俺の上司共が色んな意味でブラックすぎる件 作:ギルバート
加速するハンス主任の外道行為
俺の大剣と、一陣の風と共に現れた人影―――アリオス・マクレインが振るう太刀とのつば競り合いの中でギリギリと火花が周囲へと飛び散る。
アリオス・マクレインがここで出てきやがるとは!?
まさか中層手前の分岐でセルゲイ・ロウ、ガイ・バニングスと分かれて、単独でロッジの制圧をしてたのか!?
このアルタイルロッジは中層手前辺りで東西に道が大きく二手に分かれている。
おそらくは《D∴G教団》に誘拐された子供たちを一刻も早い救助の為、アルタイルロッジ内の速やかな制圧を目指す『セルゲイ班』は、見逃しや取り逃がしが無いよう、ロッジ中層手前の分岐で手勢を分けたのだろう。
そして少数精鋭であるがゆえに、単独で制圧しなければならなくなる方に『セルゲイ班』の最高戦力であるアリオス・マクレインを宛がったに違いない。
理屈の上では十分に理解できる。
だが、それによって生み出された今の状況は、俺にとって最悪でしかなかった。
現状、通路の反対側―――つまり東側から来たアリオス・マクレインによって、アルタイルロッジからの脱出路である下層の隠し通路に向かうまでの道を完全に塞がれてしまっているのだ。
もちろんアリオス・マクレインが、《D∴G教団》の幹部司祭だけが知る隠し通路の位置など知っている訳がない為、今こうして俺の退路を塞いでいるのは、狙ってやった事ではなく、単なる偶然でしかないのだろうが。
それでもアリオス・マクレインに退路を封鎖されている事に変わりはない。
どうする!?無理やりにでも押し切って強硬突破するか!?
イヤイヤ、仮に強行突破出来たとしても追撃がある!
神速の太刀を振るう未来の《風の剣聖》に背中を見せるとかただの自殺行為だわ!
というか、それ以前にコイツに絡まれたままじゃ、この場所から離脱することすらもッ……!
進むにしても退くにしても、どちらを選ぼうがアリオス・マクレインの存在が邪魔でしかない。
であるならば―――
………だったらコイツにはここで大人しくしてもらう!!
倒さなくてもいい。僅かな時間でいい。
アリオス・マクレインには、俺がこの場から離れアルタイルロッジから脱出するまで、こちらを追撃できない程度のダメージを負ってもらう。
それしか俺が生き残る道はない。
「む!?」
おそらくは、今の今まで《教団》の魔獣や狂信者を、鎧袖一触で切り捨ててきたのだろう八葉一刀流ニノ型《疾風》。
その攻撃を右手の大剣のみで防がれるとは思わなかったのだろう、アリオス・マクレインの表情が驚きに染まり、動きがほんの僅かに鈍る。
「オラァ!!」
「くッ!?」
そのスキを見計らいパワードアーマーを全力稼働。
パワーアシスト機能が生み出す、人類の上限値を大きく超える膂力を以て、アリオス・マクレインとの鍔迫り合いを制し、彼を大剣で弾き飛ばした。
桁違いの力で弾き飛ばされた結果、宙に浮かぶアリオス・マクレイン。
「大人しくしてろ!」
その彼に向けて、左手のサプレッサー付きの導力銃で麻痺弾を放つ。
回避行動など取りようもない空中。
放たれた弾丸は、無防備な体を晒すアリオス・マクレインへと真っ直ぐに伸びていき―――
「斬!!!」
アリオス・マクレインは空中に浮かんだまま刀を振るい、キンッ!という澄んだ音と共に弾丸を真っ二つに斬り裂いた。
…………いや、キンッ!じゃないが。
おまッ!?飛んで来た弾丸を切るとか石○五ェ門みたいな事しやがっ―――そういえば同門のリィン・シュバルツァーが同じことしてたな?
ああああ!これだから
そのまま立て続けに発砲してみるものの、全てアリオス・マクレインの剣閃の前に無残に斬り落とされていく。
それどころか地面に足をつけたアリオス・マクレインは、自分に向けて飛んでくる弾丸を次々と斬り捨てながらも、再度こちらとの距離を詰めにかかっていた。
このチートゴリラがッッ!?
……上等だコラァ!だったら直接ブチのめしてやらぁッ!!
役に立たない導力銃をホルスターにしまい、向かってくるアリオス・マクレインを迎え撃つべく大剣を正眼に構える。
先ほどのような小競り合いとは違う、本気の激突。
容赦なくぶつかり合い、夥しい火花を散らしながら高速で打ち合う刀と大剣。
アリオス・マクレインが振るう神速の剣を、西風の旅団から収集した膨大なモーションデータから組み上げた無数の型と回避モーションでいなし、捌き、そして――
「大雪斬!!」
「ミラージュエッジ!!」
「!?その技はヴァンダールのッ!?」
先日、模倣再現に成功した帝国二大剣術であるヴァンダール流とアルゼイド流。そしてその二つの剣術から厳選した百の型を取り入れたことで、より実戦的な剣術へと昇華した百式軍刀術の
「問答は無用!地裂斬!!」
「ッ!?洸破斬!!
アルゼイドの技まで!?だが……ニノ型疾風!!」
「グッか……業滅刃!」
限られた戦巧者のみが出来る、闘気を纏っての身体能力の向上に対し、最先端科学技術が平等に齎す、パワーアシスト機能による身体能力の向上。
長年の研鑽の末に培われた神速の見切りに対し、数多の戦闘データに裏打ちされた効率的なモーションデータによる回避行動。
八葉一刀流の洗練された
刹那の間に幾重にも打ち合い、周囲に壮絶な破壊痕をまき散らしながらも、留まるところを知らぬその戦いの天秤は―――徐々にアリオス・マクレインへと傾き始めていた。
マ、マジかッ!?こちとら『パワードアーマーZwei』の全機能をフル稼働させてるってのに……これでも押し負けるのかッ!?
不意に始まったアリオス・マクレインとの戦闘だったとはいえ、勝算はあった。
パワーアシスト機能による規格外の身体能力の向上を加え、超一流の猟兵団である西風の旅団から収集したモーションデータの数々。
そして分析が進みヴァンダール流や、アルゼイド流、そして百式軍刀術の模倣再現すらも可能となった戦闘用強化外骨格『パワードアーマーZwei』。
その力をもってすれば。
未だ《風の剣聖》の名を授かっておらず、《武の理》に至っていない今ならば。
今の今まで目立った戦闘も無く疲弊もない俺とは違い、アルタイルロッジに突入してから一時半以上ぶっ通しで《教団》の魔獣や狂信者と戦い続け、そして拉致された子供たちの悲惨な末路を目にし続け、心身共に消耗しているであろう今この瞬間ならば。
あのアリオス・マクレインであろうと勝算は十分にあると。
………そう思っていたのだ。
しかしその目論見は完全に外れ、これだけこちらが有利であるにもかかわらず、ジリジリとアリオス・マクレインに押され始めていく。
出力では完全に上回った。
動きにも追随できている。
だが剣技においては、圧倒的に、それこそ他の優位を全て食い潰して余りあるほどに惨敗していた。
模倣再現されたヴァンダール流や、アルゼイド流、そして百式軍刀術の剣技をいくら振るえども、ただ一つの八葉一刀流に敵わない。
その両者には超えることの出来ない明確な差があった。
このバケモノがああぁぁッ!?
何なんだコイツは!?
この出待ち!お立ち台!正面!拗らせ!スタイリッシュ無職宣言!黒豆!
心の中であらん限りの罵詈雑言を吐くものの、状況が良くなるはずもなし。
今でこそ三流派の動きをランダムに切り替えることで、辛うじてアリオス・マクレインに動きを読まれないよう立ち回れているが、所詮はその場しのぎ。
見切られ、押し切られるのも時間の問題でしかない。
どうする!?《グング=ニール》を呼び出すか!?
……いや、今この段階でアリオス・マクレイン、ひいては
そもそも《グング=ニール》を呼び出したところで、コレに勝てるとは到底思え―――
その時、三叉路の奥――最下層につながる通路から、何かが高速で近づいてきた。
その何かは、勢いそのままに俺とアリオス・マクレインが争っている場所に一直線に突っ込んでくる。
「くッ!」
「チッ!」
突然の闖入者に、俺とアリオス・マクレインは一旦戦いを止めて左右に大きく後ろに飛び退り、その何かが放った、通路の地面に大穴を開けるほどの一撃を回避。
そしてそこでようやく襲いかかってきた者の顔を視界に捉えた。
「何ッ!?」
「……!コイツは」
パラパラと土塊を引きながら上体を起こす
ソレは一応《教団》の教団員だったのだろう。
《教団》の祭服の断片が身体に貼り付いていることから、少なくとも拉致されて来た子供といった類ではないハズだ。
だがその外見は、もはや人という区分から大きく逸脱してしまっていた。
肥大化した獣のような黒い巨体に、鉄すらも容易く引き裂いてしまいそうな巨大な爪。
そして邪悪な笑みを浮かべながらも、白く濁った眼は完全に正気を失っていた。
コイツは……零の軌跡で、《太陽の砦》にいた
まさかアルタイルロッジにも居やがったとは!?
それは、かつて教団員だったもの。
自分すらも《儀式》という名の人体実験に身を捧げ、その果てに
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛!!」
もはや理性など欠片も感じられない奇声のような咆哮を発する様と、今もダラダラと涎を垂らしながら襲いかかって来た様子を鑑みるに、コイツは俺やアリオス・マクレインの事を排除する目標ではなく、喰らうべき獲物としか思っていないようだ。
……おそらく《教団》側が
全くコントロール出来ていない所を見るに……いよいよ《教団》側もこんなモノに頼らなければならないほどに切羽詰まってきたらしい。
アリオス・マクレインは、先ほど放った一撃からゆっくりと上体を起こすコイツを最大限警戒しているようだが―――
チャ―――――ンス!!!
来た!!
なあボールだ!!ボールだろう!?
なあボールだろお前!!
お 前 は ボ ー ル だ
「てなわけで逝ってこいや!!」
「⬛⬛⬛!?!?」
ゆっくりと上体を起こす教団員だったものに最速で近づき、その腰辺りに向けてパワードアーマーの脚部出力を最大にした飛び蹴りをかます。
攻撃した直後の無防備な状態で、側面から全力で蹴りつけられた事で、その教団員だったものは抵抗する間も無く吹っ飛んでいく。
アリオス・マクレインの方へと。
「⬛⬛⬛⬛!!」
「くっ、このッ!?」
普通なら蹴りつけた俺にヘイトが向きそうなものだが、その程度の事を考える知能すらも喪われているらしい。
吹っ飛んでいった教団員だったものは蹴り飛ばした俺に目もくれず、視界に入ったアリオス・マクレインに本能のまま襲いかかっていく。
ゲハハハハハハ!!!
そのままバケモノ同士で戯れているがいい!!!
そして体よくアリオス・マクレインに教団員だったものをなすりつける事に成功した俺は、全速力でその場から逃走した。
サラバだ、名もなき教団員よ。
君の命を懸けた献身を……俺は忘れない!!
◇
あの教団員だったものによる命を懸けた献身(強制)のおかげで何とかアリオス・マクレインの魔の手から逃れる事に成功した俺は、アイツが通ってきた通路を全速力で駆け抜けながらイリスに無線で連絡を入れる。
「こちら
『こちら
「来なくていい!!合流地点で待機せよ!!」
『は、はい!』
このクソ忙しい時にイラン事言ってんじゃねえ!
イリスに新しい合流地点で待機するように厳命し乱暴に無線を切った。
ハッキリ言って状況は悪化の一途を辿っている。
結局、逃げられはしたものの、最後まで退路を塞ぐアリオス・マクレインを突破する事が出来ず、下層の隠し通路からのアルタイルロッジ脱出を諦めざるを得なくなった。
……いや、あの次世代チート親父から無傷で逃れるだけでも、間違いなく偉業ではあるんだが……それはともかく。
アルタイルロッジからの脱出路である三つの隠し通路のうち、中層にある隠し通路はセルゲイ・ロウとガイ・バニングスに、下層の隠し通路はたった今アリオス・マクレインに邪魔された為、残る隠し通路は一つ。
最下層の《儀式の間》奥にある隠し通路だけとなるのだが……ここが一番の難所になるであろうことは想像に難くない。
十中八九アルタイルロッジ内の《D∴G教団》の残存兵力がそこに集結しているだろうからだ。
つまり、俺が最下層にある隠し通路を通ってアルタイルロッジから脱出するには、まず隠し通路手前に集結している《教団》連中をどうにかしなければならないのである。『セルゲイ班』に追いつかれる前に。
……今の状況を例えるなら、前門の虎後門の狼ならぬ、前門の
よし狂信者をぶっ飛ばそう。考えるまでもない。
そんな考えの元、最下層の《儀式の間》を目指していたのだが……通路を進むごとに次から次へと《教団》狂信者共に出くわしてしまう。
おそらくは『セルゲイ班』に追い詰められたことにより、最下層の《儀式の間》で味方と合流しようと目論んでいる連中なのだろうが……最終的な目的地が同じなだけあって、いたる所で鉢合わせる。
ええい、ウジャウジャと湧いてきやがって鬱陶しい!散れテメエら!!この俺に道を譲れ!!!そして『セルゲイ班』に突っ込んで足止めをしてこい!!!!
曲がり角の度に鉢合わせする狂信者共を死なない程度に張っ倒し、襲いかかってくる奴らを蹴り倒し、仲間を呼ぼうとする連中を殴り倒していく。
ただし魔獣、テメーは死ね。
そうして進むたびに狂信者共で足止めを食らいつつ、何体目かの教団側が解き放った魔獣を切り倒したあたりで―――
「そこの赤いプロテクターの男!待て!」
「今度は逃がさん!」
今度は後方からガイ・バニングスとアリオス・マクレインが追いかけて来た。
もう追いついてきたのか!?あの教団員もどき足止め出来てねえじゃねえか!クソの役にも立たねえな!!
というかアリオス・マクレインはともかく、ガイ・バニングスもか!
さてはセルゲイ・ロウが単独でティオ・プラトーの救出を引き受けたな!?
こちらを見据え、全速力で駆けてくるクロスベル警察若手最強コンビ。
警察官として、クッソ怪しい俺を捕まえたいのは十分に理解できる。だがな――
ポリ公に待てと言われて待つ泥棒はいねえんだよ!
「これでもくらってろ!」
先ほど切り倒した魔獣。その死骸をこちらに走り寄ってくるガイ・バニングスとアリオス・マクレインに向けていつかと同じように全力で蹴り飛ばす。
パワードアーマーが生み出す規格外の出力によって蹴り飛ばされたことで、まるで弾丸のように打ち出された魔獣の死骸だったが、同様の攻撃を受けたガイ・バニングスは冷静に対処。
飛んできた魔獣の死骸の軌道を見極め冷静に避けてみせた。
……チッ、さすがに二度目は通じんか。
あとアリオス・マクレイン。ガイ・バニングスが避ける横で、魔獣の死骸を迎撃して真っ二つにするお前は一体何なんだ。
追ってくるガイ・バニングスとアリオス・マクレインから逃走すべくパワードアーマーの脚部出力を全開にする。
幸い、この先は《儀式の間》まで一本道となっている為、途中で狂信者共と鉢合わせることはない。
せや!『セルゲイ班』の連中もトレインしながら《儀式の間》に突っ込んでったろ!
そもそも俺だけが『セルゲイ班』に追いかけ回されるという状況がまずおかしいのだ。
俺が苦しんでんだから狂信者共も苦しむべきだ。
不幸のおすそ分け。
みんなで不幸せになろうぜぇぇ!!!!
そのまま二人と命懸けの鬼ごっこをしながら走り続け、《儀式の間》まで、あと少しという所で、足を止めずに懐から二つの塊を取り出す。
そしてそれに付いていたピンを引き抜き、一つを後方に放り投げ、そしてもう一つはフルスイングで《儀式の間》へと投げ込んだ。
「ッ手りゅう弾ッ!?隠れろアリオス!」
「くッ!?」
残念! フ ラ ッ シ ュ バ ン だ
手りゅう弾と勘違いしたガイ・バニングスとアリオス・マクレインが物陰に隠れた直後、起爆したフラッシュバン―――閃光発音筒から、鼓膜が破れそうなほどの爆発音と共に、眼球を焼きつぶしそうなほどのまばゆい光が放たれた。
……流石は上級捜査官といったところか。
咄嗟に手りゅう弾と閃光発音筒を間違えたとはいえ、ガイ・バニングスとアリオス・マクレイン二人は物陰に隠れて対処して来ている。……他の奴は違うようだが。
薄暗い鍾乳洞の中、突然フラッシュバンが放つ爆発音と閃光をモロに食らったらどうなるか。
答えは簡単――
「ぎゃぁあああああ!?」
「ぐおおおおおおッ!!??」
「目が!目がああぁぁぁ!?」
こうなる。
や~っぱり、入り口付近に狂信者共が待ち伏せしていやがったか。
《儀式の間》の入り口付近で俺たちを待ち伏せしていた狂信者共の哀れな絶叫を無視しつつ、走りながら戦術オーブメントを駆動させる。
「『アダマスシールド』発動」
対象の周囲に物理攻撃を防ぐシールドを張り巡らされる
「う、撃て!撃ちまくれ!」
フラッシュバンにより視界と聴力を奪われ、眩暈や耳鳴りでフラフラながらも、発砲するように声を張り上げる推定指揮官だが、そもそもその声すらも一時的な聴力喪失で聞こえていない者も多く、何とか命令に従おうとする者も視覚と方向感覚の喪失により照準が定まってはいなかった。
狂信者共ががむしゃらに放つ弾丸たちは、そのほとんどが見当違いの方向に飛んでいき、奇跡的に直撃コースを取った弾丸も『アダマスシールド』と盾にした大剣にはじかれていく。
そして比較的安全に《儀式の間》に入り込んだ俺は、未だフラッシュバンの後遺症に苦しんでいる四人の狂信者共を片端からしばき倒していった。
うむ。研究品である一定以上の光度と音圧を検知した場合、自動的に視界情報と聴覚情報をシャットアウトする網膜スクリーンと小型イヤホン。
フラッシュバンと組み合わせれば実にいい感じである。
コイツを次回のアルベリヒ工房長への提出成果にするかね。
入り口付近で待ち伏せしていた狂信者共を全員制圧し終え、《儀式の間》のさらに奥へと進んでいくと、そこには広大な空間が広がっており、中央には巨大な広場、そしてその奥には《D∴G教団》のシンボルである赤い瞳の巨大なレリーフが飾られていた。
「ぐっ、まさかもうここまで来るとは……」
そう呟きを漏らすのは中央には巨大な広場に立つ司祭服を身にまとった初老の男。
おそらくはこの初老の男こそが、このアルタイルロッジのトップだろう。
その周囲を十名ほどの教団員が武器を構えて固めていた。
そして残念ながら、俺の目当てである最下層の隠し通路があるであろう場所は連中の真後ろである。
……ちょっとそこどいてくんねえかな?
「そこまでだ!」
「クロスベル警察だ!全員大人しく投降しろ!」
そうこうしているうちに、最後の役者であるガイ・バニングスとアリオス・マクレインのコンビが駆けつけてきた。
……ふむ、ポリ公共の公務の邪魔にならないよう端の方に寄っとくか。
「エイドスの尖兵共が!我らの崇高なる儀式の邪魔をしおって!」
「多くの何の罪もない子供たちを犠牲にして……何が崇高なる儀式だ!」
「これは偽りの神から全ての者達の目を覚まさせる為に必要な犠牲なのだ!何故それが分からない!?」
「このッ!?」
「外道がッ!」
アルタイルロッジのトップと、ガイ・バニングス、アリオス・マクレインとの間で巻き起こる問答。
どちらも自身が正義であると信じるがゆえに、その熱量は凄まじいものがある。
だがそれゆえに、互いが一歩たりとも引く気はないと分かり、武力による解決しかないという結論に至るのもまた早かった。
まあ、そうなるわな。……それにどちらも言葉程度で済ませるつもりはないだろうし。
そろそろ、原作では見れなかった《D∴G教団》とクロスベル警察若手最強コンビとの激突が始まんのか~と見物していると……何故か両者の視線がこちらへと集まる。その視線は何処となく困惑していた。
……ん?なんだ?
《教団》の連中やクロスベル警察若手最強コンビから、「そもそもコイツ誰だよ」とか「え?向こうの陣営の奴じゃねえの?」などといった視線がバンバン飛んでくる。
………え?もしかして名乗らなきゃダメなやつ?
そのまま俺の存在をなあなあに流してもらえることを密かに期待して、なるべく気配を消していたんだが………無理か。
………まあこうなっては仕方あるまい。
一応
ここは俺も潔く名乗りを上げるとしよう!
よし、ボイスチェンジャーを起動して…ウオッホン!
「吾輩は結社《身喰らう蛇》に忠誠を誓う強化猟兵なり!!
偉大なる
盟主「!?」
潔く名乗りを上げる(偽らないとは言っていない)