念能力者バトルロイヤル(更新停止中) 作:おヒマ?
人々の喧騒。この世に『念能力』なんて超常の力がある事を知らない多くの住民が1980年代を謳歌する、そんな町傍で爆炎が立ち上った。
ギンコの掌から次々飛び出す火球が自動車やガソリンスタンド的確に撃ち抜き、追ってくる“B太郎”こと転生者『ピピン=コマチネ』に業火と衝撃波でもって牽制する。
その圧倒的火力にどこか腰の弾けているようにも見えるが、要するに決定打はない。さらにギンコの炎は魂を燃やすもの。いずれ切れるストックに待つのは自滅。要するにジリ貧だ。
「そんな……これが、兄さんの言っていた「テンセーシャ」との、たたかい……なの」
燻れる町並みを屋根伝いに追いながら見物していた俺たちではあるが。
小脇に抱えたBの妹、自称原作キャラのマチが時折トンチンカンな事言うので妙に乗り気になれない。
お前もうちょっとサバサバしてたよね? Bか? Bが教育したせいか?
おのれB太郎。
マチをフワフワ系ファンシー娘にしやがって。
これはこれでイイけれど!凄くイイけれども!
俺の予定がぶっ壊れそうで怖いわ!
マチの『念糸』は模倣できても、切れた腕を縫合修復できる
腹立って来た。
「教祖様。 こちら洗礼の準備が整いました。生贄もここに」
「そうか。じゃ、やろう」
転生者と転生者はいずれ殺し合うもの。全ては遅かれ早かれ。
故に犠牲には何も思わない。
「あの……、こ、これから兄はどうなるんですか……?」
「死ぬよ。もちろん。殴って来たからね。殺さなきゃ」
「そんな!? いえ……じゃ、じゃあこの人達は……?」
少女が不安げに眺める先が変わる。縛られた上に猿轡をかまされた、そこらへんで捕まえて来た通行人達に。
洗礼用の洗面器。まあプラスチック製だがこれでいいだろう。“アビス”のロザリオは適当な棒を縛って正三角にして代用。洗面器に張ったミネラルウォーターを適当に祝福し、塩でも振るようにパパッと振りかけオリーブオイルを髪に塗ったくる。
そして二礼二拍追い祝福。
「エロイムエサイムナムナムナム……以下略」
「あーそれなつかしい! わたしもむかし、教そさまにやってもらった奴だ!」
シズクの言う通り、これは『アビスの集い』の洗礼儀式。が、もっともシズク達は最後の手順を飛ばしたけどね。
完了した瞬間に『信者』の判定になる。なんの判定かは言うまでもない。
「……で、最後に生卵を使うと……はい君たちはこれで
全く読めない状況の中で、俺というガキに好き勝手されるがままの連中から財布を抜き取り身分証を拝借。これで準備完了。眼下で戦うギンコを呼んだ。
「よしよし名前はわかった—— おーいギンコ!! 残弾の用意ができたぞ!!」
「教祖はんええタイミングや! 名前を教えとぉくれやす!!」
読み上げた順に口から腹の中の何かが這い出るように
接触吸魂ならこんな面倒もないんだがな。
「しかしこれで残弾は確保された。勝利は揺るがない——
仮に、ここから負け筋があるとすれば生贄の中に偽名がいた場合のみ。
いや、それすら捻じ曲げる『不死』だからこそあの子だ。やはり、絶対負けるわけがない。
——はずだったんだけど。
やばいやばい。ギンコが無力化されちゃった……
「ギンコさんばくはつしちゃった! だいじょーぶかなー?」
「大丈夫だ。奴は多分寿命以外絶対に死なない。知らんが寿命もないんじゃないか?」
「でもあの炎の中だよ?」
「いや、亜音速で山向こうまで飛んでくる銀色見たから。多分あっちだろ」
「そっかー。 じゃだいじょうぶだね」
ギンコはな。同時に爆発から逃げ延び迫るBの存在も確認。
今や俺たちが危ない。
いかんな。魂の補給で調子に乗せすぎた。よりによってガソリンより爆発性のある化学工場に引火させやがって。あんな見事なキノコ雲“ナウシカ”か“エヴァ”か“レバノン”ぐらいでしか見た事ないぞ。
それに流れて来た臭気も酷い。これ有毒だな。
「総員風上に逃げるぞ。そこの少女はお前が持て」
「はッ! 生贄はどうされますか?」
「ギンコがいないんだ、要らん。 ——『
急遽移動を開始——しようと思い、振り向く。
相変わらず生まれたの小鹿のように震え上がる連中だ。まあ魂を抜かれる様子を見せられればこうなるか。
うん。顔とか色々見られたんだよな、コイツらに。
「昔の偉い人は「占領したら仇の如く徹底的に殺すか、淑女を扱うように徹底的に甘やかせ」と言ったそうだ。 後顧の憂いは絶たなきゃならん。 悪い、やっぱ死ね」
そろそろ俺の二つ名が『大量死』とか『皆殺し』とか言われそう。
違うんです。人命より目先の興味を優先してるだけなんです。
まあいい、どうせついでだ。一度くらい凍らせた人間の脆性を見ておかないと。ほら、氷っていざ砕くとなると硬いし。
なにせ今からこれ一本で戦わなきゃ行けないんだ。
と思ってたら意外と脆い。てっきりパイクリート*1的な硬さを手に入れる予想を裏切りオーラの乗った裏拳一つで粉々とか盾にもならん。
……シズクとギンコは蘇生したけど、ま、まさかここから復活はしないよな?
いや危ういぞ。破片からまだ『オーラ』が出てるし、これ生きてんな。しかも結構元気っぽい。
で、溶かすと死ぬと。
難儀な能力だ。俺がオーラを注ぎ込んでる間は粉々っても死ねないのか。実験しといてよかった。
「ところでさっきの戦闘風景を見て、ピピン=コマチネの能力に当たりをつけたいんだが」
「は! 系統はまず『具現化系』で間違い無いかと! 手甲や甲冑をどことなく取り出し、ギンコ上人の炎から身を守っていました!」
「……やっぱアレ具現だと思う?」
屋根伝いに半壊した街を駆け抜けながらの作戦会議。
遠目から当たりをつけた『具現化系』。シズクも属すこの系統は色々と
まず第一に、瞬発力がない。
多くは『武器』を具現化するがそのままでは実際に存在する武器の方が完成度が高いので便利か厄介や『特殊能力』が必ず付随されてると見ていい。
1秒に100ポイントまでオーラが出るとしよう。
しかし最初の一瞬。この100ポイントの何割かを『具現化系する』ために使うので必然的身体強化などが疎かになる。出してしまえば問題はないのだけれど。
第二に、具現化物は手放せない。
『放出系』が遠い。というか相性的に反対側なので紐や鎖、槍などの長い物を作って誤魔化せるが、相手を攻撃できるほどの強度を保つなら大原則。回避手段は『奇跡』のように相互協力し補い合う事。
そして最後。オールラウンダーにはなり難い。
『強化系』も遠い。
近接で『強化系』に勝つにはリスク込みで能力を尖らせる事しかできない。
もっとも、完全に戦闘用の能力を作る奴はこの世界じゃ
そして奴の能力だが……
一言で言えば『特撮系変身ヒーロー』
展開時間はそう長くない。ほぼ一瞬だけ真っ赤な鎧を具現化し、その能力か何かで人知を超越した加速力を得ている。瞬発力がないとはなんだったのか。『当たれば強い』を地で行くギンコとは相性が悪かった。
あと右腕。あそこだけデザインが禍々しく何かギミックがありそう。
「“ライダー”系は詳しく知らないんだよな〜。 腕のヤバい奴といえばパンチと相場は決まっているが……いや”
「やいやいやいやい! 見つけたぞ! 何が「蔵馬様」だ、嘘つきやがって! 本当の転生者は“おもしろメガネ”お前だな!?」
「……もうこっちに来やがった」
髪色こそマチにそっくりな少年ピピン。オーラの色は若草で、髪と合わせて和菓子みたいな奴だ。
遠目に見ていたはずが、もう眼前に迫っている。
しかし『素早さ』は盲点。
オートで発動する機雷型能力でもなければまず当てられない。速さは即ち威力に直結するし、反作用も『鎧』——というより変身スーツで防ぐ事で一方的に相手を破壊する。
だがな。
穴のない念能力は存在しない!
こちとらそんな
「
「しかし、奴はギンコ上人をやるほどの者!……くっ、我々ではやはり力不足ですか……」
「おっとマチは置いてけ、それから——」
「させるかよッ!」
特撮ヒーロー好きっぽいのに変身して会話パートに割り込むピピン。だからおまえはB太郎なのだ。
2度目は食らわぬ。秘技、『させるかよ、返し』
「
「うわぁああぁああああぁぁああ——!?」
どこまで滑っていくマヌケなヒーロー……見たくなかったなぁ。
高速移動対策その1『氷ステージ・滑る床』
飛べない奴はひとたまりも無い。
その間に逃げる3人を背に、お姫様抱っこで抱えたマチの首から下を凍結させる。
「くっそ……いてて……道が凍りやがった……炎の次は氷かよッ!」
「その通り! 俺は万物を凍らせる!故にはーいマチも凍りました!」
「なんだとッ!? こ、殺したってのか!?」
そいつはちょっと早計だ。何のために頭残したと思ってる。
恐怖で引きつりながらも表情は刻々と変化してるのに気付け。
「お、お兄さん……! た、すけ……!」
「これこの通り死んじゃあいないぜ? ゆっくり溶かせば元気いっぱい元どおりだ。 がなぁ? 割れちまったら「そこまで」なんだぜ?」
彼女の履いているフリフリのスカートをつまむと、その場所は液体窒素に入れられた薔薇みたいに粉々になった。
対策その2、『速さじゃ解決できない人質を取る』
いやぁ〜、せっかく殺し合うんだ。人質交渉って一回やってみたかったんだよね!
「見たまえこの脆さと儚さ! もちろんおまえの速さで掠め取っても、俺を殴ってコイツが落ちてもガッシャーン!! しかも頭だけ凍っていない。この意味わかるか? 心臓も肺も停止していながら、脳は栄養を使うんだ。持って3分……いや2分かぁ? 君もそろそろ苦しくなってきたんじゃなーい?」
「に……いさん……苦し……た、けて……」
「ほーれほれほぉれ! 可愛い妹が死んじゃうよー? あはははは——ッ!」
う〜ん。思っていた以上に楽しいこのムーブ。
いいねぇ、一方的に
「馬鹿かテメェ!? そいつはマチだ!マチなんだぞ!? 」
「さ、寒い……寒いよ……にぃ……さ……」
「……げ、原作キャラを殺す気か……!?」
弱りゆく妹を前に小声で言うことがそれか。
もちろんマチは今後重要になるので殺す気はない。
凍って感覚が消えてもどういうわけか窒息も脳死もしないのはギンコとシズクのお墨付き。苦しいのも錯覚だ。
この凍結だけで人を殺す事はできない。
まあそんな事情知らないよね?
「とりま、両手の小指をバキィっと気前よく折って貰おうか。 口答えすれば
死ねと言って聞く奴いない。だから牙を抜かせて貰おう。ほら折るんだよ、小指を! 小指が折れたら手の力は半減する。
「わかった。ぐっ……ぅぁ……! こ、これでいいだろ。 ……
「なんだ急に? が、語るに落ちたな。陰陽を気にするのは隠の者だけ。 あと質問についてはまず『友達』の定義から教えて貰おうじゃないか!」
「ああもういい。今のでわかった。いないんだな?」
失礼な!「類は友を呼ぶ」って知らないのか? 似たようなのならいっぱいいたわ!
「人のこと言えた立場かよ。 大体転生先に美少女の血統選んでおいてあげくこんな「可愛く」しちゃって。趣味丸見えなんだよなー。 恥ずかしくないの? しかも能力が『特撮ヒーロー』丸出し……お前何歳だった?」
「大人が特撮好きじゃいけないってのか!?」
いや特撮方面そんな詳しくないから、どの世代か知りたかっただけなんですが……
怪獣もレッドキングとカネゴンピグモンくらいしかわかんねーんだよ。ゴジラのライバルがアンギラスだってのは知ってる。そんな程度。ライダーは、うん。
「貴様悪質な◯リコレの手先か? 美少女を愛でる事に何の罪が悪い!」
「悪かないが支離滅裂だぞ」
「うるせ、俺はこの戦いに勝って2次元界隈永遠の表現の自由と美少女を守るんだ! あとこれはヒーローじゃない!ロボット! “紅蓮弍式”だ!」
うっわ、よりによって右手『
掴まれたら最後、数秒以内に全身の水分が沸騰しタンパク質は熱変性。頭蓋骨とか眼球とか腹とか、袋状になってる部分が破裂する。
しかし地上における高速移動の秘密はソレか。脚にめちゃくちゃ高性能なタイヤついてるもんな。
ヤバいなあ……
「さあ指は折ったぞ! 次は何をすれば良い! 要求が無ければマチを解放しろ!」
「そう急かさないでよ。俺だって色々考えてんだから」
ギンコはあのザマ、蘇生はできない。しかし相手はどんなハンデ背負ってんのか高速移動と近接一撃持ちとか、『強化系』に近い俺のが不利ってどゆことだ。
ここで使いたくなかったが、俺は自分の脳に冷気を当てて冷凍した。
凍技、
低温凍結絶対零度は「停止」の世界。まあそんな低くはならんのだが、凍ってる間の意識からもまるで外が「止まった」ように見えるらしい。
それって逆に思考が「高速化」してないか? 「そんな事言われてもこれ教祖はんの能力でしょ?」 まあそうなんだが……
——という事があって知った
まあ便利で都合のいいこと! なんでもありか!?と文句言われそうだが、よく考えて欲しい。
この状態、全身凍らされた奴には拷問でしかない上、凍った脳は非常に脆い。縦横斜め、どの方向の強い衝撃も1発アウト。
今回は相手が一撃必殺持ってるんで解禁したが、やっぱり使いたくない能力。
せめて『操作系』が人並みならこんな事しなくていいってのに……
とりあえず
「きゃあああああッ!」
「はッ!? はぁテメッ!? まッ——馬鹿ッ——ざけんな!! マチ——」
古今東西『落としちゃいけないモノ』は相手に投げつけると相場が決まっている。
当然受け止めようと隙だらけになった相手の顎、首、鳩尾、股間の正中線狙いで蓮撃を入れ、吹っ飛ばした。
マチは当然受け止めたが、あ〜あ衝撃で粉々だ。
せっかくのスカートがバラバラ——何!? ドロワーズ履かせてんのか。やるなアイツ。
薄い氷はすぐ割れるが、あくまで『脆い』と評したのはオーラを込めた場合。生身からすればそれなりに硬い。
では持ち易くなったので今よりお前の妹は打撃武器だ。ハンマーだ!足持ってブンブン振り回すから間違っても避けるなよ!妹が砕けるぞ!
「そらそらどしたどしたぁ!? 威勢がいいのは最初だけかアニオタ兄さんよォー。今はコレがリアルだ! ヒロイン守って見せろやぁあああ!」
「このッ!? 無茶苦茶しやがって! 凍った人間を更にオーラで強化して、武器にするなんてイカれてる……ッ!」
「が、効果てきめーん! 頭はまだ凍ってないんだ! そーれアスファルトで頭砕くぞ〜」
「やめろぉッ!」
ここに来てワンポイントアドバイス。今更だが『念』の技術に『周』というのがある。
物体にオーラを纏わせて強化する技術だゾ! マチはそれで強化されている。
故にドップラーのかかった悲鳴が漏れ出るマチだが、あの男が身を呈する限り壊れない。道路、壁、自動車、あらゆるものとぶつかる前に間に挟まってくれる。
それにいい
一目惚れの件もあるし“攻略用”だけじゃなく手に入れたくなるね。
そんなこんな人命尊重も結構だが、
ここに来てよやく、その紅蓮弐式の凝ったディティールをまじまじと見れた。けど、
「……なんのつもりだ? それが当たれば妹が死ぬぞ?」
「ぉ……兄さん……?」
当惑する誘拐犯と人質を前に、紅蓮の悪魔は憎々しげに声を漏らす。
それはとっても愉快で、野蛮で、おおよそヒーローは取らないだろう選択。
「悪いなマチ。この能力——『
「……——ッ! ヤダッ、やめて——ッ!」
「……え゛!?」
即座に
構えられた銀の腕から荒れ狂う電磁嵐。壁など意味をなさない万物を加熱する純然たるエネルギーの暴力が空間を軋ませながら溢れ出した。
そして畳まれていたタイヤが接地する。突撃準備も万端て感じっすか……
「待て待てそりゃヤバイって! た、たしかに冷食はチンすれば解凍するけど!? レンジにも『解凍』ってついてるけどもッ!? そんな強いの、マチが死ぬぞ!? 妹だろう!? 血を分けた兄妹なんだろ!? お前その
「問答無用! 追加能力『
「どこぞの主人公みたいなリスキー能力やめろ!」
会話の途中で奴の纏う甲冑に翼が生え、エネルギーの被膜が満たし、右手の爪は金色に輝き手首には輻射波動増幅機構が付き、遂には宙に浮き始める。
その様はアニメ終盤におけるインフレの最終段階、作中の先端技術を全投入し操縦不可の置き物になりかけたオーパーツ機体、『紅蓮聖天八極式』そのもの。
え? てことは肘から先が分離して自由飛行しながら追ってくるんですか?
そんなんどないせいっちゅうんや。
あ、しかも『輻射波動』が遠距離対応してる筈だから……
「いや、まだだ。まだ終わらんよ! 俺こそ勝ち残っておちんちんのついたピトーちゃん君を現実に持って帰るんだ! それでそれで、時の権力者を裏で操って面白おかしい激動の時代を楽しんでやる! 貴様の言う2次元の保護なんぞ生ぬるい! 思想の強制など一瞬のくるしみでしかない! 生かさず殺さず…!ワシとともに、えいえんに! くるしみのレキシの中をあるき続けさせてやるのだ…!」
「えぇ〜……って、後半“ドクターバイル”じゃねえか」
お、“ロクゼロ”
悪役のセリフって人生で一回は言ってみたいよね。モナリザ勃起話とか。
しかしいいのかねピピン君? 呑気してる場合じゃないだろう。
俺はマチを後ろから抱くように持ち直し、俗に盾にしたとも言うが、準備万端だぜ。
「ところでピピン! 君に問おう! おちんちんは好きですか!?」
「……………は?」
「いやさっき君は「美少女を守る」と言ったが、「男の娘」の扱いはどうなるんだ!? 人を悪いポリコ◯扱いしといて「男の娘」と「イケメンキャラ」は守らぬと申すか!? 恥を知れ恥を!」
「……えぇ〜……男の娘は、ちょっとよくわからないって言うか、好きだったヒロインが男だと裏切られた感がね? それは趣味では——」
「趣味以外は死ねと!? 意にそぐわぬ物は市場から消えるべきとか、それこそポ◯◯◯じゃないか! おねがーい!ハンタのカルトちゃんとかアルカちゃんとかピトーとかも
「お前……変態か?」
「やだなあ。違う違う、別に男の娘好きとかじゃないんだよ。ただ弾圧に巻き込まれて“3号君”とかに消えて欲しくないだけ。ベン図にすると黒死病みたいに飛び火していろんなジャンルにちょこちょこハマるキャラいると言うか……ところで——27、28、29、よし!残り時間30秒切ったな」
「くっそこんな無駄話!しょうもないネタに反応してるんじゃなかった—— いくぜッ!」
声に力が入ったかと思えば、次の瞬間には視界を覆うエネルギーの嵐。
やはり速い。が、
高速移動系キャラの弱点は健在か。
対策その3『置いてけぼりの思考』
奴自身速さについていけず、故に駆け出した瞬間から数瞬先を予測するしかない。そして飛び始めた事で空間認知はより複雑化する。やっぱあの機体凡人じゃ乗りこなせないじゃないか。——そう、ならばこそ!再凍技、
太刀筋が見えた……見えた……見えた……
バーニアの代わりにオーラの鞭、『触腕』を形成し、それを手足としてより早く安定した軌道で『脳』を揺らさないよう滑らかに、ビームになった輻射波動も射線に入らないよう慎重かつ大胆に回避し続ける。
30秒と言えど今の俺には10倍の300、つまり5分。逆に長くて幾度も集中を切らしそうになったが遂に、
「ぐぁぁぁああッ! オーラが、力が消える!! 馬鹿なッ! 人一人抱えて余裕だとでも言うのか!? この俺の全力が——ッ」
奴の変身が解けバタリ倒れこむ。これで
オールハイルブリターニアー!!(歓喜の叫び)
「兄……さん? ヤダ、ヤダ死なないで兄さん!」
「ううん。死んじゃいよ君の兄貴は、疲れきっただけだ。 まあこれから殺すケドね」
「やめて! 兄さんを殺さないで! 兄さんのした事は謝るから! わたし、なんでもするから! だからおねがい許して!」
いやぁ健気な反応。これ本当にマチかよ。知能は高かろうがまだ子どもだからか。染めようと思えばこうも染まるんだな。グッジョブピピン。
しかし悔しいだろうなあ!ここまで育てた仲間キャラを、オーラを使い果たし動けない中、口説かれた挙句持ってかれるんだ。トンビに油揚げどころじゃない。
表情期待してるよー?
「う〜ん、本当に君はなんでもしてくれるの?」
「するッ! あなたの言うこと全部!文句言わないから、泣かないから!だから兄さんは!」
「……ゃ……めろ。 やめ……るんだマチ……これは、俺とソイツの問題……手ぇ、だ、すな……」
「敗者はちょっと黙ってろ」
煩いから凍らせてやろう。と、思ったが、そういえばこの能力の本質は『オーラの譲渡』なのでそれはマズいと止まる。
うん。ちゃんと思い出せて俺偉い!
「それじゃあマチちゃん。俺の物になってよ。なるべく不自由はさせない。ひもじい思いも、貧乏ともおさらばして、俺の側にいてくれ。そして将来、一回だけお願いを叶えて欲しい。それが終われば自由だ」
「一緒にいて、一回お願いを聞く……そうすれば兄さんは、許してもらえるの?」
「マチ……やめろ……!」
「ああもちろん。俺も、俺の部下にも手は出させない。誰かに依頼して間接的に殺すこともだ。 けどもし、兄さんが襲ってきたらー?」
「……その時は、殺す、の?」
「いや君が追い払いたまえ。逃げたら殺す」
そんなひどい事はしない。
せいぜい兄思いの妹と、妹思いの兄がすれ違うのを高みの見物するだけだ。
俺という人間は好きな子の笑顔はもちろん見たいが、それと同じくらい泣き顔も見たいのだ。無感情を0とすれば幸も不幸も同価値なのだ。
ま、そういう趣味だからしょうがない。
「あ、ちなみにお願いの時は前もって言うけど、それ以外にも「キスさせて」とか「お茶入れて」とかどうでもいい事も頼む。でもそっちは無視してもいいよ」
「それは、きかなくていいの? だったら、なんで……?」
「拒否られたら無理やりするから、いいんだよ。こんな風に」と試しに唇を奪う。彼女は何が起きたのか分からず呆然といった様子なのでじっくりねっとりと口内を堪能できた。
乳歯ちっちゃ!
今ここに来て乳歯に興奮する新たな自分を見た。キモいなー。
これを口頭で拒否られたら不本意とわかる。嫌な顔されたら直良し!満面の笑みでも同じこと!力尽くってやっぱサイコー。
いやぁこんな事して、『担当』のいうところ「お前戸愚呂兄にそっくり」が言い返せんな!がはは!
さてさて目の前でそんな光景見せられた兄はどんな——
「テメエ俺のキャラの癖に誰と何してんだ——消えろ」
ガラス窓が割れる音がした。
なぜか立ってるピピン。代わりに落ちて行くマチの頭。道に散らばる結晶の数々。
一体なんの?
下げた視線が、彼女と交わる。彼女もまた瞬きを返し、目を走らせ、困惑の渦中にいるらしい。よかった。あんなになってもまだ生きてる。
だがわからない。なんだこれは。
理解を拒否する。
俺の手に残ったのは砕けず残ったマチの下半身だけだった。