堕落したブラウニー   作:三和

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『もし…私が悪い子になったら、先輩は叱ってくれますか?』

 

居候兼、すっかり腐れ縁とも言える間柄になっていた女からそう告げられたのはいつの事だったか…当時こそ、その豊満な身体に興味は有っても性格の暗さなど色々な要素から結局手を出す事は無かった…つか、あの時はもう性欲どころか…生殖能力自体を失ってからの事だった筈だろうから…かなり経ってからなのは確かだろうな…

 

……そしてその瞬間、"本来の衛宮士郎"も同じ質問を受け…何て答えたのかまで俺の頭の中を通り過ぎて行った……ふん、俺にアイツと同じ答えを出せと?悪い冗談だな。

 

『桜、少なくともそれは俺の役目じゃないぜ。』

 

『そう、ですよね『魔王ごっこしたいなら、他に相手役に相応しい奴が居るぜ』…え?』

 

『…生きてるぜ、お前の兄貴…そのうち強引にでも連れて来てやるよ。』

 

『兄さんが…』

 

『じゃあな…これからまた寒くなるな…身体には気を付けろよ?』

 

『はい、先輩もお元気で…』

 

……役目を放棄?冗談キツイぜ、あの時桜の身体は既にあの女の作った人形の身体に置き換わっていた…とっくに運命から解放されている…不定期だが日本にも何度か帰って来てたし、十分に義理は果たしていた……"お前"と違ってな。

 

 

 

 

 

 

『桜には会ったの?』

 

『ああ……寧ろお前はどうなんだよ?ちゃんと妹の所に顔出しくらいしてんのか?』

 

『…その、最近は『忙しいとかは無しだぜ?俺なんてお前以上にヤバい状況なんだからな』分かってるわよ…その、今年の父様の誕生日には帰るわよ『妹の誕生日は?』だからその…』

 

目の前で狼狽える女にこれ見よがしに溜め息を吐いてやる……たまに帰っても、最近はアイツの口からお前の話は全く出ない…と言う事実を話してやるべきか非常に悩む所だ…まぁ、ただでさえクソ忙しいのに面倒は御免だから…やめておくべきだな。

 

『何よ、アンタだってたまにしか『間桐家はもう無いし、あのクソジジイも死んだ…お前は遠坂家の現当主だろ?養子に出したって言ってもたった一人の妹に会いに行って誰に文句言われる立場でもねぇだろうに』……』

 

『まぁ、良いや…っ…そろそろ行く。』

 

『え…もう?』

 

『悪ぃな、飛行機の時間迫ってんだ…と、せっかくだ、ここは奢ってやるよ。』

 

『…アンタ何か変わったわね…』

 

『好きに出来る金がそれなりに有れば考え方も変わってくるさ…定期的に入る宛が有るから尚更な…さてと、じゃあな。』

 

『……時間有ったらまた来なさいよ。』

 

『ああ…』

 

 

 

 

 

 

『アインツベルンの魔術の研究は進んでんのか?』

 

『正直あんまり…シロウ、少し手伝ってよ。』

 

『おう、ならこの辺の棚で解析『やっぱり良いわ』何なんだよお前は…』

 

『だって何か顔色悪いから…結構無理してるんでしょ?』

 

『お前だって大概だぜ?その身体、ホムンクルスより確実にマシだしその辺の人間よりは丈夫だろうが…そう無理が利くわけじゃねぇんだぞ?』

 

『分かってる…シロウが帰った後に少し休むわ。』

 

『そうか、ならコレでおいとま『ちょっと!お姉ちゃんとのたまのお茶会でしょ!?もう少し惜しんでよ!』へいへい…』

 

最も、カップの液体には味は元より…もう香りも感じられない…最低限温度は感じられるからまだマシだがな。

 

『シロウの方はどう?』

 

『…アーチャーの奴よりはどうにかなってる自信は有るさ、ただ道は険しいな…何より、他人の感情や置かれた状況…多くの要素が俺の邪魔をする…殺さずに済ますってのは結構難しいぜ…』

 

『魔術…あんまり使っちゃ駄目だよ?トウコやリンからも言われてるでしょ?』

 

『おう、耳にタコが出来る程にな…』

 

『日本語って本当に面白い表現多いよね…』

 

『他の国にだって、慣用句やことわざみたいな独特な表現は有るもんだ…ここ、ドイツにだって有るだろ?』

 

『まぁ、ね…ただ、日本は極端だと思うけど…』

 

『それは確かだな……と、悪ぃな…これから用事有んだ…そろそろ帰らせて貰うわ。』

 

『もう?…しょうがない、っか…また時間出来たら忘れずに来てよ?待ってるからね?』

 

『ああ…』

 

 

 

 

 

 

……家族でも無く腐れ縁…とは言え時折、無理矢理にでも時間作ってあいつらと会うのは何だかんだ苦じゃなかった…そんな記憶ももう、遠いものになって行く……ただ忘れるのは嫌だ、もう会えないのは納得しても良い…だが、何も残さず消えるなんてのは死んでも嫌だ。

 

「っ…ゴホッ!ゴホッ!……あー…クソ…」

 

血を被ったノートのページを破り取り、ゴミ箱に捨てる…たくっ、書き直しじゃねぇか…こんなんで間に合うんかねぇ…いや。

 

「意地でも…間に合わせねぇとな…」

 

少し染みの付いたページにまたペンを走らせて行く……これは、俺の終わりの物語だ。誰が読むとも知れない…あるいは誰も読まないかも知れない…だが、何としてでも書き残す…それが、俺が最後に出来る事だから…

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