念能力者バトルロイヤル(更新停止中)   作:おヒマ?

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群青と絶対00度 純情と変態デート(教祖追放編)

 ネテロと出会い不正試合でギリ負けしてから一晩たった朝。本来陽光目覚ましがフィニッシュ決めるはずの時間よりも、体感だいぶ前の事、前世で怒り狂う人々から逃げるため樹海でビバークした時を思い出す寒風に顔面が舐められた。あれは凄かった。寝て起きたら目の前に人が吊られてるんだもん。俺は自然物じゃねえっての。

 

 

 にしても寒い。窓でも割れたのか……?

 

 なんて考えていた俺はやはり抜けていた。『流星街』は基本的に暑い。それこそ海に面しているので湿度は尋常じゃなく、沖縄かハワイを連想させる常夏ロウリュ状態。は、言い過ぎかもしれないが、オーラで冷やされたタンカーなんかめちゃくちゃ結露を起こしている。

 『フィンクス』がエジプトっぽい衣装着てるから日陰は涼しいと勝手に思ってた時期が俺にもありました!

 

 

 じゃあどこにいるのさ。

 

 

「俺が聞きたい」

 

 

 寝そべって、顔だけ出した、蓑虫状態。

 そこはゴミも船も屋根も壁も天井すらない山。幼児からすれば巨大な広葉樹が生い茂る森の、せいぜい嵐以外の雨風から守ってくれそうな巨木の根本に、これまた身に覚えのない寝袋には行って寝かされていた。マジでどこよ。

 そして起床から数分経った頃、遂に犯人が姿を表す。

 

 筆先のような丁髷に髭。そして()()()()確信犯の笑顔。

 

「ネテロぉおおおおおおおおお!!」

「おう起きたか? 魚とって来たぞ。火はつけられるかの?」

「見たけりゃ山火事起こしてやろーか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深い緑の匂いに香ばしさと煙が混じる。

 

 

「——で、要約すると、

「難癖つけて逃げるんじゃないか? 先延ばしにして何をする気だ?—— どう思ってもいい。監視をつけても。アンタが監視でも」

の「アンタが監視でも」の辺りを曲解して、俺に都合あわせるんじゃなく、自分の都合に俺を引き込んだ……と?」

 

「人聞きの悪いこと言うな。 名目は「事情聴取」と「念指導」。 あのあとお主の爆発を問題にされないよう大変じゃったんだぞ? ——あ、あ、その魚キモが美味しいの。残さずに食いなさい」

 

「そりゃどうも——ん、海苔? 川魚なのに海藻食ってるのか?磯臭い?……で、「念指導」って何?」

 

「知っておろうが、この世界には生まれついて『念』が使えるものもおる。 だが使いこなせるかは別。 たまにいるんじゃよ、持て余した力で事件を起こすの。てことでお主は「マフィアの人狩りに遭って錯乱。能力が暴走した」って事になったから、覚えておくんじゃよ」

 

「……魚は旨いが、食えないねぇ」

 

 

 流石ハンター協会会長という要職をこなしつつ、自分の趣味ができる人だ。なおその犠牲になってる職員のことは考えないものとする。魚はウマウマ。

 

 しかし()()にしても唐突だし、衣食住といった多種多様な地域貢献で『流星街』の硬い結束に組み込まれたカーバンクル関係、俺の所在地なんてよくわかったものだ。それにタンカー内には不審者を凍結保存するトラップが幾重にもある——ま(こっち)は本職に敵わないだろうけど。

 

 

「昨日電話書いたメモを渡したの。あのメモには実は発信器の役割があってな」

「ふぉ!?」

「ま、オーラにはそういう使い方もあるってことじゃ。ほっほ! お主、センスはなかなかでも結構抜けとるな? それじゃあ力があってもワシには勝てん」

 

 

 全く、放出系が近いやつは便利でいい。と、今更だが、変に変わってなければアイザック=ネテロは『強化系」の能力者である。

 

 え? 観音を『具現化』してたのに? それってエネルギーロスじゃない?

 

 突っ込みどころとしてはここらだろう。しかし、彼をそんじゃそこらの能力者と一緒にしないほうがいい。完全に次元が違う。

 

 

 仮にレベル100の具現化系能力者がいる。隣り合う変化形はレベル80くらいが限界だ。

 が、ネテロはつまりレベル1万の『強化系』。変化、放出はレベル8000くらいだし、具現化も6000と、どう考えても上の本職より強い。

 

 でもやっぱり殴ったほうが強いよね?

 

 その通り。強化して殴るのが1番効率的だ。が、『百式観音』ほどの範囲制圧力はないし、リーチが30mと馬鹿みたいに広いく何より早い。原作ではむしろこれだけ早く空間制圧できても()()違えるだけで死ぬ危険があったと言えば、単純パンチで終わらない能力の世界が見えて来る。

 目指すとなると狂気に片足突っ込まなきゃなのだがね?

 

 

「でも一応、せめてギンコに出かける旨を伝えておいて欲しかった」

「ん? それなら手紙置いて来たぞ。 「旅に出ます。心配しないでください」って」

「…………こりゃ、帰ったら一悶着あるな」

 

 

 語っていなかったが、ギンコは置いていかれる事が怖い。1人が怖い。それが彼女の生きる意味に関わってくるのだ。

 

 人はよく創作で「永遠の命は死より辛い」というのがあるが、実際は違う。愛する人と、そのまた愛する人、そのまたそのまた——何気ない日常が壊れず変わらず永遠に続けばと誰もが思う。

 無意味で無意義な「永遠の暇」が恐怖の正体だ。

 

 俺は毎日が日曜日みたいな暮らしで不満はないが、多くの社会性動物は役割を欲しがる。食料の確保。子守。見張り。毛繕い。誰かに自分を「定義」して、受け入れてもらいたい。

 

 ……ヤバイ、宗教じみて来た。

 

 ともかく、彼女の「死を他人に押し付ける体質」は孤独を呼び。終いには「死を踏みつけ冒涜し乗りこなす」俺まで流れ着いた。逆に役割さえ与えてしまえば煩わしい倫理感関係なく働いてくれるが、唯一必要とした必須栄養を絶った今、どうなってる事だろう。

 どうでもいいか。

 

 

「まあちと急だったのは詫びよう。 いや? そもそもお主があんな爆発を起こすから面倒になったんじゃ。 命が惜しくば3ヶ月は帰れないと思え」

「げ、3ヶ月も!?」

「むしろこれでも短い方じゃよ。 なにせお主は癇癪一つで爆発を起こす超危険人物—— 穏健派にも殺処分を唱える者がいるくらいのな」

 

 

 あれは環境要因が整ってたからで——、

 ……関係ないか。

 

 あ~あ。マチの顔が見たい。マチは絶対ヤだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてクロロにも語った「なんちゃってバトロワ概要」で聴取を済ませ、ついにジジイとの奇妙な共同生活が始まった。と、いうより『念』の修業か。流石にほぼ我流だけあって、『心源流』というこの世界最大の武術流派の開祖であるネテロ曰く、俺の『念』は莫大なオーラ量と稚拙な運用で歪で荒削り、かつ無駄が多いらしい。当然だな!

 

 

「でもネテロさぁん……俺は瞑想とか精神統一諸々、毎日コツコツやるの嫌いなんスよ。 『変化系』は温度管理や触腕伸ばしたりして何気なく鍛えられても、それ以外面倒で。 なんか手取り早くピコっと強くなる方法ないっスかね? あはは——」

「ほっほっほ! あるわきゃねーだろナメんなガキ」

 

 

 まあそんなのあったら自分で使ってますよね!

 

 そしてネテロ監修による武者修行的特訓は俺を大きく成長させた。

 感情と念の結びつきはもう耳にタコができるだろう。彼の修行は一言で言えば——『苦痛』——

 

 『苦痛』、ストレスは寿命を削るのと引き換えに生き物に『チャンス』を与える。大抵の細胞は癌化してしまうが、順応した細胞が免疫を獲得するように、乗りこなせるのみモノとできる『チャンス』を。

 

 

「ど、どこいきおったあの童ぁ! 隠れることだけは異様に上手くなりおって—— サイキョーのワシ直々に特訓つけることなんぞそうそうないっちゅうのに……!」

 

 

 目の前で、青筋立てる、くそジジイ。

 「俺は木だ」と内心唱え続ける。

 

 念修業は三日で終わった。強化されたことと言えば『原初の色彩』で自然に染まり身を任せ一体化しつつ『隠』という気配をとことん希薄化するオーラ応用術の習得くらい。今日も今日とて怒り狂うジジイから身を潜め俺は『木』になっていた。

 

 毎日毎日日の昇らない時間に叩き起こされ、乾布摩擦→滝行→瞑想→食事→瞑想→洗濯or狩猟→組み手→食事→イメトレと反省会→組み手改善指導からの気絶するように就寝とか身がもたない。これをみっちり3ヶ月やる気だったとしたらこの逃走劇も英断だろう。

 楽しくないならナンセンス。

 そんなの現代っ子の()()()の肥やしが耐えられるわけないだろ!いい加減にしろ!

 

 他転生者に「ネテロの修業だぞ!?馬鹿かもったいない!」と(ののし)られそうだが、そもそも頼んでない!! そして自由あっての物種。自由の剥奪は死より重いのだ。

 

 そして祝福するような晴れの下で始まる逃避行。なんとしてもマチのいる流星街へもどらねば! 奮起した俺は臭い消しのため川へ潜り、下流へと下流へと流されたのだった——

 

 

 

 

 

()()()()*1とは恐れ入った」

 

 

 移動する事3日。ようやくたどり着いた人里からハンター世界特有の「実名のもじりだけどなんか新しく聞こえる」都市名に惑わされた俺は、「有名どころならわかるやろ!」とどんどん都会へ向かい、ついに若者の流行の中心ぽい場所へ到達。そこに居たのは舞台衣装と見違えるほど派手な服を着て()()()でラジカセ囲んで踊る奇怪な集団。

 80年代の原宿あたり、資料映像でこんなの見たぞ。

 

 地名も「クージュバラ」とそれっぽい。

 ここ『ジャポン』だな!?

 

 

 なんてこったあのジジイ、(おれ)の許可なく海まで渡ったってのかよ!

 おのれネテロ、この飛行機——いいや飛行船代は高くつくからな。内心毒づきながら金券屋で帰還用の旅費を計算。ざっと50万てとこか。円安のせいでだいぶ食われる。しかし原作で「1ジェニー=0.9円」とあったがまさか『円(通貨)』として実在したとは驚きだ。

 

 因みに今の相場は1(ジェニー)=1.6円。 やっすいなオイ!じゃあさっきのはヤケクソの踊念仏か!?

 

 

 

 したらば金を工面しようと銀行強盗——しようとして働く心のブレーキ。

 

 

「いわば今の俺は『保護観察処分』中⋯⋯ ここでバツが付けばもはやそこまで。ギンコも僧兵も来れない中の死はすなわち敗退を意味するが、かといって修業は嫌だ!絶対に!」

 

 

 ネテロに勝つとは言ったが誰も苦労するとは言ってない。漫画なんかはナレーションが「そして一年の月日が流れた⋯」で済ませるけど、俺そんなの耐えられないし!そもそもその一年があればどれだけマチと絡めると思っているのだ!?

 

 しかし今や家無しパスなし戸籍無しの異国棄民風3歳児。いや、4歳か。年齢がフワフワしてるのも親の所為だ。意識は転生者でもさすがに自分の生まれた日は覚えてない。12月中旬~1月前半のどこか。まあ俺自身前世でも成人したら歳なんか数えなくなる程度に興味ないけどさ。

 

 日本の外人アレルギーって80年代どうだっけな? 『ジャポン』だから案外フレンドリーにホームにステイさせてくれる可能性も無きにしも非ずだが、何より身元不詳は匿う奴もヤバい。映画、『ターミナル』みたいに土建屋の就労がガバガバなら金の問題はなくなるけど、でもここ日本モチーフの『ジャポン』だし。

 なんて、考えながら「ヨーヨギ公園」のベンチの上に寝そべって空を見る。

 

 

 こんなに呑気にしてていいのか? いいのだ。

 どうせネテロは追ってこない。そこまで暇じゃないからな。なら手下を寄越すかと言えば、それもあり得ない。だって暗に「ガキに出し抜かれて逃がした」って吹聴する事だし。あの爺さんがそんな軽いプライドをお持ちな訳が無いのだ。

 つまり犯罪(問題行為)さえしなきゃそれでいい。

 

 

「じゃあお金は⋯⋯ 犯罪にならず、入管法にもかからず、4歳でできるなにか健全な手段であつめると—— どうすりゃいいのよ」

 

 

 これがまた隣近所、特にちょっと北にある『パドキア』『ミンボ』なら『天空闘技場』も陸続きで、俺くらい腕があればファイトマネーで90億程度軽く稼げるってのに。完全にどん詰まった。いやむしろここまでみこして『ジャポン』を選んだのかもしれない。「命が惜しくばそこでおとなしくしていろ」的な。

 

 流石に命は惜しい。が、せっかく手に入れたマチを弄れないのも嫌。

 だからここは間を取って、前向きに考えてみることにした!

 

 

「これが80年代の女子校か⋯⋯ マチに似てる子いないかな~?」

 

 

 世界は半々男と女。どうしようもないなら代替品を探してみよう! という事で限りなく上達した『隠』で気配を消し、かたっぱしから忍び込む女子更衣室巡り。しかも本物のJK入り。うへへへへ⋯⋯

 

 いや別に疚しい気持ちばかりではない! ただちょっと財布から500円くらい抜き取ったりしたけども!これは帰還に必要な事なのだ!

 

 

「え~、まじぃ? 3組のコもうカレシとヤったん?」

「らしいよ~」

 

 

 『隠』により目の前に俺がいると知らずこんな赤裸々な会話まで難なく聞けるが、これが狙い。校則が厳しい学校なら強請(ゆす)りのネタにできるし、本番行為を撮れば商品にもなる。あとはそれをさらにネタに欲しいだけ稼がせるのも手だ。 犯罪やめるって言ったばっかだが『推定無罪』って言うだろう。有罪判決食らってからが犯罪なのだ。それにこういう類は起訴されにくい。

 

 購買部でペンと手帳を拝借して、職員室に入り白昼堂々住所録から個人情報を転写する。まったくダメじゃないかディンプルキー使わなきゃ。ギザギザしてるだけのカギなんて初心者でも針金二本でピッキング余裕なんだぞ?

 

 

「それヤバいマジちょ~ウケるんですけど~」

「あははははは⋯⋯ あれ? ウチのから揚げ一個少ない?」

「ちょッ、そんな盗ったみたいに睨まないでよ⋯⋯ あれ? あたしのも⋯⋯ 学食また値上がりしたのかな?」

 

 

 いいえ俺が食いました。

 ほんと学校ってサイコーだわ。俺大好きだよ学校。この施設だけで衣食住のすべてが解決しようとしている。ただし一校だけだと潜伏ばれそうなんで2,30校を巡る遊牧民になろう。

 

 そうして家畜になりそうな連中にかたっぱしから目をつけていると3校目で、()()に出会った。

 この世界あるあるとして一般人の髪色が地毛でフィーバーし、黒髪の多き『ジャポン』でもバリエーションに富んでいるのだが——

 

 

(色は明るいけど⋯⋯、 あの引き込まれるような感じ。あれは『マチ』だ!)

 

 

 代替品(かわり)が見つかった。

 ぶっちゃけ「星雲・ラッセン系ピンク」を想起させるマチと、白多めというか白地にうっすい桃色と「桜」を想起させる彼女では雲泥の差があるが、日よけのような髪から不意に見える目元とか似てたので妥協した。

 

 それとオマケもついてる。

 

 姉妹だろうか。こっちは完全に白髪で目元以外似てる箇所ないけれど、二人して校舎をバックに春先には毛虫がヤバそうな木の下のベンチでお弁当をつついている。こんな光景マチじゃあまず見られない。

 

 ぜひお近づきになりたい。が、犯罪はダメ。どうしたもんか。

 悩んでいると弁当食ってる二人に数人のスカート集団が通りかかり、おしゃべりでもしているのか箸が止まった。そして姉妹のベンチに並ぶように腰掛ける集団の長——仮にボス猿とする——がどうしたことか、まるで恋人のように桜色の方に寄りかかり指で腕をなでるじゃありませんか?

 

 これはひょっとして、キマシタワー建設予定地?

 挟まりたいなぁ。

 

 

 

「————」

「——————」

「ッ! ⋯⋯————」

 

 

 何か深刻そうに話し込んでるが、さすがに4ブロック離れたビルから見ていると、風上なのもあって会話内容までは読み解けない。なんとなく雰囲気で百合百合したアトモスフィアを感じていると——おおっと? 突然ボス猿が桜色の弁当をはたき落し、場が凍り付く。

 いきり立つ白いの。桜色をボス猿から守るように立ち上がるも多勢に無勢——って

 

 あれ? これひょっとして百合空間じゃない感じ?

 むしろまるで虐めみたい。

 

 これはちょっと気に食わない。

 

 俺のお気に入りを虐めていいのは俺だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということでやってきました(くだん)の学校。()()で徒歩?10秒だ。草葉の陰から、『隠』で隠れてのぞき込む。今やボス猿一派と白いのと桜色——桃色にして「白桃姉妹」と呼称しよう。白桃の白い方をしたから煽るように立ち上がるボス猿。

 

 

 

「うちの子がさぁ、あんたにやられたって言ってるんだよね」

 

 

 曰く、桃の方に何か因縁があるらしい。百合ものじゃなくて不良バトルものだったか。

 

 

「知らないって言ってるでしょ⋯⋯!」

 

 

 しかし否定する白。

 

 

「はぁ? まさか嘘ついてるって言いたいわけ?」

 

 

 メンツに泥を付ける物言いに当然ガンを飛ばすボス猿。そしてそれを煽る取り巻きズ。これは一触即発か⋯⋯——!? ちょっとまってなんか渦中の桃色の方が状況にも関わらず俺を見てんだけど。「後ろに何かおる?」と振り向いても何もいない。気味悪いので横にずれるが⋯⋯なんか月みたいに真正面ずっと向けてくるんですけど⋯⋯え?

 ネテロすら欺いた俺の『隠』だぞ!? もしかしたら泳がされてるかもだが、しかしパンピーが見破れるワケがない!

 

 一体どういうことだよ。

 ひょっとしてマジで見えてるのかと、自分を指さしたり、中指立てたり首を掻っ切るジェスチャーしてみり真っ裸になったが無反応。気配を感じ取られただけ、のようだ。それでもすごいが。

 

 それからしばらく連中の問答を拝聴していたが、曰く桃色の方が「鬼の子」なる存在であり、それは被差別対象なのだと。同じクラス、学校にいるだけで迷惑だから、「っていうか最近の悪い事ぜんぶアンタのせいだよね。この忌み子」と結構過激なお話だった。それを守っていた白いのは桃色の妹らしい。妹は「鬼の子」じゃないの? 腹違いか、種違いか⋯⋯複雑そう。

 

 しかし『鬼』とは⋯⋯もしかして⋯⋯

 

 

「って言うか、アンタもさっきから何澄ましてんの! アタシらはアンタが邪魔だって言ってんだ! おい聞いてんのか!?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「姉さん。大丈夫だから。 私がいる限り姉さんは——⋯⋯? ねえさん? 何を見てるの」

「⋯⋯⋯⋯⋯あそこ、草の陰に何かいる。 見えない何かが、ずっと、こっちを見てる」

 

 

 あ、すいません。それ俺っす。

 しかし当然の如く、いやドンピシャなのだが、その不思議ちゃん発言は全員を刺激してしまう。

 

 

「——ッ!? 姉さん!!」

 

「⋯⋯わけわかんない事ばっか言って——そういうのが余計、気持ち悪いんだよッ!!!」

 

 

 誰かが持っていたペットボトルを投げつけ、狙ったのかそれは桃色の頭部へ当たった。

 音からして半分以上中身が入っていたようだが悲鳴はない。ぶちまけられて髪がずぶぬれになっても不気味なほどの無言。ただ少し首がの向きが変わっただけだ。ある意味初期のシズクを思い出す⋯⋯って、俺はシズクに暴力振るったことは無いけどね!

 

 ⋯⋯ないよね?

 

 

 ただ彼女は甘ったるく湿った髪先を少し摘まみ、視線から避けると、また黙々と俺を凝視し始めた。

 

 その額にある『鬼』の証明。

 肌から飛び出た白い突起。一本の小さな角を、陽光で輝かせながら。

 

 

「おまえら⋯⋯ 姉さんに、何してんだぁあああ!」

「はっ、うっさ—— ぐへッ!? は、鼻がぁ——」

 

 

 取り巻きがそれ以上何かすることは無かった。妹迫真の怒りの鉄拳で2、3人の鼻っ柱をへし折られると、鼻血でブレザーを染めながら蜘蛛の子を散らすように退散する。まあ双方共に『暴行罪』なので大した問題にならないだろうが。

 

 

 しかし⋯⋯やはりか。

 彼女はおそらく原作で頭骨のみ出てきた『一角族』に連なる者。

 

 『隠』を見破ったのは種族的な能力だろう。人、家、どちらの財としてもここで埋没させるのは非常に惜しい。ギンコで亜人種の有用性が証明された今、将来『ネオン=ノストラード』にくれてやるやることになったとしても、今手中に収めておきたい。

 

 

 だから、服を着直して、早退となった二人に接触を図った。

 

 

「⋯⋯⋯⋯待って。 来た」

「お姉ちゃん? 今度はどうしたの?」

「さっきから私たちを見てた、なにかが、すぐそこにいる。 ⋯⋯なんの用なの」

「⋯⋯はぁ⋯⋯。 姉さん。 何度も言ってるけど、そんあ透明な妖精だとか幽霊とかいるわけないんだから、やめてよね——

 

 

 

 

 

「そう。 妖精なんかじゃない。 俺は生きた人間さ。よく見つけたね」

 

 

 お膳立てしてくれたところで『隠』を解除。二人には虚空から突然現れたように見えるだろう。はい神の奇跡でーす。

 

 

「——!? ひ、人が!? 何もない所から、男の子が!」

「そう。 それで、なにかお話したい事でも? ここじゃなんだから、うち、来る?」

「姉さん!?」

 

 

 あ、わかったわ。この()()()結構な玄人だな。

 じゃあいい知らせを持て来たんだから、俺がこれからする事はいい事だな!

 

 

「俺は見ての通り普通じゃない。人にはできない特別な事ができるし、それは君も同じ。 みんなと違うってことは特別なんだ」

「だから?」

「君はいいかもしれないけど、妹さんは君の為に戦って、傷ついている。 可哀そうじゃないかい? だから少し力になってあげたくてねぇ⋯⋯」

 

「姉さん、こ、こんな怪しい奴のいう事聞いちゃだめだって。 あんたも変なこと い、言わないでよ。姉さんは普通なんだ! どこもおかしくない! やめて!」

 

「だから変じゃなくて特別なんだって。 ——君は他人にない力がある。でも「力がある」ことはイコール「強い」って事じゃない。 妹と自分、守れるだけの「強さ」は欲しくないかな?」

 

 

 さーていつぞやぶりに聞いた歌い文句だ。かかってくれるかな?

 

 

「わたしは——「姉さん!!」——⋯⋯ わたしは、誰かを傷つけたいわけじゃない。 でも、あなたみたいに、透明になれるのなら⋯⋯」

 

 

そうして一度妹の顔を見て、向き直る。

 

 

「⋯⋯あなたは何を、教えてくれるの」

「俺は君たちに、戦わなくても、戦っても、傷つかない『本当の強さ』ってのを教えたい。 でもただ消えたいと言うのなら、それも尊重しよう」

 

 

 しばらく静寂が場を満たし、妹も妹で、『本当の強さ』という単語に引かれるところがあるのか、黙ったままだ。

 まあ多分、今想像してるのとは違うんだけどねぇ~。

 

 そしてついに

 

 

「代わりに、わたしは、何をすればいい⋯⋯?」

 

 

 口元がゆがむ。

 

 

「衣食住。飯食わせて、寝るとこ貰って、しばらく滞在させてくれるなら」

 

「⋯⋯わかった」

 

 

 これにてようやく、ジャポンでの居場所ができた。

*1
派手な衣装来て踊る集団






コイツやっぱ教育に悪いんでしばらくマチから隔離しまーす。
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