俺の上司共が色んな意味でブラックすぎる件   作:ギルバート

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 今回は短め。なのに難産だった……。


第十二話 これは調査です 

 

 西風の旅団への訪問から一週間あまりの時が過ぎた今日この日。

 ようやく俺とイリスは黒の工房の本拠地へと帰ってきた。

 黒の工房から出立した日から考えれば、9日あまりの間、この黒の工房の本拠地を空けていたことになる。

 まあ、完全に無人というわけではなく、ゲオルグ君が詰めていたし、汎用戦術殻や魔導人形と連動した、ア○ソックもビックリの警備システムが稼働している為、問題は無かっただろうが。

 

 では何故これほど帰還が遅くなったのかというと、今現在死亡したアルベリヒ工房長の代わりに黒の工房を統括している工房長代理より、我らが主であるイシュメルガ様(笑)の為に、黒の工房の本拠地のあるラマール州への帰り道、イリスと共に幾つか町に立ち寄ってエレボニア帝国内の情勢調査をせよという密命が下ったからである。

 

 ……しかし密命というだけあって、その任務は非常に厳しく、そして困難な任務だった………。

 

 アイゼンガルド連峰の麓の郷ユミルでは宿泊施設『鳳翼館』に湯治客に扮して潜入し、旅館の食事を楽しむフリをしながら温泉に入りつつ水質検査を行ない。

 

 黒銀の鋼都ルーレでは、帝国最大の巨大重工業メーカーでありRF――ラインフォルト社本社の見物をしつつ、新たな知識を黒の工房に取り込むべく、ルーレ工科大学で発表された最新の技術論文や学術論文、雑誌や小説、グラビア誌などを工房の資金で買い漁り。

 

 エレボニア帝国の首都である緋の帝都ヘイムダルでは、高級ホテル『デア・ヒンメル』のスイートルームを拠点に、観光ツアーに潜り込むことで、帝都に根を張る帝国情報局やTMP――帝国憲兵隊の目すら欺いて、帝都中の観光スポットや飲食店の情報収集を成功させつつ、百貨店『プラザ・ビフロスト』やブティック『ル・サージュ』本店で、お土産という名の物資補給や、変装用のイリスの衣服を大量に購入。

 それ以外にも帝都歌劇場のオペラや帝国博物館、カレル離宮などを調査し。

 帝国競馬場では、巡回する警備員に怪しまれないよう馬券を大量に購入しつつ、イリスと共に馬のふれあいイベントに参加することで、合法的に馬の調査を達成した。ちなみに馬券は全部スッたが工房の金である為、問題はない。 

 

 そしてその帰りには交易町ケルディックに立ち寄り、ちょうど開かれていた『大市』と呼ばれる市場を回ることで、市場調査まで成し遂げたのだ。

 

 一週間という短い期間で、これほどの情勢調査を成し遂げることが出来たのは、ひとえにあの才徳兼備、精明強幹な工房長代理の的確かつ正確な指示と、ついでに我らが主であるイシュメルガ様(糞)のおかげであろう。 

 

 それに比べれば、今回の調査費用の経費の総額が、エレボニア帝国市民の平均年収以上かかったことなど実に些細な事である。

 

 本来であれば、一刻も早くイシュメルガ様(屑)にお知らせしたいところではあるが、あいにく今は不在。

 いつも不在のような気もするが、不在というのなら仕方ない。

 非常に、非・常〜に残念ではあるがイシュメルガ様(蛆)が帰還されるその時まで、今回の情勢調査の全ての関連書類は、機密情報保持の観点から、悪意ある第三者(アルベリヒ工房長)に読み取られないよう、しっかりとシュレッダーにかけた上で、厳重にゴミ箱の中に保管しておくことにしよう。

 

 ……ああ、そうだ資金帳簿の改竄もしておかなければ。

 何人たりともバレてはいけない密命だからね。仕方ないね。

 黒の工房で資金管理も担当しているハンスという人に頼めば快く引き受けてくれるだろう。間違いない。

 何のことか分からないがその彼曰く、「強制力は全自動で判別、発動する為、条件がガチガチに固められている反逆や逃走関連はともかく、それ以外に関してはいくらでも誤魔化せる」らしい。いや、何のことか分からないが。

 

 さて、後はゲオルグ君に買ってきたお土産を渡して……そういえばイリス。

 今回の旅こ…ゲフンゲフン情勢調査で色々な場所を回った訳だが……何か思うところとかないかね?

 

 ……いや、情勢調査の内容とかではなくてだな。

 

 黒の工房にはない、活気あふれる街並みとか人々を見てだな……何というか憧れというか希望というか、「オラ、こんな何もねえ田舎の工房さ出てって、都会に行くだ!」とかそういう感じの感情とか野望とか芽生えたりは………。

 

 え?ない?………………そうか。(´・ω・`)

 

 

 あ、そうそう。そういえばユミルの郷で黒髪の少年と出会った。

 といっても遠巻きに友達であろう子供たちとかけていく後姿を見ただけだが……十中八九、閃の軌跡の主人公であるリィン・シュバルツァー君で間違いないだろう。とりあえず手は合わせておいた。

 

 少年よ。君は未来で何度も絶望のどん底に叩き込まれると思うが、仲間と共に頑張って乗り越えてほしい。君ならそれが出来るはずだ……。

 

 

 ……まあ俺は叩き込む側の組織に所属してんだけどな!

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 黒の工房の本拠地に帰還してしばらくののち、俺はイリスと工房長代理権限で徴発してきたゲオルグ君と共に、西風の旅団の注文依頼である、ゼノ専用Sウェポン、スナイパー仕様のブレードライフルの設計製作に取り掛かっていた。

 

 この間、注文依頼のあったルトガー・クラウゼル氏専用Sウェポン《バスターグレイブ》と違って設計からしなければならないが、あの時とは違い期限がまだまだ先なのでデスマーチをする必要もなく、三人で先日山ほど買って来たお土産のお菓子を時折摘まみながら、ドンドン進めていく。

 そして一月後にはゼノ専用Sウェポン、スナイパー仕様のブレードライフルの完成にこぎ着けることが出来た。

 その完成度に関しても、アルベリヒ工房長の手掛ける専用Sウェポンに匹敵するモノに仕上げることが出来たと自負している。

 

 ……いやーなんだかんだ言っていたが、まさかここまでスムーズに事が運ぶとは。

 それもこれもイリスとゲオルグ君の協力。そして何より目障りなアルベリヒ工房長が居ないおかげといえるだろう。

 

 依頼人である西風の旅団の団長ルトガー・クラウゼル氏の話では専用Sウェポンの引き渡しはまだなので、先に完成祝いとして三人で紺碧の海都オルディスへと出向き、高級料理店で協力してくれた二人を労った。(工房の金)

 そしてそれから、黒の工房はいつも通りの日常へと戻っていった。

 

 そして月日は五月に入ろうかという頃―――

 

 

 

 

 

 いつも通り、イリスと二人で朝食を食べながら、帝国時報の『ラインフォルト社の研究施設爆発火災』の記事を読んでいると、なんの前触れもなく突然研究室のドアが勢いよく開け放たれた。

 俺はウンザリとしつつ、イリスはビクリとして齧っていたトーストを皿の上に取り落としながらも、視線を音のした研究室の入り口へと向ける。

 そこに居たのは一人の見知らぬ男。

 

 

 「ッ!?来てください、フルン=ティング」

 

  

 その姿を確認し、侵入者と判断したイリスはすぐさま戦闘態勢に移行しようとしたが―――

 

 

 「『命令(オーダー)』だイリス。待て」

 

 「ッ!……はい、ハンス工房長代理」

 

 

 先んじて『命令(オーダー)』を使ってイリスの動きを制した。

 

 ……さすがにコレ(・・)を攻撃したらマズイからな。

 

 手を首に当て、もみほぐながら、困惑した視線をこちらに向けるイリスを無視して席から立ち上がる。

 

 ……イリスは気づかなかったようだが、俺には分かる。

 

 顔が原作(・・)にそっくりだからとか、先ほどの帝国時報の記事からそろそろだろう(・・・・・・・)と目星を付けていたからだとかいう理由もあるが。

 たとえそれが無かったとしても、たとえどんな顔で転生しても(・・・・・)俺は瞬時に見分けることが出来るだろう。

 

 その全身から滲み出る、この世界全ての人間に興味がなさそうな排他的な雰囲気。

 

 視界に映るありとあらゆる者を見下すような冷淡な視線。

 

 そして相変わらずドアをノックすることを覚えねえ横柄な態度。

 

 

 顔にいつも通りの営業スマイルを張り付けながら確信する。

 目の前のコレが。この男こそが―――

 

 

 

 「お帰りなさいませアルベリヒ工房長。

 我々黒の工房の一同、工房長の帰還を心よりお待ちしておりました!」

 

 

 「うむ、今帰った」

 

 

 

 




 アルベリヒ工房長「た だ い ま」


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