ズボンで汗拭き
通常魔法《友情 YU-JYO》発動!
「すっごい!ユウリにぃが勝った!勝った勝ったー!!」
「お、終わったか……」
あ、あっぶねぇぇぇ……
あの上官がルールに精通してないと思って、所々気を抜いていたらコレだ…
此方のデッキパワーがそもそも低かったこともあって、かなりの大接戦となってしまった。
あの《鬼岩城》相手に此処まで手こずるとは……
「じょ、上官…!大丈夫ですか!」
「まさかな…この私が、寄せ集めデッキの初心者相手に負けるとは……」
凄い初心者って連呼されてるけど、一応俺、そこそこの経験者だったんだけどな…言えないけど。
まぁ経験者って言っても友人と遊んだり、原作読んだりしてただけなんだが……
「あー…その、上官さん?」
「…なんだ。なじるなら好きにしろ。勝者のお前にはその権利がある…」
「いやそんなことするかよ。…ただ、良いデュエルだったな、と思ったんだよ…」
「フッ、確かに勝者のお前はさぞ気分が良い事だろう」
「勝ったからだけじゃない。確かに俺のデッキは、寄せ集めのカード軍を、それでも戦える様にって無理矢理組んだデッキだ。けどな…」
「たまたま相性のいいデッキと当たって勝った…なんて俺は思ってないんだ」
「…何?」
「き、貴様!まさか上官が弱かったなんて言うんじゃないだろうな!?」
「微塵も思ってねーよそんな事!……お互いに本気でぶつかり合えたから、俺は自分のデッキの実力をフルに出し切れたんだと思ってる」
「本気でぶつかって…本気で、楽しかったろ?」
「楽しかった……だと?この私に挑んで、その上で尚戦いを楽しんでいたというのか?」
正直《死者蘇生》辺りからは白熱し過ぎて、自分の立場とか全部頭の中から消え去って、ただ純粋にデュエルが楽しかった。
……あれ、これもしかしてデュエル脳になりかけてる?
「ともあれ、だ。俺が言いたいのは、こんな良いデュエルを経験させてくれて、感謝してるって事だ」
「こ、この!やはり上官を馬鹿にしているだろう!楽しかったなどと…」
「止めるんだ。……ユウリと言ったな」
「私も正直に言おう。今回のデュエル、これ程まで互いに追い込まれた状況になったことは初めてだ」
「此処までの接戦で、私は最後に敗北した。今もこの胸には、敗北した悔しさの念が渦巻いている…」
「だがな、これだけの強い感情を抱えながら、私は妙に清々しく感じている」
「恐らく私は、この戦いを好ましく…、いや"楽しかった"んだと思う」
「じょ、上官!?それは…」
「私の《鬼岩城》を二度も破るとはな…本当に初心者かと疑いたくなるような、素晴らしい戦いぶりだった」
ギクッ……
「あ、あぁ…うん。ありがとう…」
なんかオンラインゲームでよくある"ランク偽造"をしてるみたいで、気が引けてきたな……
「ユウリにぃは初心者なんかじゃないよ!村の子供皆にカードの事教えてるんだから!」
「なんと、そうだったのか」
「お、教えるなんて大袈裟な…俺の持ってるカードを半分ずつ渡して、デュエルの真似事をさせてたんだよ。娯楽としてな」
「人に教える程の実力があれば、これだけカードを使いこなすのも頷ける」
「…さて、ではユウリ、本題に移ろう」
「今回、私はお前のデッキを勝負に賭けてデュエルを行った。だがお前は今回、私が賭けるものを提示していない」
そういえば勢いで始まったせいで、俺は何にも条件なんて付けてなかったな…
「だから、今決めて貰う。お前の望む要求を私は飲もう」
「じょ、上官!?」
「今回のデュエルで、私は多くの事を学んだ。奪う側であった私が、施しを受けるなんてな…」
「要求の中にお前たち感染者に関しての事、そして村の事は気にしなくていい。今回の事で私はこの村をどうこうすることは無い」
「上官…それは流石に不味いんじゃ……」
「いいんだ。村の一つを野放しにしたところで、上の奴らには何の問題も無かろう」
ど、どういうことだ…ただデュエルをして、辛うじて勝っただけなのに…
どうしてこう都合が良く話が進んでしまうんだ……
これがデュエルの世界、なのか…?
「…いいのか?アンタの立場もあるだろう」
「勿論今回限りだ。再びこの村を訪れた時に何か問題があれば、その時は処罰が行われる」
「つまり私が出す条件は二つ、今回デュエルの勝者であるお前は、私が出来る限りの内容だが、一つだけ好きに要求を出来る権利」
「そして、この村にお前たち二人の感染者は、元々居なかった事とする。この二つだ」
……信じていいのか。もしもこの条件は嘘で、後に俺達を油断したところを摘発する、なんてことは…
だがもし俺の言う条件を飲んでくれるなら、俺達にとっては大きな躍進になる、か…
……信じてみるか、デュエル脳。
「なら、俺とラウラをチェルノボーグという都市まで案内してくれ」
「…チェルノボーグだと?」
「そうだ、俺はその都市に用があるんだ」
「理由を聞いても?」
「そうだな、しいて言うなら…あそこでデカい事を成し遂げる為…かな」
「…お前は、……いや、私は要求を飲むと宣言した。これ以上の詮索はしないでおこう。知ったところで、どうにも出来ないだろうしな」
マジかぁ、要求通っちゃったよ
俺達が今まで苦労して村と村を行き来していたのに、デュエル一つで届くのかァ
「……ところで、なんだが」
「ん?何だよ?」
「デュエルの途中、私が知らない単語をお前が発していた。それに《タスケルトン》だ。あのモンスターはいつ墓地に送られたんだ?」
「あぁ…」
何というか、一戦交えた後だと、印象も話の雰囲気も変わってきたな…
ともあれ、敵だった俺に教えてほしいなんて言うなんて、やっぱ根は良い奴なのかな。
「まず《タスケルトン》だけど、あれは《雀姉妹》の効果で、手札から墓地に直接送ったんだ」
「おお、そう言う事か。フィールドを経由してない故、墓地から効果を発動されたときは一瞬不正を疑ったぞ」
「真剣勝負で不正なんてしねーよ!」
言った通り、そんな事は当然できない。
理由は不正行為を行った場合、デュエルディスクが自動検知して、不正を行ったプレイヤーは敗北となるからだ。
「次に…攻撃宣言時とか、そういうところか?」
「それだ。私がデュエルしてきた中で、そんな言葉は聞いたことが無かった」
「そ、それは、何というか…」
コイツの周りの奴らは、皆デュエルのルールを理解しきれてなかったのか…
「うーん、この辺はデュエルモンスターズのルールとしても、若干難しいんだよなぁ…」
「チェルノボーグまでの道すがら、出来るだけ解り易く教えてみるよ」
「うむ、助かる」
……友達やん、コイツ
―――
――
―
「ごめんねぇラウラちゃん、怖い思いをさせて…」
「ううん、大丈夫だったよ。ユウリにぃが助けてくれたから」
「にーちゃん、村を出ちゃうってホント?」
「い、行かないでよユウリさん…」
「な、泣くなよ…」
ウルサスの士官たちが言うには、近々チェルノボーグで大規模な部隊の再編成が行われるらしい。
…恐らくレユニオン・ムーブメント絡みの内情があるのだろう。
その際、警備が手薄になるタイミングに乗じて、俺とラウラはチェルノボーグに忍び込むことになった。
その為には早めに村を出て移動を開始しなければ、間に合わないかもしれないらしい。
「…ねぇユウリにぃ、また村を出るの?」
「あぁ、俺達は流れ者だ。何時までも村の厄介になるわけには行かないんだ」
「……うん」
「厄介なんて思ってるのは、お前さんだけかもしれんがな…」
「…おっちゃん」
「ユウリ、お前が居てくれた間、この村は大きく発展できた。お前のその特異なアーツで、俺達を助けてくれたお陰だ」
「正直村に残ってほしいのが本音なんだが…お前の決心は変わらないんだろう?」
「……あぁ、俺はチェルノボーグへ行く。そこでやるべきことを成す」
「全く、お前は変な所で我が強いからなぁ…もう止めねぇよ。但し、ラウラの事…しっかり見てやれよ」
「分かってるよ」
「……ありがとう、おっちゃん」
「ったく……元気でな」
それぞれ村の皆が、有難う、元気でいろよ、などの温かい言葉を投げかけてくれる。
この村は…いや、このウルサスの凍原は、俺が思っている以上に温かみのある場所なのかもしれない。
温かい言葉と希望を胸に、俺達は村を後にする。
次に待つのは都市チェルノボーグ、この街からアークナイツの世界は動き出す…
後書きになります。
これにて第一章?零章かな?が終了しました。
以降は、皆さんの知るアークナイツのシナリオに沿って進行したり、偶に道に逸れたりする感じになると思いますハイ。
因みに何ですが、デュエル回でちょくちょく名前だけ出てきたカード達。
あれらは一枚でゲームエンド級か、それに近いの能力を内蔵しています。(LP4000はホントにすぐ死にそうになります)
良ければ調べてみてください。いかにここのデュエルが優しいか分かると思います。
最初の投稿からもう一週間が経とうとしております。
無事にデュエルパートも挟んで区切りがいい…
……え、や、やだなぁ。も、勿論続き書きますよぉ…
ま、待って…行かないで…
今回も後書きまで読んでしまったのかい?
今日はありがとうしか用意してないんだ。ごめんネ?