「…ん?」
黙々と出された問題を解いていると、何やら違和感を感じた…コイツは…
「何だ?どうかしたのか?」
「…いや、見知った気配を感じた気がしただけだ…多分気の所為だろう。」
「……何でも良いが気の所為だったなら手を動かせ、今日中に終わらないぞ?」
「へいへい…分かりましたっての。」
「料理を教えて欲しい?」
「ええ。」
…僕はキャスターと葛木の世話になって生きる事になったわけだが、愛玩物としてただそこにあるのは僕も受け入れ難いし、魔術のプロフェッショナルとも言えるキャスターが身近にいる上、仮初の肉体とは言え魔術が使える以上…正式に教えを受けたいと考えるのが普通だ…
だが、もちろんタダという訳には行かない…その代価として、今僕がこの家にあった食材を使って適当な物を作ったら…キャスターの方から頭を下げられる事態になった。
「…そう言われてもね…コレはただ…衛宮が作った事のある料理を覚えて限りで味を再現して、物足りないから僕が勝手に少し手を加えた物だし、元々特別得意な訳じゃない…衛宮に習って来いよ、その方が早い。」
「…作れる人間がすぐ身近にいるんだから、そちらから習うのが普通でしょう?」
「だから…オリジナルは結局衛宮なんだよ。」
「…教えてくれるならきちんと弟子として面倒見るわよ?」
チッ…その言い方じゃあ断れないじゃないか。
「分かったよ…ただ、僕はあまり人に教えるのが得意じゃない…」
ムカつく事に、そう言うのも何だかんだ衛宮の方が上手かったりする…ま、本人かなりの面倒臭がりだから滅多に請け負わないけどね…
「ええ、別に構わないわ。」
「…悪いんだけど、教える前に一つ条件がある…」
「何かしら?」
「…料理の味付け自体には魔術を一切使わない事、それが条件。」
「あら?何でかしら?」
「…僕の知る限り、現代の料理は普通に基本を遵守してやれば大体美味い物が出来上がる様に手段が確立されている…要するに必要無い、って事だ。」
「そんなに凄いの?」
「医学知識を与える癖にそういう事は教えないのか、聖杯は…ああ。ま、僕なんてアイツの料理を口に入れる前は食事は基本、美味しい物じゃなくてただの栄養補給感覚だったけどね…」
とは言えキャスターにも言い分は有るだろう…話を遮られるのは時間の無駄なので先に潰しておく。
「アンタ、何時の頃の魔術師か知らないけど…今の料理は特に儀式的な意味は何も無いんだ…本当にただ美味い物を食べたいって言う業と執念から作られた物なんだ…食事自体を楽しみたいからって複雑な意味を無くしたんだよ。」
「……」
「最も、強いて他に何か意味が有るのかと言うなら…まぁ…僕はこう言う言い方好きじゃないんだけど…愛情や心を込めて作れるか、って事らしいよ。だからアンタなら葛木の為に美味い料理を作りたいかって事…それが無いなら正直作る意味も無くなる。」
「愚問ね、私は宗一郎様に美味しい物を食べてもらいたい。」
「…あっそ。なら、分かった…僕の出来る範囲で教えるよ……それ以上は、あのバカに頭下げた方が良い。」
「……分かったわ。」