「ハァ…」
「いつまで溜め息吐いてるんだよ…」
僕は今、ファミレスで服屋に行くだけで異様に疲れ切ったキャスターと休憩を取っていた。
服屋に着いて早々…キャスターはそこで動きが止まった。やる事のデタラメさから察するに、恐らく神代の生まれじゃないかと思っていたが…実際、そうなんだろうな…完全な別世界感に足を止めて狼狽えていたのがすぐ分かった。
店に入るなりやって来た店員にまともな受け答えも出来ず…店員が困り顔になった辺りで僕から店員に声を掛けた。見た目子供の僕から思いの外理知的な声掛けが飛んで来たせいか向こうは驚いていたが、そこはさすがにプロ…すぐに気を取り直した様だ。
……結局…キャスターの服装については全部僕が店員に注文を出して服を持って来て貰い、取り敢えず全部着て貰う事にした…キャスターは魔術でいくら誤魔化したところでやはりあの格好は世間の感覚からは浮いているだろう…ただ、何を着ても大体映える逸材なのは間違い無い。途中から店員がキャスターに着せたいだけのオススメを持って来て辟易したけど、そこはそれ…僕はこういう状況には慣れている。
……でも、気付けば完全に他の客そっちのけで、女性店員が総出でキャスターの元に来ていた(何でだんだん人数が増えて行くんだ…)から店長らしき男は困った顔をしていたが、幸い客は客でキャスターに見蕩れてる始末で放置していてもそれ程問題の有る状況じゃなかった…まぁ仕事を邪魔した以上に、店長のまるで救世主を見るかの様な目が強く印象に残っている…見た目は小さい子との事だし、もう少し子供が背伸びをする様な…何と言うか…微笑ましく見られる状況を想定していたんだけどね…
そして、店を出て早くもキャスターがくたびれ果てていたのを見兼ねてこうしてここまで引っ張って来た。
「言っておくけど…現世で生きるならあれくらいは慣れて貰わないと困る。まさか毎回僕がついて行くのも、変な話だろ?」
「それは…貴方は子供だし…良いんじゃないかしら…?」
「居たらあんたは確実に僕に頼るじゃないか。」
小さい子供が母親らしき女性を完全に先導してる状況は普通に考えて不自然なのだ…本当に慣れて貰わないと困る…大体に置いて、僕の事は分からなくてもキャスターの事は魔術師にどうせどう誤魔化してもすぐにバレるんだ…その流れで僕の事にも気付かれて面倒な事になるのは避けたいから毎回一緒に行くなんて絶対に御免だ…まぁ、今も僕はホットのコーヒー…キャスターがオレンジジュースなんて注文をしてるから若干目立ってるけどね…まぁ店内はそれなりに騒がしいから会話の内容は気にされてないだろうから気は楽だ…
最も、注文についてはここの若い女性店員に逆じゃないのかと何度か確認はされた…とは言え、この姿になったからって僕の方は特に好みを変える気は無い。どうせ一緒に居ると目立つなら…はなから僕が居なければそれで済む話だし。
「母親が何も出来ず、どう見ても小学校にすら上がってない子供が色々やってあげてるなんて状況は客観的に見て可笑しいんだ…虐待じゃなくても市の職員とかが生活状況を確認しに来かねない。…あんたどうせあのアパートの部屋、工房化してるだろ?一般人には見ただけじゃ何だか分からなくても…だからって実際に来られるのはそれはそれで面倒なんじゃないか?」
「それは…そうだけど…」
「もう一度言う、慣れてくれ。次は僕は行かないからな?それで、少しは落ち着いたのか?」
「ええ、だいぶね…」
全く予定外にも程が有る…午前中にあちこち回る予定で早目に出て来たのに…もう昼近いじゃないか…
「この後も色々回るけど…こりゃ、明日も出掛けないと駄目だな…」
「その…明日は一人で行かないと駄目かしら?」
どう見ても真新しく、お洒落なその服を着こなしていると言うより…完全に服に着られている様にしか見えない女の憔悴仕切った顔を見て今度はこっちが溜め息を吐きたくなったが、嘆いていてもしょうがない…
「教える事が沢山有る……明日だけはまだ付き合ってやるよ。」