堕落したブラウニー   作:三和

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草臥れてると言うよりは、最早魂が抜け掛けている様にすら見えるキャスターの手を引いて歩く……と言うより、死んだ目をした母親らしき女性を年端も行かない子供が呆れ顔でほとんど引き摺る様にして歩くと言う…どう贔屓目に見ても、異様な光景を作り出してる事を自覚しつつ歩いていたが…ふと、気付く事が有った…

 

(視線を感じる…)

 

元々視線そのものは何度か感じていたが、さっきからやけに見られる頻度…それから視線の付きまとう時…加えて、それを送って来てる人数…どれも、どんどん増えて行ってる気がする……魔術師の視線なら多分…もっと独特、と言うか欲に塗れたザラ付いた感じになるだろうからこれは…恐らく一般人の物だろう…

 

(キャスターの魔術だけではいよいよ誤魔化し切れなくなってる…あるいは、キャスターの疲労で掛けてる魔術が弱くなって来てる…か?)

 

どちらだとしても不味い…高々一般人に見られてるだけとは言え、このままだと魔術師に悟られる可能性も出て来る……まぁ、この街に今…どのくらいの魔術師が居るのかは分からないけど…

 

と言うか、この辺りも一応遠坂家の縄張りに近い…何れ、改めてキャスター連れて遠坂と顔合わせしないとならないだろうけど…今、僕が生きてるのに気付かれるのはちょっと面倒だね…どうせコイツ、その辺の色々な問題スルーしたままだろうし…

 

(金も入った…キャスターとこれからの事もきちんと話すべきだし、またどっかの店に入るか…)

 

キャスターの休憩も兼ねて、僕はまた…ちょうど目に付いたファミレスにキャスターを連れて入った…

 

 

 

 

 

「さっきも聞いた気がするけど…ちょっとは落ち着いたか?」

 

「……」

 

「駄目そうだね…」

 

取り敢えず僕は自分の前に有るコップを掴み、水を飲む…キャスターの今の状況的に他人と顔を合わせてるのはキツそうだったから店員には注文が決まったら呼ぶとだけ行って、取り敢えず水だけ置いて下がって貰った…まぁ、しばらくは大丈夫だろう……さて。

 

「キャスター、疲れてる所悪いんだけど…」

 

「……何…?」

 

テーブルに突っ伏していたキャスターがノロノロと顔を起こすのを見て、溜め息を吐きたくなるのを堪えた…

 

「…魔術で話を聞かれない様にしてくれ、大事な話が有る…」

 

「……念話じゃ駄目なの?」

 

「こんな店内で、無言で見詰め合ってる姿はどう見ても不自然だからな…」

 

それなら聞こえなくても、口を開いてる姿を見せた方が違和感は逆に抱かれにくいだろう…

 

「……良いわ、何?」

 

何やらボソボソと呟いていたキャスターが一度口を閉じ、僕に続きを促して来る…神代の魔術は便利だねぇ…今のだけでもう終わったのか…何するにしても先ずは色々物品が必要な現代魔術とは一線を画す……まぁ、その分…今のルールとかには全く対応出来無さそうだけどね…

 

「取り敢えずこの後は買い物行って帰る訳だけど…その前に、ちょっと聞きたい事が有る。」

 

実は葛木の口座の内訳を見た時、一つ疑問に思った事が有った…先に聞いておいた方が良いだろう…

 

「何かしら?」

 

「葛木は今、入院してるんだよな…?」

 

「ええ、そうね「金は?」…え?」

 

「保険を適用されたとしても、入院って言うのは何かと色々お金が掛かるものなんだよ。」

 

葛木のあの怪我…独学とは言え、一応医療知識を有してる僕から言わせればほとんど手遅れの状態…葛木の生命力が人並み外れて無ければ普通に死んでいたし、何なら生きていてもしばらくは寝たきりになるレベル…少なくとも病院側はその場で緊急の入院措置を取らざるを得ない上、確実に手続きとかも相当面倒な事になってる筈で……まぁ、とにかく先ずは金が要るんだ…僕も何処まで取られるかまでは知らないけどね…

 

「…あの口座の金、ほとんど手が着けられた形跡が無かったんだけど…そこら辺どうなってるんだ?」

 

良く考えたら、仮に葛木が本当に全くの無趣味で最低限生活に必要な金以外は全部貯金してたとしても…アレだけの額がそのまま残ってるのは可笑しい…病院から少なくない額を抜かれてないといけない……何故か黙ったままのキャスターに訝しく思いながらも、僕は続けて質問する…

 

「外の景色を見てて思った…僕があの日死んで、こうして目覚めるまで…それなりに時間が経ってるな?」

 

「……三ヶ月とちょっとかしらね…」

 

……いや、結構経ってるな…

 

「…じゃあ三ヶ月か…その間の病院への支払いってどうなってるんだ?」

 

「……お金、掛かるの?」

 

……いや、ちょっと待ってくれ…

 

「…その辺の話、全然聞いてないのか?」

 

「宗一郎様や、医者から言われた様な気はするけど…そう言えば、医者からは落ち着いたら改めて病院来てくれとかって…」

 

「……葛木の見舞いに、三ヶ月の間一度も行ってないのか?」

 

「そんな訳無いでしょ…ちゃんと行ったわよ。」

 

「医者と話は…いや、アンタ何時ぐらいに病院に行ってた?」

 

嫌な予感が…

 

「それはもちろん…夜中に魔術を使って病院に侵入してよ。」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

僕は店内の時計を確認した…今からでも、まだ十分に間に合う、か…?

 

「キャスター、予定変更だ…今すぐ葛木の入院する病院に行くぞ。」

 

「え…?」

 

「急ぐぞ…最悪、葛木は病院を追い出される…」

 

「え!?」

 

「ほら、早く来い。」

 

予感的中だ…この分だとこの三ヶ月間、病院に一度も入院費が支払われていない…いくら魔術で誤魔化したって言っても、いい加減齟齬が出る頃だ…

 

「ちょっと!ちゃんと説明して!?どう言う事!?」

 

「あ~もう!道中で説明するから早く来い!」

 

全く…こんなどうしようも無い女を母親と思わないとならないなんて…と言うかこの場合、不憫なのは葛木の方か…息子として葛木と顔合わせするのはもう少し先だと思ってたのにさぁ…本当に先が思いやられるよ…

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