念能力者バトルロイヤル(更新停止中)   作:おヒマ?

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俺のオーラは無色透明 俺は無職で不透明(無色編終)

「で、本当に死んでくれちゃって。どうしてくれようかしら? これは私のお婿さんに永久就職——」

「ちょっと待った!」

 

 

 俺の担当、一重に他人の不幸が見たいだけ、ついでに勝てれば上々くらいに人の命を思ってる、金髪ツインテの不穏な発言を遮った。

 性悪女の旦那はごめん被る。

 

 

「ちっちっち! まだ俺は負けちゃいないぜ?」

 

「いや死んでるじゃない」

 

「もしかしたらここから盛り返すかも——」

 

「だからもう死んでるでしょう。 どうしてこの草原にいると思ってるの」

 

 

 そりゃあ死んだからだ。

 だが。

 

 

「俺の転生した世界がどこか思い出してみな」

 

「カッコつけたって1人も殺せず殺されたのは変わらないわよ。 ……思い出すも何も、あなた達がhunter×hunterの世界で殺し合うよう決めた元凶は誰だと思ってるのかしら」

 

「そうだハンタの世界! なら、一回死んだくらいでごちゃごちゃ言うんじゃねえっての!」

 

「……そういう事。 なるほどそれなら……()()ね」

 

 

 納得してくれて結構結構。

 これで「死んだので負けです」とか言われたら予定が狂うとこだった。

 このバトロワは要は最後まで生き残れば優勝。つまり最後の1人になればいい。

 俺も性悪ツインテもそう聞いてる。

 ダメでも一回くらいそう解釈したって文句言うまい。なんて、言い訳考えてるうちに体が透け始めた。

 

 俺……消えるのか?

 

 じゃ、そゆことで。

 俺ちゃん蘇生します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鋳型に流される金属のように、熱を伴い、魂が肉体へと定着する。

 重い目蓋を開けると天井を覆い隠すようにギンコの顔が飛び込んできた。

 

 

「教祖はんっ! 教祖はんっ! よかった目ぇ覚ましたんどすなぁ……!」

 

 

 抱きしめられた衝撃にベッドが揺れる。

 状況がさっぱりだが心配かけたようだ。闇に目が慣れると目元が腫れてるのがわかる。だいぶ泣いたなこれは。俺の顔の冷たい水、涙……まさか鼻水じゃないよなあ?

 

 

「とりあえず痛い、痛いから、離して」

「だ、大丈夫どすか!?痛みやら違和感やら、ちゃんとしっかりくっついて——「痛い」!?嘘や!まだどっか千切れて!?」

「オーケイ。安心しろ。 とりあえず悲惨な死に様だったのは分かったわ」

 

 

 司祭は首もぎ。影武者は上下分断。俺はさしずめ千切られたか。

 よく蘇生できたな。ギンコの能力様々だ。

 

 『供物の刻印(ラグジュアリーブランド)

 少々めんどくさい手順で供物(くもつ)刻印(こくいん)を焼き付けた『刻印持ち』に、これまたややこしい状況下に限りあらゆるダメージを肩代わりさせる、というか発動時に「移し替える」能力だ。

 元々は大怪我か掛けられた呪いを解く除念用だったが、制約と誓約のキツさから蘇生もイケるだろうと踏んでいた。

 

 そう、ぶっつけ本番。

 担当はアレだが俺の悪運も捨てたもんじゃないな!

 

 

「それで何があった? ドア前には刻印持ちが9人、窓はなし、隣にお前がいて、なんで俺死んでんだ。 しかもシズクは居ないし。どこ行った?」

 

「それが シズクちゃんが豹変して!ちゅうか犯人はシズクちゃんなんどす! 教祖はんを殺した思たら、待機しとった僧兵も殺して……うち、教祖はんを治そうと必死でここにおったさかい、後は知らへんのどす……」

 

「待て待て待て待て!ツッコミどころが多すぎる! あり得ないだろそりゃあ!」

 

 

 シズクが犯人? 完全にノーマークだが、それは『念』に目覚めてすらいないからで、仮に使えても原作通りなら得意系統『具現化系』で、司祭を殺しただろう『操作系』は苦手分野。

 それに女児だぞ!目算3〜5歳の!

 オーラが身体強化するにも限度ってものがある! 首もぎならいざ知らず影武者の死体を半分にできるか!?

 

 

「第一、『不死』のギンコが無事なのはともかく、俺が生き返ったということは『刻印持ち』は全滅してない。 能力関係なく目撃者は殺す筈だろ!?」

 

 

 周辺の死体は7。

 内一撃で股下から脳天まで裂かれたと思われる半身が6人前。

 俺の状態を肩代わりしたらしい、性別のわからない肉片が1人前。そして生存は2。

 3人も生き残ってた事になるが。

 

 

「そ、それがシズクちゃん、うちには目もくれんと、僧兵もあり得へんような怪力で殺した思たら、なんでか女の子だけは一切手を出してへんのどす。 おかげさんで蘇生できたけど……」

 

「女だけ見逃したぁ!? ……そういう制約か?」

 

 

 性別に限った殺人は怨恨か変態の2択。でもシズクにそんな素振りはなかったし、何者かに操られてると見ていいだろう。

 

 非能力者を操作して、しかも日常生活でボロを出さない精度に、幼体で大人を惨殺できる身体強化。意味わからんな。しかしそれ以外考えられない。

 

 ……まさか病院に置き去りにした恨み?

 

 でもこのビルに住んでいたシズクに、信者以外は手を出せない。

 しかも影武者が殺された日には信者同士の念の掛け合いも死ぬように……

 

 いや、違う。まさか——

 

 

「……入信した時からバックドアが付けられてた? それなら妙に意志薄弱だったのも合点がいくし、半強制型か。しまった、シズクとコエンマはギリ『信者』の範囲外!」

 

「ねえ教祖はんもう逃げやで。今ならあの子も死んだ思てるし、魂は使うてへん。刻印持ちもまだ2人おる」

 

「なら戦えるじゃないか! ここで逃げたらあの女にどやされる! 漁夫で2キルできそうなチャンスだ、これは!」

 

「何いってんねん! 攻撃能力あらへんくせに!」

 

 

 うるせぇ!その代わり防御不可攻撃と特質系3人前使えたんだぞ!

 『交霊』『模倣』『不死』とか最強のラインナップで!

 2人死んだがな!!

 

 しかし女に手は出せないか。ま、可能性だがここは教団、女だけでも300人はオーラが使える。シズクには悪いが囲んでタコれば怖くない。

 急ぎ部屋に置かれた緊急放送装置で呼びかける。

 

「《緊急事態!緊急事態!総員に告ぐ! シズク=ムラサキが錯乱した。至急取り押さえろ!シズク=ムラサキを取り押さえろ!最悪の場合殺しても罰則はない!彼女こそ司祭を殺し、300億を盗んだ犯人!背教者だ! 私も襲われ、僧兵が殺された! 至急!至急!取り押さえろ!彼女は『奇跡』の邪魔者だ! そしてコエンマに告げる! 彼女を生きたまま抑えられるのは君だけだ! 悪いが、私は教団を優先させてもらう! 総員武器を持て!直ちにシズクを抹殺せよ!》」

 

 ……と、コエンマならこれで動かざるを得ない。

 廃業の決まった教団と転生者2人、同時に処分できて超ハッピー。

 どう転んでもオイシイ状況。

 

 

「さて俺は行くが——臆病者はついて来なくてもよい!」

 

「「私達は神の盾。お守りします」」

 

「ち、ちょい待ってや!置いていかんといて!」

 

 

 俺に力は全く無くとも、数には数の戦いがあるのだよ!

 

 広い教団本部内だがシズクの足取りはすぐにわかった。

 廊下はすでに死屍累々。幼女に負ける男の死体がパンくずのように点々とし、女が逃げてくるのだから相当暴れてるらしい。

 何逃げてんだ。面倒だから全部殉教すればいいものを。

 

 不心得者どもめ、俺が救済してやろう。

 

 

「ギンコ、逃げてきたの順次()()()()

 

「え? いや、そやけど魂は限界までありますえ……」

 

「実験だ! 俺の手を握ってやれ! 空いてる手は……僧兵のどっちでもいい。お前、握れ!」

 

「はっ! 仰せのままに」

 

 

 そういって疑いもせず即座に手を取る僧兵。

 そうだよこれがあるべき姿だ。

 

 『操作系』なんて楽して獲得した駒は簡単に消える。

 

 軍隊の命題。死を恐れず、しかし生存本能のある、殉職も厭わない兵力。

 救いには命をもって報いるべし。それを叶えるこの力。

 

 この勝負、俺の勝ちだシズク。その裏にいる誰か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おうおうやってる。派手に臓物ぶち撒けてるねぇ! 一杯やるからジュース持ってこーい」

 

「御身、危険です下がって」「我々の後ろに」

 

「あ〜ん2人ともずっこいどすえ! うちの仕事なんどすさかい!」

 

「守れなかった奴は黙ってろぉ!」

 

 

 教団本部エントランス。三階層ブチ抜いて吹き抜けになってる上階から見下ろす気分は蓮池の辺りお釈迦様。下は地獄より地獄してるが蜘蛛の糸垂らす気にはさらさらなれない。

 感想は一言、「何あの人間ミキサー?」

 

 近接しかできないようだが全方向から襲いかかる武装教徒を瞬く間にミンチにしているシズクちゃん。

 あなた『具現』ですよねえ?

 操ってるやつも『操作』か『放出』ですよねえ?

 百歩譲って『憑依』とかの『特質系』でも、『強化系』並みのオーラ量とか人間じゃねぇよなぁ……

 

 どうやって倒すか、俺ワクワクしてきたぞ!

 

 

「あ、教祖様!」「なんだって!?」「教祖様!」「教祖様!」「教祖様!」「どうかお救いを!」「逃げ場がありません!」「このままでは我々みな死んでしまいます!」「どうかお助けを!」

 

 

 しまった身を乗り出しすぎて厄介なのに見つかってしまう。

 おのれ信者ども、何休んでる。お前らはもう死ぬことが俺の為なのだ。殉教しろ殉教。聖者だぞ!

 

 しかしそうか、出口はここ一箇所だから……

 よろしい、ならば遊んでやろう。

 シズクの中の人よ。お前のポリシーでなぁ!

 

 

「聞け、皆のもの! シズクは何者かに取り憑かれ、操られている! 怪力も全て悪魔の仕業だ! だが、その悪魔はどうやら女には手を出せないらしい! そう聞いたが、どうだギンコ?」

 

「その通りどす! その子はどないなわけか、僧兵の男だけ殺し、女には一切手を出しまへんどした!」

 

「心苦しいがここは、女を前に、男は後衛で陣を組め! それしかない!」

 

 

 流石に神の声だけあってすぐさま聞き入れる信者達。そしてシズクの動きが目に見えて悪化した事で、不安そうな顔も蛮勇に一色に染まる。

 あらあら本当に女には手を出さないのか、死者が0になった。ここまで極端なのはいっそ()()。それもドグマ。

 制約と誓約にしても、何人いるかわからない女転生者をど返しした能力。

 

 女性解放(フェミニスト)、ならシズクを手駒にしないだろうから男性嫌悪(ミサンドリー)だろう。

 だったら()()()()()()()()()

 

 しばらく膠着している最中、ふと、ここに寄ってくる足音が喧騒の隙によく通った。

 

 

「ようやく見つけたぞシズクちゃん! くそっ!遅かった!死者がこんなに—— もうやめるんだシズクちゃん!」

 

「遅いぞコエンマ。それにそいつはシズクじゃない。 誰かに操られている。シズクの意思を無視してな」

 

「な、教祖……どこだ!? 上か! やはり敵は転生者なのか!?」

 

「らしいなぁ。 酷いやつだ!自分のために、シズクの手をこんなに血に染めて…… 俺は敵を許せねえよ! くそう!俺に戦える力さえあれば!」

「き、教祖はん?」

 

 

 落下防止の柵を叩く俺の姿をしらけた目で見るギンコ。おう俺が義に駆られて熱血なセリフ吐いちゃいかんのか? しょうがねえだろ、敵地攻撃能力ねえんだから。

 それに、独善系コエンマ君のエンジンをかけるにはこれが1番。

 なあそうだろ、松ッ!!

 

 

「お前もか、転生者!! どうして他人を都合よく操ろうとするんだ!! 能力で心を歪めて、それが暴力だと、やっちゃいけない事だとなぜわからないッ! 俺が、俺が修正してやる!!」

 

 

 よっ! 言ったれ言ったれ!

 燃え盛る義憤に女の壁(ウォールマリア)を超えて飛びかかるコエンマ。そこからは互いに殴る蹴るの応酬が続くが……アイツわかってんのかな、体はシズクのだぞ?

 

 

「この卑怯者が! 少女の陰に隠れて!自分は汚れずに他人を貶める! それどころか無実の人まで殺めて、貴様は最低だ!人間じゃない!畜生にも劣る! 到底生かしてはおけない!」

 

「《くっ……! 言わせておけば好き勝手! お前ら男はいつもそうだ! 見た目が悪けりゃバカにして、化粧して襲われれば、色気を出したからって…… いつもいつも自分の中で完結しやがって! 卑怯なのはお前だ!持ち味を活かして何が悪い!》」

 

「し、シズクが喋っただと!?」

 

 

 そりゃ喋るよ。中身違うんだから。てかシズクだって普通に喋るよ。

 でもこれでミサンドリー確定!お前は今からただのおもちゃだ!

 

 

「コエンマ!そいつ……どうやら過去、前世で男性と一悶着あったらしい……だから無罪にはならないが、()()()()()!」

 

「教祖!? だがコイツは——」

 

「ああ()()()()。その過去の傷は筆舌にし難いだろう。()()()()()。 だが所詮、世界が変わって、なんでもやれる力を得た結果がコレ。あんたも()()()()()()()()()()()()()()()()()!この()()()! ()()()()()()()()()()()、貴様のそれは()()()()()()()! ()()な奴め——」

 

「《ぉぉぉぉおおおおおおお前お前お前お前お前オマエオマエオマエ!オ゛マ゛エ゛ェェェェェェェエエエエエエッ!! よくも、そんな事をッ!!》」

 

 

 うわぁ、思った3倍反応がいいこの人。シズクの喉が潰れる勢いだ。原作始まる頃には超ハスキーになってそう。やめてあげなよ。

 

 

「《許さない! 男なんてみんな!みんなみんな死ねばいいんだ! ……やってやる!勝って世界からケダモノを消して、女だけの清浄な世界にしなきゃ!私が!》」

 

 

 しかしバトロワの駒としては結構な逸材だ。優勝に賭ける思いが凄まじい。

 妄念に取り憑かれた人間なんて初めて見た。ガチの狂信者だこの人。

 これは生者50側だろうな。俺が担当なら選ぶもん。

 

 時に、『念』とは生命エネルギーだが、『思い』の力でもある。無垢のエネルギーに破壊や強化の指方性を持たせる過程が感情と連動してるから、つまり激しい感情で強い力が呼び覚まされる。キレると凄いって事。

 

 現状でもオーラ量凄いが、狂信者のガチ切れでどこまで力が出るか、俺は見たくてしょうがない。

 

 

「黙れキチ◯イ。アバズレ淫乱ドグサレビッチが!」

 

「————ッ」

 

 

 その瞬間エントランスを『奇跡』並、つまり信者数十人分にも匹敵する濃密な負のオーラが満たし、シズクが消える。

 と思ったら瞬きの間に俺の前に。

 すげえ、ワープしやがった。高等技術だぞ。それを他人の体で——

 

 

「お前は、死ね。今」

 

 

 しかも速度も上がってる。筋肉や神経、全く反応できないまま冗談みたいなオーラで強化された拳が、俺に。突き、刺さる——

 

 

「教祖!?」

「教祖はん!!」

 

 

 その声はさながら悲鳴。「ばちーん!」と吹き抜けに響く乾いた音に、俺は転がった。

 

 

 

 

 

 

「痛ってー!超痛ってー! 女児パンチの癖に死ぬほど痛いんだけど!?」

 

「「「は?」」」

 

 

 それはもう痛みのあまり転げ回る。なんだこの威力!?操作系の身体操作も侮れねえわ!

 

 

「な、なぜ死なない!? どういう事だ、言えッ!」

 

「おうおう人を殴って「言え」はねえだろ! 「教えて下さい」——こうべを垂れてつくなりながら、靴を舐めて言って貰おうじゃねえか!」

 

 

 熱い額を抑えつつ、涙ながらに訴える。

 俺だって馬鹿じゃない。そうそう何度も死にたくないし、煽るなら()()()の対策ぐらいしている。

 

 確かに俺には攻撃能力はない。

 

 『俺のオーラは無色透明(ノンリーサル)』から進化した『原初の色彩(イノセントオーラ)』でも同じ事。ただし肉体へ無害なオーラから、他人に拒絶されず流し込めるところまで無垢で純粋になったことで、感情さえあれば俺のオーラは他人にも使える。というか他人色に染まる。

 そしてこの時俺と相手はオーラで繋がっているわけだが、意図的に相手に『侵食』を許し、相手色に染まりきればどうなるだろう?

 

 まさか殺す勢いで自分を殴る動物はいない。

 

 それが生物である以上“自死”を防ぐために殺意は削がれる。殺意がなくなれば、連動してオーラも消える。

 タイミングさえ合えばインパクトの瞬間、念を無効化できるのだ。さらに——

 

 

「今だギンコ! オーラでお前とシズクを繋げた! ()()()()()やれ!」

 

 

 本来自分を始点にする能力も、俺が“誰か色”に染まる事で一時的にソイツになれる。

 触って発動するなら、俺は色の主の手となり。目視なら目。会話なら口と耳になれる。

 

 他人の能力は使えない。ただ、他人に使われる事はできる、とんでも他力本願能力だ!

 

 虚妄と共に死ね、ミサンドリーの転生者!

 

 

「あきまへん教祖はん!一個しかあらへん! これシズクちゃんのしか吸えしまへん」

 

「あ、やっぱり!?」

 

「チィ——ッ!」

 

 

 足元でギンコ、俺、シズクと繋いでいたオーラが一瞬銀色に染まるが、目論見は失敗。流石に操作対象から本体の魂は持って来れないか。

 そして慣れるまで時間のかかるおぞましいギンコのオーラに危機を感じたのか飛び退くシズク。だが、その勢いにさっきまでの爆発力はない。

 既に感情は一度リセットされてるからな。

 煽っておいて瞬間冷却する能力。うーん、これはウザい!

 

 前向きに考えよう。

 もっかい煽れるね!

 

 

「悪いがもうお前は俺に勝てない! 女児の体を使ってる限りな! そして俺はお前と一瞬繋がった!そう、男と貫通しちゃったの……それはもう心の深いとこでオーラとオーラがくんずほぐれつ…… 悔しいでしょうねぇ、あなたの感情とか諸々伝わって来ましたよ。どうです、「汚れちゃった」とか泣いてみますか? ()()()みたいに」

 

「《こ、この変態糞虫がぁあッ!!》」

 

「あ〜痛、そこそこ痛いパンチだ。 でも嘘。流石に記憶までは読めませんでした。 が!シズクのオーラに干渉してる、あなたのオーラは辿れましたよ? 逆探知って奴」

 

 

 ()()の能力が発想としては面白い構造をしていたので、触れた時に大凡が掴めてしまった。

 放出系による瞬間移動、具現化系による念空間、そして操作系を絡めた『対象強化式0距離操作能力』。それが正体。

 

 能力は大まかに2つの要素で構成されているのだろう。

 『念空間』を介して2点間をつなぐ『小窓』を作る能力。

 そして小窓を通して対象を操作、身体強化する能力だ。

 

 きっと常時は出口を絞り、少量のオーラで操作してあたかも自我があるように見せ、必要とあらば全開にした小窓から意思を奪うほどの『操作系』、そして大人を殺せるほどの『強化系』オーラを流し込み操るのだ。

 

 通常時でも絞った小窓は空いてるわけだから、それが宿主の普通のオーラに見えてもおかしくない。

 無謀な遠距離強化も、小窓を介して実質ワープ。ゼロ距離で強化してるのと変わらない。

 あと仕草から、五感は対象にリンクしてそうだから複数同時操作はさぞ辛いだろう。

 

 こんなん入信前からやられて気づくかよ!

 

 あれ、てことはシズクの両親も操られてた可能性が……!?

 と、ともあれ!流し込んだ俺のオーラは小窓を逆流し、本体まで届いた!

 長所が仇になったな!

 

 

「コイツの本体は向かいのビルの4階ぐらい、()()()()()()に居た! 女だ、気合で探せッ!!」

「そない指差されても……」

「どこだよ!? 無茶言うよ全く!」

 

「《マジかコイツら私の居場所—— ふぁぁ……よくねた あれれ、教そさま? なんでここに? あれ、わたし今まで何やってたんだっけ?」

 

「完全にリンクが切れた!? シズク捨てて逃げる気だ!追え追えー!」

 

 

 残存兵力、その他信者を伴って向かいのビルにカチコミかける。

 ホテルを内包したオフィスビル。まだ防災設備なんて無い時代だ1階を押さえれば袋小路でしかない。

 コエンマと女衆は階段。男は電力とエレベーターを封鎖。シズク、ギンコ、僧兵ズは俺の護衛。

 各々役割を持たせ、人払いをする。

 

 そして残るは手駒、原作キャラ、全回アイテム×2の4人だけとなった。

 

 

「じゃ、ギンコちゃん! そこの柱焼き切っちゃって!」

 

「え!? そないな事してええんどすか!?」

 

「50階建ての高級ビルディング。連中には過ぎた墓標だがちょうどいい! アビスの集いも今日限りだ!」

 

「え〜、おうちなくなっちゃうの、教そさま?」

 

「お引越しするのよシズクちゃん! さあ、僧兵は無理だったが『原初の色彩(イノセントオーラ)』で()()()()()()()()とお前ので最大火力を見せてくれぇ!」

 

 

 他人に使われる能力だからこそ、俺はギンコの一部として背中を貸し出した。

 ()()()()女もこれで成仏できるだろう!

 

 

「そやったらええどすけど…… ほなうちの限界やった魂10の威力、ちゃんと見とって! 魂魂椪(こんこんぽん)で業火絢爛!『生命励起の大号令(ソウルリボルバー・テン)』フルバーナー!!」

 

 

 彼女が手をかざすと蠢いていたおぞましい何かが掻き消える。瞬間、まさに太陽が顕現したと形容できる、失明しそうな程の膨大な熱と光が地獄の封を切ったように溢れ出した。

 閑静な日常は一瞬で塗り替えられる。

 あてられた柱はまるでロウでも溶かすように痩せ細り、顕になった鉄筋もすぐ赤熱融解。直線状はおろか、手を振るった事でひと()ぎにビルが焼き切れ、外の風景が見えてしまう。

 

 

「「「おお〜」」」

 

 

 全員そろって感嘆してる間に崩壊するビル。

 思い出したように重力に引かれた構造体は、思いの外ゆっくりと、まるで非現実的な光景を作り出していた。残るのは50階分の瓦礫の山。

 これで2キルでき——んぁ?

 

 

「う……ぐ……一体何が……!? ビルが崩れたの……か みんなぁ……!」

「く、くそが…… 私の崇高な計画がこの程度でぇ……!」

 

 

 あの中で生き残ったのか瓦礫から這い出したコエンマと……なんだ、シズクに似ている少女?

 

 

「あ、おねえちゃんだ! やっほー」

「お姉ちゃん!? そうか転生先にシズクの血統を……」

 

 

 クルタ、ゾルディック、フリークスとかもっと有力なのあるだろうに、なんてマイナーな。しかしこれから殺すんだけど、そうかお姉ちゃんか……

 

 

「シズクちゃん。君のお姉さん今ここで殺したいんだけど、ダメかな?」

「えー、お姉ちゃんを? んーでもまあいっかな! お姉ちゃんよくいじわるするし、教そさまとちがってごはんもくれないんだよー!」

「よし後腐れない! やったれ!」

 

「はーい! 魂魂椪(こんこんぽん)で業火絢爛!『生命励起の大号令(ソウルリボルバー・ワン)』フォイア!」

 

 

 阿吽の呼吸で放たれる火球。さっきとは違い野球ボール大だが、それでもかろうじて掠める程度に避けたシズク姉。しかし着弾と同時に膨れ上がった事で片足の膝から下が消失した。

 もう逃げられないぞ。

 

 

「ほなとどめ。魂魂椪(こんこんぽん)で——」

 

「少し待て! ちょっと話す」

 

「ちょお!? 操作されたらどないすん気!?」

 

 

 安心しろ!俺の攻撃力は0だ!

 

 

「な……んの……ようだ。くそゴミ虫……がッ!」

 

「いやちょっとキスしておこうと思って」

 

「はぁッ!? てめっ何を——」

 

 

 見た目の5分の1くらい軽くなった少女を掴み、有無を言わさず唇を奪い蹂躙する。少々血生臭いが、まあ見た目だけはいいのでお得かなぁ?

 しばらく氷ついたが、ハッと気づいたように突き飛ばされ、少女は涙目で口を拭った。

 

 

「なんのつもりだテメェッ!!」

 

「なにって屈辱的だろ。男にベロチューされるの。 お前にとっては死ぬより辛いかもしれない。だからやった。 ま、こんなオナニー後のティッシュみたいなのに俺の初めて使いたくなかったが。おぇぇぇ……」

 

「————ッ! こ——」

 

「焼却」

魂魂椪(こんこんぽん)でフォイア!!」

 

 

 今度こそ完全消失。

 あの世で発狂してると思えば、こんなに面白いこともない。

 さて残るは何か言いたげな顔をしたコエンマだが……何気に生き残ってるし。

 羨ましい悪運だ。

 こういうのは今むきに殺そうとしても、何か失敗しそう。やめとこ。

 

 

「教祖お前……流石に最後のは」

 

「やりすぎだって?」

 

「……そうだ。 悪い奴は治せばいい。無理なら殺す。 でも、悪い奴だからって必要以上に苦しめるのは、ダメだ」

 

「……君は少しでも被害者の気持ちを考えた事があるか? あいつは司祭を殺した! 団員は全滅、挙句()()()()()()()()()君まで死ぬところだ」

 

 

 せっかく墓場に行ってもらったんだ。せっかくなんで罪も持って行ってもらおう。

 あの女がなんもかんも悪いんや!

 

 

「あれ? でもビルは教そ——ムグ」

「そうだね、本部ビルでは君も操られていた。 血の繋がった実の妹にこれだけしたんだ。相応の罰がいる。俺はそう思う」

 

「……そうか……残念だ。 君となら、一緒に戦えると思ってたのに……」

 

 

 そう言うとコエンマはどこか寂しげな背をして、夕陽に消えて行った。

 「一緒に戦える」か。正義気取るやつって敵がいないと生きてけないんだよね。やっぱヤバいやつじゃん。

 

 

「それにしても凄い人どしたね。教祖はんのことどう見とったんやろ」

 

「正義を為す同好の友じゃない? 節穴だが。 で、シズクはこれからどうする?」

 

「え? 教そさまといっしょじゃないの? おひっこしだってさっき……」

 

「でもこれから行くところ臭いし汚いし、多分暑いし辛いよ? それに俺こうやってよく不要物()()し。余程じゃないと信じちゃいけない奴だぞ」

 

「うちらはともかくシズクちゃんは自由やさかいな」

 

「うーん。 でも、生きてるってことは、今はやくにたつと思ってるんだよね? じゃあついてく!」

 

 

 身振りを加えて少し嬉しそうに。だが……

 感情表現は戻ったのだろうが、まだ俺には常時真顔に見える。

 ほ、本当にわかってんのかなぁ?

 

 

「ま、いいや。 それじゃあアビスの集い残党諸君! いざ参ろう、世界のゴミ捨て場、『流星街』へ!」

 

「「おおー!」」

 

 

 ここでの実験はもう終わり。

 初戦は白星。しかし1キル1デスの、グレーに違い白だ。そろそろ本格的に、俺の能力を開発しよう。

 そんな事を考えながら俺たちは『流星街』へと旅立った。

 

 あそこでできる『幻影旅団』。その知り合いに、なるために……

 

 

 

 

 

「ところでシズクちゃん、300億の小切手持ってなーい?」

 

「うーん…… ないかな!」

 

「ないか! そうかそうか! 金どうしよ……」

 

 

 

 しかしどうにも前途多難だ。

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