俺の上司共が色んな意味でブラックすぎる件   作:ギルバート

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 今回は少し短め

 


第十七話 ボールは蹴るモノ

 

 我らが黒の工房のブラック上司であるアルベリヒ工房長の無茶ぶりから端を発したアルタイルロッジ潜入ミッション。

 当初想定していた時間を大幅に超過してしまったものの、潜入ミッションの目的である《D∴G教団》の技術情報を何とか奪取し、残るは下層にある隠し通路から脱出するのみという段階で運悪く出くわしたハゲ教団員。

 そのハゲ教団員を悪気なくブチのめすと、何故か未来の特務支援課の一員である少女―――ティオ・プラトーがドロップした。

 そしてこれまた何故か俺が触れたとたん突然苦しみだしたティオ・プラトー。

 その悲鳴を聞きつけて『セルゲイ班』の面々―――セルゲイ・ロウ課長にガイ・バニングス捜査官が駆けつけてきたのである。

 今、周囲を取り巻く状況は混沌としているが、少なくとも確実に分かることがある。

 

 『セルゲイ班』と激突不可避だということがな!!!

 

 人間の喉から発せられたとは思えないような少女の悲鳴を聞き、『セルゲイ班』の面々が駆け付けてみると、そこには苦悶の表情を浮かべる少女と、傍らに佇む赤いプロテクターを身にまとった不審人物が。

 

 どう考えても事案ですね!ありがとうございます!!

 

 こちらに全速力で駆け寄ってくるショットガンを構えたセルゲイ・ロウ課長に、トンファーを携えたガイ・バニングス捜査官が鬼の形相をしていることからも、もはや話が通じるような段階ではないことが分かる。

 ……いやまあそもそもの話、話し合いができたところでアルタイルロッジに火事場泥棒しに来たような奴を彼らが逃がしてくれる訳もないのだが。

 

 クソが。間の悪いポリ公共め……。

 ……いや、ティオ・プラトーは『セルゲイ班』に救出されるのが正史だから、間が悪かったのは俺の方か?

 

 まあともかく、このままでは『セルゲイ班』の連中と戦う事になるのは確実。

 それで得をするのは、《教団》の面々である。

 奴等からすれば敵同士が勝手に潰し合ってくれるのだから。

 あのド畜生共が利するようなことだけは避けなければならない。後俺がフィジカルゴリラ共の相手をしたくない。

 何か戦闘を回避できるような、起死回生の一手は………。

 

 その時、視界の端にとあるモノが目についた。

 それはティオ・プラトーをデリバリーしてきたことによってこの厄介な状況を作り上げた元凶。

 先ほど俺が大剣の峰で殴り飛ばし麻痺弾をブチ込んだことによって、ピクピクと痙攣して床に這いつくばっているハゲ教団員である。

 

 おお!ハゲ!!良い所にいたなハゲ!!!

 

 

 なあハゲ!早速だが今からサッカーをしようぜハゲ!!!

 

 

 ボ ー ル は お 前 だ

 

 

 「オラァッ!逝ってこい!!!」

 

 「ぶるぁぁぁぁぁ!!??」

 

 

 戦闘用強化外骨格『パワードアーマーZwei』――通称『メカゴリラ二号改』の脚部出力を全開にして、床に這いつくばっているハゲ教団員を、こちらに走り寄ってくる『セルゲイ班』の連中に向けて、全力で蹴り飛ばす(シュート)

 

 

 「うおッ!?」

 

 「グッ!?」

 

 

 パワードアーマーが生み出す規格外の出力によって蹴り飛ばされたことにより、まるで弾丸のように打ち出されたハゲ教団員は、たたらを踏みながらもその場で身構えてしまってしまったセルゲイ・ロウ課長にガイ・バニングス捜査官の両方を巻き込みながら通路の奥へと消えていった。

 

 ………よし!これで『セルゲイ班』との戦闘は回避できたな!

 

 あの二人も飛んできたハゲ教団員を躱すことくらいは出来たはずだろうが……、咄嗟に受け止めてしまったのだろう。

 たとえ犯罪者であっても警察官として見殺しにはしない。

 まさしく正義の心を体現する、警官の鑑というべき素晴らしい行動といえるだろう。

 是非ともその心を忘れずにいてもらいたいものである。

 君たちの勇気ある行動で大怪我を免れたハゲ教団員も喜んでいるに違いない。

 ……まあ蹴った時の音からして確実に肋骨の何本かは折れているだろうが……大丈夫だ。人間の骨の数は206個もある。

 

 さて、どうせ『セルゲイ班』の連中もすぐに戻ってくるだろうし、とっとと退散するとしよう。

 その前に―――

 

 

 「さっきはすまんな、嬢ちゃん……。

 とりあえず、すぐにポリ公―――じゃなかった警察官の人たちが駆けつけてくれるだろうから、彼らにここから連れ出してもらうといい」

 

 

 グッタリとしているティオ・プラトーの前にしゃがんでそう話しかける。……まあさっきの様子からして聞こえてはいないだろうが。

 さっき俺が不用意に触れてしまったことで、彼女を苦しませた癖して、その後始末を『セルゲイ班』に丸投げするのは自分でもどうかと思うが。……まさか黒の工房(地獄)に連れて行くわけにもいかんしなあ。

 何とか頑張ってほしい。

 ティオ・プラトーにそう言い残し、俺は後ろめたさを感じながら『セルゲイ班』の連中が戻ってくる前に全力でこの場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇セルゲイside

 

 

 

 「クッ、逃がしたかッ!」

 

 

 赤いプロテクターを身に着けた男を取り逃がしてしまった事に悪態をつくガイを尻目に、俺はあの男が置き去りにしていったグッタリとしている青い髪の少女の容態を素早く確認する。

 

 

 「……セルゲイ課長、その娘の様子は?」

 

 「……一応脈拍と呼吸は安定しているが……これ以上は何とも言えん」

 

 

 現状出来うる範囲での確認をしてみたが……不安は拭えん。

 ……あの悲痛な悲鳴を聞いてしまった以上、実際のところはどうなっているか……。

 

 

 すぐさま気持ちを切り替えてこの娘の容態を聞いてくるガイにそう返してやる。

 

 

 「ともかく俺は一旦引き返して、この娘を入口で待機中の遊撃士たちに預けてくる」

 

 

 何にせよこの地獄から連れ出してやることの方が先決だろう。

 本当ならすぐにでもウルスラ医科大学に連れて行ってやりたいところではあるがな。

 

 

 「オレも同行しましょうか?」

 

 

 青い髪の少女を抱き上げる俺にガイは同行を申し出てくれた。

 確かに少女を抱えていることで得物であるショットガンを構えられない為、ガイに道中を護衛してもらえれば心強くはある。だが……。

 

「いや、ガイは引き続きロッジの制圧と拉致被害者の捜索に当たってくれ。

 この娘以外の生存者も、一刻も早く救い出してやらんとならんからな。

 なに、もし道中で《教団》の連中に遭遇したら入口まで走って逃げるさ」

 

 「そういう事であれば、了解です」

 

 

 ガイの申し出はありがたいが、今は一人でも多くの生存者を救う為に人員を割くほうが先決だ。

 今までは全て空振りだったが……まだ、まだ他にもこの娘以外に生存者がいるはずだ。必ず居るに違いない……。

 

 

 「課長、お気をつけて」

 

 「ああ、お前の方もな。

 ……さっきの赤いプロテクターの男には気をつけろ。

 何をするか分からん」

 

 

 「ええ、もう遅れは取りませんよ。

 それに―――先に進めば(・・・・・)別ルートで進行中のアリオス(・・・・・・・・・・・・・)とも合流できるはずです(・・・・・・・・・・・)

 

 「フッ、そうか」

 

 

 自信満々に言うガイに思わず笑みを漏らす。

 確かに、クロスベル警察若手最強コンビと謳われたガイとアリオスならば、《教団》の連中や赤いプロテクターの男などに遅れは取らんか。

 そうしてガイと別れ、俺は青い髪の少女を抱え、なるべく揺らさないよう注意を払いながら来た道を小走りで戻っていく。

  

 その道中、ふと脳裏によぎったのは、先ほど話題にも出た赤いプロテクターの男だった。

 

 この少女の悲鳴を聞いて駆けつけると、少女の傍に佇んでいでいたその男は、こちらに気付いた瞬間、味方であるはずの教団員をゴミのように蹴り飛ばしてこちらへの妨害を図り、その隙に逃げ去っていった。

 だが。

 先ほどは少女の悲痛な悲鳴を聞いた直後という事もあり、思わず感情的になってしまっていたが……今冷静に思い返してみれば、おかしな点がいくつもあった。

 

 自分たちが駆けつけた頃には既に教団員は倒れ伏していたという状況。

 そしてその倒れ伏していた教団員を容赦なく蹴り飛ばして遠距離武器の代わりにするという、とても同じ組織に属していると思えない行為。

 そして時間稼ぎを成功させたにもかかわらず、わざわざここまで連れてきたであろう少女を置き去りにして逃走するという不自然な行動。

 

 一応、途中で仲間割れを起こした、逃走の邪魔になるから置いて行ったなど、理由をつけようと思えばいくらでも付けられはする。……だが、もしかして。

 もしかすると―――

 

 

 「……あの赤いプロテクター男と《教団》とは敵対関係にあるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 ハンスside

 

 

 

 『セルゲイ班』との戦闘をハゲ教団員の献身によって何とか回避し、ティオ・プラトーの救出を『セルゲイ班』に丸投げそのまま置き去りにしてきた俺は、アルタイルロッジから脱出すべく全速力でロッジの通路を駆けていた。

 

 さっきは予期せぬトラブルに見舞われたものの、相変わらず下層にある隠し通路から脱出するという方針に変化はない。

 むしろ『セルゲイ班』の連中が来たことで、中層にある隠し通路からの脱出をスッパリ諦めれて良かったまである。

 

 ……しかし、逃走できたからこそ良かったものの、まさかあんなタイミングで『セルゲイ班』の連中と出くわすことになるとは。

 ……いや、おそらく史実ではあのハゲ教団員をぶっ飛ばしてティオ・プラトーを救出したのが『セルゲイ班』の連中だったことを考えれば、俺が『セルゲイ班』に出くわしたというより、『セルゲイ班』が俺に出くわしたと言った方が正しいか。

 そう考えれば、ちょっと余計な事をしてしまったのかもしれん。

 

 ……いやいや、元はといえば、俺が考え事をしている最中に、不用意に視界に入ってきたハゲ教団員が悪いのだ。

 通路の隅っこの方でコソコソしてれば、麻酔弾ぶち込むくらいで勘弁しといてやったものを。

 全く、これだからハゲは……。

 

 そんな事を考えているうちに、この逃走劇の終演が見えてきた。

 この目の前の通路を真っ直ぐ進むと隠し通路のある場所に出る。

 そのまま隠し通路を通ってアルタイルロッジの外へと脱出。

 合流地点でイリスと落ち合えばミッション終了だ。

 

 足を止めずに駆けつつも、ようやく見えてきたゴールに思わず安堵のため息が漏れてしまう。

 

 アルベリヒ工房長の無茶ぶりから始まった、この杜撰極まるアルタイルロッジ潜入ミッションもようやく終わりだ。

 

 ……しかし本当に『セルゲイ班』の連中をやり過ごせて良かった。

 あのままあの二人と戦闘になっていたら、どうなっていたことか………―――

 

 

 

 

 ………………………ん?二人(・・)

 

 

 …………ちょ、ちょっと待て。俺が出くわしたのはセルゲイ・ロウにガイ・バニングス。

 

 

 ……あと一人、あのチート野郎は何処にいった(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 その時、通路の三叉路に差し掛かったあたりで、密閉空間の鍾乳洞の中であるはずのアルタイルロッジの通路に一陣の風が吹いた。

 

 

 「八葉一刀流―――」

 

 「マズッ――!?」

 

 「二ノ型 疾風!!!」

 

 

 ちょうどその存在の事を考えていたことが功を奏した。

 一陣の風と共に真正面から現れた人影が放つ神速の一閃を俺の右手の大剣で何とかギリギリで防ぐ。

 俺の右手の大剣と、その者が振るう太刀とのつば競り合いでギリギリと火花が飛び散る。

 その中で俺の目はその襲撃者の顔をハッキリ捉えた。

 

 黒髪ロン毛に、顔の傷。そして先ほど風に乗って微かに聞こえた型の名前。

 

 間違いない。見間違いようもない。聞き間違いようもない。

 

 コイツこそが、絶対遭遇してはならない――いや、ならなかった危険生物。

 

 『八葉一刀流(公式チート)』の免許皆伝の証である《風の剣聖》を未来で授かりし、正真正銘のバケモノ(ゴリラの中のゴリラ)

 

 

 

 ここで来るかよ!?アリオス・マクレイン!!??

 

 

 

 一陣の風と共に現れた人影―――アリオス・マクレインは鋭い眼光をこちらへと放った。

 




アリオス「こ ん ば ん は」



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