現在、アークナイツ1章を超える内容はありませんが、ネタバレにはお気を付けください。
ふわりチェルノボーグ
「は~るばるぅ、来たぜ函館ぇ~…」
「……それ何?ユウリにぃ」
「え、あー…、何でもねぇよ、うん」
そうだよな、サブちゃんなんてこっちの世界で通じるわけないよな…
「おっきい街だね」
「だな、…あんまり騒いでると目立つから、俺に引っ付いてな」
「う、うん…」
俺達は今、あの上官達の手引きの元、チェルノボーグへの侵入に成功した。
侵入と言っても随分あっさりしたものだった。フィクションでよくある、荷物の中に紛れ込んでチェックをすり抜けるアレだ。
検査自体も随分杜撰なもので、荷物を止めて確認する時間なんて三分も無かったと思う。
「てっきり入るときに、一悶着あるかと身構えてたんだけどなぁ」
それこそてっきり侵入がバレて酷い目にあう事も考えてたし、どうやってその場から逃げるかも考えてたのに。
まぁこの世界だと、奴をデュエルで拘束しろ!とか言われるかもしれんが……
「ね、あれ何?…あ!あれは村でも見たことある!」
今騒ぐなって言ったばかりなんですけど!やっぱこれぐらいの年齢の子だと、じっとしてるのは無理かなぁ…
「ラウラ、ちょっとこっち来い」
「はーい!」
聞き分けは良い、いい子だ。
「ラウラ、悲しい事だが、この街は感染者の事をとても嫌う。周りの人にバレたら最後、俺達はあの寒い凍原に逆戻りだ」
「…でも村には皆が居るよ?」
「言いたい事は分かるけど…ラウラ、そうじゃないんだ。」
「分かってるよ…お医者さんに行くんでしょ?」
「嫌そうな顔するなって、お前の体調ももっと良くなるんだ。だからちょっとの辛抱だ。…な?」
「うー…」
……さて、先ずはあの場所だ。
俺達が厄介になれそうな所。俺が知る限りでは、此処の診療所くらいしか心当たりがない。
診療所"アザゼル"、確かチェルノボーグに存在していた筈だ。
「…なぁ、今日はお祭りでもあるのか?」
「何を寝ぼけたことを言ってるんだ。祭りなんてあるわけないだろう?」
「さっき見かけた奴らが、妙な恰好をしてたもんでさ」
「妙ね、ハハ。じゃあお前の服のセンスは、何て言ってやればいいんだ?」
「何だと!この服は最近買ったんだぞ、しかも人気ブランドだ!」
「そうかいそうかい、そりゃ無駄な出費に…ん?」
「無駄だと!お前は流行というものが…」
「待て……なんか焦げ臭いぞ?」
「何だいきなり!何処かで飯でも焦がして、換気してるんだろうさ」
「いや、それとはちょっと違うような…」
周囲の人たちが異変に気付いたようで、近くで話し始めた。
不味いバレたか?とりあえず此処を離れなければ。
「行こうラウラ」
「うん…」
……というか俺、そんなに臭うかな?
確かに、村ではそもそも身体拭いたりとか、あんまり出来なかったけどさ。
「ユウリにぃ…なんか変なにおいがする……」
「」
「……そ、そんなに臭いか?」
「うん、村で焚き木してる時みたいな臭いがする」
俺はそんなに臭いのか……とショックを受けていた時、視界が大きく揺れ、耳を劈くような音が俺達を襲う。
その直後、近くの建物の壁が突然爆ぜる。強い揺れが辺りを襲い、俺は咄嗟にラウラの姿勢を低くさせる。
何が起こった?何が俺を襲った!?
「キャアアアアアァァッ!」
「なっ、何だ!?家が吹っ飛んだぞ!?」
「うわあああああ!?あっちもだ!別の場所でも家が燃えてる!?」
「に、逃げろ逃げろ!!」
周囲を見れば、人々はパニック状態で、あちこちで起きている非現実な情景を理解できないようだ。
「お、俺の家が!?あの中には妻が居るんだ!退いてくれ!」
「火事だ!誰か消防を呼べ!」
「ママー!ママぁ…どこぉー!」
……これは
「今日、なのか」
「今日がその日なのか…!」
心の準備はしていたハズだ。俺はこの世界で、あの日に誓ったハズだ…!
「ラウラ!絶対に俺の手を離すな!」
「……ラウラ?」
「あ、あぁっ……、ま、街が……」
「おい!ラウラ!」
ラウラは身体を強張らせ、混沌とした周囲の状況に意識が飲まれている。
「しっかりしろ!いいか!絶対に離れるな!」
彼女の手を引いて、無理矢理移動する。
こうなった以上、隠れるとかそういうことを考える場合ではない!
「チェルノボーグ事変…!この日を逃せば、俺達はロドスに合流出来る望みは薄い!」
―――
――
―
「たっ…助けて、助けてくれぇ……!」
「あああ燃える!?火が!火がぁぁぁ!!」
「っ……!」
都市内部を走って、どれだけの犠牲者を見ただろうか。
辺りを見渡せば、その分だけ酷い情景が視界に移る。
そこら中で煙が昇り、倒壊して尚燃え続ける家屋の炎は、消えるどころか勢いを増していく。
「もう安全な場所なんて無いのか…!」
それに、彼らが言っていた妙な恰好をした奴ら…十中八九レユニオンの構成員だ。
俺達が感染者だと分かれば、放っておいてくれるかもしれない。だが、こんな状況では区別なんて付ける前に襲われるだろう。
「…ッラウラ!大丈夫か!」
「ハアッ……ハアッ……」
……ラウラはもう限界だ。それに地上をいくら走ろうが、こんな惨状では見つかるものも見つからない。
何処だ、何処に居る…?
「召喚!来い!《エレキテルドラゴン》!」
「ジギャアアアァ!」
「うわあぁ今度は何だ!?」
「ばッ!?化け物だあぁぁ!!」
目立つとか四の五の言ってられるか!
空から探せば、直ぐにロドス一行は見つかるはずだ!
「俺にしがみ付いてくれ!振り落とされるなよ!」
「う、うん!」
エレキテルドラゴンは緩やかに地上から離陸し、街の上空まで翼を羽ばたかせる。
俺達の目に映るのは、都市全体が機能を停止し、炎上していく姿。
「ロドスの作戦には段階があった。俺が知ってるのはドクターを救出した後からの話だけ…」
「あの時、ロドスを追うようにレユニオンの襲撃があった。奴らも同時にドクターのいた場所へ現れたんだ…」
「ロドスは追われるように地下から外へ、そして…」
そして撤退経路である都市の南側、大きな広場……
…!あった!比較的大きい広場に、部隊が展開している!
「あそこだ!」
スピードを上げ、広場の方へ急ぐ。
……が
「うぉッ!?」
何かが、エレキテルドラゴンに乗る俺を掠める。
「う、撃たれた!?す、ストップだ!エレキテルドラゴン!」
複数の遠距離攻撃による一斉射、その内の一つが俺の真横を通り過ぎて行った。
しゃ、シャレになってない!あんなの喰らったら一発であの世行きだよ!
「ど、どうする。どうすんの俺…」
―――
――
―
一方で地上側の部隊では、初めて見た有翼生物に対して、どう対策をするかを話し合っていた。
「上空の有翼生物が、動きを止めました!」
「威嚇にはなった…のかな?どうする?」
拳銃を所持したフェリーンの少女が報告する。
彼女はスポッターとして、隣でクロスボウを抱えるサンクタの青年へのサポートを続けている。
「どうするって言っても…あんなのが合流地点に降りてきたら、この辺り全部滅茶苦茶になっちゃうよ!」
「でもぉ~、あの…どらごん?に何か乗ってるように見えるんだけど~…」
「レンジャー、見える?」
「確かに二人、…驚いた。子供が乗っておるわい」
「目良すぎだろ。なんであの距離で乗ってる奴の特徴まで分かるんだよ」
ザウラの狙撃手が言うように、あの生物の背には、確かに人が乗っている。
一体どうやって、いや…どうしてあの生物の背に人間が乗っているか…
何故この場を目指して進行してくるのか、この場にいる誰もが、正確な答えを持ち合わせていなかった。
「うぅ…フェン隊長ぉ、どうしたら…?」
「子供は確かに気になるけど、この場所はロドスの合流地点なんだってば!」
「だからって、あんなのが真上に飛んでたらこっちが目立つぞ」
「うっ…、じゃあラヴァは…あの竜が此処に来ていいの?」
「いいわけないだろ!」
「じゃあどうしようもないじゃない!」
「あ、あのっ!」
「何!」「何だよ!」
言い争いが起こる中、先程のフェリーンが大きい声を上げる。
「マズいよ!突然竜が居なくなって、子供だけ落っこちてきてる!!」
「えええぇぇーっ!?」
―――
――
―
「うううぅぅ~……!!」
「だだだ大丈夫だラウラ…!おれおお、俺をしん、信じてくれぇぇ!」
うおおおおおおぉぉぉ!?!?
なんで急に《エレキテルドラゴン》が消えたんだ!?what!? why!?
俺が臭いから!?聖刻デッキの使い手じゃないから!?
それともここに来てか!?ここに来て、まさかのデュエルディスクが不調なのか!?
「頼む頼む頼む動け動け動けぇーッ!」
「カード効果!発動しろ!頼む!」
ディスクにカードを差し込み、カード効果を発動させようとする。
だが、うんともすんともしない…
地面が眼前に迫り、周りには十名程の人がいる。
皆一様に慌てており、どうする術も無いという感じだ。
オイオイオイ、死んだわ俺。
「おあああぁぁぁーー!神様ァー!」
「ユウリにぃーー!」
瞬間、ボワッ…っと自身に纏わりついていた重力の枷が外れる。
気付けばデュエルディスクが再起動している。
…罠カード《重力解除》、その効力が今さっき発動したのだ。
「あ、あ……」
「私達…浮いて、る?」
「……た」
「助かったぁぁぁぁ……」
ホッとするのも束の間、周囲の人が話しかけてくる。
やはり此処は、ロドスの撤退ルート上だったらしい。俺が一方的に見知った顔達だ…
「その…、それ、は…大丈夫…ですか?」
「あぁ、大丈夫…みたいだ」
《重力解除》の効果が切れ、俺達はやっとの事地に足を着けた…
正直まだ身体が浮いてる気がする…冗談抜きで……
「あ゛ぁ~ん…怖かっだよ゛ぉ~」
「ご、ごめんなラウラ!に、二度とあんな事にはならないようにするから……」
「お話…窺っても……?」
「す、少しだけ!少しだけ待ってください!」
ひやりチェルノボーグ
後書きになります。
いよいよチェルノボーグに着きました。
ですが私は、ロドスのオペレーター達がデュエルしているシーンを書きたいのです。
つまり、ロドスに着くまでは前座……そう、前座なのです……!
アークナイツのキャラクター達が、どういうカテゴリのデッキを使っているかとか、そういうのを妄想してたんです。
なのに全然、そういう内容には!程遠いんだよねぇ!
…失礼、内なるⅣが出てしまいました。
書き溜めはまだあるので、もう少しだけ毎日投稿は続きそうです。
おやまぁ…後書きまで読んでしまう子がいるなんて、このご時世珍しいねぇ…
それじゃあ、ありがとうございますを、持ってきてあげようかねぇ…ホホ…