デュエル脳はテラを救う   作:G1N

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この物語は


皆様が思っているほど


硬派ではない


あと


オリジムシの体液は


くさい


世界にデュエルがあるという事

この辺りでは野生生物が現れることがある。大人しい奴もいれば、此方を見るなり襲ってくるようなものまで多種多様だ。

特にオリジムシなんかは、広く分布しているのかよく見かける。ネットミームに汚染された俺にとっては、オリジムシは食べようと思えば食べられる物だと認識していた。

で、試してみた結果だが、外殻は固い上に尖ってて危ない。捌こうにも身離れは悪いわくっせぇわで、食べる食べない以前の問題だった。

だがオリジムシを見かけるたびに、これって食えるんじゃ→上手く捌けない→もう狩るの止めよう、のループを繰り返している。

そして今現在も、目の前にいるオリジムシを見つめながらそう思っている…

 

「…腹減ったなぁ」

 

思えば随分と長い間、まともな食事を取っていない。薄い塩味の野菜スープに、運が良ければ芋かパンが付いてくる。

たんぱく質が、それも動物性の物が圧倒的に足りない。肉食いてぇ…

最悪自分が食えなくてもいい。ラウラの分だけでも調達できれば、体調も良くなるとは思うんだけど…

 

「ハァ~…肉ゥ…」

 

無いものねだりをしていると、オリジムシの隣にもう一匹…白い地面と一体化する様に別の生き物がいた。

モフモフとした毛と大きな耳。あれは正しく…

 

「きゅ~」

 

……うさぎだ!それもそこそこに肥えている!

 

「…稲荷火、あのオリジムシのとなりにいる白兎だ。アレを狙うぞ」

 

所有者の指示を聞き、稲荷火は炎のエネルギーを体内に蓄積させる…

 

「……、行けッ!」

 

溜め込んだエネルギーを爆発させ、獲物に向かって驀進する!

…が

 

「きゅ!?」

 

突然稲荷火がバチンと弾かれ宙を舞う。

それと同時に、自分自身にも大きな衝撃波の様なものを浴びる。

 

「ぬおぉっ!?」

「…な、なんだ?何が起こったんだ?」

 

だがそんなこともつゆ知らず、うさぎは駆けて行ってしまう。

いやまて!折角の肉が!逃げられては堪らん!!

 

「あぁ!?MA☆TTE!!」

 

―――

――

 

「……」

「お、おい、ユウリ…?そこまで落ち込むなよ。たかが野兎じゃないか、なぁ?」

「うるさいよ…」

 

結局、俺は対した収穫も無いまま帰路に就くこととなった。ちくせう…

手ぶらでは申し訳が立たないので、皆が見つけた多少の食べ物やらを自分で持つ。薪に使用する木材なんかは、召喚したモンスターに運んでもらう。

 

「…なぁユウリよ、重い木材を誰よりも運んでくれるのは助かるんだがな、その…」

「なんだよ…」

「いや、もう少しマシな運び手は居ないのかな…と」

「ムゥ?」

 

俺の隣にいるモンスターが視線を此方に移す。場に出しているのは《ガガギゴ》等を初めとした、屈強な肉体を持つモンスター達だ。場に五体までは召喚出来るので、今はそれをフル活用している。

しかしこれだけ召喚した後は、アーツを使う反動なのか物凄く疲れてしまう。

だが村の為になるなら、多少の疲労などは問題ない。

 

「いやいや適任だろ。カッコいいし、それに俺のデッキでも強い部類のカードなんだ」

「そ、そうかい…」

 

まぁ見た目に萎縮するのは分かる。俺も最初にモンスターを召喚した時は、かなり怖かったし。

と、世話話をしていればもうすぐ村に着きそう……だ……?

 

「きゅー!?」

「あの時の兎ィーッ!」

「は?兎?何処だ?」

 

見間違う事はない。あのまん丸真っ白な体躯!ぴょこりと動く耳!

まさか村の方角に移動していたとは!

 

「ここであったが数時間前!行け稲荷…あ」

 

しまった…モンスターカードを置くスペースが、もうデュエルディスクに無い。

モンスター達が木材を捨てれば、捕まえられるかもしれない。だが、折角運んできた資源を無駄にするわけにはいかない。

 

「きゅぅ~!」

「あぁっ、村の方に逃げた!」

「いや兎なんて何処にも…おいユウリ!」

 

村の方に逃げたのであれば、兎はもう追い込まれたようなものだ。そうなれば俺が引導を渡してやろう…!

早く村に急ぐぞとモンスター達を急かし、帰路を急いだ。

 

―――

――

 

「きゅ、きゅっ」

「ま、待ちやがれ…くそ…はえぇ……」

 

野生動物全般にも言える事だが、兎は人間より速い。一度奴らが本気になって逃げようものなら、見失うのは一瞬だ。

加えて俺はアーツを使用した後の為、身体が重くて、見失わないように追うので精一杯だった。

 

「はへぇ…はぁ……ぁ、あ?」

 

村の入口に差し掛かろうかという所、人影が視界に移る。

 

「そ、そんな監視官様!この辺りはもう、ウルサスの発展に貢献出来る様な土地ではございません!」

「それは我々が判断する事だ。それともお前たちの様な輩が、我がウルサスの国土を自由に荒らして良いとでも?」

「荒らすなど滅相もございません…!しかし、ここを失えば私達は生きる場所を失ってしまいます…!どうか、どうかご慈悲を……」

 

兎どころではないと感じた直後、状況を掴むために物陰に身を隠す。

 

「……ウルサスの士官が、なぜ今ここに?」

 

村の廃墟の前に一人、軍服を着た男が立っている。その男に向かって、震えながら泣きそうになっている村人が命乞いをしている構図だ。

 

「お前、感染者ではないな?だがここには複数人の感染者がいると報告を受けている。」

「そ、それは……」

「さっさとそいつらを此処へ呼んで来い。そうすれば感染者以外の者には手を出さないでやろう」

 

自分が持ってきた資源は、何時でも運べるよう村の近くに置いてきた。

荷運びを手伝ってくれたモンスターカード達は一旦デッキに収め、デュエルディスクは何時でも使える様にしてある。

 

「うわぁ…あからさまに不味いな」

 

今俺がすべきことは、先ずはアンドン達に村に帰ってくると不味いと伝える事だ。

 

「…よし、このカードだ」

 

呼び出すモンスターは《本の精霊 ホーク・ビショップ》。何の効果も持たない所謂バニラカードだが、意思疎通を図れる伝令役にはピッタリのハズだ。

 

「お呼びですか、我が主よ」

「おぉ…普通に喋れるのな…」

 

高い知恵なんて書いてあったけど、まさか会話出来るとは…

村の近くまで来ているはずのアンドン達に、今の状況を伝えて欲しいと頼む。

本の精霊は一刻を争う事もあり、手早く受け答えを済ませ、羽根を広げ飛んでいった。

 

「おい!こっちに感染者のガキがいたぞ!」

「い、痛いよ!離して!」

「コイツ床下になんぞ隠れやがって!こっちに来い!」

「あぁ!ラウラちゃん!?そ、その子はこの村の子ではありません!見逃して下さい!」

「な…!?」

 

不味い、非常に不味い。士官はもう一人いた。

もう一人が家屋を調べ回って、姿を見せなかったせいで気付けなかった。

これではアンドンの帰りを待っている余裕も、もう俺達がこの村に留まれる理由も無くなってしまった…

今まで迷惑を掛ける前に村から村へ移動してきたのに…。それにここで捕まってしまっては、今までの苦労が全て台無しになる。

 

「きゅぅ~!」

「さ、さっきのうさぎ…やめっ…!俺まで見つかるだろ!」

「きゅー!」

「…ん?そこに誰かいるのか?」

「きゅ!きゅ!」

「ヤバイ!くそ…こうなったら……」

 

いざとなればアーツを使って、無理矢理にでもラウラを助け出す。

そのままこの場所を離れればいい。この村もこれ以上、俺達が関わって厄介ごとを持ち込まれたくは無いだろう。

だから仕方ない、仕方ない事なんだと自分に言い聞かせる。

 

「…抵抗はしない。だからその子を離してくれないか」

「ユ、ユウリにぃ!助けて!」

「何だガキの家族か、じゃあお前も感染者だろう。早くこっちへ来い!」

「分かった。分かったからその子に乱暴しないでくれ」

 

士官の片方はラウラを拘束して手が塞がっている。問題はもう片方だ。

探し回っていた奴とは違う。何というか…目つきや気迫が違う気がする。

なんとか隙を見つけて、この二人を出し抜かないと…

 

「……俺達は最近この村にやってきた。勿論源石病感染者だ。士官さん達に報告があったのは、俺達が他所からやってきて、目立ったからだと思うぜ」

「あぁ?何をベラベラと…」

「この村には、俺達以外に感染者は居ないんだよ。俺達はこの村で、都合よく労働力として働かされてたのさ」

「…煩い奴だ。結局何が言いたい」

「早く俺達を連れていけ。それで今回の件はお終いだ。…それに、仮にも世話になった村だ。これ以上滅茶苦茶になって欲しくはない」

「フン、さっきの話を盗み聞きしてた訳か。だが感染者の言う事を鵜呑みには出来ん」

「ユ、ユウリ…」

 

そんな目で俺を見るなよ、嘘がバレたらどうする…

それにこいつ等、まだこの場を離れないつもりか…?士官はこの二人だけだと思いたい。

だがまだ仲間がいてそいつらが家探し中なら、かなり不味い事になる。

 

「…ほう。お前一丁前にデュエルディスクなんてぶら下げてるのか」

「少しでも俺のデュエルディスクに触れてみろ、許さないぞ」

「口の利き方がなってないなぁ!」

「う゛っ、ぐ…」

 

俺が抵抗出来ない事を良いことに、士官の一人が俺の腹を思いっきり殴る。

 

「ユウリにぃ!」

「次からは気を付けろ。…当然デッキも所持しているか」

「だったら、何だ?」

「このデッキは私が押収させてもらおう。どの道デュエルする相手も、今まで居なかったのだろう?」

「何!?な、何で俺のデッキが押収されきゃいけないんだ!」

「デュエリストにとってデッキは命に等しい。デッキを失えば、お前は終わりだからだ!」

「へ…終わ……え?」

 

……ん?ん??

あ、なんかこういう展開、前世で見た気がする。

 

「お前の様な感染者には、カードなんて勿体ない。宝の持ち腐れというやつだ」

 

勘違いであって欲しいけど、これお相手は所謂"デュエル脳"って奴じゃないか?嘘だろ…

今までシリアスな展開を守ってきたじゃないか。

そりゃカード拾ったりとか、そもそも何でデュエルモンスターズのカードが、テラに存在してるんだとか、普通におかしいよなぁ…って思ってたよ!

でもあるじゃん!アークナイツには重苦しくて重厚なストーリーがさ!だからカードの事は頑張ってスルーしたり、取り繕ったりしてきたのに!

 

「ま、まぁマテ…待て待て。そ、そうは言っても、アンタが俺のデッキを持って行くにしてもだ。ホラその…利点がないだろ?」

「フン、分からないか。まぁ一度もデュエルをしたことがない素人には、分かる筈もないか」

 

嫌だ、分かりたくない。というか薄々勘づき始めたよ!お前が色々反応するせいで!

 

「あ、あの……まさかとは思うんですが、もしかしてデュエ…」

「そうだ!私はウルサス士官でもあり!そしてその中でも上位に食い込む程のデュエリストなのだ!」

「」

 

終わった。サヨナラシリアス。これからは意☆味☆不☆明のストーリーが展開される訳ですね分かります。

 

「へっへ…上官はなぁ、俺達の中じゃ鬼のデュエリストなんて呼ばれてんだぜ!お前みたいな素人がデュエルすれば、一瞬でお陀仏よォ…!」

「あぅ…、ユウリ兄ぃ…怖いよぉ…」

 

俺だって怖いわこんな展開。うわぁ…リアルに遭遇するとこんな感じなんだ。なんか俺まで頭がおかしくなりそう…

 

「さぁ分かっただろう?さっさとデッキを渡してもらおうか。…それともこの私に抵抗してみるかね?」

「えっ」

 

やりたいのかな、デュエル。

というかやらないといけない流れなのかな。

 

「どうした?権力には屈した方が身のためだぞ。もしタダで渡す事が嫌なら、最大限の譲歩として、お前たちの命もそのデッキで保証してやろう」

 

おい嘘だろお前!?デッキ欲しさに俺達に優しくしてんじゃねーよ!

デュエリスト以前にウルサスの士官だろうが!

 

「だ、駄目だよ!あのデッキはユウリにぃが大切に集めたカードだもん!」

「集めた?ハッ、ハハハハハッ!つまりそのデッキはただの寄せ集めデッキという訳か!素人にはお似合いのデッキだな!」

 

そうです寄せ集めです。なので正直これを渡して身の安全を確保出来るなら喜んで渡します。

 

「じゃ、じゃあこのデッキをわた…」

「ではその大切なデッキとやらでこの私に勝ってみろ!そうしなければお前達の未来は無い!」

 

終わった。もうヤダ……




後書きになります。
シリアスな展開をずっと続けると思ったか!フハハ!私には無理だ…
ギャグ調を書いてるとシリアスが書きたくなって、その逆もまた起こるんですねぇ。我が儘な脳みそだ、そんな脳みそはデュエル脳にしちゃうぞ~☆

本当はウルサスの上官に「感染者のクズが俺とデュエルだァ?」とか言わせたかったんです。
けど、ユウリ君から「おい、デュエルしろよ」とは言わないような性格にしちゃったので、こんな結果に…
カードは拾ってるくせに……

次回はようやくデュエル回に入ります。
デュエル回も途中で中断しないと、文字数が凄いことになりそうなので、最低でも前後編に分かれると思います。

それでは、後書きまで読んでしまった貴方、わたしからありがとうをプレゼントします。
それでは、ありがとうございました。
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