念能力者バトルロイヤル(更新停止中)   作:おヒマ?

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信じる心は無限大 信じる頃には無理限界(ロリコン覚醒編)

 この世界初のネットバンキング『カーバンクル』が安定稼働して数ヶ月。低温オーラにサーバが沈むタンカーの第一油槽改め、『第一電算槽』を見下ろしながら、ふと思う。

 

(これ、オーラの貯蔵できてるじゃん)

 

 いやその為に作ったと言えばそうなのだが、これはオーラを(とど)める為に作ったのであって、()めるのは予想外。

 もちろん再吸収すれば俺も凍るだろうが、つまり常温のオーラを貯めておけば有事に100%以上を引き出せる『オーラ貯金システム』ができるだろう。

 500円貯金も1年続けば18万。大概バカにできない数字だ。

 

 欠点は貯蔵槽の近くにいないと使えない事ぐらい。

 いや普通に致命的だった。

 

 シズク姉みたいに念空間を介すれば距離無限で引っ張って来れるんだろうが、俺の『放出』は持って4m(つーかこれが限界)だからなぁ。

 コンセントみたいにずっと繋げるか、いっそ念空間そのものを貯蔵槽にしてみるか……

 

 このアイデアは一旦凍結かな。低温オーラだけに。

 なんちゃって。

 

 

「んな事よりどうすっかなー。 ……まさかマチ=コマチネが居ないとは思わんかった」

 

 

 社長室(旧ブリッジ)でふんぞり返って頭を掻く。

 

 原作でも珍しい、回復に転用できる能力を持った少女。

 流星街出身だと思ってこの前にクロロにその所在を聞いたが、そんな奴は知らないとバッサリした返事が返って来たのだ。

 

 じゃあどこにいるんだよ!?

 

 「金もある、クロロとも仲がいい、このままなら旅団でその内会うでしょ? そんなに重要なの?」と他の転生者に思われそうだが、雑に千切られた腕を神経筋肉骨血管のほぼ全てを()()()()()、あとは自然治癒で治せるような卓越した技術を持つ少女だぞ。

 

 

「マジでどこにいるんだよマチちゃーん! お前が欲しい! 絶対絶対必要なのにー!」

 

「むぅ…… 教祖はんたらえらいその子にご執心どすなぁ。うちも回復能力持ってるのに、この差は嫉妬せざるを得しまへん。そらうちじゃあかんのどすか? なあ教祖はん?」

 

 

 思わず出た欲求に()()()()の声がした。

 なんだ居たのか()()。悪い、1人だと思ってたよ()()

 

 

「け、毛玉って……今は人化してるんやけど…も、もしかしてこの前の事根に持ってます? 許しとぉくれやす。あんなん親しさからの冗談かて——」

「あー悪い。俺バカだからその方言知らないし、何言ってっかわかんね」

「ちょ、教祖はん——!?」

「ヘブライ、ヒエログリフ、ヒエラティック、ヲシテ、変体ヲシテ、ルーン、アナイチ、アヒルクサ、ウガリッド、梵字は読み書きできても俺バカだからー。 あーもちろん俺より頭のいいギンコさんなら『再生』や『ダメージの移し替え』とは違う『縫合』『修復』の利点なんてわかるでしょーね」

「ぐぬぬ、凄い根に持ってる……。そ、そないなところで頭悪そうに見えるんどすえ? あんたに尽くす可愛い部下の、ちょいしたお茶目くらい流してくれてもええやん? ね?」

 

 

 ウインクまじりに言い切る毛玉。チロと出したさくらんぼのような舌は、妖艶で大人びた見た目と相反し、好きな人なら好きだろう仕草。

 

 

「確かに可愛い。だが残念。悪いが俺はロリコンなんだ。(かわい)くなって出直しな」

「——え゛!?」

 

 念を通して初めて知った一面に内容が内容なので(ひた)走っていいものか悩むがそれが俺の欲求だと言うなら従うのも止む無し。

 魚は水無しには生きられん。寧ろ俺の()が見つかってよかったと思おう。

 

 しかし本当にロリコンなのか。

 いざ自覚してみると何がロリコンで何がロリコンじゃないのか分からない。

 2次元的に結構なんでもイケるけど、それって単に悪食なだけだし。ロリがイケるからと言ってそれがメインターゲットじゃないとロリコンではないのではないか。

 

 そもそもこの世界にはビスケのように見た目を能力で幼く保つ個体もいる。

 そうなってくるとロリがイケるというのも※(見た目的に)という注釈が付くし、そもそもロリババアはロリータの定義からは逸脱するし、魔獣(ギンコ)なんて寿命からして人間と違う生き物も……わーなんだかややこしくなって来た。

 ロリって一体何なんだ!? 誰か教えてくれ!

 

 

 よし、こういう時は実験だな!

 オーラ調べた時みたいに一つずつ検証しよう。

 

 

「という事でCASE1:LLBBAから。 ギンコさんや。もうちょっと幼く、12歳くらいに化けてくれんかのう?」

「えぇ……う、うちはどう反応したらええんやろこれ……。ほな化けるけど——コポン! どぉですか?」

「凄い、妖艶なロリになった。 いやぁ、LLBBA(ろりばばあ)なんて純正からはほど遠いと馬鹿にしてたのに。がねぇ、いやぁ味わい深かったって感動しそう」

「ば!? ——ちょいそれだけはあかん!聞き捨てならへん! うちまだ300どすえ!? 食欲旺盛安産確実、繁殖適齢期真っ只中の!毛並みも艶やかでハゲもあらへんフカフカ()()()捕まえておいて! 人間で言えば2——うひゃあ!? わわわわわやめっ、やめて! ど、どさくさにどこいらってるんどす!? 乙雌(おとめ)の秘部をそう気安ういらわへんどぉくれやす!!」

()()()()()()()()()()。語尾で文句が長えんだよ」

 

 

 姿に精神まで引っ張られたか、いつになくよく喋るギンコはこれまた初めてみる夕焼けのような赤面で体を抱いて防御する。

 

 確かにフレッシュ。

 撫で心地のいい肋骨の上に乗った薄い肉の膜に寸胴ながら主張する丘陵渓谷地獄めぐり、果てはツンドラダイヤモンドクレバスを踏破して返る初々しい反応。

 新雪に跡つけたくなる衝動を感じるが——

 

 

「…………うーん、なんか違うんだよな。 期待外れ? よしもう戻っていいぞ」

「しばいたろか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——という事が朝あったんだけど、俺の幸福追求の為に協力してくれるかなシズクちゃん?」

「うん。さいきんお仕ごともないし、そうじも終わったからいいよー」

 

 

 流石はシズク。次の被験体だ。

 その心根は従順で素直、そして相変わらず表情が読めず、しかし混じり気のないロリ……

 

 どう見ても12歳未満じゃないか。これはロリではない。

 

 

「でも一応触っておこう」

「いやーん、教そさまのえっちー?」

 

 

 うん。結果はやはりと言うべきか。レーダに反応なし、電波をいなすつるペッタン。これがステルス爆撃機だったら万国が導入するだろう。

 感想は「体温が高い」くらいかな。羨ましい。

 

 俺もこれぐらい体温があった時は3徹4徹余裕だったんだけどなぁ……

 ひょっとして俺のロリコンて『若さ』への憧憬か?

 何にせよこれも違う。「もう行っていい」とシズクを自由にしてやった。

 

 が何故か動かない。

 

 

「…………」

「あ、あのシズクさん? もう行っていいんだよ? そんなに俺を見ても何もありませんが? あ、ひょっとご飯の時間?」

「それもある。 けど、さいきんわたしは知りました! お仕ごとしたら“おきゅうりょう“がもらえるはずです! なので今までの分“おきゅうりょう”がもらいたい。です!」

 

 

 誰だピュアなロリを主本主義で洗脳したバカタレは。程よく無給で使ってたのに。

 それに君を受け入れた時は宗教組織だったよね?

 労働じゃなくて奉仕。お給料は払わないぞ!

 

 

「……いいかいシズクちゃん。世の中には「ジドーロードホー」ってルールがあって、ここでシズクちゃんにお給料を渡すと俺が捕まっちゃうんだよ。お給料は二十歳からね」

「わー、ほんとうに教えてもらったとおりのこと言ってる。 えーと、そう言われた時は——」

「なんだそのメモ?」

「……教そさまが()()()()()()()した時は、そう! 「ではあなたを()()()()()()()()()()()()()でうったえます。いしゃりょうも払ってもらいます。さいばんしょにも来てもらいます。」で、いいのかなぁ?」

「ちょっと待て()()貸せ——ッ!! ……ぁぁあの毛玉野郎ッ!!」

 

 

 犯人はてめえかギンコ!仕返しに子供使いやがって。

 覚えてろ。馬鹿みたいに使うシャンプーとリンスに脱毛剤と染毛剤入れて冷水ぶっ掛けてやるからな。

 

 

「……そんなに金が欲しいのシズクちゃん?」

「これでもダメならさいしゅーしゅだん。さいごは“わめけ”って言われてる。 わぁぁぁ教そさまがぶったぁぁぁぁ—— あ、違う。これはたくさん人がいるところでやるんだっけ?」

「よし分かった!幾ら欲しいんだ!? 言い値を払おう! だからマジでやめてね」

「やたー! あのねあのね!このまえ行った町で、いつもは思わないんだけどすごくほしいなって思った物があってね! それがほしい!」

 

 

 どれだよ。

 

 シズク1人で買いに行かせる訳にもいかず、俺とギンコ(何故かまだ幼女形態)と僧兵ズの教団メンバーでお買い物となった。

 

 

 

 

 

 で、まさか欲しいものって——

 

 

()()かよ……」

「うん! このミドリ色の、()()()()()()()()()()()()が、すごく欲しいの! ……もしかして、高くてダメ?」

「いや余裕で買えるけど」

「やった!」

 

 

 余裕で買えるが……これが歴史の『修正力』というものだろうか。ショーウィンドウ越しのこの出会いに俺も神秘を感じた。

 嬉しそうに店内へ駆け込むシズクは僧兵に任せて、そのまま金魚掃除機と睨めっこする。

 

 それはまあ、掃除機と言っても玩具屋に飾られているような、言ってしまえば女児用知育人形の付属品でしかない。()()()()()の時の赤ちゃんの代役で母性を鍛える『お喋りポ◯ちゃん』みたいな奴だ。

 

 一見ハンディタイプにも見えるがそこは玩具だから。

 プラスチックで構成された各部位がジョウロのように纏まっている。そしてその本体と吸口にそれぞれ鰭と目玉が取り付けられ、バランスからそれが出目金(デメキン)の意匠だとわかるのだが……

 

 妙に、グロい。

 

 これ本当に女児狙いなんだろうか。

 その他付属品(アイテム)にも動物を模した意匠はあるが、これだけ本体と吸口の両方に目がついて4つ目のモンスターになっている。

 そして()()は……

 

 

「やったやったー!」

 

 

 中ではシズクが大事そうに箱を抱えている。随分デカいな。まあ普通バラ売りしないか。

 店から出るなり包装は無残に裂かれ、目的の掃除機だけが手に取られる。

 興味のない本体その他には目もくれない。流石、子供らしい残酷さだ。人形が泣くぞ。

 

 

「見て見て教そさまー! こーのー子ーが“デメちゃん”! なんでも吸い込む生きたそうじきなんだよー!」

 

 

 そしてさらに恐ろしいのは子供の発想力。

 なんだよ、もう『能力』完成してるじゃないか。

 

 もちろん念に目覚めた訳じゃない。ただ将来的にシズクが使うだろう能力と奇跡の一致をしてるのだ。というか順番的には幼少期の妄想をそのまま能力にしたというのが正しい。

 

 能力名はそのまま『デメちゃん』。具現化系。

 念と生き物以外を無尽蔵に吸い込みたまに「ギョギョ」と鳴く生きた掃除機。

 

 そもそも何を思えば掃除機を具現化しようと考えるか気にはなっていたが納得。しかし何故掃除機を欲したのかは永遠の謎だろう。俺も子供の頃はよくわからない物を欲していた記憶がある。

 

 そう思えばそう有る。子供の想像力はちょっとした小宇宙だ。

 大人になると常識や固定観念に邪魔される。ある意味『具現化系』を鍛えるのに最も適していると言えるが、この歳で目覚める難度と矛盾している。

 

 俺なら安全に目覚めさせられるが……よしておこう。柵とか社会とか無関係な今が1番楽しい時期だ。邪魔するほど野暮じゃない。

 

 

「デメちゃん、吸い込んで!」

「《ギョギョ》」

 

 

 一方でシズクは年相応にここが路上なのも気にせずごっこ遊びを始め——おい待てあの『デメちゃん』今動ごごごごごごごごごごごご!? マジで吸い寄せられるんだけど!? か、体が浮く!

 

「「教祖様!?」「教祖はんが浮いとる!?」

 

 と、とりあえずギンコ(こいつ)掴んで。

 よし! コイツは()()()だ。吸い込まれない。

 

 

「なんで『念』に目覚めてんの!? てかお前今何を吸い込もうとしてる!?」

「教そさまー!」

「生き物が吸えるのか!?」

「の“ようふく”ー!」

 

 

 やめてね!?

 必死の説得になんとか吸引力が収まったところでゼーハーと胸を撫で下ろす。子供ってこういう時マジで容赦ないよな。

 だから『念』も見送ってたのに、一体どこで目覚めたんだ。

 

 

「まさか……、おいギンコ」

「ちゃう! うちは言われた通りなんも教えてへんって!」

「しかしお前には背教の前科がある」

「は、背教……!? そないに言うんやったら聞いたらええやろう!」

 

 

 ではそうしよう。俺の取り調べはキツいぞ。

 飴とチョコで口を割らないガキはいないんだ。

 

 

「なあシズク。俺の指先の()()が見えるか?」

「うん。「デメちゃんすごいね」ってかいてある。ありがとう! でもこの()()()ってそんなこともできるんだ。教そさますごーい!」

「やはりオーラも見えるか…… その()シズクからも出てるけど、いつから見えるようになった? ん?」

「えーっと。 教そさまに()()()()()()()()()()でカチコチにこおらされた後から!」

「ア゛ッ!? ——よし!じゃあ今度からこの()を使う練習しようか! もっと凄い事ができるぞー!」

「すごい事!? 教えて教そさまー!」

 

「……教祖はん?」

 

「ごめんよぉギンコ。信じてだけどぉ、何より信じてだけどぉ、それを信じる俺自身が信じられなかったんだよぉ。お前は疑っちゃいない。自分を疑った弱い俺をぉ許しておくれぇよぅ」

「あの教祖はん。改宗ってどうやるんどすか?」

 

 

 あっ、あっ、待って、見捨てないで。お前みたいなヤバイのを野に放てない!

 ハンター協会に見つかったら殺されちゃう! 主に製作者(おれ)が!

 

 

「待ってお願い早まらないで! わかった、なんでも聞こう! 要求を言いたまえ! だから捨てないでぇぇぇぇええええ!」

「ちょお、こないな人前で縋り付いて、正気どすか!? すごい恥ずかしいさかいやめてほんまに!」

 

 

 それが狙いだバカめ!

 俺に恥という概念はない。やめて欲しくばここに残るんだな!

 

 

「わー、教そさま捨てられちゃうんだ。かわいそう……。 あ、そうだ。教そさまにあげようと思ってプレゼント買っておいたんだ!これで元気出して?」

 

 

 まあシズクちゃんのなんて優しい事か。差し出されたのは……何コレ?星形グラサン!?しかもフレームから何までピンクじゃないか! 買う奴初めて見た。

 え、コレがプレゼントなの!? どんなチョイスだ!?

 

 まあ()()()けど。

 戸愚呂兄(4歳)に星形グラサンをパイルダー、オン!

 

 

「ちょい待って。あんなん小さな嘘やさかい。な? やさかいそれ止めよか? ほん——ふふッ、ホンマにその色眼鏡付けふふッ——だめだ笑うてまう。その眼鏡はあかんって!」

「お前人のプレゼントにケチつけんのかよ。最低だぞ。 シズクも悲しいよなあ?」

「あ〜そらかんにんな。そやけどこら流石に——ふふふッ! あかん! あかんてやっぱこれ!」

「うん。やっぱりおも白い!」

「「え?」」

 

 

 2人して、いや1人と1匹してその発言に凍る。まさか確信犯だったとは。

 子供の発想にはホトホト驚かされるばかり。

 しかし丁度良かったのだろう。時に子供は想像もつかない神がかり的なタイミングを運んでくる。今がそうだった。

 

 

「ちょっと待ちな。そこの5人。 の、お前、転生者だろう」

 

 

 通行人Bくらいに思い自然と脳が除外していた野郎に呼びかけられる。

 攻撃前に宣戦布告することは近代戦争の常識であるが時代劇等「やあやあ我こそは」と名乗り上げるのを見ると「言う前に殺しに行けよ」と思ってしまうもの。

 端的に俺は冷めた。

 

 どうして攻撃前に「俺は転生者だ!」と自己紹介するのか。

 シズク姉を見習え!バトロワ的には1番まともだったからなあいつ!

 

 しかし名乗りをやめて堂々奇襲を始めた開祖義経(よしつね)は兄にすら「コイツやべぇな」と殺されたことを思えば一種の自己保身かもしれない。

 

 何にせよ『俺』『コエンマ』『シズク姉』『ルシルフル2〜7』に続いて記念すべき10人目の転生者だ。

 呆れつつも不意に目を上げ——奪われる。

 

 

 うわめっちゃ可愛い……

 

 

 それを通行人Bという以上Aがいる。そのA、女の方を仮に『A子ちゃん』とすればB野郎も彼女も大体シズクと同年代。つまり俺とそう変わらないように見える。つまり幼女に他ならず、しかしこれが12、3歳を迎えたならばどうだろう。

 想像するだけで自身の脈がいつになく高まるのを感じる。

 

 ライオンのような猛獣でも子供なら可愛く見えるのはなぜか。

 実際は肉食でもある所詮白黒の熊に他ならないパンダが人気なのはなぜか。

 それは元来人間の中に赤子を可愛がる本能、小さな体に大きな目、大きな頭の独特なバランスを保護対象として気にいるようできてるからに他ならない。

 

 しかし生物として成熟するに従い繁殖欲というのも出てくる。俗にそれを『魅力』と。

 保護欲と繁殖欲。一見相反するもこの2つはある時期同時に満たせる儚くも短い月下美人のような『黄金期』が到来するのだ。

 

 

 

 まあ長々前置きしたが、要するに。

 

 俺はロリコンを独覚した

 

 シッダールタはキレていい。

 

 

 え、待ってくれ。これはA子も殺さないとだめなのか? だったら最後にしたいのだが……

 

 

「教祖はん、コイツはひょっとして——」

「おっと相談はなしだぜ()()()?」

「……あの、えっと、誰か知らんけど、うちに言うてるん?」

「おいおいお前以外の誰がいるんだよ。 ただの銀髪少年かと思ったが、『転生者』にお前は反応した。それがお前が()()()だって証拠になった! 今!」

 

 

 クラマ……?

 何を言うのかB太郎。ギンコを見ながらそんな事を……あ〜なるほど。

 

 恐らくB太郎は“幽白”を知っている。

 しかし原作デザインならいざ知らず星形グラサンかけた愉快なもじゃ髪を戸愚呂(てんせいしゃ)だと分からず、代わりにギンコを『妖狐』の力を解放する事で銀髪狐耳を生やす美少年『蔵馬』だと思ったのか。

 幼女形態で来たのが悪さをしたな。その歳じゃ性別見誤ってもしょうがない。

 

 なんたる僥倖。それで行こう。

 

 

「悪いけど兄はん人違いどすえ。うちらは——」

「いや、もう無理だ。B太郎(コイツ)はやべぇぜクラマの兄貴!」

「ちょ——ッ!? 教祖はん!?」

「そうさ! この人は我らアビスの集い、その教祖である聖地キョートから降臨なさったクラマ様だ! 本気を出せば貴様なぞ造作もない! ——時間は僕が稼ぎます! その内にキツネ耳を!」

「え、ほんまに何言うてるかさっぱり——」

「力を解放してキツネの耳を出して下さい! 早く!」

 

「黙ってパワーアップなんかさせるかよッ!」

 

「や、やらせるかよっ—— 俺だって!」

 

「マヌケなグラサンして、クッソ遅せぇぜ! ザコはひっ込んでな!」

 

 

 じゃあ引っ込んでます。うわぁ〜や〜ら〜れ〜た〜……!

 代わりに蹴られる哀れなギンコ。最早交渉の余地もなと悟ったのかB太郎を連れて駆けて行く。1on1だ、勝ったなこりゃ。

 

 で、置いてかれるA子。対してこちらは4対1。

 よっぽど強いのかあの男がバカなのか。恐らく後者だろう。

 

 でもバカって逆に怖いよなぁ。念と幽波紋はキレキャラが強い感じあるし。

 

 

 

 それにしてもA()B()は目鼻顔だち頭髪のカラーまで一緒だから血族っぽい。ならばこっちは原作キャラの可能性が高いが……こんなのいたか?

 めちゃくちゃ整った顔だちに良いとこ出のお嬢様みたいな気品。髪はピンクと紫の中間のような色で星雲のように見るものを引き込むストレート。ビスクドールが来てそうなゴテゴテした服も実にグッド。

 

 やっぱ見た事ないぞこんなの。

 色違いのネオン=ノストラード? 歳が違うか。

 

 案外こっちも転生者——ではなさそう。むしろB太郎突然の凶行に困惑しきってる様子。

 野生のモブ美少女と信じてちと脅してみよう。

 

 

「おうおうおうおう! お前のツレ、よくも俺の部下を蹴っ飛ばしてくれたな!! この落とし前はどうつけるつもりだ、ああん?」

「ぇ? ぁ、ぁ……あの、あ、兄が突然あんな事をしてほんとうにゴメンなさい! いつもはや、優しくて良い人なんです。 でも時々「テンセーシャ」を倒さないとって……よくわからない理由で喧嘩を……その」

「わからない理由で蹴られました。じゃあしょうがないね。 ってなるかボーケ!! まず謝罪だろ! 年齢と名前、体重、スリーサイズ、電話番号とメルアドを教えろぉ!」

「ひぃ! ごめんなさい!」

 

 

 涙目も良きかな。本当にわからねえ。誰だコイツ。

 記憶の引き出しを必死に漁るが答えは出ない。

 

 当然だ。

 彼女が口にしたその名前に、俺は身を震わせる。

 

 

「わ、わたしはマチ。 マチ=コマチネ。 兄のピピン=コマチネが大変な事をして、ほんとうにゴメンなさい!」

 

 

 マチ……マチ……マチ……マチ=コマチネ。

 それはまるでこの先幻影旅団に入るマチ=コマチネに似ている名前じゃないか。そういえば目の辺りとかよく似ている。

 

 

 まさか本人?

 苗字、名前、髪の色目つき顔立ち——うん、まあそこまでは良しとしよう。そこを良しとするならばなるほど多分これは俺の探してたキャラである。

 

 そんなわけあるか!

 マチ=コマチネといえば性格と目と勘が鋭く隠した恋心に触れそうになるとスンと静かになるサバサバ系ツンツンスンデレ娘。断じてこんな

 

 

「え、え、えと、あの、それで、電話とメールはもってなくてあの……」

 

 

 断じてこんなパステルカラーに身を包むオドオド系ファンシーガールではない。

 なんだこれは!?

 

 これもまた『原作改変』とでも言うつもりか!?

 歴史の修正力さん仕事して!

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