俺の上司共が色んな意味でブラックすぎる件   作:ギルバート

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 お久しぶりです(小声)
 今回の話がホントに書けず、今の今までかかりました。

 後(ようやく)先日界の軌跡クリアのでタグも変更しました。
 クリアした感想を一言    ホントあの世界クソやな!!!



第二十六話 人を隠すなら組織の中

 

 七耀暦1201年

 

 

 エレボニア帝国の首都、《緋の帝都》ヘイムダル。

 帝国中に張り巡らされている鉄道網の要衝にして、帝国最大の都市であり、総人口約80万人という数は、ゼムリア大陸全土でも、最大級の人口を誇る。

 その町並みは、《緋の帝都》の名の通り、緋色のレンガを基調にした美しい街並みをしており、歴史的な建造物も数多く存在する各街区を導力トラム(路面列車)が繋いでいた。

 

 そんな帝都の北側に位置する皇城《バルフレイム宮》は、エレボニア帝国皇帝ユーゲント三世とその一族の皇居にして、帝国政府機関すらもその内に抱える、まさに帝国の心臓部といえる場所である。

 そして、政府機関を内に抱えるという性質上、折衝や交渉の為に帝国貴族や諸外国の要人との非公式の会談の場が設けられることも多く、またそういった訳アリの者達を人目に晒すこと無く、秘密裏に城内に招き入れる為に、城正面の大橋を経由した正規の入城ルート以外にも《バルフレイム宮》の地下には地下道を経由するルートが整備されていた。

 

 そんな地下道を突き進む二人の人影。

 

 30代前半の軍服を身に纏ったカイゼル髭を蓄えた大柄の男性と、その傍らに付き人のように控える同じく軍服を纏った妙齢の黒髪の女性。

 そして軍人…というには少々相応しくない恰幅いい身体を揺らしながら歩く男性の手には、大型のキャリーケースが握られていた。

 

 

 「エレボニア帝国軍第一機甲師団所属、カール・ダモン大尉及び、エレメア・シャーロット少尉だ。

 オズボーン閣下へのお目通りを願いたい」

 

 

 しばらく歩いた先で着いた検問所にて、待機していた近衛兵達に、二人分の身分証明書を提示したダモン大尉が高圧的に言い放つ。

 その彼の尊大とも言える態度に、近衛兵達は顔色一つ変えず名簿を確認する。

 そこには確かに、ギリアス・オズボーン宰相名義で二人の入城許可が下りていた。追記事項と共に。

 

 ダモン大尉が持ち込む荷物(・・)に関しては詮索不要。

 

 

 先ほども言ったように、帝国貴族や諸外国の要人といった訳ありの者たちを秘密裏にバルフレイム宮内に招き入れる為に用意されたのがこの地下道だ。

 そのこともあって、政府関係者、それも高官クラスが発行する通行許可が必要であるものの、それさえあればこの地下道を通る者には、基本的にボディーチェックや手荷物検査などが行なわれる事はない。 

 にもかかわらず、わざわざ追記事項に詮索不要と念を押すあたり、オズボーン宰相にとって、ダモン大尉の持つキャリーケースの中身はよほど他人に見られたくないモノであることが伺える。それに。

 照会をしていた近衛兵はチラリと目の前の人物を盗み見る。

 

 カール・ダモン大尉。

 彼は帝国軍内において、未だ根強い貴族政治に異を唱え、政治改革を成し遂げんとする『革新派』を支持する派閥内で、頭角を現している人物だ。

 そんな彼が、『革新派』の中心人物であるギリアス・オズボーン宰相と何らかの荷物を持ち込み秘密裏に会合をする。

 その情報だけでも、『革新派』と対立する『貴族派』の者たちが浮き足立つことだろう。

 

 それを踏まえた上で。

 近衛兵はこの一連の情報を頭の中で切り捨てた。

 彼ら近衛兵達が、忠誠を誓うのは帝国の頂点を戴くユーゲントⅢ世皇帝陛下とその一族のみであり、『革新派』に『貴族派』といった、言ってしまえば世俗の争いに介入するつもりなど一切無かったからだ。

 

 

 「確認ができました。

 オズボーン閣下は執務室でお待ちです。案内役をお付けいたしますか?」

 

 「結構だ」

 

 

 どこまでも自分の職務に忠実な近衛兵が差し出した二枚の許可証。それをダモン大尉は引ったくると、シャーロット少尉を引き連れそのまま検問所の先へと進んでいく。

 

 そして二人はエレベーターに乗り込んで上へ上へと登っていき、バルフレイム宮の上層部、皇帝一族の居住区画に程近い階で降りると、そのままガラガラとキャリーケースの音を響かせながら、広い廊下を突き進んでいく。

 しばらくして。目的地にたどり着いたダモン大尉は、緊張した面持ちで目の前の重厚な扉をノックした。

 

 

 「入りたまえ」

 

 「失礼します」

 

 

 さほど間を置かずに中より聞こえてきた入室を許可する威厳のある声。その声に促されダモン大尉とシャーロット少尉は扉を開き中――執務室へと足を踏み入れた。

 その室内は広々とした空間が広がっており、おそらく備え付けであろう皇帝陛下の居城に相応しい豪奢な装飾と調度品がその室内を飾り立ていた。

 その中にあってなお、存在感を失わない一人の男性。

 

 そう、彼こそは平民出身でありながら、その辣腕を振るい帝国宰相の皇帝であるユーゲントⅢ世陛下から全幅の信頼を受ける帝国宰相、ギリアス・オズボーンその人である。

 

 

 「エレボニア帝国軍第一機甲師団所属カール・ダモン大尉及び、エレメア・シャーロット少尉、出頭いたしました。

 この度は、かのオズボーン閣下にお目通りが叶いましたこと、誠に光栄であります!」

 

 

 執務机に向かい書類を書くオズボーン宰相に対しピシリと敬礼をする二人。

 そしてオズボーン宰相はここで初めて、手にしていた万年筆を机に置き二人を見据えた。

 

 

 「うむ、わざわざ来てもらって済まなかったね」

 

 「いえいえ!この帝国内に新たな風を吹かせんとする閣下の御命令とあらば、このダモン!いついかなる時であろうと、喜んで閣下の元へ馳せ参じましょうぞ!」

 

 

 労いの言葉を口にするオズボーン宰相に対し、まるで取り入るような態度を取るダモン大尉。

 先ほど近衛兵に対し尊大に振舞っていた時とは打って変わって宰相という上位者に猫なで声で媚びへつらうその姿は卑しさすら感じられる。

 その後もオズボーン宰相に気に入られようしているのか、世辞を並べ立てて取り入ろうとするダモン大尉だったが、彼は特に気にした様子はなく、唐突にダモン大尉の言葉を遮るように口を開いた。

 

 

 「ああ、もういい(・・・・)

 

 「ほ?」

 

 「既に人払いを(・・・・・・)済ませ(・・・)()()()

 

 「はあ…ええ……?」

 

 何の脈絡なく放たれたオズボーン宰相の言葉。

 その言葉にポカンと間抜け面を晒し、しどろもどろにながらも何とか場を取り繕おうするダモン大尉だったが―――

 

 

 「だそうだ。もういいぞ、イリス(・・・)

 

 「了解しました、ハンス主任(・・・・・)

 

 

 グチャリと不気味に笑ったダモン大尉の口と、傍らに控えるシャーロット少尉の口から、先ほどとは全く違う若い声と、想像以上に幼い声が響き渡る。

 

 

 「《グング=ニール改》、擬態解除」

 

 「《フルン=ティング改》、擬態解除」

 

 

 その言葉と同時に彼らの様相は一変した。

 帝国軍人然としたダモン大尉と妙齢の女性であるシャーロット少尉の姿は、突然切り替わったかのように唐突に色を喪って、それぞれ赤と緑のメタリックな単色へとそれぞれ変化し。

 顔が、服が、体が。まるでアイスクリームが溶けるかのように、グズグズと崩れ落ちていくと共に、その下地(・・)があらわになっていく。

 それ全て溶け落ちた時。

 ダモン大尉と名乗っていた恰幅の良い男性は、黒いスーツの上に白衣を纏う長身痩躯の金髪の青年へと。

 シャーロット少尉と名乗っていた妙齢の女性は、年端もいかない小柄で華奢な銀髪の少女へと姿を変えていた。

 

 そしてダモン大尉の中から現れ出でた青年は、その顔に胡散臭い営業スマイルを浮かべながらオズボーン宰相へ一礼する。

 

 「では、改めまして。

 アルベリヒ工房長より、今後オズボーン閣下と《黒の工房》との連絡役を仰せつかりました。ハンスと申します。

 こちらのイリス共々以後お見知りおきを」 

 

 

 

 ◇

 

 

 オズボーン宰相とイリスが見守る中、俺は応接机の上に持ってきた大型のキャリーケースを慎重に置くと、側面に付いていた暗証番号を入力して電子ロックを解除し開け放ち。

 その中身――キャリーケースの中にすっぽりと収まっている、膝を抱えるようにして眠っている水色髪の幼い少女を見せた。

 

 

 「ほう、これが?」

 

 「ええ、Oz73ーミリアム・オライオン。

 『根源たる虚無の剣』錬成に必要なスペックを満たした完成形のホムンクルスとなります。

 ……尤もコレはあくまでもスペア。

 実際の錬成は、よほどのことが無い限り、コレの後継機にして最終型である個体、Oz74ーアルティナ・オライオンが使用される予定ですが」

 

 「なるほど、いつ目覚める?」

 

 「今は薬で眠らせているのでだいたい三時間後に起動すると思いますが……今すぐ起動させますか?」

 

 「いや、いい。

 ……使用上の注意点は?」   

 

 「特にありません。

 出荷前に生命活動を含む基礎知識は既にインストール済みですので日常生活に支障はありませんし、

 戦闘においても、同調率の兼ね合いもあり旧型(Oz73)には劣りますが専用の戦術殻《アガートラム》のアシストにより、最低限の性能を確保しております。

 

 ……まあ先ほども言いました通り、あくまで本命はコレの後継機であるOz74ーアルティナ・オライオンの方ですので、スペアとしての価値を損ねない範囲で、どうぞご自由にお使いください」

 

 「……なるほど。

 ならば自由に(・・・)使わせ(・・・)てもら(・・・)おうか(・・・)

 

 

 ミリアム・オライオンをしげしげと眺める彼に製品(・・)に対する取り扱い方法の説明をすれば、意味深な答えが返ってきた。

 

 ……まあ普通に《翡翠の城将(ルーファス)》、《かかし男(レクター)》、《氷の乙女(クレア)》と共に《白兎》として、彼直属の集団である《鉄血の子供たち(アイアンブリード)》に抜擢するだけなのだろうが。

 

 とにかく声と存在感に威厳があり過ぎるのだ。このせいで、全ての言葉に裏がある様に感じてしまう。

 もし原作知識が無ければ危なかっただろう。

 これでも10年振りに生き別れた自分の息子を電車の窓越しに見かけて、上機嫌なのを部下に悟られるほど人間味に溢れたオッサンなのだが。(それはそれとして、出向いた通商会談で主人公パーティ(特務支援課)も甚振るし、従属国(クロスベル)は締め上げるし、襲撃してきたテロリスト(帝国解放戦線)は虐殺する)

 

 そんな事を考えながら、チラリとイリスの方へ視線を向ける。

 

 イリスは先ほどの俺やオズボーン宰相との会話に加わる事なく、ジッと、キャリーケースの中で眠るミリアム・オライオンを見つめていた。

 だがその視線に恨みや嫉妬といった負の感情など一切無い。

 それどころが彼女を見つめるその瞳には、純粋な羨望と敬意、そして慈しみが込められていた。

 

 

 

 

 

 それは、ここにくる直前。

 オズボーン宰相へと出荷する前に、黒の工房内の機密保護の為、基礎的な知識を除いたミリアム・オライオンの記憶を消去する準備をしていた時のこと。

 

 

 「この子がボクの“ 妹”か……。

 ……ゴメンね。すぐに忘れちゃうと思うけど、“ 外”に出たらちゃんと再開していっしょに“ 遊ぼう”ね?」

 

 

 幾つものチューブに繋がれ、満たさた液体の中を揺蕩うようにして眠るOz74ーアルティナ・オライオン。

 基礎知識を集中学習(インストール)中の彼女が収まった育成カプセルを愛おしそうに撫でながらそう呟いた。

 

 このシーンはちょうど、『閃の軌跡Ⅳ』にて、囚われたリィン・シュバルツァー(主人公)をトールズ士官学校新旧Ⅶ組が黒の工房本拠地に攻め込んだ際、アルティナ・オライオンが消されていた記憶を僅かに思い出した場面だ。

 この情景を彼女は記憶を消されてもなお、心の奥底に残していたのだろう。

 

 ……よく見ればカプセル内を揺蕩うアルティナ・オライオンの目が僅かに開いているような気がする。

 

 だが原作とは明確に違う箇所も存在する。

 本来であればミリアム・オライオンの他にアルベリヒ工房長しか居ないはずのこの場面に、ミリアム・オライオンの記憶消去の為に俺と、俺の助手としてイリスが呼ばれていたことだ。

 これはおそらくは、ワイスマン教授の暗示技術を受け継いだのが、アルベリヒ工房長ではなく俺だった為に起こったバタフライエフェクトなのだろうが。

 だがそれによってさらなる蝶が羽ばたいた。

 

 

 「キミもボクたちのお姉ちゃんなの?」

 

 

 アルティナ・オライオンが眠る育成カプセルから目を離し、トコトコとイリスの元へと近づき、そう話しかけるミリアム・オライオン。

 お互い自己紹介などしなかったが、アルベリヒ工房長がイリスを型式番号(Ozー72)で呼んでいたのを耳聡く聞きつけたのだろう。

 

 

 「……?何を言っているのかね?この失敗作が成功さ「ん゛ん゛っンンンッ!!!」……なんだね?」

 

 「いえ、少々ノドの調子が悪く……」

 

 

 それに対し、成功作の二人と、失敗作のイリスを同列視さされたことに、気分害したのだろうアルベリヒ工房長が心底不愉快そうに口を挟もうとしているのを、全力で咳払いを装いながら妨害していると。

 話しかけられたイリスは―――

 

 

 「……いえ、ミリアム・オライオン様。

私は御二方の姉ではありません」

 

 

 まるで『従者』のようにミリアム・オライオンの前に跪き、深々(こうべ)を垂れた。

 

 ……やっぱりこうなってしまったか。

 

 人形兵器である戦術殻と完全同期した、人にして武具でもある存在であり、自らの命と引き換えに《巨イナル一》再錬成の儀式、《巨イナル黄昏》成就の核となる、不死の黒の聖獣を殺すことの出来る《根源たる虚無の剣》を生み出すことの出来る人造人間――Originator zero《根源たる虚無》製造計画。

 この計画においてOz72ーイリスは明確な失敗作だ。

 身体能力及び、戦闘能力については明確に二人を上回っているものの、肝心要の戦術殻との完全同期がクリアできなかったのだから。

 そして、かつてアルベリヒ工房長がイリスにその計画の詳細を語った際、奴はOriginator zero《根源たる虚無》製造計画の失敗作であるイリス(Oz72)と、成功作であるミリアム(Oz73)アルティナ(Oz74)を明確に区別し、イリスがその成功作であることを示す『オライオン』を名乗る事、すなわち姉妹であることを否定してしまった。 

 その言葉はイリスに心に深く刻まれ、先のミリアム・オライオンの言葉の否定に繋がったのだろう。

 そして、否定の理由はおそらくそれだけではない。

 

 かつてイリスが定めた存在意義(レーゾンデートル)

 俺の『道具』として仕え、計画の完成形である、ミリアム・オライオンとアルティナ・オライオンのどちらかが、その終着点である《根源たる虚無の剣》に至るという名誉を得られるよう(・・・・・・・・・)、自身の全力を以て陰ながら二人を支える。

 その存在意義に従って、『姉妹』ではなく、オライオン両名を支える事のできる『従者』という立ち位置に己を定めてしまったのだろう。

 

 

 「ふーん?そうなんだー?」

 

 

 イリスの発した姉の否定。

 その言葉にミリアム・オライオンは頭にハテナマークを浮かべながらもアッサリと流してしまった。

 おそらくはまだ目覚めたばかりで情緒が育っておらず、イリスの心の機微と言葉の真意を感じ取ることが出来なかったのだろうが。

 

 ……無理筋なのは分かっていたが、出来ればそこは流さないで、もう少し突っ込んで欲しかったなあ……。

 

 後、イリスが姉妹であることを否定したことに、後ろで腕を組みながらウンウン頷いている、後方腕組みクソ野郎面のアルベリヒ工房長が普通にイラッとする。

 

 

 

 そして現在。キャリーケースの中に収まるミリアム・オライオンをジッと見つめるイリスのその瞳には、相変わらず恨みや嫉妬といった負の感情など一切無く純粋な羨望と敬意、そして慈しみが込められていた。

 

 おそらくそこにあるのは、姉妹愛から来る愛情ではない。   

 他人のためを思って行う行為や気持ち、見返りを強く求めない、無私に近い『善意』だ。

 負の感情など一切無い、限りなく純化された透き通った『善意』。そしてその『善意』の行き着く先は、彼女の行動原理である《根源たる虚無の剣》完成へと向けられている。

 だからそれまでイリスは、オライオン両名の世話を焼き、甲斐甲斐しく健気に支え続けるだろう。 

 もし命の危険があるならば、その身を挺して全力助けるだろう。

 だが最後の局面、《巨イナル一》再錬成の儀式、《巨イナル黄昏》成就の核となる、不死の黒の聖獣を殺す為に必要な《根源たる虚無の剣》錬成が必要となったその瞬間、イリスは喜んで二人のどちらかを生贄に捧げる。

 敵意も無く、悪意も無く、あくまで純粋な『善意』で。

 その終着点である《根源たる虚無の剣》に至るという名誉を(・・・)得ら(・・)れるよう(・・・・)に。

 

 ……いや、マジでどうしたら良いんだこんなの。

 

 イリスの行動はあくまで『善意』だ。

 ただその『善意』主観は、あくまでOzのしてのものである為に、とんでもない合体事故が起きてしまっている上に、イリスが定めた存在意義(レーゾンデートル)の根幹を成すものの為に、ちょっとやそっとじゃ揺らぎもしなくなっているのだ。三日くらい前にやった『第107次イリスの存在意義(レーゾンデートル)方向修正作戦』も失敗に終わっている。

 

 一体誰だよイリスに存在意義とかややこしいモノ見つけろとか言ったやつは。俺だよクソが。

 

 そんなそして明らかに将来大爆発することが爆弾が目の前にあるにも関わらず、今の今まで解決できていない現実に頭を悩ませていると、オズボーン宰相はミリアム・オライオンからこちらを視線を移した。 

 

 

 「……それにしても、先の変装……と言っていいのか知らぬが。

 上手く化けるものだ。

 その腕前、巷を賑わせた《怪盗B》にも優るとも劣らないのではないかね」

 

 「は?……ああ、いえいえ、かの御仁に比べれば、私の変装など児戯に過ぎませんよ」

 

 

 オズボーン宰相が急に話を振ってきたことに驚きつつも、気分を切り替え、先ほどの変装……というか擬態についてを指しているのだろうその言葉に、俺は謙遜の言葉を返す。

 

 まあ謙遜ではなく事実なのだがな!

 

 先ほど俺とイリスがカール・ダフネ大尉とエレメア・シャーロット少尉に化けた擬態は、少し前に改良した戦術殻の新機能だ。

 

 戦術殻を全身に纏い光学的擬態を施すことによって、他人そっくりに擬態することが出来るのである。

簡単に言えば、誰にも化けることの出来る着ぐるみだ。

 そして例えるならば、ジョ○ョのイエローテンパラ○スと同じようなものである。いや、別にカブトムシやザリガニは食べないが。

 

 これだけ見ると優秀そうに思えるが、制限も存在している。

 その唯一にして最大の制限が、擬態出来る対象が使用者の体格や体型に左右されるという点である。

 これは当然の話だが、擬態する為に戦術殻を纏ったからといって、その使用者本人の体格が変わることはない。

 何故ならガワを着ているだけなのだから。

 なので自身の体格や体型より小さい対象、例えば子供や女性には擬態出来ないのである。

 この制限は割と重く、俺が戦術殻を使って擬態出来るのは、身長の高い男性だけという有様なのである。

 

 え?身長の高い女性なら化けられるんじゃないかって?

 

 もし、俺が女性に擬態しようものなら、180cm超えの男みたいな体格の女になってしまうがよろしいか。

 まあ、そういう女性も居ない訳では無いが……、明らかに目立っている時点で、周囲に溶け込むという変装という点からみれば普通に落第である。

 

 その観点から見れば、体格の小柄なイリスの方が老若男女問わず違和感無く擬態することが可能なのだろうが。

 体格としてはともかく、対人クソザコイリスな時点でそれ以前の問題である。

 今回だって喋らせればボロを出すのが分かりきっていたので、黙っておくように言っておいたしな。

 

 まあともかく、イリスならともかく俺であるのなら化けることのできる範囲は限られているので、マジックだが何だかを使って誰にでも自由に変装出来る《怪盗B(ブルブラン)》とは、比べものにならないモノなのだが。

 

 

 「はは、どうかな。他にもソレ(・・)で随分と精力的(・・・)()活動しているようだが」

 

 

 先ほどの会話はあくまでただの前置きだったらしい。

 

 

「私の記憶によれば、帝国軍第一機甲師団にカール・ダモン大尉及び、エレメア・シャーロット少尉なる人物は存在(・・)しな(・・)かった(・・・)はずだが、いつの間にか、派閥内で頭角を現すほどに違和感(・・・)を抱かれ(・・・・)ていない(・・・・)

 その他にも、《アルム男爵家》に、《レグルス重工業》、《MREグループ》にと……フフ、随分手広くやるものだ」

 

 

 和やかに話すオズボーン宰相とは対照的に、こちらの気を引く幾つものキーワードが散りばめられていた。

 

 ……さて、帝国情報局のボンクラ共経由からの情報か?

 その他の情報は?調べられなかっただけか?それとも知っていてワザと伏せたか?どこまでの範囲だ?

 オズボーン宰相の顔を伺い、探ろうとするも、顔色一つ変えない平然とした表情の裏を読み取るは出来なかった。

 おそらく、今のは警告や釘差しなどではなく、手を組む(・・・・)にあた(・・・)って(・・)、自分たちが知っていることを伝えたかったのだろうが。

 

 ……それ含め手を貸せ(・・・・)という事か。

 全く、騙しやすい工房長の千倍はやりにくい相手だな。

 

 

 「いえいえ、師匠の教え(・・・・・)が良かったもので。

 お望みとあらば、いつでもお貸しし(・・・・)ましょう(・・・・)

 

 「フフ、それは頼もしいな。

 その手腕、我々の為にも存分に振るってもらうとしよう」

 

 「ええ、アルベリヒ工房長からのご命令ですからね。

 これ以降、こちらのイリス共々《黒の工房》との連絡役含め、オズボーン宰相閣下の《鉄血の子供たち(アイアンブリード)の一員(・・・)として(・・・)、閣下の手足となって働くことをお約束しましょう」

 

 

 

 




裏話

 工房長「ふむ、オズボーン閣下との連絡役が欲しいな。ハンス主任、今までの仕事と並行し、鉄血の子供たちとしても動きつつ、閣下との連絡役も担い給え」
 
 ハンス「」



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