念能力者バトルロイヤル(更新停止中) 作:おヒマ?
「それでは神の子の慈悲により、本日もまた、奇跡をここに!」
転生者のコエンマとシズク=ムラサキ似の少女が入信して今日も今日とて他人の念を使い、カルト教団を賑わせていた。
いや嘘です。あれ多分原作キャラのシズク=ムラサキ本人だわ。
い、一方で幽白じゃ人外のコエンマと言ってもここでは普通に人間なので、同じく人間な戸愚呂兄である俺より早く生まれたのかただの美青年と言って差し支えない。その上親切だし、優しいし、額の「Jr」マークがなければさぞモテていただろう。
と、いうか……
「おーい教祖。 これが今日の分の貢物だ」
なんか馴染んでいた。
教団に。異世界100人デスマッチの最中で、敵同士だというのに。
「コエンマ君、君ちょっと馴染み過ぎじゃない? 警戒心とかないの?
「——? 警戒って言われても…… 共同戦線張ったろ、俺たち」
底抜けのバカかな? そんな法的拘束力のない口約束を信じて。
お互い復活の権利と商品のため、どんな手を使っても勝ちに行くだろう普通。この大会1位しか表彰されないんだよ?
挙句死ぬって言うのにコイツと来たら背中は晒すし、風呂に入って親睦を深めようとして来る始末……親戚の兄ちゃんかお前は?
てゆかなんで住みこんでんだ。
「だが……それすら俺を油断させる演技。食わせ者の——」
「ねえ教そさま。おなかへった」
「ちょっとシズクちゃん空気読んで!」
こっちはこっちでなんか腹ペコ主張してるし!
別に食べる量が多いとか頻度が高いとかそういうのはない。むしろちょっと小食な気もする。だが圧倒的に“意識”というものが感じられない主張のない子が、唯一声を上げることが飯の催促という事で教団内では俺が飯をやってないんじゃないかと噂すら立ちつつある。
宗教組織で
シズクちゃん、恐ろしい子!
「ほらお菓子ポシェットあげるから、それ食べて飯まで待って」
「うん。 しせつおそうじして来るね」
「あ、ちょ!? ポシェットにおやつ入ってるから! 人からお菓子貰っちゃダメだよー!?」
「…………」
トテトテと走り去る背中に一抹の不安を覚える。あいつちゃんと分かってんのかな……
禁欲を教義にしてる訳じゃないがだからって甘やかすのも違う。それより信者たちによる餌付け、というか手渡したお菓子を食ってくれるか賭ける「シズクチャレンジ」と呼ばれる遊びが心配だ。
お礼はちゃんと言うんだけど、まず喜んでるのか顔でわからない。
それ以上に貰い物をホイホイ口に入れるのって危険じゃない? 初対面で下剤仕込んでくるトンパとかいる世界よここは。
あ、因みに彼女の両親には消えてもらった。
処遇をどうするか聞いたら「思い出したくない」そうだったので、信者裁判にかけて相応の『奇跡』を持って浄化した。
いやぁ、一回攻撃転用してみたいと思ってはいたが。予想以上に威力が出て俺もビビった。これ蟻王殺せるんじゃないかな?
まあ、儀式途中で皆殺しだろうが。
しかし。
転生者との遭遇で急変すると思っていた事態も蓋を開ければ平和そのものでバトロワのバ字も無い。これじゃ詐欺だよ。
攻撃能力0の能力を作ってる時点でそうだろうが、金儲け用の能力と思えばこんなにコスパの良いものもないけど。
教団による『奇跡』の波紋は予想以上に広がって、今日なんかお話し聞くだけで大金をくれる大富豪と会談がある。
遂にビルになった教団本部から見下ろせば道路には黒塗りのリムジンと護衛がたくさん。成功報酬にも期待できそうだ。
なんかこう、懐の方が暖まってくるね。いやー、人助けは気持ちがいい!
助けて困るようなこともないだろうしね!
「こちら、依頼主のバッテラ氏です」
「おお、あなたがご高名な『アビスの集い』の教祖様ですか。お会いできて光栄です! 早速だがお願いしたい。どうか教祖様の奇跡で私の恋人を助けて欲しい! もう数年も目を覚さないのです!」
困ったなぁ。原作ブレイクだ。
え、目の前のおっさん
悪いけどこの誘いは断ろう。
この人が10年後くらいに主人公達を雇わないとえらい弱体化する。残酷だが、変えてはならぬ運命というのがあるのだ。
「バッテラ氏は奇跡を疑う訳ではありませんが、なにぶん入院費が嵩みますので。 奇跡が成された暁には処分する予定の財産を寄付してもいいと——」
「お引き受けしましょう」
気がつくとその手を強く握っていた。
これはしゃーない。100億200億ポンと出せる奴が全財産くれるって言うんだ。受けなきゃ馬鹿だろ。
ついでに『
奇跡の発動条件には『教祖(シンボル)』と『信者(燃料)』『願いのイメージ』『対象』が必要なのは確定してるが、儀式場が固定されてるのかは依然不明。
その検証を含め、外出したいのもあってバッテラ氏の恋人眠る病院まで教団は大名行列ばりの大移動を執り行った。
「それではこれより儀式を始めます。 皆さん、強く願って下さい」
既に1000ほどいる信者の中でもオーラ量に優れる50人。そして特質系の司祭。もしもの時の医者数名。強いイメージのためにバッテラと対象の恋人を封入したサーカスばりの巨大テントの中心で音頭をとる。
そして眠る美人とバッテラの肩に手を置いて——ここになって気づく。
意識のない弱ってる病人のオーラ絞ったらまずくね?
オーラを当てて能力者にする『外法』は、無理くり精孔(オーラの出る穴)を開ける都合、全開の蛇口よろしく栓を締めるまでオーラが垂れ流し。オーラの枯渇は健康なら疲労で倒れるだけ。逆に健康でも倒れてしまう。
バッテラはぶっ倒れようが、恋人が治れば笑って許してくれるだろう。でも恋人が死んだら……
ヤバイ。
でも今更「やめます」なんて言えない状況。
一回殺して、精神を『念獣』に移してなんちゃって蘇生……ダメだ俺は儀式に直接介入できない!
ええいこうなりゃなるようになりやがれ! 頑張って!バッテラの恋人!
「目覚めよ! バッテラの恋人!」
バッテラ氏と女性から立ち昇る決して強くないオーラ。それが爆発的にテントを満たした教団の力に飲み込まれ、渦を巻いて女性に吸い込まれて行く。
しかし芳しくない。普段ならとっくに結果が出ている量を呑んで尚、無反応。願いが妥協して顕現する『失敗』すら出ないのは異常としか言いようがない。
思えば意識のない対象は初めて。大まかなイメージはあっても、核たるピースが欠如しているのか!?
このまま無尽蔵に吸い尽くされたら軌道修正もままならんし、しょうがない!
「総員に告げる! 儀式は一旦中止だ! 医療班は彼女に異常がないか見てくれ!」
「き、教祖様!? それはどういう事ですか!?」
「足りないのです。 彼女本人の、「起きたい」という願いが。 だから肉体の前に
「い、生霊!? 分からないが、とにかく彼女と話せばよいのだね! ……話せるのかッ!?」
「ええ」
まずは儀式の『失敗』で彼女の精神を具現化する。
司祭を連れてきて良かった。というか司祭(時給15万+成果給)、マジで交霊系の特質あるし何者だよ。
そうして失敗召喚された半透明の恋人を前に、声を交え涙するバッテラ氏。
ここで
だがこれ以上は当人同士の問題。他人には口出しできない男と女の世界だ。
あとはバッテラさん、頼みましたよ。
「頼む! 君に代わるものなんてこの世に無い! 私ともう1度生きて欲しいんだ! だから目覚めてくれッ!」
「あなた…… そんなに思ってくれて、これほど嬉しい事はないわ。でももういいんです。 私がこうなったのもそういう運命…… 過ぎた願いに神様が「ダメだって」、そう言ったのよ。 だから私の事は忘れて、新しく生きてっ」
「そんな——」
「馬鹿言っちゃいけないよ!」
おっと欲に駆られて口を挟んじゃった。
「あなたは……?」
「僕はあなたを起こす為バッテラさんに協力している宗教団体の長です」
「そう…… 彼ともう1度話す機会を頂けて、とても嬉しかったわ。 でも人はいつか別れる。これは仕方のない——」
「仕方ないって言うならせめて最後まで足掻いてからにしなさい!」
「「——ッ!」」
悪いが失敗した全てがパーなんでね。あんたには目覚めてもらうよ。
さあペンを舐めろバッテラ。小切手の用意だ。
「こうして現に、ここにいる彼が、僕が、医者が、みんなが!あなたの為に頑張ってるんだ! 運命ならしょうがないと、僕も思う! だがこれを運命と呼ぶにはあなたの足掻きが足りない! 足掻いて足掻いて、強い願いの末にそれでも叶わないものを運命と言うんだ!! 願いもしない者が軽々しく運命なんて使うんじゃない!! 自分はまだしも
「そ、そうだ! 方々手を尽くして、もうダメだと思いかけたのにまた君と話せた! 死んだんじゃない。寝てるだけなんだよ君は! もし1人老いた私が気に入らないのなら別れてくれてもいい! だから頼む! 目を覚まして欲しい。ただそれだけだ……!」
「バッテラ……私……ぁ……——」
しまった! 彼女のオーラが枯渇して
てことはバッテラももう怪しい。徴収はなくともどっちも蛇口の壊れた素人。
2人の強い『イメージ』が欠ければ『奇跡』は起きないってのに!
どうする!? 俺の『操作系』はゴミ以下で垂れ流すオーラは止められない。まして2人同時なんて!
絞った脳から溢れ出る脂汗を拭っていると、ふと袖を引かれた。
「教そさま、おなかへった」
「ちょっと本当に空気読んで!いま忙しい——待って! なんでシズクがここに!? だ、誰が連れてきたんですか!?」
いないはずの奴がいて普通に怖いんだけど。
シズクはまだオーラに目覚めてないから本部で待機してる筈じゃあ……?
「教そさまにもらった、おかしのカバン、空っぽになっちゃった」
「ガン無視!?」
動きかけた教徒を制してシズクに向き直る。
本人はいつもどおり感情の見えない顔で「ほら見て」とポシェットの口を広げて見せてくる始末。……ていうかまだ中身あるじゃん。
「まだアメとかガムとか見えるんですが…… お腹に溜まらないからダメですか?」
「教そさまが、貰ったものはたべちゃダメって言ったから」
ああ、つまり
あ……ッ!
「よくやりましたシズク! 食事は、司祭の服に財布があるので、それで病院の食堂で何か頼みなさい。すぐ迎えに行きますから」
「わかった。 ……またね」
ちゃんと挨拶をしてから消える彼女の背中に、見出した希望。
減ったなら足してやればいい! 俺の能力なら、『
『
変化系能力。
①、オーラそのものにある人体(生物全般)破壊効果を無効化する。
これにさらに、オーラ性質を他人の物に変化させる効果を付ける!
目指すのはオーラの変質、オーラの移植、オーラの譲渡。
ぶっつけ本番だがやるっきゃない。
俺のオーラに色は無色透明。
だからこそバッテラ氏の老を感じさせる淀んだ、しかし深緑の強さ感じさせる緑のオーラにも、その恋人の消える寸前の灯火のような、しかしまだ鋭く光る橙のオーラにも容易く染まる!
ただの透明なオーラじゃない。それは染まっていないオーラ。
傷つけない事は特別じゃない。無垢なオーラはただの力!
それはオーラの抽象化『
瞬間、初めて自転車を乗りこなした時や、いつの間にかブラインドタッチできるようになっていた時みたいに、使うための感覚が
使えるようになったんじゃない。オーラは元より誰にでも。
ただそこにあった物を使いこなせるようになっただけだ。
まあ簡潔に。
俺のオーラを誰のものでもない“ただのオーラ”として2人に流し込んだ。
強化ですらない根源的な生命エネルギーを入れたが最後、どう使うかは対象次第。バッテラはもちろん、彼女が「生きよう」と思わなければ使われもしない。
「——……ぁ……バッテラ! 違うの、私はただッ——!!」
だからこそ彼女が戻ってきた瞬間に全てを確信した。
なのでこの話はここまでだ。
出目は決まったのだ。これ以上恋路をひけらかすのは野暮ってもの。まさにここが楽園とでも言いたげな表情で気前よく小切手切ろうとしたバッテラを止め、俺は教団本部へと帰った。
料金を払う前にこれからどうするか。どうやって生きていくか彼女と話し合ってからでも遅くはないだろう。
どうせ若返りは失敗したんだ。
そういえば、そんな願いも、ありましたね。
欲ってものは際限がない。恋人が生き返ったら、今度は出来るだけ長く連れ添う為に「若くしてくれ」とか、流石に無理。みんなガス欠だ。
原作では念で作られたゲームから『大天使の息吹』(HP・状態異常完全回復アイテム)を持ち出して欲しいと願ったとこまでは覚えてたが、『魔女の若返り薬』(名前の通り)まで欲していたとはね。
もうゲーム内に住んだ方が早いんじゃない? 外の柵も全部捨てられるし。
あ……ボマーか。
今思い出したがゲーム内は危険区域だった!
いやぁー、アドバイスしなくてよかったよかった!
「そしてこれが
「ええもちろん。シズクさんのご両親のようにだけはなりたくありませんから」
「……幾ら欲しい?」
「片手程は頂きたく……」
微笑む司祭に5億を握らせながら、考えるのは次の実験。
帰って早々にメンバーを変え20人ほどで屋外儀式を行なってみたら当然のように不発だったので『移転』は可能だがやはり『儀式場』が必要だろう。
毎回俺がいなきゃならないのも面倒くさい。
そこで今度は『シンボル』の変更。
信仰さえ集まればいいのだから石像なり杖なり“ありがたい石”や杯でも対象を用意して、司祭なりがイメージを纏めればできるはずだ。
しかしこの役には最低限『念・オーラ』の知識が欲しい。
「という訳で呼んだんだけどコエンマ君。 しかしよく考えたらお前だろ、さっきの」
「なんのことかな? さっぱりわからないんだけど」
「……しょうがない、裁くか」
「おい、ちょっとは推理しろよ! 当てずっぽうで否認したら死刑って魔女狩りか!?」
「宗教裁判だが?
「助けてないよ。 助けたのはあの子だそうじゃないか」
病院になぜシズクがいたのか。
さしもの腹ペコマイペースでも徒歩で来れる距離じゃない。俺は宗教組織という面もあって
十中八九コエンマの仕業だろう。
アビスの集いで俺の言うこと破れるのはコイツだけ。
根拠として、シズクは病院の食堂に置いて帰って来たが、さっき本部で見かけた。というかコエンマの車から出てくるのを見たし。
「……わかった降参!犯人は俺だよ、悪かった! でも置いてく事はないだろうに。 怒ってたぞあの子」
「わざとじゃない!300億に気がとられて忘れてたんだ!」
「なお酷いよ……」
司祭ですら財布の事を忘れてたのに、俺ばっか責めんな!
「そういう所がなければいいのに、はぁ…… まさか人を助けて文句を言われるとは」
「全くだよ!」
「なんで教祖が怒るんだよ。 ……理由って言われてもそんな大層な物はない。ただ、当たり前に人助けがしたかっただけだ」
「嘘こけ。これは殺し合いだぞ」
「俺は別に生き返りたい訳じゃないからね」
生き返りたくない?
そんなはずはない。生きてるところ無理やり殺されたなら——まさか、それはつまり……
「その顔、わかったか。 俺は死者から選ばれた50人、それも天命を全うした口でね。この悪趣味な遊びにも付き合う気なんてないんだ」
「……鵜呑みにするとでも? 第一、俺らを戦わせて遊んでる連中だって勝つ為の人選をする筈だろ」
「間違わないで欲しいが、参加する気はなくても降りかかる火の粉は払う気だ。 せっかく手に入れた健康な体。このありがたみは、半生を病室で過ごした奴にしかわからないさ」
「じゃあお前こんなとこにいないで人生エンジョイして来いよ。なんで宗教なんてやってんだ」
「夢だったんだ。警官とか、消防士とか、人助けできる人が」
「なんで宗教に来たんだお前!?」
そりゃ宗教だって救えない事はないけど、でも形として分かり易く満足出来そうな職じゃないだろ。
そんな俺の胡乱げな表情に気がついたのか、コエンマが小さく笑った。
「ふふっ ……実はね、ここに来る前に1人殺しているんだ。しかも俺から手を出して。転生者だった」
「降りかかる前に殺してるじゃん。危ねえな、近寄るんじゃねえ」
「………………まあね。 細小は省くけど、ソイツ能力で女の子に酷いことしててさ。 ハーレムを作るんだって」
「て事は操作系転生者か。なんと羨まけしからん……嘘だよ、そんな目で見るな。あとジェンダー差別はよくない。 酷いことされてる女を助けたら、同じように男も助けなさい。教祖のお言葉です。だからその目をやめなさい」
「……まぁ、そんな事があった直後でね。俺日本人だからさ、宗教自体にあんまり良いイメージないんだよ。 しかもトップは転生者っぽいし、建物からは尋常じゃないオーラが出てるし……やましい事してたら、また正さなきゃって思って」
何コイツ怖っ! え、じゃあ俺も一歩間違えれば殺されてたって事?
「そしたら純粋に人助けしててさ。 少しお金に汚いけど、むしろ俺もここで手助けしたいって思ったんだ。そんな感じ。 それより教祖はどうなんだよ、そんな極悪人の見た目して中身子悪党って、そっちのが驚きだ」
「小悪党で悪かったな! 俺の担当思いの外クズでこうなったんだよ。俺が困るように」
「……ままならないものだね」
全くだ。バトロワは始まらないし俺にカリスマないし戦闘能力相変わらずないし。
それでも『念』という超能力があるだけで俺には面白い世界だ。
今のやり取りでわかったが、こいつは無毒を装ってるが中身は激毒。
人助けを「当たり前」と言うばかりか、己の意にそぐわないものを殺す様はサイコパス。法で裁きなさい、法で。
俺は別に能力で他人を襲おうが他人の勝手だと思うし——いや、そうするとコエンマの死刑も同様に勝手。暴走した正義感は悪意とそう変わらない、か。
とりあえずこのコエンマとは分かり合えない事がわかったよ。
「ずいぶん長く話したな。もうこんな時間だ。 シズクには明日謝っとこう。 ほれ、もう帰っていいぞコエンマ」
「ああ。お咎めがなくてよかったよ」
「何を勘違いしている? それとこれとは別問題。あの子を勝手に連れ出した罪は明日また取締る」
「あれま、助けたのに……」
「助けたのはシズクだろ。言ったじゃねえか」
コエンマを帰らせ、そうして、部屋に1人きり。心を決める。
悪い奴じゃないんだが、教団に居座られても困るし邪魔だから殺そう。
おやすみケダモノ。今日は疲れた。
「——————っ!!」
「——————————」
「————」
「——っ! ————っ!?」
「————————っ!」
その日は朝から慌ただしかった。
オーラ渦巻く教団本部だからこそ俺のオーラは気付かれない。
水道、ガス、電気通信と、もう1つ。俺のオーラが流されているパイプによって、館内の事はある程度把握できる。
「教祖様、教祖様、どうか、どうか、お目覚め下さい!」
侵入禁止区域として設定している自室前に集まる信徒達。
起こしに来るのは決まって司祭の仕事だ。
「騒々しいぞ、どうした」
「おお、教祖様のお声!」「教祖様!」「ご無事な容姿!」
「教祖様!」「各員に伝令しろ、教祖様はご無事だったと!」「僧兵はこのまま御方の警護にあたれ!」「教祖様!」「教祖様!」
「……司祭はどこだ」
しかしその顔は
「そ、それが…… 司祭様は今朝、中央エレベーター内で、首を失った状態で、発見されました……」
もう2度、見る事がなくなった。