念能力者バトルロイヤル(更新停止中)   作:おヒマ?

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群青と絶対00度 純情と変態デート(姉妹の間に挟まる男編)

 俺が転がり込んだ姉妹の家、苗字をナキリといい、偶然にも姉「モモ」に妹「シロ」という名だったので、名実ともに白桃姉妹だった彼女たちの家は一言で言えば豪邸だった。

 

 しかし奇妙な事に両親は別居、9時5時で帰るお手伝いさんが一人いる以外は、ほぼ完全に二人暮らしという、規模に見合わない使い方をされていた。なんとも陰のありそうな住み心地に諜報活動も加速する。

 

 

「それで、いつになったら、あなたのように消えられるの?」

「まあまてって。『念』だの『隠』だのはすぐ教えられるけど、その前に質問。 親は?」

「⋯⋯ここにはいないわ」

 

 

 物静かに答えるモモ。いやだからそーゆーこと聞いてんじゃないんだって。

 

 

「親はちゃんと、親してるのか。 って質問なんだけどな」

「親を()()って?」

「金を払う。住むところを与え、生活を保障する。こんなのは愛人やNPOにだってできることだろう? 親が親たるには、確実に一つ、必ずすべきことがある。 それをしてるのかって事」

「親の義務と、言いたいわけね」

 

 

 その通りだ。が、最も、数日間彼女らの生活に張り付いた限り、果たされているようには見えないんだけど、その口で言わせたい。だからモモが話すまで、三人で佇む応接室のテーブルを撫で埃を指で集めていると、不意にシロが——

 

 

「それは、つまり⋯⋯やっぱり愛されてないって、言いたいんだよね」

「ぶっふぉ⋯⋯!! 愛って! 愛っておまえ——」

 

 

 予想外の返答に噴き出すとかなりキツめに睨まれた。なんだお前、愛してほしいのか? 残念。親に子を愛す義務など無いのです。

 

 

「違う違う。 ま、俺としてはその欠けた部分を二人に学んで欲しいのさ。 だからはいコレ、あげる」

「これは⋯⋯手帳? それもありふれたもの。 消え方はおしえてくれないの⋯⋯」

「消えるのもままいいが。 シロからしたらそっちのが嬉しいだろ? なんたってその手帳は、今までの仕返しができるんだから」

「仕返し⋯⋯」

 

 

 モモの視線が強まるが、「誰も傷つけたくない」はお前の都合で、シロのじゃない。それに使うかはシロ次第。許しても許さなくてもシロの都合だ。

 

 

「その中には学園関係者の「絶対に知られたくない秘密」がある。 性事情、校則違反、犯罪、家庭の問題エトセトラ。 静かな生活もすぐ手に入るだろうね」

 

 

 

 

 

 あくる日の学校はいつもと変わった。もはや彼女らを蔑めるのは脛に傷のない者だけ。当然そんないい子ちゃんが面と向かって悪い事するわけもなく、姉妹には平穏が訪れた。わけもなく——

 

 

「水掛けられたんだけど。 手帳も燃やされちゃったし」

「だから、やめなさいって言ったのに」

 

「ちゃうねん! お前らの使い方が悪いの!」

 

 

 どんなに決め顔でも「ここにあんたの秘密全部乗ってる!」なんて目の前でやったら、そりゃ誰だって取り上げて燃やすわ。てかよく生きて帰れたな。俺ならボコすよ、夜道で。

 ヤバい、心配になって来た。

 

 

「あの学校頭いいはずなんだけど、なにゆえ君らはそうなのか。俺の苦労が水のパーじゃん」

 

「ご、ごめんなさい⋯⋯」

「シロはいい子なだけ、謝ることじゃない。 私たちに、悪い事させようとしても無駄よ」

 

「悪い事なんてさせないよ~——「それは嘘ね」

 

 

 ちょ、まだ話してる途中なんですが⋯⋯

 何となく意味ありげな表情で俺の言葉を遮ったモモは、そっと髪をかき分けるように、人差し指で額の角をなでる。しかし角があるってどういう感覚なのだろうか。俺は額近くに物があるとムズムズするが、気配察知はその延長線上か?

 

 

「まあいい。 明日確実に一人潰す。見せしめだ。 手帳は死んでも中身は覚えてる。 そして証拠写真の現像も完了。 ああ、子の痴態を見せつけられるご両親がかわいそうだなぁ」

 

「⋯⋯心にもない事をよく言える。 それで、一人潰して、私たちは平穏になれるの? 本当にそう、思ってる? 争いはまた余計な争いを産むだけよ」

「⋯⋯お姉ちゃん。 確かにそうかもだけど、でも、だからって何もできないまま一方的やられるよりは⋯⋯」

 

「その通りだシロ! ——なあ、お前ら蜘蛛ってどう思う?」

 

 

 この場合の蜘蛛は「旅団」ではない。

 

 

「蜘蛛? 蜘蛛ってあの、わしゃわしゃ動く、気持ち悪い虫——」

 

「そう「気持ち悪い」! 実は益虫なのに、見た目の不快度でテントウムシとはえらい違いだ。 酷い事言うようだけど、お前の姉は蜘蛛と同じ『不快害虫』なの! だからモモも、大人しくしてるからって、向こうが叩いてこないとは思わない事だ。 ⋯⋯俺を睨んでもどうにもならんぞシロ」

 

 

 唸り、遮り、歯を見せる。

 まるで親犬のように姉を庇う。しかしいくら姉とはいえ、こうも懐くものなのか。

 俺は基本損得でしか見られないから、姉妹と言うだけで同様の扱いをされるなら、それは単に「邪魔」だ。その点モモよりシロのが歪んでいる気がする。あるいは——

 そう思わなければ、いられなかったか。

 

 

「まあ最終的には君らのためになる事だよ」

 

「……そう」

 

 

 なんだろう。反論の2、3覚悟してたのに今度は素直。モモがどういう人間かさっぱり分からない。

 少し距離感を測ってみよう。

 

 

「なあモモ。ところでお前の角、舐めていい?」

 

「……………………なぜ」

 

「舐めたいから」

 

 

 即答だった。

 その時のモモ表情を、俺は一生忘れないだろう。

 自分でも意味不明な事を言っている自覚はある。だがそれ以上にどうしたいのか読み取れない、まるで生まれて初めて驚いたような、ぎこちない表情に俺は満足した。せざるを得なかった。

 あと当然ながら舐めさせてくれませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナキリ一族と『鬼』について。

 

 彼女らが学園で居場所を形成してる間、職務に忠実とも呼べない老いたメイドのザル警備を掻い潜り。俺はこの家の謎を調べる。だって気になるじゃないか。血統とか。一角族はレア人種だ。

 幸い資料はすぐ見つかった。かなり古い。

 

 過去『鬼』を倒し、『鬼』の血を取り入れたことで武家として大成した彼女らナキリ一族は、定期的に「鬼の子」と呼ばれる特異体を排出しながらも、軍閥の名家として数十年前まで幅をきかせていた。前世で言う旧華族に近い立ち位置。

 

 しかし当時、今まで終末論がまことしやかに囁かれていた世界が、その苛烈な競争を止めてしまう。

 

 これにより軍拡は一転し縮小傾向。また、当時送り出した大艦隊もろともナキリ家当主含む大多数が帰還せず、燻った軍に対する不満の矢面に立たされた彼らは軍閥淘汰の波に飲まれ、今では使えもしない、ただ気味の悪いだけのツノつき「鬼の子」が生まれる異端としてその名を残すばかりらしい。

 

 

 とーころでこの数十年前、大艦隊諸共軍が「消えた」というのが引っかかる。

 

 

 戦争ならば“全滅”のはず。

 総勢1万人もが同盟国の『サヘルタ合衆国』の国軍預かりとなり——ってとこまでは資料から読み解けるが以降、サヘルタで統合されさらに巨大化した『特殊連合軍』自体の記録が存在しないのだ。

 

 そして、世界各所の都市伝説には、同タイミングで「大量の人間が消えた」「不明な出費がある」「突発的不況」「税金の引き上げ記録」等々、「そのもみ消し」と二つセットで存在する。

 

 いやもうこの世界でこの規模の失踪、でタイミングから考えたら、『暗黒大陸』()逝っちゃったパターンだよね?

 

 そりゃ軍縮もするわ。競馬でもこんな大負けしないっての。

 

 

 でもそうか、これで少数民族?が平然と学校行ってる理由はわかった。

 てことはシロ側でも産めよ増やせよすれば()()()は発生するということ。気難しいモモを誘惑するより裕福にした方が手に入るか。

 

 

「それで首尾は? 学校はどうだった」

 

「そうね、私たちを煩く言っていた人たちは、頭が潰されて戦々恐々、といったところかしら。 確かに静かだけれど……きっと、このままじゃ終わらない。 どうする気なの。 もうシロ(あのこ)は止まらない」

 

「そりゃ復讐は楽しいからな。 1やられたら2でも100でも返したいのが人間心理。 今までやられた分、溜め込んだストレスがなくなるまでやるだろうさ」

 

「……でもそれは相手にも言える。 次は私たちの番、ね。 ……だから言ったのよ、力がないなら、隠れなきゃいけないって」

 

 

 悲観的な物言いだ。

 ——だが、力ならあるだろう?

 

 例え自分がどんなに非力でも、重力、遠心力、圧力——この世は力に溢れている。正しく使えばいいだけだ。 「泥棒!」と叫んでも誰も助けちゃくれないが、「火事だ!」と言えば顔を出す感じ。

 2人で敵わない相手なら3人で、それでもダメなら……もう、

 

 大火事を起こすしかないよね。

 

 

 

 

 更に翌日。2人を笑顔で送り出し、メイドという名のサボり老婆が部屋のソファで魂抜けかける横で、ようやく完成したソレを手に取る。

 

 

——真実新聞 創刊号——

 激写、最近の女子高生を取り巻く淫靡で爛れた日常! 近所のあの子の裏の顔とは!?

 本名は伏せるが、ここに写るは町内に住む少女本人!しかもあの有名学校名の生徒! 電話番号はこちら——

 

 

 予算の都合でA5サイズだが、引き延ばした無修正ポルノが大半を埋める紙面は、一目で写る者が誰かわかる高解像度。これを相手の家と近所に配り歩き、最後には学校でばら撒こうと思う。

 

 ちな画像は巧妙なコラージュである。頑張りました。

 しかし信用を失うとは苦しい物で、何を言おうが言い訳として取られ泣き寝入り必須。そのうえ本来の被写体の牽制にもになるという、一石二鳥の作。

 言い出せば友達は救えても、自分が死ぬ。なら我が身かわいさに売っちゃうよね?

 

 姉妹のアリバイは学校で保証され、同時に外部協力者の存在が視野に入る。そんな状況で彼女らに手を出せる奴はいまい。嫌われようがもとから孤立してるからノーダメージだ。

 

 あとはこういうのが許せない連中と近所のおばちゃまマシンガンがジリジリ心を削ってくれるでしょう。きっと。たぶん。 嫌がらせのコツはのめり込みすぎないこと。過干渉は身を滅ぼす。故に環境に排してもらう為、波風たててあとは知らんぷり。

 

 夏休み、朝顔に水やる気持ちで、思い出したらやる程度でいい。それでも相手は滅ぶんだから。

 

 

 

 

 昼休みを迎えた学校は騒然としていた。世はまさに戦時中。「敵のビラを拾うな!」と統制を図る教師だが、口に戸は建てられず、教学故にそーいう話題に敏感な男の子達が無言の内に彼女を責める。

 一方職員室では鳴り止まない電話対応に四苦八苦。

 号泣する少女。

 

 

 これは酷い。

 

 ま、身から出た錆って事で。

 しかし普通に犯罪行為。こんな事しちゃっていいのだろうか。いいのだよ。

 

 今までのどこに『念』を使った痕跡が?

 ハンターは動かん。()()はザル。故にこれは完全犯罪。

 

 

 

 

 

 

「さて俺の腕前に何か言うことはー、お二人さん?」

 

「陰険——「すごい! 凄いよ! 今までお姉ちゃんを悪く言ってた奴らがみんな青い顔してた!一瞬で! そっかーあのノートはこうやって使うんだね! ()は本当に頭いいなぁ! 私尊敬しちゃうよ!」

 

 

 うんうん。モモは何か聞き捨てならない事を言ってた気がするが、シロの受けは上々だ。今や抱きついてきてめちゃくちゃ頭を撫でてくる。正直鬱陶しい。

 というか見た目若いからって「僕」呼びはやめてくれや。

 

 え、「じゃあなんて名前なの?」って……う〜ん。はっ!

 

 

「お、俺の名前はピピン。 ピピ君って呼んでくれ」

 

 

 笑顔で答える。

 悪いなピピン。死んだお前が悪い。使わせてもらうぞ。

 

 

「うんわかった! ピピ君だね!」

「……嘘、それは偽名よ」

「え? そうなの……」

 

 

 秒でバレた。くそ、やっぱピピンなんて嘘くさい名前を使うから……

 いやまだこっから持ち直せるかも。

 

 

「そんにゃわけないじゃのいこ。 俺の名前はピピン。 親なし家なし家族なしの勝手気ままの根なし草さ、ハハッ!」

 

「でもこう言ってるよお姉ちゃん」

「…………スゥ——」

 

 

 そもそも疑うような点がない以上当てずっぽうにすぎないのだ。

 今度こそ会心の笑顔でだまくらかせた。そうほくそ笑んでると、モモは数秒かけて深く息を吸い込み、更に深い溜息を吐くと髪を分けて額の角を指差し、

 

 

「言ってなかったけど、わたし、気配だけじゃなく『嘘』も感じ取れるのよ」

「……え゛!?」

 

 

 明かされる衝撃の真実。

 だとすれば念系統、特質系は確定。司祭の『交霊』、ギンコの『不死』に引き続き、()()はおそらく『看破』といったところ。

 そんなマジですか。ナチュラル嘘つきな俺と相性最悪じゃん。 

 

 

「え、え、そんなまさか嘘でしょ? じゃあなんで俺を家に上げたんだよ! ほら矛盾! やっぱり嘘は見抜けないんだろ?」

「……それは、利があると、思ったから。 ……あなたが言った「本当の強さを教えたい」。そこに嘘はなかった。 初めてよ、私たち姉妹を嘘なく助けると、いったのは」

 

 

 あれ、そうなの?

 基本気分で言ってるからそこら辺責任取れないんだよねぇ。

 でもそうか、嘘が見抜けるなら、正直に進めれば信用の獲得も楽。前向きに考えよう。

 

 味方にできれば心強い。

 

 

「…………でも、あなたが悪く思うことはない。どうせわたしも同じだから。 ——理由はともかく、あなたを利用しようとしたのは本当。 ……変わらないわね、あの連中と」

「お姉ちゃん……! お姉ちゃん違うよ! 群れて強くなった気で、ただ弱いものを虐めてるだけな奴らとお姉ちゃんは違う! ——そ、そうだよねピピン!?」

 

「え、俺もおんなじだと思うけど」

 

「ピピン!?」

 

 

 だから俺はピピンじゃないってモモが……

 

 

「ともかく、同じで何か不都合があるの?」

 

「……嫌なのよ、嘘を吐くのって。 わたしの嘘はわからなくても、相手の嘘だけは見抜けてしまう。 私の力は自分より弱い立場の人から、一方的に、利益を得られる。 それってあまりに不条理じゃない」

 

「人生そんなもんだと思いますが 生まれつき足の速いの遅いの、よくある差では?」

 

 

 まあそこは個々の価値観なので深くは言わんが。

 

 

「じゃあつまり—— その力を総動員すれば、自力で連中を蹴散らせた……と? お前なめてんの?」

 

「……そういう事になるわ。 でもね、誰かを傷つけるくらいなら、あのままでいいの。わたしが消えれば、丸く収まる。 だからあなたのいう『本当の強さ』の正体が今日の脅迫なら、もう、いい。 御免なさい」

 

「はぁ!? 謝るべきは俺じゃなくて、シロにだろ!」

 

「え、あたし?」

 

「「誰かを傷つけるくらいなら」と言うのなら、まず優先順位を作れ。 お前の言い分じゃ妹のシロより他人が上だ。 それでいいのかと、聞いてるんだ」

 

 

 モモの表情が強張る。

 なんてったって俺の言葉は嘘のない純粋な疑問。心当たりはあったのだろう。でも誤魔化した。そういう顔だ。

 

 

「……だって、そんなことすれば余計気味悪がられるわ。 それこそ弱い者いじめが怪物狩りになる。 普通の人がどう考えるかなんて、知らないのに。感情まで読めないのに。今よりもっと悪くなるかもしれないのに。 できるわけないじゃない……!」

 

「そこが『弱い』と言ってるんだ俺は」

 

 

 腕力、知力、武力、国力——

 力があふれる世界だからこそ、絶対と言い切れる唯一無二の『強さ』がある。

 

 

「…………じゃあ、どうすればいいのよ」

 

「それを教えてやろうと——あーもう面倒くさ! いいか、俺はお前らが欲しい!稀有な才能だ!特別だ!レアだ! なんとしても俺の物にしたい! その才能は力になる。もちろん悪用もする。 でもそのかわり、望むならなんでも与えてやろう! 弱者が強者を斃し、自由気ままに生きれる方法もな!」

 

 

 シロの目が絶えずモモを観察する。この言葉の真偽を確かめたいのだ。が悪いが全部本音なんだ。生憎俺は頭がおかしくてね。

 

 

「俺の教える強さ—— 仮に目の前に超強い敵が現れたとする。今の自分じゃ負けるかもしれない、強大な敵だ。 さあ2人の思う強い奴はこれをどう処理する? 答えろ」

 

「そんなの……強いなら敵なんて倒せちゃうし……でも」

「それを、私たちに期待してるなら無理、ね。 そんな力なんかない。 嘘が見抜ける化け物と、ただの高校生よ」

 

「アホか。なら逃げちまえばいいんだよ」

 

 

 途端、2人が怪訝な顔になる。やっぱりわからないかこの『強さ』は。だがこの世で最も身を助ける力だ。

 

 

「敵を倒せる。確かにそいつは強い。 だが、「倒すしか道がない」としたら? 追い詰められた状況で、本当に強い奴は「敵より強い兵士を雇う」「即座に逃亡する」「遠方からミサイルで攻撃」「飛行機で爆撃」「社会的に潰す」「救援を訴える」「むしろここを罠にする」、なんでもやってくる。手段の多さこそ『本当の強さ』だ」

 

 

 俺らに限らず生きるためには形を変えて財貨の取り合い『デスゲーム』を敢行してる事になる。そこに生み落とした親が、唯一絶対教えるべきは、戦う力でも思いやりでも、ましてや愛なんてふわふわした物じゃない。

 なるほど確かに彼女たちの両親はそれを教えなかったようだが。

 

 

「愛して欲しいか? なら愛そう。 金が欲しい? 用意する。 平穏な暮らし? 手に入れられるだけの力を貸そう。 だから生きろ、もっと傲慢にやりたい事全部やれ。俺が全肯定する」

 

 

 ああ〜、かっこ良。俺もこんなん言って貰いたかった。

 

 子に愛なんかかけたところでそのうちもっといいのを見つけて番いになる。家も出て行く。思い出も忘れる。墓参りにも行かない。親はいつか死ぬんだ。ならいつ死んだっていいように、良かれ悪かれ『生きていく(すべ)』ってのを叩き込む。それが生物。

 コイツらにあるのはただ『死なないでいる方法』だ。

 

 うわ、ありきたりな事言ってらぁ。(急に素に戻った)

 

 

「と、ともあれ俺はお前らに生きて欲しい! 使いたいからな! ()()()を取るなら、まあ誰かを犠牲にする方法だけど、『本当の強さ』ってのを叩き込んでやる。 ……どうよ? 案外恨みを買った方が、人生楽しくなるかもよ?」

 

 

 うーん、本当はもうちょい若者にウケそうな事言いたかったけど、寄る年には勝てないのよね。不意に男女を「アベック」って呼んじゃったり。

 それでしばらく目を瞑っていたが、一向に手を取られないどころか、部屋から出てく気配もない。

 あれ、これひょっとして無視られてる? そんな酷い。確認のためにピッと片目を開けると、

 

 

「…………嘘はない、嘘は……でも…… わたしは生きて、本当にいいの……?」

 

 

 なんてナイーブ!?

 90年代か貴様ら!?今80年代だぞ! “エヴァ”はまだ先だ!

 

 

「ねぇ俺が「生きて欲しい」って願うんじゃダメ〜? 俺もシロもお前のこと好きだぞ」

「……すき?」

「そう。特にシロは大好きだろうさ。 有象無象の凡百に認められるより、それってもっと価値なーい? てかもうぶっちゃけ面倒。 なんならキスしてあげようか? ——明日のビラ作りがあるから、寝たいんだけど……」

 

 

 まあもし振られたら、多少手荒だが適当な男をあてがってブリブリ産んでもらおう。でも非効率的だからやりたかないんだよね。飼育には手間がかかる。自分で生きてお願い!

 

 そんな願いが通じたのか、まずモモの手が俺へと伸び——腕を通過して、へ? なんか胴体に回されたんだけど。 まさかまさかのベアハッグですか……でも他に手を回す事なんて、あ。

 

 レイ、自爆する気——!? さようなら天さん…

 と巫山戯るのはここまでにして、なんか抱きつかれたけど、ツノが刺さって結構痛いっす。

 

 

「……これは一体なんの確認ですか? 自爆技?」

「……その、私にも、よくわからないの。 ただ何でもしてくれるって、言われたから……まず()()()()()()って、なにか、思って……」

 

 

 訳もわからず抱きつくなんてセクハラの才能あるよアンタ。

 好意的に解釈するならば、本当に受け入れてくれるのか確認、あるいは人恋しかった期間の穴埋めと言ったところか。別に頭を撫でてやってもいいが、でも妹がなぁ……

 すごい顔でこっち見てくるんだよね。やめて。

 

 

「……ズルい……ズルいよお姉ちゃん。 私、今まで頑張ってたのに……そうやって、簡単にっ……! アタシはツノがないのに、こんなっ……こんな目にあって……! お姉ちゃんだけ助かろうなんて……っ! 許せない……うふふあはは……」

 

 

 こっわ! 笑い出したのに目に光がないよあの子。やっぱなにか病んでる。ヤンデレ? リアルヤンデレなのか? ヤンデレ百合姉妹だったのか? 妹→姉なのか?……いかんこのままじゃ殺される。

 

 

「まあまてシロ。ちゃんと俺の言ったこと聞いてたか? 俺は「お前ら」が欲しいんだ。 さあおいで、こんなしょーもない男でよかったらお前も一緒に撫でてやるから」

 

「本当!? 私もお姉ちゃんみたいに——、ううん、お姉ちゃんよりもっ! あ、愛してくれる……?」

 

 

 おいまて飛躍してるぞ。誰がそこまで言った—— 「愛して欲しいか? なら愛そう」——言ってましたね!

 だから軽はずみな発言はよせとあれほど……

 

 

「も、もちろんさぁ! でも俺人の心がないから、何が愛かよぐわがんにゃいケドね? でもある程度の要望には答えます、はい——」

 

「じゃあまずは本当の名前教えてよ!」

 

「だからマジで……()()()()()()()()()()()()()……」

「……『嘘』だわ」

 

「……やっぱり本当の名前、教えてくれないんだ……」

 

 

 高性能嘘発見器の証言により一転して空気が怪しくなる。

 これ嘘判定くらうのかよ。いや、名前はあるけど前世のだし、言わなきゃダメなのか……ダメっぽそうだ。

 

 

「わかった。 もう使ってない名前だけど、それでいいなら——」

「それでいい!」

「……一回しか言わないし、絶対フルで呼ぶなよ。 絶対、なんかあだ名に変換しろ……OK?」

「わかった」

 

 

 彼女たちの目を見て、「まあ俺が下手しなきゃ離反」しないだろと、手駒としての価値を熟考した上で、しょうがなく口を開いた。

 

 

「いいか、俺の本当の名前は『()——」

 

 

 その名を言いかけて、言葉が詰まる。俺は俺の都合で、恥ずかしげもなく何度も名前を変えて来たが、「自分の名前」と自覚したものはそれだったかと。いの一番口に出た最も古い名に、苦笑する。

 

 

「……いや、俺の最も最近使ってた名前は『 日外(あぐい)愚道(ぐどう)』 ……あだ名はグイグーかグドーで」

 

 

 僧侶時代に使った7個目の名前。いや、8だったかもしれないが、奇跡的に嘘判定食らわなかったのでそれで通した。

 

 

「じゃあ、グドーちゃんで」

「「ちゃん」もやめて。 呼び捨てでいいよ。 俺実は2人より歳上だし」

「え、嘘!? ——お姉ちゃん!?」

「信じられないけど、恐ろしいことに、本当よ……」

「そ、それじゃあ……、  ——……パパ?」

 

「「やめろ(て)」」

 

 

 余りにおぞましい呼び名にモモと俺渾身のハモリ。しかしシロの目はさっきとは違う、なにか輝きに満ちている。これは拗らせている。やめろ俺はパパじゃない。

 

 

「次そう呼んだら俺逃げるからな?」

「だってあだ名で呼べっていったじゃん……——「パパはあだ名じゃない!」——じゃあ一緒に寝てよ! それならいいでしょ!? ね、いいよねお姉ちゃん!?」

「ちょっと待て。 嫌だぞ、体ちっちゃいから体格差で潰されるし——」

「そうねシロ。それがいい。 ——グドーも歳上なら、わかるでしょ。女子高生と添い寝できる。この体験のレア度。 レアなのは好き、なんでしょ?」

 

 

 あーそういう言い方しちゃう?

 

 そうしてベッドまでもつれ込んだ両名からのホールドは、「これからの復讐と管理、支配」という色気とは程遠い内容でピロートークになだれ込む。この姉妹仲良いとは思ってたけどベッド一つかよ。え、()()()()感じ?

 

 やだ俺百合の間に挟まれてるじゃん。夢叶った。

 

 

「それで、これから、どうするの……? みんな秘密をバラしたら、秘密の意味がなくなる」

「だからあれは「見せしめ」だって。 お前らに絡んでたいつものグループぅぅうぅぅぅう……!? く、苦しい! 首が閉まって——」

()()()じゃなくてちゃんとシロって呼んでー! ねえ呼んでよぉ!」

「わ、わかったシロ! シロぉ! 首、首やめてっ!」

 

 

 なんだろう。

 一見助かったようで、ハーレムに見えて、結構危うい橋を渡ってる気がする……まあいい。当初の予定とはずれたがこれで『組織』を作るのに必要な素材は揃った。

 

 俺はちゃんと学べる男。

 ()()の失敗は安易な念公開と、俺の存在を出しすぎたこと、情報統制がなってなかった、何より実質経営者だった『司祭』の死が痛い。その結果シズク姉1人に崩壊させられた。

 

 だがモモの嘘を見抜き、隠れた気配を察知する能力ならば、組織ゆえの弱点もカバーできる。そして彼女の護衛はここに——

 

 

「よーしよしシロ。 期待してるぞぉ。働きによってはお姉ちゃんより凄い——「も、モモって、ちゃんと呼んで」——……モモと似たような力をあげるから、使いこなしてくれよ」

「姉ちゃんより凄いの!? ……ツノ生えるかな?」

「ツノはないけどモモにはできない、シロにしか頼めないことだ」

「……うん。あたし頑張るよ。 頑張るから頭撫でて……できたら褒めてね? グドー」

 

 

 あーもうよくそんな小っ恥ずかしいことをぬけぬけと。境遇を考えれば妥当かもしれないが、心の成長が追いついてないのか。そうだよね、高2で姉妹一緒に寝ないもんね普通。しかし、生まれてこの方誰にも褒められたことのない人生か。それはちょっと流石に同情に値する。

 せめて自分で自分を褒めるくらい、していたと信じたい。

 

 

「シロばっかり……。 わ、わたしも頑張るから、できたら褒めて。 それで、何をすればいいの」

「これからの予定は内乱と格差を作る。 恐怖政治だ。 モモとシロを貶めた連中をより下へ、それが当然の報いだと周知させる。関わり合いになりたくない奴らは自然、連中から離れる。 連中はカースト最下層。被差別民だ。 「あれよりマシ」と思わせるための永遠の下の下」

「思わせといて残りはどうするの? 許す? あたしそれは嫌だな。 積極的じゃなくても、あいつら酷いんだ」

「うん、だから『密告制』だと思わせる。 明日自分に降りかかる不幸は、今日の友達の誰かが告げ口したと。そうして関係を絶ち、団結と思考力を奪う。 頭が良くても考えられなきゃ木偶の坊だ」

「お馬鹿さんにはふさわしい末路だね! でもそれだけ? それで終わりなの?」

「思考力を奪えは煮るなり焼くなり好きにしろ。「秘密バラされたくなかったら客とって稼げ」とでも命じて、そこで新しい秘密を作り、永遠の奴隷サイクルで使い潰していーんじゃない? ……もう眠い。俺は寝る。じゃ」

 

 

 これで金銭問題も一挙に解決するし、連中もまあ自業自得なところがあるんで、あとは再復讐させる気概も、プライドも、人権も奪い去る。家畜の完成だ。

 

 姉妹には念を教え、これらの管理者になって暗躍してもらう。一度方法を教えればあとは20校も30校も変わらない。どんどん人数を増やし、組織を巨大化、今度はちゃんと情報統制をし裏切りを予防。客に各界の有力者がいれば、この楽しいシステムが続くよう便宜をはかってもらう。富はさらならる富を呼ぶ。

 

 惜しむらくは需要と供給の関係で男子生徒の利益率が悪い点か。

 

 でもそんなことどうでも良くなるぐらい左右から挟まれたJKのおっぱいサンドが超気持ちいいの。

 見とるかピピン。「JKにモテたかった」というお前の夢、俺が叶えたぞ。意味ないけど。あの時は色々言ったけど、実は俺もモテたことないんだよ。だってソシオだもん。

 

 女体に興味を持ったとしても、中身はぶっちゃけどうでもいい。

 

 おお、『神』よ! いるならあなたは大馬鹿だ。()()()の一本で『女』が作れるのなら、あと23本で『()()()』を作るべきだった!ケモでも可! 副乳ってやっぱいいよなぁ!

 

 

 

 

 

 さてこれから忙しくなる。

 保護観察処分により表沙汰には動けない。そんな状況でこの『ジャポン』に前哨基地を建設する。

 

 バトロワのルール上、転生先はランダムか原作キャラの血族のみ。ジャポン出身と言えばハンゾーかバショウが関の山。ここに転生者が——まあ観光で来るかもしれんが——いる確率は限りなく低い!

 

 最終的にもしネテロに勝てなかった場合、引きこもって本土決戦に持ち込みたい所存。

 狂信でなく魂の隷属。姉妹を頂点に、逆らうことすら許されない奴隷の王国。教団を発展させた新しい組織を作るのだ!

 

 

 そんな完璧なプランが纏まったところで、触腕を伸ばして電気を消す。消灯。

 健康的に上下する姉妹の胸に揉まれながら、慣れない体温に眠れないでいると、時折悲しい寝言が聞こえて来る。それで撫でると黙るのだからなお悲しい。てか……

 

 

「…………シロ……行かないで……」

 

「お姉ちゃん…………どこ……」

 

 

 これやっぱ俺挟まない方が良かったよな?

 

 が、それを聞いて笑ってしまうのが俺という男。人恋しさの頂点にいる1人と1人に挟まれて、ようやく襲ってきた微睡に身を任せた……

 

 

「シロ……」

 

「…………ぱぱ……」

 

 

 闇に落ちるその瞬間、なんとも不吉な声が、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ダメじゃないか教祖くん。()()を「忘れる」なんてさ〜。 忘れられるのは何より悲しい。 でも—— まさか、君があの悪名高い『外道和尚』だったとはね。 これは凄い情報だ。 ()()()が知れば驚くぞ》

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