(1):自分の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する場合、その内の5体を除外して発動できる。
自分はデッキから3枚ドローする。
尚、今回の場合はカードではなく、只の労働環境への嘆きな模様
――1096/12/25 午前
ロドス艦内 事務室前
「朝でもロドス艦内は忙しそうだな…」
朝早いというのに、多くのオペレーター達が艦内通路を往く。
その表情は様々で、夜勤から開放された者、これから業務に携わる者…共通しているのは、皆の顔には眠いと書いてある事だ。
「うぷ、やべ……ちょ、ちょっと止まろう」
対して俺は全く眠気など感じていなかった。
原因は昨日に引き続き、ハイビスの健康食を胃に詰め込んだからだ…
毎日食べることに意味があると彼女は言うが、アレをこれから三食摂取するなんて、考えただけでも恐ろしい。
勿論ハイビスの事も俺は事前に知っている。だから今のままでは、あの食事を毎日食べる羽目になるのは目に見えているのだ……
「そんな事になったら、俺の味覚が局部壊死してしまう…それだけは……」
その為、俺はなんとしても今の自分は怪我から復帰し、至って健康であることを示さなければならない。
オペレーターの適性検査は、俺が健康であることの訴えには十分だろう。
…どういう内容なのか全く知らないけど!
「確か…この角を曲がって、奥の部屋……」
段ボールやら、動いてないドローンやら…様々な障害を乗り越えつつ、俺が辿り着いた先は事務室。
アークナイツでは公開求人のタグリセットを早める為に、手持ちのオペレーターを配置させてたあの場所だ。
「う~、どうしよ……」
「んん?」
見れば事務室の前に、ちんまい子が手提げ鞄を持ったまま、困った様子で立っている。
全体的に紫っぽい服装に、ナイトキャップの様な帽子、前髪で多少隠れているが右目には眼帯を着けている。
…という事は、あの子はポプカルか。
「こんにちは、事務室前でどうしたんだ?」
「うひゃぁ!?」
「うおぅ!?」
そないにビックリせんでも…
俺も変な声出たわ…
「あ、こ、こんにちは…」
「うん、こんにちは」
「あぅ…えっと…」
「もしかして、事務室に用事?」
「う、うん…でもね…」
「じゃあ俺も用があるから、一緒に入ろっか?」
と、扉へと視線を向けるが…何やら張り紙がしてあり、乱雑に貼り付けられたのか、若干傾いている。
え~と何々…?
「急務に忙殺されているので、御用の方は時間を置いてお立ち寄りください…」
急務に忙殺、なんじゃそりゃ…
ロドスの事務方はそこまで忙しいのか?前線じゃなくても殺される様な環境って一体…
……いや、書類まみれになったドクターを見た後だしなぁ。そういう事もあり得る、のか?
よく見れば張り紙の字も走り書きだし、俺が思っている以上にロドスの業務量は多いのかもしれない。
「張り紙してあるから、入れなくて…」
「確かに入り辛いな…、でもその手に持った物は届け物なんだろ?」
「うん、オーキッドお姉さんが忘れていったの」
「それに、朝ごはんも食べてなかったから、持ってきたんだけど…」
オーキッドか…、確かポプカルと同室だったっけ?
細かい事はあまり覚えてないけど、取り敢えず事務室に入らない事にはどうしようもないな。
「そういう事なら入ろう。悪い事しに来たわけじゃないんだから、大丈夫だ」
「で、でも…」
「おじゃましま~す」
不安そうにするポプカルを尻目に、事務室へ入る。
幸い鍵は掛かっておらず、すんなりと中へと進むことが出来た。
「…誰?扉の張り紙が見えなかったの?」
「いやぁ、こっちも急用だったもので…」
「……本当に誰?」
突然現れた俺を訝し気に睨んでくる。
お洒落な外装に身を包んでいて、事務室での仕事をしている人間とは思えない。
だけど事務仕事を片付ける姿が様になっている…うむ、間違いなくオーキッドだ。
「俺の話は後で、ほれこっち」
そう言った後、後ろに居たポプカルに手招きする。
「お、オーキッドお姉さん」
「あら、ポプカル?」
「忘れものだよ。後ごはんもちょっとだけ…」
おずおずと手提げ鞄をオーキッドに渡す。
中の物を確認したようで、少し表情が綻ぶ。
「食事まで持ってきてくれたの?…ありがとう、助かったわ」
「張り紙を見て、部屋の前で困ってたんですよ」
「そうだったの…」
「…待って、カタパルトは?一緒じゃないの?」
「ポプカルのおふとんで寝ちゃった」
「……」
あぁ、ちょっと表情が優しくなってたのに…
また怒りのボルテージが上がっていく…
「はぁ…朝早くに来てくれて助かったと思ってたら…」
「カタパルトお姉さん、起こしてこようか?」
「もういいわ…ポプカルはここに居て頂戴、…退屈かもしれないけどいい?」
「うん!」
良い返事をしたポプカルは、部屋の一角にある少し高そうなソファに座った。
そして何処からともなくうさぎのぬいぐるみを取り出し…いや、どっから出したんだソレ…
「…で、貴方の用件は?」
「あっはい。…オペレーターの適正検査?っていうのはここで受けられるんですか?」
「あぁ、じゃあそこの書類に記入して欲しいのだけれど、読み書きは出来る?」
「大丈夫です」
「そう?じゃあ書いてある通りに記入して頂戴」
そう言うとすぐさま別業務に取り掛かり始めた。
見て御覧、あれがワーカーホリックだよ。いやシャレにならん。いやオーキッドはお洒落だけども…
――
―
「はい、じゃあこれでオペレーター登録も完了ね…」
「へ?こ、これで終わり!?」
「そう言ってるでしょ…後、私は貴方がどの所属になるかは知らないわよ。でも前線の方になるんじゃないかしら?」
「いやいや、話がトントン拍子に進み過ぎなんだよ。俺の心の準備は!?」
「そんな事言われても、私が知るところじゃないわ」
「そ、れは…そうかもしれないけどさぁ!」
「なんか身体測定とか運動能力のテストとかあると思ってたのに、そういうのは無いのか?」
「貴方に関しては、少なくとも今すぐには無いみたいね…」
書いた書類を渡したら、ものの数分で採用が決まったんだが?絶対にこれは何か裏があるウラ!間違いないウラ!
というか、"貴方は"ってどういう意味だ…
「ドクターくんから話は聞いているもの。私の一存で不採用になんて出来ないわ」
「へ…?」
「あ、あー……」
「そういう事…既にドクター達から話を聞いてたのか、…だとしてもだ。俺の事が怪しいとか思わないのか?」
「思ってるわよ?」
そんなに平然と言うなよ。それにそう思っているなら、何かしら俺に疑問を投げかけるべきでは?
それともドクター達が決めた事だと、部下は問答無用で従わないといけないとか…?
け、権力ってヤツか…
「変に考え込む必要はないわよ。ロドスのトップ達が、貴方の採用を歓迎するって言っているんだから」
「話が通っていた以上、私の考えが入り込む余地が無かっただけ。多少の不安はあるけれど、後の判断も私がすることではないから…」
「は、はぁ…そういうものか」
「そういうものよ。…それにしたって、伝えられた次の日に受付に来るなんて思ってなかったけれど」
「まぁ、色々事情があるんスよ…」
「…源石病は上手く付き合いながら生きていくしかないのよ。無理に身体を動かしたって、結局は自分に返って来るだけ」
「いや、そういうのじゃないっす…」
「…?そうなの?」
ラウラと二人分の生活費を稼ぐには、少しでも早く金銭面で余裕を持ちたいというのが本音の一つだが…
そうだとしても、ハイビスのトンデモ健康食を食わない為って言ったら、普通に納得してくれそうだな…
「これで用件は済んだかしら?」
「済んだな…そっか……」
「そう、詳しい事は追って連絡が入ると思うから、それまでまた、一応安静にしていて頂戴」
「う、うっす…」
すごい拍子抜けで逆に困るな…
まぁ問題もなく採用が決まったなら、良かったのかな?
―――
――
―
――1096/12/27 正午
ロドス艦内 購買部事務室前
「よ~し!じゃあまずはお客さんへの挨拶からねー!」
「はい、いらっしゃいませー!」
「なんで?」
「なんでじゃな~い!いらっしゃいませー!」
「い、いらっしゃいませ…」
なんでだよ、俺の配属先色々おかしいって!
何故俺は前線オペレーターとしての登録を済ませたのに、購買部で働かされそうになってるんだ…
どうしてこうなった…
「ちょっとユウリく~ん?ちゃんとやってくれないと困るなぁ客商売なんだから!」
「よく言うわ、ぼったくり価格の癖に…」
「何か言った!?」
「ナンデモナイデス」
マニュアルの挨拶を身体と頭に馴染ませながら、どうしてこんな事になっているのかと色々思い出してみた結果、一つの結論に至った。
それは、ロドス・アイランドが配属先に関わらず、フレキシブルな人員配置を許可しているという事だ。
例えば、我らがCEOであるアーミヤは、文字通りロドスの最高経営責任者でありながら、その卓越したアーツの扱いから前線へと駆り出す事もある。
実際、ドクター救出の際には最前線に立っていたわけで、術師としての実力も申し分ない。
つまり実力さえあれば、別の部署の業務を請け負う事も可能というわけだ。
それがどういう事を意味するかと言うと…
「なぁクロージャお姉さま?」
「何かねユウリ君」
「俺は前線オペレーターに配属されたって聞いたんですけど」
「あ~それね、残念ならが確かに前線オペレーターに配属されたね」
残念がるなよ、良いだろ別に…
「だけど優秀なデュエリストを、ただ前線へ向かわせるだけなのはもったいない!ってなってね?」
「…その結果、俺をこの購買部の店員に?」
「何?嫌なの?」
「イエ、ベツニ…」
「片言で反応しない!…一応ドクター達とも話し合った結果こうなってる訳だから、異議申し立てはそっちにお願いね?」
実際の所、前線以外にも役回りがあるなら、手が回せる程度であれば問題ない。
その分ラウラに構ってやれる時間が無くなりそうだが…、あの子もまぁ、分かってくれるだろう。多分…
「その他に、後方業務と新人デュエリストの育成、後エンジニア部にもデュエルディスクとか…その辺の調整を手伝ってもらうから」
「」
多すぎて聞き取れなかった。
確実に一人で担っていいレベルの業務量を超えているんだが?
「も、もっかい言ってくれます…?」
「前線、後方、エンジニア、デュエル限定の教官、購買部の店員って感じかな~」
「感じかな~、じゃねーよ!明らかにフレキシブルの域超えてんだろうが!」
「ノリツッコミが好きなの?」
「違ぇよ!寧ろボケでそれを言ってるだけなら安心するレベルだわ!」
「安心して、大マジだから」
「ぐおおぉー!」
この惨状を、ロドスのトップ達が許可したとか考えたくない…
いや待て、寧ろ医療部には配属されてないことを喜ぶべきなのか…?
「私としては、購買部に強力な助っ人が来てくれて大助かりってとこかな。エンジニア部には偶に顔見せるくらいでいいよ」
「嘘だろこんなの、絶対おかしいって…」
「まぁまぁ…というわけで、マニュアルはこれくらいにして…と」
そう言うと、以前の様に辺りの物を物色し始めた。俺の事はお構いなしか…
幾つかの段ボールを確認した後、お目当ての物を発見したようで、クロージャはその段ボールを両手に抱え此方へ運ぶ。
そこそこの重みがあるようで、テーブルの上に置かれた際に、使い込まれたテーブルが軋む。
「よい、しょ…君にはこれを担当してもらうから、適任でしょ?」
「これは…、デュエルモンスターズのカードパック?ロドス艦内で取り扱ってるんですか?」
「つい最近入荷の体勢が整ってね。…まぁ、資金はかなりカツカツなんだけど」
「じゃあやっぱりあのデュエルディスクも?」
「そうだよ。あれはロドス限定モデルなんだ!ユウリ君にはアーツの事もあるし、出世払いでレンタルしてあるからね」
「……レンタル代、タダって事には」
「絶対駄目」
強制で貸し出しておいて、代金は普通に払わせるのかよ。
今の俺には、ロドス内で受け取れる補助金分の資金しか無いんだぞ…
「という訳で、カードパック関連とその他必要そうな物があれば相談に乗るから」
「完全にカード関連は俺に投げるのかぁ」
「多分君ぐらい詳しいオペレーターって、ロドスに数える程しか居ないんだよね…」
「嘘でしょ…」
「私も嘘だと思いたいけどねぇ…、悲しいことに現実なんだなぁこれが…」
「えぇ…」
そんな訳で、既にブラック労働が確定した訳だが…
カードショップの店員ってメチャ大変だって聞いた事あるけど、俺以外にも手伝ってくれる人いるのかな。
出来ればデュエルモンスターズに精通していると助かるんだけど、ロドスにはあんまり居ないらしいし…
「取り敢えず、カードパックの価格設定だよね!メーカー希望価格は~?」
絶対割高で売り出す気だ、俺にはわかる。
今回で1.5章は完結です。ありがとうございました!
……え?全然ロドス内でデュエルしてないやん!だって?
…うん、どうにもね。
チェルノボーグから龍門までの移動期間で、何かしらイベント起こすの時間的にキツイんだよ!
何でユウリ君起きてるの!?寝ててよ龍門に着くまで!
よく考えたら本来はドクターも龍門に着くまで寝てたんだったわ!すまんな仕事させて!
という感じで、結局ストーリーに沿った方が自然な流れになりそうなので、このまま2章に進めたいと思います。