念能力者バトルロイヤル(更新停止中) 作:おヒマ?
「これから貴方達には殺し合いをしてもらいます」
なんて使い古された台詞だろう。
いつのまにか座らされいていた映画館のような場所で、壇上に立つ100人程の年齢性別人種格好まで様々な集団の1人がそう言い放つ。紳士そうな柔らかい声だがどこかの軍隊のコスプレをした老人、さながら老兵だ。
それよりここは何処だ。なんの会場だ?
俺は数年ぶりにジャンプに帰って来たHUNTER× HUNTERの最新話を読まねばいけなかったのに。帰ろうにも立つ以前に体の自由が効かないんだが……
「まあ文句もあるでしょう。しかし、心当たりがあるように皆様は既に死んでいます」
なんてこった俺は死んだのか!
気づかんかった。
お、お医者も健康そのものって言ってたのに、案外ぽっくり逝くもんだなぁ……
ショックを受けていると悲鳴すら出ないことに気づく。死霊の今後を潰す生かすも壇上の連中次第と言ったところか。そう思っていると今度は褐色紫髪の少女が一歩進んだ。
「まあそれも半分じゃがのう」
のじゃロリだと……? 実在したのか。
っていうか半分ってどういう意味ですかね。
「この場には我々が定めた運命通りに死んだ50命、そして日頃の行いや思考パターンから
殺されてんじゃねえか!
何してくれてんのコイツら!? ハンタの最新話だぞ!ベルセルクが完結前に終わったのもあって、もう二度と再開されないんじゃないか何年も戦々恐々としてた末だってのに、こっちの都合も考えてよ!
せめて読んでからにするとか、そういう心遣いはないんですか!?
「これより貴方達には漫画、HUNTER× HUNTERの世界に転生してもらいます」
マジで!? やったー!
現実に不満があったわけじゃないけど、ハンター世界には訓練すれば誰でも使えるという『念能力』がある。やっぱり異能がある世界って憧れちゃうよね。漫画の続きが読めないのは辛いけど、この瞬間俺の不満は消し飛んだ。
「もちろんタダでとは言いません。我々の娯楽に付き合って貰うからには破格の報酬を用意しています」
「さっき此奴が「殺し合いをしてもらう」と言ったがのう。まあ手段を問わず最後まで生き残ればそれで良い」
「最後まで生き残った優勝者には生き返る権利だけでなく、HUNTER× HUNTERの世界で手にいれたモノを好きなだけ現実へ持ち帰る事か、そのままHUNTER× HUNTERの世界に永住する権利、もしくは我々に可能な範囲でどんな願いも叶えられる権利を進呈させていただきます」
その上なんて大盤振る舞い。ヤバイ、楽しくなって来た。
どうして生者の50人に選ばれたのかわかった気がする。
充分な利益が出るなら都合とか過程とか気にせず邪魔者を蹴散らすタイプだからなぁ俺。自他共に認める倫理観ゆるキャラにして、医者に言わせりゃソシオパス。
端的に言ってクズ。自覚はしている。でもそこがチャームポイントなの。
だからソシオパスの治療もしてない。
ということは残りの49人もクズか……後腐れなくていいな!
「我々は我々でお主達の誰が勝つか、序列を賭けさせてもらう。 お主達を選んだ者を『担当』とするならば、勝者の担当は当然偉くなる。どんな願いでも期待していいじゃろうて、へっへっへ……」
「それでは担当との個人面談に入ります。細小なルール確認、質疑応答、その他文句お礼等はどうぞそちらへ。 あ、そこでゴネても無駄ですよ。時間の概念が無いので、一瞬も100年も同じ事。悪しからず。 では」
そう言うと壇上の全員が一斉に
突然の刺し貫くような光に目が痛い上に、草原のような青臭さと土の匂いがする。
どうやら屋外らしい。
次第に慣れてく視界にはどこまでも広がる青空に、燦々輝く太陽、果ての見えない花畑と、居心地の悪い爽やかな場所に飛ばされたのか。虫が出ない事を祈ろう。
いやマジで蝶か蜘蛛までで勘弁してください。百足と芋虫が出た瞬間悲鳴が出るから。
さて、俺の担当はどこかな?
「後ろよ」
「いやああああああああああッ!」
「驚きすぎじゃない?」
悪人というのは意表を突かれるのと背後に弱いんだ。まあ小悪党だからなんだが。
貴方が俺の担当か。そう聞いて首を縦に振るった彼女の姿は18世期の貴族を思わせるドレスに日傘を差して、大きくしなる金髪縦ロールを2本こさえた、さながら貴婦人と言った体だろう。
……ところで18世期のドレスって言って想像できるだろうか。
全体的にフリルと刺繍がたっぷりついたスカートが傘のようにブワっと広がり、胸元は四角くバックリ開いて……あ、これドレスじゃなくて宮廷服か。ともかく胸を見せて強調してるのだが……
平たい。まな板のようだ。
訂正しよう。貴婦人じゃなく少女だった。
それはそれで
「嫌な視線を感じるわ。何か文句でも?」
「そんなドレスを着てるんだから胸の大きな人が良かったな! 旧スクにしよう旧スク」
「あらそう? まあ、ここで文句言えるあたり、私の人選にミスはないようね」
お褒めに預かり光栄の極み。とりあえずジャンプ返して下さい。全てはそれからだ。
「それができるほど格が高くないのよ私。だから現実でゲス外道な貴方を選んだの。 貴方エンジン掛かる時だけは凄いから。優勝、期待してるわ」
「いや〜過分な期待に照れますねぇ。ま、それほどでもあるんですが。 ところでエンジンかける為にちょっと質問」
実際彼女が言うようにやる気に比例して強くなれる。
して、この異世界バトロワ。名付けて『念能力者バトルロイヤル』のやる気の素、それはもちろん現実へ持ち帰れるモノだが、これって人物もいけるのだろうか。
「いけるんじゃないの? ただし商品は『所有物』に限られてた筈だから、所有してる必要があると思うわ」
「……それって一旦奴隷に落として買うとか、操作系能力で隷属させるって事?」
「さあ? ま、中間審査までに聞いておいてあげるから心配しないで」
「ちょい待ち、中間審査って……一体何を……」
「別に貴方に不利益はないから心配しないでよくってよ。 完全にこっちの都合。死んだ50命の担当から巻き上げて、後は賭けの対象を鞍替えするくらいかしらね? あ、あと余りに消極的だと脱落するからなるべくぶっ殺しなさい。手を汚さずとも暗躍でいいから」
後半妙に早口だったのが引っかかるが、まあ異能バトルは楽しむ予定なので気にしなくてもいいか。仮に彼女の都合だとしても、彼女の格が高くなることは俺にも有利だろうから問題ない——いや?
「質問! 担当は外れたり鞍替えしたしするの? 俺頑張らないと捨てられちゃう感じ?」
「あら可愛い事聞くのね」
ここに来て初めて笑みを溢した彼女だが、それは親しみというより、どこか嗜虐的な、舌舐めずりする蛇を想像させた。
うーん。金髪ドリルツインテロリ貴族に責められる……あると思います!
あ、しかも相手は人間じゃない! ここに来て人外ロリと絡めるなら、優勝のお願いでお嫁さんになってもらうのも手だ。逆に俺が人間をやめてお婿さんになる方がいいか?
「まあ嬉しい。 私としても貴方の事は嫌いじゃないわでも…… 嫉妬深いから、よく考えて言ってね。 もし他の人に心を向けたら、私、こうなるから」
言いながら畳んだ日傘を一振りすると世界が裂けた。
切っ先の直線状、楽園の一角が音もなく崩壊するのに背筋が凍る。
見た目に囚われてたけどさすが人外。規格が違う。でもそういうのもありだと思います。俺の懐は狭い割に深いのだ。
「あと鞍替えの件だけど、担当は変えられないわ。賭ける先は変えられても。 格が高ければ違ったんだけど、ふふっ。一蓮托生よ私達」
「なるほどなるほど。 転生って言うけど、原作キャラの誰になれるか決められんの?」
「あら誰が原作キャラに転生するって言ったの?」
「……できないのか」
「決められるのは種族、性別、念の系統、生まれる場所か血統。これくらいね。 生まれる年は諸々を考慮して不平等かつ公平に。 あ、血統を選ばないなら容姿もランダムなんだけど……そこは安心しなさい。いいの選んでおいたから。どうせ女にはならないんでしょ?」
金髪少女はまた嗜虐的な笑みを浮かべた。
「生まれる年は諸々を考慮して
なるほど、鍛えてナンボな『人間』に生まれると開始時点で他プレイヤーも赤子、逆に生まれながら強い『キメラアント』とかは生まれた時点でライバルは力をつけているわけか。
しかし容姿はランダムなのを「選んだ」とはこれ如何に?
「HUNTER× HUNTERの世界にONE PIECEのキャラがいても変でしょ? もちろんリアル顔も。 だから転生者の見た目は同じ作者の別作品から引っ張ってこようって話になったの。 でもキャラ人気でもめちゃって、クジで引いた順に好きなキャラ取る事になった—— そこで私、何番だったと思う?」
「……1番?」
「さすが、大正解よ。 それで選んだのがほらこれ。貴方にそっくりだし、貴方も好きでしょうこのキャラ」
そう言っていつの間にか取り出した“幽白”の単行本の開いたページを指差して来る。
俺の容姿になる男。誰だろう幽白の人気男キャラ……蔵馬か飛影だろうか。
細マッチョイケメン美少年を期待して覗く指の先には……それはグラサンをかけた身長3mはありそうな筋骨隆々の大男。……の肩に乗る、意地の悪そうなもじゃもじゃロン毛。って——
「
「大人気キャラね」
「それは弟! これ
「同じゲス外道なところが、ほらそっくりじゃない」
「畜生言い返せん!」
「あと既存キャラを引っ張って来るのには転生者を見つける手がかりの意味もあるから、注意する事ね」
「ねえどうしてモブを選ばなかったの!? こいつって限りなく印象に残るゲスなんだけど!?」
「制約と誓約よ」
「俺ってこんなハンデ貰わなきゃいけないくらい強キャラなんですか!?」
「あら、実力だけなら有力候補の一角よ? そのゲスさを愛せればだけど。 それにあなたHUNTER× HUNTERは読み込んでるし、全系統の念能力はとっくに考えてノートに書いてた——」
「あー!あー!聞こえないー! 人の生活覗きやがって!人権、プライバシーの侵害だ!」
「人間のいうプライバシーなんて私達に関係あるの? だからこそ貴方の好みの姿になったんだけど…… ふふふっ あんな事言ってくれるなんて—— 「俺の懐は狭い割に深いのだ!」、キリッ!」
「いやあああああああああああああああああああ——ッ!」
「そんなに恥ずかしがる事ないじゃない。 厨二病ノートも今や攻略本なのよ?」
「その話もうやめろッ!」
な、何がしたいのこの人……
開戦を前に既に死体蹴り。死んでるからマジの死体蹴りに、あの笑顔の理由を悟る。
エンジンかけりゃ強いって、始まる前にエンジン壊されそうんだけど……もう無理、戦えないわこれ……
「あ、あと貴方の為にネフェル=ピトーには
「
「ヒ・ミ・ツ! 蟻は人間じゃないからペット、所有物にできるんじゃないかしら? まあ分かってると思うけど、貴方の喜びそうなモノはなんでも知ってるから……心して勝ちにいきなさい」
「はぁい! 頑張らせていただきま〜す!」
「ふふふっ いい切り替えね。 そこも魅力なんだけど……流石に妬けちゃいそう」
まあ俺と言う男のなんと単純なことか。
しかし創作にリアルを持ち込むナンセンスは承知の上で、言いたい!
ピトーの性別には諸説あるが、自然に考えてアリの王直属護衛軍だろ。
蟻は蜂が進化したもの。蜂の毒針は武器であると同時に、女王種以外が産卵できないよう、産卵器官が変化したもの。
つまり徹底的に反意を削ぐ為、性別以前に生殖器そのものがないと考えていた。
が!
この際オスでもメスでも両性でもいい!
雄猫系ボクっ子猫耳少女。端的に言って、最強です!
「それで転生先はどうするのかしら。 種族、念の系統、生まれる場所か血統は選べるけど、まあ選んだだけ不利かもしれないけど」
「それはどういう? いや、原作キャラの血統に知らんのがいたらそりゃ怪しいけど、念の系統も弄ると何かあるんですかね」
「系統は生まれた瞬間に決まるもの。それを変えるんだから、オーラが独特のものになるわ。ぶっちゃけ一目でバレる上に原作勢には怪しまれるわね」
「罠じゃねーか!?」
「それでも予定してた能力が作れるのは強みよ。貴方のノートの——」
「シャラップ! 種族は人間、性別は男、あとは全部ランダムでいい!」
細かい事は運任せ。さっさと決めて転生を急がせる。
これ以上ここで話してると思わぬ即死攻撃が飛んで来そうで怖い。自駒を不調にしてどうする気だ。
「あらわからない? クズの貴方を選ぶだけあって、私も人の死にそうな顔を見るのが大好きなのぉ!」
「ヒィィィ寄るな来るな抱きつくなッ!! 今すぐに! 早く転生させてくれぇッ!」
全くおぞましい。なんて女だ! コイツ絶対人の上に立たせちゃいけない人種だろ!
こんなのが人間を好きにできるとか……待てよ、勝たせりゃみんなこいつの被害に遭うのか。
それは面白そう。
「そう来なくっちゃ!」
非常に不服だが、今までと違いその時の笑顔は、大輪の花を思わせる魅力的なものだった。もっと言えばそこら辺の無垢な花を無理くり千切って集めたような邪悪な笑顔。実に有害。
なんだか使われてる気がするが、まあ面白そうなので使われてやろう。
何よりピトーを持ち出したい!
「決まりね。 思う存分暴れて来なさい—— あなたなら負けないわ。相手が誰でも」
そうして、ここへ飛ばされた時のように彼女が柏手を一つ打つと、今度は深い眠りに落ちるような、抗えない睡魔に襲われた。
リアル世界で自分だけ能力持てるとしたらやはりピトーのが1番ヤバイと思う。医学知識がないと使えないかもだけど。
しかしこいつは近隣住民全員ノヴ状態にしたいのか……
主人公を言い表すなら「高性能お馬鹿ソシオパス」です。