドクター達が決めた事だと、部下は問答無用で従わないといけないとか…?

け、権力ってヤツか…

 

「変に考え込む必要はないわよ。ロドスのトップ達が、貴方の採用を歓迎するって言っているんだから」

「話が通っていた以上、私の考えが入り込む余地が無かっただけ。多少の不安はあるけれど、後の判断も私がすることではないから…」

「は、はぁ…そういうものか」

「そういうものよ。…それにしたって、伝えられた次の日に受付に来るなんて思ってなかったけれど」

「まぁ、色々事情があるんスよ…」

「…源石病は上手く付き合いながら生きていくしかないのよ。無理に身体を動かしたって、結局は自分に返って来るだけ」

「いや、そういうのじゃないっす…」

「…?そうなの?」

 

ラウラと二人分の生活費を稼ぐには、少しでも早く金銭面で余裕を持ちたいというのが本音の一つだが…

そうだとしても、ハイビスのトンデモ健康食を食わない為って言ったら、普通に納得してくれそうだな…

 

「これで用件は済んだかしら?」

「済んだな…そっか……」

「そう、詳しい事は追って連絡が入ると思うから、それまでまた、一応安静にしていて頂戴」

「う、うっす…」

 

すごい拍子抜けで逆に困るな…

まぁ問題もなく採用が決まったなら、良かったのかな?

 

―――

――

 

――1096/12/27 正午

ロドス艦内 購買部事務室前

 

「よ~し!じゃあまずはお客さんへの挨拶からねー!」

「はい、いらっしゃいませー!」

「なんで?」

「なんでじゃな~い!いらっしゃいませー!」

「い、いらっしゃいませ…」

 

なんでだよ、俺の配属先色々おかしいって!

何故俺は前線オペレーターとしての登録を済ませたのに、購買部で働かされそうになってるんだ…

どうしてこうなった…

 

「ちょっとユウリく~ん?ちゃんとやってくれないと困るなぁ客商売なんだから!」

「よく言うわ、ぼったくり価格の癖に…」

「何か言った!?」

「ナンデモナイデス」

 

マニュアルの挨拶を身体と頭に馴染ませながら、どうしてこんな事になっているのかと色々思い出してみた結果、一つの結論に至った。

それは、ロドス・アイランドが配属先に関わらず、フレキシブルな人員配置を許可しているという事だ。

例えば、我らがCEOであるアーミヤは、文字通りロドスの最高経営責任者でありながら、その卓越したアーツの扱いから前線へと駆り出す事もある。

実際、ドクター救出の際には最前線に立っていたわけで、術師としての実力も申し分ない。

つまり実力さえあれば、別の部署の業務を請け負う事も可能というわけだ。

それがどういう事を意味するかと言うと…

 

「なぁクロージャお姉さま?」

「何かねユウリ君」

「俺は前線オペレーターに配属されたって聞いたんですけど」

「あ~それね、残念ならが確かに前線オペレーターに配属されたね」

 

残念がるなよ、良いだろ別に…

 

「だけど優秀なデュエリストを、ただ前線へ向かわせるだけなのはもったいない!ってなってね?」

「…その結果、俺をこの購買部の店員に?」

「何?嫌なの?」

「イエ、ベツニ…」

「片言で反応しない!…一応ドクター達とも話し合った結果こうなってる訳だから、異議申し立てはそっちにお願いね?」

 

実際の所、前線以外にも役回りがあるなら、手が回せる程度であれば問題ない。

その分ラウラに構ってやれる時間が無くなりそうだが…、あの子もまぁ、分かってくれるだろう。多分…

 

「その他に、後方業務と新人デュエリストの育成、後エンジニア部にもデュエルディスクとか…その辺の調整を手伝ってもらうから」

「」

 

多すぎて聞き取れなかった。

確実に一人で担っていいレベルの業務量を超えているんだが?

 

「も、もっかい言ってくれます…?」

「前線、後方、エンジニア、デュエル限定の教官、購買部の店員って感じかな~」

「感じかな~、じゃねーよ!明らかにフレキシブルの域超えてんだろうが!」

「ノリツッコミが好きなの?」

「違ぇよ!寧ろボケでそれを言ってるだけなら安心するレベルだわ!」

「安心して、大マジだから」

「ぐおおぉー!」

 

この惨状を、ロドスのトップ達が許可したとか考えたくない…

いや待て、寧ろ医療部には配属されてないことを喜ぶべきなのか…?

 

「私としては、購買部に強力な助っ人が来てくれて大助かりってとこかな。エンジニア部には偶に顔見せるくらいでいいよ」

「嘘だろこんなの、絶対おかしいって…」

「まぁまぁ…というわけで、マニュアルはこれくらいにして…と」

 

そう言うと、以前の様に辺りの物を物色し始めた。俺の事はお構いなしか…

幾つかの段ボールを確認した後、お目当ての物を発見したようで、クロージャはその段ボールを両手に抱え此方へ運ぶ。

そこそこの重みがあるようで、テーブルの上に置かれた際に、使い込まれたテーブルが軋む。

 

「よい、しょ…君にはこれを担当してもらうから、適任でしょ?」

「これは…、デュエルモンスターズのカードパック?ロドス艦内で取り扱ってるんですか?」

「つい最近入荷の体勢が整ってね。…まぁ、資金はかなりカツカツなんだけど」

「じゃあやっぱりあのデュエルディスクも?」

「そうだよ。あれはロドス限定モデルなんだ!ユウリ君にはアーツの事もあるし、出世払いでレンタルしてあるからね」

「……レンタル代、タダって事には」

「絶対駄目」

 

強制で貸し出しておいて、代金は普通に払わせるのかよ。

今の俺には、ロドス内で受け取れる補助金分の資金しか無いんだぞ…

 

「という訳で、カードパック関連とその他必要そうな物があれば相談に乗るから」

「完全にカード関連は俺に投げるのかぁ」

「多分君ぐらい詳しいオペレーターって、ロドスに数える程しか居ないんだよね…」

「嘘でしょ…」

「私も嘘だと思いたいけどねぇ…、悲しいことに現実なんだなぁこれが…」

「えぇ…」

 

そんな訳で、既にブラック労働が確定した訳だが…

カードショップの店員ってメチャ大変だって聞いた事あるけど、俺以外にも手伝ってくれる人いるのかな。

出来ればデュエルモンスターズに精通していると助かるんだけど、ロドスにはあんまり居ないらしいし…

 

「取り敢えず、カードパックの価格設定だよね!メーカー希望価格は~?」

 

絶対割高で売り出す気だ、俺にはわかる。




今回で1.5章は完結です。ありがとうございました!

……え?全然ロドス内でデュエルしてないやん!だって?

…うん、どうにもね。
チェルノボーグから龍門までの移動期間で、何かしらイベント起こすの時間的にキツイんだよ!

何でユウリ君起きてるの!?寝ててよ龍門に着くまで!
よく考えたら本来はドクターも龍門に着くまで寝てたんだったわ!すまんな仕事させて!


という感じで、結局ストーリーに沿った方が自然な流れになりそうなので、このまま2章に進めたいと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。