念能力者バトルロイヤル(更新停止中) 作:おヒマ?
「……系統がわからないってどういう事だよ」
転生して数年経った俺は、昨日開花したオーラでもって『水見式』を行い、そして頭を悩ませる。
成り行きを結構飛ばしたが、飛ばして問題ないような事しかないのでしょうがない。
むしろ逆に、自我を持った子供が機能不全家族に生まれ、親が邪魔だから殺して飛び出す細かい描写が必要だろうか。いや、ない。
人殺しは初めてだが、特にくるものは無かった。
生命エネルギーであるオーラに目覚める事がこのバトロワの肝なのに、飯は出ない、瞑想はさせない、そもそも暇をくれない、アル中ヤク中のダブルコンボ要介護とか逆にどうすればよかったんだ。
前向きに考えれば、殺しても気に留めなくていい相手だ。チュートリアルとしては良かったかもしれない。
ともあれ強盗やスリで生計を立てる中、ようやく念・オーラに目覚めたわけだが、能力を作る前にまず自分の系統を知ろうとコップに水を張って葉を乗せ、それに当てたオーラでどんな変化が起こるか見る、例の『水見式』をした所……
まず量に変化がない。 強化系×
色も変わらない。 放出系×
味も水のまま。 変化形×
不純物も無し。 具現化系×
葉っぱも動かない。 操作系×
その他変化も特に無し。特質系×
ちょっと放心した
何も起きないってどういう事だよ。
もしやコップに何か変化が? そう思ってさっき投げたら水見式も出来なくなった。
生まれた時点で必ずどれかになる筈なんだけどなぁ…… こんな事なら転生前に系統決めておけばよかった。いやでも担当があの
まさかオーラのない世界から来たって理由で6系統に属さないって訳じゃないだろう。現にオーラは使えてるし、そこまで不利になるならあの女と言えど勝利の為にいう筈だ。……破滅願望がなければ。
弱った。相性の悪い能力を作っても負けは見えてる。
やはり自分の系統を知らない事にはバトロワ以前の問題だが、原作では「これが最も一般的な方法」と説明してる割に他の調べ方は出てこない。
しょうがねえ、自分で作るか!
要はどれが得意だか分かれば良いのだから、全部系統の系統別修行を実地して楽な奴を探せばいい。
ただし!
念を使ってウン十年。かの有名な師匠であるビスケット=クルーガー曰く、「系統別修行は1日1系統まで!」なので、全く想像のつかない特質系を除く5系統を3回ずつ、しめて15日の2週間ちょっとすればいいだろう。
強化系修行1回目! 『石割り』
物体の持つ性質を強化するのが強化系。これはオーラで包んだ石で同じ石をひたすら叩き割る。手元の一個をどれだけ使いまわせるかが重要だ。
超しんどかったが、初めてにしては上々の30個も割れた。対象がないので比較のしようがない。
変化形修行1回目! 『オーラ文字』
オーラの性質を変えるだけじゃなく、形状変化も変化形の領分。細かい操作を求められる文字や図形を作る事で基礎変化力(俺命名)を鍛える。
これも基準が分からないが、それなりの短文くらいは作れるようになった。代わりに頭痛がする。
放出系修行1回目! 『念弾飛ばし』
体から湧き出るオーラを切り離して維持するのは大変だ。これはそんなオーラを弾丸にして、飛距離を伸ばすことで放出力(俺命名)を鍛える修行。
1日やった記録!なんと4m (つーかこれが限界)
これはあからさまに苦手なのだ!強化系のゴン少年よりも全然飛ばない!あと鼻血が出た。
となると強化系よりも離れた系統。
放出—強化—変化—具現—特質—操作—放出、の順に六角状に並んでるから……変、具、特あたりか?
続いて操作系1回目! 『人形操作』
オーラで何か物体を操作するのが操作系。しかし、その効果は思い入れのあるものじゃないと効きが悪い上に、練習で使ったものに思い入れができても困る。故に、離れられない人体。それを模した簡素な人形を操って操作技術を鍛えるのだ!
と、張り切ってみたがこれダメだな。人形一体も動かせないわ。あとすっごいしんどい。放出系より燃費悪い気がする。
この系統が1番苦手だとすると、俺は変化系のはずだが……確認のために具現化系も練習しなければ。
だが具現化系。これが曲者だ。
オーラを物質として具現化するこの系統は、操作以上思い入れや強いイメージが必要な反面、一度具現化した物から離れられない。
鎖を具現化したキャラの模倣だと、もれなく俺の具現化物も鎖になりそうだし……どうしたもんか。
そこで具現化系とは何か、という観点から考えてみる。
具現化系とその他の大きな違いには、念・オーラによる生成物なのに一般人にも見える、触れられる。質量がある。(存在すれば)本物と見分けがつかないというのが挙げられる。
ここで重要視するのは質量と触れられるということ。
本来エネルギーであるオーラは触れられない物だ。電流をむき身で持てますかって話。
しかし『念弾』という放出系の基本技はオーラだけで物理破壊を引き起こす。同様に攻撃目的のオーラも切断や圧壊と言った現象を引き起こせる。
ここで重要なのは攻撃目的ということ。
攻撃の意思がオーラに混じる事で、オーラにある程度の実態が生まれる、つまり僅かながら曖昧に具現化しているのではないか。
実験として鞭状に伸ばしたオーラでテーブルを引っ叩いてみたが、「非実体ならすり抜けるよな」と思うとすり抜け、「壊れろ」と思うとオーラとぶつかったテーブルが大きな音を立てた。
……あ、しまった。これって変化形と具現化系の複合じゃぁ……
ま、いっか! 一回だけだし!
この事から具現化系とはなんぞや、という答えは
「ありもしないものに重みや形といった法則を与える能力」
と言える。
一説によると具現化の一種、自分だけの小規模異世界を作り出す『念空間』も空間の生成は『放出系』で細かい装飾や「内部で〇〇してはならない」「禁を破るとペナルティが発生する」というようなルール設定が『具現化系』の領分らしい。
この世ならざる法則でも肉付けできると思えば相性的に隣が特質なのも納得だ。
挟んで反対側はこの世の物体を操る操作系。
特質の本分は“この世”と“ならざるもの”の間にあるということか。
そう思うと全てが念で構成されたMMORPG、グリードアイランドにある死者と交信できるアイテムなんかは絶対『特質系』の能力だよね。
おっと話が逸れてた!
つまり具現化系の修行とは、体表を覆うオーラの皮膜に実体を持たせ、それのみで物体に触れて持つ事!
名付けて『オーラザハンド』!非常にダサい!
そして漸く具現化系1回目! 『オーラザハンド』
御託は並べた。結論から言おう、すっごい楽だ。
操作放出とか比べ物にならない。工事現場の鉄鋼ですらオーラで持てた。
そしてこれらを三周した結果——
強化系 比較的楽
変化系 凄い得意
具現化 まあ得意
特質系 才能ナシ
操作系 無理
放出系 4m(つーかこれが限界)
導き出された結論は、俺は具現化
今更ながらになんで水見式の味変わらなかったんですかねぇ?
特質はほぼ訓練要らずで完成した能力が使える代わりに属してないと使えないから無視していい。
しかし操作系がここまで壊滅的とは。これは尚のことピトーを手に入れる必要ができたな。
あの猫ちゃん、死体は生前そっくりに直せるし、100人以上同時に操る能力もある。その上殺すにも対物ライフルか核兵器は必要な頑丈さ。
現実に持って帰るならアレ以上の素材はないと断言できる!
さて自分の系統も分かったところで能力を作るとしよう。
原作では左腕、ガムとゴム、糸、龍、電気、美容液というように様々性質、形状に変化させトリッキーに戦っていた変化系だが、俺の場合念弾が使えないほど放出が苦手ということもあって、美容液を参考に、オーラそのものを無害化しようと思う。
『
〜効果等〜
変化系能力。
オーラそのものにある人体(生物全般)破壊効果を無効化する。
効果自体が制約と誓約を兼ねた多分珍しい能力。
まるでトーチゴーレムみたいな能力。……分かり辛いか。効果の無い効果モンスターなんだけど、まあそんな感じ。
これで一体どうやって戦うのか。簡単な話、俺が戦わなければいい。
さっそく実験しようと街を歩いていると、
「ばっかやろう! 誰がこんな寂れた町工場なんか継ぐか!」
「なんだと!? 戻ってこい、コラ! どこに行く!?」
「うるせぇ!俺はこんなちっぽけな街で終わる男じゃねえんだよ!」
ちょうど良さそうな思春期男子が家らしき建物を飛び出していった。
あの年頃はホルモンバランスが崩れてどうにも不安定になってしまう。だから自殺しやすい。
つまるところ、現実のリスク管理ができないのだ。何よりも目先を優先する、まさに獣。
そんな彼の後をつける事数分。
「クソジジイがッ! なんで俺を認めねえんだッ!」
町外れの廃屋で溢れる破壊衝動を満たしている少年。もっとも転生者の俺の方が肉体的に若いけど。むしろ今回はそれが有利に働くだろう。
「それは君に力がないからだよ」
「なんだと!? 誰だテメェこのガキ……」
全身を布で巻いた素顔の見えない俺を身長から軽んじている少年はいい表情だ。
そんな彼のプライドと常識を壊すように、捨てられていた自転車をつかんで、力任せに捻る。
するとどうだ。子供の細い腕じゃ鳴らない筈の異音を出しながら、遂には2つに千切れる自転車。
亜然とする少年の足元にそれを投げつける。
「な……なんだその怪力……化けモンかよ……」
「そうじゃない。これは君にもできることさ。ネンって言ってね。生物に眠る隠された能力を引き出す技術だよ」
「……隠された、能力だと……それは——」
単純にオーラで身体能力を強化しただけだが、念自体一般に秘匿されているから、かれが目にしたのはまさに神の御業だ!超能力だ!魔法でもある!
そういうの大好きなオトシゴロでしょ?
「——それは……お、俺にもあるってのか?」
あらもう食いついたよこの子!
チョロすぎて真顔でいるのも一苦労だ。
「もちろん君にも、誰にでもあるよ」
「本当か!?」
「本当さ。僕はこの技術を教え伝える、まあ“仙人”みたいなものだけどね。そろそろ寿命がつきそうで後継者を探してるんだ」
「なら——!」
「待った! まずは話を聞いてよ。 一応誰だって使えるけど、なるべく若い子がいいんだ。その方が伸びがいい。君の知り合いに、そうだね……活発で、生命力に溢れて、力自慢の子とかいないかな?」
「いないね、俺が1番だ! 喧嘩だって強い!」
「喧嘩、か…… 分かると思うけど、この力は簡単に人だって殺せる。それを喧嘩っ早い人間には渡せないなぁ」
「そう言うならもう喧嘩はしねえ! あんたの言うこと聞くよ! だから俺に、俺を後継者にしてくれ!」
なんて熱意のある子だろう。欲望に忠実で無知蒙昧。感動した。
いい少年兵になるよきっと。
大喜びする彼を跪かせて頭に手を置く。
オーラに目覚めるには2通りある。俺みたいに瞑想で感覚を掴むか、死を覚悟して誰かのオーラに当てられるかだ。
しかし俺のオーラに殺傷能力はない。
そして操作系じゃなくとも、弁舌だけで人間は操れてしまう。つまり、
「それでは今日から君は僕の弟子だ。最後にもう一度、道を違えたら命を持って償うけど、それでも本当にいいのかい?」
「か、構わねぇ……いや、構いません! 俺は、ここで燻るぐらいなら、死んだ方がマシだ!」
「できれば長生きしてくれよ、ほっほっほ。 それでは君の可能性を……開けるッ!」
オーラを当ててやれば、驚いた彼の体から淡い青が吹き出した。
へぇ。オーラって人によって色変わるのか。旧アニメみたいだ。それなら俺のは名実ともに無色透明ってことか。
「すげぇ……体から、力が溢れ出てくる……」
「それがオーラ。 今君の蛇口を全開にした感じだから、早く止めないとぶっ倒れるぞ」
「な、まじっスか!?」
ともあれ実験は成功。
死んでもいいやと攻撃の意思を込めて雑にオーラを当てたのにピンピンしてる。
この調子でどんどん能力者を量産して、手駒を増やそう。