「……言峰綺礼?それが今回の聖杯戦争の審判役の名前なのか?」
「そうよ。ちなみに私にとっては腐れ縁で……何よ?どうかしたの?」
「……いや…何でもない。」
現在俺は遠坂の案内で審判役のいる冬木教会に向かっている最中である…
……先の展開が爆弾を落とした俺自身にも目まぐるしかった為俺も忘れていたがそもそも聖杯戦争の参加者は一度は審判役に会いに教会に行く必要があるのだ。
……信心深くなんて無い俺は当然教会の場所なんて知らずこうして不本意にも遠坂に案内してもらっているわけだ。
……先の返事は保留のままだ。仮にも敵対する可能性の有る奴とサーヴァントの護衛が着いているとは言えこうして肩並べて歩けるのはどういう心境なのかと俺は呆れた。
……さて、先の事を考えないようにする為かやけに積極的にどうでもいい話を振ってくる遠坂に適当に相槌を打ちながら俺は先程引っかかった事を考える。
言峰綺礼……俺はその名に聞き覚えがあった。第四次聖杯戦争中…義父、衛宮切嗣が魔術戦(まあ切嗣のやり方は馬鹿正直に魔術戦を行なうとする魔術師を近代兵器で殺傷すると言う魔術師からしたら外道のやり口だが)ではなく前代未聞の近接戦闘にて真っ向からぶつかり勝利した相手だ。その後切嗣の話では確かにそいつの心臓を撃ち抜いているらしい…
……心臓を撃ち抜かれた人間が生き残るのは難しい……確率はゼロでは無いし何ならあの時はかなりギリギリの状況だったそうだから切嗣が僅かに照準を外した可能性はある……
……会って確かめる必要はあるか……チッ!ただ挨拶をするだけなのにまるで……
「衛宮君?着いたわよ」
「……ああ。すまねぇな、遠坂」
いつの間にか目的地に着いていたらしい。俺の目の前には夜の闇の中聳え立つ建物……教会があった。
「ねぇ、悪いんだけど衛宮君一人で行ってきてくれない?私長い付き合いではあるけど未だにあいつ苦手なのよねー…」
願っても無い。奴の正体が俺の考えてる通りなら今の時点では遠坂は役に立たない。
「……ああ、分かった。……セイバー、悪いんだが外で待っててくれ。」
俺は先程から何故か霊体化(多分本当は生者だからでは無かろうか?)の出来ず姿を隠すためレインコートを羽織り無言で着いてきていたアルトリアに声をかけた
「……分かりました。」
やけに間があったが……第四次聖杯戦争の事はアルトリアからは自らが切嗣のサーヴァントだった以外何も聞いてない。話してくれるかは分からんが後で情報の共有を行うとしよう……まあアルトリアからも協力の意は得られてないが。
俺は冬木教会の門を押し開く。礼拝堂の中をスタスタと歩くと黒衣の聖職服を着た男が見えて来た。
「あんたが言峰綺礼…さんか?」
「そうだが…礼拝の時間はとっくに過ぎている。この様な遅い時間に我が教会に何の用かな、少年よ。」
「……新たに聖杯戦争の参加者になった者だ。その報告に来た。」
「ほう?では、聖杯戦争の審判者として新たな参加者を歓迎しよう。ちなみに君が今回最後の参加者だ。」
両手を広げ芝居がかった演出をかます男
「では聖杯戦争の説明を「要らねぇよ。」そうかね?」
「俺は聖杯戦争の話とは別にあんたに聞きたいことがあったんだ。」
「……何かね?私で答えられることなら何でも答えよう」
「俺の名は衛宮士郎。あんたこの名に聞き覚えは無いか?」
今まで徹底して表情の無かった奴の顔に変化が訪れる
「……懐かしい名だ。では、君は衛宮切嗣の…」
「息子だよ。義理の、だけどな」
奴は笑っていた。……元々そういう気質なのかもしれないが俺はその笑顔に覚えがあった。
「あんたにもう一つだけ聞きたい。……あんた、人間か…?」
「……どういう意味かね?」
「言葉通りだよ。」
「どう答えれば君は満足するのだ?」
……見透かされてるの、か?
「……いや…良い。…… 俺は聖杯戦争には参加する。願いは大聖杯の破壊だ。じゃあな。」
背を向け扉に向かう
「衛宮士郎。」
「……何だ?」
「いずれまた会おう。」
「ああ。その時は親父の代わりに俺が殺してやる。」
俺の言葉により一層笑みを深めた奴から目を反らし、俺は扉を開け放った…