俺の上司共が色んな意味でブラックすぎる件   作:ギルバート

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 ほのぼの日常回



第十五話 有給休暇は計画的に

 

 

 月日は流れ六月中旬。

 当初の予定であった二ヶ月を優に過ぎ、ようやく西風の旅団から帰還の連絡を受け取った俺は、依頼品であるゼノのSウェポン専用武器を引き渡すべく、イリスを連れて、待ち合わせ場所である帝国西部ラマール州北ラングドック峡谷道へ向かっていた。

 

 何でも今はそこを西風の旅団のキャンプ地としているのだとか。

 この間とは違い、黒の工房の本拠地のあるラマール州内での移動なので、導力バスを乗り継いで歓楽都市ラクウェルへと向かい、大衆食堂《デッケン》で早めの昼食を取った後、そこから目的地に向けて北ラングドック峡谷道を徒歩で進んでいく。

 

 そして時刻は一時を過ぎた頃、ようやく峡谷の広がった場所に陣を構える西風の旅団のキャンプ地が見えてきた。

 ただ、遠巻きに見た感じ、アイゼンガルド連峰の時のキャンプ地と比べ、その規模はかなり小さくなっているように思う。

 

 そのまま近づいて行って周辺を警備していた歩哨に挨拶すると、例のごとく話は通っていたらしくすんなりと中へと入れてもらえた。

 歩哨の案内の元、ルトガー・クラウゼル団長がいるテントの場所まで向かう道すがら、それとなく周囲の様子を伺ってみたが、やはりかつてに比べてキャンプ地の団員の数も少なく、キャンプ地内部も、どことなくのんびりとした空気が流れている。

 そしてこの間も見た一際大きいテントの前までたどり着くと、ちょうど休憩時間だったのかテントの外に出て葉巻を吸っていたルトガー・クラウゼル団長と出くわした。

 

 

 「ようハンス!それにイリスの嬢ちゃんも久しぶりだなぁ」

 

 

 近づく俺たちを目敏く見つけたルトガー・クラウゼル団長は、葉巻片手に朗らかに手を挙げた。

 

 

 「お久しぶりです。ルトガー・クラウゼル殿」

 

 「……お久しぶり、です」

 

 「済まねえな。もう少し早く帰ってくるつもりだったんだが、少々向こうで厄介事に巻き込まれてな」 

 

 「いえ、それは大丈夫ですけど……、今日は随分と人が少ないですね?」

 

 「ああ、ほとんどの奴らは大仕事を終えた息抜きにラクウェルで豪遊してるよ。今回の仕事の報酬片手にな。

 ……まあ、文無しになったらそのうち帰ってくるさ」

 

 ……そんな犬みたいな。

 でも、歓楽都市ラクウェルで豪遊かぁ。

 いいなぁ俺もな~、カジノで豪遊したり、キャバでキレイな姉ちゃんたちを侍らせたりしてえな~。

 ドンペリでシャンパンタワー建てたい。工房の金で。

 

 まあともかく、西風の旅団団員のリフレッシュの為に、歓楽都市ラクウェルからほど近い、この北ラングドック峡谷道をキャンプ地に選んだという事は分かった。

 さすがに猟兵という恨みを買いやすい仕事の関係上、ラクウェル内に拠点を構えることは避けたのだろうが。

 

 

 「では、今は西風の旅団の休息日という事で?」

 

 「ああ、ガルシアの所の部隊以外はな。アイツは今仕事でクロスベル方面に行ってるよ」

 

 

 ………これはアレか。ルバーチェのマルコーニ会長に雇われたヤツか?

 

 一応、仕事内容は伏せていたルトガー・クラウゼル団長だったか、原作知識からその仕事内容について、大体の予想は付く。

 

 クロスベル市に拠点を置くマフィア組織・『ルバーチェ商会』のマルコーニが先代を追い落とすべく仕掛けたクーデター。

 そのマルコーニに実行部隊として雇われたのが、西風の旅団のガルシア・ロッシ氏の部隊なのである。

 確かその後、クーデターが成功しルバーチェ商会を手に入れたマルコーニ会長にその優秀さを買われて、彼の率いる部隊ごとルバーチェ商会に引き抜かれたりするのだが、それはともかく。

 

 ……そうかガルシア・ロッシ氏は不在かぁ。来たついでに軍用格闘術の模倣再現について、アドバイスでも貰えたらと思ってたんだが……。居ないなら仕方ねえな。

 

 

 「団長、ゼノを呼んで来たぞ」

 

 「ボンに嬢ちゃん!首を長くして待っとったで~!」

 

 

 ルトガー・クラウゼル氏と世間話をしていると、後ろから声が。

 誰かがゼノを呼んで来てくれたらしい。

 振り返ってみると、今回製作したSウェポン専用武器の使い手となる予定のゼノともう一人、彼を呼んで来てくれたのだろうドレッドヘアーの体格のいい色黒の団員がこちらに歩いてきていた。

 

 

 「助かったぜレオ(・・)

 ……ああ、そうだ。どうせなら自己紹介でもしとくか?

 あの武器(・・・・)だと何かと世話になることもあるだろうからな。

 

 コイツはレオニダス。つい最近入団した期待の新人だよ」

 

 「レオニダスだ。よろしく頼む」

 

 

 ……おお、西風の旅団が大陸中東部に仕事に行くって言ってた時から、何となく予想はしていたが……ついに来たか、《罠使い(トラップマスター)ゼノ》の相方にして、未来の連隊長《破壊獣(ベヒモス)》レオニダス。

 

 大陸中東部の辺境出身だったレオニダスは、七耀石資源に恵まれた故郷を賊や武装商人から守る、戦士の一族に属していたらしい。

 だがある日、七耀石資源を奪い取るべく本気を出した武器商人たちが軍用艇まで持ち出して攻め寄せた際、偶然近くに来ていたルトガー・クラウゼル団長やガルシア・ロッシ氏ら西風の旅団によって撃退されたらしい。

 以来、一族の恩義を生涯かけて返すためにルトガーに忠誠を誓うようになったのだそうだ。

 

 ……個人的には、航空戦力を持たない西風の旅団がどうやって武器商人の軍用艇を撃退できたのか、非常に気になるところである。

 

 

 「これはご丁寧に。私は《黒の工房》のハンスと……こっちがイリス。西風の旅団とは武器の取引をさせてもらっております」

 

 「……イリス、です」

 

 

 ルトガー・クラウゼル団長に勧められとりあえず自己紹介。

 

 いや~ガタイが良いだけあって、真正面に立たれると物凄い威圧感。しかもグラサンまで掛けてるから、傍からみればマフィアの側近にしか見えねえな。イリスも若干腰が引けておるわ。

 

 ちなみにルトガー・クラウゼル団長の言うあの武器とは、レオニダスの武装である、巨大なマシンガントレットのことである。別名――パイルバンカー。

 射出した杭を相手に打ち込む、男のロマン溢れるアレだ。

 個人的には、ロボットアニメで出てくるアレを人の身でぶっ放してくる事に驚愕を禁じ得ない。

 相変わらずこの世界のフィジカルゴリラ共は人間辞めすぎである。

 

 

 「団長~!!そろそろですね~武器の受け取りをですね~?」

 

 「あ~、分かった分かった。早速だが、依頼品の方を見せてもらおうか。ついでにレオも見ていけ」

 

 「ええ、わかりました」

 

 「ああ、了解した」

 

 

 自身の武器を待ちわびているゼノにせっつかれ、さあそろそろ移動しようかという時に、毎度おなじみ、何処から視線が。

 

 周囲を見回すと積まれたコンテナの陰からこちらを覗く銀髪の小柄な少女が一人。

 

 ……現れおったな、フィー・クラウゼル

 

 おそらくは多くの団員がラクウェルに行っている為、暇を持て余していたのだろう彼女の目的は、おそらくこの間仲良く?なったイリスに違いない。

 現にフィー・クラウゼルの視線はイリスの方に向いている。あの日限定の儚い友情にならず何よりである。

 

  

 「あーイリス。取引が終わるまで、フィー・クラウゼル嬢と交流を深めてくるように」

 

 「!わかりました」

 

 

 そうイリスに命じると、イリスはフィー・クラウゼルの元へと駆けていった。

 

 ……相手は西風の旅団団長の養女さんにして、未来の主人公パーティーメンバーである。しっかりゴマを擦っておかなくてはな。

 ……もしかするとこの時に培われた友情が、イリスの工房離脱のきっかけになるやもしれんし。

 

 一応前回の反省も踏まえ、今回イリスにはトランプに、U○O、ジェ○ガに、ツイス○ーといった遊び道具をいくつか持たせている。

 それらを使えば、少なくとも前回のお通夜みたいな交流会にならないだろう。

 

 ちなみにこの世界に元々あったトランプはともかく、何故そのような遊び道具がこの世界に存在するのかといえば、何を隠そう俺が自作したからである。

 

 アルベリヒ工房長への成果提出を何とか手抜きできねえかと思って、前世であったパーティーゲームを幾つか再現してみたのだ。

 ちなみにアルベリヒ工房長には、「こんなモノが工房の利益になるとは到底思えない」と鼻で笑われて全部却下された。クソが。

 

 閑話休題。

 

 イリスをフィー・クラウゼルの接待に行かせ、俺とゼノとレオニダス、そしてルトガー・クラウゼル氏の四人は、《バスターグレイブ》の時にもやった、最終調整をゼノの専用Sウェポンであるスナイパー仕様のブレードライフルに施す為、広場へと向かった。

 

 そしてその広場でスナイパー仕様ブレードライフルをゼノに実際に使用してもらい、その時のデータとゼノが感じた使用感を元に、持ち込んだ機材や道具で細かな調整を施していく。

 

 

 

 そして、大体三十分後。

 

 

 

 「これで最終調整は終了です。お疲れ様でした」

 

 「いや~ボン!最ッ高の出来やで!!ホンマおおきにな!」

 

 「フム……、中々の得物だな」

 

 「ゼノ、それ高かったんだから、しっかり活躍するんだぞー?」

 

 

 特に問題もなくスナイパー仕様のブレードライフルの最終調整は終了。

 使い手であるゼノの様子を見るに、彼も満足する一品に仕上げることが出来たと思って間違いない。

 最終調整の様子を見物していたレオニダスとルトガー・クラウゼル氏からも特に不満は無さそうだ。

 

 

 「では、これでSウェポンの納品は完了したということで。

 何か不具合等がありましたらご連絡下さい」

 

 「ありがとうよ。また何かあったらよろしく頼む」

 

 

 これで今回の専用Sウェポンの発注依頼は完全に終了。

 初めてアルベリヒ工房長の関与が一切無い専用Sウェポンの製作依頼ではあったものの。

 その出来は、工房長のソレと遜色ないほどに仕上げることができたと自負している。

 

 そして四人で雑談を交えつつ、イリスとフィー・クラウゼルを探していると、人だかりの中に二人の後ろ姿が見えた。

 近づいて様子を伺ってみると、どうやらイリスとフィー・クラウゼル、そしてそこらで暇していた団員たちとで、○NOで遊んでいたらしい。

 見た感じ、イリスやフィー・クラウゼルに団員たち含め、充分楽しめているようだ。

 この世界には存在しないパーティーゲームではあったのが、どれもルールが簡単なので、すんなり受け入れてもらえたようである。

 

 ……取り扱い説明書を複数枚入れておいて正解だったな。

 

 そこからルトガー・クラウゼル氏に、ゼノとレオニダス、そして居残り組の他の団員も交え、夕暮れ近くまで様々なパーティーゲームで盛り上がった。

 途中、団長命令(ムチャぶり)で始まった旅団の男共による汚ねえツイ〇ターゲームなんかもあったが。

 

 しかしこれだけ盛り上がれたという事は、この世界でも十分売れる勝算がありそうである。

 

 ……いっそタ○ラ・トミーでも興してやろうか。

 

 だが、これほど売れる可能性を秘めているパーティーゲームの数々を、工房の利益に繋がらないなどという理由でいとも簡単に切り捨てるとは……、アルベリヒ工房長も見る目がない。

 所詮、友達の居ないボッチベリヒにはパーティーゲームの良さなどわからないという事なのだろう。

 

 せっかく他にも○生ゲームやバ○ルドームとかも作ってやったというのに全く……。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 それからしばらくはSウェポン部門を管理しつつ、様々な開発研究に勤しんだり、《結社》との連絡役としてパシらされたりと、代わり映えのない日々が続いていた。

 そんなある日、突然アルベリヒ工房長から黒の工房の全員に緊急招集がかかった。

 

 何の前触れもなくかかった緊急招集を受け、俺、イリス、ゲオルグ君が会議室にて待っていると、ドアがスパンと勢いよく開け放たれ、紙束を脇に抱えたアルベリヒ工房長がツカツカと入ってきた。

 

 ……相変わらずドアをノックすることを覚えねえ野郎だな。

 

 アルベリヒ工房長は会議室内を素早く見回し、俺たち全員が揃っている事を確認すると、早速緊急招集をかけた要件を話し出した。

 

 

 「信頼できる筋からの情報だ。

 三日後、各国政府や遊撃士協会、七耀教会共が手を組み、《D∴G教団》の各ロッジ(拠点)を一斉襲撃するらしい」

 

 ……おお、ついに来たか、《D∴G教団》殲滅作戦。

 

 《D∴G教団》殲滅作戦とは、ゼムリア大陸中から大量の幼い子供達を攫って、儀式という名の虐殺を繰り返すマジ〇チ集団である《D∴G教団》を根絶やしにすべく、七耀暦1198年にリベールのチート親父ことカシウス・ブライトの指揮の下、各国政府や軍隊に警察、遊撃士協会、七曜協会などが共同戦線を張り、大陸各地に点在する《教団》の拠点を一斉に襲撃することで、《教団》の殲滅を狙った作戦の事である。

 この殲滅作戦と、それと前後する形で結社《身喰らう蛇》や、七耀教会の暗部組織である《聖杯騎士(グラールリッター)》も教団のロッジ(拠点)を襲撃していった結果、めでたく《D∴G教団》は壊滅し、表舞台から姿を消すことになるのである。(殲滅できたとは言っていない)

 

 

 「……それは、……全く問題無いのでは?」

 

 

 あのド畜生集団がやっと滅びるんやろ?ええやん。

 全くあいつ等やることといったら、ハッキリ言って黒の工房より酷……ひど……やっぱどっちも似たようなモンだったわ! HAHAHA!

 

 まあ冗談はともかく。今であれば本当に問題は無いはずである。

 ちょっと前までなら、そこのアルベリヒ工房長が《教団》から有用な技術を盗み取る為に潜入して、教団幹部の地位にまで登り詰めたりしていた為にかなり問題になったのだろうが。

 それもイソラ・ミルスティンと相討ちになった際に、《教団》の方からも死亡扱いとされてしまった事で、今では教団との繋がり自体も完全に切れてしまっている。

 だからD∴G教団が壊滅して、その内部情報が全て向こうの陣営に差し押さえられようとも、スパイとして潜り込んでいたアルベリヒ工房長、ひいては黒の工房との繋がりを示す証拠は出ないはずだ。

 

 

 「ああ、その通り。あの無能共が消え去る事自体は全く問題ない。

 我々と違い、潜伏するといった考えすら頭にない連中だ。

 どうせ遅かれ早かれこうなっていただろう」

 

 「まあ、そうでしょうね」

 

 

 そのことはアルベリヒ工房長も理解しているらしく、俺の言葉に頷いていた。

 だが、その先の考えは違っていたらしい。

 

 

 「……だが《教団》が無駄に溜め込んだ技術情報。

 それを連中に横取りされるというのは面白くない」

 

 「はあ……。そう、言われましてもですね……」

 

 

 どうやらアルベリヒ工房長は、遊撃士協会や七耀教会を始めとした向こうの陣営に、《教団》の溜め込んだ技術情報が、接収されるというのが気に入らないようだった。

 

 いや、面白くないと言われてもだな……。

 というか横取りされるって、そもそも工房長のモノでもねえだろ……。

 

 

 「そこでだ」

 

 

 そう区切ると、アルベリヒ工房長は脇に抱えていた紙束を会議室のテーブルに大きく広げた。

 俺とイリス、ゲオルグ君の三人でのぞき込めば、その紙束には何処かの施設の図面が描かれていた。

 

 

 「何です、これは?」

 

 「これは《教団》に潜入していた時に入手したロッジの見取り図の原本だ。

 幹部司祭だけが知る、隠し通路も記載されている、な。

 

 我々《黒の工房》はこの見取り図に記載されているルートから教団ロッジ内に潜入、向こうの陣営に接収される前に(・・・・・・・・・・・・・・)D∴G教団の技術情報を奪取する(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 「は?」

 

 

 何をとち狂ったのか、アルベリヒ工房長は自信満々にそう言い切った。

 

 ちょっと待てェ!?これから殲滅作戦が始まろうって時に、《教団》に盗みに入るとか正気かお前!?

 

 

 「少々、少々お待ち下さい、アルベリヒ工房長。

 確かに仰られる通り、遊撃士協会や七耀教会の面々に、《教団》の技術情報を接収されるというのは非常に業腹ではあります。

 しかし、流石にこれから技術情報の奪取に動くのは、あまりに無茶です!」

 

 

 殲滅作戦が三日後という段階まで来ているというのに、今からロッジに潜入して、技術情報を奪取し、離脱しろだと?……怪盗紳士こと《怪盗B(ブルブラン)》でもあるまいし、できる訳ないだろ!

 あまりに時間的猶予が無さすぎるわ!

 

 それに殲滅作戦の開始自体は三日後だろうが、当然襲撃予定の各ロッジには、《教団》の動向を逐一監視する監視要員が張り付いているだろうし、襲撃部隊の配備も徐々に進んでいるはずだ。

 仮に《教団》のロッジ内に上手く潜入したとしても、技術情報の奪取時や脱出で問題が起き、教団員との間で戦闘などになった場合、ほぼ確実に向こうの陣営に気付かれる。

 最悪、殲滅作戦を前倒しにしてロッジ内に突入して来た《襲撃部隊》と《黒の工房》、そして《教団》とで三つ巴の戦いに発展する可能性すらもあるのだ。

 

 

 「殲滅作戦の決行の日にちを抜けばあと二日以内で、しかも状況如何によっては作戦の前倒しという不確定要素がある中で、全ての工程を成し得るというのは―――」

 

 「いいや、違う」

 

 「え?」

 

 「三日ある(・・・・)

 

 「……………は?」

 

 「我々がロッジ内に潜入するのは(・・・・・・・・・・・・・・)、《教団(・・)の殲滅作戦が始まってからだ(・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 何だこのキ○ガイは!!??

 

 

 

 殲滅作戦の襲撃部隊と《教団》がドンパチやってる最中に火事場泥棒しに行くだと!?

 頭オカシイってレベルじゃねぇぞ!?

 

 

 「さ、さすがにそれは、あまりにリスクが高すぎるのでは……?

 第一、その隠し通路は幹部司祭は知っているのでしょう?

 であるならば、ロッジに雪崩込んできた襲撃部隊から逃げてきた《教団》の連中と、隠し通路内で鉢合わせする可能性は十分にあります。

 最悪、追跡してきた襲撃部隊と《教団》とで三つ巴の戦闘になる可能性すらある!」

 

 我等技術者ぞ?

 何でただの技術者が、ル○ン三世もビックリの怪盗ミッション熟さなきゃならんのだ。

 明らかにリスクとリターンが見合ってねえじゃねえか。

 あのカシウス・ブライトの作戦に火事場泥棒しに逝くとかどんな罰ゲームなんだよ。

 

 どうせ碌な情報無いって!

 よしんばあったとしても、あのチート親父の作戦にちょっかいを出すとかいう極大のリスクに、絶対見合わねえって!!

 

 

 「それについては問題無い。

 ロッジの見取り図の原本を入手した際、隠し通路を削除した写本とすり替えておいた。

 長年、ロッジを管理している司祭ならともかく、これから潜入する二箇所のロッジには、他所から異動してきた新しい司祭が就いている。

 奴等がこの隠し通路を知っている可能性は無いだろう。

 それに、仮に隠し通路を知っていたとしても、あの浅ましいとしか言い様のない教義に縋りついている《教団》の奴等の事だ。

 ロッジに襲撃部隊が突入すれば、必ず逃走ではなく、女神エイドスの呪縛からの開放などと宣い、ロッジの総力を挙げての迎撃を選ぶに違いない」

 

 やたらと自信満々にそう言うアルベリヒ工房長。

 

 いや、そうじゃねえよ。

 別に論破しろって言ってんじゃねえんだよ。

 潜入を止めろって言ってんだよ、この石頭がぁ!!!

 後、《教団》の浅ましさに関しては、浅ましさの塊みたいなイシュメルガに縋りついている工房長が言えた義理じゃねえだろうが!!!

 

 というか、アルベリヒ工房長も殲滅作戦の指揮を執ってるのがカシウス・ブライトだってのに、何でそこまで余裕ぶっていられるのだ。

 

 あの《結社》の使徒の第三柱、元祖マッドサイエンティストにしてショ○コン疑惑のある面白…じゃなかった《白面》のワイスマンですらカシウス・ブライトとの対峙を避けたんだぞ。

 総司令官の情報を手に入れてねえのか―――

 

 ―――ってそうか!

 この教団殲滅作戦を以て、カシウス・ブライトは大陸に5人しかいないS級遊撃士に昇格するから、軍人としてはともかく、世間的には遊撃士としてのカシウス・ブライトはまだ無名なままなのか!?クソァ!!!

 

 あかんダメだ。このままではアルベリヒ工房長に押し切られる。

 あれだ。人手だ、人手が足りねえ。

 俺と共に工房長に進言し、この常軌を逸した暴挙を止めることの出来る人手がいる。

 

 とりあえず、イリスは除外だ。

 アルベリヒ工房長がホムンクルス(実験体)であるイリスの進言なぞ、聞くはずもない。

 

 ……それにイリス自身、メモまでとってやる気満々みたいだし……。

 

 となれば――――――。

 その時ちょうど、会議室の一席で気配を極限まで消していたゲオルグ君と目が合った。

 

 

 そうだゲオルグ君! 君の出番だゲオルグ君!

 アルベリヒ工房長に目を付けられないよう、会議中ずっと気配を消していたゲオルグ君!

 

 

 今こそ勇気をその胸に抱いて立ち上がり、愚かな決定を下そうとするブラック上司(アルベリヒ工房長)に対し、共に反旗を翻そうでは…………オイ、ゲオルグ、テメエな~に俺から目線逸らしてんだコラァ。

 

 結局その後、あの手この手で、何とか潜入ミッションを決定を翻意にさせようと試みるものの、一切引く気配の無いアルベリヒ工房長によって、無情にも《D∴G教団》殲滅作戦を隠れ蓑にした《教団》ロッジ潜入ミッションが決定されてしまったのである。……とりあえずゲオルグの野郎は後で覚えてろよ。

 

 

 ……いや待て!まだだ!!まだか細いが希望はある!!!

 俺たちが潜入する教団ロッジが、楽勝な可能性も微粒子レベルで――――

 

 

 「我々が潜入するロッジは二か所、よって二手に分かれる。

 私とゲオルグはミリーズロッジの方へと向かう。

 

 ハンス主任とOz72――イリスは、アルタイルロッジ(・・・・・・・・)へと向かえ」

 

 

 

 

 …………嘘やん

 

 

 

 

 

 





 ほのぼの日常回終了


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